JP2022022762A - 繊維強化樹脂成形体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、自動車や鉄道、航空機などの輸送機器においては、低燃費化の要求が高く、車両や機体の軽量化による低燃費化の効果が高いため、軽量性に優れる繊維強化樹脂成形体が金属代替材料として期待されている。
プリプレグを作製する際に繊維基材に含浸させる熱硬化性樹脂は、液状が一般的であるが、液状樹脂のポットライフの問題があり、さらに溶剤を使用する場合には、作業環境や大気汚染の問題がある。
これらの問題を解決する方法として、粉体樹脂を使用して作製したプリプレグが提案されている(特許文献1)。
また、プリプレグを用いないRTM工法では、プリフォームの作製が必要であり、また液状樹脂を高圧、定量で金型に注入するための設備が必要になるため、プリプレグを用いる場合と同様に、繊維強化樹脂成形体の製造コストが高くなる問題がある。
熱硬化性樹脂15は、溶融開始温度Ta℃が60~100℃にあるのが好ましい。熱硬化性樹脂15の溶融開始温度Ta℃をこの範囲とすることにより、繊維基材11間の少なくとも一つに熱硬化性樹脂15の粉体が配置された積層体を、加熱圧縮して熱硬化性樹脂15を溶融硬化させる際に、温調を容易に行うことができる。
なお、熱硬化性樹脂15には、熱硬化性樹脂の粘度、反応性に影響を与えない範囲において、顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤などの各種粉体添加剤を添加してもよい。
なお、熱硬化性樹脂の粉体を、複数層の繊維基材における積層面(繊維基材間)に配置する場合は、一つの積層面(一つの繊維基材間)に限られず、全ての積層面(全ての繊維基材間)、あるいは所定数おきの積層面(所定数おきの繊維基材間)に配置してもよく、配置する面の位置及び配置する面の数は繊維基材の積層数等に応じて適宜決定される。
また、単層の繊維基材の上面または下面、あるいは複数層の繊維基材の最上面または最下面に接して熱硬化性樹脂の粉体を配置する場合、作業の便宜のために、熱硬化性樹脂の粉体と金型の型面との間に離型紙を配置してもよい。
金型30の温度Tc℃は、熱硬化性樹脂の溶融開始温度Ta℃、硬化反応開始温度Tb℃との関係において、[Tb+(Tb-Ta)/3]-10≦Tc≦[Tb+(Tb-Ta)/3]+20に設定するのが好ましい。例えば、Ta℃=70℃、Tb℃=130℃の場合、Tc℃は140℃~170℃となる。
また、繊維基材11A~11Dの圧縮率(%)は、(下型31の型面と上型32の型面間の間隔)/(繊維基材の全層の厚みの合計)×100で算出される値であり、60~100%が好ましい。
熱硬化性樹脂の粉体15Aの量(全量)、金型30の加熱温度、積層体の加圧等は、図2の実施形態で説明した通りである。
1)試料の0.4gをペレット(直径φ18mm、厚さ0.4mm程度)に成形し、成形したペレットを直径φ18mmのパラレルプレートに挟む。
2)昇温速度5℃/min、周波数1Hz、回転角(ひずみ)0.1deg、等速昇温下、40℃~200℃間に渡って、2℃間隔で動的粘度を測定した。
繊維基材として、炭素繊維織物(帝人株式会社製、品名:W-3101、目付量:200g/m2、厚み0.22mm)を、250×200mmに裁断したものを4枚用意した。裁断後の1枚当たりの繊維基材の重量は10gであった。繊維基材を2枚積層し、その上に熱硬化性樹脂の粉体として、樹脂Aの25gを概ね均一に配置し、その上に残りの2枚の繊維基材を積層して成形前積層体を作製した。
樹脂A(実施例1、2、3)の粘度測定結果を、図6のグラフに示す。
実施例1と同様の繊維基材の4枚と樹脂Aを使用し、各繊維基材間(全繊維基材間)にそれぞれ樹脂Aの8.3g(全基材間の樹脂Aの合計量24.9g)を概ね均一に配置して成形前積層体を作製した以外、実施例1と同様の条件で加熱圧縮して実施例2の繊維強化樹脂成形体を作製した。
実施例1と同様の繊維基材の10枚を用意し、その繊維基材の5枚を積層し、その上に樹脂Aの60gを概ね均一に配置し、その上に残りの5枚の繊維基材を積層して成形前積層体を作製した以外、実施例1と同様の条件で加熱圧縮して実施例3の繊維強化樹脂成形体を作製した。
熱硬化性樹脂として樹脂Bを使用した以外、実施例1と同様にして実施例4の繊維強化樹脂成形体を作製した。
熱硬化性樹脂として、樹脂Aの12.5gと樹脂Cの12.5gを均一に混合した樹脂(25g)を使用し、金型温度を170℃とした以外、実施例1と同様にして実施例5の繊維強化樹脂成形体を作製した。
樹脂Aの12.5gと樹脂Cの12.5gを均一に混合した樹脂は、溶融開始温度Taが73℃、反応開始温度Tbが140℃、(Tb-Ta)が67℃、最低粘度(溶融開始温度Ta℃以上の温度における最低粘度)が22Pa・s、最高粘度(硬化反応開始温度Tb℃~190℃の温度範囲における最高粘度)が5,180Pa・s、(Tb-Ta)/3の値が22℃、Tb+(Tb-Ta)/3の値が162℃である。
熱硬化性樹脂として、樹脂Dの12.5gと樹脂Eの12.5gを均一に混合した樹脂(25g)を使用し、金型温度を160℃とした以外、実施例1と同様にして実施例6の繊維強化樹脂成形体を作製した。
樹脂Eはシアネート樹脂、三菱ガス化学株式会社製、品名:CYTESTER TAを乳鉢で粉砕して使用した。平均粒径は100μmである。
樹脂Dの12.5gと樹脂Eの12.5gを均一に混合した樹脂は、溶融開始温度Taが76℃、反応開始温度Tbが138℃、(Tb-Ta)が62℃、最低粘度(溶融開始温度Ta℃以上の温度における最低粘度)が475Pa・s、最高粘度(硬化反応開始温度Tb℃~190℃の温度範囲における最高粘度)が51,895Pa・s、(Tb-Ta)/3の値が21℃、Tb+(Tb-Ta)/3の値が159℃である。
熱硬化性樹脂として、樹脂Dの8.3gと樹脂Eの8.3gと樹脂Cの8.3gを均一に混合した樹脂(24.9g)を使用し、金型温度を170℃とした以外、実施例1と同様にして実施例7の繊維強化樹脂成形体を作製した。
熱硬化性樹脂として樹脂Fを使用し、金型温度を100℃にした以外、実施例1と同様にして比較例1の繊維強化樹脂成形体を作製した。
樹脂F(比較例1)の粘度測定結果を、図6のグラフに示す。
熱硬化性樹脂として、樹脂Aの8.3gと樹脂Dの16.6gを均一に混合した樹脂(24.9g)を使用し、金型温度を160℃とした以外、実施例1と同様にして比較例2の繊維強化樹脂成形体を作製した。
樹脂A/樹脂D=1/2(比較例2)の粘度測定結果を、図6のグラフに示す。
VF値(%)は、(繊維基材の全重量/繊維の密度)/(成形体の体積)×100で算出した。
曲げ強度(MPa)と曲げ弾性率(GPa)は、JIS K7074 A法に基づいて測定した。
外観の判断は、成形体の表面に変形や樹脂の含浸不均一等からなる不具合が存在するか否かを目視で確認し、不具合が無い場合「〇」、不具合がある場合「×」とした。
実施例1の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂Aとして、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度550MPa、曲げ弾性率54GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。
実施例2の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂Aとして、各繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度600MPa、曲げ弾性率55GPa、成形体の外観「〇」であり、各繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製したことで、実施例1よりも強度及び剛性が高くなった。
実施例3の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を10枚、熱硬化性樹脂を樹脂Aとして、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み2.0mm、VF値59%、曲げ強度620MPa、曲げ弾性率53GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。
実施例4の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂Bとして、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値55%、曲げ強度450MPa、曲げ弾性率45GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂Bを使用した実施例4は、樹脂Aを使用した実施例1よりも強度及び剛性が低くなった。
実施例5の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂A/樹脂C=1/1として、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値57%、曲げ強度990MPa、曲げ弾性率60GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5は、樹脂Aを使用した実施例1及び実施例Bを使用した実施例4よりも強度及び剛性が高くなった。
実施例6の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂D/樹脂E=1/1として、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値59%、曲げ強度900MPa、曲げ弾性率61GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用した実施例6は、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5と同等の高い強度及び剛性を有するものである。
実施例7の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1として、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであり、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度930MPa、曲げ弾性率58GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1の混合樹脂を使用した実施例7は、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5、樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用した実施例6と同等の高い強度及び剛性を有するものである。
比較例1の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂Fとして、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであるが、樹脂Fの含浸性が悪く、熱硬化性樹脂が均一に含浸した成形体が得られなかったため、厚み、VF値、曲げ強度、曲げ弾性率について測定できなかった。
比較例2の繊維強化樹脂成形体は、繊維基材の積層数を4枚、熱硬化性樹脂を樹脂A/樹脂D=1/2として、中央の繊維基材間に熱硬化性樹脂の粉体を配置して作製されたものであるが、熱硬化性樹脂の硬化が不十分で、成形体の脱型時に変形が発生したため、厚み、VF値、曲げ強度、曲げ弾性率について測定できなかった。
11、11A~11F 繊維基材
15 熱硬化性樹脂
15A~15E 熱硬化性樹脂の粉体
30 金型
31 下型
32 上型
Claims (10)
- 繊維基材が、熱硬化性樹脂と共に加熱圧縮されて、前記熱硬化性樹脂が前記繊維基材に含浸硬化した繊維強化樹脂成形体において、
前記硬化した熱硬化性樹脂は、前記繊維基材と接して配置された熱硬化性樹脂の粉体が、前記加熱圧縮時に溶融硬化したものであることを特徴とする繊維強化樹脂成形体。 - 前記繊維基材は、複数層からなることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化成形体。
- 繊維基材を熱硬化性樹脂と共に加熱圧縮し、前記熱硬化性樹脂を前記繊維基材に含浸させて硬化させる繊維強化樹脂成形体の製造方法において、
熱硬化性樹脂の粉体を繊維基材と接するように配置し、
前記繊維基材を前記熱硬化性樹脂の粉体と共に金型で加熱・圧縮することにより、前記熱硬化性樹脂の粉体を溶融して前記繊維基材内に含浸させ、硬化させることを特徴とする繊維強化樹脂成形体の製造方法。 - 前記繊維基材を複数層とし、前記熱硬化性樹脂の粉体を前記複数層の繊維基材の少なくとも一つの面に配置することを特徴とする請求項3に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
- 前記金型の温度Tc℃は、前記熱硬化性樹脂の溶融開始温度をTa℃、硬化反応開始温度をTb℃とすると、
[Tb+(Tb-Ta)/3]-10≦Tc≦[Tb+(Tb-Ta)/3]+20
であることを特徴とする請求項3または4に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂は、溶融開始温度をTa℃、硬化反応開始温度をTb℃とすると、(Tb-Ta)の値が、
40≦(Tb-Ta)≦70
であることを特徴とする請求項3から5の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂は、溶融開始温度Ta℃以上の温度における最低粘度が、1,500Pa・s以下であることを特徴とする請求項3から6の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、硬化反応開始温度Tb℃~190℃の温度範囲における最高粘度が、1,000Pa・s以上であることを特徴とする請求項3から7の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、溶融開始温度Ta℃が、60~100℃であることを特徴とする請求項3から8の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フェノール樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂、フェノール樹脂とシアネート樹脂との混合樹脂、フェノール樹脂とシアネート樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂の群から選ばれる樹脂であることを特徴とする請求項3から9の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
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