JP2014163026A - シート状物の製造方法およびシート状物 - Google Patents

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Abstract

【課題】工程数を減らし、製造工程中の形態保持性を高め、優美な立毛を有し緻密の高いシート状物の製造方法の提供。
【解決手段】以下の1〜5の工程をこの順に行う。1.極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に、仮固定用樹脂を繊維質量に対し、0.05〜10質量%付与するように、仮固定用樹脂水溶液を付与する工程、2.熱を加えて前記仮固定用樹脂を前記繊維質基材の両表面から前記繊維質基材の厚み方向0〜20%の範囲に移行させる工程、3.前記仮固定用樹脂を付与した繊維質基材から平均単繊維直径が0.3〜7μmの極細繊維を発現させる工程、4.前記極細繊維を発現した繊維質基材にポリウレタンを付与する工程、5.ポリウレタンを付与した繊維質基材からバッフィングにより前記仮固定用樹脂を除去する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、極細繊維で構成されたシート状物の製造方法において、製造工程におけるシートの形態保持性を高め、良好な表面外観と緻密感を両立し、かつ良好な耐摩耗性を有するシート状物の製造方法に関するものである。
主として極細繊維とポリウレタンからなるシート状物は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。
このようなシート状物を製造するにあたっては、極細繊維発現型繊維から構成される繊維質基材に、極細繊維化処理(脱海処理)を施し、ポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、得られた繊維質基材を、ポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤/水の混合溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程からなる製造方法が、一般的に採用されている。しかしながら、このような製造方法においては、脱海処理工程などにおけるシート状物にかかる製造工程張力により、シートは寸法変化を起し、得られるシート状物の緻密感が低下するという課題があった。
その課題を解決する手段として、例えば、脱海処理前に仮固定用樹脂としてポリビニルアルコール(以下、PVAと表すことがある。)を繊維質基材に付与し、繊維質基材を仮固定した後、脱海処理を施し、その後熱水中に浸漬してPVAを除去する工程からなる製造方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案のように、シート状物を熱水中に浸漬させると、シート状物を構成する極細繊維やポリウレタンの熱劣化の懸念があることや、湿潤状態での仮固定用樹脂除去となるために、仮固定樹脂除去工程で寸法変化が生じるというような課題があり、そのため、上記工程での寸法変化を抑えてシート表面の緻密感を維持しつつ、少ない製造工程数でシート状物を得る製造方法が求められている。
特開2009−74203号公報
そこで本発明の目的は、このようなシート状物の製造方法において、工程数を減らし、かつ製造工程中の形態保持性を高めることにより、優美な立毛と緻密感を有するシート状物の製造方法を提供するものである。
本発明のシート状物の製造方法は、次の1〜5の工程をこの順に行うことを特徴とするものである。
1.極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に、仮固定用樹脂を繊維質量に対し、0.05〜10質量%付与するように、仮固定用樹脂水溶液を付与する工程、
2.熱を加えて前記仮固定用樹脂を前記繊維質基材の両表面から前記繊維質基材の厚み方向0〜20%の範囲に移行させる工程、
3.前記仮固定用樹脂を付与した繊維質基材から平均単繊維直径が0.3〜7μmの極細繊維を発現させる工程、
4.前記極細繊維を発現した繊維質基材にポリウレタンを付与する工程、および
5.ポリウレタンを付与した繊維質基材からバッフィングにより前記仮固定用樹脂を除去する工程。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の仮固定用樹脂を含浸する前の繊維質基材の厚みをt1、ポリウレタンを付与した繊維質基材の厚みをt2、極細繊維発現型繊維と極細繊維質量比をXとしたとき、これらの関係はX<t2/t1<1を満足する範囲である。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の繊維質基材に付与する仮固定用樹脂が、次の(1)と(2)の特性を満たすことである。
(1)ガラス転移温度が0℃〜100℃。
(2)温度90℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に10分間浸漬したあとの質量減少率が10%以下。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、極細繊維を発現する方法がアルカリ処理であることである。
また、本発明のシート状物の製造方法により得られるシート状物の密度は、0.2〜0.7g/cmである。
本発明によれば、工程数を減らした製造工程であっても、従来達成できなかった製造工程中の形態保持性を維持しつつ、仮固定樹脂除去と起毛を同時に行うことにより、工程数を減らすことができる。さらに、シート状物を乾燥状態にした状態で仮固定樹脂を除去することができるため、シートの寸法変化をほとんどなくすことができ、緻密感の高いシート状物を得ることができる。
本発明のシート状物の製造方法は、次の1〜5の工程をこの順に行うことを特徴とするものである。
1.極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に、仮固定用樹脂を繊維質量に対し、0.05〜10質量%付与するように、仮固定用樹脂水溶液を付与する工程、
2.熱を加えて前記仮固定用樹脂を前記繊維質基材の両表面から前記繊維質基材の厚み方向0〜20%の範囲に移行させる工程、
3.前記仮固定用樹脂を付与した繊維質基材から平均単繊維直径が0.3〜7μmの極細繊維を発現させる工程、
4.前記極細繊維を発現した繊維質基材にポリウレタンを付与する工程、および
5.ポリウレタンを付与した繊維質基材からバッフィングにより仮固定用樹脂を除去する工程。
本発明のシート状物の製造方法では、上記の1〜5の工程をこの順に行うことにより、仮固定用樹脂を付与した繊維質基材に極細繊維化処理を施すこととなるため、極細繊維を発現するとき、シートの形態変化を小さくすることができ、緻密感の高いシート状物を得ることができる。また、繊維質基材に仮固定用樹脂の水溶液を付与し、加熱乾燥すると、仮固定用樹脂が水の移動に引きつられて繊維質基材の表層に移動し、偏在して付着する、いわゆるマイグレーション現象が発生する。その後、ポリウレタンを付与すると、シート表層部に仮固定用樹脂が、そしてシート内部にポリウレタンが集中的に付着する構造となる。シート表層部に位置する仮固定用樹脂は、仮固定の役割を終えた後、バッフィングにより、起毛処理と同時に容易に研削除去することができ、シート状物の表面外観に影響を与えることがなく、緻密感の高いシート状物を得ることができる。さらに、仮固定用樹脂付与後に繊維の極細化を行うことにより、シート状物の厚み方向の形態変化を抑制することができ、その後、付与するポリウレタンが付着できる空間を確保することができ、ポリウレタンを均一に繊維質基材に付着させることができるため、シート状物の風合いは柔軟となる。
繊維質基材の主構成成分である繊維は、極細繊維発現型繊維である。極細繊維発現型繊維を用いることにより、その後の繊維極細化工程を経ることにより、繊維を極細化することができ、優美な表面外観を得ることができる。
前記の極細繊維発現型繊維としては、(a)溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、(b)2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。なかでも、海島型繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、シート状物の柔軟性や風合いの観点からも好ましく用いられる。
前記の海島型繊維には、例えば、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維;海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがある。均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物の強度にも資する点からは、海島型複合繊維が好ましく用いられる。
海島型繊維の海成分としては、例えば、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリスチレン;スルホイソフタル酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルおよびポリ乳酸;PVAなどを用いることができる。なかでも、環境配慮の観点から、有機溶剤を使用せずに分解可能なアルカリ分解性のスルホイソフタル酸ナトリウムやポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルまたはポリ乳酸、熱水溶解性のPVAが好ましく用いられる。
海島型繊維の島成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリ乳酸などのポリエステル;6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド;アクリル;ポリエチレン;ポリプロピレン;および熱可塑性セルロースなどの溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂などを用いることができる。中でも、強度、寸法安定性および耐光性の観点から、ポリエステルを用いることが好ましく、また、環境配慮の観点から、リサイクル原料や植物由来原料から得られるポリマーであることが好ましい。
繊維質基材を構成する極細繊維発現型繊維の横断面形状は、丸断面でもよいが、楕円、扁平および三角などの多角形や、扇形および十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
本発明で用いられる繊維質基材の形態は、織物、編物および不織布等を採用することができる。中でも、表面起毛処理した際のシート状物の表面外観が良好であることから、不織布が好ましく用いられる。
不織布は、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、長繊維不織布は起毛した際の立毛となるシート状物の厚さ方向を向く繊維が短繊維不織布よりも少なくなり、立毛の緻密感が低くなって表面外観が劣る傾向にあることから、短繊維不織布が好ましく用いられる。また、不織布は、補強として織物または編物と積層一体化していてもよい。
前記の繊維不織布における短繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましい。繊維長を25mm以上とすることにより、絡合により耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。また、繊維長を90mm以下とすることにより、風合いや品位に優れたシート状物を得ることができる。繊維長は、より好ましくは30〜80mmである。
不織布の繊維あるいは繊維束を絡合させる方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチを採用することができる。
本発明において、付与する仮固定用樹脂は、バッフィングにより研削除去できることが肝要であり、このような仮固定用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン・ブタジエンゴム樹脂、ニトリルゴム樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂およびポリウレタン樹脂などが挙げられる。中でも、仮固定の形態安定性の観点から、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂およびナイロン樹脂が好ましく用いられる。
本発明で用いられる仮固定用樹脂は、ガラス転移温度が0〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃より高いことで、仮固定の効果を得ることができ、ガラス転移温度が100℃より低いことで、容易な研削除去性を得られる樹脂の硬さとなる。
また、本発明で用いられる仮固定用樹脂は、温度90℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に10分間浸漬したあとの質量減少率が、10%以下であることが好ましい。
本発明における極細繊維発現型繊維の極細化処理において、熱水や水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いる場合に、前記質量減少率は低い方が、シート状物の形態保持の観点から好ましく、質量減少率はより好ましくは5質量%以下である。
繊維質基材への仮固定用樹脂の付与量は、繊維質基材の繊維質量に対し、0.05〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。付与量を0.05質量%より多くすることにより仮固定効果を得られ、付与量を10質量%より少なくすることにより、加工性が良く研削除去が容易となる。
本発明において、繊維質基材に仮固定用樹脂を付与する方法としては、当該分野で通常用いられる各種方法を採用することができるが、仮固定用樹脂を均一に付与できる観点から、仮固定用樹脂を水に溶解、分散させ、繊維質基材に含浸し加熱乾燥する方法が好ましく用いられる。
仮固定用樹脂を付与する際の水溶液または水分散液の固形分質量濃度は、0.1〜40質量%であることが好ましい。固形分質量濃度は低すぎると、仮固定用樹脂の付与量が必要量に達しにくく、固形分質量濃度は高すぎると、後述する繊維質基材の両表面への仮固定用樹脂の偏在がしにくくなる。固形分質量濃度は、より好ましくは0.5〜30質量%である。
固形分質量濃度は、繊維質基材の両表面から繊維質基材の厚み方向に0〜20%の範囲に移行させることが肝要であるが、前記乾燥温度、乾燥時間で熱処理を行うことにより、繊維質基材の両表面から0〜20%の範囲に、より好ましくは0〜15%の範囲、さらに好ましくは0〜10%の範囲に移行することができる。それにより、仮固定樹脂の研削除去が容易となり、製品に残存して表面品位を悪化することがなく好ましい態様である。
また、乾燥温度は、温度が低すぎると乾燥時間が長くなり、温度が高すぎると仮固定用樹脂が劣化する懸念があるため、80〜160℃の温度で乾燥することが好ましく、乾燥温度はさらに好ましくは110〜150℃である。乾燥時間は、通常1〜20分、加工性の観点から、好ましくは1〜10分であり、より好ましくは1〜5分である。
本発明において、仮固定用樹脂が付与された繊維質基材から、平均単繊維直径が0.3〜7μmの極細繊維を発現させる。平均単繊維直径を7μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは5μm以下とすることにより、優れた柔軟性や立毛品位のシート状物を得ることができる。一方、平均単繊維直径を0.3μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることにより、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など立毛処理時の束状繊維の分散性に優れ、さばけ易さにも優れる。
海島型繊維等の極細繊維発現型繊維から極細繊維を発現させる方法は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、搾液することによって行うことができる。また、搾液後に湿熱等の熱処理を行っても良い。
海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンの場合には、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用い、また海成分が共重合ポリエステルまたはポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。また、海成分がPVAの場合は、熱水を用いることができる。
工程の環境配慮の観点からは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液や、熱水での脱海処理が好ましく用いられる。
本発明において、極細繊維を発現させた繊維質基材にポリウレタンを付与する。付与されるポリウレタンは、有機溶剤タイプおよび水分散タイプのいずれでもよいが、環境配慮の観点から水分散タイプのポリウレタンが好ましく用いられる。
前記の水分散型タイプのポリウレタンは、(I)界面活性剤を用いて強制的に分散、安定化させる強制乳化型ポリウレタンと、(II)ポリウレタン分子構造中に親水性構造を有し、界面活性剤が存在しなくても水中に分散・安定化する自己乳化型ポリウレタンに分類されるが、本発明ではいずれを用いてもよい。
繊維質基材に水分散型ポリウレタンを付与する方法としては、水分散型ポリウレタン液を繊維質基材に含浸し、塗布し、凝固後、加熱乾燥する方法が、水分散型ポリウレタン液を繊維質基材に均一に付与することができるため、好ましく用いられる。
水分散型ポリウレタン液の濃度(水分散型ポリウレタン液に対するポリウレタンの含有量)は、水分散型ポリウレタン液の貯蔵安定性の観点から、10〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。
また、本発明で用いるポリウレタン液は、貯蔵安定性や製膜性向上のために、水溶性有機溶剤をポリウレタン液に対して40質量%以下含有していてもよいが、製膜環境の保全等の点から、有機溶剤の含有量は1質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明で用いられる水分散型ポリウレタン液としては、感熱凝固性を有するものが好ましい。感熱凝固性を有する水分散型ポリウレタン液を用いることにより、繊維質基材の厚み方向に均一にポリウレタンを付与することができる。
本発明において、感熱凝固性とは、ポリウレタン液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達するとポリウレタン液の流動性が減少し、凝固する性質のことを言う。ポリウレタン付きシート状物の製造においてはポリウレタン液を繊維質基材に付与後、それを乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固、あるいはこれらの組み合わせにより凝固させ、乾燥することにより繊維質基材にポリウレタンを付与する。感熱凝固性を示さない水分散型ポリウレタン液を凝固させる方法としては、乾式凝固が工業的な生産において現実的であるが、その場合、繊維質基材の表層にポリウレタンが集中するマイグレーション現象が発生し、ポリウレタン付きシート状物の風合いは硬化する傾向にある。
本発明で用いられる水分散型ポリウレタン液の感熱凝固温度は、40〜90℃であることが好ましい。感熱凝固温度を40℃以上とすることにより、ポリウレタン液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへのポリウレタンの付着等を抑制することができる。また、感熱凝固温度を90℃以下とすることにより、繊維質基材中でのポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。
本発明のひとつの態様において、感熱凝固温度を前記のとおりとするために、適宜感熱凝固剤を添加してもよい。感熱凝固剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムおよび塩化カルシウム等の無機塩;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、および過酸化ベンゾイル等のラジカル反応開始剤などが挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、ポリウレタン液を、繊維質基材に含浸、塗布等し、乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固、あるいはこれらの組み合わせによりポリウレタンを凝固させることができる。
前記の湿熱凝固の温度は、ポリウレタンの感熱凝固温度以上とすることが好ましく、より好ましくは40〜200℃である。湿熱凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタンの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。一方、湿熱凝固の温度を200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、ポリウレタンや仮固定用樹脂の熱劣化を防ぐことができる。
前記の湿式凝固の温度は、ポリウレタンの感熱凝固温度以上とし、40〜100℃とすることが好ましい。熱水中での湿式凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタンの凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。
前記の乾式凝固の温度および乾燥温度は、80〜200℃であることが好ましい。乾式凝固温度および乾燥温度を80℃以上、より好ましくは90℃以上とすることにより、生産性に優れる。一方、乾式凝固温度および乾燥温度を200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、ポリウレタンや仮固定用樹脂の熱劣化を防ぐことができる。
本発明で用いられるポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるものが好ましい。
本発明で用いられる前記のポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系、シリコーン系およびフッ素系のジオールを採用することができ、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系およびポリエーテル系のジオールが好ましく用いられる。また、耐光性と耐熱性の観点からは、ポリカーボネート系およびポリエステル系が好ましく用いられる。さらに、耐加水分解性と耐熱性と耐光性のバランスの観点からは、ポリカーボネート系とポリエステル系のジオールがより好ましく、特に好ましくはポリカーボネート系のジオールが好ましく用いられる。
前記のポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
前記のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれでも良い。
前記のポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
前記の低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノールから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、前記の多塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
前記ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
本発明で用いられるポリマージオールの数平均分子量は、500〜4000であることが好ましい。数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、風合いが硬くなるのを防ぐことができる。また、数平均分子量を4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタンとしての強度を維持することができる。
前記の有機ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
前記の鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミンおよびメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、およびエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、ポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを鎖伸長剤として用いることもできる。
ポリウレタンには、所望により、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性等を向上する目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、ポリウレタンに対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。本発明においては、ポリウレタン分子構造内により均一に架橋点を形成でき、柔軟性の減少を軽減できる点から、内部架橋剤を用いることが好ましい。
前記の架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基などを有する化合物を用いることができる。ただし、架橋が過剰に進むとポリウレタンが硬化してシート状物の風合いも硬くなる傾向にあるため、反応性と柔軟性とのバランスの点ではシラノール基を有するものが好ましく用いられる。
また、本発明で用いられるポリウレタンは、分子構造内に親水性基を有していることが好ましい。分子構造内に親水性基を有することにより、水分散型ポリウレタンとしての分散・安定性を向上させることができる。
前記の水性基としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の組み合わせのいずれの親水性基も採用することができる。なかでも、光による黄変や中和剤による弊害の懸念のないノニオン系の親水性基が、特に好ましく用いられる。
アニオン系の親水性基の場合は、中和剤が必要となり、例えば、前記中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミンおよびジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜や乾燥時の熱によってアミンが発生・揮発し、系外へ放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために、揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。また、アミンは加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留した場合、製品の焼却時等に環境へ排出されることも考えられる。これに対し、ノニオン系の親水性基の場合は、中和剤を使用しないためアミン回収装置を導入する必要はなく、アミンのシート状物中への残留の心配もないため、好ましく用いることができる。
また、前記のアニオン系親水基の中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなるが、ノニオン系の親水性基の場合は中和剤を使用しないため、ポリウレタンの加水分解による劣化を心配する必要もない。
本発明で用いられるポリウレタンは、所望により各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、セルロース粒子およびマイクロバルーン等の充填剤、およびシリカや酸化チタン等の無機粒子などを含有していてもよい。
また、繊維とポリウレタンの間の空隙をさらに大きくするために、炭酸水素ナトリウムなどの無機系、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の有機系発泡剤を含有してもよい。
本発明のシート状物に対するポリウレタンの含有比率は、1〜80質量%であることが好ましい。ポリウレタンの比率を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上とすることにより、シート強度を得るとともに繊維の脱落を防ぐことができる。また、ポリウレタンの配合比率を80質量%以下、より好ましくは70質量%以下とすることにより、風合いが硬くなることを防ぎ、良好な立毛品位を得ることができる。また、ポリウレタンの含有比率を上記の範囲とすることにより、シート状物の密度を0.2〜0.7g/cmの範囲とすることができる。
本発明の好ましい態様では、仮固定用樹脂を含浸する前の繊維質基材の厚みをt1、ポリウレタンを付与した繊維質基材の厚みをt2、極細繊維発生発現型繊維と極細繊維質量比をXとしたとき、X<t2/t1<1の範囲である。繊維質基材に仮固定用樹脂を付与することにより、t2/t1の値を前述の範囲とすることができてシート状物の厚み方向に十分な空隙を確保することができ、柔軟な風合いのシート状物得ることができる。
本発明では、極細処理化した繊維質基材に、PVAを付与してからポリウレタンを付与し、その後PVAを除去してもよい。ポリウレタンの付与前にPVAを付与することにより、極細繊維の周囲にPVAが付着され、さらにその周囲にポリウレタンが付着されて、その後PVAが除去されることにより、極細繊維とポリウレタンの間に空間ができ、シート状物に柔軟性を発現することができる。ここでいうPVAは、繊維質基材の仮固定用樹脂ではなく、ポリウレタンと繊維の間に空間を発現するためのスペーサーとして用いられる樹脂のことである。
本発明では、ポリウレタン付与後のシートから、仮固定用樹脂が存在する面をバッフィング処理して表面を研削することが肝要である。シート状物を乾燥状態に保ちつつ仮固定用樹脂を除去することにより、仮固定用樹脂除去工程での寸法変化を抑制することが可能である。また、本発明では、シート状物の立毛を形成してもよく、その方法は、サンドペーパー等によるバフィング等、当分野で通常行われる各種方法を用いることができるが、前記の仮固定用樹脂が存在する面をバッフィング処理し、仮固定用樹脂を研削除去することと立毛形成を同時に行っても良い。
立毛の立毛長は短すぎると優美な外観が得られにくく、長すぎると、ピリングが発生しやすくなる傾向にあることから、立毛長は0.2〜1mmであることが好ましい。
本発明のシート状物の製造方法においては、少なくとも仮固定用樹脂を付与した繊維質基材にポリウレタンを付与した後において、厚み方向に半裁する工程を含んでもよい。さらに、シート厚み方向に半裁する工程を含むことにより、生産効率を向上させることができる。
また、本発明のひとつの態様において、起毛処理の前に、ポリウレタン付与シート状物に、滑剤としてシリコーン等を付与してもよい。滑剤を付与することにより、表面研削による起毛が容易に可能となり、表面品位が非常に良好となる。
また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与してもよく、帯電防止剤の付与により、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる。
本発明のひとつの態様において、シート状物は、染色することができる。染色方法としては、当分野で通常用いられる各種方法を採用することができるが、シート状物の染色と同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いる方法が好ましい。染色温度は、繊維の種類にもよるが、80〜150℃であることが好ましい。染色温度を80℃以上、より好ましくは110℃以上とすることにより、繊維への染着を効率良く行わせることができる。一方、染色温度を150℃以下、より好ましくは130℃以下とすることにより、ポリウレタンの劣化を防ぐことができる。
本発明で用いられる染料は、繊維質基材を構成する繊維の種類にあわせて選択すればよく、例えば、ポリエステル系繊維であれば分散染料を用いることができ、ポリアミド系繊維であれば酸性染料や含金染料を用いることができ、更にそれらの組み合わせを用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
また、染色時に染色助剤を使用することも好ましい態様である。染色助剤を用いることにより、染色の均一性や再現性を向上させることができる。また、染色と同浴または染色後に、例えば、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤および抗菌剤等を用いた仕上げ剤処理を施すことができる。
このようにして得られた本発明のシート状物の密度は、0.2〜0.7g/cmであることが好ましい。密度を0.2g/cm以上、より好ましくは0.3g/cm以上とすることにより、緻密感の高い高級な品位を発現させることができる。一方、密度を0.7g/cm以下、より好ましくは0.6g/cm以下とすることにより、シート状物の風合いが硬くなるのを防ぐことができる。
本発明により得られるシート状物は、家具、椅子および壁材や、自動車、電車および航空機などの車輛室内における座席、天井および内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴および婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、およびそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布およびCDカーテン等の工業用資材として好適に用いることができる。
次に、本発明のシート状物の製造方法を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[評価方法]
(1)仮固定用樹脂のシート状物厚み方向への分布
仮固定用樹脂のシート厚み方向への分布は、仮固定用樹脂を繊維質基材に付与し、熱処理を行ったシート状物に対して、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をシート状物断面全体が観察可能な任意の倍率で撮影し、シート状物全体厚みと樹脂が存在している厚みを20箇所ずつ測定して、それぞれの平均をとり、その割合を計算した。
(2)平均単繊維直径測定
平均単繊維直径は、繊維質基材またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、繊維をランダムに100本選び、単繊維直径を測定して平均値を計算することで算出した。
繊維質基材またはシート状物を構成する繊維が異形断面の場合は、異形断面の外周円直径を単繊維直径として算出する。また、円形断面と異形断面が混合している場合、単繊維直径が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれの存在本数比率に応じたサンプリング数を計100本となるように選び算出する。ただし、繊維質基材に補強用の織物や編物が挿入されているような場合には、当該補強用の織物や編物の繊維は、平均単繊維直径の測定においてサンプリング対象からは除外する。
(3)シート状物の厚み変化
厚み測定機(尾崎製作所社製ピーコックH−20)を用いて、仮固定用樹脂を含浸する前の繊維質基材のシート幅方向に10点選び、厚みを測定して平均値を計算してt1を算出した。次に、ポリウレタンを付与した繊維質基材も同様の方法で測定し、t2を算出し、t2/t1を求めた。
(4)仮固定用樹脂のガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量測定装置(RDC220(セイコー・インスツルメンツ))を用い、窒素雰囲気下、窒素流量20mL/分とし、仮固定用樹脂乾式フィルム(熱風乾燥機を用いて、100℃の温度で5分間乾燥の条件で作製した)5mgを秤量して測定したDSCカーブから、算出した。
(5)仮固定用樹脂の質量減少率
ポリプロピレンの不織布2gに対して、乾燥後の合計質量が5gとなるように仮固定用樹脂を付与した不織布の質量をW0gとし、恒温槽で液温90℃とした10質量%水酸化ナトリウム水溶液300mL中に、前記の仮固定用樹脂を付与した不織布を10分間浸漬した後の不織布質量をW1gとして、次式により求めた。
・質量減少率=(W0−W1)/(W0−2)×100(%)。
(6)シート状物の表面外観
シート状物の表面外観は、健康状態の良好な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視と官能評価によって下記のように5段階評価し、最も多かった評価を表面外観とした。表面外観は、3級〜5級を良好とした。
5級:均一な繊維の立毛があり、繊維の分散状態は良好で、外観は良好である。
4級:5級と3級の間の評価である。
3級:繊維の分散状態はやや良くない部分があるが、繊維の立毛はあり、外観はまずまず良好である。
2級:3級と1級の間の評価である。
1級:全体的に繊維の分散状態は非常に悪い、または繊維の立毛が長く、外観は不良である。
(7)シート状物の緻密感
シート状物の緻密感は、健康状態の良好な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視と官能評価によって下記のように5段階評価し、最も多かった評価を緻密感の評価とした。緻密感は、3級〜5級を良好とした。
5級:全体的に粗密斑がなく、触感はなめらかであり、緻密感は良好である。
4級:5級と3級の間の評価である。
3級:部分的に粗密斑があるが、触感はなめらかであり、緻密感はまずまず良好である。
2級:3級と1級の間の評価である。
1級:全体的に粗密斑が多く、触感にザラツキがあり、緻密感は不良である。
[実施例1]
(繊維質基材用不織布)
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率で、島数16島/1フィラメント、平均単繊維直径21μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布とした。得られた繊維質基材用不織布は、目付が750g/m、厚みが2.20mmであった。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが30℃のアクリル樹脂(DIC株式会社製“ボンコート”(登録商標)R―3380―E)を固形分2.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
上記の繊維質基材用不織布に上記の仮固定用樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が5質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から14%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
上記の繊維質基材用不織布を95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート表面の平均単繊維直径は4.4μmであった。
(PVA液の調製)
Tgが85℃、ケン化度99%、重合度1400のPVA(日本合成化学株式会社製NM−14)を固形分10質量%の水溶液に調製し、PVA液を得た。
(PVAの付与)
上記の脱海シートに上記のPVA液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVA付与シートを得た。
(ポリウレタン液の調製)
ポリオールにポリヘキサメチレンカーボネートを適用し、イソシアネートにジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを適用したポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタン液の固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として過硫酸アンモニウム(APS)2質量部を加え、水によって全体を固形分20質量%に調製し、水分散型ポリウレタン液を得た。感熱凝固温度は72℃であった。
(ポリウレタン液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記のポリウレタン液を含浸させ、100℃の温度の湿熱雰囲気下で5分間処理後、乾燥温度120℃の温度で5分間熱風乾燥させ、さらに150℃の温度で2分間乾熱処理を行うことにより、極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が890g/m、厚みが1.96mm、t2/t1の値(t1:繊維質基材用不織布の厚み、t2:ポリウレタンを付与したシートの厚み)が0.89であった。
(PVAの除去)
上記のポリウレタンを付与したシートを、95℃の温度に加熱した水中に浸漬して10分処理を行い、付与したPVAを除去したシートを得た。
(半裁)
上記のポリウレタンを付与したシートを、厚さ方向に半裁した。半裁性は良好であった。
(仮固定用樹脂除去(起毛))
上記の半裁シートの半裁面と反対の表面を、240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いて3段研削によって仮固定用樹脂の研削除去と起毛処理を同時に行った。仮固定用樹脂除去工程での寸法変化はほとんどなく、仮固定用樹脂の研削除去性は良好であった。
(染色・還元洗浄)
上記の起毛シートを、サーキュラー染色機を用いて分散染料により染色し還元洗浄を行い、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は非常に良好で、柔軟な風合いを有し、緻密感も非常に良好であった。
[実施例2]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整、付与)
実施例1と同様にして、仮固定用樹脂付与シートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記の仮固定用樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が820g/m、厚みが1.83mm、シートの厚み変化、t2/t1が0.83であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は良好で、実施例1より若干風合いが劣るものの、緻密感は非常に良好であった。
[実施例3]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが30℃のアクリル樹脂(DIC株式会社製“ボンコート”(登録商標)R―3380―E)を固形分4.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が9質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から18%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が860g/m、厚みが1.96mm、t2/t1の値が0.89であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は良好で、緻密感は非常に良好であった。
[実施例4]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが7℃のアクリル樹脂(DIC株式会社製“ボンコート”(登録商標)AC501)を固形分2.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が5質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から13%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得た上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が820g/m、厚みが1.83mm、t2/t1の値が0.83であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は良好で、緻密感はまずまず良好であった。
[実施例5]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが58℃のSBR樹脂(JSR株式会社製SBR樹脂2507H)を固形分2.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が5質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から16%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるように、ポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が820g/m、厚みが1.85mm、t2/t1の値が0.84であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は良好であり、緻密感も良好であった。
[実施例6]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが48℃のナイロン共重合体樹脂(住友精化株式会社製ナイロン共重合体樹脂“セポルジョン”(登録商標)PA200)を固形分2.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が5質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から15%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるように、ポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が810g/m、厚みが1.78mm、t2/t1の値が0.81であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は良好であり、緻密感も良好であった。
[実施例7]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが30℃のアクリル樹脂(DIC株式会社製“ボンコート”(登録商標)R―3380−E)を固形分0.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
上記の繊維質基材用不織布に、上記の仮固定用樹脂を実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が1質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から2%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
上記の仮固定用樹脂付与シートに、実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が790g/m、厚みが1.78mm、t2/t1の値が0.81であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
上記のポリウレタンを付与したシートに、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観と緻密感は、実施例1〜6と比較すると、若干劣るものの、満足のいくレベルであった。
[実施例8]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが−31℃のアクリル樹脂(日本ゼオン株式会社製“ボンコート”(登録商標)LX874)を固形分2.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が5質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から13%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるように、ポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が820g/m、厚みが1.87mm、t2/t1の値が0.85であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
上記のポリウレタンを付与したシートに、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観と緻密感は、実施例1〜6と比較すると、若干劣るものの、満足のいくレベルであった。
上記の各実施例で得られたシート状物の評価結果を、次の表1に示す。
Figure 2014163026
[比較例1]
(繊維質基材用不織布)
海成分として、ポリスチレンを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率で、島数16島/1フィラメント、平均単繊維直径21μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布とした。
(仮固定用樹脂液の調製)
実施例1で得られたPVA水溶液を仮固定用樹脂水溶液として使用した。
(仮固定用樹脂の付与)
上記の繊維質基材用不織布と上記の仮固定用樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が30質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から30%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
上記の繊維質基材用不織布をトリクロロエチレンに浸漬して、海島型複合繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製)
ポリマージオールがポリエーテル系75質量%とポリエステル系25質量%とからなるポリウレタン(ゲル化点4.2ml)を固形分濃度12質量%に調整した30%DMF水溶液を得た。
(ポリウレタンの付与)
上記脱海シートに上記のポリウレタン30%DMF水溶液を含浸させ、極細繊維に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるように調整し、35℃の温度の水でポリウレタンを凝固させてDMFを除去し、ポリウレタン付与シートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が820g/m、厚みが1.87mm、t2/t1の値が0.83であった。
(仮固定樹脂の除去)
実施例1と同様にして、付与した仮固定用樹脂(PVA)を除去した。熱水での仮固定用樹脂除去であったため、シートは若干の寸法変化を起した。
(半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の表面外観は、まずまず良好であったが、仮固定用樹脂除去工程で寸法変化を起したため、粗密斑があり実施例1〜8に対して、緻密感に劣っており、満足のいくレベルではなかった。
[比較例2]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整)
Tgが30℃のアクリル樹脂(DIC株式会社製“ボンコート”(登録商標)R―3380−E)を固形分7.5質量%の水溶液に調整し、仮固定用樹脂液を得た。
(仮固定用樹脂の付与)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布の繊維質量に対する仮固定用樹脂の付着量が15質量%の仮固定用樹脂付与シートを得た。付与した仮固定用樹脂の存在範囲は、仮固定用樹脂付与シートの厚み方向に対し、両表面から22%の範囲であった。
(繊維極細化(脱海))
実施例1と同様にして、脱海シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1で得られた上記のポリウレタン液を含浸させ、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が890g/m、厚みが1.96mm、t2/t1の値が0.89であった。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得たが、仮固定用樹脂の付着量が多く、完全に除去できず、表面外観と緻密感は満足いくものではなかった。
[比較例3]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布を得た。
(仮固定用樹脂液の調整、付与)
実施例1と同様にして、仮固定用樹脂付与シートを得た。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の仮固定用樹脂付与シートに、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が930g/m、厚みが2.40mm、シートの厚み変化t2/t1が1.09であった。
(繊維極細化(脱海))
上記の仮固定用樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(半裁・仮固定用樹脂除去(起毛)・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物はポリウレタンがアルカリにより劣化しており、実施例1〜8に対し、表面外観と緻密感は満足のいくレベルではなかった。
[比較例4]
(繊維質基材用不織布)
実施例1と同様にして、繊維質基材用不織布を得た。
(繊維極細化(脱海))
上記の繊維質基材に、実施例1と同様にして、脱海シートを得た。仮固定用樹脂を付与していないため、シートの寸法変化は大きかった。
(ポリウレタン液の調製、付与)
上記の脱海シートに、実施例1と同様にして極細繊維質量に対するポリウレタンの付着量が30質量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。得られたポリウレタン付与シートは、目付が660g/m、厚みが1.58mm、シートの厚み変化t2/t1が0.83であった。
(半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物は実施例1〜8に対し、表面外観と緻密感は満足のいくレベルではなかった。
上記の各比較例で得られたシート状物の評価結果を、次の表2に示す。
Figure 2014163026
実施例1〜8で得られたシート状物は、いずれも表面外観は良好で、緻密感が高く、柔軟な風合いを有しするものであった。一方、比較例1〜4で得られたシート状物は、表面外観、緻密感、柔軟な風合い、いずれも満足できるものではなかった。

Claims (5)

  1. 次の1〜5の工程を、この順に行うことを特徴とするシート状物の製造方法。
    1.極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に、仮固定用樹脂を繊維質量に対し、0.05〜10質量%付与するように、仮固定用樹脂水溶液を付与する工程、
    2.熱を加えて前記仮固定用樹脂を前記繊維質基材の両表面から前記繊維質基材の厚み方向0〜20%の範囲に移行させる工程、
    3.前記仮固定用樹脂を付与した繊維質基材から平均単繊維直径が0.3〜7μmの極細繊維を発現させる工程、
    4.前記極細繊維を発現した繊維質基材にポリウレタンを付与する工程、
    5.ポリウレタンを付与した繊維質基材からバッフィングにより前記仮固定用樹脂を除去する工程。
  2. 仮固定用樹脂を含浸する前の繊維質基材の厚みをt1、ポリウレタンを付与した繊維質基材の厚みをt2、極細繊維発生型繊維と極細繊維質量比をXとしたとき、X<t2/t1<1の範囲であることを特徴とする請求項1記載のシート状物の製造方法。
  3. 繊維質基材に付与する仮固定用樹脂が、次の(1)〜(2)の特性を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のシート状物の製造方法。
    (1)ガラス転移温度が0℃〜100℃。
    (2)温度90℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に10分間浸漬したあとの質量減少率が10%以下。
  4. 極細繊維を発現する方法が、アルカリ処理であることを特徴とする請求項1記載のシート状物の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物の製造方法により得られるシート状物であって、密度が0.2〜0.7g/cmであることを特徴とするシート状物。
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