JP2023096870A - アッカーマンシア属細菌の増殖促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 新規なアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進剤と、新規なアッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤【解決手段】 本発明によれば、カカオポリフェノールを有効成分とするアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進剤が提供される。本発明によればまた、カカオポリフェノールを有効成分とするアッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤が提供される。カカオポリフェノールは好ましくは1~4量体のポリフェノールを25質量%以上含むものである。【選択図】図1
Description
本発明は、アッカーマンシア属細菌の増殖促進剤に関する。本発明はまた、アッカーマンシア属細菌が関与する疾患または状態の改善または緩和剤に関する。
アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia
muciniphila)はヒトを始めとする哺乳類の腸内に生息する細菌であり、ヒトや哺乳類の健康にとって特に望ましいと考えられる細菌、すなわち、プロバイオティクスであることが知られている。
これまでにアッカーマンシア属細菌の増殖を促進する素材としてはブドウ、リンゴまたはザクロ由来のポリフールや、ケルセチン配糖体などわずかな素材しか知られていない(特許文献1~3)。また、ウサギにプロシアニジンB2を投与することで腸内細菌叢におけるアッカーマンシア属細菌の占有率が増加することが報告されているが(非特許文献1)、他のポリフェノール成分やヒト腸内細菌叢への影響は報告されていない。さらに、アッカーマンシア・ムシニフィラの培養は厳密な嫌気性が求められることなどから、工業生産に向けた課題もなお残っている。
Xing et al., World J Gastroenterol., 25(8):955-966(2019)
本発明者らは今般、ヒト糞便培養系においてカカオポリフェノールを添加した試験群では、対照群と比較してアッカーマンシア属細菌の占有率が有意に増加することを見出した。本発明者らはまた、ヒト糞便培養系においてカカオポリフェノールを添加した試験群では、対照群と比較してアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数が有意に増加すること、一方でプロシアニジンB2を含む培地では、対照群と比較して、培養液中のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数に有意な差はないことを見出した。本発明者らはまた、単菌培養系においてカカオポリフェノールを添加した試験群では、対照群と比較して培養液の濁度が有意に増加すること、一方でプロシアニジンB2を含む培地では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液の濁度が有意に低下することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明は、新規なアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進剤の提供を目的とする。本発明はまた、新規なアッカーマンシア属細菌が関与する疾患または状態の改善または緩和剤の提供を目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]カカオポリフェノールを有効成分とするアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の増殖促進剤。
[2]カカオポリフェノールが1~4量体のポリフェノールを25質量%以上含むものである、上記[1]に記載の剤。
[3]1~4量体のポリフェノールが少なくとも、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1およびシンナムタンニンA2を含むものである、上記[2]に記載の剤。
[4]肥満、炎症性腸疾患、自閉症またはアトピー性皮膚炎の改善または緩和に使用するための、あるいは、糖代謝の改善に使用するための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]カカオポリフェノールを有効成分とする、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤。
[6]カカオポリフェノールを有効成分とする肥満改善または緩和剤。
[7]カカオポリフェノールを有効成分とする炎症性腸疾患改善または緩和剤。
[8]カカオポリフェノールを有効成分とする自閉症改善または緩和剤。
[9]カカオポリフェノールを有効成分とするアトピー性皮膚炎改善または緩和剤。
[10]カカオポリフェノールを有効成分とする糖代謝改善剤。
[11]改善または緩和が、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の腸管内における増殖促進に起因する改善または緩和である、上記[6]~[10]に記載の剤。
[12]プレバイオティクスまたはシンバイオティクスとして使用するための、上記[1]~[11]のいずれかに記載の剤。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の剤を含有してなる、食品。
[14]アッカーマンシア・ムシニフィラを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤の存在下で培養することを含む、アッカーマンシア・ムシニフィラおよび/またはその培養物の製造方法。
[15]アッカーマンシア・ムシニフィラを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤の存在下で培養して得られた、アッカーマンシア・ムシニフィラを含む培養物。
上記[1]および[6]~[12]に記載の剤を以下「本発明の剤」ということがある。
[1]カカオポリフェノールを有効成分とするアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の増殖促進剤。
[2]カカオポリフェノールが1~4量体のポリフェノールを25質量%以上含むものである、上記[1]に記載の剤。
[3]1~4量体のポリフェノールが少なくとも、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1およびシンナムタンニンA2を含むものである、上記[2]に記載の剤。
[4]肥満、炎症性腸疾患、自閉症またはアトピー性皮膚炎の改善または緩和に使用するための、あるいは、糖代謝の改善に使用するための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]カカオポリフェノールを有効成分とする、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤。
[6]カカオポリフェノールを有効成分とする肥満改善または緩和剤。
[7]カカオポリフェノールを有効成分とする炎症性腸疾患改善または緩和剤。
[8]カカオポリフェノールを有効成分とする自閉症改善または緩和剤。
[9]カカオポリフェノールを有効成分とするアトピー性皮膚炎改善または緩和剤。
[10]カカオポリフェノールを有効成分とする糖代謝改善剤。
[11]改善または緩和が、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の腸管内における増殖促進に起因する改善または緩和である、上記[6]~[10]に記載の剤。
[12]プレバイオティクスまたはシンバイオティクスとして使用するための、上記[1]~[11]のいずれかに記載の剤。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の剤を含有してなる、食品。
[14]アッカーマンシア・ムシニフィラを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤の存在下で培養することを含む、アッカーマンシア・ムシニフィラおよび/またはその培養物の製造方法。
[15]アッカーマンシア・ムシニフィラを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の剤の存在下で培養して得られた、アッカーマンシア・ムシニフィラを含む培養物。
上記[1]および[6]~[12]に記載の剤を以下「本発明の剤」ということがある。
本発明の剤は、長年食品の原料として使用されてきたカカオポリフェノールを有効成分とするものである。したがって、本発明の剤は、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進作用を有するとともに、長期間にわたって継続的に摂取しても副作用の懸念がなく、安全性が高い点で有利である。
本発明の剤はカカオポリフェノールを有効成分とするものである。
本発明において「カカオポリフェノール」は、カカオに含まれるポリフェノール、すなわち、カカオ由来ポリフェノールを意味する。したがって、典型的には、カカオの植物体またはその加工品から抽出(粗抽出を含む)あるいは精製(粗精製を含む)したカカオのポリフェノールを本発明の有効成分として使用することができるが、化学合成法によって調製したポリフェノールを一部または全部をカカオポリフェノールとして使用してもよい。ここで、カカオポリフェノールとしては、カテキン、エピカテキン、クロバミド等の単量体や、カテキン等が重合してなるプロシアニジン、タンニン等のオリゴマー(二量体以上)が挙げられる。本発明においてはまた、カカオポリフェノールを含有する加工品(例えば、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー、カカオ豆粉砕品等のカカオ豆加工品)をカカオポリフェノールとして本発明の剤に含有させることができる。本発明の剤においてはまた、上記の様々な形態のカカオポリフェノールを単独あるいは組み合わせて使用することができる。
本発明において、カカオポリフェノールの原料や、カカオポリフェノールを含有する加工品となりうるカカオの植物体またはその加工品としては、カカオ樹皮、カカオ葉、カカオ豆、カカオシェル、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー等、植物体の各種部位またはカカオ豆加工品を挙げることができる。カカオマスはカカオ豆を磨砕したものであり、脱脂カカオマスはカカオマスから油脂を除去することにより得ることができる。油脂の除去方法は特に制限されず、圧搾等の公知の方法に従って行うことができる。脱脂カカオマスを粉砕すればココアパウダーとなる。また、カカオの植物体またはその加工品を原料として抽出を行う場合は、抽出効率の観点から、磨砕、粉砕等の微粒化処理が施されているカカオマスやココアパウダーを用いるのが好ましい。なお、本発明においては、カカオの植物体には、意図してあるいは意図せずにカカオの植物体以外の物も含めることができる。また、カカオの植物体またはその加工品を原料として抽出を行う際にも、意図してあるいは意図せずにカカオの植物体以外の物も含めることができる。さらに、カカオマスやココアパウダーにも、意図してあるいは意図せずにカカオの植物体以外の物も含めることができる。
カカオの植物体またはその加工品を原料とする抽出方法は公知であり、例えば、特開2009-183229号公報や特開2011-93807号公報の記載に従ってカカオポリフェノール含有組成物を調製することができる。抽出溶媒は、特に限定されるものではないが、水またはエタノール等のアルコールを用いることが好ましい。また、カカオの植物体またはその加工品を原料とする精製方法は、合成吸着剤、イオン交換樹脂、限外ろ過、活性白土処理等の公知の方法を使用することができ、特に限定されるものではない。
本発明においてカカオポリフェノール含量は、フォーリンチオカルト法により測定することができる。フォーリンチオカルト法はフェノールの酸化還元を原理とする測定方法であり、チョコレート業公正取引委員会で定めた方法に従って測定を行うことができる。測定に当たっては市販のエピカテキンを標準物質としてポリフェノール量を算出することができる。
カカオポリフェノールを効率よく投与ないし摂取させるためには、カカオポリフェノールを高濃度で含む組成物を本発明に用いることが好ましく、この場合には、公知の方法(例えば、特開2009-183229号公報に記載の方法)に従って得られたカカオポリフェノール濃縮組成物を本発明に使用することができる。例えば、カカオポリフェノール抽出物を本発明の剤に使用する場合、総ポリフェノール量が40%以上のものを用いることができ、好ましくは総ポリフェノール量が50%以上のものを用いることができ、より好ましくは総ポリフェノール量が60%以上のものである。
本発明において、カカオポリフェノールは、カカオポリフェノールの総質量(本明細書において「総ポリフェノール量」ということがある)に対し1~4量体のポリフェノールを10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より一層好ましくは50質量%以上含むことができ、例えば、10~70質量%、好ましくは20~70質量%、より好ましくは40~50質量%含むことができる。
本発明においてはまた、カカオポリフェノールは、総ポリフェノール量に対し、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1およびシンナムタンニンA2のプロシアニジン6種を10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは25質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上含むことができ、例えば、10~60質量%、好ましくは12~60質量%、より好ましくは25~55質量%、より一層好ましくは40~50質量%含むことができる。
本発明の剤は、カカオポリフェノールを含んでなる組成物の形態で提供することができる。この場合、本発明の剤は、カカオポリフェノールを、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、50質量%以上または80質量%以上の含有量で含む組成物で提供することができる。また含有量の上限に制限はないが、例えば、本発明の剤は、カカオポリフェノールを、例えば、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下または50質量%以下の含有量で含む組成物で提供することができる。
本発明によれば、カカオポリフェノールを含んでなる、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進用組成物が提供される。本発明によればまた、カカオポリフェノールを含んでなる、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善または緩和用組成物が提供される。本発明の組成物は本発明の剤の記載に従って実施することができる。
本発明の増殖促進剤はアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進に用いることができる。ここで、「増殖促進」とは、細菌の増殖を促進することのみならず、細菌の減少を抑制することおよび細菌の菌数を維持することを含む意味で用いられるものとする。また本発明において、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進は、腸管内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進とすることができ、好ましくはヒトまたは非ヒト動物(例えばヒト以外の哺乳動物)の腸管内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進である。
本発明において細菌の増殖促進は、増殖促進率を指標にして評価することができる。具体的には、対照培地(対象細菌存在下、試験物質不添加)での細菌増殖量に対する試験培地(対象細菌存在下、試験物質添加)での細菌増殖量の比率(%)を増殖促進率とすることができる。細菌増殖量は、菌叢の全菌数に対するアッカーマンシア・ムシニフィラの割合(占有率)の増加量、培養液の濁度の増加量または菌数の増加量等を指標とすることができる。本発明においてはこの増殖促進率(%)が110%、120%、130%、150%、170%または200%を超えた場合に、あるいは、試験培地での細菌増殖量が対照培地での細菌増殖量に対して統計学的に有意に増加した場合に、アッカーマンシア・ムシニフィラに対する増殖促進効果があると判断することができる。
カカオポリフェノールは腸管内のアッカーマンシア・ムシニフィラの初期の菌数に関わらず、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を促進することができるが、後述のようにアッカーマンシア・ムシニフィラはプロバイオティクスであることから、本発明の剤は腸管内に存在するアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数が少ない対象に摂取させるか、または投与することができる。本発明の剤は、例えば、腸管内に存在するアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数が少ない場合に呈する症状(例えば、自閉症、アトピー性皮膚炎等)を有する対象に摂取させるか、または投与することができる。あるいは、本発明の剤は、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善する症状(例えば、肥満、糖代謝異常、コレステロール低減等)を有する対象に摂取させるか、または投与することができる。したがって、本発明では、本発明の剤を対象に摂取させるか、または投与する前に対象の腸管内に存在するアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を測定することができる。
腸管内のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数が少ない対象は糞便中のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を指標にして特定することができ、例えば、糞便中のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数が109cfu/mL以下の対象に本発明の剤を摂取するか、または投与することができ、好ましくは、糞便中のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数が5×108cfu/mL以下または108cfu/mL以下の対象に本発明の剤を摂取するか、または投与することができる。なお、糞便中のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数は、定量的PCR法により測定することができる。
後記実施例によれば、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールは、腸管内においてアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を促進することができる。ここで、アッカーマンシア・ムシニフィラを摂取することにより肥満が改善するとともに、血中コレステロール低減、体重減少、脂肪量減少、糖代謝改善(例えば、インスリン感受性改善)が認められること(Nat Med., 25(7): 1096-1103, 2019、PNAS, vol. 110, no. 22: 9066-9071, 2013)、および炎症性腸疾患が改善すること(Frontiers in Microbiology, Volume 10, Article 2259, 2019)が知られている。また、アッカーマンシア・ムシニフィラは、自閉症の子供で減少すること(Autism Research, 13: 1614-1625, 2020)、アトピー性皮膚炎の子供で減少すること(BMC Microbiology, 12: 95, 2012)が知られている。すなわち、アッカーマンシア・ムシニフィラを摂取または投与することで、あるいは、腸管内においてアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を促進することでこれらの疾患の改善または緩和効果が期待できる。これらの点からアッカーマンシア・ムシニフィラはヒトや哺乳類の健康にとって特に望ましいと考えられる細菌、すなわちプロバイオティクスであるといえる。本発明の剤はこのようなプロバイオティクスの腸管内における増殖を促進できることから、プレバイオティクスとして用いることができる。
本発明の剤はシンバイオティクスとして使用することもできる。本発明においてシンバイオティクスとは、プレバイオティクスとプロバイオティクスとを組み合わせて提供する形態を意味する。したがって本発明によれば、プレバイオティクスである本発明の剤と、プロバイオティクスであるアッカーマンシア・ムシニフィラとを含む組成物が提供される。本発明によればまた、プレバイオティクスである本発明の剤と、アッカーマンシア・ムシニフィラとの組合せが提供される。これら組成物および組合せはアッカーマンシア・ムシニフィラの腸管内における増殖促進のために用いることができ、本発明の剤に関する記載に従って実施することができる。なお、前記組合せには摂取キットのような組合せ製品が含まれる。
本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールは、アッカーマンシア・ムシニフィラの腸管内における増殖を促進できることから、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤として使用することができる。前述の通り、アッカーマンシア・ムシニフィラを摂取することにより肥満および炎症性腸疾患が改善することや、アッカーマンシア・ムシニフィラの減少が自閉症およびアトピー性皮膚炎の原因であり得ることが知られていることから、アッカーマンシア・ムシニフィラを摂取または投与することで、あるいは、腸管内においてアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を促進することでこれらの疾患を改善または緩和することができる。したがって、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態としては、肥満、炎症性腸疾患、自閉症、アトピー性皮膚炎、糖代謝等が挙げられ、より具体的にはアッカーマンシア・ムシニフィラの腸管内における増殖促進により、血中コレステロール低減、体重減少、脂肪量減少、インスリン感受性改善を図ることができる。
本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールはそれぞれ、肥満の改善または緩和、炎症性腸疾患の改善または緩和、自閉症の改善または緩和、アトピー性皮膚炎の改善または緩和、あるいは糖代謝の改善のために用いることができる。すなわち、本発明によればカカオポリフェノールを有効成分とする、肥満(例えば、食べ過ぎや運動不足による肥満)の改善剤または緩和剤(例えば、血中コレステロール低減剤、体重低減剤、脂肪量低減剤)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎)の改善剤または緩和剤、自閉症(例えば、子供の自閉症)の改善剤または緩和剤、アトピー性皮膚炎(例えば、子供のアトピー性皮膚炎)の改善剤または緩和剤および糖代謝改善剤(例えば、インスリン感受性改善剤)が提供される。なお、本発明において子供とは15歳未満の者をいう。
本発明の剤は、医薬品、医薬部外品、食品、飼料、添加剤等の形態で提供することができ、後記の記載に従い、実施することができる。
本発明の有効成分であるカカオポリフェノールは、ヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明において、カカオポリフェノールを医薬品または医薬部外品に配合する場合には、医薬品または医薬部外品における含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、10質量%、20質量%、30質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は95質量%、80質量%、70質量%、50質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、医薬品または医薬部外品におけるカカオポリフェノールの含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~95質量%、10~80質量%、20~70質量%とすることができる。なお、医薬品または医薬部外品は医薬組成物の形態で提供することができる。
本発明の有効成分であるカカオポリフェノールは、ヒトおよび非ヒト動物に経口摂取させることができる。本発明の有効成分を食品(例えば、食品組成物)として提供する場合にはカカオポリフェノールを食品に含有させることができ、該食品はカカオポリフェノールを有効量含有した食品である。ここで、カカオポリフェノールを「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲でカカオポリフェノールが摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品)および特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態(例えば、流動食)であっても、固形状の形態であってもよい。
本発明の食品は、有効成分の配合以外は食品の製造に通常用いられる方法に従って、製造することができる。すなわち、本発明の食品は、液状、固形、粉末等の形態を問わず、カカオポリフェノールを各種食品またはその原料に添加して調製することができる。
本発明の有効成分であるカカオポリフェノールを適用できる食品としては、チョコレートやココアのようにカカオ豆を主原料とする食品はもちろんのこと、カカオポリフェノールを含有させることができる食品であれば特に限定されないが、例えば、以下の食品が挙げられる。
・乳製品(例えば、牛乳、発酵乳、加工乳、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、バター、バターソース、マーガリン、チーズ、アイスクリーム、コーヒー用ミルク)
・菓子類(例えば、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー等の洋菓子;せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、あめ等の和菓子;シャーベット等の冷菓)
・飲料(例えば、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、野菜ジュース、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、清涼飲料水、ゼリー飲料)
・カレー類およびスープ類(例えば、即席カレー、レトルトカレー、レトルトスープ、レトルトシチュー、缶詰カレー)
・調味料(例えば、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、マヨネーズ、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、サラダ油、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー)
・乳製品(例えば、牛乳、発酵乳、加工乳、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、バター、バターソース、マーガリン、チーズ、アイスクリーム、コーヒー用ミルク)
・菓子類(例えば、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー等の洋菓子;せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、あめ等の和菓子;シャーベット等の冷菓)
・飲料(例えば、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、野菜ジュース、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、清涼飲料水、ゼリー飲料)
・カレー類およびスープ類(例えば、即席カレー、レトルトカレー、レトルトスープ、レトルトシチュー、缶詰カレー)
・調味料(例えば、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、マヨネーズ、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、サラダ油、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー)
本発明の食品をサプリメントとして提供する場合には、カカオポリフェノールを含有させる以外は通常のサプリメントの製造方法に従って製造することができる。ここで、サプリメントとしては、カカオポリフェノールあるいはそれを含有する原材料に賦形剤、結合剤等を加え、造粒することにより製造された顆粒剤および粉剤;カカオポリフェノールあるいはそれを含有する原材料に賦形剤、増粘剤等を加え練り合わせたペースト;カカオポリフェノールあるいはそれを含有する原材料に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠することにより製造された錠剤;カカオポリフェノールあるいはそれを含有する原材料をカプセル等に封入したカプセル剤等が挙げられる。本発明においてはまた、対象が自身で、各種性状(例えば、液状、固形状、粉末状、顆粒状、ペースト状)に調製されたカカオポリフェノールを、飲用水、食品、食事等に添加して摂取することもできる。
本発明において、カカオポリフェノールを日常的に喫食する食品に配合する場合には、食品における含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、1質量%、2質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は40質量%、20質量%、10質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、日常的に食する食品におけるカカオポリフェノールの含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~40質量%、1~20質量%、2~10質量%とすることができる。
本発明において、カカオポリフェノールをサプリメントとして提供する場合には、サプリメントにおける含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、1質量%、10質量%、20質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は90質量%、80質量%、60質量%、50質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、サプリメントにおけるカカオポリフェノールの含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~90質量%、1~80質量%、10~50質量%とすることができる。
本発明の食品は本発明の剤を含有することから、本発明の剤と同じ目的で使用することができる。すなわち、本発明の食品はアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進用食品や、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進と関連する用途を目的とする食品(例えば、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善または緩和用食品)として使用することができる。
本発明の有効成分を飼料(例えば、ペットフード、家畜飼料)として提供する場合には上記の食品に関する記載に従って実施することができる。
本発明の有効成分を添加剤として提供する場合には、上記の医薬品、医薬部外品、食品および飼料に関する記載に従って実施することができる。例えば、本発明の有効成分を食品添加物として提供する場合には、本発明の有効成分は、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進効果を有する、機能性関与成分として使用することができる。
本発明の有効成分はアッカーマンシア・ムシニフィラのイン・ビトロ培養時の増殖促進作用に優れているため、アッカーマンシア・ムシニフィラの培養培地に添加して培養することでより多くの生菌を含む培養物を得ることができる。したがって、本発明の剤と、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールは、培養培地への添加剤(特に、アッカーマンシア・ムシニフィラの培養培地への添加剤)として使用することができる。
本発明によれば、アッカーマンシア・ムシニフィラを、本発明の増殖促進剤の存在下で、あるいは、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールの存在下で培養することを含む、アッカーマンシア・ムシニフィラの培養方法と、アッカーマンシア・ムシニフィラおよび/またはその培養物の製造方法が提供される。本発明によればまた、アッカーマンシア・ムシニフィラを、本発明の増殖促進剤の存在下で、あるいは、本発明の有効成分であるカカオポリフェノールの存在下で培養して得られた、アッカーマンシア・ムシニフィラを含む培養物が提供される。
本発明においてアッカーマンシア・ムシニフィラは、アッカーマンシア・ムシニフィラに分類される菌株であればいずれも使用することができる。例えば、後記実施例に記載されたATCC BAA-835T株を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
アッカーマンシア・ムシニフィラの培養は、当該菌の培養に通常用いられる培養培地および培養条件のもとで実施することができる。
培養培地はアッカーマンシア・ムシニフィラを培養可能であればよく、特に限定されるものではないが、公知の培養培地(例えば、GAM培地、BHIych培地)を利用することができる。培養培地はまた、液体培地であっても、寒天またはゼラチンを加えた固体培地または半流動培地であってもよい。
培養は、20℃~50℃、好ましくは20℃~45℃、より好ましくは25℃~45℃の温度にて、嫌気条件下で行うことができる。嫌気条件は、アッカーマンシア・ムシニフィラが増殖可能な程度に低酸素環境であればよく、酸素を実質的に含まない環境および酸素を僅かに含む環境を含む。嫌気条件下での培養は、脱酸素剤を入れた密閉容器や培養容器等を用いて実施することができる。
培養は、静置培養、振とう培養等の任意の形式で行うことができ、培養時間は、特に制限されないが、例えば、24時間~2日間とすることができる。
アッカーマンシア・ムシニフィラを含む培養物は、必要に応じて濃縮、希釈等の処理をした後、例えば、遠心分離処理により培養液から菌体を集菌し、得られたアッカーマンシア・ムシニフィラ菌体を食品等に配合することができる。
本発明の食品は、食経験があるカカオポリフェノールを利用することから、それを必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳動物に対し安全に用いることができる。本発明の有効成分の摂取量は、受容者の性別、年齢および体重、摂取時間、剤形、症状、摂取経路、並びに組み合わせる食品・薬剤等に依存して決定できる。カカオポリフェノールの成人1日当たりの摂取量(総ポリフェノール量)の下限値は、例えば、総ポリフェノール量で10mg、50mg、100mg、200mg、350mg、500mgまたは600mgとすることができ、その上限値は2000mg、1600mg、1400mg、1200mg、1100mgまたは1000mgとすることができる。これらの上限値および下限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量の範囲は、例えば、10~2000mg、100~1500mgまたは350mg~1000mgとすることができる。カカオポリフェノールの成人1日当たりの摂取量(プロシアニジン6種)の下限値は、例えば、10mg、30mg、40mg、50mg、60mgまたは70mgとすることができ、その上限値は400mg、300mg、200mgまたは150mgとすることができる。これらの上限値および下限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量の範囲は、例えば、10~400mg、30~300mgまたは40mg~200mgとすることができる。摂取回数に特に制限はなく、上記有効摂取量を1日1回摂取させても、数回に分けて摂取させてもよい。また、摂取タイミングについても特に制限はなく、対象が摂取しやすい時期に摂取することができる。なお、上記の有効成分の摂取量、摂取回数および摂取タイミング並びに下記の有効成分の摂取態様は、カカオポリフェノールを非治療目的および治療目的のいずれで使用する場合にも適用があり、治療目的の場合には摂取は投与に読み替えることができる。
本発明の剤を経口摂取させる場合、本発明の剤はアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進に有効な1日分の摂取量のカカオポリフェノールを含んでなる組成物(例えば、食品組成物)で提供することができる。この場合、本発明の剤は、1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、包装形態は一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または当該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
本発明の剤を食品として提供するための包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル等の収容可能な容器等が挙げられる。
本発明の剤を食品として提供する場合、その効果をよりよく発揮させるために、少なくとも1週間以上継続的に摂取させることができ、好ましくは2週間以上、より好ましくは1ヶ月以上の継続的な摂取である。ここで、「継続的に」とは、毎日投与あるいは少なくとも2日に1回の投与を続けることを意味する。本発明の剤を食品として包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
本発明の別の面によれば、有効量のカカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進方法が提供される。本発明によればまた、有効量のカカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善または緩和方法が提供される。本発明の方法は、本発明の剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明の別の面によればまた、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進剤の製造のための、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進剤としての、あるいは、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進方法における、カカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明によればまた、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤の製造のための、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤としての、あるいは、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善または緩和方法における、カカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の剤および本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらに別の面によれば、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進に用いるための、カカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物が提供される。本発明によればまた、アッカーマンシア・ムシニフィラの摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善または緩和に用いるための、カカオポリフェノールまたはそれを含んでなる組成物が提供される。これらの発明は、本発明の剤および本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法および本発明の使用はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:ヒト糞便培養系におけるカカオポリフェノールが腸内細菌叢に及ぼす影響
(1)培養実験
5名の健常成人から提供された糞便(A、B、C、DおよびE、以下同様)の凍結液を37℃のウォーターバスで融解した。各糞便融解液30μLを、糖を含まないGAM培地であるGAM糖分解用半流動培地(製品コード05460、日水製薬、以下同様)3mLに添加し、37℃、嫌気条件下で24時間培養した。次いで、各糞便培養液を96ディープウェルプレートに1ウェルにつき1mL、計2ウェルに分注した。分注した各ウェルに1容量% DMSO溶液あるいはカカオポリフェノール(Lot:121120、稲畑香料社)をDMSOに懸濁して調製した10mg/mL カカオポリフェノール溶液(DMSOの終濃度1質量%、以下同様)を10μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)および試験群(CBP群)とした。次いで、試験群と対照群を37℃、嫌気条件下で48時間培養した。各培養液からMaxwell(プロメガ社)によりDNAを抽出し、MiSeq(イルミナ社)によりV3-V4領域のアンプリコンシーケンスを行い、得られたFASTQファイルをQIIME2(https://qiime2.org/)により解析し、培養液に含まれる全細菌に対するアッカーマンシア属細菌の占有率を調べた。
(1)培養実験
5名の健常成人から提供された糞便(A、B、C、DおよびE、以下同様)の凍結液を37℃のウォーターバスで融解した。各糞便融解液30μLを、糖を含まないGAM培地であるGAM糖分解用半流動培地(製品コード05460、日水製薬、以下同様)3mLに添加し、37℃、嫌気条件下で24時間培養した。次いで、各糞便培養液を96ディープウェルプレートに1ウェルにつき1mL、計2ウェルに分注した。分注した各ウェルに1容量% DMSO溶液あるいはカカオポリフェノール(Lot:121120、稲畑香料社)をDMSOに懸濁して調製した10mg/mL カカオポリフェノール溶液(DMSOの終濃度1質量%、以下同様)を10μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)および試験群(CBP群)とした。次いで、試験群と対照群を37℃、嫌気条件下で48時間培養した。各培養液からMaxwell(プロメガ社)によりDNAを抽出し、MiSeq(イルミナ社)によりV3-V4領域のアンプリコンシーケンスを行い、得られたFASTQファイルをQIIME2(https://qiime2.org/)により解析し、培養液に含まれる全細菌に対するアッカーマンシア属細菌の占有率を調べた。
(2)カカオポリフェノールの組成
試験群に添加したカカオポリフェノール(Lot:121120)に含まれるカカオプロシアニジンのうち6成分(カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2)をHPLCおよびUV検出器により分析した組成(エピカテキン当量)は表1に示される通りであった。また総ポリフェノール量はフォーリンチオカルト法により定量した。
試験群に添加したカカオポリフェノール(Lot:121120)に含まれるカカオプロシアニジンのうち6成分(カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2)をHPLCおよびUV検出器により分析した組成(エピカテキン当量)は表1に示される通りであった。また総ポリフェノール量はフォーリンチオカルト法により定量した。
(3)結果
結果は図1に示される通りであった。図1から、いずれの糞便においても、カカオポリフェノールを含む培地の試験群(CBP群)では対照群(DMSO群)と比較して、アッカーマンシア属細菌の占有率が有意に増加することが確認された。
結果は図1に示される通りであった。図1から、いずれの糞便においても、カカオポリフェノールを含む培地の試験群(CBP群)では対照群(DMSO群)と比較して、アッカーマンシア属細菌の占有率が有意に増加することが確認された。
例2:ヒト糞便培養系におけるカカオポリフェノールとプロシアニジンB2がアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数に及ぼす影響
ウサギにプロシアニジンB2(PB2)を投与することで腸内細菌叢におけるアッカーマンシア属細菌の占有率が増加することが報告されている(非特許文献1)。PB2はカカオポリフェノールにも含まれている。そこで、ヒト糞便においてカカオポリフェノールとプロシアニジンB2がアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数に及ぼす影響を比較した。
ウサギにプロシアニジンB2(PB2)を投与することで腸内細菌叢におけるアッカーマンシア属細菌の占有率が増加することが報告されている(非特許文献1)。PB2はカカオポリフェノールにも含まれている。そこで、ヒト糞便においてカカオポリフェノールとプロシアニジンB2がアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数に及ぼす影響を比較した。
(1)培養液調製
5名の健常成人から提供された糞便の凍結液を37℃のウォーターバスで融解した。各糞便融解液40μLを、GAM糖分解用半流動培地4mLに添加し、37℃、嫌気条件下で24時間培養した。次いで、各糞便培養液を96ディープウェルプレートに1ウェルにつき1mL、計3ウェルに分注した。分注した各ウェルに1質量% DMSO溶液、10mg/mL カカオポリフェノール溶液またはプロシアニジンB2(#0984、EXTRASYNTHESE社)をDMSOに懸濁して調製した10mg/mL プロシアニジンB2溶液(DMSOの終濃度1質量%、以下同様)を10μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)、試験群(CBP群)および試験群(PB2群)とした。
5名の健常成人から提供された糞便の凍結液を37℃のウォーターバスで融解した。各糞便融解液40μLを、GAM糖分解用半流動培地4mLに添加し、37℃、嫌気条件下で24時間培養した。次いで、各糞便培養液を96ディープウェルプレートに1ウェルにつき1mL、計3ウェルに分注した。分注した各ウェルに1質量% DMSO溶液、10mg/mL カカオポリフェノール溶液またはプロシアニジンB2(#0984、EXTRASYNTHESE社)をDMSOに懸濁して調製した10mg/mL プロシアニジンB2溶液(DMSOの終濃度1質量%、以下同様)を10μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)、試験群(CBP群)および試験群(PB2群)とした。
(2)培養実験
上記(1)で調製した試験群と対照群を37℃、嫌気条件下で48時間培養した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後48時間の各培養液からMaxwell(プロメガ社)によりDNAを抽出した。
上記(1)で調製した試験群と対照群を37℃、嫌気条件下で48時間培養した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後48時間の各培養液からMaxwell(プロメガ社)によりDNAを抽出した。
(3)菌数の測定
予めアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を測定した培養液から抽出したDNAに対して定量的PCRを行い、検量線を作成した。上記(2)で得られたDNAに対して定量的PCRを行い、検量線に基づいてアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を算出した。その後、糞便1mLあたりの菌数に補正した。定量的PCRに用いたプライマー配列は表2に示される通りであった。
予めアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を測定した培養液から抽出したDNAに対して定量的PCRを行い、検量線を作成した。上記(2)で得られたDNAに対して定量的PCRを行い、検量線に基づいてアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数を算出した。その後、糞便1mLあたりの菌数に補正した。定量的PCRに用いたプライマー配列は表2に示される通りであった。
定量的PCRの結果、用いた糞便(n=5)中のアッカーマンシア・ムシニフィラの菌数の初期値は、2×109~1.6×1010cfu/mL(糞便)であった。
(4)結果
結果は図2に示される通りであった。図2から、いずれの糞便においても、カカオポリフェノールを含む培地(試験群:CBP群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液中のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数が有意に増加することが確認された。一方、プロシアニジンB2を含む培地(試験群:PB2群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液中のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数に有意な差は確認されなかった。
結果は図2に示される通りであった。図2から、いずれの糞便においても、カカオポリフェノールを含む培地(試験群:CBP群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液中のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数が有意に増加することが確認された。一方、プロシアニジンB2を含む培地(試験群:PB2群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液中のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌数に有意な差は確認されなかった。
例3:単菌培養系におけるカカオポリフェノールとプロシアニジンB2がアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖に及ぼす影響
(1)培養実験
GAM培地3mLにアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)ATCC BAA-835T(American Type Culture Collection)の凍結菌株を懸濁し、37℃、嫌気条件下で24時間賦活培養した。次いで、24時間賦活培養した培養液30μLをGAM糖分解用半流動培地3mLに添加し、1質量% DMSO溶液、10mg/mL カカオポリフェノール溶液または10mg/mL プロシアニジンB2溶液を30μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)、試験群(CBP群)および試験群(PB2群)とした。次いで、培養開始時(0時間)の各培養液の濁度(OD650)を測定した後、37℃の嫌気条件下で24時間培養し、培養開始後24時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
(1)培養実験
GAM培地3mLにアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)ATCC BAA-835T(American Type Culture Collection)の凍結菌株を懸濁し、37℃、嫌気条件下で24時間賦活培養した。次いで、24時間賦活培養した培養液30μLをGAM糖分解用半流動培地3mLに添加し、1質量% DMSO溶液、10mg/mL カカオポリフェノール溶液または10mg/mL プロシアニジンB2溶液を30μLずつ添加し、それぞれを対照群(DMSO群)、試験群(CBP群)および試験群(PB2群)とした。次いで、培養開始時(0時間)の各培養液の濁度(OD650)を測定した後、37℃の嫌気条件下で24時間培養し、培養開始後24時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
(2)結果
結果は図3に示される通りであった。図3から、カカオポリフェノールを含む培地(試験群:CBP群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。一方、プロシアニジンB2を含む培地(試験群:PB2群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液の濁度が有意に低下することが確認された。
結果は図3に示される通りであった。図3から、カカオポリフェノールを含む培地(試験群:CBP群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。一方、プロシアニジンB2を含む培地(試験群:PB2群)では、対照群(DMSO群)と比較して、培養液の濁度が有意に低下することが確認された。
Claims (15)
- カカオポリフェノールを有効成分とするアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の増殖促進剤。
- カカオポリフェノールが1~4量体のポリフェノールを25質量%以上含むものである、請求項1に記載の剤。
- 1~4量体のポリフェノールが少なくとも、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1およびシンナムタンニンA2を含むものである、請求項2に記載の剤。
- 肥満、炎症性腸疾患、自閉症またはアトピー性皮膚炎の改善または緩和に使用するための、あるいは、糖代謝の改善に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とする、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の摂取または投与により改善または緩和できる疾患または状態の改善剤または緩和剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とする肥満改善または緩和剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とする炎症性腸疾患改善または緩和剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とする自閉症改善または緩和剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とするアトピー性皮膚炎改善または緩和剤。
- カカオポリフェノールを有効成分とする糖代謝改善剤。
- 改善または緩和が、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の腸管内における増殖促進に起因する改善または緩和である、請求項6~10のいずれか一項に記載の剤。
- プレバイオティクスまたはシンバイオティクスとして使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の剤。
- 請求項1~12のいずれか一項に記載の剤を含有してなる、食品。
- アッカーマンシア・ムシニフィラを、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤の存在下で培養することを含む、アッカーマンシア・ムシニフィラおよび/またはその培養物の製造方法。
- アッカーマンシア・ムシニフィラを、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤の存在下で培養して得られた、アッカーマンシア・ムシニフィラを含む培養物。
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