JP6372225B2 - シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、良好なコーティング層を形成するのに優れたシート状物に関するものである。さらに詳しくは、銀付人工皮革用または研磨パッド用として優れた性能を有するシート状物およびその製造方法に関するものである。
従来より、不織布とその中に含有された高分子弾性体からなるシート状物への撥水性の付与方法が検討されている。例えば、簡易なレインコート、ウインドブレーカ、あるいはスポーツ用の各種衣料などの分野において、それら衣料を構成するシート素材・生地として好適に使用できる防水性能の優れた布帛シートを得るために、不織布の表面に高分子樹脂の防水層を設け、さらにその表面に撥水剤処理として、シリコーン系、フッ素系等の薬剤をディピング、スプレー法などで付与する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
また、摩擦堅牢度、洗濯堅牢度、高温での耐色移行性を有し、かつ立毛状態の良好な極細立毛繊維シートを提供することを目的として、起毛された極細繊維立毛シートの立毛面に、撥水剤だけでなく、低分子ポリウレタンとシリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物を、浸漬法、グラビアコーター法、リバースロールコーター法、スプレーコーター法、カーテンフローコーター法などで付与する方法が提案されている(特許文献2参照。)。
また、皮革様シートにおいて、高分子弾性体と撥水剤からなる配合物を絡合不織布に含浸させた後、表面から加熱することにより高分子弾性体と撥水剤を表層にマイグレーションさせながら凝固させることで、表層に偏在させる方法がある(特許文献3参照。)。
特開2003−3377号公報 特開2004−190179号公報 特開2012−36523号公報
銀付人工皮革または研磨パッドは、不織布とその中に含有された高分子弾性体からなるシート状物の上に、湿式法、乾式法といった公知の方法で、ポリウレタンを主に用いてなるコーティング層を形成して製造されている。コーティング層は均一な発泡構造を有することが重要であり、そのためには湿式法が主に適用される。また、その用いられるシート状物においては、良好なコーティング層を形成するための平滑性を有することが重要であることに加えて、圧縮率などシート状物そのものの機械的性質が好ましいこと、そしてシート状物の繊維が脱落してコーティング層に混入しないことなども重要である。
ここで発明者らは、銀付人工皮革または研磨パッド用途に適したシート状物においては、さらにシート全体の適度な撥水性を有することが重要であることを見出した。以下に詳述する。湿式法でシート状物の上に均一な発泡構造を有したコーティング層を形成するには、コーティング層が湿式凝固で形成される間中、コーティング層の形成される反対側の面からの吸水速度を均一に制御するのが困難であるため、発泡構造は不均一となるのではないかと考えた。そして、良好なコーティング層を形成するためのシート状物には、吸水速度を均一に制御するために、シート全体にわたって撥水性を制御することが強く求められているのではないかと考えた。また、乾式法においても、コーティング層の樹脂は水分散系樹脂が主なため、シート状物が撥水性を有することでコーティング時に樹脂がシート状物に過剰にしみ込むことを抑制可能であると考えた。
ここで、特許文献1では、シート表面にしか撥水効果はなく、シート内層部の撥水性の制御の面では何ら改善はないため、コーティング層の発泡構造が不均一となる。
また、特許文献2でも、水分散せしめた低分子ポリウレタンとシリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物を立毛面に塗布して乾燥しているため、シート内層部に撥水剤が存在することはなく、シート内層部の撥水性の制御の面では何ら改善はないため、均一な発泡構造を有した良好なコーティング層が形成されることはない。
特許文献3では、皮革様シートに撥水性をもたせるために、皮革様部分を形成する高分子弾性体、すなわち本発明のコーティング層自体に撥水剤を含ませるものであり、皮革様部分が形成されるコーティング前のシート状物には撥水剤はどこにも存在せず、シート内層部の撥水性の制御の面では何ら改善はないため、均一な発泡構造を有した良好なコーティング層が形成されることはない。
また、皮革様シート自体を、コーティング層が形成されるシート状物として用いようとしても、撥水性の制御を目的としたものでないので、適度な撥水性を有すように制御されておらず、コーティング層を均一に塗布、形成することはできない。
すなわち、これまで良好なコーティング層を形成するためのシート全体の適度な撥水性、を有したシート状物はまだ得られていない。
そこで本発明の目的は、上記従来技術の背景に鑑み、良好なコーティング層を形成するためのシート全体の適度な撥水性を有したシート状物を提供することにある。
本発明者らは、上記の通り、シート状物のシート全体の撥水性を制御することに着目し、鋭意検討を重ねた。そして、特定の好ましい撥水性を有するように制御されたシート状物が、銀付人工皮革または研磨パッド用途に適していることを見出したものである。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.2〜30μmの繊維からなる不織布と、高分子弾性体と撥水剤からなるシート状物であって、前記高分子弾性体が少なくともポリウレタン系エラストマーおよびニトリルブタジエン系エラストマーを含み、内層部にポリウレタン系エラストマー、外層部にニトリルブタジエン系エラストマーが偏在し、撥水剤が該シートの内層部と外層部に存在し、該撥水剤の付量が繊維に対し0.01〜0.50質量%であることを特徴とするシート状物である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、厚さCV値が0.1〜4.0である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記撥水剤がフッ素系撥水剤である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、圧縮率が3.0〜20.0%である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記平均単繊維直径が2.0〜8.0μmである。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、銀付人工皮革用または研磨パッド用のシート状物である。
本発明のコーティング層形成シート状物の製造方法は、平均単繊維直径が0.2〜30μmの繊維からなる不織布に、高分子弾性体と撥水剤とを混合して含浸せしめ、前記高分子弾性体が少なくともポリウレタン系エラストマーおよびニトリルブタジエン系エラストマーを含み、内層部にポリウレタン系エラストマー、外層部にニトリルブタジエン系エラストマーが偏在し、撥水剤が該シートの内層部と外層部に存在し、該撥水剤の付量が繊維に対し0.01〜0.50質量%であるシート状物を得る工程および、該シート状物の表面に下引き層および/またはコーティング層を形成する工程を有することを特徴とするコーティング層形成シート状物の製造方法。
本発明によれば、良好なコーティング層を形成可能なシート状物を得ることができる。
本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.2〜30μmの繊維からなる不織布と、高分子弾性体と撥水剤からなるシート状物であって、撥水剤が該シートの内層部と外層部に存在し、該撥水剤の付量が繊維に対し0.01〜0.50質量%であるシート状物である。
本発明のシート状物は、不織布からなることが必要である。本発明で用いられる不織布としては、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、圧縮率や品位の点では短繊維不織布が好ましく用いられる。短繊維不織布における短繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましい。繊維長を25mm以上とすることにより、絡合により耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。また、繊維長を90mm以下とすることにより、圧縮率や品位に優れたシート状物を得ることができる。繊維長は、より好ましくは30〜80mmである。
本発明において、不織布は、複数の単繊維からなる束(繊維束)が絡合してなる構造を有するものであることが好ましい態様である。このように、単繊維が繊維束の状態で絡合していることによって、シート状物の強度が向上する。このような態様の不織布は、極細繊維発現型繊維同士をあらかじめ絡合した後に、極細繊維を発現させることによって得ることができる。
本発明で用いられる不織布は、その内部に強度を向上させるなどの目的で、織物や編物を含有させることができる。このような織物や編物を構成する繊維の平均単繊維直径は、0.3〜20μm程度が好ましい。
本発明の不織布は直接紡糸によって得られる繊維を構成成分としても良いが、極細繊維発現型繊維を主な構成成分とすることが好ましい。極細繊維発現型繊維を用いることにより、その後の繊維極細化工程を経ることで、繊維を極細化でき、シート状物の厚さ均一性を高めることができる。
繊維の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリ乳酸などのポリエステル、6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、および熱可塑性セルロースなどの溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂などからなる繊維を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性および耐光性の観点から、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、環境配慮の観点から、リサイクル原料、植物由来原料から得られる繊維であることが好ましい。さらに、不織布は異なる素材の繊維が混合して構成されていてもよい。
また、繊維を構成するポリマーは、他の成分が共重合されていても良く、粒子、難燃剤および帯電防止剤等の添加剤を含有していても良い。
本発明で用いられる不織布を構成する単繊維の断面形状は、三角などの多角形、扇形および十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
不織布を構成する繊維の平均単繊維直径は、0.2〜30μmであることが重要である。平均単繊維直径を30μm以下とより細くすることにより、極細繊維の剛性が低くシート状物の厚さ均一性を高めることができる。一方、平均単繊維直径を0.2μm以上とより太くすることにより、しっかりとしたシート状物となり、主にポリウレタンを主成分としたコーティング層の形成時にシート状物の形態変化が起こらず、厚さ均一性を維持できる。繊維の平均単繊維径は好ましくは2.0〜8.0μmである。さらに好ましくは3.0〜6.0μmである。
本発明のシート状物は、高分子弾性体を含有してなることが必要である。高分子弾性体を不織布に含有してなることによって、バインダー効果により繊維がシート状物から抜け落ちるの(毛羽落ち)を防止し、起毛時に均一な立毛を形成し、シート状物の厚さ均一性を高めることが可能となる。また、高分子弾性体を含有することによって、シート状物の圧縮特性を均一とし、それを用いてコーティング層を形成する際の形態を保持できる。
不織布に含有している高分子弾性体の含有率は、繊維の質量に対し、1〜70質量%であることが好ましい。高分子弾性体の含有量を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上とすることにより、シート状物の高強度を得るとともに繊維の脱落をより防ぐことができる。また、高分子弾性体の含有量を60質量%以下、より好ましくは50質量%以下とすることにより、シート状物の圧縮率が好ましい範囲となりより扱いやすい。
また、必要に応じて上記の高分子弾性体は、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤および酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、および凝固調整剤、シリカや酸化チタン等の無機粒子等を含有していてもよい。
本発明で用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン系エラストマー、ポリウレア、ポリアクリル酸、エチレン・酢酸ビニルエラストマーおよびアクリロニトリル・ブタジエンエラストマーおよびスチレン・ブタジエンエラストマー等が用いられ、耐久性、圧縮率の観点からは、ポリウレタン系エラストマーが好ましく、コスト、毛羽落ち防止の観点からは、特にニトリルブタジエン系エラストマーが好適である。
上述した複数の高分子弾性体を不織布に含有せしめても良く、複数含有せしめる場合は、耐久性があり圧縮率の優れた高分子弾性体を内層部に偏在させ、毛羽落ち防止性の高い高分子弾性体を外層部に偏在させる方が好ましい。その観点では、不織布の内層部にポリウレタン系エラストマーを、外層部にニトリルブタジエン系エラストマーを偏在させる方法が好ましい。特に、銀付人工皮革ではこの組み合わせによって、表面を谷折りにしたときに、部分的にコーティング層が浮き上がったような粗めの折れ皺の発生を抑制可能であるため好ましい。
ポリウレタン系エラストマーを内層部に、ニトリルブタジエン系エラストマーを外層部に偏在させる場合は、ポリウレタン系エラストマーの繊維の質量に対する含有率が25〜40質量%、ニトリルブタジエン系エラストマーの含有率が3〜20質量%であることがより好ましい。これにより、シート状物の圧縮率と形態保持力、そして毛羽落ち防止性の全ての機能がより向上するため好ましい。
本発明で用いられるポリウレタン系エラストマーはポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどである。
本発明に使用されるポリウレタン系エラストマーは、溶剤系のポリウレタン系エラストマー、水分散系のポリウレタン系エラストマーのどちらであっても良い。
本発明で用いられるポリウレタン系エラストマーとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン系エラストマーが好ましく用いられる。
上記のポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールを採用することができ、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。中でも、耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系ジオールおよびポリエーテル系ジオールを用いることが好ましい。
上記のポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
また、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールおよび2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれでも良い。
また、ポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノールから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。
また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本発明で用いられるポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
ポリマージオールの数平均分子量は、ポリウレタン系エラトマーの分子量が一定の場合、500〜4000であることが好ましい。数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、シート状物が硬くなることを防ぐことができ、数平均分子量を4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタン系エラストマーとしての強度を維持することができる。
本発明で用いられる有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
鎖伸長剤としては、エチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、およびエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、ポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを鎖伸長剤として用いることもできる。
本発明で用いられるポリウレタンは、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性等を向上させる目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、ポリウレタン系エラストマーに対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。ポリウレタン分子構造内により均一に架橋点を形成することができ、柔軟性の減少を軽減できる点から、内部架橋剤を用いることが好ましい。
架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基などを有する化合物を用いることができる。
また、本発明で用いられるポリウレタン系エラストマーは、水分散型ポリウレタン系エラストマーである場合、分子構造内に親水性基を有していることが好ましい。分子構造内に親水性基を有することにより、水分散型ポリウレタン系エラストマーとしての分散・安定性を向上させることができる。
親水性基としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系の親水性基の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の親水性基の組み合わせのいずれの親水性基も採用することができる。
なかでも、光による黄変や中和剤による弊害の懸念のないノニオン系の親水性基が特に好ましく用いられる。すなわち、アニオン系の親水性基の場合は中和剤が必要となるが、例えば、中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミンおよびジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜・乾燥時の熱によってアミンが発生・揮発し、系外に放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために、揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。
また、アミンは加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留した場合、製品の焼却時等に環境へ排出されることも考えられる。これに対し、ノニオン系の親水性基の場合は、中和剤を使用しないためアミン回収装置を導入する必要はなく、アミンのシート状物中への残留の心配もない。また、中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなるが、ノニオン系の親水性基の場合は中和剤を使用しないため、ポリウレタン系エラストマーの加水分解による劣化を心配する必要もない。
本発明のシート状物は撥水剤を付与せしめてなることが重要である。撥水剤を付与しない場合は、シート状物の撥水性を制御することはできない。コーティング層を形成する際に、突発的に異常孔(極端に径が大きく、目視で異常を確認できる連続していない孔)が発生する等、均一な発泡構造を有することが困難となる。コーティング層が均一な発泡構造を有することは、コーティング層の表面の開口径が均一であることからわかる。開口径が均一であることは、コーティング層の厚さ方向に対して垂直な平面での発泡が均一であることを意味する。さらに、厚さ方向に並行な平面で考えると、発泡した孔は楕円状であるため、厚さ方向に対して不均一に発泡すると、開口径となる部分の径にばらつきが生じ、開口径は不均一となる。また、コーティング層が水分散系樹脂の場合、シート状物に撥水性を付与しない場合は過剰に樹脂がシート状物へしみ込むため、均一なコーティングが困難となる。過剰なしみ込みは製品の重量が増加するため、軽い製品が求められる用途ではふさわしくない。過剰なしみ込みとは、必要以上のしみ込みのことであり、シートの強度を保持するためにはある程度のしみ込みが必要なこともある。
本発明で用いられる撥水剤は、脂肪酸アミド系化合物、アルキルメチロールアマイド、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フッ素系化合物等の繊維製品などに使用される撥水剤、撥油剤、防汚加工剤として通常入手可能なものであれば何れでも使用可能であるが、撥水剤の扱いやすさと耐久性、撥水性の強さを考慮するとフッ素系撥水剤が好ましい。フッ素系撥水剤としては、フルオロアルキル基を有するものが一般的である。中でも、フッ素アルキル基を有するアクリレート共重合体やメタクリレート共重合体が、フルオロアルキル基の配向が乱れにくいため撥水効果が得られやすく、安定的な撥水性を付与する点では好ましい。
また、シート状物のコーティング層を形成する面に、撥水剤が多く存在した際には、撥水剤のコーティング層への溶出量が多く、コーティング層の形成反応を阻害し異常孔が発生する。よって、撥水剤の付量は繊維に対し0.01〜0.50質量%であることが重要である。撥水剤の付量を0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%とすることで、シート状物は適度な撥水性を有し、シート状物にコーティングするコーティング層は良好なものとなる。撥水剤の付量を0.50質量%以下、好ましくは0.20質量%以下とすることで、撥水剤のコーティング層への溶出量が少なく、コーティング層の形成反応を阻害することはない。さらには、撥水剤付与物の撥水性は、時間変化、もしくは室温以上で加温すると撥水性が徐々に上昇することが知られており、撥水剤の付量を0.50質量%以下とすることで、撥水性の変化の少ない長期保管が容易なシート状物を得ることができる。撥水剤の付量が多いと、撥水性が上昇した後にコーティング層を形成すると、シート平面で撥水剤の溶出量の差、撥水性の差が大きくなり、異常孔が発生する。
また、適度な撥水性を評価する方法として、シート状物について、コーティング層を形成する面とは逆面(裏面)からの吸水時間を測定する方法がある。好ましい様態によれば、裏面の吸水時間は2〜2000秒である。裏面の吸水時間を2秒以上とすることで、面方向での裏面からの吸水量の差が少なく、コーティング層の品位が均一となる適度な撥水性となる。より好ましい吸水時間は3秒以上である。さらに、吸水時間を2000秒以下、より好ましくは1000秒以下とすることで、コーティング層の形成反応を阻害しない適度な撥水性となる。
撥水剤はシート状物の内層部と外層部に存在することが重要である。内層部に存在することで、シートの厚み方向において吸水の制御が可能であり、異常孔の発生を抑制可能である。さらには、コーティング層の発泡構造を均一とするために好ましい様態である。ここで言う外層部とは、シートの厚み方向に対し、表面と裏面それぞれ表層から厚み30%までの範囲の部分のことであり、残り40%を内層部とする。
撥水剤はシート状物の内層部と外層部に存在するかどうかは、以下の方法で確認することができる。上述したそれぞれの層について、繊維を溶解しない溶液で高分子弾性体を抽出し、元素分析、NMRなど周知の分析機器を組合せることで、撥水剤の存在を確認できる。
撥水剤の存在は、例えばフッ素系撥水剤の場合は、SEM−XMAを用いたF元素の検出試験を実施することでも確認できる。シート状物の厚み方向に平行な断面を、SEM−XMAを用いて50倍の倍率でフッ素原子の元素マップを測定し、ドットで検出された個数を数え、その個数について、撥水剤存在比、すなわち(撥水剤の外層部と内層部の存在比)=(外層部の個数)/(内層部の個数)が10〜1000であることが好ましい。後述の通り、内層部にもある程度撥水剤の存在が必要だが、撥水性の観点から、撥水剤は外層部に多く必要である。
しかしながら、撥水材が多すぎることは好ましくない。シート状物の厚み方向に平行な断面を、SEM−XMAを用いて50倍の倍率で撮影し、長手方向3mm×各層部(表側外層部、裏側外層部、内層部)の範囲について、それぞれSEM−XMA測定し、フッ素の元素ピークより全元素に対するフッ素元素質量濃度を算出し、これを撥水剤存在濃度とし、撥水剤存在濃度が表側外層部、裏側外層部、内層部それぞれ5%以下となることが好ましい。より好ましくは3%以下である。さらに好ましくは1%以下である。撥水剤存在濃度が低くとも、上述の通り、フッ素系撥水剤の存在は確認できる。以上は、シリコン系撥水剤の場合は、Si元素について同等に測定できる。
本発明の高分子弾性体と撥水剤とは別々に不織布に含有させてもよいが、撥水剤は高分子弾性体に混合して不織布に含有しても良く、撥水剤をシート状物の内層部にある程度存在させるためにはこの方法が重要であり、さらには撥水剤のコーティング層への溶出量を少なくすることができる。さらには、コーティング層の樹脂のしみ込みの点からは、高分子弾性体と撥水剤の双方の効果によって、過剰なしみ込みを抑制可能である。撥水剤のみを含有せしめた場合は、撥水剤の付量を上述した範囲とするためには、含浸時の撥水剤固形分濃度が低くなり、撥水剤が表層(外層部)にマイグレーションするために、シート状物の内層部に撥水剤を含有せしめにくい。
撥水剤を高分子弾性体に混合する場合は、撥水剤は高分子弾性体と異なるイオン性であることが好ましく、その点ではノニオン性であることが扱い易いためより好ましい。上述したように、耐久性があり圧縮率に優れた高分子弾性体を内層部に偏在させ、毛羽落ち防止性の高い高分子弾性体を外層部に偏在させる場合は、外層部に偏在させる高分子弾性体と混合する方が、ある程度撥水剤は内層部にも存在させることができ、撥水性の観点から好ましい。
撥水剤を付与したシート状物の裏面(コーティングする面と逆面)に、グラビアコーター法、スプレーコーター法など公知の液状処理剤付与方法で、さらに撥水剤を付与しても良い。表面(コーティングする面)にさらに撥水剤を付与すると、コーティング層へ撥水剤が溶出し、異常孔が発生し易くなるので好ましくない。
コーティング層の発泡構造をより均一とするためには、シート状物の平滑性を制御することが非常に好ましい。というのも、凹の部分と凸の部分では、厚みが違うため、水がシート裏面から表面まで到達する時間、吸水時間が異なることになり、すなわち発泡構造に与える影響が大きいためである。よって、本発明のシート状物は、厚さCV値が0.1〜4.0であることが好ましい。厚さCV値が0.1〜4.0の場合、シート状物上にコーティング層を形成した後のコーティング層表面の厚さCV値をより小さくすることができる。また、コーティング層の形成反応においても、厚さCV値が上記範囲であることで、厚み差による吸水時間の差がより小さくなる。
そして、コーティング層表面の厚さCV値を小さくすることにより、研磨パッドを用途とした際はより精密に研磨することが可能となり、銀付人工皮革を用途とした際はより均一な表面となり、銀面を染色した際により染色ムラが少なくなる。本発明のシート状物の厚さCV値は、好ましくは0.1〜2.0であり、より好ましくは0.1〜1.5である。銀付人工皮革では、使用する部材によっては、厚みCV値が小さくなくとも、0.1〜4.0であればよいこともある。
本発明のシート状物の圧縮率は3.0〜20.0%であることが好ましい。圧縮率を3.0%以上、より好ましくは4.0%以上とすることでシート状物はより柔軟となり、シート状物を銀付人工皮革基材として用いた際は、銀付人工皮革はより柔軟となり、シート状物を研磨パッド基材として用いた際は、研磨パッドの研磨性能がより優れたものとなる。銀付人工皮革において、厚さが必要な部材として使用する際は、圧縮率が3.0%〜10.0%が好ましい場合もある。また、圧縮率を20.0%以下、より好ましくは15.0%以下とすることでシート状物の形態変化が少なくより扱いやすい。
本発明のシート状物の厚さは、好ましくは0.3〜5.0mmである。厚さを0.3mmより大きくすることにより、研磨パッド基材の形態安定性・寸法安定性に優れ、シート状物の変形による加工ムラの発生をより抑えることができる。一方、厚さを5.0mmより小さくすることにより、シート状物の取扱い性がより容易となる。
次に、本発明のシート状物を製造する方法の例について説明する。
極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布を得る手段としては、極細繊維発現型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発現型繊維から不織布を製造し、この不織布における海島型複合繊維から極細繊維を発現させることにより、極細繊維からなる繊維束が絡合してなる不織布を得ることができる。
前記極細繊維発現型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。なかでも、海島型繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、シート状物の圧縮特性の観点からも好ましく用いられる。
前記海島型繊維には、例えば、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがある。均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物の強度にも資する点からは、海島型複合繊維が好ましく用いられる。
海島型繊維の海成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スルホイソフタル酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルおよびポリ乳酸、PVAなどを用いることができる。
海島型繊維の繊維極細化処理(脱海処理)は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、搾液することによって行うことができる。海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンの場合にはトルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用い、海成分が共重合ポリエステルまたはポリ乳酸の場合には水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。
海成分の溶解除去は、高分子弾性体を含浸する前、含浸した後、起毛処理後、のいずれのタイミングで行ってもよい。内部に偏在させる高分子弾性体付与前に脱海処理を行うと、極細繊維に直接高分子弾性体が密着する構造となって極細繊維を強く把持できることから、シート状物の耐摩耗性がより良好となる。一方、内部に偏在させる高分子弾性体付与後に脱海処理を行うと、高分子弾性体と極細繊維間に、脱海された海成分に起因する空隙が生成することから、極細繊維を直接ポリウレタンが把持せずにシート状物の圧縮特性が良好となる。さらに、外層部に偏在させるための高分子弾性体の付与が容易となる。
本発明で用いられる不織布を得る方法としては、繊維ウェブをニードルパンチやウォータージェットパンチにより絡合させる方法、スパンボンド法、メルトブロー法および抄紙法などを採用することができる。なかでも、前述のような極細繊維束の態様とする上で、ニードルパンチやウォータージェットパンチなどの処理を経る方法が好ましく用いられる。
ニードルパンチ処理に用いられるニードルにおいて、ニードルバーブ(切りかき)の数は、好ましくは1〜9本である。ニードルバーブを1本以上とすることにより、効率的な繊維の絡合が可能となる。一方、ニードルバーブを9本以下とすることにより繊維損傷を効率的に抑えることができる。
パンチング本数は、好ましくは1000〜4000本/cmである。パンチング本数を1000本/cm以上とすることにより、効率的に緻密性が得られ、高精度の仕上げを得ることができる。一方、パンチング本数を4000本/cm以下とすることにより、効率的に加工性の悪化、繊維損傷および強度低下を防ぐことができる。
また、ウォータージェットパンチ処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで水を噴出させることが好ましい態様である。
このようにして得られた不織布(繊維絡合体)は、緻密化の観点から、乾熱もしくは湿熱、またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。また、上記不織布を、カレンダー処理等により厚さ方向に圧縮してもよい。
本発明で用いられる不織布の見掛け密度は、0.10〜0.60g/cmであることが好ましい。不織布の見掛け密度が上記範囲内であると、不織布構造が均一になり、面積方向において品質のバラツキが極めて大きくなることを避けることができ、また得られるシート状物の物性や圧縮率は良好となる。不織布の見掛け密度は、より好ましくは0.15〜0.55g/cmである。見掛け密度を0.15g/cm以上とすることにより、シート状物の形態安定性と寸法安定性に優れる。一方、見掛け密度を0.55g/cm以下とすることにより、効率的に高分子弾性体を含浸するための十分な空間を維持することができる。
内層部に偏在させる高分子弾性体、特にはポリウレタン系エラストマーの付与は、極細繊維発現型の海島型複合繊維が絡合した不織布(繊維絡合体)に、鹸化度が好ましくは80%以上のポリビニルアルコールを付与し、乾燥させポリビニルアルコールをマイグレーションさせ、繊維の周囲の大部分を保護した後、海島型複合繊維の海成分をポリビニルアルコールは溶解しない溶剤で溶解除去し、次いでポリウレタン系エラストマーを付与し、水もしくは有機溶剤水溶液中で凝固させた後、ポリビニルアルコールを除去する方法などを好ましく用いることができる。
ポリウレタン系エラストマー液を不織布に含浸等し、凝固させる場合、ポリウレタン系エラストマーが溶剤系のポリウレタン系エラストマーであれば、乾熱凝固、湿式凝固あるいはこれらの組み合わせ、また、水分散型のポリウレタン系エラストマーであれば、乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固あるいはこれらの組み合わせにより、ポリウレタン系エラストマーを凝固させることができる。
ポリウレタン系エラストマーが溶剤系の場合は、水中に浸漬して凝固させる湿式凝固が好ましく、ポリウレタン系エラストマーが水分散型のポリウレタンの場合は湿熱凝固が好ましい。ポリウレタン系エラストマーが水分散型の場合は感熱凝固性を示すことが好ましい。水分散型ポリウレタン系エラストマーにおいて、感熱凝固性を示さない場合、ポリウレタン系エラストマー液は乾式凝固の際に不織布の表層に集中するマイグレーション現象が発生し、ポリウレタン系エラストマーを含有したシート状物は硬化する傾向にある。ここで感熱凝固性とは、ポリウレタン系エラストマー液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達するとポリウレタン系エラストマー液の流動性が減少し、凝固する性質のことを言う。
水分散型ポリウレタン系エラストマーの感熱凝固温度は、40〜90℃であることが好ましい。感熱凝固温度を40℃以上とすることにより、ポリウレタン系エラストマー液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへのポリウレタン系エラストマーの付着等を抑制することができる。また、感熱凝固温度を90℃以下とすることにより、不織布中でのポリウレタン系エラストマーのマイグレーション現象を抑制することができ、内部に偏在させることができる。
感熱凝固温度を前記のとおりとするために、適宜感熱凝固剤を添加してもよい。感熱凝固剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムおよび塩化カルシウム等の無機塩や、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルおよび過酸化ベンゾイル等のラジカル反応開始剤が挙げられる。
湿式凝固の温度は、溶剤系ポリウレタン系エラストマーの場合は、特に限定はない。水分散型ポリウレタン系エラストマーの場合は、ポリウレタン系エラストマーの感熱凝固温度以上であればよく、例えば、40〜100℃であることが好ましい。熱水中での湿式凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタン系エラストマーの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。
湿熱凝固の温度は、水分散型ポリウレタン系エラストマーの感熱凝固温度以上であればよく、例えば、40〜200℃であることが好ましい。湿熱凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタン系エラストマーの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。一方、湿熱凝固の温度を200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、ポリウレタン系エラストマーの熱劣化を防ぐことができる。
このようにして得られたシート状物の厚さを更に均一化するため、バフ処理を行うことが好ましい。用途、コーティング層の性質によってはバフ処理を行わない方が好ましい場合もある。バフ処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて行うことができる。バフ処理に用いられるサンドペーパーの番手は、均一にバフ処理を行うためにJIS規定の100番〜600番の範囲が好ましい。バフ処理に用いられるサンドペーパーの番手は、数字の大きいものほどシート状物表面を平滑化することができるが、連続してサンドペーパーを使用する際は、研削能力を考慮し、サンドペーパーの番手を適宜選ぶことができる。
バフ処理では、バフ処理前のシート状物の厚さに対して15%以上厚さが減少するように研削することがシート状物を均一な厚さにするために好ましい。厚さ減少率が15%より少ないとシート状物表面の凹凸が除去しきれずに厚さが不均一となりやすい。
このとき、シート状物の表と裏の両面をバフ処理することが好ましい。片面のみのバフ処理ではバフ処理を行わない面の平滑化が出来ないため、シート状物の厚さを均一にすることが難しい。シート状物の表面と裏面はバフ処理前のシート状物の厚さに対して、バフ処理後の厚さが、それぞれ5%以上減少するように研削することが好ましい。また、シート状物の表面であるコーティング層を形成する面(表面)は、均一にコーティング層を形成するために、バフ処理前のシート状物の厚さに対して、バフ処理後の厚さが、10%以上減少するように研削することが好ましい。
前述した起毛処理の前に、高分子弾性体付与シート状物にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与することもできる。また、シート状物の起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくする上で好ましい態様である。
また、上述した毛羽落ち防止性の高い高分子弾性体を外層部に偏在させる方法としては、高分子弾性体を水系エマルジョン等の状態として、不織布に上述した耐久性があり圧縮率の優れた高分子弾性体を付与した後に、立毛したシート状物に対し、通常のディップニップ等の方法で毛羽落ち防止性の高い高分子弾性体を付与することが好ましい。立毛後のシート状物に付与することで、立毛工程で脱落しやすくなった繊維の脱落を防ぐことができる。立毛しない場合は、不織布に上述した耐久性があり圧縮特性の優れた高分子弾性体を付与した後に、通常のディップニップ等の方法で毛羽落ち防止性の高い高分子弾性体を付与することが好ましい。具体的には、付与したエマルジョンを、乾燥により厚さ方向にマイグレーションさせることにより、外層部に偏在せしめることができる。
例えばニトリルブタジエン系エラストマーを用い、撥水剤を混合し、好ましい様態としては、乾燥温度140〜240℃で乾燥する。より好ましくは160〜180℃である。乾燥後に、温度110〜170℃で撥水剤をキュアさせるための工程を追加することが好ましい。
撥水剤を不織布に含有せしめる際の好ましい濃度は、0.01〜3質量%溶液である。より好ましくは0.01〜1質量%溶液である。
以上の様態によってシート状物は、良好なコーティング層を形成するための平滑性、適度な吸水性、圧縮率などの機械的性質、そして繊維が脱落しコーティング層に混入しないこと、これら全てを併せもったシート状物を可能とすることができる。
不織布に高分子弾性体の付与後、シート厚み方向に半裁ないしは数枚に分割することは、生産効率に優れ好ましい態様である。
本発明のシート状物を用いれば、コーティング層を形成する前処理工程の、下引き樹脂のコーティング(下引き層)なしでも樹脂のしみ込みが少ないため、下引き加工を省略できることもある。下引き加工は製品の重量が増加するため、軽い製品が求められる用途ではふさわしくない。さらに、上述したコーティング層における本発明の効果は、下引き樹脂のコーティングについても同様の効果を及ぼす。下引き層には、シートとコーティング層を接着させる接着層も含まれる。
本発明のシート状物は、その表面にコーティング層を形成して、銀付人工皮革または研磨パッドを製造する際に用いられることに特に適しているが、限定されるものではなく、シート全体の制御された撥水性、あるいは吸水性の均一性を活かした用途に適している。
本発明のシート状物を適用した研磨パッドは、シリコンベアウエハ、ガラス、化合物半導体基板およびハードディスク基板等に良好な鏡面研磨面を形成するのに好適に使用される。
本発明のシート状物を適用した銀付人工皮革は、家具、椅子および壁材や、自動車、電車および航空機などの車輛室内における座席、天井および内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、鞄、ベルト、財布等、およびそれらの一部に使用した衣料用資材として用いることができる。本発明のシート状物は好ましくは銀付人工皮革用または研磨パッド用として用いることができる。
銀付人工皮革とするためのコーティング層や下引き層の形成方法としては、乾式造面法、ダイレクトコート法などがあり、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。各層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよい。好ましい厚みは10〜1000μmであり、より好ましくは50〜800μmである。
コーティング層に用いられる樹脂はポリウレタンが最も好適であり、公知のポリウレタンから選ばれる。適宜他の樹脂を混合しても良い。近年多くの用途で耐久性が要求されていることからポリエーテル系、あるいはポリカーボネート系などの耐久性に優れたポリウレタンを用いることがより好ましい。耐摩耗性の点からは、シリコーン変性ポリウレタンが好ましい。同じ理由で、ポリウレタン樹脂にシリコーンオイルや固体のシリコーン系化合物を含有しても良い。また、環境負荷の点からは、水分散系ポリウレタンを用いて銀面層を形成することが好ましい。なお、水分散液には、懸濁分散液及び乳化分散液が含まれても良い。樹脂には架橋剤、カーボンブラック、熱膨張マイクロカプセル、難燃剤、鎖伸張剤、有機フィラー、チキソトロピー付与剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤など各種添加剤を含有しても良い。下引き層としては、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられ、コーティング層と同様の樹脂を用いることができる。
次に、実施例によって、さらに本発明のシート状物について詳細に説明する。しかしながら、本実施例により本発明が限定して解釈される訳ではない。評価および各測定は、次のとおりに行った。
[毛羽落ち評価]
シート状物について、長さ5cm、幅1.5cmのセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け1分間静置した後、セロハンテープ(ニチバン社製)を剥がし黒色の台紙に貼り付け、繊維の脱落によって白色となる部分の多さ、形状を評価した。評価は、健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視と官能評価にて下記のように5段階評価し、最も多かった評価を毛羽落ち評価とした。3級〜5級を良好とした。
5級:白色部分は存在せず毛羽落ちなし
4級:白色部分が極稀に見える
3級:白色部分がわずかに見え、繊維が脱落した形状をわずかに確認できる
2級:白色部分が見え、繊維が脱落した形状を確認できる
1級:全体に白色部分が見える。
[コーティング層の開口径CV値]
ポリエステル系でイソシアネートにMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を用いたポリウレタン樹脂25質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100質量部に溶解した。さらに、これにカーボンブラックを2質量部と疎水性活性剤を2質量部添加し、ポリウレタン溶液を調整した。次いで、シート状物(撥水剤付与加工を実施した直後)の上に、上記のポリウレタン溶液をナイフコーターでポリウレタン層の厚さが400μmとなるように塗布し、水浴に浸漬してポリウレタンを凝固再生し、水による洗浄でポリウレタン中のDMFを除去した後、水分を乾燥し、コーティング層を形成した。得られたコーティング層の微多孔形成面を、#200のサンドペーパーでバフ掛けすることにより、コーティング層形成シート状物を得た。コーティング層形成シート状物のコーティング層の表面について、SEMを用いて倍率50倍で観察して、画像処理ソフト「ウィンルーフ」を用いて画像処理をおこない、開口部分を黒になるようにニ値化して、各開口部分の面積を、真円の面積と見たときの直系を算出し、開口径を測定した。この測定をランダムに100点行い、これを母集団とした標準偏差値および平均値を算出し、該平均値を開口径とした。該標準偏差値を該平均値で割った値を百分率(%)で表したものを開口径のCV(変動係数)値とした。
[シート状物の強制加熱後のコーティング層の開口径CV値]
コーティング層形成前のシート状物について、140℃で1時間加熱することで強制エージング(強制過熱試験。高分子弾性体と撥水剤を付与、キュアしたシート状物について、長期保管後の状態を再現)させた後に上述したようにコーティング層を形成し、開口径CV値を測定した。
[平均単繊維直径]
シート状物の繊維を含む厚さ方向に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM キーエンス社製VE−7800型)を用いて3000倍で観察し、30μm×30μmの視野内で無作為に抽出した50本の単繊維直径をμm単位で、有効数字3桁で測定した。ただし、これを3ヶ所で行い、合計150本の単繊維の直径を測定し、有効数字3桁目を四捨五入し平均値を有効数字2桁で算出した。繊維径が50μmを超える繊維が混在している場合には、当該繊維は極細繊維に該当しないものとして平均繊維径の測定対象から除外するものとする。また、極細繊維が異形断面の場合、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径を算出することによって単繊維の直径を求めた。これを母集団とした平均値を算出し、平均単繊維直径とした。
[厚さおよび厚さCV値の測定]
シート状物から1m四方(1m×1m)のサンプルを採取し、該シート状物サンプルを100分割し10cm四方(10cm×10cm)の試料片を100枚採取し、JISL1913の方法で各試料片の厚さを測定した。これを母集団とした標準偏差値および平均値を算出し、該平均値を厚さとした。該標準偏差値を該平均値で割った値を百分率(%)で表したものを厚さのCV(変動係数)値とした。
[圧縮率の測定]
研磨パッドから1m四方(1m×1m)のサンプルを採取し、該サンプルから5cm四方(5cm×5cm)の試料片を無作為に100枚選択し、JISL1913の方法で圧縮率を測定した。これを母集団とした標準偏差値および平均値を算出し、該平均値を圧縮率とした。
[撥水剤の付量]
シート状物から1m四方(1m×1m)のサンプルを採取し、該シート状物サンプルを100分割し10cm四方(10cm×10cm)の試料片を100枚採取し、各試料片から撥水剤を含む高分子弾性体および/または撥水剤を含まない高分子弾性体を分離、または繊維を溶出しない溶媒で抽出して繊維のみとしてその質量を測定した。これを母集団とした平均値を算出し、該平均値を繊維質量とした。各試料片から分離、または抽出した高分子弾性体について、撥水剤特有の元素、もしくは官能基について、元素分析、NMR測定などの周知の測定機器で、測定を行うことで撥水剤を定量した。これを母集団とした質量の平均値を算出し、該平均値を撥水剤質量とした。以上の量から次式にて計算した値をシート状物の撥水剤付量とした。
・撥水剤付量(質量%)=撥水剤質量/繊維質量。
[撥水剤の存在確認]
内層部と外層部の撥水剤の存在は、上述したそれぞれの層について、繊維を溶解しない溶液で高分子弾性体を抽出し、その抽出成分について、元素分析、NMRなど周知の分析機器を組合せることで、撥水剤の存在を確認できる。
[撥水剤存在比]
撥水剤存在比は、例えばフッ素系撥水剤の場合は、SEM−XMAを用いたF元素の検出試験を実施することで確認した。シート状物の厚み方向に平行な断面を、SEM−XMAを用いて50倍の倍率でフッ素元素の元素マップを測定し、ドットで検出された個数を数えた。その個数について、次式にて計算した値を撥水剤存在比とした。
・撥水剤存在比(撥水剤の外層部と内層部の存在比)=(外層部の個数)/(内層部の個数)。
[撥水剤存在濃度]
撥水剤存在濃度は、例えばフッ素系撥水剤の場合は、シート状物の厚み方向に平行な断面を、SEM−XMAを用いて50倍の倍率で撮影し、長手方向3mm×各層(表側外層部、裏側外層部、内層部)の範囲について、それぞれSEM−XMA測定し、フッ素の元素ピークよりフッ素元素質量濃度を算出し、これを撥水剤存在濃度とした。以下の実施例1と比較例2、3について撥水剤存在濃度の測定を試みた。
[実施例1]
(原綿)
(海成分と島成分)
ポリエチレンテレフタレート(PET)を島成分とし、ポリスチレンを海成分とした。
(紡糸・延伸)
上記の島成分と海成分を用い、16島/ホールの海島型複合口金を用いて、紡糸温度285℃、島/海質量比率80/20、吐出量1.2g/分・ホール、紡糸速度1100m/分で溶融紡糸した。次いで、スチーム延伸により2.8倍に延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮を付与し、カットして、複合繊維単繊度が21μmで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
(極細繊維発生型繊維からなる不織布)
上記の海島型複合繊維の原綿を用い、カード工程とクロスラッパー工程を経て、積層繊維ウェブを形成した。次いで、得られた積層繊維ウェブを、トータルバーブデプス0.08mmのニードル1本を植込んだニードルパンチ機を用いて、針深度6mm、パンチ本数3000本/cmでニードルパンチし、目付が815g/mで、見掛け密度が0.225g/cmの極細繊維発現型繊維からなる不織布を作製した。
(シート状物)
上記の極細繊維発現型繊維からなる不織布を、95℃の温度で熱水収縮処理させた後、ポリビニルアルコールを繊維質量に対し26質量%付与後、乾燥温度140℃で10分間熱風乾燥し、トリクロロエチレンを用いて海成分のポリスチレンを溶解除去後、乾燥し、極細繊維束からなる不織布を得た。このようにして得られた不織布に、ポリマージオールがポリエーテル系75質量%とポリエステル系25質量%とからなるポリウレタンを、不織布とポリウレタンからなるシートの質量に対し、極細繊維と凝固後のポリウレタンの固形分質量比が22質量%となるように含浸させ、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の温度の熱水で処理し、DMFおよびポリビニルアルコールを除去したシートを得た。その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁機により厚さ方向に半裁してシートを得た。半裁したシートの厚さは1.35mmであった。得られたシートの表裏両面をバッフィング研削した。バッフィング研削では、表面研削後の厚さが1.05mmであり、厚さ減少率は22.2%であった。裏面のバフィング研削後の厚さは0.95mmであり、厚さ減少率は9.5%であった。
上記のシートに、ニトリルブタジエンゴム(NBR)(日本ゼオン社製 Nipol LX511A)樹脂の8.5質量%溶液とフッ素撥水剤(ダイキン工業製 ユニダイン TG−5502)0.15質量%溶液を1:1で混合した溶液を用い、繊維に対して撥水剤付量が0.05質量%となるように付着させ、170℃で5分乾燥した。さらに140℃で2分間キュアさせた。得られたシート状物の特性を表1に示す。
(コーティング層形成)
ポリエステル系でイソシアネートにMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を用いたポリウレタン25質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100質量部に溶解した。さらに、これにカーボンブラックを2質量部と疎水性活性剤を2質量部添加し、ポリウレタン溶液を調整した。
次いで、上記のシート状物(撥水剤付与加工を実施した直後)の上に、上記のポリウレタン溶液をナイフコーターでポリウレタン層の厚さが400μmとなるように塗布し、水浴に浸漬してポリウレタンを凝固再生し、水による洗浄でポリウレタン中のDMFを除去した後、水分を乾燥し、コーティング層を形成した。
得られたコーティング層の微多孔形成面を、#200のサンドペーパーでバフ掛けすることにより、コーティング層形成シート状物である研磨パッドを得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。ここで、実施例6〜8は、参考例1〜3と読み替えるものとする。撥水剤存在濃度は内層部と外層部(表側、裏側)ともに0.1%以下であった。
[実施例2]
(シート状物、コーティング層形成)
実施例1で調整したポリウレタン溶液のカーボンブラック2質量部をカーボンブラック10質量部としたこと以外は、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物である銀付人工皮革を得た。銀付人工皮革として好ましく用いることができた。特に、表面を谷折りにしたときに、部分的にコーティング層が浮き上がったような粗めの折れ皺の発生はなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例3]
(シート状物、コーティング層形成)
シート状物を構成する繊維の平均単繊維直径が14.4μmとなること以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例4]
(シート状物、コーティング層形成)
シート状物を構成する繊維の平均単繊維直径が1.0μmとなること以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例5]
(シート状物、コーティング層形成)
シート状物を構成する繊維の平均単繊維直径が4.6μm、撥水剤付量が0.40質量%となること以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例6]
(シート状物、コーティング層形成)
不織布の内層に偏在せしめる高分子弾性体をニトリルブタジエンゴムとしたこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例7]
(シート状物、コーティング層形成)
バフィング研削後のシートに付与する高分子弾性体を、水分散型ポリウレタン(水系PU)としたこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例8]
(シート状物、コーティング層形成)
バフィング研削後のシートに付与する高分子弾性体を、スチレンブタジエンゴム(SBR)(日本ゼオン社製 Nipol 1502)としたこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例9]
(シート状物、コーティング層形成)
シート状物に含有せしめる撥水剤をシリコーン系撥水剤(旭化成ワッカーシリコン社製 HC303VP)に変更したこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例10]
(シート状物、コーティング層形成)
不織布の内層に偏在せしめる高分子弾性体を水分散型ポリウレタン(水系PU)としたこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例11]
(シート状物、コーティング層形成)
ニトリルブタジエンゴムとフッ素撥水剤の混合溶液を付与した後の乾燥温度を130℃とする以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物(研磨パッド)を得た。研磨パッドとして好ましく用いることができた。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例12]
(シート状物、コーティング層形成)
半裁したシートについてバフィング処理しなかったこと以外は実施例2と同様にコーティング層形成シート状物である銀付人工皮革を得た。銀付人工皮革として好ましく用いることができた。特に、表面を谷折りにしたときに、部分的にコーティング層が浮き上がったような粗めの折れ皺の発生はなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[実施例13]
(シート状物、コーティング層形成)
シートを半裁せず、かつバフィング処理しなかったこと以外は実施例2と同様にコーティング層形成シート状物である銀付人工皮革を得た。銀付人工皮革として好ましく用いることができた。特に、表面を谷折りにしたときに、部分的にコーティング層が浮き上がったような粗めの折れ皺の発生はなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[比較例1]
(シート状物、コーティング層形成)
シート状物を構成する繊維の平均単繊維直径が32.0μmとなること以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[比較例2]
(シート状物、コーティング層形成)
ニトリルブタジエンゴムとフッ素撥水剤の混合溶液を付与した後の乾燥温度を250℃とする以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。撥水剤存在濃度は内層部は0.1%以下であったが、外層部(表側、裏側)はそれぞれ5.2%であった。
[比較例3]
(シート状物、コーティング層形成)
バフィング研削後のシートに、ニトリルブタジエンゴム樹脂の8.5質量%溶液とフッ素撥水剤9.0質量%溶液を1:1で混合した溶液を用い、繊維に対して撥水剤付量が3.00質量%となるように付着させたこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。撥水剤存在濃度は内層部は0.1%以下であったが外層部(表側、裏側)は4.2%であった。
[比較例4]
バフィング研削後のシートに、ニトリルブタジエンゴムのみを含有せしめた後、撥水剤を単独で付与したこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[比較例5]
バフィング研削後のシートに、ニトリルブタジエンゴムのみを含有せしめ、撥水剤を付与しなかったこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
[比較例6]
バフィング研削後のシートに、高分子弾性体を含有せしめず、撥水剤を単独で付与したこと以外は、実施例1と同様にシート状物を得た。得られたシート状物の特性を表1に示す。また、実施例1と同様にコーティング層形成シート状物を得た(研磨パッド)。研磨パッドとしては好ましくなかった。コーティング層の特性を表1に示す。
Figure 0006372225

Claims (7)

  1. 平均単繊維直径が0.2〜30μmの繊維からなる不織布と、高分子弾性体と撥水剤からなるシート状物であって、前記高分子弾性体が少なくともポリウレタン系エラストマーおよびニトリルブタジエン系エラストマーを含み、内層部にポリウレタン系エラストマー、外層部にニトリルブタジエン系エラストマーが偏在し、撥水剤が該シートの内層部と外層部に存在し、該撥水剤の付量が繊維に対し0.01〜0.50質量%であることを特徴とするシート状物。
  2. 厚さCV値が0.1〜4.0である請求項1記載のシート状物。
  3. 前記撥水剤がフッ素系撥水剤である請求項1または2に記載のシート状物。
  4. 圧縮率が3.0〜20.0%である請求項1〜のいずれかに記載のシート状物。
  5. 前記平均単繊維直径が2.0〜8.0μmである請求項1〜のいずれかに記載のシート状物。
  6. 銀付人工皮革用または研磨パッド用である請求項1〜のいずれかに記載のシート状物。
  7. 平均単繊維直径が0.2〜30μmの繊維からなる不織布に、高分子弾性体と撥水剤とを混合して含浸せしめ、前記高分子弾性体が少なくともポリウレタン系エラストマーおよびニトリルブタジエン系エラストマーを含み、内層部にポリウレタン系エラストマー、外層部にニトリルブタジエン系エラストマーが偏在し、撥水剤が該シートの内層部と外層部に存在し、該撥水剤の付量が繊維に対し0.01〜0.50質量%であるシート状物を得る工程および、該シート状物の表面に下引き層および/またはコーティング層を形成する工程を有することを特徴とするコーティング層形成シート状物の製造方法。
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