JP7458159B2 - 眼科組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、眼科組成物(又は眼科用剤)に関する。
エピナスチン塩酸塩は、抗ヒスタミン剤などとして知られており、エピナスチン塩酸塩を眼科用として用いる試みもなされつつある。
例えば、特許文献1(特許第6134853号公報)には、有効成分として0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩のみを含有し、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない点眼液が開示されている。
特許第6134853号公報(特許請求の範囲、実施例)
本発明の目的は、新規な眼科組成物を提供することにある。
上記のように、エピナスチン又はその塩は有効成分として用いられており、他の成分と組み合わせた眼科用製剤はいまだ未開発の状況にある。
本発明者の検討により、エピナスチン又はその塩を有効成分とする眼科用製剤では、乾燥後に白残りが生じたり、細胞毒性が高いなどの問題があることがわかった。
一方、メントール等を含む眼科用製剤においては、刺激の低減や効率よく清涼感を発揮すること等が求められていた。
このような中、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エピナスチン又はその塩と、特定の成分(メントール等)とを組み合わせることで新規な眼科用の組成物が得られること、また、このような組成物では、白残り、細胞毒性等といった問題を解決ないし改善(抑制)しうることや、刺激の低減や清涼感の効率よい発揮を実現しうること等を見出し、さらなる検討を重ねて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
[1]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
(B)テルペノイドを含有する、眼科組成物。
[2]
(B)成分が、メントール及びカンフルからなる群より選択される1種以上を含有する、[1]記載の眼科組成物。
[3]
(B)成分が、メントールを少なくとも含有する、[1]又は[2]記載の眼科組成物。
[4]
(A)成分を0.005~0.5w/v%含有する[1]~[3]のいずれかに記載の眼科組成物。
[5]
(B)成分を0.0001w/v%以上含有する[1]~[4]のいずれかに記載の眼科組成物。
[6]
(B)成分を0.05w/v%以下の割合で含有する[1]~[5]のいずれかに記載の眼科組成物。
[7]
(B)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.0002~100質量部である[1]~[6]のいずれかに記載の眼科組成物。
[8]
さらに、(C)界面活性剤を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の眼科組成物。
[9]
さらに、(C)界面活性剤を含有し、(C)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して、0.02~500質量部である[1]~[8]のいずれかに記載の眼科組成物。
[10]
さらに、(C)界面活性剤を含有し、(C)成分の割合が、(B)成分1質量部に対して、0.1~1000質量部である[1]~[9]のいずれかに記載の眼科組成物。
[11]
pHが4~9である[1]~[10]のいずれかに記載の眼科組成物。
[12]
さらに、(C)界面活性剤を含有し、
(B)成分が、メントールを少なくとも含有し、
(A)成分の割合が0.01~0.1w/v%であり、
(B)成分の割合が0.0001~0.15w/v%であり、
(C)成分の割合が0.007~5w/v%であり、
(B)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.02~1質量部であり、
(C)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.5~50質量部であり、
pHが5~8である、[1]~[11]のいずれかに記載の眼科組成物。
[13]
容器に収容されている組成物であって、容器のうち、組成物と接触する部分の材質の少なくとも一部が、ポリエチレンテレフタレートである、[1]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物の表面張力を低減する方法であって、眼科組成物に(B)テルペンを含有させる方法。
[15]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物の白残りを低減する方法であって、眼科組成物に(B)テルペンを含有させる方法。
[16]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物の容器への充填性を改善する方法であって、眼科組成物に(B)テルペンを含有させる方法。
[17]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物の液切れを改善する方法であって、眼科組成物に(B)テルペンを含有させる方法。
[18]
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物の細胞毒性を低減する方法であって、眼科組成物に(B)テルペンを含有させる方法。
[19]
(B)テルペンを含有する眼科組成物の刺激(刺激性、刺激感)を低減(又は抑制)する方法であって、眼科組成物に(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有させる方法。
[20]
(B)テルペンを含有する眼科組成物の清涼感を向上(又は改善)する方法であって、眼科組成物に(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有させる方法。
[21]
(B)成分が、メントール及びカンフルからなる群より選択される1種以上を含む、[14]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
(B)成分がメントールを少なくとも含み、さらに、(C)界面活性剤を含有させる[14]~[21]のいずれかに記載の方法。
本発明では、新規な眼科組成物を提供できる。このような眼科組成物は、エピナスチン又はその塩に加えて、テルペノイドを含んでおり、従来にない眼科組成物(配合型の眼科組成物)である。
本発明の眼科組成物の他の態様では、エピナスチン又はその塩を含む眼科組成物の表面張力を低減(又は抑制)しうる。
本発明の眼科組成物の他の態様では、エピナスチン又はその塩を含んでいながら、乾燥後の白残り(不揮発分による白化現象又は析出)を低減(又は抑制又は防止)しうる。
本発明の眼科組成物の他の態様では、エピナスチン又はその塩を含む眼科組成物の充填性(容器に対する充填性、容器に対する充填のしやすさ)を改善(又は向上)しうる。
本発明の眼科組成物の他の態様では、エピナスチン又はその塩を含む眼科組成物の液切れを改善(又は向上)(又は液だれを抑制又は防止)しうる。
上記のような特性は、眼科組成物の製剤化の観点からも有用である。また、液切れの悪さ等は、点眼量のコントロールをしがたくすること等にもつながるため、使用性の点でも有利である。
本発明の眼科組成物の他の態様では、エピナスチン又はその塩を含む眼科組成物の細胞毒性を低減(ひいては安全性を改善又は向上)しうる。本発明者の検討によれば、エピナスチン又はその塩を含む眼科組成物の細胞毒性は比較的高いようである。しかし、本発明によれば、このようなエピナスチン又はその塩を含むにもかかわらず、細胞毒性の低い(特に実質的に細胞毒性のない)眼科組成物を提供しうる。
本発明の眼科組成物の他の態様では、メントール等のテルペンを含有しても、刺激感を低減ないし抑制しうる。すなわち、メントール等は、眼科組成物において、清涼化剤等として機能しうる一方で、眼に対する刺激感(刺激)を惹起しうる。
しかし、本発明によれば、意外なことに、エピナスチン又はその塩を存在させることで、メントール等を含んでいても、このような刺激感を抑制しうる(又は刺激感の少ない眼科組成物を提供しうる)。
本発明の眼科組成物の他の態様では、清涼感を向上(又は効率よく発揮)しうる。すなわち、メントール等は、眼科組成物において、清涼感を付与(清涼化剤として機能)しうるのであるが、本発明によれば、意外なことに、エピナスチン又はその塩を存在させることで、このような清涼感を向上(又は効率よく発揮)しうる。
このように、本発明の組成物は、極めて有用で、実用性の高いものである。
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。また、本明細書において、特に記載のない限り、略号「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
〔1.眼科組成物〕
本発明の眼科組成物は、(A)エピナスチン及び/又はその塩、並びに(B)テルペノイドを少なくとも含有する。
(A)エピナスチン及び/又はその塩((A)成分)
エピナスチンの塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であれば特に限定されず、例えば、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩)等が挙げられる。
好ましいエピナスチン及び/又はその塩には、エピナスチン塩酸塩(一塩酸塩)が含まれる。
エピナスチン及び/又はその塩は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物中の(A)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%以上(例えば、0.0003~5w/v%)、好ましくは0.0005w/v%以上(例えば、0.001~1w/v%)、より好ましくは0.003w/v%以上(例えば、0.005~0.5w/v%)、さらに好ましくは0.005w/v%以上(例えば、0.007~0.2w/v%)、さらにより好ましくは0.008w/v%以上(例えば、0.01~0.1w/v%)、特に好ましくは0.02w/v%以上(例えば、0.03~0.1w/v%)、最も好ましくは0.03w/v%以上(例えば、0.04~0.08w/v%、0.045~0.06w/v%など)程度であってもよい。中でも、0.05w/v%、0.1w/v%、0.3w/v%等が好ましく、0.05w/v%が特に好ましい。
(B)テルペノイド((B)成分)
本発明の組成物は、エピナスチン及び/又はその塩に加えて、通常、テルペノイド(テルペン、テルペン類)を含有する。なお、このようなテルペノイドは、清涼化剤などとしても使用される成分であるが、本発明の組成物では、このような清涼化剤などとしての機能も損なわれることなく効率よく発揮しうる。
テルペノイドとしては、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等のテルペノイドが挙げられる。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。
組成物は、テルペノイドを精油の形態で含有していてもよい。このような精油としては、例えば、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油などが挙げられる。
テルペノイド(及び精油)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
特に、本発明の組成物は、メントール、カンフル及びボルネオールからなる群より選択される1種以上を含有するのが好ましく、メントール及びカンフルからなる群より選択される1種以上を含有するのがより好ましく、少なくともメントールを含有するのがさらにより好ましい。
なお、メントールと他のテルペノイドとを組み合わせる場合、テルペノイド全体に対するメントールの割合は、例えば、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上などであってもよい。
組成物中の(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.00001w/v%以上、0.00005w/v%以上、0.0001w/v%以上、0.0003w/v%以上、0.0005w/v%以上、0.0007w/v%以上、0.0008w/v%以上、0.0009w/v%以上、0.001w/v%以上、0.002w/v%以上、0.003w/v%以上であってもよい。
なお、(B)成分の含有量(割合)は、テルペノイドの含有量(テルペノイド基準での(B)成分の含有量)であってもよい(以下、含有量(割合)の記載において同じ)。
また、組成物中の(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、5w/v%以下、3w/v%以下、2w/v%以下、1.5w/v%以下、1.2w/v%以下、1w/v%以下、0.9w/v%以下、0.8w/v%以下、0.7w/v%以下、0.6w/v%以下、0.5w/v%以下、0.4w/v%以下、0.3w/v%以下、0.2w/v%以下、0.15w/v%以下、0.1w/v%以下、0.08w/v%以下、0.07w/v%以下、0.06w/v%以下、0.05w/v%以下、0.04w/v%以下、0.03w/v%以下であってもよい。
特に、本発明では、(B)成分を比較的少量(低濃度)で使用してもよい。このような場合、組成物中の(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.5w/v%以下(例えば、0.00001~0.4w/v%)、好ましくは0.3w/v%以下(例えば、0.00005~0.25w/v%以下)、より好ましくは0.2w/v%以下(例えば、0.0001~0.15w/v%)、さらに好ましくは0.1w/v%以下(例えば、0.0005~0.08w/v%)、特に好ましくは0.07w/v%以下(例えば、0.001~0.06w/v%)、最も好ましくは0.05w/v%以下(例えば、0.001~0.05w/v%、0.002~0.04w/v%、0.003~0.03w/v%など)であってもよい。
(B)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、0.0002~100質量部、好ましくは0.001~20質量部、さらに好ましくは0.01~10質量部、特に好ましくは0.02~5質量部、最も好ましくは0.05~1質量部程度であってもよい。
特に、(B)成分を比較的少量(低濃度)で使用する場合等においては、(B)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、例えば、0.0002~8質量部、好ましくは0.001~5質量部、さらに好ましくは0.01~2質量部、さらにより好ましくは0.02~2質量部、特に好ましくは0.02~1質量部、特により好ましくは0.04~1質量部、最も好ましくは0.05~0.5質量部程度としてもよい。
本発明の効果を奏する観点を踏まえると、(B)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、0.02質量部以上、0.04質量部以上、0.06質量部以上、0.08質量部以上、0.1質量部以上、0.15質量部以上であってもよく、2質量部以下、1.6質量部以下、1.2質量部以下、1.0質量部以下、0.9質量部以下、0.8質量部以下、0.6質量部以下であってもよく、0.01~2質量部、好ましくは0.02~1.6質量部、より好ましくは0.04~1.2質量部、さらにより好ましくは0.06~1.0質量部、さらにより好ましくは0.08~0.9質量部、特に好ましくは0.1~0.8質量部、最も好ましくは0.15~0.6質量部であってもよい。
[その他の成分]
本発明の組成物は、さらに他の成分を含有していてもよく、含有しなくてもよい。本発明では、他の成分を含有させても、本発明の効果を担保できる場合が多い。また、他の成分を含有することで、さらに本発明の効果をより有効に実現できる場合もある。
(C)界面活性剤((C)成分)
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤を含有することで、種々の効果を効率よく実現しうる。例えば、界面活性剤と(B)成分との併用により、白残り等をより効率よく改善しうる。
非イオン界面活性剤としては、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のポリソルベート類(POEソルビタン脂肪酸エステル類);ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油80等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
中でも、POEソルビタン脂肪酸エステル類;POE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、ポリソルベート80、ポロクサマー407、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、POEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましく、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60がさらに好ましく、ポリソルベート80が特に好ましい。
界面活性剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤(特に、非イオン界面活性剤)を含有する場合、(C)成分の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上、好ましくは0.005w/v%以上、さらに好ましくは0.01w/v%以上、特に好ましくは0.05w/v%以上であってもよい。
本発明の組成物が界面活性剤(特に、非イオン界面活性剤)を含有する場合、(C)成分の割合は、組成物の全量に対して、例えば、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下、さらに好ましくは2w/v%以下、特に好ましくは1w/v%以下であってもよい。
本発明の組成物が界面活性剤(特に、非イオン界面活性剤)を含有する場合、代表的には、(C)成分の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.001~10w/v%、好ましくは0.007~5w/v%、さらに好ましくは0.03~2w/v%、特に好ましくは0.1~1w/v%であってもよい。
本発明の組成物が界面活性剤(特に、非イオン界面活性剤)を含有する場合、(C)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、例えば、0.02~500質量部、好ましくは0.1~100質量部、さらに好ましくは0.5~50質量部、特に好ましくは1~20質量部であってもよい。
本発明の組成物が界面活性剤(特に、非イオン界面活性剤)を含有する場合、(C)成分の割合は、(B)成分1質量部に対して、例えば、0.02~10000質量部、好ましくは0.1~5000質量部、さらに好ましくは0.6~2000質量部、特に好ましくは2~1000質量部であってもよい。
アミノ酸類
本発明の組成物は、アミノ酸類を含んでいてもよい。
アミノ酸としては、例えば、アミノ酸又はその塩、及びアミノ酸類似体を包含し、分子内にアミノ基とカルボキシル基又はスルホン基を有する化合物又はその誘導体などが含まれる。
具体的にはアミノ酸又はその塩、ムコ多糖又はその塩が例示される。アミノ酸類のうち、アミノ酸またはその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、アミノ酪酸、アミノ吉草酸、アミノカプロン酸(イプシロンアミノカプロン酸等)等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸又はそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸又はそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)等の誘導体又はそれらの塩が挙げられる。
また、アミノ酸類のうち、ムコ多糖またはその誘導体またはそれらの塩としては、例えば、酸性ムコ多糖として、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸等の誘導体又はそれらの塩が挙げられる。
具体的なアミノ酸及びムコ多糖として、好ましくは、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
なお、コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンが反復する糖鎖の水酸基の全部または一部に硫酸がエステル結合したものである。硫酸の結合位置や数は多様であり、また、コンドロイチン硫酸には、誘導体(例えば、N-アセチルグルコサミンの全部または一部がイズロン酸に置換されたものなど)も存在する。
このようなコンドロイチン硫酸は、どのような構造を有するものであってもよい。例えば、コンドロイチン4硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6硫酸(コンドロイチン硫酸C)、N-アセチルグルコサミンの4位及び6位が硫酸化されたコンドロイチン硫酸Eなどが挙げられる。また、コンドロイチン硫酸は、動物から抽出されたものであってもよい。
アミノ酸の塩又はムコ多糖の塩は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される塩を含む。そのような塩としては、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が例示でき、化合物によって適宜選択される。
具体的な塩には、アスパラギン酸の塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物など)、グルタミン酸の塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウムなど)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。
アミノ酸類は、D体、L体、DL体のいずれでもよい。
好ましいアミノ酸類には、アミノエチルスルホン酸(タウリン)又はその塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アスパラギン酸塩(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム)、イプシロンアミノカプロン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩(ヒアルロン酸ナトリウムなど)などが含まれ、これらの中でも、ヒアルロン酸又はその塩(ヒアルロン酸ナトリウムなど)、アミノエチルスルホン酸(タウリン)及び/又はその塩とコンドロイチン硫酸ナトリウムが好ましい。
アミノ酸類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物がアミノ酸類を含む場合、組成物中のアミノ酸類の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%、好ましくは0.01~20w/v%、より好ましくは0.03~10w/v%、さらに好ましくは0.05~5w/v%、さらにより好ましくは0.1~3w/v%、特に好ましくは0.15~2w/v%程度であってもよく、通常0.001~10w/v%[例えば、0.005~10w/v%、好ましくは0.01~5w/v%、さらに好ましくは0.05~3w/v%(例えば、0.1~1w/v%)]であってもよい。
脂溶性抗酸化剤
本発明の組成物は、脂溶性抗酸化剤を含んでいてもよい。
脂溶性抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)のようなブチル基含有フェノール;ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA);アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、アスコルビン酸リン酸トコフェロール、アスコルビン酸トリリン酸、アスコルビン酸リン酸パルミテートのようなアスコルビン酸エステル;没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルのような没食子酸エステル;プロピルガラート;3-ブチル-4-ヒドロキシキノリン-2オン;ルテイン、アスタキサンチンのようなカロテノイド類;アントシアニン類、カテキン、タンニン、クルクミンなどのポリフェノール類;CoQ10などが挙げられる。
これらのうち、ジブチルヒドロキシトルエンが好ましい。
脂溶性抗酸化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が脂溶性抗酸化剤を含む場合、組成物中の脂溶性抗酸化剤の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001~0.1w/v%、好ましくは0.0005~0.01w/v%、より好ましくは0.0007~0.009w/v%、さらに好ましくは0.001~0.008w/v%、さらにより好ましくは0.003~0.007w/v%、最も好ましくは0.0045~0.006w/v%程度であってもよい。
水溶性抗酸化剤
本発明の組成物は、水溶性抗酸化剤を含んでいてもよい。
水溶性の抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸-2-硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウムなど)、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸又はその塩(エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなど)などが挙げられる。
これらのうち、エデト酸又はその塩(エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなど)が好ましい。
水溶性抗酸化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が水溶性抗酸化剤を含む場合、組成物中の水溶性抗酸化剤の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001~1w/v%、好ましくは0.0005~0.5w/v%、より好ましくは0.0007~0.1w/v%、さらに好ましくは0.001~0.008w/v%、さらにより好ましくは0.003~0.007w/v%、最も好ましくは0.00455~0.0065w/v%程度であってもよい。
抗アレルギー剤
本発明の組成物は、抗アレルギー剤を含んでいてもよい。
抗アレルギー剤としては、例えば、トラニラスト、クロモグリク酸、イブジラスト、アシタザノラスト、タザノラスト、スプラタスト、ペミロラスト、レボカバスチン、オロパタジン、ケトチフェン、アンレキサノクス、オキサトミド及びそれらの塩などが挙げられる。
塩としては、前記例示の塩などが挙げられ、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(クロモグリク酸ナトリウム、クロモグリク酸カリウム、クロモグリク酸マグネシウム、クロモグリク酸カルシウムなど)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩など)、有機酸塩(例えば、トシル酸塩、フマル酸塩など)などが挙げられる。
なお、本発明の組成物は、組成物の安定性などの観点から、アシタザノラストなどを含んでいなくてもよい。
抗アレルギー剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が抗アレルギー剤を含む場合、組成物中の抗アレルギー剤の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.1~10w/v%、好ましくは0.2~8w/v%、より好ましくは0.3~5w/v%、さらにより好ましくは0.5~3w/v%、特に好ましくは0.7~2w/v%、さらに特に好ましくは0.8~1.5w/v%、最も好ましくは0.9~1.2w/v%程度であってもよい。
抗ヒスタミン剤
本発明の組成物は、抗ヒスタミン剤を含んでいてもよい。
抗ヒスタミン剤(エピナスチン及びその塩以外の抗ヒスタミン剤)としては、抗ヒスタミン作用を有する物質であれば、特に制限されず、例えば、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ケトチフェン、オロパタジン、レボカバスチン、イプロヘプチン及びそれらの塩が挙げられる。
塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、有機酸塩[例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩(フマル酸ケトチフェンなど)など]、無機酸塩(例えば、オロパタジン塩酸塩など)、金属塩などの前記例示の塩などが挙げられる。
具体的な塩としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、クロルフェニラミンマレイン酸塩などが挙げられる。
抗ヒスタミン剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が抗ヒスタミン剤を含む場合、組成物中の抗ヒスタミン剤の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%、好ましくは0.001~10w/v%、より好ましくは0.003~5w/v%、さらに好ましくは0.005~1w/v%、さらにより好ましくは0.01~0.5w/v%、特に好ましくは0.015~0.3w/v%(例えば、0.02~0.1w/v%)、最も好ましくは0.025~0.05w/v%(例えば、0.03w/v%)程度であってもよく、通常0.01~0.05w/v%程度であってもよい。
抗炎症剤
本発明の組成物は、抗炎症剤を含んでいてもよい。
抗炎症剤としては、抗炎症作用を有する物質であれば、特に制限されず、例えば、プラノプロフェン、インドメタシン、アラントイン、ベルベリン、アズレンスルホン酸、ジクロフェナク、ブロムフェナク、グリチルリチン酸、イプシロンアミノカプロン酸、亜鉛、銀、トラネキサム酸、リゾチーム及びそれらの塩などが挙げられる。
塩としては、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などの前記例示の塩などが挙げられ、例えば、硫酸塩、乳酸塩、塩酸塩、塩化物塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
具体的な塩としては、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸銀、塩化リゾチームなどが挙げられる。
抗炎症剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
組成物が抗炎症剤を含む場合、組成物中の抗炎症剤の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%、好ましくは0.005~5w/v%、より好ましくは0.01~1w/v%、さらにより好ましくは0.1~0.5w/v%(例えば、0.3w/v%)、特に好ましくは0.2~0.3w/v%(例えば、0.25w/v%)程度であってもよい。
本発明の組成物は、各種成分(例えば、前記成分の範疇に属さない成分)を含んでいてもよい。このような成分(添加剤)としては、例えば、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、等張化剤、増粘剤又は粘稠化剤、安定化剤、油分、糖類、高分子化合物、多価アルコール、無機塩類、非脂溶性抗酸化剤(又は水溶性抗酸化剤)などが挙げられる。
添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、各添加剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤の具体例を以下に例示する。
防腐剤
本発明の組成物は、防腐剤を含んでいてもよい。
防腐剤としては、例えば、塩化ポリドロニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、グルコン酸クロルヘキシジン、アレキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなど)、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(例えば、塩酸ポリヘキサニドなど)、及びグローキル(ローディア社製)などが挙げられる。
中でも、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ビグアニド化合物が好ましく、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ビグアニド化合物がより好ましく、塩化ベンザルコニウム、塩酸ポリヘキサニドがさらに好ましい。
組成物が防腐剤を含む場合、組成物中の防腐剤の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.000001w/v%以上、中でも0.00001w/v%以上、中でも0.00005w/v%以上、中でも0.001w/v%以上、中でも0.005w/v%以上が挙げられる。また、組成物の全量に対して、防腐剤の総量で、1w/v%以下、中でも0.1w/v%以下、中でも0.05w/v%以下、中でも0.03w/v%以下、中でも0.025w/v%以下が挙げられる。
緩衝剤
本発明の組成物は、緩衝剤を含んでいてもよい。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等が挙げられる。
ホウ酸緩衝剤の成分としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)などが挙げられる。ホウ酸塩は水和物であってもよい。
リン酸緩衝剤の成分としては、リン酸、リン酸塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなど)などが挙げられる。リン酸塩は水和物であってもよい。
炭酸緩衝剤の成分としては、炭酸、炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウムなど)などが挙げられる。炭酸塩は水和物であってもよい。
クエン酸緩衝剤の成分としては、クエン酸、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなど)などが挙げられる。クエン酸塩は水和物であってもよい。
酢酸緩衝剤の成分としては、酢酸、酢酸塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。酢酸塩は水和物であってもよい。
中でも、保存効力および本願発明の効果をより顕著に奏する等の観点からホウ酸緩衝剤、細胞毒性の低さ等からリン酸緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸とその塩との組合せが好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩との組合せがより好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩との組合せが更に好ましく、ホウ酸とホウ砂との組合せが更により好ましい。
なお、緩衝剤を複数の成分で構成する場合、その割合は緩衝機能を発揮できる範囲等に応じて適宜選択してもよい。例えば、ホウ酸とホウ酸塩(ホウ砂など)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ホウ酸100質量部に対して、ホウ酸塩0.1~100質量部、好ましくは0.5~80質量部、さらに好ましくは1~50質量部、特に2~40質量部(例えば、3~30質量部、5~25質量部、7~22質量部、10~20質量部)程度であってもよい。
本発明の組成物では、このような緩衝剤(ホウ酸緩衝剤)を含んでいても、白残りの低減などの機能を効率よく発現しうる。また、ホウ酸緩衝剤(又はホウ酸)やリン酸緩衝剤等を使用することで、組成物における各種特性をより効率良く発揮しうる場合がある。
本発明の組成物に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、0.001w/v%以上、中でも0.01w/v%以上、中でも0.05w/v%以上、中でも0.1w/v%以上が挙げられる。また、組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、10w/v%以下、中でも5w/v%以下、中でも3w/v%以下、中でも2.5w/v%以下、中でも2w/v%以下が挙げられる。
特に、ホウ酸緩衝剤(ホウ酸とホウ酸塩の総量)を使用する場合、組成物中の緩衝剤の割合は、組成物全体に対して、0.01~10w/v%、好ましくは0.05~5w/v%、より好ましくは0.1~4w/v%、さらに好ましくは0.2~3w/v%(例えば、0.2~2.5w/v%、0.3~2w/v%、0.3~1.5w/v%、0.4~1w/v%など)程度であってもよい。
pH調節剤
pH調節剤としては、例えば、塩酸、硫酸、ポリリン酸、有機酸(プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸など)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
pH調整剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
等張化剤
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、及びプロピレングリコールなどが挙げられる。
等張化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
増粘剤又は粘稠化剤
本発明の眼科組成物は、増粘剤ないしは粘稠化剤を含むことができる。
増粘剤又は粘稠化剤としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、セルロース系高分子化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、α-シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ムコ多糖類(例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩など)など)、デンプン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、ソルビトール、ポリビニル系高分子化合物(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなど)、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、ポリアクリル酸のアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、エラスチン、セラミド、流動パラフィン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリエチレンイミンアルギン酸塩(ナトリウム塩など)、アルギン酸エステル(プロピレングリコールエステルなど)、トラガント末、並びにトリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
増粘剤又は粘稠化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
安定化剤
安定化剤としては、例えば、ヒドロキシアルキルアミン類(又はアミノアルカノール類又はアルカノールアミン類、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモールなど)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、及びモノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。
安定化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
油分
油分としては、スクワラン、精製ラノリンのような動物油、流動パラフィン、ワセリン(白色ワセリンなど)のような鉱物油、ヒマシ油、ゴマ油のような植物油などが挙げられる。
なお、ワセリン(白色ワセリンなど)などは、組成物の安定性などの観点から、含有しなくてもよい。
糖類
糖類としては、単糖類、オリゴ糖(二糖類など)などが挙げられ、具体的には、グルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
多価アルコール
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリトール、ジエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
無機塩類
無機塩類としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
中でも、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムがより好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがさらに好ましい。
本発明の組成物には、さらに薬理活性又は生理活性を有する成分を配合することができる。
薬理活性成分又は生理活性成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
このような薬理活性成分や生理活性成分として、要指導・一般用医薬品 製造販売承認基準・申請実務の手引き2017年度版(一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分を例示できる。例えば、充血除去剤、眼筋調節剤、収斂剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌剤又は殺菌剤、局所麻酔薬成分、無痛化剤、サルファ剤などが挙げられる。これらの薬剤の具体例を以下に例示する。
充血除去剤(血管収縮剤)
充血除去剤としては、例えば、α-アドレナリン作動薬、具体的にはオキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、又はそれらの塩酸塩、硝酸塩などの塩等のイミダゾリン系充血除去剤、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリンなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
イミダゾリン系血管収縮剤について詳述すると、イミダゾリン系血管収縮剤の塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩などの有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;金属塩などの塩が挙げられる。塩の中では、無機酸塩が好ましく、塩酸塩、又は硝酸塩がより好ましく、塩酸塩(塩酸テトラヒドロゾリン等)が特に好ましい。
充血除去剤(血管収縮剤)の中でも、イミダゾリン系血管収縮剤が好ましく、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、又はそれらの塩がより好ましく、テトラヒドロゾリン、又はその塩がより好ましい。
眼筋調節剤
眼筋調節剤としては、例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、及び硫酸アトロピンなどが挙げられる。
ビタミン類
ビタミン類としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド又はその塩(例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、コバラミン又はその塩(例えば、シアノコバラミン、メチルコバラミン)、レチノール、その塩又はその誘導体(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ピリドキシン又はその塩(例えば、塩酸ピリドキシン)、パンテノール、パントテン酸又はその塩(例えば、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、パントテン酸カルシウム、パントテン酸マグネシウム)、トコフェロール、その塩又はその誘導体(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール)、ピリドキサール又はその塩(例えば、リン酸ピリドキサール)、アスコルビン酸又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム)などが挙げられる。
中でも、フラビンアデニンジヌクレオチド又はその塩(特に、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、コバラミン又はその塩(特に、シアノコバラミン)、レチノール、その塩又はその誘導体(特に、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ピリドキシン又はその塩(特に、塩酸ピリドキシン)、パンテノール、パントテン酸又はその塩(特に、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム)、トコフェロール、その塩又はその誘導体(特に、酢酸トコフェロール)が好ましく、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロールがより好ましい。
なお、本発明の組成物は、ピリドキシン及びその塩を含んでいなくてもよい。
抗菌剤又は殺菌剤
抗菌剤又は殺菌剤としては、例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムのようなサルファ剤、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、及び塩酸ロメフロキサシンなどが挙げられる。
局所麻酔薬成分
局所麻酔薬成分としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
基剤又は担体
本発明の組成物は、基剤又は担体を含んでいてもよい。
このような基剤又は担体を含む組成物は、例えば、上記各成分を、薬学的に許容される基剤又は担体と混合することにより、例えば、第17改正日本薬局方解説書に記載の慣用の方法で調製できる。なお、組成物の調製にあたり、適宜加温してもよい。
基剤又は担体として、例えば、水、エタノールのような極性溶媒(特に水溶性溶媒)、油性基剤などが挙げられる。基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、このような組成物(特に、水性組成物)において、各成分は、通常、溶解していてもよい。
特に、本発明の組成物は、水性組成物(例えば、水や、水と水溶性溶媒との混合溶媒を含む組成物)であってもよい。
性状
本発明の組成物の性状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状などの何れの性状であってもよい。また、用時調製により、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状になったものも含まれる。半固形状は、例えば、軟膏剤のように、力を加えることにより変形させ得る塑性を有する性状をいう。好ましい組成物の性状は、液体状(液剤)である。
また、組成物は、前記のように、水性組成物(基剤又は担体として水性ないしは親水性のものを主に含む)であってもよく、油性組成物(基剤又は担体として油性ないしは疎水性のものを主に含む)であってもよく、特に水性組成物であってもよい。
水性組成物の場合の水の含有量は、組成物(又は製剤)の全量に対して、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらにより好ましい。また、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよい。また、基剤又は担体が水のみからなっていてもよい。
油性組成物の場合の水の含有量は、組成物(又は製剤)の全量に対して、50質量%未満が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらにより好ましい。
pH
本発明の組成物のpHは、3以上(例えば、4以上)が好ましく、5以上(例えば、5.5以上)がより好ましく、6以上がさらに好ましい。また、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8.5以下がさらにより好ましい。
本発明の組成物のpHは、例えば、4~9、好ましくは4.5~8.5、さらに好ましくは5~8であってもよく、5.5~8、6~8、6~7.5、6.5~7.5などであってもよい。
本発明では、上記のようなpHにおいても、白残りや細胞毒性の低減といった効果を効率よく実現しうる。
浸透圧
本発明の組成物の浸透圧比は、例えば、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がさらにより好ましい。また、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらにより好ましい。
浸透圧比は、第17改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とする。浸透圧は第17改正日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従い測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
剤型
本発明の組成物の剤型(剤形、形状、構造)は特に限定されず、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、眼内注射剤(例えば、硝子体内注射剤)、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)、移植用の角膜等の摘出眼組織の保存剤、手術時潅流液などが挙げられる。点眼剤、洗眼剤、眼軟膏には、コンタクトレンズ装着時に使用するものも含まれる。
なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
本発明の組成物の剤型として、好ましくは、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)などが挙げられ、さらに好ましくは点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション)などが挙げられ、さらにより好ましくは点眼剤、洗眼剤が挙げられ、特に好ましくは点眼剤が挙げられる。
本発明の組成物は、使い切りのユニットドーズでも繰り返し使用できるマルチドーズでもよく、マルチドーズの形態で収容して使用してもよい。
容器
本発明の組成物は、容器に収容(充填、注入、封入)されていてもよい。
容器は、組成物(製剤)と接触する部分(面)を有する包装体であればよく、例えば、組成物(例えば、液状の組成物)を収容する容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなどで構成されていてもよい。
容器を構成する材質は、広い範囲から選択でき、例えば、少なくとも組成物との接触部分の一部又は全部が、プラスチック(例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性ポリフェニレンエーテルなど)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースアセテートなど)、ハロゲン原子で置換されていてよい炭化水素系樹脂など)、ガラス、金属(アルミニウムなど)などが挙げられる。
容器は、単独又は2種以上の材質で構成されていてもよい。
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂[例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどを含む)、エチレン-プロピレン共重合体など]、プロピレン系樹脂[例えば、ポリプロピレン(PP)(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどを含む)、プロピレン-エチレン共重合体など]、メチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテンなど)などが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル含有スチレン系樹脂(例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)など)などが挙げられる。
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルのようなメタクリル酸エステルなどを重合成分とする樹脂などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂[例えば、アルキレンテレフタレート単位を有する樹脂(アルキレンテレフタレート系樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など)、アルキレンナフタレート単位を有する樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなど)]などが挙げられる。
フッ素樹脂としては、フッ素置換ポリエチレン(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン・四フッ化エチレンコポリマー、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられる。
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン単位のみからなるものの他、一部にオキシエチレン単位を含むものが挙げられる。
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
ポリアリレートとしては、非晶質ポリアリレートなどが挙げられる。
ポリイミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド、例えばピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとを重合させたものが挙げられる。
セルロースアセテートとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
容器の材質としては、ガラス、プラスチックなどが好ましい。そのため、容器(又は容器の材質)の少なくとも一部を、ガラス、プラスチックなどで構成してもよい。
特に、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのプラスチック(すなわち、プラスチック製容器)が好ましく、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、アルキレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレンがより好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンがさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらにより好ましい。
本発明の組成物は、比較的多様な容器(又はその材質、ガラス、プラスチックなど、特にPETなどのプラスチック)においても、本発明の効果を実現しうる。中でも、本発明の組成物は、PETなどのプラスチックを材質とする容器において、本発明の効果(例えば、優れた充填性)を効率よく発現しうる。
なお、容器は、容器材質が前記ポリマー以外のポリマーとのポリマーブレンドでもよい。本発明の眼科組成物を収容する容器の容器材質が前記ポリマーとのポリマーブレンドである場合、前記ポリマーと、前記ポリマー以外のポリマーとの混合比は本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、構成材質全体の総量に対し、前記ポリマーの合計重量が30w/w%以上であることが好ましく、50w/w%以上であることがさらに好ましく、65w/w%以上であることがさらにより好ましく、80w/w%以上であることが特に好ましい。
容器は、本発明の組成物と接触する部分(接触する面)の少なくとも一部が上記材料で構成されていてもよい。例えば、容器内面に上記材料で構成された層又はフィルムが形成されていてもよく、容器自体が上記材料で成型されていてもよい。本発明の効果を顕著に奏する観点から、容器自体が上記材料で成型されていることが好ましい。
また、容器を構成する部分(容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなど)が上記材料で構成されていてもよく、容器の全部分が上記材料で構成されていてもよい。特に、本発明の効果を顕著に奏する観点から、容器本体部分が上記材料で構成されているのが好ましく、容器本体部分の全てが上記材料で構成されていること(容器本体を構成する一部の層が上記材料で構成されているのではない状態)がより好ましい。
対象疾患(用途)
本発明の組成物の対象疾患(用途)は、眼科用である限り、特に限定されるものではないが、例えば、アレルギー症状、目の痒み、目の痛み、眼の炎症、眼瞼炎、目のかすみ、充血、異物感(コロコロする感じ等)、角膜ダメージ、角膜損傷、涙目(流涙症)、眼瞼結膜の濾胞、眼脂(目やに)などの緩和、改善、抑制、又は治療や、角膜バリア機能の亢進、正常化、角膜保護などに有用である。
なお、涙目は、涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管に至る涙の排出路が目やに等で閉塞状態になったり、刺激により涙が過剰に作られたりした場合に起きる症状である。
本明細書において、「緩和」は、症状の軽快、症状の進行抑制を包含し、「改善」、「抑制」、及び「治療」は、症状の軽快、症状の進行抑制、治癒ないしは完快を包含する。
特に、本発明の組成物は、アレルギー症状(目のアレルギー症状)の緩和、改善、抑制、又は治療用として好適である。
アレルギー症状のアレルゲンとしては、特に限定されないが、花粉(スギ花粉、ヒノキ花粉など)、ハウスダスト(室内塵)などであってもよい。
また、別の態様では、本発明の組成物は、目の痒み、目の痛み、眼の炎症、眼瞼炎、目のかすみ、充血、涙目、異物感、角膜ダメージ、角膜損傷、涙目(流涙症)、眼瞼結膜の濾胞、眼脂(目やに)などの症状の緩和、改善、抑制、又は治療用として好適である。これらの症状はアレルギー症状に由来するものであってもよく、由来しないものであってもよい。
使用方法
本発明の組成物の使用方法(使用態様)は、その性状などに応じて適宜選択できる。
例えば、本発明の組成物が、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏などの眼に適用する製剤である場合、その用法は、対象とする症状によって異なるが、例えば、1日1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、又は6回以上とすることができる。また、1日9回以下、8回以下、7回以下、6回以下、5回以下、又は4回以下とすることができる。1日4回投与することが特に好ましい。
本発明の組成物が点眼剤である場合、例えば、1回当たり、1~3滴点眼すればよく、1~2滴、2~3滴であってもよい。好ましくは1~2滴点眼すればよい。1滴とすることもできる。また、点眼一滴量は、好ましくは30~50μLであってもよい。
本発明の組成物が洗眼剤である場合、例えば、1回当たり、1~30mL用いて洗眼すればよく、好ましくは1~20mL、さらに好ましくは4~6mL用いて洗眼すればよい。
本発明の組成物が眼軟膏である場合、例えば、1回当たり、眼に0.001~5g塗布すればよい。
本発明の組成物がコンタクトレンズ装着液である場合は、コンタクトレンズの装着時、脱着時に、例えば、1回当たり、1~3滴、好ましくは1~2滴を、コンタクトレンズの片面及び/又は両面に滴下して濡らした後に装用すればよく、好ましくはコンタクトレンズの両面を濡らした後に装用することが好ましい。
〔2.表面張力の低減〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、表面張力を低減(又は抑制)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の表面張力を低減する方法。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の表面張力を低減する方法であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の表面張力を低減するための剤であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔3.白残りの低減〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物(乾燥後の眼科組成物)における、白残りを低減(又は抑制)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の白残りを低減する方法。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の白残りを低減する方法であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の白残りを低減するための剤であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔4.充填性の改善〕
本実施形態に係る眼科組成物は、容器に対する眼科組成物の充填性を改善(又は向上)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の容器への充填性を改善する方法。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の容器への充填性を改善する方法であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の容器への充填性を改善するための剤であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔5.液切れの改善(液だれの抑制)〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物の液切れを改善(又は向上)しうる。また、本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物の液だれを抑制(又は低減又は防止)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の液切れを改善(又は向上)(又は液だれを抑制)する方法。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の液切れを改善(又は向上)(又は液だれを抑制)する方法であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の液切れを改善(又は向上)(又は液だれを抑制)するための剤であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔6.細胞毒性の低減〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、細胞毒性を低減(又は抑制)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の細胞毒性を低減する方法。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の細胞毒性を低減する方法であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含む眼科組成物の細胞毒性を低減するための剤であって、(B)テルペノイド(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔7.刺激の低減〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、刺激(眼に対する刺激)を低減(又は抑制)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の刺激(刺激感、刺激性)を低減する方法。
(B)テルペノイドを含む眼科組成物の刺激(刺激感、刺激性)を低減する方法であって、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(B)テルペノイドを含む眼科組成物の刺激(刺激感、刺激性)を低減するための剤であって、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
〔8.清涼感の向上〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、清涼感を向上(又は改善)しうる。
従って、本発明の一実施形態として、以下の方法が提供される。
(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と(B)テルペノイドと((C)界面活性剤と)を組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の清涼感を向上する方法。
(B)テルペノイドを含む眼科組成物の清涼感を向上する方法であって、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上(及び(C)界面活性剤)を眼科組成物に含有させる方法。
また、本発明の一実施形態として、以下の剤が提供される。
(B)テルペノイドを含む眼科組成物の清涼感を向上するための剤であって、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上(及び(C)界面活性剤)を含む剤。
なお、上記各実施形態における、(A)~(B)成分(さらには(C)成分)の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、眼科組成物の製剤形態及び用途等については、〔1.眼科組成物〕で説明したとおりである。
また、上記各実施形態は、2以上の形態を組み合わせてもよい。例えば、実施形態〔2〕と〔3〕を組み合わせる場合、当該実施形態には、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上と、(B)テルペノイドとを組み合わせる(又は組み合わせて含有させる)ことにより、眼科組成物の表面張力を低減するとともに、白残りを低減する方法などが含まれる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[試験例1]表面張力及び各種性状
下記表に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、表面張力を測定した(N=3の平均値)。
表面張力の測定には、協和界面化学(株)のSURFAVE TENSIONMETER CBVP-A3を用いた。
そして、測定した表面張力から、下記式で定義される各組成物(試験例1B~1F)の表面張力改善率を求めた。
表面張力改善率(%)=[(試験例1Aの表面張力-各試験例の表面張力)/(試験例1Aの表面張力)]×100
結果を下記表に示す。なお、下記表の水性眼科組成物において、各成分の単位は(w/v%)である。以下の表においても同様である。
上記表の結果から明らかなように、エピナスチン塩酸塩と、テルペノイドを組み合わせることで、表面張力を低減することができた。
そして、このような表面張力の低減効果は、テルペノイドと界面活性剤を組み合わせることで、より顕著に大きくすることができた。
また、このような表面張力の低減効果は、意外なことに、テルペノイドの量が少ない方が大きいものであった(試験例1Bと1C)。
さらに、テルペノイドのうち、メントールとカンフルでは、メントールの方が高い表面張力の低減効果が得られた(試験例1Eと1F)。
これらの組成物につき、さらに性状等を調べた。
まず、これらの組成物を、それぞれ、無色透明のPE(ポリエチレン)フィルム上に滴下し、水を蒸発させた。蒸発後の状態を目視で確認したところ、試験例1Aの組成物では、白残り(不揮発分による白化現象又は析出)が生じたが、試験例1B、1C、1E、1Fの各組成物では、いずれも、このような白残りはない(又はほとんど生じない)か又は白残りを低減できた。
すなわち、テルペノイドを組み合わせることにより、エピナスチン塩酸塩を含む水性組成物による白残りを抑制又は防止できることがわかった。
次に、このような他の試験例の各組成物を、点眼容器(PET製、口径6mm)に充填したところ、いずれも、支障なく充填でき、充填性に優れていた。このように、得られた組成物は、いずれも、効率よく製剤化できる組成物であることが確認できた。
また、点眼容器から各組成物を滴下したところ、いずれも液切れが良好であった。そのため、得られた組成物は、いずれも、液だれが生じにくい組成物であることもわかった。
[試験例2]細胞毒性試験1(テルペノイドの有無)
下記表に示す組成物を精製水中に溶解し調製した。そして、得られた組成物の細胞毒性を、以下のようにして評価した。
Medium 199(HEPES)を使用し、SIRC細胞を用いて、細胞濃度を5.0×10cell/mlに調製した。96wellプレート(Corning社)に細胞液を100μLずつ分注した(5.0×10細胞/ウェル)。各wellには25%の濃度にMedium 199(HEPES)で希釈した試験例の製剤を加えたのち、4時間培養した。Cell Counting Kit-8(wst-8) REF:343-07623を用いて、Medium 199(HEPES)のみで培養した際の吸光度と比較し、細胞の生存率(%)を算出した。
そして、下記式で表される、試験例2A(メントール無し)に対する死滅率減少率を算出した。
死滅率(%)=100-生存率(%)
死滅率減少率(%)=
(試験例2Aの死滅率-試験例2B又は2Cの死滅率)/試験例2Aの死滅率×100
結果を下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、メントールにより、細胞毒性を低減できた。また、このような細胞毒性の低減効果は、意外なことに、メントールの量が少ない方が大きいものであった。
[試験例3]細胞毒性試験2(テルペノイドの量及び種類)
5.0×10細胞/ウェルを2.5×10細胞/ウェルに、試験例の製剤添加後の培養時間を4時間から1時間に変更したこと以外は、試験例2(細胞毒性試験1)と同様にして、各組成物の細胞生存率を以下のようにして測定し、試験例3Aの組成物の細胞生存率を100としたときの、各組成物の比較細胞生存割合(各組成物の細胞生存率/試験例3Aの組成物の細胞生存率×100)を算出した。
結果を下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、メントールの量が少ない方が細胞毒性の低減効果が大きく、テルペノイドの中でも、カンフルよりメントールの細胞毒性低減効果が高いことが確認できた。
[試験例4]官能試験
下記表に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製した。
そして、調製した点眼剤の刺激感を、次のようにして評価した。
点眼直後の刺激感についてのVAS値を被験者ごとに測定し、その平均値(平均VAS値)をもって刺激感の値(強さの値)とした。なお、VASスケールは最大目盛20とし、被験者は自由意思で本試験に参加した健常な5名(裸眼)とした。
結果を下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、メントールを含む組成物に、エピナスチン塩酸塩を配合することにより、刺激を低減できることがわかった。
[試験例5]官能試験
試験例4で調製した点眼剤の清涼感を、次のようにして評価した。
点眼直後の清涼感についてのVAS値を被験者ごとに測定し、その平均値(平均VAS値)をもって清涼感の値(強さの値)とした。なお、VASスケールは最大目盛20とし、被験者は自由意思で本試験に参加した健常な5名(裸眼)とした。
結果を下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、メントールを含む組成物に、エピナスチン塩酸塩を配合しても清涼感を発揮でき、それどころかむしろ、清涼感を向上できることがわかった。
この結果と試験例4の結果を合わせると、清涼感の発揮と刺激感の低減を両立できる(特に、清涼感を向上させつつ刺激感を低減できる)ことがわかった。
[試験例6]官能試験
試験例4及び5において確認した刺激感・清涼感を、下記表に示す組成の異なる処方(濃度)においても、同様にして評価した。
結果を点眼剤(水性眼科組成物)の組成とともに下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、異なる各種処方においても、刺激感の低減や清涼感の向上を確認できた。
[試験例7]TRPA1活性の評価
上記の通り、各種試験例の点眼剤において刺激感を低減できることを確認できた。
一方、このような刺激感(痛み)は、その惹起の経路として、細胞センサであるTRPA1(TRPA1の活性化)との関連性が報告されている(例えば、Curr. Ophthalmol. Rep. (2015), 3: 111-121)。
このような観点から、次のようにして、細胞レベルにて刺激感を評価する一助となりうるTRPA1活性を測定した。
<使用細胞>
hTRPA1遺伝子を保持するT-REx-293細胞株の調製
hTRPA1のmRNAを、ヒトWI38細胞から抽出した。安定的にhTRPA1を発現させたT-REx-293細胞は、Invitrogen社のテトラサイクリン制御T-REx発現システムを用いて作成した。hTRPA1 mRNAを鋳型としてRT-PCRにより増幅させたhTRPA1のcDNAを、哺乳類細胞用遺伝子発現ベクターであるpcDNA4/TO(invitrogen社製)へ組み込み、invitrogen社の遺伝子導入試薬であるLipofectamin 2000 reagentを用いてT-REx-293細胞に導入した。pcDNA4/TOにはZeocinが組み込まれており、T-REx-293細胞にT-Rexシステムを維持するためのプラスミド(ブラストサイジン耐性遺伝子)が保持されている。抗生物質であるZeocin500μg/mL及びブラストサイジン10μg/mLを用いて安定的にhTRPA1遺伝子を保持するT-REx-293細胞株を樹立した。
<細胞培養>
hTRPA1を保持するT-REx-293細胞は10%FBS,100unit/mL penicillin,100mg/mL streptomysin,250ng/mL amphotericin Bを含むDMEM培地を用いて、5%二酸化炭素存在下で培養した。継代の際には200μg/mL Zeocin,5μg/mL ブラストサイジンを加え、最大継代数は50以下で行った。
具体的には前培養として60 mm dishにセミコンフルエントになるようにT-REx-293細胞を培養した後、PBS(-)で洗浄した。1×Trypsin/EDTA処理によりdishから細胞を剥がし、DMEM培地を加えた。その後、15 mLチューブに移し、800 rpmにて室温で4分間、遠心分離した。DMEM培地のみを吸引除去し、タッピングにより細胞をほぐした後、新たなDMEM培地を加え、約40×10~50×10cell/mLになるように細胞数を調整した細胞懸濁液を作成した。この時、受容体発現のためにtetracyclineを加えた。作成した細胞懸濁液を96ウェルプレートに分注し、37℃、5%COインキュベーターで一晩インキュベートして試験に使用した。
<実験>
Ca2+濃度指示薬(Fluo-8(AAT Bioquest, Inc.社製))を用いて、TRP活性が変化するかを観察した。Ca2+濃度指示薬を予めhTRPA1を保持したT-REx-293細胞内に取り込ませておき、マイクロプレートリーダーにて蛍光量を測定した。
具体的には以下のプロトコールに従って実施した。前日に準備(上記した細胞培養)を行っていた96ウェルプレートをインキュベーターより取り出し、DMEM培地をデカンテーションで除去した。100μL/ウェルのLB緩衝液(pH 7.4、5.37 mM KCl、0.44 mM KH2PO4、137 mM NaCl、0.34 mM Na2HPO4、5.56 mM D-glucose、20 mM HEPES、1 mM CaCl2、0.1% bovine serum albumin、2.5 mM probenecid、残余 精製水)で優しく洗浄し、1.5μM Fluo-8で溶解した同上の緩衝液を50μLずつウェルに添加した後、37℃、5%COインキュベーターで1時間処理した。インキュベーター処理後、Fluo-8が入った同上の緩衝液をデカンテーションで除去し、100μL/ウェルの同上の緩衝液で優しく洗浄した。さらに、180μL/ウェルの同上の緩衝液を添加して、Flexstation III (レジスタードトレードマーク) マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)で測定を開始した。
マイクロプレートリーダー測定開始30秒後に、試料(被験試料及び基準試料)を、それぞれ20μL/ウェル添加し、添加後5秒~120秒間における蛍光量の最大値を測定し、この値を蛍光量とした。
なお、TRP活性(%)は以下の式に基づき、算出した。
TRP活性(%)=
(被験試料投与時の蛍光量/基準試料投与時の蛍光量)×100
用いた試料の組成とともに、結果を下記表に示す。
上記表の結果から明らかなように、エピナスチン塩酸塩とメントールとを組み合わせることで、TRPA1活性が抑えられること、またこの傾向はホウ酸を含む場合により顕著であることが確認された。
[製剤例]
以下の表に記載の処方に従い、眼科組成物を調製し、容器[PET容器(処方例1~9及び19~25)又はPE(ポリエチレン)容器(処方例10~18及び26~31)]に充填した。なお、下記の表において、各成分の単位は(w/v%)である。
本発明では、点眼剤などとして有用な眼科組成物を提供できる。

Claims (21)

  1. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
    (B)メントールを含有する、眼科組成物であり、(A)成分を0.005~0.5w/v%含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)。
  2. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
    (B)メントールを含有する、眼科組成物であり、(B)成分を0.05w/v%以下の割合で含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)。
  3. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
    (B)メントールを含有する、眼科組成物であり、さらに、(C)界面活性剤を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)。
  4. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
    (B)メントールを含有する、眼科組成物であり、pHが4~9である眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)。
  5. 容器に収容されている眼科組成物であって、
    容器のうち、組成物と接触する部分の材質の少なくとも一部が、ポリエチレンテレフタレートであり、
    眼科組成物が、(A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに(B)メントールを含有する、眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)である、眼科組成物
  6. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
    (B)メントールを含有する、眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合、塩酸エピナスチン、塩酸エフェドリン、ポリアクリル酸ナトリウム、グリセリン、ハッカ油及び水を含有する組成物である場合を除く)。
  7. (A)成分を0.005~0.5w/v%含有する請求項2~6のいずれかに記載の眼科組成物。
  8. (B)成分を0.0001w/v%以上含有する請求項1~7のいずれかに記載の眼科組成物。
  9. (B)成分を0.05w/v%以下の割合で含有する請求項1、3~8のいずれかに記載の眼科組成物。
  10. (B)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.0002~100質量部である請求項1~のいずれかに記載の眼科組成物。
  11. さらに、(C)界面活性剤を含有する、請求項1、2、4~10のいずれかに記載の眼科組成物。
  12. さらに、(C)界面活性剤を含有し、(C)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して、0.02~500質量部である請求項1~11のいずれかに記載の眼科組成物。
  13. さらに、(C)界面活性剤を含有し、(C)成分の割合が、(B)成分1質量部に対して、0.1~1000質量部である請求項1~12のいずれかに記載の眼科組成物。
  14. pHが4~9である請求項1~3、5~13のいずれかに記載の眼科組成物。
  15. さらに、(C)界面活性剤を含有し、
    (A)成分の割合が0.01~0.1w/v%であり、
    (B)成分の割合が0.0001~0.15w/v%であり、
    (C)成分の割合が0.007~5w/v%であり、
    (B)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.02~1質量部であり、
    (C)成分の割合が、(A)成分1質量部に対して0.5~50質量部であり、
    pHが5~8である、請求項1~14のいずれかに記載の眼科組成物。
  16. 容器に収容されている組成物であって、容器のうち、組成物と接触する部分の材質の少なくとも一部が、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1~4、6~15のいずれかに記載の組成物。
  17. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)の表面張力を低減する方法であって、眼科組成物に(B)メントールを含有させる方法。
  18. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合を除く)の白残りを低減する方法であって、眼科組成物に(B)メントールを含有させる方法。
  19. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合、眼科組成物と接する部分の一部又は全部が環状オレフィン類を含有する樹脂で形成された容器に収容された組成物である場合を除く)の容器への充填性を改善する方法であって、眼科組成物に(B)メントールを含有させる方法。
  20. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含有する組成物である場合、眼科組成物と接する部分の一部又は全部が環状オレフィン類を含有する樹脂で形成された容器に収容された組成物である場合を除く)の液切れを改善する方法であって、眼科組成物に(B)メントールを含有させる方法。
  21. (A)エピナスチン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する眼科組成物(ただし、ワセリンを0.00001w/v%以上の割合で含む組成物である場合を除く)の細胞毒性を低減する方法であって、眼科組成物に(B)メントールを含有させる方法。
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