JP2022060056A - 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤 - Google Patents

茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2022060056A
JP2022060056A JP2020168043A JP2020168043A JP2022060056A JP 2022060056 A JP2022060056 A JP 2022060056A JP 2020168043 A JP2020168043 A JP 2020168043A JP 2020168043 A JP2020168043 A JP 2020168043A JP 2022060056 A JP2022060056 A JP 2022060056A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
brain function
test
improving agent
function improving
catechin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020168043A
Other languages
English (en)
Inventor
吉武 馬場
Yoshitake Baba
孝宣 瀧原
Takanobu Takihara
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ito En Ltd
Original Assignee
Ito En Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ito En Ltd filed Critical Ito En Ltd
Priority to JP2020168043A priority Critical patent/JP2022060056A/ja
Publication of JP2022060056A publication Critical patent/JP2022060056A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Non-Alcoholic Beverages (AREA)

Abstract

【課題】新規脳機能改善剤等の提供。【解決手段】本発明は、有効成分として、茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤であって、脳機能がコグニトラックス検査で評価される脳機能である、脳機能改善剤等を提供する。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年9月17日に、馬場 吉武、稲垣 隼、中川 沙恵、金子 俊之、小林 誠、瀧原 孝宣が、Molecules 2020,25(18),4265;https://doi.org/10.3390/molecules25184265にて馬場 吉武及び瀧原 孝宣によってなされた発明の一態様を公開した。
本発明は、茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤、これを含む組成物、特に飲食品組成物等に関する。
近年、高齢化の進行に従って、加齢に伴う脳の認知機能障害が社会問題となり、認知機能障害の予防又は改善に有効な食品、成分等について様々に研究が進められている。ヒトの認知機能障害の有無は、認知機能検査(スクリーニング検査)によって診断することができ、様々な認知機能検査が提案されている。そのため、認知機能の評価においては、検査目的に応じて、既知の認知機能検査から適正な検査を適宜選択して実施される。特許文献1では、ドコサヘキサエン酸、ウリジン等を含む組成物を用いて認知機能を向上させることが提案され、認知能力を評価する標準的な検査として、ミニメンタルステート検査を利用することが記載されている。
その他にも、認知機能を検査する方法として、改定長谷川式認知症スケール(Hasegawa's Dementia Scale-Revised)やコグニトラックス検査が知られており、特許文献2では、コグニトラックス検査を用いた軽度認知障害に対する緑茶成分の有効性評価方法が記載されている。
特許文献3には、テアニンやカテキンを含む緑茶葉粉末が、コグニトラックス検査を通じて健常者認知機能の維持又は軽度認知障害の改善に有効であることが開示されている。その一方で、非特許文献1には、エピガロカテキンガレートが健常成人の前頭葉における脳血流のパラメーターを調節することができるものの、認知機能とは無関係であることが記載されている。
特開2015-143248号公報 特開2020-038156号公報 特開2020-037540号公報
しかしながら、脳の機能は、非常に複雑であり、様々な機能が相互に関連して作用するため、特定の脳機能改善に特化した薬剤、サプリメント又は、飲料や茶葉商品等の飲食品等、特に機能性食品の提供が求められている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、新規脳機能改善剤、又はそれを含む組成物、特に飲食品組成物の提供を目的とする。
認知機能の検査方法は感度や特異度のみならず、評価方法の違いから、評価される認知機能も異なる場合がある。例えば、数字の逆唱や計算問題等の個々の項目の結果を合計得点で認知機能を評価する改定長谷川式認知症スケールやミニメンタルステート検査は、検査内容や配点の偏りがあり、検出しやすい認知症の種類(アルツハイマー型や脳血管型など)が異なり、また、認知機能低下の症状が軽い対象者は異常を検出しにくいという報告もある。
コグニトラックス検査は、従来の改定長谷川式認知症スケールやミニメンタルステート検査と異なり、機能が低下している領域を個別に判断できるという特徴がある。
本発明者らは、同じコグニトラックス検査で評価した場合でも、抹茶と、それに含まれる各成分がそれぞれ異なる認知機能の改善に寄与することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]
有効成分として、茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤であって、脳機能がコグニトラックス検査で評価される脳機能である、脳機能改善剤。
[2]
茶ポリフェノールが、カテキン類である、[1]に記載の脳機能改善剤。
[3]
カテキン類がエピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCG)、カテキンガレート(CG)及びエピカテキン(EC)、から成る群から選択される1又は複数を含む、[2]に記載の脳機能改善剤。
[4]
茶ポリフェノールがエピガロカテキンガレートを含み、エピガロカテキンガレートの含有量が40質量%以上である、[3]に記載の脳機能改善剤。
[5]
脳機能改善剤がさらに1質量%以下のカフェインを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[6]
脳機能がコグニトラックス検査における持続処理テストで評価される持続的注意力、反応速度又は衝動性、あるいは4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力である、[1]~[5]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[7]
持続的注意力、反応速度又は衝動性、あるいは作動記憶力又は持続性注意力が、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価されない脳機能である、[6]に記載の脳機能改善剤。
[8]
カテキンの有効量が1日あたり100~400mgである、[1]~[7]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[9]
カテキンの有効量が単回投与量である、[8]に記載の脳機能改善剤。
[10]
持続的注意力、反応速度又は衝動性の改善が、抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の持続処理テストにおける誤応答の数の減少である、[6]~[9]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[11]
持続処理テストが、ランダムに文字が表示される間に、特定の文字が表示された場合に応答するのに要する時間の検査である、[6]~[10]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[12]
作動記憶力又は接続性注意力の改善が、抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の4パート持続処理テストにおける平均正解応答時間の減少である、[6]~[11]のいずれかに記載の脳機能改善剤。
[13]
4パート持続処理テストが、ランダムに表示される図に関する2枚前の図の記憶の検査である、[12]に記載の脳機能改善剤。
[14]
[1]~[13]のいずれかに記載の脳機能改善剤を含む組成物。
[15]
飲料、食品、サプリメント又は医薬品の形態である、[14]に記載の組成物。
[16]
液体、粉剤、錠剤又はカプセルの形態である、[14]又は[15]に記載の組成物。
[17]
コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力を改善するための、[14]~[16]のいずれかに記載の組成物。
実質的に茶ポリフェノールのみを摂取することにより、改定長谷川式認知症スケールやミニメンタルステート検査では評価することができなかった脳機能を改善することが可能になる。
以下、本発明の実施形態又は実施態様について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
(脳機能改善剤)
一実施形態において、茶ポリフェノールを含む、脳機能改善剤であって、脳機能がコグニトラックス検査で評価される脳機能である、脳機能改善剤が提供される。
認知症の症状は、記憶障害、判断力低下、見当識障害、言語障害(失語)、失行、失認、実行機能障害など多岐に渡る。軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、健常状態と認知症との中間に当たるグレーゾーンの段階である。つまり、認知機能(記憶、決定、理由付け、実行等)のうちの1つの機能に問題が生じていても、日常生活に支障がない状態である。
コグニトラックス検査は、米国のCNS Vital Signs社が開発した認知機能検査技術であり(Gualtieri CT, Johnson LG: Reliability and validity of a computerized neurocognitive test battery, CNS Vital Signs. Arch Clin Neuropsychol 2006;21:623‐643.)、例えば、以下の特徴を有する。
・記憶力・注意力・処理速度・実行機能など広範囲の機能領域を測定、結果は数値化、年齢標準値との比較で表示。
・10種類のテストを提供、検査目的によりテストを選択可能。
・個人の値を経時的モニターすることにより記憶力や認知機能の変化を見つけることが可能。
・ミリセカンド単位の感度で、正確で信頼性が高い測定。
・非常に低い学習効果や天井効果。
コグニトラックス検査の10種類のテストは以下のとおりである。
1.言語記憶テスト(Verbal Memory(VBM))
2.視覚記憶テスト(Visual Memory(VIM))
3.指たたきテスト(Finger Tapping(FTT))
4.SDCテスト(Symbol Digit Coding(SDC))
5.ストループテスト(Stroop Test(ST))
6.注意シフトテスト(Shifting Attention(SAT))
7.持続処理テスト(Continuous Performance(CPT))
8.表情認知テスト(Perception of Emotion(POET))
9.論理思考テスト(Reasoning(NVRT))
10.4パート持続処理テスト(Four Part Continuous Performance(FPCPT))
脳機能は、コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される持続的注意力、反応速度又は衝動性、あるいは4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力であることが好ましい。
持続処理テストでは、長時間にわたる注意力の持続が測定される。同テストにおいて、被験者は、画面にランダムに表示される文字の中で、”B”が表示された場合だけ応答し、その他の文字には応答しないように指示される。その結果、持続的注意力、選択反応速度及び/又は衝動性が評価される。
本明細書で使用する場合、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される持続的注意力」とは、認知機能の一部であり、持続して、あるいは繰り返して行われる活動の間、一定の反応行動を持続させる能力であって、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価できない脳機能を意味する。換言すると、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される持続的注意力」は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価される注意力(例えば、100から7を繰り返し引いていく計算問題により評価される能力)やその他の認知機能と異なる。
本明細書で使用する場合、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される反応速度」とは、認知機能の一部であり、問題が出てから回答する(ボタンを押す)までの時間のような反応速度であって、反応速度を評価対象としていない改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価できない脳機能を意味する。換言すると、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される反応速度」は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価される認知機能と異なる。
本明細書で使用する場合、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される衝動性」とは、認知機能の一部であり、制御しきれないほどの衝動や衝動の制御障害が起きると欲求がそのまま行動として現れ、無計画で暴発的、短絡的な行動(衝動行為)がみられるが、その行動特性、すなわち衝動行為があらわれる傾向であって、そのような傾向を評価対象としていない改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価できない脳機能を意味する。換言すると、「コグニトラックス検査における持続処理テストで評価される衝動性」は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価される認知機能と異なる。
持続的注意力、反応速度又は衝動性の改善の例として、抹茶との比較で抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の持続処理テストにおける誤応答の数の減少が挙げられる。脳機能改善剤の効果を確認するために使用される比較対象としての抹茶は、有効成分である茶ポリフェノール、特にカテキンのおよそ半分の量のカテキンを含むことが想定される。例えば、脳機能改善剤のエピガロカテキンガレートが220mgの場合、これは4gの抹茶に相当する量であるため、比較対象とされる抹茶は合計2g程度、それに含まれるエピガロカテキンガレートは約110mgとなる。
4パート持続処理テストでは、作動記憶力及び持続性注意力が測定される。同テストは4つのパートから成り、パート1では単純反応速度、パート2では持続処理テストの変型、パート3では1枚前の図の記憶力、パート4では2枚前の図の記憶が検査される。
本明細書で使用する場合、「コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力」とは、認知機能の一部であり、課題遂行中にその課題を遂行する目的で一時的に必要となる記憶の機能(働き)・それを支えるメカニズム(仕組み)やシステム(構造)、つまりワーキングメモリの機能であって、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価できない脳機能を意味する。換言すると、「コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力」は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価されるワーキングメモリ機能やその他の認知機能と異なる。
作動記憶力又は持続性注意力の改善の例として、抹茶との比較で抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の4パート持続処理テストにおける平均応答時間の減少が挙げられる。脳機能改善剤の効果を確認するために使用される比較対象としての抹茶は、有効成分である茶ポリフェノール、特にカテキンのおよそ半分の量のカテキンを含むことが想定される。例えば、脳機能改善剤のエピガロカテキンガレートが220mgの場合、これは4gの抹茶に相当する量であるため、比較対象とされる抹茶は合計2g程度、それに含まれるエピガロカテキンガレートは約110mgとなる。
本明細書で使用する場合、「コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される持続性注意力」とは、認知機能の一部であり、持続して、あるいは繰り返して行われる活動の間、一定の反応行動を持続させる能力であって、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価できない脳機能を意味する。換言すると、「コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される持続性注意力」は改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価される認知機能と異なる。
脳機能改善剤の有効成分である茶ポリフェノールは、茶、例えば茶生葉、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶からなる群から選ばれる1種又は2種以上に由来するものであればよい。また、いずれか単独で、若しくはこれらのうち任意のものを2種類以上で抽出して得られるもの、又はそれぞれを抽出して得られたものの混合物を用いることができる。
不発酵茶としては、煎茶、番茶、玉露、釜煎り茶、てん茶、ほうじ茶などの緑茶類を挙げることができ、半発酵茶としては、鉄観音、黄金桂、水仙、包種茶などのウーロン茶類を挙げることができ、発酵茶としては、ダージリン、ウバなどの紅茶類を挙げることができ、後発酵茶としてはプアール茶等を挙げることができる。
更に、この茶ポリフェノールを溶媒抽出法、樹脂吸着法、限外濾過・逆浸透濾過等の濾過などの精製手段によって茶ポリフェノール、中でもカテキンの含有量を高める方向に精製して茶ポリフェノールを得ることもできる。また、市販の茶ポリフェノール製剤を用いることもできる。例えば、テアフラン30A((株)伊藤園製)は、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした茶ポリフェノール製剤であり、テアフラン90S((株)伊藤園製)は、緑茶を熱水抽出処理して得た抽出物を、水と低・高濃度アルコールを使って吸着カラムにて分離し乾燥させ、茶ポリフェノール濃度を約85から99.5%とした茶ポリフェノール製剤である。その他、市販の茶ポリフェノール製剤として、三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、サントリー(株)製「サンウーロン」等が挙げられる。テアフラン90Sは茶ポリフェノールを90質量%以上含有するため好ましい。
脳機能改善剤は、茶ポリフェノール以外の茶由来成分、例えば、テアニンやカフェインを実質的に含まないことが好ましい。テアフラン90Sには1質量%以下のカフェインが含まれ得るが、脳機能改善剤中に1質量%程度含まれるカフェインは脳機能改善剤の効果に影響を与えない。
茶ポリフェノールはカテキン類であってもよい。カテキンは、チャノキ等の植物に多く含まれるポリフェノールである。カテキン類は、緑茶葉に8~20質量%程度含まれることが知られている。緑茶葉に含まれる成分は茶樹の品種、栽培方法及び栽培環境、茶葉の摘採時期(一番茶、二番茶等)及び部位(芽、葉、茎)や、茶葉の加工条件(蒸し、揉み、乾燥等)によっても変動し、例えば、遮光栽培を行った玉露やてん茶のようなかぶせ茶では、カテキン類中のエピガロカテキンガレートの割合が高くなる。効率の観点からは、所望とするカテキン化合物の含有量が増大した茶葉から有効成分を抽出することが好ましい。カテキンの単離は公知の手法を用いて行うことができる。カテキンは合成品を用いてもよい。
本明細書で使用する場合、「カテキン類」とは、4種のエピ型カテキン(エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCG))と、4種の非エピ型カテキン(カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(CG)、ガロカテキンガレート(GCG))と、から成る群から選択されるカテキン類のいずれか一つ以上を意味する。
有効成分はカテキン類のそれらの2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、カテキンは、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCG)、カテキンガレート(CG)及びエピカテキン(EC)、から成る群から選択される1又は複数であることが好ましい。これらのカテキン類化合物の中でも、エピガロカテキンガレート(EGCG)単独、又は他のカテキン類化合物との組み合わせの場合、他のカテキン類化合物よりもエピガロカテキンガレート(EGCG)を多く含む有効成分が好ましい。茶ポリフェノールにおけるエピガロカテキンガレート(EGCG)の含有量が30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上又は90質量%以上であることが好ましい。
脳機能改善剤は粉剤の形態であってもよい。しかしながら、脳機能改善剤の剤形は粉末状に限定されず、他の形態であってもよい。
脳機能改善剤は剤形に応じて適当な容器に封入される。粉末の場合、袋、箱、あるいはこれらに類する容器に封入することができる。例えば、ティーバッグのような包装体に脳機能改善剤を封入してもよく、そのような包装体の形状としては、例えば四角型、三角錐型(いわゆるテトラパック(登録商標))、丸みの帯びた袋体、Wチャンバー型等を挙げることができる。また、バッグ本体に水乃至お湯を注いで、コーヒーのようにドリップする形式のものに脳機能改善剤を充填してもよい。
容器の素材は、当業者に公知の素材を使用できる。例えばプラスチック、金属等が挙げられ、具体的にはポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、セロファン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウム、紙、セルロース繊維、天然繊維、ポリ乳酸等を挙げることができる。例えば、合成繊維などからなる布製のフィルターからなるものであってもよいし、不織布からなるフィルターからなるものであってもよい。
容器は、積層フィルムを備えていてもよい。そのような積層フィルムは内部にアルミニウム層を備えることが好ましい。
脳機能改善剤は、軽度認知障害に罹患しているか、その疑いがある対象者、より具体的には、作動記憶力又は持続性注意力の改善が必要なヒトに投与され得る。対象者の年齢は、特に限定しないが、50歳以上69歳以下の中高年であることが好ましい。
脳機能改善剤の投与量は、脳機能改善剤が実質的に茶ポリフェノールから成る場合、例えば、茶ポリフェノールの有効量が1日あたり約250~1000mg、好ましくは約600mg~1000mg、より好ましくは約800mgとなるよう調節される。テアフラン90Sを有効成分として使用した場合、上記の茶ポリフェノールの有効量からエピガロカテキンガレート(EGCG)の有効量を算出すると、1日あたり約100~400mg、好ましくは約150~250mg、より好ましくは約200mgとなる。上記の投与量は1日1回の単回投与量としてもよいし、1日2~3回の複数回投与量としてもよい。上記の量は対象の年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
有効成分としての茶ポリフェノールは単独で脳機能改善剤に配合されることが好ましいが、その脳機能改善効果が損なわれない限り、脳機能改善効果が知られている他の有効成分と組み合わせてもよい。しかしながら、茶由来の成分であるテアニンやカフェインは茶ポリフェノールと組み合わせた場合、茶ポリフェノールの脳機能改善効果を阻害するので、極力テアニンやカフェインを除くことが好ましい。
(組成物)
一実施形態において、脳機能改善剤を含む組成物が提供される。
脳機能改善剤、又はそれを含む組成物の剤形は特に限定されず、投与経路も剤形や改善すべき脳機能改善剤の程度に応じて適宜当業者が決定することができ、例えば経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜等)が挙げられる。経口投与が好ましい。
組成物は、有効成分としての茶ポリフェノール以外に賦形剤を含んでいてよい。賦形剤は、一般的に薬学的製剤に用いられる固形のものを利用すればよい。例えば、コーンスターチ、小麦粉、コメ粉等のデンプンや、乳糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール、白糖等の糖類、デキストリン、沈降シリカ、ゼラチン、セルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。このような賦形剤から、一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。
組成物は粉剤の形態であってもよい。
茶ポリフェノール及び、任意に、賦形剤に対して、必要に応じて、油脂等、調味料、香料などを添加して混合することによって脳機能改善剤を含む組成物が調製される。組成物は、液剤、粉剤、カプセル剤、又は、錠剤に調製して提供してもよく、この場合、サプリメント等として提供し易い。本明細書で使用する場合、「液剤」とは水又は油等の液性媒体を基剤とする液状の製剤であって、シロップ等を含む。本明細書で使用する場合、「錠剤」とは、錠剤のみならず、丸剤を含むタブレット剤の剤形を意味する。錠剤については、糖衣錠などのような、味覚的に内容物を判別できない形態であってもよい。カプセルは、一般的に医薬品等に用いられるものを利用すればよく、硬カプセル剤及び軟カプセル剤の何れも利用可能である。硬カプセル剤は、例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を用いて成形したカプセル被膜にサンプルを充填して調製することができる。軟カプセル剤は、ゼラチンにグリセリンなどの可塑剤を加えたシート材でサンプルを挟んで圧着成型することによって得られる。
カプセル剤及び錠剤の大きさ及び内容量、並びに、1回当たりの摂取数は、被験者が無理なく摂取可能なように設定することができる。概して、一日当たりの茶ポリフェノールの摂取量が約250~1000mg、好ましくは約600mg~1000mg、より好ましくは約800mgとなるような摂取条件を設定することができる。茶ポリフェノールの投与量は、脳機能改善剤が実質的に茶ポリフェノールから成る場合、例えば、1日あたり約250~1000mg、好ましくは約600mg~1000mg、より好ましくは約800mgとなるよう調節される。
組成物は飲食品、特に、特定保健用食品や機能性食品の形態で提供することが好ましい。組成物は、軽度認知障害に罹患しているか、その疑いがある対象者、より具体的には、作動記憶力又は持続性注意力の改善が必要なヒトが摂取することが想定されるため、組成物の用途として、それらの対象者の脳機能改善、特にコグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力であって、好ましくは改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価されない脳機能が挙げられる。
有効成分である茶ポリフェノールは、飲食品の表面に振りかけたり、乗せたりすることや、飲食品中に混合して溶解することにより飲食品に配合される。
本明細書で使用する場合、「飲食品」とは、加工食品、飲料、青果など飲食に供されるものを意味する。飲料の例として、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳;緑茶、紅茶、麦茶、ほうじ茶、玄米茶、ブレンド茶等の茶飲料、清涼飲料、栄養飲料、スポーツ飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料等の嗜好性飲料やドリンク剤があるが、これらに限定されない。茶飲料の場合、茶ポリフェノールの含有量と相対的にカフェイン又はテアニン、あるいはその両方の含有量を低減させるか、カフェイン又はテアニン、あるいはその両方の含有量を除くことが好ましい。
飲料を充填する容器の例には、ペットボトル、缶、紙、瓶等の通常用いられる容器があるが、これらに限定されない。充填された後密封できる容器を使用することが好ましい。
食品の例として、クッキー、ビスケット、チョコ、ケーキ、プリン、アイスクリーム、シャーベット、ワッフル、ウエハース、ホットケーキ、ドーナッツ、ポップコーン、カステラ、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、和菓子等の菓子類;食パン、菓子パン、その他のパン等のパン類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ等の麺類;ハンバーグ、ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉加工食品;カレー、ラーメン、スープ等のインスタント食品が挙げられるが、これらに限定されない。
飲食品の中でも、茶飲料、顆粒茶、ティーバッグ、パック茶(リーフ)等の茶関連飲食品に茶ポリフェノールを配合することが好ましい。
あるいは、組成物を、細粒、乳濁液、クリーム等の形態に調製して、調味料、ソース、ドレッシングなどの食品として提供してもよい。このような食品を、1回当たりの摂取量に応じて適宜小分け包装して提供すると、取り扱いが容易である。
1日の摂取回数及び摂取時間帯(午前/午後、朝/昼/夜、食事との関係)、1回の摂取量及び1日の摂取量などが適切に設定されるので、設定した摂取条件に基づいて、摂取し易い形態に緑茶組成物を調製するとよい。茶ポリフェノールは朝摂取することが好ましい。組成物は、10週間程度以上、好ましくは12週間程度以上経口摂取するとよい。
軽度認知障害から認知症へ症状が進行する人の割合は、年平均で10%程度と言われ、これは、5年経過後には約40%が認知症へ進行することを意味するので、軽度認知障害の早期対処による認知症の予防を実現することは非常に重要である。従って、認知機能の維持又は軽度認知障害の改善に有効な形態で緑茶関連食品を市場に提供することは、保健及び医療の点において意義がある。
(治療方法)
一実施形態において、対象の脳機能を改善する方法であって、対象に対し、茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤を投与することを含み、脳機能がコグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力である、方法、が提供される。
脳機能改善剤の投与が想定される対象は、軽度認知障害に罹患しているか、その疑いがある対象者、より具体的には、作動記憶力又は持続性注意力の改善が必要なヒトである。対象者の年齢は、特に限定しないが、50歳以上69歳以下の中高年であることが好ましい。
脳機能改善剤の投与量は、脳機能改善剤が実質的に茶ポリフェノールから成る場合、例えば、茶ポリフェノールの有効量が1日あたり約250~1000mg、好ましくは約600mg~1000mg、より好ましくは約800mgとなるよう調節される。テアフラン90Sを有効成分として使用した場合、上記の茶ポリフェノールの有効量からエピガロカテキンガレート(EGCG)の有効量を算出すると、1日あたり約100~400mg、好ましくは約150~250mg、より好ましくは約200mgとなる。上記の投与量は1日1回の単回投与量としてもよいし、1日2~3回の複数回投与量としてもよい。上記の量は対象の年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
投与のタイミングは限定されないが、朝行うことが好ましい。投与期間は10週間程度以上、好ましくは12週間程度以上である。4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力を改善する場合にはこのような長期間投与が特に好ましい。
茶ポリフェノールによる脳機能改善効果が損なわれない限り、脳機能改善効果が知られている薬剤と併用してもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
脳機能改善剤の調製
脳機能改善剤として、緑茶抽出物から単離された茶ポリフェノールを含むTHEA-FLAN 90S(伊藤園株式会社、東京都)を使用した。THEA-FLAN 90Sはポリフェノールを90%以上含有しており、THEA-FLAN 90S(482mg)の1日摂取時のカテキン含有量は336.4mg、カフェイン含有量は2.7mgであった。THEA-FLAN 90S中のカテキンの内訳は、EGCG 216.9mg、(-)-エピカテキンガレート(ECG)96.4mg、(-)-エピガロカテキン(EGC)3.2mg、(-)-エピカテキン(EC)1.7mg、(-)-ガロカテキンガレート(GCG)12.5mg、(-)-カテキンガレート(CG)4.0mg、(-)-ガロカテキン(GC)1.0mg、(-)-カテキン(C)0.8mgであった。1番の豚ゼラチン褐色カプセルには、本試験で使用するためにTHEA-FLAN 90Sを充填した。プラセボは、茶色に着色されたコーンスターチを充填した同じカプセルを使用した。カテキンカプセル、プラセボカプセルともに、賦形剤としてコーンスターチを使用した。カプセルはサンショウ製薬株式会社(静岡県)が製造したものを使用した。以下、THEA-FLAN 90Sを充填したカプセルを単にカテキンカプセルという。
対象
被験者は、認知機能が低下していると自己申告した50~69歳の健康な日本人男女から募集した。MMSE-Jは60名の潜在的に資格のある被験者に対して実施された。
被験者は、以下の基準を満たしていれば対象とした。
1)1日3カプセルを12週間継続して確実に摂取できる。
2)MMSE-Jスコアが24以上である。
3)非喫煙者であることである。
また、以下の基準のいずれかに該当する被験者は除外された。
1)現在、何らかの薬を服用しているか、外来治療を受けている。
2)重篤な肝臓、腎臓、内分泌、心血管系、消化器、肺、血液、又は代謝性疾患の既往歴又は合併症がある。
3)薬物及び/又は食物アレルギーの既往歴がある。
4)認知機能に影響を与える可能性のある健康食品及び/又はサプリメントを使用している。
5)認知機能に影響を与える可能性のある薬を服用している。
6)極端に偏った食生活又は食事や睡眠に関連した極端に不規則な生活習慣のある人。
7)不眠症が疑われる人。
8)精神疾患やアルコール依存症の既往歴がある人。
9)他の臨床試験に参加中又は過去 3 ヶ月以内に参加したことがある人。
10)夜勤などの不規則な雇用スケジュールのある人。
11)治験責任医師が判断して本試験に不適当と判断した人。
登録された被験者は、年齢、性別、MMSE-Jスコアを割り当て因子とし、乱数表を用いてプラセボ群とカテキン群に無作為に割り付けられた。被験者はMMSE-Jでシリアルセブンス課題とバックワード課題の両方を行い、バックワード課題のスコアに基づいて割り当てを行った。無作為化プロセスは、日本のHUMA R&D CORP. (受託研究機関)で実施した。
研究デザイン
本試験は、二重盲検、プラセボ対照、並行群間デザインで実施された。一次エンドポイントはMMSE-Jとコグニトラックスの結果が含まれた。副次的エンドポイントには、Aβ(1-40)、Aβ(1-42)、sAPPα、APP770、BDNFの血清レベルが含まれた。
被験者は、プラセボ又はカテキンカプセルを1日3個、12週間摂取し、朝食後にカプセルを摂取するように指示された。朝食を食べない場合は、朝に摂取するように指示された。摂取記録は、HUMA R&D CORP.のWeb入力システムを用いて、パソコンを用いて行った。被験者は、他のポリフェノール類(緑茶、紅茶、ウーロン茶等)の摂取制限や、普段の食生活からの逸脱は求められなかった。試験期間中、被験者は、認知機能に影響を与える可能性のある他の健康食品、サプリメント、又は薬物の摂取を禁止された。さらに、過度の運動や食事制限、暴飲暴食、多量の飲酒を避けるように指示された。他の種類の健康食品やサプリメントについては特に制限はなかったが、被験者にはこれらの製品の摂取をできる限り避けるように指示された。これらの製品を摂取した場合は、その種類と量を記録用紙に記録した。また、薬を服用している場合は、薬の名前と投与量を記録することが求められた。これらの制限以外は、通常の生活習慣を維持するように言われた。また、被験者は摂取状況や有害事象、呼吸器感染症、腹痛などの有無を日誌に記入した。
ミニメンタルステート検査
本研究では、ミニメンタルステート検査の日本語版であるMMSE-J(日本文化化学社)を使用した。MMSE-Jは、時に関する見当識、場所に関する見当識、記銘、注意と計算、再生、呼称、復唱、3段階命令、読字、書字、描画の計11項目から構成され、評価はそれらの合計スコアで行われる。本検査では、上記の項目のうち注意と計算(attention and calculation)の2つのテスト、すなわち逆唱課題(backward spelling task)とシリアル7課題(serial sevens task)を採用した。backward spelling taskのスコアは、被験者をプラセボ又はカテキングループに割り当てるために使用された。
コグニトラックス試験
コグニトラックスは、米国企業CNS Vital Signs(ノースカロライナ州モリスビル)が開発した認知機能検査サービスであり、反応時間と応答数の両方を測定するためのものである。検査の詳細を表1に示す。
Figure 2022060056000001
Figure 2022060056000002
Figure 2022060056000003
血液バイオマーカー
試験当日、被験者は、病院に到着する6時間前から試験が完了するまで食事を制限された。BDNFレベルの推定には血清採血管が使用され、Aβ(1‐40)、Aβ(1‐42)、sAPPα、及びAPP770の測定にはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムチューブを使用した。採取後、血液を3000 rpmで遠心分離し、1.5 mlエッペンドルフチューブに分注した。測定は、キットを使用して以下の希釈率で行った。Aβ(1-42)の血液サンプルは、HumanAmyloid-β(FL)Assay Kit-IBLで4倍に希釈した。sAPPαの血液サンプルは、sAPPα(高感度)アッセイキットIBLで4倍に希釈した。 APP770の血液サンプルは、Human APP770 Assay Kit-IBLで50倍に希釈した。BDNFの血液サンプルは、Human BDNF ELISA Kit(Quantikine-R&D Systems)で20倍に希釈した。キットの範囲を下回る測定値は不正確だったため除外した。表9は、各バイオマーカーについて分析されたサンプルの数を示している。測定は、株式会社スカイライト・バイオテックが実施した。
統計分析
各値は平均±標準偏差(SD)として示す。正規性はシャピロ・ウィルク検定で試験した。有意差が見つからなかった場合はt検定を使用し、有意差が見つかった場合はマンホイットニーU検定を使用した。統計分析は、ベースライン、単回投与試験時、及び12週目で行った。SAS 9.4(SAS Institute Inc.、米国ノースカロライナ州ケアリー)を使用してデータを分析した。テストの多重度を考慮して、条件間の差の有意水準は、ボンフェローニ法での補正によりp <0.05 / 3 = 0.017に調整された。
結果
最終的に52名の患者が本試験に登録された。各群に割り当てられた後、プラセボ群のうち1名、カテキン群のうち1名が除外基準に違反した。カテキン群の3人は、個人的な理由により試験期間中に研究を脱落した。最終解析対象者は、プラセボ群25名(男性12名、女性13名)、カテキン群22名(男性12名、女性10名)であった。本試験の患者の臨床的特徴を表2に示す。
Figure 2022060056000004
MMSE‐J(インタラクティブテスト)
介入前(ベースライン)の平均MMSE-J(backwards task)スコアは、プラセボ群で27.6±1.8、カテキン群で27.8±1.3であった。介入後の平均スコアは、プラセボ群で28.0±2.0、カテキン群で28.0±1.7であった。介入前後の両群間に有意差は認められなかった。
コグニトラックステスト(パソコンベースの認知機能テスト)
コグニトラックスの認知検査は、以下の順序で実施した。言語記憶テスト(Verbal Memory Test:VBM)、視覚記憶テスト(Visual Memory Test:VIM)、指たたきテスト(Finger-tapping Test:FTT)、SDCテスト(Symbol Digit-coding Test:SDC)、ストループテスト(ST)、注意シフトテスト(Shifting Attention:SAT)、持続処理テスト(Continuous Performance Test:CPT)、表情認知テストPerception of Emotions Test:POET)、論理思考テスト(Non-verbal Reasoning Test:NVRT)、4パート持続処理テスト(4-part Continuous Performance Test:FPCPT)の順に実施した。その後、VBMとVIMを繰り返し、最初のVBMとVIMテストの結果を、即時記憶を評価するものとし、2回目のVBMとVIMテストの結果を、遅延記憶を評価するものとした。第1回目のVBM/VIMと第2回目のVBM/VIMの間には約50分の間隔をおいた。記憶関連タスクの能力は、VBMとVIMの結果を用いて評価した(表3)。注意関連タスクについては、ST、SAT、CPT、FPCPTパート1、2の結果を用いて評価した(表4)。表情認識関連タスクはPOETの結果を用いて評価した(表5)。ワーキングメモリ関連タスクについては、FPCPT第3部、第4部の結果を用いて評価した(表6)。視覚情報処理関連タスクの能力はSDCとNVRTの結果を用いて評価した(表7)。運動機能関連タスクについては、FTTの結果を用いて評価した(表8)。
茶カテキンの投与は、単回投与後であっても長期摂取後であっても、VBM又はVIMの結果に有意な影響を与えなかった。
Figure 2022060056000005
VBM, Verbal Memory test; VIM, Visual Memory test.
値は平均値±標準偏差として示す。
カテキン群は単回投与後、プラセボ群に比べて持続処理テスト(CPT)の誤反応が有意に低かった。他の注意関連試験では有意差は認められなかった。
Figure 2022060056000006
Figure 2022060056000007
ST, Stroop Test; SAT, Shifting Attention Test; CPT, Continuous Performance Test; FPCPT, Four- Part Continuous Performance Test.
* p < 0.05/3 = 0.017 vs プラセボ群。P値は、Mann-Whitney U検定及びボンフェローニ補正を用いて計算した。値は平均値±標準偏差として示す。
肯定的な感情(穏やかさ、幸福感)と否定的な感情(悲しみ、怒り)の知覚を、肯定的な感情と否定的な感情の合計、及び肯定的な感情と否定的な感情を独立して評価する感情知覚試験(POET)を用いて評価した。POETを用いて、顔の表情認識タスクにおいて、プラセボ群とカテキン群の間では、単回投与後も長期的に茶カテキンを摂取した後も、有意差は認められなかった。
Figure 2022060056000008
POET, Perception of Emotions test.
値は平均値±標準偏差として示す。
茶カテキンの反復投与後、2 枚前の図の記憶を検査するFPCPT パート4の平均正答時間は、プラセボ群に比べてカテキン群の方が有意に低かった。1 枚前の図の記憶力を試験するFPCPTパート3では、プラセボ群とカテキン群の間に有意差は認められなかった。茶カテキンを12週間毎日摂取したところ、4パート持続処理テストにおける平均正解応答時間がプラセボよりも有意に減少した。
Figure 2022060056000009
FPCPT, Four-Part Continuous Performance Test.
値は平均値±標準偏差として示す。* p < 0.05/3 = 0.017 vs プラセボ群。P値は、Mann-Whitney U検定及びボンフェローニ補正を用いて計算した。
SDCとNVRTでは、プラセボ群とカテキン群の間に有意差は認められなかった。カテキンは、単回投与後も長期摂取後も視覚情報処理タスクに影響を与えなかった。
Figure 2022060056000010
SDC, Symbol Digit Coding Test; NVRT, Non-Verbal Reasoning Test.
値は平均値±標準偏差として示す。
FTTを用いた場合、プラセボ群とカテキン群との間で、右手、左手の平均打数に有意差は認められなかった。カテキンは、単回投与後も長期摂取後も運動機能課題に影響を及ぼさなかった。
Figure 2022060056000011
FTT, Finger Tapping Test
値は平均値±標準偏差として示す。
実行された最初のVBMとVIMは即時記憶を示し、最後の記憶は遅延記憶を示す。最初に実行されたVBMとVIMと最後に実行されたVBMとVIMの間には約50分間の時間をあけた。
アミロイド-β1-40又はアミロイド-β1-42の血清中濃度及びAβ1-40/Aβ1-42比には、プラセボ群とカテキン群との間で有意差は認められなかった。アミロイド-β前駆体蛋白質α(sAPPα)の分泌形態又はアミロイド-β前駆体蛋白質(APP)770のレベルには、プラセボ群とカテキン群との間で有意差は認められなかった。また、脳由来神経栄養因子(BDNF)の血清中濃度についても、プラセボ群とカテキン群で有意差は認められなかった。
Figure 2022060056000012
値は平均値±標準偏差として示す。
比較例
上記と同様の無作為化二重盲検並行群間比較試験をカテキン、カフェイン、カテキンを含む抹茶についても行った。サンプルの調製は、カテキンを充填したカプセルと同様に行い、抹茶2g分に相当する量のテアニン(50.3mg)、カフェイン(72.5mg)、カテキン(171mg)をカプセルに充填することで行った。配合したカテキンのうち、110mgはエピガロカテキンガレートに由来する。
本試験では、カテキンと同様に、50歳から69歳の健康な日本人男性と女性から被験者を募集し、除外基準を満たさなかった62人の被験者をプラセボ又は抹茶グループに割り当てた。
被験者はプラセボ又は抹茶のカプセルを1日9錠12週間、朝食後に服用した。その結果、コグニトラックス検査の持続処理テストでは、カテキンの服用で確認された誤応答の減少(単回投与)が確認されず、また、4パート持続処理テストでは、カテキンの服用で確認された平均正解応答時間の減少(12週投与)が確認されなかった。

Claims (17)

  1. 有効成分として、茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤であって、脳機能がコグニトラックス検査で評価される脳機能である、脳機能改善剤。
  2. 茶ポリフェノールが、カテキン類である、請求項1に記載の脳機能改善剤。
  3. カテキン類がエピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCG)、カテキンガレート(CG)及びエピカテキン(EC)、から成る群から選択される1又は複数を含む、請求項2に記載の脳機能改善剤。
  4. 茶ポリフェノールがエピガロカテキンガレートを含み、エピガロカテキンガレートの含有量が40質量%以上である、請求項3に記載の脳機能改善剤。
  5. 脳機能改善剤がさらに1質量%以下のカフェインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  6. 脳機能がコグニトラックス検査における持続処理テストで評価される持続的注意力、反応速度又は衝動性、あるいは4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力である、請求項1~5のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  7. 持続的注意力、反応速度又は衝動性、あるいは作動記憶力又は持続性注意力が、改訂長谷川式簡易知能評価スケール又はミニメンタルステート検査で評価されない脳機能である、請求項6に記載の脳機能改善剤。
  8. カテキンの有効量が1日あたり100~400mgである、請求項1~7のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  9. カテキンの有効量が単回投与量である、請求項8に記載の脳機能改善剤。
  10. 持続的注意力、反応速度又は衝動性の改善が、抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の持続処理テストにおける誤応答の数の減少である、請求項6~9のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  11. 持続処理テストが、ランダムに文字が表示される間に、特定の文字が表示された場合に応答するのに要する時間の検査である、請求項6~10のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  12. 作動記憶力又は接続性注意力の改善が、抹茶を投与された場合との比較でのコグニトラックス検査の4パート持続処理テストにおける平均正解応答時間の減少である、請求項6~11のいずれか一項に記載の脳機能改善剤。
  13. 4パート持続処理テストが、ランダムに表示される図に関する2枚前の図の記憶の検査である、請求項12に記載の脳機能改善剤。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の脳機能改善剤を含む組成物。
  15. 飲料、食品、サプリメント又は医薬品の形態である、請求項14に記載の組成物。
  16. 液体、粉剤、錠剤又はカプセルの形態である、請求項14又は15に記載の組成物。
  17. コグニトラックス検査の4パート持続処理テストで評価される作動記憶力又は持続性注意力を改善するための、請求項14~16のいずれか一項に記載の組成物。
JP2020168043A 2020-10-02 2020-10-02 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤 Pending JP2022060056A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020168043A JP2022060056A (ja) 2020-10-02 2020-10-02 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020168043A JP2022060056A (ja) 2020-10-02 2020-10-02 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022060056A true JP2022060056A (ja) 2022-04-14

Family

ID=81125003

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020168043A Pending JP2022060056A (ja) 2020-10-02 2020-10-02 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022060056A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6994457B2 (ja) 認知機能改善用組成物
JP2022060056A (ja) 茶ポリフェノールを含む脳機能改善剤
JP7323984B2 (ja) 飲食品組成物
JP2023014246A (ja) 認知機能改善剤、認知機能維持剤、海馬機能改善剤及び海馬機能維持剤
JP6889356B2 (ja) 血糖値上昇抑制組成物
JP2018095580A (ja) 抗不安用組成物
JP2022060055A (ja) テアニンから成る脳機能改善剤
JP2022143637A (ja) 作業負荷及び加齢に伴う認知機能低下の改善剤
JP2022175749A (ja) 作業負荷及び加齢に伴う認知機能低下の改善剤
EP4166152A1 (en) Composition for suppressing or improving depression
JP7215855B2 (ja) 認知機能の維持又は軽度認知障害の改善のための緑茶組成物
JP7430172B2 (ja) 腸内菌叢中のフィーカリバクテリウム属菌の占有率を増加させるための組成物
JP7317256B1 (ja) 集中力及び/又は情報処理能力の向上剤
WO2023210679A1 (ja) 脳機能改善用組成物
JP6829487B2 (ja) 抗疲労剤
JP7423731B2 (ja) 疲労感、意欲低下または眠気の改善剤
JP6646369B2 (ja) 抗疲労剤
US20210161975A1 (en) Inactivated bacillus coagulants and uses thereof for reducing stress
JP7407124B2 (ja) 言語力等を改善するための組成物および方法
JP2021050244A (ja) 抗疲労剤
JP7136635B2 (ja) 作業負荷に伴う認知機能低下に対する緑茶成分の抑制効果の評価方法
JP2023062249A (ja) ストレスを軽減するための組成物
JP2023021088A (ja) 自律神経調節剤、認知機能改善剤
JP2023096870A (ja) アッカーマンシア属細菌の増殖促進剤
TW202345785A (zh) 背外側前額葉皮質的血流增加劑、背外側前額葉皮質的活化劑、用於增加背外側前額葉皮質的血流之食品及用於使背外側前額葉皮質活化之食品

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20201016

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230718

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240522

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240524