JP2022027095A - 立毛調皮革様シート状物およびその製造方法 - Google Patents

立毛調皮革様シート状物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】擦過音の発生を抑制するとともに、耐毛羽抜け性と耐摩耗性を向上した立毛調皮革様シート状物を提供する。【解決手段】実施形態に係る立毛調皮革様シート状物は、織物または編物からなる繊維質基材と、該繊維質基材に付与されたシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物と、を含むものである。該立毛調皮革様シート状物は、織物または編物を構成する繊維からなる立毛であって上記混合物が付着した立毛を有する立毛面を、シート状物の表面に備え、立毛の長さが200~500μmであり、かつ、立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300である。【選択図】図1

Description

本発明は、立毛調皮革様シート状物およびその製造方法に関する。
従来、車両シート、ドア内張り等の車両内装材用途、家具、椅子等のインテリア資材用途、鞄、靴などのファッション用途等に使用される皮革様シート状物は、不織布、編物、織物等の繊維質基材に合成樹脂(ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂)を付与して製造される。皮革様シート状物は、表面の滑性が不足した場合、表面が擦れた際に擦過音を発生するという課題がある。
特許文献1では、擦過音の発生を防止することを目的として、ポリウレタン表皮層表面に、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルを含有し、且つポリオール成分中にシリコーンジオールを含むポリウレタンにて形成した表面処理層を設けた合成皮革が開示されている。
一方、皮革様シート状物において、ポリウレタン樹脂とともにシリコーン樹脂を併用することが知られている。例えば、特許文献2には、基材表面に、ポリウレタン接着層、ポリウレタン表皮下部層、ポリアミノ酸樹脂表皮上部層および架橋型シリコン樹脂の表面処理層を順次積層した合成皮革が開示されている。
また、スエード調等の立毛調皮革様シート状物において、不織布からなる基材にポリウレタン樹脂とシリコーン樹脂を付与することも知られており、特許文献3には、少なくとも片面が起毛された不織布からなる極細立毛シートにおいて、その表面に低分子量ポリウレタンおよびシリコーン樹脂からなる配合物を付与することが記載されている。特許文献4には、織編物で補強してなる不織布にポリウレタン樹脂原料とポリビニルアルコールとシリコーン樹脂を含む溶液を付着させてなる人工皮革が記載されている。特許文献5には、極細繊維からなる不織布に自己乳化型ポリウレタンと造膜性シリコーンが含有されているシート状物が記載されている。
特開平02-277891号公報 特開昭62-215080号公報 特開2004-315986号公報 特開2004-332173号公報 特開2012-046863号公報
上記のように皮革様シート状物においてポリウレタン樹脂とシリコーン樹脂を併用することは知られていたが、ポリウレタン樹脂とシリコーン樹脂を併用することにより擦過音が抑制されることは知られていなかった。
一般に擦過音は銀付皮革様シート状物において問題とされており、立毛調の皮革様シート状物においてはこれまで問題とされていなかった。しかしながら、本発明者は、最近益々車両の静寂化が進んでいることに鑑み、今後、立毛調皮革様シート状物において擦過音を高いレベルで抑制するように要求されるのではないかと考えた。
また、上記従来の不織布を用いた立毛調皮革様シート状物は、摩耗による毛羽抜けが生じやすく、耐毛羽抜け性と耐摩耗性に劣るものであった。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、立毛調皮革様シート状物において、耐毛羽抜け性と耐摩耗性を向上しながら、擦過音の発生を抑制することにある。
本発明の実施形態に係る立毛調皮革様シート状物は、織物または編物からなる繊維質基材と、前記繊維質基材に付与されたシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物と、を含む立毛調皮革様シート状物であって、前記織物または編物を構成する繊維からなる立毛であって前記混合物が付着した立毛を有する立毛面を、前記シート状物の表面に備え、前記立毛の長さが200~500μmであり、かつ、前記立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300であるものである。
一実施形態に係る立毛調皮革様シート状物の製造方法は、織物または編物からなる繊維質基材の少なくとも片面に前記織物または編物を構成する繊維からなる立毛を形成すること、および、前記立毛を形成した繊維質基材にシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物を付与し、それにより前記混合物が付着した立毛を有する立毛面を表面に備え、前記立毛の長さが200~500μmであり、かつ、前記立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300である、立毛調皮革様シート状物を得ること、を含む。
本発明によれば、擦過音の発生を抑制するとともに、耐毛羽抜け性と耐摩耗性を向上した立毛調皮革様シート状物を提供することができる。
一実施形態に係る立毛調皮革様シート状物の断面模式図である。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物は、織物または編物からなる繊維質基材と、該繊維質基材に付与されたシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物(以下、単に「樹脂混合物」ということがある。)と、を含むシート状物であり、上記織物または編物を構成する繊維からなる立毛であって樹脂混合物が付着した立毛を有する立毛面を、シート状物の表面に備える。
図1は、その一例を模式的に示した断面図である。立毛調皮革様シート状物10は、織物または編物からなる繊維質基材12を備え、該繊維質基材12にはその全体にわたって不図示のシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の混合物が付与されている。シート状物10の表面には、繊維質基材12の織物または編物を構成する繊維からなる立毛14が設けられており、該立毛14にはその繊維表面に樹脂混合物が付着している。シート状物10の表面には、樹脂混合物が付着した立毛14を有する立毛面16が形成されている。
本実施形態において、繊維質基材は織物または編物からなり、そのため、毛羽抜けを抑制することができるとともに耐摩耗性を向上することができる。繊維質基材として、より好ましくは編物である。なお、繊維質基材は、染料または顔料により着色されたものであってもよい。
繊維質基材としては、表面に立毛を有するもの、即ち立毛面を有する繊維質基材が用いられる。すなわち、繊維質基材は、その少なくとも片面に立毛が形成されている。該立毛は、織物または編物を構成する繊維からなるものであり、織り組織または編み組織に拘束されているため、耐毛羽抜け性と耐摩耗性の向上効果を高めることができる。立毛とは、繊維質基材の表面に設けられた毛(毛羽)であり、有毛とも称される。
立毛を構成する繊維の繊度(単繊維繊度)は、特に限定されるものでないが、0.1~0.4dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.1dtex以上であることにより、耐摩耗性が良好である。単繊維繊度が0.4dtex以下であることにより、触感が良好で、異音防止効果が得られる。
繊維質基材を構成する繊維素材は特に限定されるものでなく、従来公知の天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維などを用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、特には機械的強度、耐熱性、耐光性の観点から、繊維素材は合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましく、ポリエチレンテレフタレート繊維が特に好ましい。
繊維質基材を構成する糸条の繊度(糸繊度)は、特に限定されるものでないが、50~200dtexであることが好ましい。糸繊度が50dtex以上であることにより、耐摩耗性が良好である。糸繊度が200dtex以下であることにより、触感が良好で異音防止効果が得られる。
繊維質基材の厚みは、特に限定されず、例えば600~1500μmでもよい。より詳細には、繊維質基材が織物の場合、繊維質基材の厚みは、600~1500μmであることが好ましく、より好ましくは800~1200μmである。繊維質基材が編物の場合、繊維質基材の厚みは、600~1300μmであることが好ましく、より好ましくは800~1200μmである。繊維質基材の厚みが下限値以上であることにより、耐摩耗性が良好なものとなる。繊維質基材の厚みが上限値以下であることにより、風合いが良好となる。なお、繊維質基材についての上記厚みは、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂を付与する前の繊維質基材の厚みであるが、樹脂付与後の立毛調皮革様シート状物における繊維質基材の厚みを同様の範囲内に設定してもよい。
繊維質基材の厚みは、JIS L1096 8.4A法(JIS法)に準じて、定圧厚み計(例えば、株式会社尾崎製作所:ピーコック ダイヤルゲージH-30)を用いて測定される値であり、立毛部分も含めて測定される厚みである。
繊維質基材の密度は、特に限定されるものではない。繊維質基材が織物の場合、繊維質基材の密度は、経糸密度150~400本/25.4mm、緯糸密度50~150本/25.4mmであることが好ましい。繊維質基材が編物の場合、繊維質基材の密度は、30~90コース/25.4mm、20~60ウェル/25.4mmであることが好ましい。繊維質基材の密度が下限値以上であることにより、耐摩耗性が良好となる。繊維質基材の密度が上限値以下であることにより、風合いが良好である。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物において、上記立毛の長さは200~500μmに設定される。すなわち、上記樹脂混合物が付着した状態での立毛の長さが200~500μmである。該立毛の長さが200μm以上であることにより、擦過音の発生を抑制することができ、また耐摩耗性を向上することができる。また、該立毛の長さが500μm以下であることにより、耐摩耗性を向上することができる。該立毛の長さは、250μm以上であることが好ましく、より好ましくは300μm以上であり、また400μm以下であることが好ましい。
より詳細には、繊維質基材が織物の場合、該立毛の長さは、200~400μmであることが好ましい。繊維質基材が編物の場合、該立毛の長さは、250~500μmであることが好ましく、より好ましくは250~400μmであり、更に好ましくは300~400μmである。
なお、上記立毛の長さは、樹脂混合物が付与された立毛調皮革様シート状物での立毛の長さである。但し、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂を付与する前の立毛の長さを上記と同様の範囲内に設定してもよい。
該立毛の長さは、次のようにして測定される。すなわち、測定前に立毛面を逆目方向に手で3回撫でて毛を立たせてから、立毛の長さ(毛の根元から毛の先端までの長さ)を測定する。測定は、立毛調皮革様シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(例えば、キーエンス株式会社製、VHX-200/100F)で100倍にて観察し、任意の10本の立毛について長さを測定し、その平均値を算出する。ここで、逆目方向とは、順目方向とは逆向きの方向であり、順目方向とは、立毛が倒れている方向である。
繊維質基材に付与されるシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂は、上記のように両者を含む混合物として付与され、繊維質基材を構成する繊維表面に付着している。
シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む樹脂混合物は、耐摩耗性を付与しつつ擦過音の発生を抑制するために、繊維質基材の厚み方向において少なくとも立毛が存在している表面側(即ち立毛面側)に存在しており、繊維質基材の厚み方向の全体にわたり存在してもよい。その際、上記樹脂混合物は、繊維質基材の立毛面の全体を膜状に覆うのではなく(すなわち、銀付皮革様ではなく)、立毛を残しつつ繊維質基材に付与される。これにより、スエード調またはヌバック調の外観および触感を有する立毛調皮革様シート状物が得られる。
本実施形態に用いられるシリコーン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メチルハイドロジェンシリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂、(メタ)アクリル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも擦過音発生抑制、および耐摩耗性の観点から、メチルハイドロジェンシリコーン樹脂が好ましい。ここで、(メタ)アクリル変性シリコーン樹脂とは、アクリル変性シリコーン樹脂および/またはメタクリル変性シリコーン樹脂を意味する。
本実施形態において用いられるシリコーン樹脂とは、シロキサン結合による主骨格を持つ樹脂であり、三次元網目構造のシロキサン骨格を持つものである。この点で、線状ポリマーからなるシリコーンオイルやシリコーンゴムとは異なる。かかるシリコーン樹脂は、一般に固形状であるが、室温でスラリー状ないし水飴状のような流動性が低い状態のものでもよい。なお、シリコーン樹脂としては、シラノール基を有するシリコーンの脱水縮合により一液型で硬化して得られるものでもよく、また触媒や架橋剤を用いて架橋することにより硬化して得られるものでもよい。また、シリコーン樹脂は、立毛調皮革様シート状物として形成された段階で三次元網目構造のシロキサン骨格を有していればよく、例えば繊維質基材に対して付与する前の樹脂組成液の段階や、樹脂組成液を繊維質基材に付与した後の熱処理前の段階では、三次元網目構造を有していなくてもよい。
シリコーン樹脂の数平均分子量は、特に限定されず、1500~5000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が1500以上であることにより、擦過音の発生を抑制しやすい。数平均分子量が5000以下であることにより、柔らかな触感が得られる。ここで、シリコーン樹脂の数平均分子量は、三次元網目構造に架橋前のシリコーンについて測定した値である。なお、本実施形態において、数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値として算出される。
シリコーン樹脂の動摩擦係数は、特に限定されず、0.200~0.300の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.225~0.270である。動摩擦係数が0.200以上であることにより、触感を向上させることができる。また、ぬめり感があり、天然皮革に近い触感を付与することができる。さらに、摩耗による毛羽抜けを抑制することができる。動摩擦係数が0.300以下であることにより、擦過音の発生抑制効果をより一層高めることができる。なお、本実施形態において、シリコーン樹脂の動摩擦係数は、立毛調皮革様シート状物を作製する際の処方の濃度で調液したシリコーン樹脂水溶液(架橋のための触媒や架橋剤が必要な場合は触媒や架橋剤を含む溶液)を用いて作製したシリコーン樹脂フィルムの動摩擦係数を、後述の方法によって測定することにより求めることができる。
繊維質基材に対するシリコーン樹脂の量は、特に限定されず、触感、擦過音の発生抑制等の所望の効果が得られるよう適宜設定すればよいが、0.10~2.0質量%の範囲にあることが好ましい。シリコーン樹脂の量が0.10質量%以上であることにより、触感、擦過音の発生抑制等の効果を高めることができる。シリコーン樹脂の量が2.0質量%以下であることにより、擦過音の発生を抑制しやすい。繊維質基材に対するシリコーン樹脂の量は、0.30質量%以上でもよく、0.50質量%以上でもよく、また、1.8質量%以下でもよく、1.0質量%以下でもよい。ここで、繊維質基材に対するシリコーン樹脂の量とは、上記樹脂混合物の量を除いた繊維質基材に対するシリコーン樹脂の付着量(固形分換算)であり、当該繊維質基材を100質量%としたときのシリコーン樹脂の比率である。
本実施形態に用いられるポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも耐摩耗性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂の硬化形態は、一液型、二液硬化型、湿気硬化型などが挙げられる。これらのうち、環境負荷が小さく、且つ作業負荷が小さいという観点から水系の一液型が好適である。水系の一液型の分散タイプは、自己乳化型、強制乳化型が挙げられる。耐水性が高く、繊維質基材からのシリコーン樹脂の脱落の防止効果が高いという観点から、強制乳化型が好ましい。
ポリウレタン樹脂の動摩擦係数は、特に限定されず、0.300~0.500の範囲が好ましい。動摩擦係数が0.300以上であることにより、耐摩耗性が良好であり、特には、摩耗による毛羽抜けが生じにくいものとなる。動摩擦係数が0.500以下であることにより、擦過音の発生を抑制しやすい。なお、本実施形態において、ポリウレタン樹脂の動摩擦係数は、立毛調皮革様シート状物を作製する際の処方の濃度で調液したポリウレタン樹脂水溶液を用いて作製したポリウレタン樹脂フィルムの動摩擦係数を、後述の方法によって測定することにより求めることができる。
繊維質基材に対するポリウレタン樹脂の量は、特に限定されず、1.0~7.0質量%の範囲であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の量が1質量%以上であることにより、シリコーン樹脂が製造工程中で脱落することを防止することができる。耐摩耗性を向上させることができる。ポリウレタン樹脂の量が7.0質量%以下であることにより、風合いが粗硬になったり、触感が損なわれたりすることを防ぐことができる。繊維質基材に対するポリウレタン樹脂の量は、2.0質量%以上でもよく、3.0質量%以上でもよく、また、6.0質量%以下でもよく、5.0質量%以下でもよい。ここで、繊維質基材に対するポリウレタン樹脂の量とは、上記樹脂混合物の量を除いた繊維質基材に対するポリウレタン樹脂の付着量(固形分換算)であり、当該繊維質基材を100質量%としたときのポリウレタン樹脂の比率である。
また、繊維質基材に対して付与されたシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の量の質量比(固形分換算)は、特に限定されず、シリコーン樹脂:ポリウレタン樹脂=1:2~1:40の範囲であることが好ましい。シリコーン樹脂1質量部に対してポリウレタン樹脂が2質量部以上であることにより、シリコーン樹脂が製造工程中に脱落することを防止することができる。シリコーン樹脂1質量部に対してポリウレタン樹脂が40質量部以下であることにより、シリコーン樹脂が触感、擦過音の発生抑制等の所望の効果を十分に発揮することができる。シリコーン樹脂1質量部に対するポリウレタン樹脂の量は4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上でもよい。また、シリコーン樹脂1質量部に対するポリウレタン樹脂の量は35質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、8質量部以下でもよい。
上記樹脂混合物には、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の他、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、触媒、艶消し剤、平滑剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、増粘剤、架橋剤、浸透剤などの各種添加剤が含まれてもよい。
樹脂混合物の動摩擦係数は、特に限定されないが、0.180~0.350の範囲が好ましい。動摩擦係数が0.180以上であることにより、耐摩耗性が良好であり、また摩耗による毛羽抜けを抑制することができる。動摩擦係数が0.350以下であることにより、擦過音の発生を抑制しやすい。樹脂混合物の動摩擦係数は、より好ましくは0.200以上であり、更に好ましくは0.220以上であり、また好ましくは0.300以下であり、更に好ましくは0.250以下である。なお、本実施形態において、樹脂混合物の動摩擦係数は、立毛調皮革様シート状物を作製する際の処方の濃度で調液した樹脂組成液を用いて作製した樹脂フィルムの動摩擦係数を、後述の方法によって測定することにより求めることができる。
繊維質基材に対する樹脂混合物の付着量は、特に限定されない。一実施形態において、繊維質基材に対するシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の合計の付着量は、耐摩耗性及び耐毛羽抜け性の観点から、固形分換算で10g/m以上であることが好ましく、また擦過音の抑制効果の観点から40g/m以下であることが好ましい。該付着量は、より好ましくは固形分換算で15~25g/mである。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物は、その立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300である。静摩擦係数は小さくても大きくても擦過音の発生要因となり、0.660~1.300の範囲に設定することにより、擦過音の発生を抑制することができる。該静摩擦係数は、より好ましくは、0.770以上であり、また1.170以下である。立毛調皮革様シート状物の静摩擦係数は、立毛の長さ、樹脂混合物の付着量、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の種類や質量比などにより調整することができる。なお、本実施形態において、立毛調皮革様シート状物の静摩擦係数は、後述の方法によって測定することにより求めることができる。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物の製造方法は、特に限定されない。一実施形態に係る製造方法は、(1)織物または編物からなる繊維質基材の少なくとも片面に前記織物または編物を構成する繊維からなる立毛を形成する工程と、(2)該立毛を形成した繊維質基材にシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む樹脂混合物を付与する工程とを、この順で含む。更に、(3)樹脂混合物が付与された繊維質基材に対して染色、精練、およびソーピングからなる群から選択される少なくとも1つの浴中処理工程を行う工程を含んでもよい。
上記(1)の立毛を形成する工程において、立毛の形成方法は特に限定されるものでなく、公知の方法が挙げられる。例えば、二重織物、シンカーパイル丸編地、二重編地等の編織組織を開反する方法や、針布起毛機やエメリー起毛機等の起毛機を用いた方法や、繊維質基材への植毛等が挙げられる。なかでも、外観および触感の観点から、起毛機を用いた方法が好ましい。起毛機を用いた方法には、フルカット起毛と、セミカット起毛と、ループ起毛があるが、セミカット起毛による方法がより好ましい。ここで、フルカット起毛とは、ループ状の起毛糸を構成する繊維を全てカットする起毛であり、セミカット起毛とは、ループ状の起毛糸を構成する繊維の一部を切断する起毛であり、ループ起毛とは、ループ状の起毛糸をカットしない起毛である。
上記(2)の樹脂混合物を付与する工程では、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを混合してなる樹脂組成液を、繊維質基材に付与する。樹脂組成液は、繊維質基材に上記樹脂混合物を付与するために用いられる組成物であり、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含み、任意成分としての上記添加剤を含んでもよい。なお、樹脂組成液中のシリコーン樹脂は、上記のように三次元網目構造を有している必要はなく、熱処理等により最終的に三次元網目構造に架橋するものであればよい。その他、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の詳細については上述したとおりである。
樹脂組成液には、また、必要に応じて、高極性溶媒などの溶媒を含有させることができる。溶媒としては、環境負荷の観点から、好ましくは水が用いられる。
樹脂組成液を繊維質基材に付与する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、ディッピング、コーティング、スプレー、捺染などの手法が挙げられる。なかでも、繊維質基材の樹脂を均一に付与することが可能であるという点で、ディッピングによる付与が好ましい。
樹脂組成液を繊維質基材に付与する方法としてディッピングを用いる場合、ピックアップ率は特に限定されず、20~80質量%であることが好ましい。ピックアップ率がこの範囲であることにより、所望の量をムラなく付与することができる。樹脂組成液におけるシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の濃度としては、特に限定されず、両者の合計の濃度で13~17質量%でもよい。
樹脂組成液を繊維質基材に付与した後、必要に応じて熱処理を行う。熱処理は、樹脂組成液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるために行われる。また、熱処理によって架橋反応を起こす触媒や架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。
熱処理温度は130~190℃でもよく、150~170℃でもよい。熱処理温度が130℃以上であると、熱処理に時間がかかり過ぎることがないため、工程負荷が大きくなりすぎることがない。また樹脂の架橋が不十分なることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理温度が190℃以下であると、シート状物の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間は1~3分間でもよく、2~3分間でもよい。熱処理時間が1分間以上であると、樹脂の架橋が不十分になることを防ぐことができるため、耐摩耗性が不良となることを防ぐことができる。熱処理時間が3分間以内であると、工程負荷が大きくなりすぎることもない。
上記(3)の浴中処理工程としては、特に限定されず、所望の工程を採用することができる。例えば、染色工程、精練工程、ソーピング工程等が挙げられる。これらの工程については従来公知の工程であり、従来公知の方法を用いることができる。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物であると、織物または編物からなる繊維質基材にウレタン樹脂とともにシリコーン樹脂を付与することにより、所望の触感が得られるとともに、シート状物の表面(即ち、立毛面)での擦過音(立毛調皮革様シート状物の立毛面同士や他の繊維製品とが擦れた際の擦過音)の発生を抑制することができ、更に摩耗による毛羽抜けを抑制し、耐摩耗性を向上することができる。すなわち、スエード調またはヌバック調の外観および触感を有する立毛調皮革様シート状物において、毛羽抜けを抑制しかつ耐摩耗性を向上しながら、擦過音の発生を抑制するという新規な課題を解決することができる。
また、本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物の製造方法であると、浴中処理工程の前に繊維質基材に樹脂混合物を付与するため、耐摩耗性を向上させることができる。
本実施形態に係る立毛調皮革様シート状物の用途は、特に限定されないが、例えば自動車用シート、天井材、ダッシュボード、ドア内張材またはハンドルなどの自動車内装材をはじめとする各種車両のための内装材用途の他、ソファーや椅子のための表皮などのインテリア用途、鞄、靴などのファッション用途に用いることができる。
なお、本明細書における各数値範囲の上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせることができるものとする。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
各評価項目は、以下の方法に従った。
[動摩擦係数の測定]
<樹脂フィルムの作製>
離型紙(KM130TPD、リンテック株式会社製)上に、得られる樹脂フィルムの膜厚が500μmとなるようにアプリケーターを用いて樹脂液を塗布した後、24時間風乾した。次いで、乾燥機にて80℃で3時間乾燥後、さらに乾燥機にて130℃で30分間乾燥して樹脂フィルムを作製した。ここで、フィルム作製に用いる樹脂液は、シリコーン樹脂およびポリウレタン樹脂の動摩擦係数の測定には、それぞれシリコーン樹脂およびポリウレタン樹脂を表1の動摩擦係数測定用の樹脂濃度に調整した樹脂液を用いた。また、繊維質基材に樹脂を付与される樹脂混合物の動摩擦係数の測定には、表1の各処方の樹脂組成液を用いた。
<動摩擦係数の測定>
ASTM D1894に準拠して、オートグラフAG-I(株式会社島津製作所製)を用い、羊毛布(平織組織、経糸:19tex、糸本数142本/50mm、緯糸:15tex、糸本数136本/50mm)をたるみなく巻きつけた重り(幅62mm、長さ102mm、重さ9.8N)を試験片の上に置き、オートグラフAG-Iに取り付けてあるロードセルで、30mm/分の一定の速度で滑らせた時の動摩擦係数を測定した。なお、動摩擦測定の試験片としては、上記の離型紙がついた状態の樹脂フィルムを用いた。試験片3枚について同様に測定を行い、得られた数値の平均値を、動摩擦係数とした。
[静摩擦係数の測定]
試験片を2枚1組とし、ASTM D1894に準拠して、オートグラフAG-I(株式会社島津製作所製)を用い、一方の試験片をたるみなく巻きつけた重り(幅62mm、長さ102mm、重さ9.8N)をもう一方の試験片の上に立毛面同士が互いに順目方向に摩擦されるように置き、オートグラフAG-Iに取り付けてあるロードセルで、30mm/分の一定の速度で滑らせた時の静摩擦係数を測定した。試験片3組について同様に測定を行い、得られた数値の平均値を、静摩擦係数とした。
[擦過音]
水平な机上に試験片を置き、人差指で試験片表面(立毛面)を擦った時の摩擦音の大きさを基準布(各実施例および比較例において樹脂組成液付与前の布帛を基準布とする)と比較して、下記の評価基準に従って官能評価を行った。なおB以上の評価を、擦過音なしと判定して表中で「無」と記載し、Cの評価を、擦過音ありと判定して表中で「有」と記載した。
<評価基準>
A: 摩擦音の大きさが、基準布と同程度。
B: 摩擦音の大きさが、基準布と比べてやや大きい。
C: 摩擦音の大きさが、基準布と比べて明らかに大きい。
[耐摩耗性・毛羽抜け]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片を、長尺材の幅方向から1枚採取した後、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームシートを添えて、平面摩耗試験機T-TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定した。綿布(綿帆布)をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nをかけて試験片の表面(立毛面)を摩擦した。摩擦子は、試験片の表面上140mmの間を60回往復/分の速さで10000回往復摩擦した。摩擦前後の試験片を観察し、下記の基準に従って耐摩耗性を評価した。また、毛羽抜けがあったものを「有」、なかったものを「無」と、表に記載した。
<評価基準>
5級: 摩耗部分の状態に変化なし。
4級: 表面の繊維が摩耗面に沿ってやや絡み合っているが、ほとんど目立たない。
3級: 表面の繊維が摩耗面に沿って絡み合っているが、目立たない。
2級: 表面の繊維が摩耗面に沿って絡み、著しく目立つ。毛羽抜けがやや発生している。
1級: 絡みあった繊維や糸が抜け(毛羽抜けが発生しており)、地糸が見える。
[触感]
硬さ(点数が高いほど柔らかく、低いほど硬い)と質感(点数が高いほどサラサラ、低いほどべたつきあり)の2つについて5段階(5~1)で点数評価を行い、それぞれの点数を表に示すとともに、2つの評価の点数の和から下記基準によって総合評価を行った。
<評価基準>
A: 9~10
B: 6~8
C: 4~5
D: 2~3
[実施例1]
24Gの丸編み機を用いて、表及びつなぎの糸として70dtex/216fのポリエステル加工糸、裏の糸として110dtex/36fのポリエステル加工糸を導糸して、タック組織の編組織で丸編地を編成した。
得られた丸編地を水洗・乾燥した後、パイルローラー12本、カウンターパイルローラー12本を有する針布ロールを備える針布起毛機により、針布ロールトルク10MPa、布帛速度15m/分にて、編み始め方向からと編み終わり方向からの起毛を交互に3回行い、丸編地の表面を毛羽立たせるような起毛を施した。
次いで、ヒートセッターにて150℃で3分間熱処理した後、サンドペーパー(#320)を有するエメリー起毛機により、セミカット起毛を施した。詳細には、サンドペーパーの表面回転速度1000rpm、クリアランス0.8mm、布帛速度8m/分にて、該丸編地の表面(起毛面)を研削して、立毛の丸編地(目付400g/m、厚み1000μm、起毛部の単繊維繊度0.3dtex、立毛の長さ320μm、繊維質基材の密度53コース/25.4mm、46ウェル/25.4mm)を得た。
得られた立毛の丸編地に、表1に示す処方1の樹脂組成液を、マングルを用いて、ピックアップ率50質量%にてディッピング処理した。次いで、ヒートセッターを用いて、170℃で3分間熱処理した。これにより、繊維質基材である立毛の丸編地に、シリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含浸付与してなるシート状物を得た。得られたシート状物に対し、液流染色機を用いて分散染料にて130℃で50分間染色し、次いでヒートセッターにて130℃で3分間熱処理して実施例1の立毛調皮革様シート状物を得た。得られた立毛調皮革様シート状物における立毛長さは320μmであり、静摩擦係数は0.995であった。
得られた立毛調皮革様シート状物の詳細および評価を表2に記す。表2中の「樹脂の付着量」について、「樹脂のトータル付着量」は繊維質基材に付着したシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の合計量(固形分換算)であり、「シリコーン樹脂(%)」は繊維質基材に対するシリコーン樹脂の量であり、「ポリウレタン樹脂(%)」は繊維質基材に対するポリウレタン樹脂の量であり、「シリコーン樹脂:ウレタン樹脂」は繊維質基材に付着したシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂の質量比である。表3及び表4についても同様である。
表2中の「立毛調皮革様シート状物」において、「立毛の長さ(μm)」および「静摩擦係数」は、立毛調皮革様シート状物での立毛の長さおよび静摩擦係数である。表3及び表4についても同様である。
[実施例2~9]
繊維質基材に付与する樹脂組成液として、表1に示す処方2~9をそれぞれ表2,3に示すとおり用いて、それ以外は、実施例1と同様にして実施例2~9の立毛調皮革様シート状物を得た。なお、表2,3中、繊維質基材の密度について「53c/46w」は、53コース/25.4mm、46ウェル/25.4mmを意味する。
[実施例10]
丸編地を織物(経糸:117dtex/36fのポリエステル加工糸(17分割割繊糸)と56dtex/24fのポリエステル加工糸を2:1、緯糸:167dtex/48fのポリエステル加工糸を用いた繻子織物)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例10の立毛調皮革様シート状物を得た。ここで、起毛後の織布は、目付250g/m、厚み1000μm、起毛部の単繊維繊度0.19dtex、立毛の長さ300μm、繊維質基材の経糸密度360本/25.4mm、緯糸密度63本/25.4mmであり、該起毛後の織布に実施例1と同様のディッピング処理および染色を行った。
[実施例11~14]
起毛回数を調整することにより立毛の長さを表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例11~14の立毛調皮革様シート状物を得た。
[比較例1]
繊維質基材に付与する樹脂組成液として表1に示す処方11を用い、それ以外は実施例1と同様にして比較例1の立毛調皮革様シート状物を得た。
[比較例2]
繊維質基材に付与する樹脂組成液として表1に示す処方10を用い、それ以外は実施例1と同様にして比較例2の立毛調皮革様シート状物を得た。
[比較例3]
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が繊維に対して8.9質量%付着した不織布(旭化成株式会社製、3021B、目付230g/m)を丸編地の代わりに用いて、該不織布に対して実施例1と同様の起毛処理を施して起毛不織布を得た。得られた起毛不織布は、繊維質基材とポリウレタン樹脂のトータルの目付が230g/m、繊維質基材の目付が211g/m、厚み900μm、起毛部の単繊維繊度0.15dtex、立毛の長さ130μmであった。該起毛不織布に対して処理する樹脂組成液として表1に示す処方10を用い、その他は実施例1と同様の操作で樹脂組成液を付与し、染色・熱処理を行って、比較例3の立毛調皮革様シート状物を得た。
[比較例4,5]
起毛回数を調整することにより立毛の長さを表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4,5の立毛調皮革様シート状物を得た。
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
<シリコーン樹脂>
・シリコーン樹脂溶液1:
KF99(信越化学工業株式会社製、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、固形分100質量%、触媒と併用し熱処理することで三次元網目構造を形成) 50質量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、分散剤、固形分100質量%) 2質量部
水 48質量部
・ニッカシリコンAMZ-3:日華化学株式会社製、アミノ変性シリコーン樹脂(固形分36質量%)
<シリコーンオイル>
・エラスフィニッシュS-65:第一工業製薬株式会社製、ジメチルシリコーンオイル(有効成分42質量%)
<ポリウレタン樹脂>
・ハイドラン WLI-620AR:DIC株式会社製、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(水系一液型、強制乳化型、固形分50質量%)
・エヴァファノールAPC-66:日華化学株式会社製、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(水系一液型、強制乳化型、固形分36質量%)
<シリコーン樹脂の架橋用触媒>
・触媒溶液1:
ステアリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、触媒、固形分100質量%)
14質量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、分散剤、固形分100質量%) 4質量部
水 82質量部
Figure 2022027095000002
Figure 2022027095000003
Figure 2022027095000004
Figure 2022027095000005
結果は、表2~4に示すとおりである。ポリウレタン樹脂とシリコーンオイルを付与した比較例1の立毛調皮革様シート状物では基準布と比べて擦過音が明らかに大きかった。また、シリコーン樹脂のみを付与した比較例2の立毛調皮革様シート状物では、基準布に比べて擦過音が大きいだけでなく、耐摩耗性及び毛羽抜け、触感の点でも劣っていた。また、繊維質基材として不織布を用いた比較例3の立毛調皮革様シート状物では、耐摩耗性及び毛羽抜けの点で劣っていた。さらに、立毛の長さが200μm未満である比較例4の立毛調皮革様シート状物では、基準布と比べて擦過音が大きく、また摩耗により地組織が露出しやすくなり耐摩耗性が低下する傾向がみられた。立毛の長さが500μmを超える比較例5の立毛調皮革様シート状物では、耐摩耗性の点で劣っていた。
これに対し、実施例1~14の立毛調皮革様シート状物であると、毛羽抜けがなく、また耐摩耗性に優れたものでありながら、擦過音が明らかに改善されており、擦過音の抑制効果に優れていた。また、特に実施例1,2,4~6,8~14であると、触感にも優れていた。実施例1,11~14及び比較例5より、立毛が長くなると触感にべたつき感が大きくなる傾向があった。
10…立毛調皮革様シート状物、12…繊維質基材、14…立毛、16…立毛面

Claims (7)

  1. 織物または編物からなる繊維質基材と、
    前記繊維質基材に付与されたシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物と、
    を含む立毛調皮革様シート状物であって、
    前記織物または編物を構成する繊維からなる立毛であって前記混合物が付着した立毛を有する立毛面を、前記シート状物の表面に備え、
    前記立毛の長さが200~500μmであり、かつ、前記立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300である、立毛調皮革様シート状物。
  2. 前記シリコーン樹脂が、メチルハイドロジェンシリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂および(メタ)アクリル変性シリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の立毛調皮革様シート状物。
  3. 前記繊維質基材に対する前記シリコーン樹脂の量が0.10~2.0質量%である、請求項1または2に記載の立毛調皮革様シート状物。
  4. 前記繊維質基材に付与された前記シリコーン樹脂と前記ポリウレタン樹脂の質量比が1:2~1:40である、請求項1~3のいずれか1項に記載の立毛調皮革様シート状物。
  5. 前記混合物の動摩擦係数が0.180~0.350である、請求項1~4のいずれか1項に記載の立毛調皮革様シート状物。
  6. 織物または編物からなる繊維質基材の少なくとも片面に前記織物または編物を構成する繊維からなる立毛を形成すること、および、
    前記立毛を形成した繊維質基材にシリコーン樹脂とポリウレタン樹脂とを含む混合物を付与し、それにより前記混合物が付着した立毛を有する立毛面を表面に備え、前記立毛の長さが200~500μmであり、かつ、前記立毛面同士を摩擦させたときの静摩擦係数が0.660~1.300である、立毛調皮革様シート状物を得ること、
    を含む、立毛調皮革様シート状物の製造方法。
  7. 前記混合物が付与された前記繊維質基材に対して染色、精練、およびソーピングからなる群から選択される少なくとも1つの浴中処理を行うこと、を更に含む請求項6に記載の立毛調皮革様シート状物の製造方法。
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