JP7044467B2 - 眼科組成物 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 ・平成28年9月20日、本発明に係る内容を自社ウェブページに掲載 ・平成28年9月15日、本発明に係る内容を自社ウェブページに掲載 ・平成28年8月4日、製品名「Vロートプレミアム」 販売店様用資料において開示
本発明は、眼科組成物に関する。
眼表面においては、細菌やウィルス等からの攻撃や眼瞼等からの摩擦によって受けるストレスに対して、上皮間に存在するタイトジャンクションと、粘膜バリアによってバリアが構築されている。粘膜バリアは、上皮に発現する膜結合型ムチンと、涙液中に存在する分泌型ムチンが、粘膜バリアを構成する上で重要な役割を果たしている(非特許文献1)。
眼表面におけるムチンの産生を促進する方法としては、これまで、ファルネシル酢酸とゲラニオールとのエステルであるゲファルナートが眼組織におけるムチンの産生・分泌を促進する作用を持ち、ドライアイをはじめとする角結膜疾患に有効であることが開示されている(特許文献1)。
特開平9-194363号
稲富勉、眼瞼・結膜セミナー:2.結膜ムチンと粘膜バリアの重要性、あたらしい眼科、Vol.32、No.2、251-252頁、2015年
しかしながら、安全性が高く、製剤の多様性に対応可能な、さらなる眼表面のムチンの産生技術が求められている。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)パントテン酸類を含有する眼科組成物は、ムチンの産生を促進できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、更に検討を重ねることによって完成したものである。
すなわち、本発明は、下記に掲げるムチン産生促進用眼科組成物を提供する。
項1.(A)パントテン酸類を含有する、ムチン産生促進用眼科組成物。
項2.前記(A)パントテン酸類の含有量が、0.0001~10w/v%である、項1に記載のムチン産生促進用眼科組成物。
項3.前記(A)パントテン酸類が、パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上である、項1又は2に記載のムチン産生促進用眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げるかわき目改善用眼科組成物を提供する。
項4.(A)パントテン酸類を含有する、かわき目改善用眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げるドライアイの予防又は治療用眼科組成物を提供する。
項5.(A)パントテン酸類を含有する、ドライアイの予防又は治療用眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げる眼部における摩擦低減用の眼科組成物を提供する。
項6.(A)パントテン酸類を含有する、眼部の摩擦低減用眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げる方法を提供する。
項7.(A)パントテン酸類を眼科組成物に含有させることを含む、該眼科組成物にムチン産生促進作用を付与する方法。
また、別の実施形態において、本発明は、(A)パントテン酸類を眼科組成物に含有させることを含む、該眼科組成物に涙液安定化作用を付与する方法を提供することも可能である。
本発明によれば、(A)パントテン酸類を含有することにより、優れたムチン産生促進効果を示す眼科組成物を提供することができる。このような眼科組成物は、安全性が高く、多様な製剤に適用可能である。
試験例1において、パントテン酸類が有する、ムチンの産生促進効果を評価した結果を示すグラフである。
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
本明細書において、含有量の単位「w/w%」は、「g/100g」の重量%と同義である。
[眼科組成物]
本発明の眼科組成物は、(A)パントテン酸類を含有する。本発明の眼科組成物は、(A)パントテン酸類を含有することにより、角膜上皮細胞におけるムチンの産生を促進することができる。ムチンの産生を促進させることにより、涙液を安定化させ、眼部の摩擦を低減させることが可能となる。本明細書において、ムチンとは、アポムチンをコアタンパク(MUC)として、多数の糖鎖により修飾された高分子糖タンパク質の総称をいう。
本明細書において、(A)パントテン酸類とは、パンテノール(パントテニルアルコール)、パントテン酸、又はそれらの塩をいう。パントテン酸類は、遊離のパントテン酸類であってもよく、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの塩であってもよい。これらの塩としては、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。パントテン酸類としては、例えば、パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩が好ましく、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムがより好ましく、パンテノールが更に好ましい。
(A)パントテン酸類は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。また、(A)パントテン酸類は、公知の方法により合成して使用しても、市販の薬剤を入手して使用してもよい。
本明細書において、眼科組成物総量に対する(A)パントテン酸類の総含有量は、他の配合成分の種類及びそれらの含有量、又は眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定される。眼科組成物の総量に対して、(A)パントテン酸類の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは0.001w/v%以上、さらに好ましくは0.005w/v%以上、特に好ましくは0.01w/v%以上であり、特により好ましくは、0.05w/v%以上であり、最も好ましくは0.07w/v%以上である。眼科組成物の総量に対して、(A)パントテン酸類の総含有量は、限定はされないが、好ましくは10w/v%以下であり、より好ましくは5w/v%以下、さらに好ましくは1w/v%以下、特に好ましくは0.5w/v%以下、特により好ましくは、0.1w/v%以下である。(A)パントテン酸類の総含有量としては、0.1w/v%が最も好ましい。眼科組成物の総量に対して、(A)パントテン酸類の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%~10w/v%、より好ましくは0.001w/v%~5w/v%、さらに好ましくは0.005w/v%~1w/v%、特に好ましくは0.01w/v%~0.5w/v%であり、特により好ましくは、0.05w/v%~0.1w/v%である。
本発明において、眼科組成物は、(A)パントテン酸類の他に、更に非イオン界面活性剤を含有していてもよい。非イオン界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り特に制限されない。
非イオン界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)-ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)グリコール(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188等のポロクサマー類);ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE(5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油などのPOE硬化ヒマシ油;POE(3)ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油、POE(35)ヒマシ油などのPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類;ステアリン酸ポリオキシル40などのモノステアリン酸ポリエチレングリコール類などが挙げられる。なお、括弧内の数字はPOP又はPOEの平均付加モル数を示す。
これらの非イオン界面活性剤の中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、POE-POPグリコール、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、及びモノステアリン酸ポリエチレングリコール類が好ましく、ポロクサマー407、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(3)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油3)、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、POE(60)硬化ヒマシ油が特に好ましい。
これらの非イオン界面活性剤は、公知の方法により合成して使用しても、市販品を入手して使用してもよい。非イオン界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明の眼科組成物において非イオン界面活性剤を含有させる場合、非イオン界面活性剤の含有量については、非イオン界面活性剤の種類、他の成分の種類や量、眼科組成物の用途等に応じて適宜設定できる。一例として、眼科組成物の総量に対する非イオン界面活性剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは0.0005w/v%以上、さらに好ましくは0.001w/v%以上、特に好ましくは0.005w/v%以上であり、最も好ましくは0.01w/v%以上である。眼科組成物の総量に対して、界面活性剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは10w/v%以下であり、より好ましくは5w/v%以下、さらに好ましくは1w/v%以下、特に好ましくは0.5w/v%以下である。眼科組成物の総量に対して、界面活性剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%~10w/v%、より好ましくは0.001w/v%~5w/v%、さらに好ましくは0.005w/v%~1w/v%、特に好ましくは0.01w/v%~0.5w/v%である。
本発明において、眼科組成物は、(A)パントテン酸類の他に、更に増粘剤を含有していてもよい。増粘剤として、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース及びその塩、カルボキシエチルセルロース及びその塩等のセルロース系高分子化合物、コンドロイチン硫酸及びその塩並びにヒアルロン酸及びその塩等のグリコサミノグリカン、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K17、K25、K30、K90など)、カルボキシビニルポリマー及びその塩等のビニル系高分子、デキストラン、マクロゴール6000、マクロゴール4000、マクロゴール400等のマクロゴール(ポリエチレングリコール)、ジェランガム、アルギン酸及びその塩が挙げられる。ここで、その塩とは、特に限定はされないが、ナトリウム塩が好ましい。本発明の効果を顕著に奏する観点から、グリコサミノグリカン、セルロース系高分子、又はビニル系高分子が好ましく、グルコサミノグリカンがより好ましく、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びそれらの塩がより好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウム(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム)及びヒアルロン酸ナトリウムが更に好ましい。増粘剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
眼科組成物に増粘剤を配合する場合、増粘剤の総含有量は、使用する増粘剤の種類、他の配合成分の種類や配合量、眼科組成物の用途等に応じて適宜設定できる。眼科組成物の総量に対して、増粘剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは0.0005w/v%以上、さらに好ましくは0.001w/v%以上、さらに好ましくは0.005w/v%以上、さらにより好ましくは0.01w/v%以上、最も好ましくは0.05w/v%以上である。また、眼科組成物の総量に対して、増粘剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは5w/v%以下であり、より好ましくは3w/v%以下、さらに好ましくは1w/v%以下、更により好ましくは0.5w/v%以下、最も好ましくは0.3w/v%以下である。眼科組成物の総量に対して、増粘剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.0001w/v%~5w/v%、より好ましくは、0.0005w/v%~3w/v%、さらに好ましくは0.001~1w/v%、さらにより好ましくは、0.005~0.5w/v%、特に好ましくは、0.01w/v%~0.5w/v%、最も好ましくは0.05w/v%~0.3w/v%である。
本発明において、眼科組成物は、(A)パントテン酸類の他に更に緩衝剤を含有していてもよい。眼科組成物に配合可能な緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等が挙げられる。緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤が好ましい。
ホウ酸緩衝剤としては、例えば、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、例えば、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、例えば、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、例えば、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、緩衝剤としては、各塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、限定はされないが、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物等)が例示できる。
緩衝剤の中でも、特にホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤が更に好ましい。ホウ酸緩衝剤の好適な具体例として、ホウ酸、ホウ酸とその塩との組み合わせ(例えばホウ酸とホウ砂)が挙げられ、好ましくはホウ酸、ホウ酸とホウ砂の組み合わせ、更に好ましくはホウ酸が例示される。
これらの緩衝剤は、公知の方法により合成して使用しても、市販品を入手して使用してもよい。これらの緩衝剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明において、眼科組成物に緩衝剤を含有させる場合、緩衝剤の含有量については、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や配合量、眼科組成物の用途等に応じて適宜設定できる。一例として、眼科組成物の総量に対する緩衝剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、さらに好ましくは0.1w/v%以上、特に好ましくは0.3w/v%以上である。眼科組成物の総量に対する緩衝剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは10w/v%以下、より好ましくは5w/v%以下、さらに好ましくは3w/v%以下、特に好ましくは2w/v%以下である。眼科組成物の総量に対する緩衝剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.01w/v%~10w/v%、より好ましくは0.05w/v%~5w/v%、さらに好ましくは0.1w/v%~3w/v%、特に好ましくは0.3w/v%~2w/v%である。
本発明において、眼科組成物は、(A)パントテン酸類の他に更にテルペノイドを含有してもよい。本明細書において、テルペノイドとは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有し、清涼化剤として汎用されている公知の化合物である。
本発明において、眼科組成物に配合可能なテルペノイドとしては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。テルペノイドとして、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、シメン、テルピネオール、ピネン、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロール、これらの誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、例えば、エステル化誘導体、エーテル化誘導体、アミド化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体、ニトロソ化誘導体、ハロゲン化誘導体等を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、エステル化誘導体及び/又はエーテル化誘導体であり、より好ましくはエステル化誘導体である。エステル化誘導体の例としては、吉草酸、酪酸、酢酸、プロピオン酸及び/又はフランカルボン酸等の有機酸でエステル化した誘導体を挙げることができ、これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油、チョウジ油等が挙げられる。
これらのテルペノイドの中でも、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオールが好ましく、これらを含有する精油としてユーカリ油、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油、ローズ油が好ましい。更に好ましくは、メントール、カンフル、ゲラニオールであり、特に好ましくはl-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、ゲラニオールが挙げられ、最も好ましくはl-メントール、dl-カンフル、ゲラニオールが挙げられ、これらを含有する精油としてユーカリ油、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油が好ましい。
これらのテルペノイドは、公知の方法により合成して使用しても、市販品を入手して使用してもよい。これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
眼科組成物にテルペノイドを配合する場合、テルペノイドの総含有量は、使用するテルペノイドの種類、他の配合成分の種類や配合量、眼科組成物の用途等に応じて適宜設定できる。一例として、眼科組成物の総量に対して、テルペノイドの総含有量は、限定はされないが、眼科組成物の安定性を高める観点から、好ましくは0.00001w/v%以上であり、より好ましくは0.0001w/v%以上、さらに好ましくは0.0002w/v%以上、特に好ましくは0.001w/v%以上である。眼科組成物の総量に対して、テルペノイドの総含有量は、限定はされないが、好ましくは1w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以下、さらに好ましくは0.1w/v%以下、特に好ましくは0.08w/v%以下である。眼科組成物の総量に対して、テルペノイドの総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.00001w/v%~1w/v%、より好ましくは、0.0001w/v%~0.5w/v%、より好ましくは0.0002w/v%~0.1w/v%、さらに好ましくは、0.001w/v%~0.08w/v%である。
本発明において、眼科組成物は、(A)パントテン酸類の他に更に等張化剤を含有していてもよい。本発明の眼科組成物に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。等張化剤として、具体的には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの等張化剤の中でも、本発明の効果を顕著に奏させるという観点から、好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グリセリン、及びプロピレングリコールが挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明において、眼科組成物に等張化剤を含有させる場合、等張化剤の含有量については、使用する等張化剤の種類、他の配合成分の種類や配合量、眼科組成物の用途等に応じて適宜設定できる。一例として、眼科組成物の総量に対する緩衝剤の総含有量は、限定はされないが、好ましくは0.01w/v%~10w/v%、好ましくは0.05w/v%~5w/v%、更に好ましくは0.1w/v%~3w/v%である。
本明細書において、眼科組成物には、(A)パントテン酸類の他に、通常眼科組成物に用いることができる任意の成分を含有させることができる。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会)に記載された有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)が例示できる。具体的には次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤:例えば、フマル酸ケトチフェン、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸レボカバスチン、塩酸オロパタジン等。
抗アレルギー剤:例えば、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム、アシタザノラスト、イブジラスト、トラニラスト等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニレフリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピン等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン、トラネキサム酸、ベルベリン、リゾチーム、塩化リゾチーム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、イプシロン-アミノカプロン酸、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。これらは水和物であってもよい。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム、紫根、セイヨウトチノキ、及びこれらの塩等。
眼科組成物の分野において各種有効成分の配合割合は既知であり、本発明の組成物中の上記成分の配合割合は、該組成物の剤形、薬理活性成分又は生理活性成成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、薬理活性成分又は生理活性成成分の配合割合は、眼科組成物の全量に対して、通常0.0001w/v%~30w/v%とすることができ、好ましくは約0.001w/v%~10w/v%とすることができる。
上記の有効成分は、1種を単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
さらに、本明細書において、眼科組成物には、担体、pH調節剤、一般的な糖類、一般的なキレート剤、安定化剤、防腐剤等の添加剤を選択し、少なくとも1種を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。
pH調節剤:例えば、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン等。
安定化剤:例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、シクロデキストリン等。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム等。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、アルキル4級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド等)、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化亜鉛、アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等。
陰イオン界面活性剤:例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族a-スルホメチルエステル、a-オレフィンスルホン酸等。
油類:ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン、ラノリン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
その他:リピジュア-PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、リピジュア-HM等。
[用途]
本発明の眼科組成物は、(A)パントテン酸類を含有することにより、角膜上皮細胞におけるムチンの産生を促進させることができる。
眼表面の涙液は、外側から油層、水層、ムチン層の3層構造からなり、ムチンは角膜-水層間をなじみやすくし、水層を角膜に均一に定着させる役割を担っている。そのため、ムチンの産生を促進させることにより、涙液を安定化させ、保持させることが可能となる。よって、本発明の眼科組成物は、ムチンが減少又は欠如する症状や病態に対して、特に有効に用いることが可能である。ムチンが減少又は欠如すると涙液が不安定化することで、眼表面における涙液の乾き(乾燥)を感じ、かわき目の症状やかわき目に伴う目の疲れの症状を感じることがある。よって、本発明の眼科組成物は、かわき目の症状やかわき目に伴う目の疲れの症状に対して有効に用いることが可能である。
本明細書において、ドライアイとは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患をいう。ドライアイでは、機序の一つとしてムチンの糖鎖や発現量が変化することが知られている。膜結合型ムチンとしてMUC1、MUC4、MUC16等の数種のムチンが角結膜細胞上に存在しているが、特に分子量が大きいMUC16は、涙液を眼表面で潤滑に広げる作用を有する粘膜バリアを構成する上で重要な役割を果たしている。また、結膜杯細胞からは、MUC5AC等の分泌型ムチンが産生され、涙液の浄化作用や眼表面の保護作用に重要な役割を果たしている。本明細書において、ムチンは、膜結合型ムチン及び分泌型ムチンのいずれであってもよい。これらのムチンの産生を促進することは、涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ(short BUTタイプドライアイ)や涙液減少タイプのドライアイの治療に有用であるとの報告がある(非特許文献1)。よって、本発明の眼科組成物は、ドライアイの予防又は治療に有用であり、中でも、short BUTタイプのドライアイや涙液減少タイプのドライアイの予防又は治療に有用であり、中でも、特に、short BUTタイプのドライアイの予防または治療に有用である。
また、裸眼時には健常眼であっても、コンタクトレンズを装用すると、眼表面のムチンが減少し、涙液層が不均一になるため、目の乾きを感じ易く、ドライアイの一因となることが知られている。よって、本発明の眼科組成物は、コンタクトレンズの装用によるかわき目又はドライアイの予防又は治療に有用である。本明細書において、「コンタクトレンズ」とは、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト等のあらゆるタイプのコンタクトレンズをいう。ソフトコンタクトレンズは、イオン性および非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズおよび非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを包含する。
また、涙液は瞬目によって眼表面に均一に塗り広げられるが、涙液層が不均一である場合には、瞬目時に眼部(結膜[眼瞼縁の結膜:lid wiper]を含む)、角膜、コンタクトレンズ(表面[装用時に外界に接する面]、裏面[装用時に眼球に接する面]およびエッジ部分を含む)の各部位間において摩擦が発生し、ゴロゴロ感や異物感、乾燥感などの不快感の原因になることが知られている。よって、本発明の眼科組成物は、眼部における摩擦の低減に有用であり、さらには、ゴロゴロ感、異物感、乾燥感などの眼部の不快感の予防又は治療に有用である。
また、膜結合型ムチン等のムチンは、眼部において上皮表面の水濡れ性維持に寄与しているものと考えられるため、本発明により眼部のムチン産生が促進されることにより、角結膜表面又はコンタクトレンズ表面における濡れ性を改善することも期待される。よって、本発明の眼科組成物は、角結膜表面又はコンタクトレンズ表面における濡れ性改善に有用である。また、本発明により、角結膜表面又はコンタクトレンズ表面における濡れ性を改善する作用を眼科組成物に付与することも可能である。
[物性]
本明細書において、眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例としては、眼科組成物の安定性を高める観点から、pHが4.0~9.0、好ましくは4.5~8.5、より好ましくは、5.0~8.0となる範囲が挙げられる。(A)パントテン酸類の安定性を高める観点から、5.0~7.0、中でも、5.0~6.5が特に好ましい。
本明細書において、眼科組成物は、さらに必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤形等により異なるが、通常0.5~5.0、より好ましくは0.6~3.0、更に好ましくは0.7~2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従って測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
本明細書において、眼科組成物の粘度は、生理学的又は薬学的に許容される範囲内であれば、配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34‘×R24)で測定した20℃における粘度が1~10000mPa・sとすることが好ましく、1~1000mPa・sとすることがより好ましく、1~100mPa・sとすることがさらに好ましく、1~10mPa・sとすることが更により好ましい。
[製剤形態]
本発明において、眼科組成物は、所望量の上記(A)パントテン酸類、必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。眼科組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。例えば、本発明の眼科組成物の製剤形態として、液剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。好ましくは液剤であり、水性眼科組成物とすることも可能である。
本明細書において、水性眼科組成物は、水を眼科組成物全体の1重量%以上含有するものをいう。水性眼科組成物は、水を眼科組成物全体の好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上含有する。水性眼科組成物に含有される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
好ましい眼科組成物として、例えば、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等を挙げることができる。かわき目などの涙液層の不安定化に起因する症状を感じた際に、すぐに適用できる観点から、特に点眼剤が好ましい。
本発明の眼科組成物を点眼剤として用いる場合、本願の効果をより顕著に奏する観点から、1滴あたりの滴下量は、通常5~60μLとすることができ、好ましくは10~50μL、より好ましくは15~45μLとすることができる。
[容器]
本発明の眼科組成物が充填される容器は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの材料を含む容器が挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート製容器が好ましい。遮光された容器に充填されてもよい。遮光容器に入れることにより、本発明の眼科組成物を長期間安定に保つことができる。容器は、例えば上記の材料に着色剤などを混ぜることにより、遮光してもよいし、あるいはシュリンクフィルム、ポリプロピレン製等のケース又は外箱などで覆うことにより、遮光してもよい。
[製造方法]
本発明の眼科組成物は、慣用の方法で調製できる。例えば、各成分を水などの担体に分散させた後、ホモジナイザーなどを用いて均一化、溶解又は乳化させ、pH調節剤によりpHを調整することにより調製すればよい。
[眼科組成物にムチン産生促進作用を付与する方法]
前述したように、本発明の眼科組成物は、(A)パントテン酸類を含有することにより、角膜上皮細胞におけるムチンの産生を促進することができる。
従って、本発明は、別の観点から、(A)パントテン酸類を眼科組成物に含有させることを含む、該眼科組成物にムチン産生促進作用を付与する方法を提供する。
また、別の実施形態において、本発明は、(A)パントテン酸類を眼科組成物に含有させることを含む、該眼科組成物に涙液安定化作用を付与する方法を提供することも可能である。
上記方法における、(A)パントテン酸類の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、眼科組成物の製剤形態及び用途等については、上記眼科組成物の説明に準ずる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例に記載の表全てに共通して、各成分の配合割合は眼科組成物全量を基準とし、単位はw/v%である。
[試験例1]角膜上皮細胞におけるムチン産生評価
6Well Plate(コーニング社)に角膜上皮細胞株HCE-T細胞を5×10cells/wellになるように播種し、37℃、5%CO、湿度90%の条件でコンフルエントになるまで培養した。培地は、DMEM/F12培地を用いた。翌日、コンフルエントになっていることを確認し、培地を吸引除去した後に、培地のみ(比較例1-1)、パンテノールを、それぞれ0.05w/v%(実施例1-1)、0.1w/v%(実施例1-2)となるように添加した培地を、各ウェルに2mLずつ添加した(n=4)。37℃、5%CO、湿度90%の条件で7時間反応させた後、QIAshredder &RNase Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて細胞内よりRNAを抽出し、SuperScriptII(Life technologies社製) を使用してcDNAに逆転写した後、qPCR(ABI QuantStudio Real time PCR (Thermo Fisher製))にてqPCRを行い、リアルタイムPCR法における立ち上がりサイクル数(Ct)値を計測した。
比較例1-1に対する試験液処理における、MUC16遺伝子の相対的遺伝子の発現比を以下の式1にて算出した。
[式1]
発現率(%)=〔2-{(試験液処理による遺伝子のCt値)-(試験液処理による18s×rRNAのCt値)}/2-{(比較例1-1処理による遺伝子のCt値)-(比較例1-1処理による18srRNAのCt値)}〕×100
Figure 0007044467000001
表1及び図1に示すとおり、(A)パントテン酸類であるパンテノールの配合により、MUC16遺伝子の発現が増大することが確認された。上記の結果は、パンテノールの配合によってムチン(特に膜結合型ムチン)の産生が増加し、涙液層の安定化に対して本発明の眼科組成物が有効であることを示している。
[製剤例]
下記表2、3に記載の製剤例を調製した。製剤例1~4、6~16、18~24は点眼剤で、製剤例5、17は、コンタクトレンズ用点眼剤である。精製水は各液剤の全量が100mLとなるよう加えられた。
Figure 0007044467000002
Figure 0007044467000003

Claims (5)

  1. (A)パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上のパントテン酸類を有効成分として含有し、該(A)パントテン酸類の含有量が、0.001~0.1w/v%である、膜結合型ムチン産生促進用眼科組成物(但し、パンテノールとレチノールパルミチン酸エステル、酢酸レチノール及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、ソフトコンタクトレンズ装着時の眼の乾燥感改善用眼科組成物を除く)。
  2. (A)パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上のパントテン酸類を有効成分として含有し、該(A)パントテン酸類の含有量が、0.001~0.1w/v%である、ムチンが減少又は欠如する状態、又は、涙液が不安定化する状態に対して用いられるための眼科組成物(但し、パンテノールとレチノールパルミチン酸エステル、酢酸レチノール及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、ソフトコンタクトレンズ装着時の眼の乾燥感改善用眼科組成物を除く)。
  3. (A)パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上のパントテン酸類を有効成分として含有し、該(A)パントテン酸類の含有量が、0.001~0.1w/v%である、涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ(short BUTタイプドライアイ)、又は、涙液分泌減少タイプのドライアイに起因する症状の予防又は治療用の眼科組成物(但し、パンテノールとレチノールパルミチン酸エステル、酢酸レチノール及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、ソフトコンタクトレンズ装着時の眼の乾燥感改善用眼科組成物を除く)。
  4. 前記(A)パントテン酸類の含有量が、0.01~0.1w/v%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼科組成物。
  5. (A)パンテノール、パントテン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上のパントテン酸類を眼科組成物に含有させること、及び、
    該(A)パントテン酸類の含有量を、0.001~0.1w/v%とすることを含む、該眼科組成物に膜結合型ムチン産生促進作用を付与する方法(但し、該眼科組成物が、パンテノールと、レチノールパルミチン酸エステル、酢酸レチノール及びレチノールからなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、ソフトコンタクトレンズ装着時の眼の乾燥感改善用眼科組成物である場合を除く)。
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