JP2022027827A - 保冷容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワインや日本酒のボトルなどを収容可能な保冷容器であって、機械物性に優れた保冷容器を提供すること。【解決手段】発明は、熱可塑性樹脂組成物を主成分とする軟質層を含むシートを袋状に成形してなる保冷容器に関し、貯蔵弾性率に温度依存性がある熱可塑性樹脂組成物を主成分とする軟質層と、前記軟質層を覆う、オレフィン系重合体を含む表面層と、を含むシートを袋状に成形してなり、低温状態において自立可能であり、且つ、高温状態において折り畳み可能となる保冷容器である。【選択図】図1

Description

本発明は、保冷容器に関する。
ワインや日本酒などの冷やすことで味わいがよくなる飲食物は、冷蔵庫などで冷却および保存される。一方で、冷却されたワインなどを持ち運ぶ際や、ワインをパーティー会場で贈答する際などには、ワインが冷却された状態を保つため、氷を詰めた袋状の保冷容器にワインボトルを入れて、ワインを保冷することがある。
保冷容器の材料としては、特許文献1に記載のような紙が用いられることがある。一方で、特許文献2には、防水性、ならびに引裂強度および耐衝撃強度などの機械物性に優れる、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂)、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの樹脂シートを袋状に成形して保冷容器としている。
特開2003-072736号公報 特開2016-003024号公報
特許文献2に記載のような、樹脂シートを成形してなる保冷容器は、特許文献1に記載の紙製の保冷容器よりも耐水性および機械物性などに優れる。しかし、ワインボトルなどを収容する保冷容器とするためには、ワインボトルを出し入れする際に必要となる樹脂シートの柔軟性を確保するために樹脂シートの厚みを小さくする必要があるが、一方でワインボトルを収容したときに破損しにくくするために引裂強度および耐衝撃強度などの樹脂シートの機械物性を高めようとすると、樹脂シートの厚みを大きくする必要がある。また、保冷容器の機械物性を高めるために樹脂シートの厚みを大きくすると、パーティー会場で贈答などされたワインボトルをテーブル上などに一時保管する際に、ワインボトルが入った保冷容器を見栄えよくテーブル上に立たせることが困難となる。
上記の課題に鑑み、本発明は、ワインボトルなどを収容可能な保冷容器であって、機械物性に優れた保冷容器を提供することを、その目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の保冷容器に関する。
[1]4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を主成分とする軟質層を含むシートを、袋状に成形してなり、前記熱可塑性樹脂組成物が、以下の(I)~(II)および(IV)を満たす、保冷容器。
(I)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)が、5×10Pa以上である
(II)エルメンドルフ引裂強度が、5N/mm以上である
(IV)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)と40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)との比率(G’@10℃/G’@40℃)が、20以上である
[2]前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに(III)を満たす、[1]に記載の保冷容器。
(III)膜厚100μmのフィルムに成形して、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を300mm/minの速度で押し込んだときの、針がフィルムを貫通するまでの最大応力は、4N以上である
[3]4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(A-i)および
4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(A-ii)を含み、
任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(A-iii)を含んでもよい
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体であって、
構成単位(A-i)、(A-ii)および(A-iii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(A-i)を55モル%以上85モル%以下、
構成単位(A-ii)を15モル%以上45モル%以下、
構成単位(A-iii)を0モル%以上10モル%以下含む、
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)である、
[1]または[2]に記載の保冷容器。
[4]前記熱可塑性樹脂組成物は、
60質量%以上90質量%以下の含有量の前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、
10質量%以上40質量%以下の含有量のオレフィン系重合体(ただし4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を除く)(B)と、
を含有する組成物である、[3]に記載の保冷容器。
[5]前記オレフィン系重合体(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)である、[4]に記載の保冷容器。
[6]前記軟質層の厚みは、30~1000μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の保冷容器。
[7]前記熱可塑性樹脂組成物を含む軟質層を中間層に有し、オレフィン系重合体(ただし4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を除く)(B)を含む表面層をさらに有することを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の保冷容器。
[8]前記表面層は、前記軟質層の両面に配置された、[7]に記載の保冷容器。
本発明によれば、ワインボトルや日本酒ボトルなどを収容可能な保冷容器であって、機械物性に優れた保冷容器が提供される。
図1A、図1Bおよび図1Cは、本発明の一実施形態に係る保冷容器の代表的な構成を示す斜視図である。
本発明の一実施形態に係る保冷容器は、熱可塑性樹脂組成物を主成分とする軟質層を含むシートを袋状に成形してなる、保冷容器である。図1に示すように、上記保冷容器は、筒状の形状を有し、冷却して運搬または保管する収容物、たとえばワインボトルなどを収容できる空間を内部に有する。
上記保冷容器は、たとえば、1枚または複数の上記シートの端部を接合して成形される。このとき、上記保冷容器は、端部の一部を接合せずに設けられた開口部、または袋状に成形した後に上記シートの一部を切断等して設けられた開口部を有し、上記開口部から収容物を出し入れ可能とする。
図1Aに示すように、上記保冷容器は、開口部の内部または表側などに接合または接着された、または開口部の上方に一体成形された、持ち手を有してもよい。また、図1Bに示すように、開口部より下部において指が入る大きさの一対の窓部を設けて、持ち手としてもよい。窓部は、円形または楕円形など、任意の形状を有する。
また、図1Cに示すように、上記保冷容器は、開口部より下部において保冷容器の外周方向に断続的に接合または接着された紐を有してもよい。また、上記保冷容器は、開口部より下部において周囲に断続的に小孔を設け、当該小孔から保冷容器の表裏を入れ違いに通して保冷容器の外周方向に取り囲む紐を有してもよい。このとき、上記紐を締めることで、上記保冷容器の開口部を閉じることが可能である。
上記紐および持ち手の材料は特に限定されず、繊維状の木綿、麻、絹、紙、ならびにポリプロピレンおよびナイロンなどの合成樹脂、ならびにこれらを撚り合わせたものとすることができる。また、上記紐および持ち手は、上記軟質層の主成分である熱可塑性樹脂組成物と同一の組成物からなるものであってもよい。
上記シートは、上記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる軟質層のみの単層のシートであってもよいし、上記軟質層以外の層を含む積層体であってもよい。積層体であるとき、上記シートは、上記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる軟質層を中間層とし、中間層の両面にオレフィン系重合体を有する表面層を有する積層体であることが好ましい。
1.軟質層
上記軟質層は、以下の要件を有する熱可塑性樹脂組成物を主成分とすることが好ましい。これにより、上記保冷容器は、冷却したワインボトルおよび氷などを収容して容器そのものが冷却され、たとえば5℃~10℃程度になると、硬化して、テーブルなどに安定して立たせることができる。一方で、上記保冷容器は、保冷状態から開放されて、30℃~40℃程度になると、より柔軟になり、ワインボトルなどの出し入れが容易となり、更に、折り畳み可能なため使用後に省スペースで収納できる。なお、主成分とするとは、実質的に上記熱可塑性樹脂組成物のみからなるが、上記熱可塑性樹脂組成物による以下の特性が十分に発現され、冷却時に十分に硬化しかつ保冷状態からの開放時に十分に軟化するかぎりにおいて、他の成分を含んでもよいことを意味する。なお、折り畳み可能とは、30~40℃程度の温度になる時は、折り曲げや丸めることが可能であるが、折り曲げ、丸めた後でも、元の形状に伸ばして戻した後に冷却すれば、そのまま自立可能となることを意味する。これにより、折り畳んで(折り曲げて)収納可能な状態と、ワインボトル等を収容して自立可能な状態と、繰り返しの使用を可能とする。
なお、折り畳み可能とは、加温時にはシート状である軟質層を折り曲げ可能であるが、折り曲げた後でも、元の形状に戻して冷却すれば、元の形状のまま自立可能となることを意味する。これにより、軟質層は、折り畳んで(折り曲げて)収納可能な状態と、ワインボトルなどを収容して自立可能な状態と、を繰り返し状態変化可能とし、繰り返しの使用を可能とする。
軟質層の厚みは、特に規定されないが好ましくは30~1000μm、さらに好ましくは80~600μm、特に好ましくは150~400μmである。軟質層の厚みが30μm以下である場合は、フィルムが薄すぎるため貫通性などが悪くなり、また氷水につけた際も自立しなくなる。また軟質層の厚みが1000μm以上である場合は、バックが重くなってしまい、折り畳み性が悪くなる可能性がある。
要件(I):
10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)が、5×10Pa以上である。
上記特性を有する熱可塑性樹脂組成物は、冷却され、たとえば5℃~10℃程度になったときに、十分に硬化する。そのため、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)が5×10Pa以上である熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器の軟質層としたときに、保冷容器を冷却時に十分に硬化させて、テーブルなどに安定して立たせることができる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のG’@10℃は8×10Pa以上であることが好ましく、1×10Pa以上であることがより好ましい。上記10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)に特に上限はないが、1×1010Pa以下であることが好ましい。
貯蔵弾性率は、45mm×10mm×3mmの短冊片を測定試料として用い、粘弾性測定装置(たとえば、ANTONPaar社製MCR301)を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定して求めることができる。
要件(II):
ASTM D 412に準拠して測定される引裂強度が、5N/mm以上である。
上記特性を有する熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器としたときに、保冷容器中にワインボトルなどの比較的重い収容物が収容されて保冷容器に内部からの応力が印加されても裂けにくい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記引裂強度は20N/mm以上であることが好ましく、24N/mm以上であることがより好ましい。
要件(III):
膜厚100μmのフィルムに成形して、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を300mm/minの速度で押し込んだときの、針がフィルムを貫通するまでの最大応力は、4N以上である。
上記特性を有する熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器としたときに、針などの突状物を貫通させにくく、穴が空くことによる内部の液体などの漏洩が生じにくい。上記観点からは、針がフィルムを貫通するまでの最大応力は、5N以上であることが好ましく、6N以上であることがより好ましい。
要件(IV):
10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)が、5×10Pa以上である。
上記特性を有する熱可塑性樹脂組成物は、加温され、たとえば30℃~40℃程度になったときに、十分に軟化する。そのため、40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)が5×10Pa以上である熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器の軟質層としたときに、保冷容器を加温時に十分に軟化させて、折り畳み可能とすることができる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のG’@40℃は8×10Pa以上であることが好ましく、1×10Pa以上であることがより好ましい。上記40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)に特に上限はないが、1×10Pa以下であることが好ましい。
要件(V):
10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)と40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)との比率(G’@10℃/G’@40℃)が、20以上である。
上記特性を有する熱可塑性樹脂組成物は、冷却時と、常温または加温時と、でその弾性率が異なる。保冷容器としたときに、冷却時には保冷容器を十分に硬化させてテーブルなどに安定して立たせることができる一方で、常温または30℃~40℃に加温したときには軟化してワインボトルなどの出し入れを容易にすることができる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記貯蔵弾性率の比率(G’@10℃/G’@40℃)は20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。上記貯蔵弾性率の比率(G’@10℃/G’@40℃)に特に上限はないが、200以下であることが好ましく、150以下であることが沢に好ましい。
要件(VI):
10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、20℃以上45℃以下である。
上記tanδがピーク値となる温度が20℃以上45℃以下である熱可塑性樹脂組成物は、冷却時と比較して、常温または加温したときにより柔軟となる。そのため、tanδがピーク値となる温度が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器としたときに、冷却時には保冷容器を十分に硬化させつつ、常温または30℃~40℃に加温したときには軟化してワインボトルなどの出し入れを容易にすることができる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度は25℃以上45℃以下であることが好ましく、28℃以上40℃以下であることがより好ましく、28℃以上38℃以下であることがさらに好ましい。
要件(VII):
10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、0.5以上5.0以下である。
上記tanδのピーク値が5.0以下である熱可塑性樹脂組成物は、加温しての使用時に、より軟化しやすい。また、上記tanδのピーク値が5.0以下である熱可塑性樹脂組成物の成形体を含む粘弾性体は、形状追従性が高いため、開口部などを任意の形状に変形させやすく、冷却容器の娯楽性を高めることができる。一方で、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力吸収性が高いため、保冷容器としたときに、たとえば加温時などでも、容器として使用できない程度にまでは変形しにくい。また、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力吸収性が高いため、保冷容器としたときに、使用中の落下などによって破損しにくい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδのピーク値は0.7以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上5.0以下であることがより好ましく、2.0以上4.0以下であることがさらに好ましい。
tanδは、上記貯蔵弾性率の測定時に得られる貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’:損失正接)から算出することができる。このとき、0~50℃の範囲でtanδがピーク値(最大値)となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とし、その際のtanδの値を上記tanδのピーク値とする。なお、上記ピークは、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度に起因すると考えられる。
要件(VIII):
23℃において、JIS K7161で測定される引張弾性率またはJIS K7171で測定される曲げ弾性率が10MPa以上900MPa以下である。
上記引張弾性率または曲げ弾性率が10MPa以上である熱可塑性樹脂組成物は、保冷容器としたときに、内部の収容物からの応力による破断が生じにくい。また、上記引張弾性率または曲げ弾性率が900MPa以下である熱可塑性樹脂組成物は、適度に軟いため、保冷容器としたときに、開口部などを変形しやすい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記引張弾性率または曲げ弾性率は10以上600以下であることが好ましく、30以上500以下であることがより好ましい。
要件(IX):
ASTM D 1505に準拠して測定される密度が、830kg/m以上950kg/m以下である。
密度が830kg/m以上である熱可塑性樹脂組成物は、強度および衝撃吸収性が高く、保冷容器としたときに、使用中の落下などによる保冷容器の破損を抑制できる。密度が950kg/m以下である熱可塑性樹脂組成物は、軽量であり、保冷容器としたときに、保冷容器の持ち運びや取扱いを容易にする。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の密度は840kg/m以上950kg/m以下であることが好ましく、850kg/m以上945kg/m以下であることがより好ましい。
要件(X):
融点(Tm)が、50℃以上165℃以下、または観測されない。
融点(Tm)が50℃以上165℃以下、または観測されない熱可塑性樹脂組成物は、成形が容易である。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)は70℃以上145℃以下であることが好ましく、80℃以上130℃以下であることがより好ましい。
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)(たとえば、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C)を用いて測定することができる。このとき、7~12mg程度の熱可塑性樹脂組成物をアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱し、完全融解させるために試料を200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間静置した後、10℃/分で200℃まで再度加熱する。この再度の(2度目の)加熱で測定されるピーク値温度を、融点(Tm)とする。
上記熱可塑性樹脂組成物は、その柔軟性、衝撃吸収性、および衝撃緩和性などが高いため、保冷容器の衝撃吸収性を高めて破損しにくくしやすいことから、発泡体であってもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物は、上述した物性を満たすものであれば限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、オレフィン系重合体(B)と、を含有する組成物とすることができる。また、上記熱可塑性樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)に加えて、または4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)およびオレフィン系重合体(B)に加えて、その他の熱可塑性樹脂またはエラストマーをさらに含有する組成物とすることができる。
上記熱可塑性樹脂組成物は、その全質量に対して50質量%以上100質量%以下の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有することが好ましい。このような組成比の上記熱可塑性樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が有する後述の特性が十分に発現されて、熱可塑性樹脂組成物の衝撃吸収性および柔軟性などがより高まるため、保冷容器の衝撃吸収性を高めて破損しにくくしつつ、開口部などを変形しやすい。上記観点からは、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物の全質量に対して、60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、65質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。
1-1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)
1-1-1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の構成
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、任意に、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(i)を55モル%以上85モル%以下、構成単位(ii)を15モル%以上45モル%以下、構成単位(iii)を0モル%以上10モル%以下含む。
なお、構成単位(i)の割合の下限値は、55モル%であるが、60モル%であることが好ましく、68モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の上限値は、85モル%であるが、84モル%であることが好ましく、80モル%であることがより好ましい。
当然ながら、このとき、構成単位(ii)の割合の上限値は、45モル%であるが、40モル%であることが好ましく、32モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、15モル%であるが、16モル%であることが好ましく、20モル%であることがより好ましい。
構成単位(ii)を導くα-オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどを含む炭素原子数2~20(好ましくは炭素原子数2~15、より好ましくは炭素原子数2~10)の直鎖状のα-オレフィン、ならびに、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、および3-エチル-1-ヘキセンなどを含む炭素原子数5~20(好ましくは炭素原子数5~15)の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。構成単位(ii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
構成単位(iii)を導く非共役ポリエンの例には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、および4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどを含む鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、およびノルボルナジエンなどを含む環状非共役ジエン、ならびに、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、および4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエンなどを含むトリエンなどが含まれる。これらのうち、特に構成単位(ii)を導くα-オレフィンがプロピレンであるときは、架橋効率を高める観点からは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が好ましい。構成単位(iii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
ただし、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、実質的に構成単位(i)および構成単位(ii)からなることが好ましい。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、以下の要件(a)、(b)および(c)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
要件(a)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、0.1dL/g以上5.0dL/g以下であることが好ましく、0.5dL/g以上4.0dL/g以下であることがより好ましく、0.5dL/g以上3.5dL/g以下であることがさらに好ましい。上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物としたときにシート状の軟質層への成形が容易である。また、上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、特に発泡体としたときの機械強度、衝撃吸収性および柔軟性などが高いため、保冷容器の衝撃吸収性を高めて破損しにくくしつつ、保冷容器の開口部などを変形しやすい。
上記極限粘度[η]は、135℃でデカリン中に異なる量の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を溶解させたときの、それぞれの4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の単位濃度cあたりの粘度増加率ηspを求めて還元粘度ηradとし、ηradを4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の単位濃度cがゼロになるように外挿して、求めることができる。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に水素を添加して分子量や重合活性を制御して、上記範囲に調整することができる。
要件(b)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、1.0以上3.5であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、低分子量、低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくく、上記熱可塑性樹脂組成物としたときにシート状の軟質層への成形が容易である。また、上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、機械強度、衝撃吸収性および耐摩耗性が高いため、保冷容器の衝撃吸収性を高めて破損しにくくしつつ、成形時のべたつきを生じにくくして保冷容器の手触りを良好にすることができる。
また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、500以上10,000,000以上であることが好ましく、1,000以上5,000,000以下であることがより好ましく、1,000以上2,500,000以下であることがさらに好ましい。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)のMw/MnおよびMwは、たとえばメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
要件(c)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、1.0以上3.5以下であることが好ましく、1.3dL/g以上3.5dL/g以下であることがより好ましく、2.0dL/g以上3.5dL/g以下であることがさらに好ましい。tanδのピーク値が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、特に発泡体としたときの衝撃吸収性および耐衝撃性などが高いため、保冷容器を破損しにくくすることができる。
なお、保冷容器の常温での衝撃吸収性を高める観点からは、上記tanδがピーク値となる温度は5℃以上40℃以下であることが好ましい。好ましくは上記tanδがピーク値となる温度は10℃以上40℃以下、さらに好ましくは上記tanδがピーク値となる温度は20℃以上40℃以下である。tanδピーク温度が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、ピーク温度の前後で保冷容器の硬さを大きく変化させて、冷却時には保冷容器を十分に硬化させてテーブルなどに安定して立たせることができる一方で、常温または30℃~40℃に加温したときには軟化してワインボトルなどの出し入れを容易にすることができる。
また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、以下の要件(d)、(e)および(f)から選ばれる1以上の要件をさらに満たすことが好ましい。
要件(d)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、13C-NMRにより測定した共重合モノマーの連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値は、0.9以上1.5以下であることが好ましく、0.9以上1.3であることがより好ましく、0.9以上1.2以下であることがさらに好ましい。パラメータB値が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、重合体中の組成分布が少なく、柔軟性、衝撃吸収性、および衝撃緩和性などが高いため、保冷容器の衝撃吸収性を高めて破損しにくくすることができる。
要件(e)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、ASTM D 1505に準拠して測定される密度は、810kg/m以上850kg/m以下であることが好ましく、820kg/m以上850kg/m以下であることがより好ましく、830kg/m以上850kg/m以下であることがさらに好ましい。上記密度が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、軽量であり、かつ、衝撃吸収性が高いため、保冷容器をより破損しにくくすることができる。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の上記密度は、構成単位(i)~構成単位(iii)の組成比によって適宜調整することができる。
要件(f)
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、融点(Tm)は、110℃未満であるかまたは認められないことが好ましく、100℃未満であるかまたは認められないことがより好ましく、85℃未満であるかまたは認められないことがさらに好ましい。融点(Tm)が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、柔軟性および靭性が高く、保冷容器の開口部などを変形させやすくすることができる。
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)(たとえば、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C)を用いて測定することができる。このとき、7~12mg程度の熱可塑性樹脂組成物をアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱し、完全融解させるために試料を200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間静置した後、10℃/分で200℃まで再度加熱する。この再度の(2度目の)加熱で測定されるピーク値温度を、融点(Tm)とする。
1-1-2.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーを、マグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適当な触媒の存在下で重合させて,製造することができる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
また、液相重合法では、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマー自身を溶媒とする塊状重合とすることもできる。
なお、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの共重合を段階的に行うことにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する構成単位(i)~構成単位(iii)の組成分布を適当に制御することもできる。
重合温度は、-50℃以上200℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましい。
重合圧力は、常圧以上10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧以上5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
重合の際に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよい。添加される水素の量は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの合計量1kgに対して、0.001NL以上100NL以下程度が適当である。
1-2.オレフィン系重合体(B)
オレフィン系重合体(B)は、熱可塑性樹脂組成物の各種物性および成形性を調整するために添加される材料であり、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)以外のオレフィン系重合体であればよい。
オレフィン系重合体(B)の例には、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンの単独重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、ならびに、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体などが含まれる。これらのうち、オレフィン系重合体(B)は、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、およびエチレンと酢酸ビニルをコモノマーとするエチレン系共重合体が好ましい。
これらのうち、熱可塑性樹脂組成物、特にはその発泡体、の衝撃吸収性および機械強度などを大きく低下させることなく、べたつきを抑えて成形性や取り扱い性をより高めることができることから、オレフィン系重合体(B)は、エチレンから導かれる構成単位を50モル%以上100モル%以下含むエチレン系重合体(B’)であることが好ましい。混練性を高めて製造をより容易にする観点からは、エチレン系重合体(B’)の、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10min以上30.0g/10min以下であることが好ましく、0.5g/10min以上20.0g/10min以下であることがより好ましい。
特に、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が含む構成単位(ii)がプロピレンから導かれる構成単位であるときに、オレフィン系重合体(B)はエチレン系重合体(B’)であることが好ましい。エチレン系重合体(B’)は、このような4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)との相溶性が高い。そのため、エチレン系重合体(B’)が熱可塑性樹脂組成物中に適度に分散して、エチレン系重合体(B’)による衝撃吸収性などの低下が生じにくい。
なお、エチレン系重合体(B’)は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。上記炭素数3~20のα-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、および12-エチル-1-テトラデセンなどが含まれる。上記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。エチレン系重合体(B’)が4-メチル-1-ペンテンを含む共重合体であるとき、熱可塑性樹脂組成物中の含有量がより多い成分を4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)、より少ない成分をエチレン系重合体(B’)とすればよい。
これらのうち、臭気が発生しにくく、また引張強度および耐衝撃性などが高いことから、エチレン系重合体(B’)は直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンであることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンは、エチレンホモポリマーであってもよく、プロピレンおよび1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィンをコモノマーとして少量含むコポリマーであってもよい。高密度ポリエチレンの密度は890kg/m以上960kg/m以下であることが好ましく、900kg/m以上950kg/m以下であることがより好ましく、904kg/m以上940kg/m以下であることがさらに好ましい。
上記プロピレン系重合体の例には、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、およびこれらの混合物などが含まれる。上記炭素数4~20のα-オレフィンの例には、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、および12-エチル-1-テトラデセンなどが含まれる。これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記共重合体であるプロピレン系重合体は、上記エチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位を、少量(プロピレン系重合体中10モル%未満)のみ含むことが好ましい。
1-3.その他の成分
熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、上述した以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。
たとえば、熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、分解温度調整剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、金属害防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、および軟化剤等の添加剤を含んでもよい。
上記架橋剤の例には、加熱により分解して熱可塑性樹脂を発泡させる有機過酸化物が含まれる。上記有機過酸化物の例には、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、および1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどが含まれる。
上記有機過酸化物の含有量は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。有機過酸化物の含有量が上記範囲内であると、上記熱可塑性樹脂組成物の架橋が進行しやすく、また、上記熱可塑性樹脂組成物を発泡して得られる発泡体中に残存する有機過酸化物の分解残渣の量を抑制することができる。
上記架橋助剤の例には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、およびトリアリルイソシアヌレートおよびの1分子中に3個の官能基を持つ化合物、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼンおよびネオペンチルグリコールジメタクリレート、などの1分子中に2個の官能基を持つ化合物、ならびに、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどの1分子中に1個の官能基を持つ化合物が含まれる。
上記発泡剤の例には、熱分解型発泡剤が含まれる。熱分解型発泡剤は、熱可塑性樹脂組成物を製造する際の混練温度より高い分解温度を有する化合物であればよく、例えば、分解温度が160℃以上270℃以下の有機系発泡剤および無機系発泡剤とすることができる。
上記有機系発泡剤の例には、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウムなどを含むアゾジカルボン酸金属塩、アゾビスイソブチロニトリルなどを含むアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどを含むニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびトルエンスルホニルヒドラジドなどを含むヒドラジン誘導体、ならびにトルエンスルホニルセミカルバジドなどを含むセミカルバジド化合物などが含まれる。
上記無機系発泡剤の例には、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、および無水クエン酸モノソーダなどが含まれる。
上記熱分解型発泡剤は、微細な気泡を得られ、かつ、安価であり安全性も高いことから、アゾ化合物およびニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、およびN,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドがさらに好ましい。
上記熱分解型発泡剤の含有量は、発泡後の熱可塑性位樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が上記範囲内であると、上記熱可塑性樹脂組成物を十分に発泡させることができ、また、発泡により生じた気泡の破裂も生じにくい。
上記軟化剤の例には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質、コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油、トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物、ならびに液状チオコールなどを含む公知の軟化剤が含まれる。
前記充填剤の例には、マイカ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウムなどの粉末充填剤;ガラス繊維や金属繊維などを含む繊維状充填剤、親水性の層状粘土鉱物、および公知の特定形状(層状を除く)の親水性無機化合物などが含まれる。
上記親水性の層状粘土鉱物の例には、2次元に広がる層が複数積層されたフィロ珪酸塩鉱物、たとえば、スメクタイトなどが含まれる。スメクタイトは、モンモリロン石群鉱物である。スメクタイトの例には、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどが含まれる。
上記親水性の層状粘土鉱物の例には、バーミキュル石(バーミキュライト)、ハロイサイト、膨潤性マイカ、および黒鉛などが含まれる。このような親水性の層状粘土鉱物の市販品の例には、クニミネ工業社製クニピアシリーズ(モンモリロナイト)、ホージュン社製ベンゲルシリーズ(ベントナイト)、およびコープケミカル社製ソマシフMEシリーズ(膨潤性マイカ)などを含む天然品、ならびに、クニミネ工業社製スメクトン(サポナイト)、コープケミカル社製ルーセンタイトSWNシリーズ(ヘクトライト)、およびロックウッドホールディングス社製ラポナイト(ヘクトライト)などの合成品などが含まれる。一般に、合成品は天然品よりも最大長さが小さいため小さい油滴を得ることができるため、上記親水性の層状粘土鉱物は、合成品が好ましい。
前記難燃剤の例には、アンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、グァニジン系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等の無機化合物、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。
これら軟化剤、充填剤、難燃化剤等、粘着付与剤以外の添加剤の使用量の合計は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、上記熱可塑性樹脂およびゴムから選択される材料(B)と、の合計を100質量部として、0.001~50質量部とすることが好ましい。
1-4.熱可塑性樹脂組成物の製造方法
上記熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。たとえば、上述した4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、上記オレフィン系重合体(B)と、任意に含まれる上記その他の成分と、を混合して、熱可塑性樹脂組成物とすることができる。このとき、上記各樹脂の溶融温度以上に加熱して混合してもよい。
1-5.軟質層の製造方法
上記熱可塑性樹脂組成物は、押出成形、カレンダー成形、インフレ成形などを含む公知の方法でシート状に成形して、上記軟質層とすることができる。
2.その他の層
上記シートは、上記軟質層以外に、液体または気体などの透過性を低下させるためのガスバリア層、および保冷容器の形状を維持して収容物を保護するための保護層、印刷等を施す意匠層、表面層などを有する積層体であることが好ましい。
上記ガスバリア層は、上記保冷容器の内部から外部への液体の透過を抑制して保冷容器の液漏れを抑制し、かつ、上記保冷容器の外部から内部への液体の透過を抑制して収容物の意図せぬ劣化を抑制できる材料から形成される層であればよい。上記ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタラートおよびポリアクリロニトリルなどから形成することができる。
上記保護層は、成形が容易であり、上記保冷容器の形状を保てる強度を有し、かつ、上記保冷容器の収容物との反応性が低い材料から形成される層であればよい。上記保護層は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどから形成することができる。
なお、上記軟質層、ガスバリア層および保護層は、それぞれ複数設けられてもよい。また、これらの層の間には、変性ポリエチレンなどの熱融着性を有する樹脂からなる接着層が設けられていてもよい。なお、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、上記材料から形成されるガスバリア層との接着性が高い。このように各層が互いに十分な接着性を有するときは、上記接着層は設けられなくてもよい。
特に、上記保護層は、複数設けられ、上記軟質層(および任意に設けられる上記ガスバリア層)を挟むように配置されることが好ましい。つまり、上記保護層、上記軟質層、上記ガスバリア層および上記保護層が、この順に積層されることが好ましい。なお、これらの層の配置順は特に限定されず、上記軟質層は上記ガスバリア層よりも上記保冷容器の外側に配置されてもよいし、内側に配置されてもよい。
上記ガスバリア層および上記保護層の厚みは、上記各層の機能が発現され、かつ、上記積層体における上記軟質層の厚みが、積層体全体の厚みに対して5%以上となる範囲で、任意に定めることができる。
上記意匠層は、ナイロンおよびポリエチレンテレフタラートなどを含む樹脂性のフィルム、ならびに紙などに、色彩を設けた層である。上記意匠層は、上記積層体の最外層に接着または接合させて、保冷容器の意匠性を高めることができる。
上記表面層は、オレフィン系重合体などを含む樹脂性の層とすることができる。上記オレフィン系重合体としては、熱可塑性樹脂組成物について上述したオレフィン系重合体(B)を用いることができ、これらのうち、軟質層のブロッキングによる加工性の低下、融着をより容易にする観点から、上記表面層は、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、およびエチレンと酢酸ビニルをコモノマーとするエチレン系共重合体(EVA)、エチレン―メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンーエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンーメタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、及びこれらの混合物などが好ましい。融着方法は、例えば熱融着、高周波ウェルダー融着、マイクロ波融着などから選択することができる。なお、表面層に色彩を設けて、表面層と意匠層とを同一の層にしてもよい。
保冷容器を折り畳んだ時に、接触した表面層同志を粘着しにくくする観点から、表面層は軟質層の両面に配置されることが好ましい。また、表面層の厚みは特に限定されないが、5~250μm、好ましくは10~200μm、さらに好ましくは10~150μmである。尚、軟質層の厚みが30μm以上であれば、保冷容器を折り畳み後に再度自立可能な状態にし易くすることができる。軟質層の厚みが1000μm以下にすれば、積層体の重量の観点や、表面層が厚くなることによる折り畳み性の観点から好ましい。
上記積層体は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなる軟質層と、上述した材料をシート状に成形して形成されるその他の層とを積層させて、製造することができる。これらのうち、上記積層体は、上記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる軟質層を中間層とし、中間層の両面にオレフィン系重合体を有する表面層を有する積層体であることが好ましい。積層方法には多層シート成形機を用いての多層シートの成形、および多層ダイスを有する押出し機を用いてのチューブ状の積層体の直接成形などが含まれるが、特に限定されず、それぞれ成形した上記各層を上述した接着剤層を用いて積層させてもよいし、材料の種類によっては熱融着または超音波融着などによって積層させてもよい。
積層体における軟質層とその他の層の厚みの比率は特に規定されないが、軟質層/その他の層=60/40VOL%~100/0VOL%、好ましくは70/30VOL%~98/2VOL%、さらに好ましくは80/20VOL%~90/10VOL%である。
3.保冷容器
上記シートは、公知の方法で袋状に成形して、上記保冷容器とすることができる。
このとき、上記シートの端部同士を接着剤、熱融着または高周波ウェルダー融着、超音波融着、マイクロ波融着などによって接合させて、開口部を有する筒状に成形すればよい。たとえば、2枚の上記シートを重ねて、その端部同士を接合させてもよいし、1枚のシートを折り曲げて、その端部同士を接合させてもよい。保冷容器の底面の形状を有するシートをさらに接合させて、底面部としてもよい。
なお、保冷容器の形状は特に限定されず、ワインボトルなどの収容物が収容できる形状であればよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各種物性は以下の方法により測定した。
〔組成〕
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A)中の各構成単位(4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィン)の含有率(モル%)は、13C-NMRにより測定した。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
約20mgの特定4MP1系共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求める(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
-条件-
測定装置:GPC(ALC/GPC 150-C plus型、示唆屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6-HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6-HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m)を軽量性の指標とした。
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。約5mgの重合体を、測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱する。重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却する。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~40℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、その際の損失正接(tanδ)の値、温度が10℃のときのc貯蔵弾性率(G’@10℃)および温度が40℃のときのc貯蔵弾性率(G’@40℃)を測定した。
〔引き裂き強度〕
引き裂き強度の測定では、実施例で得られたシートを、75mm×63mmの長方形状に切断したものを試験片として用いた。JIS K7128-2(1998)に準拠し、(株)東洋精機製作所SA-WPを用い、測定温度23℃の条件で、試験片のエルメンドルフ引裂強さ(単位:N/cm)を測定した。この測定は、シートのMD方向で実施した。
次に、実施例および比較例において用いた4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(α-オレフィンとしてプロピレンを使用)の調製例を以下に示す。
〔調製例1〕
<4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の調製>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体(A-1)を得た。得られた共重合体(A-1)の各種物性の測定結果を表1に示す。
共重合体(A-1)中の4-メチル-1-ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A-1の密度は839kg/mであった。共重合体A-1の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。融点(Tm)は観測されなかった。
Figure 2022027827000002
<実施例1>
4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体(A-1)100質量部をリップ幅200mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機((株)テクノベル製)を用いて成形して、実施例1のシートを得た。シートの層構成は軟質層400μmの厚みであった。得られたシートの物性を表1に示す。また得られたシートを熱融着して袋状に作製し、氷水(水温;約8℃)を入れたところ自立し、ワインボトルを傾けて入れても倒れることはなかった。
<実施例2>
4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体(A-1)80質量部と直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製 エボリューSP2520)20質量部、アンチブロッキング材としてシリカを0.4質量部用い、300mmφの円筒ダイスを設置した40mmφのインフレ成形機((株)テクノベル製)を用いて成形して、実施例2のシートを得た。シートの層構成は軟質層400μmの厚みであった。得られたシートの物性を表1に示す。また得られたシートを熱融着して袋状に作製し、氷水(水温;約8℃)を入れたところ自立し、ワインボトルを傾けて入れても倒れることはなかった。
<実施例3>
軟質層に4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体(A-1)80質量部と直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製 エボリューSP2520)20質量部、アンチブロッキング材としてシリカを0.4質量部用い、表面層として直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製 エボリューSP2520)を用い、200mmφの多層円筒ダイスを設置した30mmφのインフレ成形機((株)テクノベル製)を用いて成形して、実施例3の2種3層シートを得た。シートの層構成は軟質層100μm、表面層10μmの厚みであった。得られたシートの物性を表1に示す。また得られたシートを熱融着して袋状に作製し、氷水(水温;約8℃)を入れたところ自立し、ワインボトルを傾けて入れても倒れることはなかった。
<比較例1>
直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製 エボリューSP2520)100質量部用い、300mmφの円筒ダイスを設置した40mmφのインフレ成形機((株)テクノベル製)を用いて成形して、比較例1のシートを得た。シートの層構成は軟質層300μmの厚みであった。得られたシートの物性を表2に示す。また得られたシートを熱融着して袋状に作製し、氷水(水温;約8℃)を入れたところ柔軟性は変わらず、ワインボトルを傾けて入れると袋自体が倒れてしまう結果となった。
Figure 2022027827000003
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (8)

  1. 4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を主成分とする軟質層を含むシートを、袋状に成形してなり、前記熱可塑性樹脂組成物が、以下の(I)~(II)および(IV)を満たす、保冷容器。
    (I)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)が、5×10Pa以上である
    (II)エルメンドルフ引裂強度が、5N/mm以上である
    (IV)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、10℃における貯蔵弾性率(G’@10℃)と40℃における貯蔵弾性率(G’@40℃)との比率(G’@10℃/G’@40℃)が、20以上である
  2. 前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに(III)を満たす、請求項1に記載の保冷容器。
    (III)膜厚100μmのフィルムに成形して、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を300mm/minの速度で押し込んだときの、針がフィルムを貫通するまでの最大応力は、4N以上である
  3. 前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、
    4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(A-i)および
    4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(A-ii)を含み、
    任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(A-iii)を含んでもよい
    4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体であって、
    構成単位(A-i)、(A-ii)および(A-iii)の合計を100モル%としたときに、
    構成単位(A-i)を55モル%以上85モル%以下、
    構成単位(A-ii)を15モル%以上45モル%以下、
    構成単位(A-iii)を0モル%以上10モル%以下含む、
    4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)である、
    請求項1または2に記載の保冷容器。
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物は、
    60質量%以上90質量%以下の含有量の前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、
    10質量%以上40質量%以下の含有量のオレフィン系重合体(ただし4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を除く)(B)と、
    を含有する組成物である、請求項3に記載の保冷容器。
  5. 前記オレフィン系重合体(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)である、請求項4に記載の保冷容器。
  6. 前記軟質層の厚みは、30~1000μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の保冷容器。
  7. 前記熱可塑性樹脂組成物を含む軟質層を中間層に有し、オレフィン系重合体(ただし4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を除く)(B)を含む表面層をさらに有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の保冷容器。
  8. 前記表面層は、前記軟質層の両面に配置された、請求項7に記載の保冷容器。
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