JP7321135B2 - 繊維強化樹脂成形用プリプレグと繊維強化樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維基材を熱硬化性樹脂と共に加熱圧縮して得られる繊維強化樹脂成形用プリプレグと繊維強化樹脂成形体に関する。
近年、軽量化や機械強度の向上を目的として、炭素繊維やガラス繊維などの繊維基材と熱硬化性樹脂との複合材料から形成される繊維強化樹脂成形体が、様々な分野・用途に広く使用されている。
特に、自動車や鉄道、航空機などの輸送機器においては、低燃費化の要求が高く、車両や機体の軽量化による低燃費化の効果が高いため、軽量性に優れる繊維強化樹脂成形体が金属代替材料として期待されている。
繊維強化樹脂成形体の製造方法としては、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグ化して得られたプリプレグをオートクレーブや熱プレスなどを用いて成形する方法がある。
プリプレグを作製する際に繊維基材に含浸させる熱硬化性樹脂は、液状が一般的であるが、液状樹脂のポットライフの問題があり、さらに溶剤を使用する場合には、作業環境や大気汚染の問題がある。
これらの問題を解決する方法として、粉体樹脂を使用して作製したプリプレグが提案されている(特許文献1)。
粉体樹脂を使用するプリプレグ(特許文献1)では、軟化点が50℃以上であり、且つコーンプレート型粘度計による150℃の溶融粘度が500mPa・s以下である固形エポキシ樹脂(A)と、前記固形エポキシ樹脂(A)以外のビスフェノール型固形エポキシ樹脂(B)と、テトラカルボン酸二無水物(C)と、硬化促進剤(D)とを溶融混練してエポキシ樹脂組成物を得た後、該エポキシ樹脂組成物を粉砕して得られる粉体を強化繊維基材に塗布した後、加熱溶融してFRP成形用プリプレグを作製している。
特開2006-232915号公報
しかし、従来の粉体樹脂を使用したプリプレグ(特許文献1)は、複数の固形エポキシ樹脂とテトラカルボン酸二無水物と硬化促進剤を一旦溶融混練してエポキシ樹脂組成物を作製し、その後にエポキシ樹脂組成物を粉砕して粉体樹脂を作製するという、複雑な工程が必要であり、コストアップの要因になっている。また、粉体樹脂の元となるエポキシ樹脂組成物の配合には硬化促進剤が含まれているため、粉体樹脂を使用するプリプレグの作製後も硬化促進剤による硬化が進行するおそれがあり、プリプレグの保存安定性が十分とは言えず、そのプリプレグから成形された繊維強化樹脂成形体の品質に影響を及ぼすことがある。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、プリプレグの作製が簡略、安価で、保存安定性が良好なプリプレグと、そのプリプレグから作製された良好な品質を有する繊維強化樹脂成形体の提供を目的とする。
第1の手段は、繊維基材を熱硬化性樹脂と共に加熱圧縮して得られる繊維強化樹脂成形用プリプレグであって、前記熱硬化性樹脂は、加熱圧縮前の状態が粉体状であって、硬化反応開始温度Tb℃の粘度が1,500Pa・s以下であり、硬化反応開始温度Tb℃~190℃の範囲における最高粘度が1,000Pa・s以上であることを特徴とする。
第2の手段は、第1の手段の繊維強化樹脂成形用プリプレグが加熱圧縮により硬化した繊維強化樹脂成形体を特徴とする。
第1の手段及び第2の手段によれば、プリプレグの作製が簡略、安価で、保存安定性が良好なプリプレグ及びそのプリプレグから作製された良好な品質を有する繊維強化樹脂成形体が得られる。
本発明の第1実施形態に係る繊維強化樹脂成形用プリプレグとその作製時の加熱圧縮を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る繊維強化樹脂成形用プリプレグとその作製時の加熱圧縮を示す断面図である。 本発明の第3実施形態に係る繊維強化樹脂成形用プリプレグとその作製時の加熱圧縮を示す断面図である。 各実施例及び各比較例の繊維強化樹脂成形用プリプレグに使用した熱硬化性樹脂の溶融開始温度、硬化反応開始温度等を示す表である。 実施例1~3と比較例1、2の繊維強化樹脂成形用プリプレグで使用した熱硬化性樹脂の粘度測定結果を示すグラフである。 各実施例と各比較例の繊維強化樹脂成形用プリプレグから作製された繊維強化樹脂成形体の構成と物性値等を示す表である。 実施例1、4~7の繊維強化樹脂成形用プリプレグを作製から90日後に使用して作製された繊維強化樹脂成形体の外観、物性等を示す表である。
本発明の実施形態について説明する。
図1の(1-1)に示す第1実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ10は、繊維基材11が、熱硬化性樹脂15と共に加熱圧縮されたものであり、繊維基材11に熱硬化性樹脂15が付着した状態となっている。繊維基材11に付着している熱硬化性樹脂15は、硬化反応開始前の固体の状態である。
繊維基材11は、第1実施形態のプリプレグ10では1層からなるが、複数層でプリプレグを構成してもよい。繊維基材11としては、ガラス繊維、アラミド繊維、バサルト繊維、炭素繊維などによる織物や不織布などがあり、特に限定されるものではないが、炭素繊維織物が軽量及び高剛性に優れるために好ましいものである。炭素繊維織物としては、繊維が一方向のみではない織り方のものが好ましく、例えば、縦糸と横糸で構成される平織、綾織、朱子織及び3方向の糸で構成される三軸織などが好適である。また、炭素繊維織物は、熱硬化性樹脂15の含浸及び繊維強化樹脂成形体の剛性の点から、繊維重さが50~600g/mのものが好ましい。
熱硬化性樹脂15は、プリプレグ10の作製に際して加熱圧縮前の状態が固形の粉体状であるものが用いられる。粉体の形状としては、球状、針状、フレーク状などがあり、特に限定されるものではない。
プリプレグ10の作製時、熱硬化性樹脂15の粉体は、繊維基材11と接するように配置され、繊維基材11が熱硬化性樹脂15の粉体と共に加熱圧縮される際に溶融して繊維基材11に含浸し、硬化反応開始前の状態で冷却されて固化する。
熱硬化性樹脂15は、硬化反応開始温度Tb℃の粘度が1,500Pa・s以下である。
硬化反応開始温度Tb℃の粘度が1,500Pa・s以下であることにより、プリプレグ10を用いて繊維強化樹脂成形体を製造する際に、熱硬化性樹脂15を繊維基材11に均一に含浸させることができ、品質が良好な繊維強化樹脂成形体が得られる。
熱硬化性樹脂15は、硬化反応開始温度Tb℃~190℃の範囲における最高粘度が1,000Pa・s以上である。
硬化反応開始温度Tb℃~190℃の範囲における最高粘度が1,000Pa・s以上であることにより、プリプレグ10を用いて繊維強化樹脂成形体を製造する際に、溶融した熱硬化性樹脂15を繊維基材11に含浸させて十分に硬化させることができ、繊維強化樹脂成形体の賦形性がよく、かつ短時間(10分程度)で十分な強度が得られるようになる。
熱硬化性樹脂15は、溶融開始温度Ta℃が60~100℃であるのが好ましい。溶融開始温度Ta℃が前記範囲であることにより、プリプレグ10の作製時の加熱温度をそれほど高くしなくてもよく、プリプレグ10の作製が容易になる。
熱硬化性樹脂15は、溶融開始温度Ta℃と硬化反応開始温度Tb℃に関し、40≦(Tb-Ta)≦70であるのが好ましい。(Tb-Ta)をこの範囲とすることにより、プリプレグ10を用いて繊維強化樹脂成形体を製造する際に、熱硬化性樹脂15が繊維基材11に十分に含浸し、均一な物性を有する繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
熱硬化性樹脂15は、プリプレグ10の作製時における加熱圧縮時の温度Tc℃に対し、溶融開始温度Ta℃がTc℃以下であり、硬化反応開始温度Tb℃がTc℃以上であるのが好ましい。より好ましくは、Ta℃がTc℃-5℃以下、Tb℃がTc℃+5℃以上である。Ta℃及びTb℃がこの範囲にあることにより、プリプレグ10の作製時に熱硬化性樹脂15が溶融して繊維基材11に含浸することができ、またプリプレグ10の作製時に熱硬化性樹脂15の硬化反応が開始されないため、プリプレグ10の品質が良好になり、プリプレグ10の保存安定性がよくなる。
プリプレグ10の作製時に使用する熱硬化性樹脂15の粉体の粒径は、溶融し易さの点から、10~500μmが好ましい。プリプレグの作製時に使用する熱硬化性樹脂15の量は、繊維強化樹脂成形体のVF値(%)が40~70%となるように調整するのが好ましい。VF値(%)は、(繊維基材の全重量/繊維の密度)/(繊維強化樹脂成形体の体積)×100で算出される値である。
前記の溶融開始温度Ta℃、硬化反応開始温度Tb℃、(Tb-Ta)の範囲、最低粘度、最高粘度等を満たすことができる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂、フェノール樹脂とシアネート樹脂との混合樹脂、フェノール樹脂とシアネート樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂の群から選ばれるのが好ましい。フェノール樹脂は難燃性に優れるため、繊維強化樹脂成形体に優れた強度と難燃性を付与することができる。
なお、熱硬化性樹脂15には、熱硬化性樹脂の粘度、反応性に影響を与えない範囲において、顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤などの各種粉体添加剤を添加してもよい。
第1実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ10について、その作製の一態様を次に示す。なお、「熱硬化性樹脂15の粉体」は、以下の説明では「熱硬化性樹脂の粉体15A」等のように、数字の「15」と「アルファベット」を組み合わせた符号で示す場合がある。
図1の(1-2)に示すように、繊維基材11と該繊維基材11に接して配置された熱硬化性樹脂の粉体15Aを、離型用プラスチックフィルム41A、41Bで挟み、それらを加熱した金型50の下型51と上型52で挟んで加熱圧縮することにより、第1実施形態のプリプレグ10を作製する。その際、熱硬化性樹脂の粉体15Aは、繊維基材11の上下の一方の面あるいは両方の面に配置される。
金型50は、電熱ヒーター等の加熱手段によって加熱される。プリプレグ10の作製時における加熱圧縮時の温度(金型の温度)Tc℃は、熱硬化性樹脂の粉体15A(前記熱硬化性樹脂15)の溶融開始温度Ta℃以上で、硬化反応開始温度Tb℃以下である。より好ましくは、加熱圧縮時の温度(金型の温度)Tc℃が、熱硬化性樹脂15の溶融開始温度Ta℃+5℃以上で、硬化反応開始温度Tb℃-5℃以下である。
プリプレグ作製時の金型30による加圧(圧縮)は、熱硬化性樹脂の粉体15Aが溶融した後、繊維基材11に良好に含浸できるようにするため、0.1~10MPaが好ましい。
また、繊維基材11の圧縮率(%)は、(下型51の型面と上型52の型面間の間隔-離型フィルムの合計の厚み)/(繊維基材の全層の厚みの合計)×100で算出される値であり、60~100%が好ましい。
熱硬化性樹脂の粉体15Aは、加熱圧縮により溶融して繊維基材11に含浸し、硬化反応開始前の状態で冷却されて固化する。
なお、プリプレグの作製方法は、前記の金型を用いる方法に限られず、熱ローラーで加熱圧縮する熱ローラー法や、上下のベルト間で加熱圧縮するダブルベルト法等、他の方法でもよい。
第2実施形態について説明する。以下の説明では、複数の繊維基材11の上下位置関係を把握し易くするために、例えば「11A」等のように数字の「11」と「アルファベット」を組み合わせた符号で繊維基材を示す場合がある。
図2の(2-1)に示す第2実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ20は、4層の繊維基材11A、11B、11C、11Dと熱硬化性樹脂15とよりなり、熱硬化性樹脂15が繊維基材11A~11Dに付着した状態となっている。なお、繊維基材11A~11Dおよび熱硬化性樹脂15は、第1実施形態のプリプレグ10で説明したとおりである。
第2実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ20について、作製の一態様を次に示す。
図2の(2-2)に示すように、下側2枚の繊維基材11A、11Bと、上側2枚の繊維基材11C、11Dとの間に熱硬化性樹脂の粉体15Aを挟んだ積層体を離型用プラスチックフィルム41A、41Bで挟み、それらを加熱した金型50の下型51と上型52で挟んで加熱圧縮することにより、第2実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ20を作製する。加熱圧縮条件は、第1実施形態で記載したとおりである。熱硬化性樹脂の粉体15Aは、加熱圧縮により溶融して繊維基材11A~11Dに含浸し、硬化反応開始前の状態で冷却されて固化する。
第3実施形態について説明する。図3の(3-1)に示す第3実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ30は、第2実施形態と同様に4層の繊維基材11A、11B、11C、11Dと熱硬化性樹脂15とよりなり、熱硬化性樹脂15が繊維基材11A~11Dに付着した状態となっている。第3実施形態では、プリプレグ30の作製のための熱硬化性樹脂15の粉体の配置が、次に示すように、第2実施形態とは異なる態様からなる。
第3実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ30の作製の一態様を次に示す。
図3の(3-2)に示すように、4枚の繊維基材11A~11Dの各繊維基材間(各層間)に熱硬化性樹脂の粉体15A、15B、15Cを挟んだ積層体を、離型用プラスチックフィルム41A、41Bで挟み、それらを加熱した金型50の下型51と上型52で挟んで加熱圧縮することにより、第3実施形態の繊維強化樹脂成形用プリプレグ30を作製する。加熱圧縮条件は、第1実施形態で記載したとおりである。熱硬化性樹脂の粉体15A~15Cは、加熱圧縮により溶融して繊維基材11A~11Dに含浸し、硬化反応開始前の状態で冷却されて固化する。
本発明の繊維強化樹脂成形用プリプレグを用いる繊維強化樹脂成形体の製造方法は、繊維基材11が単層または複層からなる繊維強化樹脂成形用プリプレグを賦形用金型で加熱圧縮し、熱硬化性樹脂15を反応硬化させることにより行われる。賦形用金型の型面形状は、平面に限られず、製品に応じて凹凸、曲面等にされる。
繊維強化樹脂成形体の製造時における加熱温度(賦形用金型の温度)Td℃は、熱硬化性樹脂15の溶融開始温度Ta℃、硬化反応開始温度Tb℃との関係において、[Tb+(Tb-Ta)/3]-10≦Td≦[Tb+(Tb-Ta)/3]+20に設定するのが好ましい。例えば、Ta℃=70℃、Tb℃=130℃の場合、Td℃は140℃~170℃となる。
賦形用金型による加熱圧縮時における繊維強化樹脂成形用プリプレグの加圧(圧縮)は、熱硬化性樹脂15が溶融した後、繊維基材11に良好に含浸できるようにするため、2~20MPaが好ましい。
また、賦形用金型による加熱圧縮時における繊維強化樹脂成形用プリプレグの圧縮率(%)は、(下型51の型面と上型52の型面間の間隔)/(プリプレグの厚み)×100で算出される値であり、60~100%が好ましい。
賦形用金型による繊維強化樹脂成形用プリプレグの加熱圧縮により、プリプレグの熱硬化性樹脂15が溶融し、また、溶融した熱硬化性樹脂15が反応硬化することにより、下型及び上型の型面形状に賦形された繊維強化樹脂成形体が得られる。
図4に示す熱硬化性樹脂の粉体を用いて実施例1~7及び比較例1、2の繊維強化樹脂成形用プリプレグを作製し、作製直後のプリプレグを用いて繊維強化樹脂成形体を作製した。熱硬化性樹脂の粘度は、株式会社ユービーエム社製のレオメーター:Rheosol-G3000を用い、次の条件で測定した。
1)試料の0.4gをペレット(直径φ18mm、厚さ0.4mm程度)に成形し、成形したペレットを直径φ18mmのパラレルプレートに挟む。
2)昇温速度5℃/min、周波数1Hz、回転角(ひずみ)0.1deg、等速昇温下、40℃~200℃間に渡って、2℃間隔で動的粘度を測定した。
<実施例1>
・プリプレグの作製
実施例1は、図1の(1-1)及び(1-2)に示したように、プリプレグの繊維基材が1枚(1層)の例である。繊維基材として、炭素繊維織物(帝人株式会社製、品名:W-3101、目付量:200g/m、厚み0.22mm)を、250×200mmに裁断したものを用意した。裁断後の1枚当たりの繊維基材の重量は10gであった。用意した繊維基材を、離型処理(離型剤を塗布)したPETフィルム(離型用プラスチックフィルム)上に配置し、繊維基材の上に熱硬化性樹脂の粉体として、以下の樹脂Aの7gを概ね均一に配置し、その上に離型処理したPETフィルムを載置してプリプレグ成形前積層体とした。
樹脂Aは、フェノール樹脂、住友ベークライト株式会社製、品名:PR-50252、平均粒径30μmである。
樹脂A(実施例1、2、3)の粘度測定結果を、図5のグラフに示す。
プリプレグ成形前積層体を、100℃に加熱した金型の下型の成形面(型面)に配置し、金型の上型をプリプレグ成形前積層体に被せて金型を閉じ、5分間、圧力0.1MPaで加熱圧縮した。それにより繊維基材上の樹脂Aの粉体を溶融させ、繊維基材に溶融含浸させた後、金型を開き、PETフィルムごと積層体を取り出し、室温まで自然冷却した後、PETフィルムを取り除き、実施例1のプリプレグを得た。
・繊維強化樹脂成形体の作製
実施例1のプリプレグを4枚重ねた積層体を、予め150℃に加熱した金型の下型の成形面(型面)に配置し、金型の上型を積層体に被せて金型を閉じ、10分間、圧力5MPaで加熱圧縮し、樹脂Aを反応硬化させ、その後金型を開き、実施例1の繊維強化樹脂成形体を取り出した。
<実施例2>
・プリプレグの作製
実施例2は、図2の(2-1)及び(2-2)に示したように、プリプレグの繊維基材が4枚(4層)の例である。実施例1と同様の繊維基材4枚と樹脂Aを使用し、4枚の繊維基材の中間に樹脂Aの28gを概ね均一に配置した以外は、実施例1と同様にして実施例2のプリプレグを作製した。
・繊維強化成形体の作製
実施例2のプリプレグを、予め150℃に加熱した金型の下型の成形面(型面)に配置し、金型の上型を積層体に被せて金型を閉じ、10分間、圧力5MPaで加熱圧縮し、樹脂Aを反応硬化させ、その後金型を開き、実施例2の維強化樹脂成形体を取り出した。
<実施例3>
・プリプレグの作製
実施例3は、図3の(3-1)及び(3-2)に示したように、プリプレグの繊維基材が4枚(4層)の各層間に樹脂Aを配置してプリプレグを作製した例である。実施例1と同様の繊維基材4枚の各層間に樹脂Aの9.3gを概ね均一に配置した以外は、実施例1と同様にして実施例3のプリプレグを作製した。
・繊維強化成形体の作製
実施例3のプリプレグを、予め150℃に加熱した金型の下型の成形面(型面)に配置し、金型の上型を積層体に被せて金型を閉じ、10分間、圧力5MPaで加熱圧縮し、樹脂Aを反応硬化させ、その後金型を開き、実施例3の維強化樹脂成形体を取り出した。
<実施例4>
・プリプレグの作製
実施例4は、プリプレグの繊維基材が1枚の例であり、熱硬化性樹脂の粉体として以下の樹脂Bを使用した以外、実施例1と同様にして実施例4のプリプレグを作製した。
樹脂Bは、フェノール樹脂、住友ベークライト株式会社製、品名:PR-310、平均粒径30μmである。
・繊維強化樹脂成形体の作製
実施例4のプリプレグを4枚用い、実施例1と同様にして実施例4の維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例5>
・プリプレグの作製
実施例5は、プリプレグの繊維基材が1枚の例であり、熱硬化性樹脂の粉体として樹脂Aと以下の樹脂Cを1:1の重量比で均一に混合した樹脂を7g使用した以外、実施例1と同様にして実施例5のプリプレグを作製した。
樹脂Cは、エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、品名:jER-1001を乳鉢で粉砕して使用した。平均粒径は100μmである。
・繊維強化樹脂成形体の作製
実施例5のプリプレグを4枚用い、金型の温度を170℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例5の維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例6>
・プリプレグの作製
実施例6は、プリプレグの繊維基材が1枚の例であり、熱硬化性樹脂の粉体として以下の樹脂Dと以下の樹脂Eを1:1の重量比で均一に混合した樹脂を7g使用した以外、実施例1と同様にして実施例6のプリプレグを作製した。
樹脂Dはフェノール樹脂、住友ベークライト株式会社製、品名:PR-50235Dを乳鉢で粉砕して使用した。平均粒径は90μmである。
樹脂Eはシアネート樹脂、三菱ガス化学株式会社製、品名:CYTESTER TAを乳鉢で粉砕して使用した。平均粒径は100μmである。
・繊維強化樹脂成形体の作製
実施例6のプリプレグ4枚を用い、金型の温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例7>
・プリプレグの作製
実施例7は、プリプレグの繊維基材が1枚の例であり、熱硬化性樹脂の粉体として樹脂Dと樹脂Eと樹脂Cを1:1:1の重量比で均一に混合した樹脂を7g使用した以外は、実施例1と同様にして実施例7のプリプレグを作製した。
・繊維強化樹脂成形体の作製
実施例7のプリプレグ4枚を用い、金型の温度を170℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の維強化樹脂成形体を作製した。
<比較例1>
・プリプレグの作製
熱硬化性樹脂の粉体として以下の樹脂Fの7gを使用し、金型温度を80℃にした以外、実施例1と同様にして比較例1のプリプレグを作製した。
樹脂Fは、フェノール樹脂、住友ベークライト株式会社製、品名:PR-50699、平均粒径30μmである。
樹脂F(比較例1)の粘度測定結果を、図5のグラフに示す。
・繊維強化樹脂成形体の作製
比較例1のプリプレグ4枚を用い、金型の温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の維強化樹脂成形体を作製した。
比較例1は、使用した樹脂Fの最低粘度と最高粘度が高く、繊維基材(炭素繊維織物)への樹脂Fの含浸性が悪く、熱硬化性樹脂が均一に含浸した繊維強化樹脂成形体が得られなかった。
<比較例2>
・プリプレグの作製
熱硬化性樹脂の粉体として、樹脂Aと樹脂Dを1:2の重量比で均一に混合した樹脂を7g使用し、実施例1と同様にして比較例2のプリプレグを作製した。
樹脂Aと樹脂Dを1:2の重量比で均一に混合した樹脂(比較例2)の粘度測定結果を、図5のグラフに示す。
・繊維強化樹脂成形体の作製
比較例2のプリプレグ4枚を用い、実施例1と同様にして比較例2の維強化樹脂成形体を作製した。
比較例2は、使用した樹脂の硬化が不十分で、繊維強化樹脂成形体の脱型時に変形が発生し、良好な成形体が得られなかった。
実施例1~7及び比較例1、2の繊維強化樹脂成形体について、厚み(mm)、VF値(%)、曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(GPa)の測定及び外観を判断した。その結果は図6に示すとおりであり、以下に説明する。
曲げ強度(MPa)と曲げ弾性率(GPa)は、JIS K7074 A法に基づいて測定した。
外観の判断は、成形体の表面に変形や樹脂の含浸不均一等からなる不具合が存在するか否かを目視で確認し、不具合が無い場合「〇」、不具合がある場合「×」とした。
・実施例1の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例1の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂Aとし、繊維基材を1枚として作製された実施例1のプリプレグを4枚積層して作製されたものである。実施例1の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度610MPa、曲げ弾性率52GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性(曲げ弾性率)が高く、外観が良好なものである。
・実施例2の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例2の繊維強化樹脂成形体は、4枚の繊維基材の中間に樹脂Aを配置して作製された実施例2のプリプレグから作製されたものである。実施例2の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度600MPa、曲げ弾性率53GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。
・実施例3の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例3の繊維強化樹脂成形体は、4枚の繊維基材の各層間に樹脂Aを配置して作製された実施例3のプリプレグから作製されたものである。実施例3の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度620MPa、曲げ弾性率53GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。
・実施例4の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例4の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂Bとし、繊維基材を1枚として作製された実施例4のプリプレグを4枚積層して作製されたものである。実施例4の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値55%、曲げ強度460MPa、曲げ弾性率46GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。樹脂Bを使用した実施例4は、樹脂Aを使用した実施例1よりも強度及び剛性が低くなった。
・実施例5の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例5の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂A/樹脂C=1/1とし、繊維基材を1枚として作製された実施例5のプリプレグを4枚積層して作製されたものである。実施例5の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値57%、曲げ強度980MPa、曲げ弾性率60GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5は、樹脂Aを使用した実施例1及び実施例Bを使用した実施例4よりも強度及び剛性が高くなった。
・実施例6の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例6の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂D/樹脂E=1/1とし、繊維基材を1枚として作製された実施例6のプリプレグを4枚積層して作製されたものである。実施例6の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値59%、曲げ強度910MPa、曲げ弾性率61GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用した実施例6は、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5と同等の高い強度及び剛性を有するものである。
・実施例7の繊維強化樹脂成形体の物性等
実施例7の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1とし、繊維基材を1枚として作製された実施例7のプリプレグを4枚積層して作製されたものである。実施例7の繊維強化樹脂成形体は、成形体の厚み0.8mm、VF値58%、曲げ強度930MPa、曲げ弾性率59GPa、成形体の外観「〇」であり、強度及び剛性が高く、外観が良好なものである。なお、樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1の混合樹脂を使用した実施例7は、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用した実施例5、樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用した実施例6と同等の高い強度及び剛性を有するものである。
・比較例1の繊維強化樹脂成形体の物性等
比較例1の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂Fとし、繊維基材を1枚として作製された比較例1のプリプレグを4枚積層して作製されたものであるが、樹脂Fの含浸性が悪く、熱硬化性樹脂が均一に含浸した成形体が得られなかったため、厚み、VF値、曲げ強度、曲げ弾性率について測定できなかった。
・比較例2の繊維強化樹脂成形体の物性等
比較例2の繊維強化樹脂成形体は、熱硬化性樹脂の粉体を樹脂A/樹脂D=1/2とし、繊維基材を1枚として作製された比較例2のプリプレグを4枚積層して作製されたものであるが、熱硬化性樹脂の硬化が不十分で、成形体の脱型時に変形が発生したため、厚み、VF値、曲げ強度、曲げ弾性率について測定できなかった。
<プリプレグの保存安定性評価>
熱硬化性樹脂の違いによるプリプレグの保存安定性を評価するため、樹脂Aを使用する実施例1のプリプレグ、樹脂Bを使用する実施例4のプリプレグ、樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用する実施例5のプリプレグ、樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用する実施例6のプリプレグ、樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1の混合樹脂を使用する実施例7のプリプレグを、その作製後、23℃×湿度50%の環境下で90日間保管した後、前記の対応する実施例と同様にして繊維強化成形体を作製した。
作製した繊維強化樹脂成形体について、成形体外観の判断と曲げ強度及び曲げ弾性率の測定を行い、プリプレグの作製直後にそのプリプレグを用いて繊維強化樹脂成形体を作製した場合の結果(図6に示す結果)と比較した。プリプレグの保存安定性の結果は、図7に示すとおりである。図7における曲げ強度保持率は、作製直後のプリプレグを用いて作製した繊維強化樹脂成形体の曲げ強度の値(図6に示す曲げ強度の値)に対する割合(%)である。また、曲げ弾性率保持率は、作製直後のプリプレグを用いて作製した繊維強化樹脂成形体の曲げ弾性率の値(図6に示す曲げ弾性率の値)に対する割合(%)である。
作製から90日経過後のプリプレグから作製された繊維強化樹脂成形体について、図7に示す結果を説明する。
・実施例1(樹脂A)
樹脂Aを使用する実施例1のプリプレグの作製から90日経過後に作製された実施例1の繊維強化樹脂成形体は、成形体外観「〇」、曲げ強度570MPa、曲げ弾性率48GPa、曲げ強度保持率93%、曲げ弾性率保持率92%であり、プリプレグの保存による繊維強化樹脂成形体の物性低下が少なかった。
・実施例4(樹脂B)
樹脂Bを使用する実施例4のプリプレグの作製から90日経過後に作製された実施例4の繊維強化樹脂成形体は、成形体外観「〇」、曲げ強度420MPa、曲げ弾性率42GPa、曲げ強度保持率91%、曲げ弾性率保持率91%であり、プリプレグの保存による繊維強化樹脂成形体の物性低下が少なった。
・実施例5(樹脂A/樹脂C=1/1)
樹脂A/樹脂C=1/1の混合樹脂を使用する実施例5のプリプレグの作製から90日経過後に作製された実施例5の繊維強化樹脂成形体は、成形体外観「〇」、曲げ強度910MPa、曲げ弾性率56GPa、曲げ強度保持率93%、曲げ弾性率保持率93%であり、プリプレグの保存による繊維強化樹脂成形体の物性低下が少なかった。
・実施例6(樹脂D/樹脂E=1/1)
樹脂D/樹脂E=1/1の混合樹脂を使用する実施例6のプリプレグの作製から90日経過後に作製された実施例6の繊維強化樹脂成形体は、成形体外観「〇」、曲げ強度880MPa、曲げ弾性率60GPa、曲げ強度保持率97%、曲げ弾性率保持率98%であり、プリプレグの保存による繊維強化樹脂成形体の物性低下が少なかった。
・実施例7(樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1)
樹脂D/樹脂E/樹脂C=1/1/1の混合樹脂を使用する実施例7のプリプレグの作製から90日経過後に作製された実施例7の繊維強化樹脂成形体は、成形体外観「〇」、曲げ強度880MPa、曲げ弾性率56GPa、曲げ強度保持率95%、曲げ弾性率保持率95%であり、プリプレグの保存による繊維強化樹脂成形体の物性低下が少なかった。
このように、本発明によれば、プリプレグの作製が簡略、安価で、保存安定性が良好なプリプレグが得られる。また、そのプリプレグから作製された良好な品質を有する繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
なお、実施例では繊維強化樹脂成形体の形状として平板形状のみを示したが、本発明では、繊維強化樹脂成形体の形状(金型の形状)は平板形状に限られず、曲面形状、凹凸形状など任意の形状とすることができる。
また、本発明は、前記の実施例に限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
10、20、30 プリプレグ
11、11A~11D 繊維基材
15 熱硬化性樹脂
15A~15C 熱硬化性樹脂の粉体
41A、41B 離型用プラスチックフィルム
50 金型
51 下型
52 上型

Claims (2)

  1. 繊維基材を熱硬化性樹脂と共に加熱圧縮する繊維強化樹脂成形用プリプレグの製造方法であって、
    前記熱硬化性樹脂は、加熱圧縮前の状態が粉体状であって、硬化反応開始温度Tb℃の粘度が1,500Pa・s以下であり、硬化反応開始温度Tb℃~190℃の範囲における最高粘度が1,000Pa・s以上であることを特徴とする繊維強化樹脂成形用プリプレグの製造方法
  2. 前記熱硬化性樹脂は、溶融開始温度Ta℃が前記加熱圧縮時の温度以下であり、硬化反応開始温度Tb℃が前記加熱圧縮時の温度以上であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形用プリプレグの製造方法
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