JP2022017430A - 認知機能改善用組成物 - Google Patents

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泰久 阿野
Yasuhisa Ano
達宏 綾部
Tatsuhiro Ayabe
慈将 谷口
Shigemasa Taniguchi
康子 松倉
Yasuko Matsukura
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Abstract

【課題】 本発明は、認知機能の維持、向上、改善等に有効な組成物の提供を目的とする。【解決手段】 本発明によれば、ホップ酸化反応産物を含んでなる、認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物が提供される。認知機能には記憶機能および注意・集中機能が含まれる。本発明の組成物は、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いることができる。【選択図】図4

Description

本発明は、認知機能の改善等のための組成物に関する。
認知機能の維持、向上、改善は、若年層から老年層まで幅広い世代で求められている。記憶力や学習能力の維持、向上、改善は、受験、資格試験等に備えて勉強する学生や社会人だけではなく、日々の仕事や生活を行う上でも重要である。また、老年層では記憶力の低下、集中力の低下は生活の質に関わるため、認知機能の低下を予防し、これを維持、向上、改善させることが求められている。
さらに、老年期においては、老化に伴う認知機能の低下を引き起こす精神疾患の増加が高齢者の増加とともに社会問題となっている。認知機能の低下を引き起こす疾患としては、アルツハイマー病に代表される認知症だけではなく、うつ病、せん妄等の精神疾患も報告されている(非特許文献1)。
ところで、ビール中の苦味成分の起源であるホップは、古くから民間薬としても用いられており、鎮静効果、健胃効果などの様々な健康機能が知られている。このホップから得られる抽出物を飲食品に対して一定量以上配合すると独特の強烈な苦味が生じてしまい、嗜好性を損なう恐れがあるが、ホップを酸化処理することにより、ホップ特有の苦味を抑制しつつ、その脂質代謝改善機能を維持しうることが報告されている(特許文献1)。しかし、ホップ由来成分やその酸化処理物と認知機能との関係についてはこれまで報告がなされていない。
国際公開第2012/081675号
田中稔久、武田雅俊(2011)日本臨床、増刊号、52~56頁
本発明者らは、今般、ホップ酸化反応産物が、認知機能の維持、向上、改善等に有効であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は認知機能の維持、向上、改善等に有効な組成物を提供することを目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ホップ酸化反応産物を含んでなる、認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物。
[2]認知機能が記憶機能である、上記[1]に記載の組成物。
[3]認知機能が注意・集中機能である、上記[1]に記載の組成物。
[4]食品組成物である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]1回摂取に適した単位包装形態である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]ホップ酸化反応産物がS-フラクションである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]S-フラクションを乾燥質量換算で1回当たりの摂取量で1~200mgで含んでなる、上記[6]に記載の組成物。
[8]認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]有効量のホップ酸化反応産物を、対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、認知機能の維持方法、認知機能の向上方法および認知機能の改善方法。
[10]認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物または食品の製造のための、または、認知機能の維持剤、認知機能の向上剤および認知機能の改善剤の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用。
[11]認知機能の維持剤、認知機能の向上剤または認知機能の改善剤としての、ホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物の使用。
[12]認知機能の維持、向上および/または改善に用いるための、ホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物。
[13]有効量のホップ酸化反応産物を、対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療方法、予防方法および改善方法。
[14]認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療用組成物、予防用組成物および改善用組成物の製造のための、または、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用。
[15]認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤としての、ホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物の使用
[16]認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療、予防および改善に用いるための、ホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物。
本発明によれば、認知機能の維持、向上、改善等の機能を発揮することができるホップ酸化反応産物を含有する組成物が提供される。ホップ酸化反応産物はヒトが食品として長年摂取してきたホップ由来の成分を利用することから、本発明はヒトを含む哺乳類に安全な機能性素材として利用できる点で有利である。
参考例1におけるホップ酸化反応産物についてのHPLC分析結果(HPLCクロマトグラム)を示した図である。 実施例2におけるヒト試験のスケジュールを示した図である。 実施例2におけるLetter-Number Sequencing Testの質問用紙の一例を示した図である。 実施例2におけるTrail Making Testの結果を表したグラフである。*はp<0.05(t-test)を示す。 実施例2におけるPattern Recognition Memoryの結果を表したグラフである。*はp<0.05(t-test)を示す。 実施例2におけるSpatial Working Memory (within errors)の結果を表したグラフである。*はp<0.05(t-test)を示す。 実施例2におけるSpatial Working Memory(between errors)の結果を表したグラフである。**はp<0.01(t-test)を示す。 実施例2におけるPaired Associates Learningの結果を表したグラフである。*はp<0.05(t-test)を示す。 実施例2におけるLetter-Number Sequencing Testの結果を表したグラフである。*はp<0.05(t-test)を示す。 (A)はY字迷路試験の概要を示した図である。(B)はY字迷路試験の模式図を示した図である。 実施例3におけるマウスの総進入数(arm entry)を表したグラフである。 実施例3におけるマウスの自発的交替行動変動率(spontaneous alteration)を表したグラフである。 実施例4におけるマウスの新奇物体認識試験の概要を示した図である。 実施例4におけるマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である。 実施例4におけるマウスの新奇物体探索の探索時間割合を表した図である。 実施例5におけるマウスの総進入数(arm entry)を表したグラフである。 実施例5におけるマウスの自発的交替行動変動率(spontaneous alteration)を表したグラフである。 実施例5におけるマウスの新奇物体探索の時間率(Discrimination index)を表した図である。 実施例5におけるマウスの新奇物体探索の探索時間割合を表した図である。
発明の具体的説明
ホップ酸化反応産物
本発明において、ホップ酸化反応産物とは、ホップまたはその加工物(ホップペレット、ホップエキス等)を酸化処理して得られるものをいう。本発明により提供されるホップ酸化反応産物は、例えば、ホップを空気中の酸素に接触させて酸化することにより得ることができる。
ホップ酸化反応産物は、例えば、特許文献1に記載の方法に従い、ホップを酸化処理することにより製造することができる。酸化処理は、好ましくはホップを空気中で加熱することにより行われる。加熱温度は特に限定されないが、好ましい上限は100℃であり、より好ましい上限は80℃である。加熱温度を100℃以下とする場合には異性化よりも酸化を優先的に進行させる上で有利である。また、好ましい加熱温度の下限は60℃である。加熱温度を60℃以上とする場合には酸化反応を効率的に進行させる上で有利である。また、反応期間も特に限定されるものではなく、ホップの品種や反応温度により適宜決定することができる。例えば、60℃であれば48~120時間、80℃であれば8~24時間が好ましい。酸化反応に付される際のホップの形態は空気中の酸素と接触できれば特に限定されるものではないが、好ましくは粉末状にすることにより、反応時間を短縮できる。
本発明においてホップは、ルプリン部を含有するものであれば任意の形態のものでよく、収穫して乾燥させる前のもの、収穫して乾燥したもの、圧縮したもの、粉砕したもの、またはペレット状に加工したもの等用いてもよいが、好ましくはホップペレットの形態である。ホップペレットは、市販品を使用してもよく、例えば、ホップ毬花を圧縮しペレット状にしたもの(Type90ペレット)、ルプリン部分が選択的に濃縮されたペレット(Type45ペレット)、または異性化処理したホップペレット(例えば、Isomerized Pellets (HopSteiner社))等が挙げられる。
ホップエキスを酸化処理に付すことにより生成したホップエキス酸化反応物を本発明におけるホップ酸化反応産物として提供してもよい。ホップエキス酸化反応物は、例えば、特許文献1記載の方法に従い、ホップエキスを酸化処理することにより製造することができる。
ホップには、α酸(フムロン類)、β酸(ルプロン類)、イソα酸(イソフムロン類)などの酸性樹脂成分が含まれている。本発明において「フムロン類」は、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンを含む意味で用いられる。また、本発明において「ルプロン類」はルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロンおよびプレルプロンを含む意味で用いられる。さらに、本発明において「イソフムロン類」は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、Rho-イソフムロン、Rho-イソアドフムロン、Rho-イソコフムロン、Rho-イソポストフムロン、Rho-イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、テトラハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソアドフムロン、ヘキサハイドロイソコフムロン、ヘキサハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソプレフムロンを含む意味で用いられる。なお、イソフムロン類にはシスおよびトランス立体異性体が存在するが、特に断りがない限りその両者を含む意味で用いられる。
ホップを酸化処理に付すことによりα酸、β酸、イソα酸の含有量が低減され、これら以外の成分の含有量が増加する。このようなホップ酸化反応産物の例としては、実施例1と同様のHPLC分析を実施した場合に、酸化反応産物のうちHPLC総ピーク面積に対するα酸、β酸およびイソα酸のピーク面積の割合が20%以下、好ましくは10%以下であるものが挙げられる。
本発明の酸化反応産物に含まれるα酸、β酸、イソα酸以外の成分は、HPLC等の周知の分析手段により容易に検出することができる。例えば、特許文献1の実施例1と同様の手順で調製されるホップ酸化反応産物には、α酸、β酸およびイソα酸以外の成分が含まれており、この成分に対応するピーク(本明細書において「S-フラクション(S-Fr)」ともいう)は生理活性を奏しうる。特許文献1における実施例1の図1Aにおいて矢印で示される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)がS-フラクションに該当する。
特許文献1と同様の条件で調製したホップ酸化反応産物について実施したHPLC分析とその結果(HPLCクロマトグラム)は参考例1および図1に示される通りである。矢印A1およびA2で示される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)がS-フラクションに該当する。ここで、図1において、矢印A1およびA2で分画される範囲のピーク面積値は、保持時間3分から25分までのA1のピーク面積値と、保持時間32分から39分までのA2のピーク面積値(α酸、β酸のピークを除く)との総和である。ここで、A1における「保持時間25分まで」とは、trans-イソコフムロンと同定されているピークの出現までを意味する。また、図1のA1で分画される範囲には、保持時間9.7分付近、保持時間11.8分付近、保持時間12.3分付近に特徴的なピークが認められた。また、図1のA2で分画される範囲には、ショルダーピークが認められ、その始点が保持時間32分付近、そのトップ点(α酸、β酸のピークを除く)は保持時間35分~36分付近、終点は保持時間39分付近であった。
ホップ酸化反応産物は、好ましくはα酸酸化物、イソα酸酸化物およびβ酸酸化物を含有しており、このような酸化物として、例えば、「トリシクロオキシイソフムロン類」を含有する。ここで、「トリシクロオキシイソフムロン類」とは、トリシクロオキシイソコフムロン A(tricyclooxyisocohumulone A)(TCOIcoH A:下記式1参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(2-methylpropanoyl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)、トリシクロオキシイソフムロン A(tricyclooxyisohumulone A)(TCOIH A:下記式2参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(3-methylbutyryl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)、トリシクロオキシイソアドフムロン A(tricyclooxyisoadhumulone A)(TCOIadH A:下記式3参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(2-methylbutanoyl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)を含む化合物群である。本明細書では、以下、TCOIcoH A、TCOIH AおよびTCOIadH AをまとめてTCOIHsAということがある。TCOIHsAの含有量は後記実施例1に記載の方法で測定する。
Figure 2022017430000002
Figure 2022017430000003
Figure 2022017430000004
ホップ酸化反応産物(好ましくはS-フラクション)に含まれる「トリシクロオキシイソフムロン類」以外の酸化物としては、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAが挙げられる。
本発明においては、ホップ酸化反応産物を水性媒体抽出物として提供してもよい。水性媒体は通常食品製造に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、水またはエタノールであり、より好ましくは水である。また、抽出温度は特に限定されないが、好ましくは60℃以下であり、抽出効率を勘案すれば、50~60℃がより好ましい。
本発明に使用するホップ酸化反応産物(好ましくは、ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物)は、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの合計量の、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAの合計量に対する比率(乾燥質量換算)で特徴付けることができ、例えば、この比率が1~30の範囲であるホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物を、好ましくは、2~20の範囲であるホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物を用いることができる。
また、本発明に使用するホップ酸化反応産物は、S-フラクションに占める TCOIHsの含有比率(乾燥質量換算)により特徴付けることができ、例えば、この含有比率が5~15質量%、好ましくは5~12質量%であるホップ酸化反応産物(好ましくは、ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物)を用いることができる。ホップ酸化反応産物のS-フラクションが図1中に示される矢印A1画分の成分で主に構成される場合は、Biosci.,Biotechnol.,Biochem.,2015 (79):1684-1694記載のmatured hop bitter acidsと同様の測定法に
より、その含有量を測定することができる。
ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物のBrix値は、特に制限されないが、例えば、3以下であり、好ましくは1.5~3である。ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物は、デカンテーションまたはろ紙等により不溶性成分を除去してもよい。ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物はまた、活性炭処理を施してもよい。
本発明の組成物はホップ酸化反応産物に加えて、認知機能の維持、向上および/または改善を意図した1種または2種以上の別の成分を含んでいてもよい。認知機能の維持、向上および/または改善を意図した成分としては、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのω‐3系列脂肪酸、イチョウ葉エキス、レスベラトロール、クルクミンなどのポリフェノール類、レシチン、イソフムロン、ペプチド類、アルツハイマー病の危険因子であるホモシステインの代謝異常を防ぐビタミン類などが挙げられる。
用途
後記実施例に示されるように、ホップ酸化反応産物(好ましくは、S-フラクション)は記憶機能をはじめとする認知機能の維持、向上および改善作用を有する。従って、ホップ酸化反応産物は認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物の有効成分として使用することができるとともに、認知機能の維持方法、認知機能の向上方法および認知機能の改善方法に使用することができる。また、ホップ酸化反応産物は認知機能の維持剤、認知機能の向上剤および認知機能の改善剤の有効成分として使用することができる。本発明において「認知機能」は記憶機能および注意・集中機能を含む意味で用いられる。
本発明において「記憶機能」とは、空間認知機能、作業記憶機能、ワーキングメモリー機能、エピソード記憶機能、視覚記憶機能、学習機能を含む機能をいう。ワーキングメモリーには、言語のワーキングメモリー、作業のワーキングメモリーおよび空間のワーキングメモリーが含まれる。
本発明において「記憶機能の維持」とは、記憶機能の低下を予防することなどを含む。また、「記憶機能の向上」とは、例えば、記憶機能を現状より高めることや、中長期的な記憶の定着を促進、ひいては脳の発育を促進させることなどを含む。さらに、「記憶機能の改善」とは、例えば、いったん低下した記憶機能や低下の兆しがある症状を回復させることなどを含む。記憶機能の維持、向上および/または改善としては、記憶機能の増強、記憶機能の低下抑制が挙げられる。
本発明において、「注意・集中機能の維持」とは、例えば、老年層等において、加齢に伴って生じる注意力や集中力の低下を抑制することなどを含む。また、「注意・集中機能の向上」とは、例えば、一過的な注意・集中機能の向上や、中長期的な注意・集中機能の維持・向上を促進させることなどを含む。さらに、「注意・集中機能の改善」とは、例えば、加齢その他の要因により一旦低下した機能や低下の兆しがある機能について回復することなどを含む。注意・集中機能の維持、向上および/または改善としては、注意・集中機能の増強や、注意・集中機能の低下抑制が挙げられる。
上記の本発明の認知機能の維持方法、認知機能の向上方法、認知機能の改善方法は、有効量のホップ酸化反応産物をヒトまたは非ヒト動物に摂取させるか、あるいは投与することにより実施することができる。すなわち、本発明によれば、有効量のホップ酸化反応産物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、認知機能の維持方法、認知機能の向上方法および認知機能の改善方法が提供される。摂取又は投与対象は、ヒトを含む哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
本発明によればまた、認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物および食品の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用が提供される。本発明によればさらに、認知機能の維持剤、認知機能の向上剤および認知機能の改善剤の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用が提供される。本発明によればさらにまた、認知機能の維持剤、認知機能の向上剤または認知機能の改善剤としてのホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物の使用が提供される。本発明によればさらにまた、認知機能の維持、向上および/または改善に用いるためのホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物が提供される。
本発明におけるホップ酸化反応産物の使用はヒトおよび非ヒト動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
本発明においては、また、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療、予防または改善にホップ酸化反応産物を使用することができる。
認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状としては、記憶機能および/または注意・集中力の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状が挙げられ、より具体的には、記憶障害(記憶を思い出すことができない、新たなことを覚えることができないという症状)、見当識障害(時間・場所・人物の失見当)、認知機能障害(計算能力の低下・判断力低下・失語・失認・失行・実行機能障害)などが挙げられる。従って、ホップ酸化反応産物はこれらの疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤として使用できるとともに、これらの疾患および症状の治療方法、予防方法および改善方法に使用することができる。本発明の治療方法、予防方法および改善方法を実施する場合には治療、予防または改善を必要としているヒトを含む哺乳類に有効量のホップ酸化反応産物を投与することにより実施することができる。すなわち、本発明によれば、有効量のホップ酸化反応産物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療方法、予防方法および改善方法が提供される。摂取又は投与対象は、ヒトを含む哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
本発明によればまた、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療用組成物、予防用組成物および改善用組成物の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用が提供される。これら組成物は好ましくは医薬組成物である。本発明によればさらに、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用が提供される。本発明によればさらに、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療剤、予防剤および改善剤としてのホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物の使用が提供される。本発明によればさらにまた、認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患および症状の治療、予防および改善に用いるためのホップ酸化反応産物およびそれを含む組成物が提供される。
本発明の認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物および本発明の認知機能の維持剤、向上剤および/または改善剤並びに本発明の治療剤、予防剤および改善剤は、医薬品、医薬部外品、食品、飼料(ペットフード含む)などの形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。また本発明の認知機能の維持方法、認知機能の向上方法、認知機能の改善方法並びに本発明の治療方法、予防方法および改善方法は下記の記載に従って実施することができる。さらに本発明の使用も下記の記載に従って実施することができる。
本発明の有効成分である本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物はヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物を食品として提供する場合には、これらをそのまま食品として提供することができ、あるいはこれらを食品に含有させて提供することができる。このようにして提供された食品はホップ酸化反応産物を有効量含有した食品である。本明細書において、ホップ酸化反応産物を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲でホップ酸化反応産物(好ましくは、S-フラクション)が摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。
本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物は認知機能の維持、向上および/または改善作用を有するため、日常摂取する食品、さらにはサプリメントとして摂取する食品に含有させて提供することができる。この場合、本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物は1食当たりに摂取する量が予め定められた単位包装形態で提供することができる。1食当たりの単位包装形態としては、例えば、パック、包装、缶、ボトル等で一定量を規定する形態が挙げられる。本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物の各種作用をよりよく発揮させるためには、後述する、ホップ酸化反応産物の1回当たりの摂取量に従って1食当たりの摂取量を決定できる。本発明の食品は、摂取量に関する説明事項が包装に表示されるか、あるいは説明事項が記載された文書等と一緒に提供されてもよい。
本発明の食品には認知機能の維持、向上および/または改善作用を有する旨の表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため本発明の食品には以下の一部または全部の表示が付されてもよい。なお、本発明において「認知機能の維持、向上および/または改善」が以下の表示を含む意味で用いられることはいうまでもない。
・記憶力を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・認知機能を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・注意力を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・集中力を持続する、高める、向上させる、改善する、増強する、サポートする、維持する
・記憶力の維持に役立つ、低下を防止する
・うっかりを防止する、物忘れを防止する
・記憶の定着を向上させる、記憶の精度を高める
・加齢に伴う記憶の低下を抑制する
前述の通り、本発明の食品は、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する食品にホップ酸化反応産物を含有させて提供することができるが、ホップ酸化反応産物は、健康食品や機能性食品、好適には、認知機能の維持、向上および/または改善を意図した1種または2種以上の他の成分を含有する食品に含有させることができる。あるいは、ホップ酸化反応産物を含有する本発明の食品には、認知機能の維持、向上および/または改善を意図した1種または2種以上の他の成分がさらに添加されてもよい。認知機能の維持、向上および/または改善を意図した成分としては前記と同様のものが挙げられる。
「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態であってもよい。また、サプリメントとしては、ホップ酸化反応産物の乾燥粉末に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠することにより製造された錠剤や、カプセルになどに封入されたカプセル剤が挙げられる。
本発明で提供される食品としては、飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、その他雑酒、酎ハイなどのアルコール飲料;果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、清涼飲料水、炭酸飲料、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、ドリンクタイプのゼリー、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニア・ウォーター、ノンアルコールのビールテイスト飲料などの非アルコール飲料;卵を用いた加工品、魚介類や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。なお、ミネラルウォーターは、発泡性および非発泡性のミネラルウォーターのいずれもが包含される。
茶飲料としては、発酵茶、半発酵茶および不発酵茶のいずれもが包含され、例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー、ローズ茶、キク茶、イチョウ葉茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)が挙げられる。
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、モモ、マンゴー、アサイー、ブルーベリーおよびウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、カボチャ、キュウリおよびスイカが挙げられる。
本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物はヒトが食品として長年摂取してきたホップ由来の成分を利用することから、毒性も低く、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いることができる。ホップ酸化反応産物の摂取量または投与量は、受容者の性別、年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与経路並びに組み合わせる薬剤等に依存して決定できる。本発明におけるホップ酸化反応産物の成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)を例示すると、8~1700mg(好ましくは160~1000mg)であり、S-フラクションの成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)を例示すると、1~200mg(好ましくは20~120mg)である。
健常人を対象とした認知機能の維持、向上および改善のための、ホップ酸化反応産物の成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)は、例えば、160~1000mgであり、S-フラクションの成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)は、例えば、20~120mgである。認知機能低下者(認知症患者、軽度認知障害が疑われる者および軽度認知障害を自覚する者を含む)を対象とした認知機能の維持、向上および改善のための、ホップ酸化反応産物の成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)は、例えば、8~1700mgであり、S-フラクションの成人(50kg)1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)は、例えば、1~200mgである。
ホップ酸化反応産物は、対象によっては数回に分けて摂取させ、あるいは投与してもよい。中長期的な効果を期待する場合には、上記量での摂取または投与を1ヶ月(好ましくは3ヶ月、より好ましくは6ヶ月)間、週に1回以上(好ましくは、3日に1回以上、より好ましくは毎日継続)とすることができる。
本発明を以下の例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
参考例1:ホップペレット酸化反応産物の調製
ホップとしては、ペレット状のハラタウペルレ種(HPE種)を用いた。このホップをミルで粉砕し、80℃で24時間まで加熱反応時間を保持した。得られた生成物について以下のように前処理を実施した後、HPLC分析に供した。
〔反応物分析前処理〕
採取した生成物を10%w/vとなるようエタノールに添加し、50℃で1時間抽出を行った。得られた抽出液をエタノールで10倍に希釈した。
[HPLC構成装置]
ホンプ:LC-10ADvp×3(SHIMADZU)
デガッサー:DGU-20A5(SHIMADZU)
システムコントローラー:CBM-20A(SHIMADZU)
オートサンプラー:SIL-20ACHT(SHIMADZU)
カラムオーブン:CTO-20AC(SHIMADZU)
フォトダイオードアレー検出器:SPD-M20A(SHIMADZU)
波形解析ソフトウェア:LCSolution(SHIMADZU)
[HPLC条件]
カラム:Alltima C18 2.1mm I.D. x100mm 粒子径3μm
流速:0.6mL/min
溶出溶媒A:水/リン酸、1000/0.2, (v/v) + EDTA(free) 0.02%(w/v)
溶出溶媒B:アセトニトリル
溶出溶媒C:水
注入量:3μL
カラム温度:40℃
検出波長:270nm(酸化反応産物、イソα酸、α酸、β酸)
グラジエントプログラム:
Figure 2022017430000005
上記分析条件にて、検出波長270nmで検出される全ピークの合計面積値(mAU・min)中のα酸、β酸、イソα酸のピークの面積値の比率(%)を算出した。波形解析にあたって、溶媒ピークやインジェクションショックによる負ピークが生じる領域は解析除外領域とした。上記生成物の分析時のHPLCクロマトグラムは図1に示される通りであった。
実施例1:ホップ酸化反応産物の調製
(1)ホップの酸化処理工程
ハラタウペルレ種(HPE種)のホップをペレットミルで粉砕し、得られたホップ粉砕物を大気下で攪拌しながら60℃で120時間程度加熱した。得られた加熱済みホップ(熟成ホップペレット)に、固形分濃度5w/v%となるように水に添加し、50℃で30分間抽出処理を行った。得られた抽出液をデカンテーションにより固液分離し、固液分離液(Brix 約2)を得た。
(2)活性炭処理工程
上記(1)で得られた固液分離液に、活性炭(Y180C、味の素ファインケミカル社製;対固液分離液0.5w/v%)およびポリビニルポリピロリドン(ポリクラール10、ISPジャパン社製;対固液分離液0.4w/v%)を添加して2時間静置した。得られた混合液に濾過助剤(珪藻土)を添加し、濾過処理を行い、濾液(Brix値 約1.5)を得た。得られた濾液をホップ酸化反応産物水抽出物として以下の実施例で使用した。
(3)ホップ酸化反応産物の成分分析
上記(2)で得られた濾液(ホップ酸化反応産物水抽出液)について、以下の条件にて
HPLC-MSMS分析を行い、ホップ酸化反応産物に含まれる各種成分の含有量を測定した。なお、ホップ酸化反応産物には、α酸酸化物、イソα酸酸化物またはβ酸酸化物として、スコルピオフムリノールA、スコルピオコフムリノールA、トリシクロオキシイソフムロンA、トリシクロオキシイソコフムロンAが含まれることが知られている(Biosci.,Biotechnol.,Biochem.,2015 (79):1684-1694、J.,Agric.,Food Chem., 2015:63:10181-10191)。また、分析に際して使用した標準品はJ.,Agric.,Food Chem., 2015:63:10181-10191およびJ. Nat. Prod. 2014, 77, 1252-1261に記載の方法に準じて調製した。
[HPLC条件]
カラム:Unison UK-C18 100×2mm i.d. 粒子径3μm
流速:0.25mL/分
カラム温度:40℃
移動相A:1%ギ酸含有水
移動相B::1%ギ酸含有アセトニトリル
注入量:3μL
グラジエント:0→30分、15→31%B
30→40分、31→80%B
40→43分、80%B
以降は、洗浄および平衡化工程
[MSMS条件]
質量分析装置:AB SCIEX 4000Q Trap
イオンソース:ESI-ネガティブイオンモード
イオンスプレー電圧:-4500V
分析パラメータ:
Figure 2022017430000006
上記(1)および(2)を3回実施して濾液を得て、スコルピオフムリノールA、スコルピオコフムリノールA、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの含有量を測定した結果、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの合計量の、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAの合計量に対する比率((トリシクロオキシイソフムロンA+トリシクロオキシイソコフムロンA)/(スコルピオフムリノールA+スコルピオコフムリノールA))は以下の通りであった。
ロット1:3.2
ロット2:6.8
ロット3:12.1
以上の結果から、ホップ酸化反応産物においては、トリシクロオキシイソフムロンおよびトリシクロオキシイソコフムロンの合計量の、スコルピオフムリノールおよびスコルピオコフムリノールの合計量に対する比率は2~20程度であることが分かった。
実施例2:認知機能に対するホップ酸化反応産物摂取の効果の確認試験(1)
(1)プラセボおよび被験食品の調製
1粒あたり結晶セルロースのみを257mg充填したハードカプセル(1号サイズ)をプラセボとした。1粒あたり結晶セルロース100mgと実施例1(2)で得られたホップ酸化反応産物水抽出物の乾燥物153mgとを充填したハードカプセルを被験食品とした。各食品に使用したハードカプセルは色および形状を統一し外見で区別がつかないようにした。ここで、被験食品1粒にはS-Frが乾燥質量換算で17.5mg含有される。
(2)試験条件
40歳以上の健常な非喫煙者の男女10名を被験者として、ランダムにプラセボ群と被験食品群に5名ずつ割り付けた。プラセボ群にはプラセボを1日当たり2粒、被験食品群には被験食品を1日当たり2粒用いた(被験食品2粒中、S-Frは乾燥質量換算で35mg)。試験のスケジュールは図2に記載の通りである。具体的には、試験1日目は各食品を摂取させずに認知機能評価を行った。試験3日目は各食品を摂取させ、1時間後に認知機能評価を行った。試験4日目は各食品の摂取のみを行った。試験5日目は各食品を摂取させ、1時間後に認知機能評価を行った。なお、試験期間中はホップを含む飲食品の摂取を禁止し、試験1、3、5日目の認知機能評価前にはカフェインを含有する飲食品の摂取を禁止した。
(3)認知機能の評価方法
認知機能評価としてTrail Making TestのPART A(以後、TMT)、Letter-Number Sequencing Test(以後、LNS)およびCAMBRIDGE COGNITION社のCANTABを用いた。CANTABは複数の認知機能評価が可能なソフトウェアであり、その中でPattern Recognition Memory(以後、PRM)、Spatial Working Memory(以後、SWM)、Paired Associates Learning(以後、PAL)を用いた。評価の順番は、TMT、PRM、SWM、PAL、LNSの順とした。認知機能評価は午前中に実施し、評価を行う部屋に入室後10分間安静にした後に開始した。各評価方法の詳細は以下の通りである。いずれの評価方法も認知機能を評価する上で広く認められた方法である。
(i)TMT
TMTは視覚探索や処理速度、注意の持続を評価する方法である。具体的には、1から25までの数字が印刷された紙を用い、1から順番に数字を線で繋ぎ、25に到達した時点で終了とし、終了までに要した時間を測定した。時間が早いほど処理速度が速く、注意力・集中力が持続したことを表す。
(ii)PRM
PRMは視覚のパターン認識記憶を評価する方法である。具体的には、タブレット型PCを用い、被験者にまず画面上にランダムに表示される10種類の模様を暗記させた。全ての模様が表示された後に、画面中央に2種類の模様(先ほど表示された模様と表示されていない模様が1種類ずつ)が表示されるため、被験者には先に表示された模様をタッチさせた。先に表示された模様をタッチできれば正解となり、正解数が多いほど視覚のパターン認識記憶、すなわち、視覚記憶が高いことを表す。
(iii)SWM
SWMは空間のワーキングメモリーを評価する方法である。具体的には、タブレット型PCを用い、画面上に12個のボックスが表示されるため、被験者はボックスをタッチしてこれらを順に開いた。12個のボックスの内1つにのみ青色の四角形が入っており、青色の四角形を見つけるまでを1ターンとし、合計で12ターン繰り返した。一度青色の四角形が入っていたボックスを見つけると、それ以降のターンには同じボックスには青色の四角形は入っていない。1回のターンにて2回以上同じボックスをタッチした場合にはwithin errorsとしてカウントし、12回のターンの中で過去に青色の四角形が入っていたボックスをタッチした場合にはbetween errorsとしてカウントした。within errorsおよびbetween errorsの数が少ないほど空間のワーキングメモリーが高いことを表す。
(iv)PAL
PALは視覚空間認識記憶と学習能を評価する方法である。具体的には、タブレット型PCを用い、画面上に12個のボックスが表示され、それぞれに1種類ずつの模様が隠されている。ボックスは1つずつランダムに開き模様が表示され、被験者に模様とそれが入っていたボックスの場所を暗記させた。全てのボックスが開き終わった後に画面中央に模様が1つずつ表示されるため、被験者にその模様が入っていたボックスをタッチさせた。12個の模様全てに正解するまで継続し、間違えた数をエラー数として測定した。エラー数が少ないほど空間認識記憶と学習能が高いことを表す。
(v)LNS
LNSは言語のワーキングメモリーを評価する方法である。試験監督者がランダムに並べられた数字およびアルファベットを読み上げ、被験者にこれを暗記させた上で、頭の中で順番を並べ替えて、数字、アルファベットの順番に発音させた。正しい順番通りに発音することが出来れば正解となり、正解数が多いほど言語のワーキングメモリーが高いことを表す。なお、使用した質問用紙の一例を図3に示す(試験監督者が読み上げるものが質問用紙左に、その回答が質問用紙右に示されている。)。
(4)結果
各群の被験者の背景データを表3に示す。群間で年齢および性別に偏りがないことが確認された。
Figure 2022017430000007
TMTの結果について、評価1回目の結果を基準値とし、評価2回目および評価3回目の結果を評価1回目の結果からの変化値として図4に示す。図4によれば、評価2回目と3回目共に、プラセボ群と比較して被験食品群において終了までに要した時間が短いことが確認された。このことから、ホップ酸化反応産物の摂取によって、注意力・集中力が向上することが示された。
PRMの結果について、評価1回目の結果を基準値とし、評価2回目および評価3回目の結果を評価1回目の結果からの変化値として図5に示す。図5の結果によれば、評価2回目と3回目共に、プラセボ群と比較して被験食品群において正解数が多いことが確認された。このことから、ホップ酸化反応産物の摂取によって、視覚記憶が向上することが示された。
SWMの結果について、評価1回目の結果を基準値とし、評価2回目および評価3回目の結果を評価1回目の結果からの変化値として図6および7に示す。図6および7の結果によれば、評価2回目と3回目共に、プラセボ群と比較して被験食品群においてwithin errors(図6)とbetween errors(図7)共にエラー数が少ないことが確認された。このことから、ホップ酸化反応産物の摂取によって、空間のワーキングメモリーが向上することが示された。
PALの結果について、評価1回目の結果を基準値とし、評価2回目および評価3回目の結果を評価1回目の結果からの変化値として図8に示す。図8の結果によれば、評価2回目と3回目共に、プラセボ群と比較して被験食品群においてエラー数が少ないことが確認された。これらのことから、ホップ酸化反応産物の摂取によって、空間認識記憶と学習能が向上することが示された。
LNSの結果について、評価1回目の結果を基準値とし、評価2回目および評価3回目の結果を評価1回目の結果からの変化値として図9に示す。図9の結果によれば、評価2回目と3回目共に、プラセボ群と比較して被験食品群において正解数が多いことが確認された。このことから、ホップ酸化反応産物の摂取によって、言語のワーキングメモリーが向上することが示された。
全ての評価項目においてホップ酸化反応産物の摂取による向上が認められた。これらの結果から、ホップ酸化反応産物の摂取によって広く認知機能の向上が期待できる。
実施例3:認知機能に対するホップ酸化反応産物摂取の効果の確認試験(2)
本実施例では短期記憶および空間記憶に関する効果を評価した。
(1)認知機能の評価方法(Y字迷路試験)
マウスをある空間に投入すると、本来、直前に選択したルートを覚えている場合には、新規探索欲求のために、その直前のルートとは異なるルートを選択する性質がある。そのため、幅、長さ等が等価の3本のアームを持つY字迷路にマウスを入れた場合、通常は直前に進入したアームとは異なるアームに進入する。Y字迷路試験は、マウスのその性質を利用し、認知機能の指標となる短期記憶および空間記憶の評価に利用する試験である。
本試験では、一本のアームの長さが25cm、壁の高さが20cm、床の幅が5cmの3本のアームが各々120度の角度で接続されたY字迷路をY字迷路試験のための装置として使用した。
マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端へ入れて自由に8分間探索させた際の移動したアームの順を記録した。ここで、3回連続で異なるアームを選択し、進入した場合を自発的交替行動と呼ぶ。時間内のアームへの総進入数および自発的交替行動数をカウントし、下記式(1)を用いて自発的交替行動変動率(%)を算出した。
Figure 2022017430000008
自発的交替行動変動率が高いほど、短期記憶が保持されていることを示す。
(2)ホップ酸化反応産物摂取の効果
6週齢雄のCD-1マウス(日本SLC社より入手)に、ホップ酸化反応産物をS-Frとして乾燥質量換算で0(希釈溶媒)、1、3、10mg/kg体重となるように胃内強制投与した。投与したS-Frを含むホップ酸化反応産物は、投与直前に実施例1(2)で得られたホップ酸化反応産物抽出物の乾燥物に蒸留水を添加することにより調製したものである。投与40分後、記憶障害を誘発するために0.85mg/kg体重のスコポラミン塩酸塩(SIGMA社製)を腹腔内投与し、健忘モデルマウスを作成した。スコポラミン(SCP)の腹腔内投与20分後、Y字迷路試験を実施した(図10)。なお、各群10匹で実験を行い、平均、標準誤差を求めた。
図11には総進入数を、図12には自発的交替行動変動率をそれぞれ示す。図11および図12の結果から、ホップ酸化反応産物投与による総進入数の変動は認められず、すなわち、ホップ酸化反応産物投与は行動量には影響を与えないが(図11)、ホップ酸化反応産物投与群は非投与群と比較して自発的交替行動変動率が高くなり、すなわち、ホップ酸化反応産物により短期記憶が保持されたことが確認された(図12)。これらのことからS-Frを含むホップ酸化反応産物は認知機能を改善できることが示された。
実施例4:認知機能に対するホップ酸化反応産物摂取の効果の確認試験(3)
本実施例では長期記憶およびエピソード記憶に関する効果を評価した。
(1)認知機能の評価方法(新奇物体認識試験)
マウスは本来新奇物体と認識すると接近し、形状の確認、匂いを嗅ぐなどの探索行動を行う。このとき、記憶している物体に対しては探索行動をとらないか、新奇物体に比べて短い時間しか探索しない。この性質を利用するのが新奇物体認識試験である。
容器(床が38.5cm×38.5cm、高さが40cm)の隣り合った角から4cmずつ中央へ離れた場所に2つの同じ形をしたゴルフボール程度の大きさの積み木XおよびYを設置する。マウスをこの容器に入れて、10分間自由探索を実施し、終了後は飼育ケージへ戻した。これを獲得試行とする。
24時間後に、24時間前に呈示した積み木YをゴルフボールZに置換した容器の中へ再度入れ、5分間自由探索を行わせて2つの物体への接触時間を各々測定した。これをテスト試行とする。両物体XとZへの探索行動の時間の長さの違いから、記憶の保持を評価する。
マウスは獲得試行とテスト試行の間隔が短い場合、新奇性のある物体(本試験におけるゴルフボールZ)により長い時間探索行動を示し、その嗜好性は獲得試行とテスト試行の間隔の拡大に伴って減弱する。そのため、新奇性に対する行動変化は「獲得試行時の物体の形状の記憶」を反映していると一般的に考えられている。
獲得試行時の物質の探索時間とテスト試行時の新奇物質の探索時間を計測し、下記式(2)によりDiscrimination index(DI)を算出した。
Figure 2022017430000009
Discrimination indexが高いほど、獲得試行時の物体の形状を記憶していることが示され、長期記憶が維持されていると評価される。実験の概要は図13に示される通りであった。
(2)ホップ酸化反応産物摂取の効果
各群10匹の6週齢雄のCD-1マウスに、ホップ酸化反応産物をS-Frとして乾燥質量換算で0(希釈溶媒)、1、3mg/kg体重となるように胃内へ強制投与した。上記ホップ酸化反応産物は実施例3(2)と同様の手順で調製した。投与60分後に獲得試行を行った。24時間後に各個体に、獲得試行時と同用量のホップ酸化反応産物を強制胃内投与し60分後にテスト試行を行った。結果は図14に示される通りであった。
マウスにホップ酸化反応産物を胃内投与した群においてDiscrimination indexが高く、この効果には用量依存傾向が認められた。S-Frを含むホップ酸化反応産物投与によって、獲得試行時の物体の形状の記憶が保持され、すなわち、長期記憶が増強していることが示された。
テスト試行時の新奇物体(novel)、非新奇物体(familiar)に対する探索時間を計測し、下記式(3)および(4)により探索時間割合(exploration time (%))を算出した(図15)。
Figure 2022017430000010
Figure 2022017430000011
S-Frを含むホップ酸化反応産物の投与によって、新奇物体(novel)に対する探索時間割合は投与量に依存して増加する傾向が認められた。
実施例5:認知機能に対するホップ酸化反応産物摂取の効果の確認試験(4)
本実施例ではアルツハイマー病モデルにおける短期記憶および空間記憶を評価した。
(1)アルツハイマー病モデルの作成
アルツハイマー病の原因物質の一つであるアミロイドβは、脳内で可溶性オリゴマーを形成し神経毒性を示すというオリゴマー仮説が提唱されている。アミロイドβオリゴマーの一種であるADDL(Aβ-derived diffusible ligands)はシナプスの可塑性を阻害するリガンドとして同定され、ADDLを脳室内に投与することで認知機能低下作用を示す。そのため、ADDLを投与したマウスは、脳内で老廃物が蓄積して生じる認知機能の低下および疾患、中でもアルツハイマー型認知症のモデルとして用いることができる(岩田修永、西道隆臣(2010)『アルツハイマー病の謎を解く』、中外医学社、173~180頁)。
アミロイドβ1-42(ペプチド研究所社製)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、Wako社製)に1mMとなるように溶解した。溶液を室温で30分間静置した後にHFIPを蒸発させ除去し、ジメチルスルホキシド(DMSO、Wako社製)に5mMとなるように溶解した。溶液をリン酸緩衝液(PBS)に100μMとなるように希釈し、4℃で24時間静置しアミロイドβを重合させた。溶液を10,000回転/分、15分間遠心し、上清をADDL溶液として得た。
各群12匹の5週齢雄CD-1マウス(日本チャールズ・リバー社より入手)をソムノペンチル(共立製薬社製)にて麻酔し、上記のADDL溶液を両側脳室に5μLずつ投与し、アルツハイマー病モデルマウスを作成した。また、同様の処置を行い、PBSを両側脳室内に投与したShamマウスを作成した。
(2)ホップ酸化反応産物摂取の効果
(i)Y字迷路試験
アルツハイマー病モデルマウスに、ホップ酸化反応産物をS-Frとして乾燥質量換算で0(希釈溶媒)、1、10mg/kg体重となるように胃内へ強制経口投与した。上記ホップ酸化反応産物は実施例3(2)と同様の手順で調製したものである。単回投与60分後にマウスの認知機能は実施例3(1)と同様のY字迷路試験にて評価した。
図16には総進入数を、図17には自発的交替行動変動率をそれぞれ示す。図16の結果から、ホップ酸化反応産物投与による総進入数の変動は認められず、すなわち、ホップ酸化反応産物投与は行動量には影響を与えないが(図16)、ホップ酸化反応産物投与群は非投与群と比較して自発的交替行動変動率が高くなり、すなわち、ホップ酸化反応産物により短期記憶などの認知機能が保持されたことが確認された。また、その効果はS-Frの投与量に依存する傾向が認められた(図17)。
(ii)新奇物体認識試験
アルツハイマー病モデルマウスに、ホップ酸化反応産物をS-Frとして乾燥質量換算で0(希釈溶媒)、10mg/kg体重となるように胃内へ経口投与した。上記ホップ酸化反応産物は実施例3(2)と同様の手順で調製した。投与60分後に実施例4(1)と同様の新奇物体認識試験における獲得試行を行った。24時間後に各個体に、獲得試行時と同用量のホップ酸化反応産物を強制胃内投与し60分後にテスト試行を行った。結果は図18に示される通りであった。
マウスにホップ酸化反応産物を胃内投与した群において高いDiscrimination indexを示した。S-Frを含むホップ酸化反応産物投与によって、獲得試行時の物体の形状の記憶が保持され、すなわち、長期記憶が増強していることが示された。
実施例4と同様にして探索時間割合(exploration time (%))を算出した(図19)。S-Frを含むホップ酸化反応産物の投与によって、新奇物体(novel)に対する探索時間割合は増加する傾向が認められた。
(i)と(ii)の結果からS-Frを含むホップ酸化反応産物は、短期的な摂取でも脳内において老廃物が蓄積することに伴う認知機能の低下、記憶の定着、保持および再生の低下の改善、さらにはアルツハイマー病などの認知症を改善することが示された。

Claims (10)

  1. ホップ酸化反応産物を含んでなる、認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物。
  2. 認知機能が記憶機能である、請求項1に記載の組成物。
  3. 認知機能が注意・集中機能である、請求項1に記載の組成物。
  4. 食品組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 1回摂取に適した単位包装形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. ホップ酸化反応産物がS-フラクションである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. S-フラクションを乾燥質量換算で1回当たりの摂取量で1~200mgで含んでなる、請求項6に記載の組成物。
  8. 認知機能の維持、向上および/または改善がその治療、予防または改善に有効である疾患または症状の治療、予防または改善に用いるための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 有効量のホップ酸化反応産物を、対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、認知機能の維持方法、認知機能の向上方法および認知機能の改善方法。
  10. 認知機能の維持、向上および/または改善のための組成物または食品の製造のための、または、認知機能の維持剤、認知機能の向上剤および認知機能の改善剤の製造のための、ホップ酸化反応産物の使用。
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