JP2023055389A - バクテロイデス属細菌の増殖促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 新規なバクテロイデス・ユニフォルミス増殖促進剤と、新規な運動能力向上剤および抗疲労剤の提供。【解決手段】本発明によれば、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とするバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進剤が提供される。本発明によればまた、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする運動能力向上剤および抗疲労剤が提供される。ガラクトオリゴ糖は好ましくは4’-ガラクトシルラクトースを少なくとも含むものであり、イヌリン加水分解物は好ましくは重合度2~10の成分を少なくとも含むものである。【選択図】図1
Description
本発明は、バクテロイデス属細菌の増殖促進剤に関する。本発明はまた、運動能力向上剤および抗疲労剤等に関する。
バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides
uniformis)はヒトを始めとする哺乳類の腸内に生息する細菌である。本細菌をマウスに投与することにより、持続的な体力向上効果と抗疲労効果が奏されることが報告されている(特許文献1)。また、バクテロイデス・ユニフォルミスの摂取や、腸管内における増殖促進によりアレルギーの改善効果が期待されること(特許文献2)や、肥満による代謝機能障害を改善できること(非特許文献1)が報告されている。しかし、これまでの食経験の不足や腸管定着性の観点から、ヒトにバクテロイデス・ユニフォルミスを摂取させることは困難である。
これまでに腸内のバクテロイデス・ユニフォルミスを増やす素材としてはシクロデキストリンやアマニリグナンなどわずかな素材しか知られていない(特許文献3および4)。しかもアマニリグナンは市販されておらず入手しにくく、また、食経験が非常に少ないという問題点もある。
Emanuel Fabersani et al., Sci Rep 2021 Jun 3;11(1):11788.
本発明者らは今般、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物がバクテロイデス属細菌の増殖を促進することを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
本発明は、新規なバクテロイデス・ユニフォルミス増殖促進剤の提供を目的とする。本発明はまた、新規な運動能力向上剤および抗疲労剤等の提供を目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とするバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の増殖促進剤。
[2]ガラクトオリゴ糖が4’-ガラクトシルラクトースを少なくとも含むものである、上記[1]に記載の増殖促進剤。
[3]イヌリン加水分解物が重合度2~10の成分を少なくとも含むものである、上記[1]または[2]に記載の増殖促進剤。
[4]プレバイオティクスとして使用するための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[5]運動能力向上に使用するための、および/または抗疲労に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[6]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤。
[7]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする運動能力向上剤。
[8]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗疲労剤。
[9]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗アレルギー剤。
[10]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、肥満による代謝障害改善剤。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の剤を含有してなる、食品。
[12]バクテロイデス・ユニフォルミスを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤の存在下で培養することを含む、バクテロイデス・ユニフォルミスおよび/またはその培養物の製造方法。
[13]バクテロイデス・ユニフォルミスを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤の存在下で培養して得られた、バクテロイデス・ユニフォルミスを含む培養物。
[1]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とするバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の増殖促進剤。
[2]ガラクトオリゴ糖が4’-ガラクトシルラクトースを少なくとも含むものである、上記[1]に記載の増殖促進剤。
[3]イヌリン加水分解物が重合度2~10の成分を少なくとも含むものである、上記[1]または[2]に記載の増殖促進剤。
[4]プレバイオティクスとして使用するための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[5]運動能力向上に使用するための、および/または抗疲労に使用するための、上記[1]~[4]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[6]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤。
[7]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする運動能力向上剤。
[8]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗疲労剤。
[9]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗アレルギー剤。
[10]ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、肥満による代謝障害改善剤。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の剤を含有してなる、食品。
[12]バクテロイデス・ユニフォルミスを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤の存在下で培養することを含む、バクテロイデス・ユニフォルミスおよび/またはその培養物の製造方法。
[13]バクテロイデス・ユニフォルミスを、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤の存在下で培養して得られた、バクテロイデス・ユニフォルミスを含む培養物。
本発明の剤は、長年食品の原料として使用されてきた糖類を有効成分とするものである。したがって、本発明の剤は、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進作用を有するとともに、長期間にわたって継続的に摂取しても副作用の懸念がなく、安全性が高い点で有利である。
本発明の剤はガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物のいずれかまたは両方を有効成分とするものである。
本発明においてガラクトオリゴ糖とは、分子内に少なくとも1以上のガラクトース残基があるオリゴ糖を意味する。ガラクトオリゴ糖としては単糖が2~9個結合してなるオリゴ糖(重合度が2~9のオリゴ糖)が挙げられる。ガラクトオリゴ糖としてはガラクトースがβ1-2結合したオリゴ糖、ガラクトースがβ1-3結合したオリゴ糖、ガラクトースがβ1-4結合したオリゴ糖、ガラクトースがβ1-6結合したオリゴ糖が挙げられ、ガラクトースがβ1-4結合したオリゴ糖およびガラクトースがβ1-6結合したオリゴ糖が好ましい。
ガラクトオリゴ糖は、その複数成分の混合物を用いることができる。この場合ガラクトオリゴ糖は、重合度3~5のガラクトオリゴ糖を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上含有するものを使用することができる。またガラクトオリゴ糖が複数成分の混合物である場合、ガラクトオリゴ糖は4’-ガラクトシルラクトースを主成分とするものを使用することができ、好ましくは4’-ガラクトシルラクトースを30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上含有するものを使用することができる。
本発明においてイヌリン加水分解物とは、イヌリン分子中のβ1-2結合(フルクトース残基同士のβ1-2結合)が切断されたことにより生じる加水分解物を意味する。ここでイヌリンは、フルクトースがβ2-1グリコシド結合で直鎖状に繋がり,還元末端のβ-D-フルクトシル残基にα-D-グルコースがα1-β2結合した構造を持つ多糖類である。したがって、イヌリン加水分解物は、グルコース残基を末端に持つフルクトース鎖とフルクトース残基(還元末端)を末端に持つフルクトース鎖の混合物を使用することができる。本発明においてイヌリン加水分解物は、イヌリンを酵素(例えば、イヌリナーゼ)により分解して得られた加水分解物や、化学的に分解して得られた加水分解物を使用することができる。イヌリン加水分解物はまた、市販のイヌリン加水分解物を使用することもできる。加水分解反応に供されるイヌリンの由来は限定されるものではないが、例えば、チコリ、テンサイ、サトウキビの植物から熱水を用いて抽出されるイヌリンを使用することができる。
イヌリン加水分解物は、重合度2~20(好ましくは重合度2~10、2~9、2~8または2~7)の加水分解物を少なくとも含む混合物を使用することができ、好ましくは、グルコース残基を含む、イヌリンの加水分解物(GFn鎖)(Gはグルコース残基であり、Fはフルクトース残基であり、nは2~20の整数、好ましくは2~10、2~9、2~8または2~7の整数を表す)と、グルコース残基を含まない、イヌリンの加水分解物(Fn鎖)(Fはフルクトース残基であり、nは2~20の整数、好ましくは2~10、2~9、2~8または2~7の整数を表す)との混合物である。イヌリン加水分解物はまた、フルクトース残基(還元末端)を末端に持つフルクトース鎖(Fn鎖)を50質量%以上、60質量%以上または70質量%以上含むものを使用することができる。
本発明の増殖促進剤は、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物のいずれかまたは両方を含んでなる組成物の形態で提供することができる。この場合、本発明の増殖促進剤は、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物のいずれかまたは両方を、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、50質量%以上または80質量%以上の含有量で含む組成物で提供することができる。
本発明によれば、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物のいずれかまたは両方を含んでなる、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進用組成物が提供される。本発明の組成物は本発明の増殖促進剤の記載に従って実施することができる。
本発明の増殖促進剤はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進に用いることができる。ここで、「増殖促進」とは、細菌の増殖を促進することのみならず、細菌の減少を抑制することおよび細菌の菌数を維持することを含む意味で用いられるものとする。また本発明において、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進は、腸管内におけるバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進とすることができ、好ましくはヒトまたは非ヒト動物(例えばヒト以外の哺乳動物)の腸管内におけるバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進である。
本発明において細菌の増殖促進は、増殖促進率を指標にして評価することができる。具体的には、対照培地(対象細菌存在下、試験物質不添加)での細菌増殖量に対する試験培地(対象細菌存在下、試験物質添加)での細菌増殖量の比率(%)を増殖促進率とすることができる。細菌の増殖量は、培養液の濁度の増加量または菌数の増加量等を指標とすることができる。本発明においてはこの増殖促進率(%)が110%、120%または130%を超えた場合に、あるいは、試験培地での細菌増殖量が対照培地での細菌増殖量に対して統計学的に有意に増加した場合に、バクテロイデス・ユニフォルミスに対する増殖促進効果があると判断することができる。
ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進することができるため、本発明の増殖促進剤は腸管内に存在するバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が少ない対象に摂取させるか、または投与することができる。したがって、本発明では、本発明の増殖促進剤を対象に摂取させるか、または投与する前に対象の腸管内に存在するバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を測定することができる。
腸管内のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が少ない対象は糞便中のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を指標にして特定することができ、例えば、糞便中のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が109cfu/mL以下の対象に本発明の増殖促進剤を摂取するか、または投与することができ、好ましくは、糞便中のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が108cfu/mL以下または107cfu/mL以下の対象に本発明の増殖促進剤を摂取するか、または投与することができる。なお、糞便中のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数は、定量的PCR法により測定することができる。
バクテロイデス・ユニフォルミスは摂取することで、運動能力を向上させること、疲労を改善すること、肥満による代謝機能障害を改善すること(非特許文献1)、並びに腸内において有機酸を産生すること、それにより腸内pHを低下させること、病原菌の生育を阻害すること、および腸の蠕動運動を促進することが可能になる。また、バクテロイデス・ユニフォルミスは、糞便中の菌数が減少した場合にスギ花粉症の重症度が上がったと判断し、増大した場合にスギ花粉症の重症度が下がったと判断されることから、腸内においてバクテロイデス・ユニフォルミスが増殖することでアレルギーの改善効果が期待できる(特許文献2)。これらの点からバクテロイデス・ユニフォルミスはヒトや哺乳類の健康にとって特に望ましいと考えられる細菌、すなわちプロバイオティクスである。本発明の増殖促進剤はこのようなプロバイオティクスの増殖を促進できることから、プレバイオティクスとして用いることができる。
本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進できることから、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤として使用することができる。バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態としては、腸内細菌叢の悪化(例えば、善玉菌の減少および/または悪玉菌の増加等)、運動能力の低下、疲労感、アレルギー、便秘等が挙げられる。すなわち、本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、腸内細菌叢の改善、運動能力の向上、疲労の改善または緩和、アレルギーの改善または緩和、あるいは便秘または便秘に伴う症状(例えば、頭重、のぼせ、肌あれ、吹出物、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔)の改善または緩和のために用いることができる。
バクテロイデス・ユニフォルミスの摂取や、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖により運動能力が向上することや抗疲労効果が得られることが知られている(特許文献1)。したがって本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、運動能力向上剤および抗疲労剤として使用することができる。また、バクテロイデス・ユニフォルミスの摂取や、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖により、アレルギーの改善効果が期待できること(特許文献2)や、肥満による代謝機能障害を改善できること(非特許文献1)が知られている。したがって本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、抗アレルギー剤および肥満による代謝障害改善剤として使用することができる。
本発明の増殖促進剤は、医薬品(例えば、医薬組成物)、医薬部外品、食品(例えば、食品組成物)、飼料(例えば、ペットフード)、添加剤等の形態で提供することができ、後記の記載に従い、実施することができる。
本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、ヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明において、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を医薬品または医薬部外品に配合する場合には、医薬品または医薬部外品における含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、10質量%、20質量%、30質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は95質量%、80質量%、70質量%、50質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、医薬品または医薬部外品におけるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物の含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~95質量%、10~80質量%、20~70質量%とすることができる。
本発明の医薬品または医薬部外品は本発明の増殖促進剤を含有することから、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和を目的として使用することができる。例えば、本発明によれば、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を整腸剤または便秘薬として提供することができる。
本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、ヒトおよび非ヒト動物に経口摂取させることができる。本発明の有効成分を食品として提供する場合にはガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を食品に含有させることができ、該食品はガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効量含有した食品である。ここで、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲でガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物が摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品)および特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態(例えば、流動食)であっても、固形状の形態であってもよい。
本発明の食品は、有効成分の配合以外は食品の製造に通常用いられる方法に従って、製造することができる。すなわち、本発明の食品は、液状、固形、粉末等の形態を問わず、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を各種食品またはその原料に添加して調製することができる。
本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を適用できる食品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
・乳製品(例えば、牛乳、発酵乳、加工乳、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、バター、バターソース、マーガリン、チーズ、アイスクリーム、コーヒー用ミルク)
・菓子類(例えば、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー等の洋菓子;せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、あめ等の和菓子;シャーベット等の冷菓)
・飲料(例えば、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、野菜ジュース、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、清涼飲料水、ゼリー飲料)
・カレー類およびスープ類(例えば、即席カレー、レトルトカレー、レトルトスープ、レトルトシチュー、缶詰カレー)
・調味料(例えば、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、マヨネーズ、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、サラダ油、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー)
・乳製品(例えば、牛乳、発酵乳、加工乳、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、バター、バターソース、マーガリン、チーズ、アイスクリーム、コーヒー用ミルク)
・菓子類(例えば、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー等の洋菓子;せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、あめ等の和菓子;シャーベット等の冷菓)
・飲料(例えば、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、野菜ジュース、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、清涼飲料水、ゼリー飲料)
・カレー類およびスープ類(例えば、即席カレー、レトルトカレー、レトルトスープ、レトルトシチュー、缶詰カレー)
・調味料(例えば、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、マヨネーズ、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、サラダ油、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー)
本発明の食品をサプリメントとして提供する場合には、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を含有させる以外は通常のサプリメントの製造方法に従って製造することができる。ここで、サプリメントとしては、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物あるいはそれを含有する原材料に賦形剤、結合剤等を加え、造粒することにより製造された顆粒剤および粉剤;ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物あるいはそれを含有する原材料に賦形剤、増粘剤等を加え練り合わせたペースト;ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物あるいはそれを含有する原材料に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠することにより製造された錠剤;ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物あるいはそれを含有する原材料をカプセル等に封入したカプセル剤等が挙げられる。本発明においてはまた、対象が自身で、各種性状(例えば、液状、固形状、粉末状、顆粒状、ペースト状)に調製されたガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を、飲用水、食品、食事等に添加して摂取することもできる。
本発明において、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を日常的に喫食する食品に配合する場合には、食品における含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、1質量%、10質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は80質量%、70質量%、60質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、日常的に食する食品におけるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物の含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~80質量%、1~70質量%、10~60質量%とすることができる。
本発明において、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物をサプリメントとして提供する場合には、サプリメントにおける含有量は、例えば、その下限値(以上または超える)は0.1質量%、1質量%、10質量%、20質量%とすることができ、その上限値(以下または未満)は100質量%、95質量%、90質量%、80質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、サプリメントにおけるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物の含有量(固形分換算)の範囲は、例えば、0.1~100質量%、1~90質量%、10~80質量%とすることができる。
本発明の食品は本発明の増殖促進剤を含有することから、本発明の増殖促進剤と同じ目的で使用することができる。すなわち、本発明の食品はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進や、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進と関連する用途を目的として使用することができる。
本発明の有効成分を飼料として提供する場合には上記の食品に関する記載に従って実施することができる。
本発明の有効成分を添加剤として提供する場合には、上記の医薬品、医薬部外品、食品および飼料に関する記載に従って実施することができる。本発明の有効成分を食品添加物として提供する場合には、本発明の有効成分は、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進効果を有する、機能性甘味料として使用することができる。
本発明の有効成分はバクテロイデス・ユニフォルミスのイン・ビトロ培養時の増殖促進作用に優れているため、バクテロイデス・ユニフォルミスの培養培地に添加して培養することでより多くの生菌を含む培養物を得ることができる。したがって、本発明の増殖促進剤と、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物は、培養培地への添加剤(特に、バクテロイデス・ユニフォルミスの培養培地への添加剤)として使用することができる。
本発明によれば、バクテロイデス・ユニフォルミスを、本発明の増殖促進剤の存在下で、あるいは、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物の存在下で培養することを含む、バクテロイデス・ユニフォルミスの培養方法と、バクテロイデス・ユニフォルミスおよび/またはその培養物の製造方法が提供される。本発明によればまた、バクテロイデス・ユニフォルミスを、本発明の増殖促進剤の存在下で、あるいは、本発明の有効成分であるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物の存在下で培養して得られた、バクテロイデス・ユニフォルミスを含む培養物が提供される。
本発明においてバクテロイデス・ユニフォルミスは、バクテロイデス・ユニフォルミスに分類される菌株であればいずれも使用することができる。例えば、後記実施例に記載されたJCM5828T株(理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室)、並びにP2102401株およびP2102402株(株式会社明治・明治イノベーションセンター)(郵便番号192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1)を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
バクテロイデス・ユニフォルミスの培養は、当該菌の培養に通常用いられる培養培地および培養条件のもとで実施することができる。
培養培地はバクテロイデス・ユニフォルミスを培養可能であればよく、特に限定されるものではないが、公知の培養培地(例えば、GAM培地、EG培地)を利用することができる。培養培地はまた、液体培地であっても、寒天またはゼラチンを加えた固体培地または半流動培地であってもよい。
培養は、20℃~50℃、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは35℃~37℃の温度にて、嫌気条件下で行うことができる。嫌気条件は、バクテロイデス・ユニフォルミスが増殖可能な程度に低酸素環境であればよく、酸素を実質的に含まない環境および酸素を僅かに含む環境を含む。嫌気条件下での培養は、脱酸素剤を入れた密閉容器や培養容器等を用いて実施することができる。
培養は、静置培養、振とう培養等の任意の形式で行うことができ、培養時間は、特に制限されないが、例えば、16時間~2日間とすることができる。
バクテロイデス・ユニフォルミスを含む培養物は、必要に応じて濃縮、希釈等の処理をした後、例えば、遠心分離処理により培養液から菌体を集菌し、得られたバクテロイデス・ユニフォルミス菌体を食品等に配合することができる。
本発明の食品は、食経験があるガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を利用することから、それを必要とするヒトまたはヒト以外の哺乳動物に対し安全に用いることができる。本発明の有効成分の摂取量は、受容者の性別、年齢および体重、摂取時間、剤形、症状、摂取経路、並びに組み合わせる食品・薬剤等に依存して決定できる。本発明の有効成分の成人1日当たりの摂取量の下限値は、例えば、200mg、500mgまたは1000mgとすることができ、その上限値は5g、10g、15gとすることができる。これらの上限値および下限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量の範囲は、例えば、200mg~15g、500mg~10gとすることができる。摂取回数に特に制限はなく、上記有効摂取量を1日1回摂取させても、数回に分けて摂取させてもよい。また、摂取タイミングについても特に制限はなく、対象が摂取しやすい時期に摂取することができる。なお、上記の有効成分の摂取量、摂取回数および摂取タイミング並びに下記の有効成分の摂取態様は、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を非治療目的および治療目的のいずれで使用する場合にも適用があり、治療目的の場合には摂取は投与に読み替えることができる。
本発明の増殖促進剤は、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進に有効な1日分の摂取量のガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を含んでなる組成物(例えば、食品組成物)で提供することができる。この場合、本発明の増殖促進剤は、1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、包装形態は一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または当該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
本発明の増殖促進剤を食品として提供するための包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル等の収容可能な容器等が挙げられる。
本発明の増殖促進剤を食品として提供する場合、その効果をよりよく発揮させるために、少なくとも1週間以上継続的に摂取させることができ、好ましくは2週間以上、より好ましくは1ヶ月以上の継続的な摂取である。ここで、「継続的に」とは、毎日投与あるいは少なくとも2日に1回の投与を続けることを意味する。本発明の増殖促進剤を食品として包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
本発明の別の面によれば、有効量のガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進方法が提供される。本発明によればまた、有効量のガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和方法、腸内細菌叢の改善方法、運動能力向上方法、疲労改善または緩和方法、アレルギー改善または緩和方法、肥満による代謝障害改善方法、並びに便秘または便秘に伴う症状の改善または緩和方法が提供される。本発明の方法は、本発明の剤に関する記載に従って実施することができる。
本発明の別の面によればまた、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進剤の製造のための、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進剤としての、あるいは、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進方法における、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明によればまた、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤、腸内細菌叢の改善剤、運動能力向上剤、抗疲労剤、抗アレルギー剤、肥満による代謝障害改善剤、あるいは便秘または便秘に伴う症状の改善剤または緩和剤の製造のための、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤、腸内細菌叢の改善剤、運動能力向上剤、抗疲労剤、抗アレルギー剤、肥満による代謝障害改善剤、あるいは便秘または便秘に伴う症状の改善剤または緩和剤としての、あるいは、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和方法、腸内細菌叢の改善方法、運動能力向上方法、疲労改善または緩和方法、アレルギー改善または緩和方法、肥満による代謝障害改善方法、あるいは便秘または便秘に伴う症状の改善または緩和方法における、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の剤および本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらに別の面によれば、バクテロイデス・ユニフォルミスの増殖促進に用いるための、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物が提供される。本発明によればまた、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和、腸内細菌叢の改善、運動能力の向上、疲労の改善または緩和、アレルギーの改善または緩和、肥満による代謝障害改善、あるいは便秘または便秘に伴う症状の改善または緩和に用いるための、ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物またはそれを含んでなる組成物が提供される。これらの発明は、本発明の剤および本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法および本発明の使用はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:バクテロイデス属細菌の増殖に対するガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物の影響(1)
(1)培地調製
糖を含まないGAM培地であるGAM糖分解用半流動培地(製品コード05460、日水製薬、以下同様)に、単一の糖源として、4’-ガラクトシルラクトース(Gal β1-4Gal β1-4Glc)を主成分とするガラクトオリゴ糖(製品コード072-05942、富士フィルム和光純薬)または重合度が2~9(主として重合度が2~7)であるイヌリン加水分解物(Orafti P95、Beneo)を終濃度1質量%となるように添加し、試験培地を調製した。また、GAM糖分解用半流動培地に上記糖溶液の溶媒である滅菌水を添加し、糖源を含まない対照培地を調製した。上記のガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物の糖組成は表1および表2に示される通りであった。
(1)培地調製
糖を含まないGAM培地であるGAM糖分解用半流動培地(製品コード05460、日水製薬、以下同様)に、単一の糖源として、4’-ガラクトシルラクトース(Gal β1-4Gal β1-4Glc)を主成分とするガラクトオリゴ糖(製品コード072-05942、富士フィルム和光純薬)または重合度が2~9(主として重合度が2~7)であるイヌリン加水分解物(Orafti P95、Beneo)を終濃度1質量%となるように添加し、試験培地を調製した。また、GAM糖分解用半流動培地に上記糖溶液の溶媒である滅菌水を添加し、糖源を含まない対照培地を調製した。上記のガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物の糖組成は表1および表2に示される通りであった。
(2)菌体調製
GAM培地にバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)JCM5828T株、バクテロイデス・ユニフォルミスP2102401株(株式会社 明治)またはバクテロイデス・ユニフォルミスP2102402株(株式会社 明治)の凍結菌株を懸濁し、37℃、嫌気条件下で終夜賦活培養した。次いで、終夜賦活培養した培養液を新たなGAM培地に終濃度1質量%となるように懸濁し、37℃、嫌気条件下で終夜培養した。各培養液を8,000×g、3分、4℃で遠心した後、生理食塩水で沈殿した菌体を2回洗浄した。次いで、菌体をOD650=1.0となるように生理食塩水に懸濁し、バクテロイデス・ユニフォルミス菌液を調製した。なお、JCM5828T株は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室(http://jcm.brc.riken.jp/ja/)から入手可能な菌株である。また、P2102401株およびP2102402株は、株式会社明治の明治イノベーションセンター(郵便番号192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1)により保管されている菌株である。
GAM培地にバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)JCM5828T株、バクテロイデス・ユニフォルミスP2102401株(株式会社 明治)またはバクテロイデス・ユニフォルミスP2102402株(株式会社 明治)の凍結菌株を懸濁し、37℃、嫌気条件下で終夜賦活培養した。次いで、終夜賦活培養した培養液を新たなGAM培地に終濃度1質量%となるように懸濁し、37℃、嫌気条件下で終夜培養した。各培養液を8,000×g、3分、4℃で遠心した後、生理食塩水で沈殿した菌体を2回洗浄した。次いで、菌体をOD650=1.0となるように生理食塩水に懸濁し、バクテロイデス・ユニフォルミス菌液を調製した。なお、JCM5828T株は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室(http://jcm.brc.riken.jp/ja/)から入手可能な菌株である。また、P2102401株およびP2102402株は、株式会社明治の明治イノベーションセンター(郵便番号192-0919 日本国東京都八王子市七国1-29-1)により保管されている菌株である。
(3)培養実験
上記(1)で調製した試験培地および対照培地に上記(2)で調製した各バクテロイデス・ユニフォルミス菌液を終濃度1体積%となるように添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後32時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
上記(1)で調製した試験培地および対照培地に上記(2)で調製した各バクテロイデス・ユニフォルミス菌液を終濃度1体積%となるように添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後32時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
(4)結果
結果は図1に示される通りであった。図1から、いずれのバクテロイデス・ユニフォルミス菌株においても、ガラクトオリゴ糖またはイヌリン加水分解物を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。これらの結果から、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進することが示された。
結果は図1に示される通りであった。図1から、いずれのバクテロイデス・ユニフォルミス菌株においても、ガラクトオリゴ糖またはイヌリン加水分解物を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。これらの結果から、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物はバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進することが示された。
例2:バクテロイデス属細菌の増殖に対するガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物の影響(2)
(1)培地調製
糖源の終濃度を0.2質量%とした以外は、例1(1)に記載の手順と同様にして試験培地および対照培地を調製した。
(1)培地調製
糖源の終濃度を0.2質量%とした以外は、例1(1)に記載の手順と同様にして試験培地および対照培地を調製した。
(2)菌数の測定
予めバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を測定した培養液から抽出したDNAに対して定量的PCRを行い、検量線を作成した。本培養実験で得られたDNAに対して定量的PCRを行い、検量線に基づいてバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を算出した。その後、糞便1gあたりの菌数に補正した。定量的PCRに用いたプライマー配列は表3に示される通りであった。
予めバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を測定した培養液から抽出したDNAに対して定量的PCRを行い、検量線を作成した。本培養実験で得られたDNAに対して定量的PCRを行い、検量線に基づいてバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数を算出した。その後、糞便1gあたりの菌数に補正した。定量的PCRに用いたプライマー配列は表3に示される通りであった。
定量的PCRの結果、用いた糞便(n=4)中のバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数の初期値は、2.6×107~8.6×108cfu/g(糞便)であった。
(3)培養実験
上記(1)で調製した試験培地および対照培地にヒト糞便(n=4)を添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後24時間の各培養液よりDNAを抽出し、上記(2)に従って定量的PCRによりバクテロイデス・ユニフォルミス菌数を測定した。
上記(1)で調製した試験培地および対照培地にヒト糞便(n=4)を添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後24時間の各培養液よりDNAを抽出し、上記(2)に従って定量的PCRによりバクテロイデス・ユニフォルミス菌数を測定した。
(4)結果
結果は図2に示される通りであった。図2から、いずれの糞便においても、ガラクトオリゴ糖またはイヌリン加水分解物を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液中のバクテロイデス・ユニフォルミス菌数が増加することが確認された。これらの結果から、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物はヒト腸管内においてもバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進し、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和が可能であることが示された。
結果は図2に示される通りであった。図2から、いずれの糞便においても、ガラクトオリゴ糖またはイヌリン加水分解物を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液中のバクテロイデス・ユニフォルミス菌数が増加することが確認された。これらの結果から、ガラクトオリゴ糖およびイヌリン加水分解物はヒト腸管内においてもバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進し、バクテロイデス・ユニフォルミスの腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善または緩和が可能であることが示された。
例3:バクテロイデス属細菌の増殖に対するガラクトオリゴ糖および2’-フコシルラクトースの影響
(1)培地調製
GAM糖分解用半流動培地に、単一の糖源として、ガラクトオリゴ糖または2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose、Jennewein社)を終濃度0.2質量%となるように添加し、試験培地を調製した。また、GAM糖分解用半流動培地に上記糖溶液の溶媒である滅菌水を終濃度0.2質量%となるように添加し、糖源を含まない対照培地を調製した。
(1)培地調製
GAM糖分解用半流動培地に、単一の糖源として、ガラクトオリゴ糖または2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose、Jennewein社)を終濃度0.2質量%となるように添加し、試験培地を調製した。また、GAM糖分解用半流動培地に上記糖溶液の溶媒である滅菌水を終濃度0.2質量%となるように添加し、糖源を含まない対照培地を調製した。
(2)菌体調製
菌体としてバクテロイデス・ユニフォルミスJCM5828T株を用いたこと以外は、例1(2)に記載の手順と同様にしてバクテロイデス・ユニフォルミス菌液を調製した。
菌体としてバクテロイデス・ユニフォルミスJCM5828T株を用いたこと以外は、例1(2)に記載の手順と同様にしてバクテロイデス・ユニフォルミス菌液を調製した。
(3)培養実験
上記(1)で調製した試験培地および対照培地に上記(2)で調製したバクテロイデス・ユニフォルミス菌液を終濃度1体積%となるように添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後8時間、24時間、32時間、48時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
上記(1)で調製した試験培地および対照培地に上記(2)で調製したバクテロイデス・ユニフォルミス菌液を終濃度1体積%となるように添加した。次いで、培養開始時(0時間)および培養開始後8時間、24時間、32時間、48時間の各培養液の濁度を測定し、濁度の増加量(ΔOD650)を算出した。
(4)結果
結果は図3および図4に示される通りであった。図4から、バクテロイデス・ユニフォルミスJCM5828T株において、ガラクトオリゴ糖を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。一方、2’-フコシルラクトースを含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が増加しないことが確認された。これらの結果から、糖源によってはバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進しないことが示された。
結果は図3および図4に示される通りであった。図4から、バクテロイデス・ユニフォルミスJCM5828T株において、ガラクトオリゴ糖を含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が有意に増加することが確認された。一方、2’-フコシルラクトースを含む試験培地では、糖源を含まない対照培地と比較して、培養液の濁度が増加しないことが確認された。これらの結果から、糖源によってはバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進しないことが示された。
例4:製造例
本発明の増殖促進剤を流動食として処方した。具体的には、原材料として、液状デキストリン、乳製品、砂糖、食用油脂(なたね油、パーム分別油、精製魚油)、乳清たんぱく、乳たんぱく質、難消化性デキストリン、ガラクトオリゴ糖、食塩、L-カルニチン、酵母、安定剤(増粘多糖類)、pH調整剤、乳化剤、香料、ビタミン成分、ミネラル成分およびアミノ酸成分を用いて下記組成のフルーツ風味の流動食を調製した。この流動食では、腸管内に存在するバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進する成分としてガラクトオリゴ糖を含む。
本発明の増殖促進剤を流動食として処方した。具体的には、原材料として、液状デキストリン、乳製品、砂糖、食用油脂(なたね油、パーム分別油、精製魚油)、乳清たんぱく、乳たんぱく質、難消化性デキストリン、ガラクトオリゴ糖、食塩、L-カルニチン、酵母、安定剤(増粘多糖類)、pH調整剤、乳化剤、香料、ビタミン成分、ミネラル成分およびアミノ酸成分を用いて下記組成のフルーツ風味の流動食を調製した。この流動食では、腸管内に存在するバクテロイデス・ユニフォルミスの増殖を促進する成分としてガラクトオリゴ糖を含む。
Claims (13)
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とするバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の増殖促進剤。
- ガラクトオリゴ糖が4’-ガラクトシルラクトースを少なくとも含むものである、請求項1に記載の増殖促進剤。
- イヌリン加水分解物が重合度2~10の成分を少なくとも含むものである、請求項1または2に記載の増殖促進剤。
- プレバイオティクスとして使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
- 運動能力向上に使用するための、および/または抗疲労に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)の腸管内における増殖促進により改善または緩和できる状態の改善剤または緩和剤。
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする運動能力向上剤。
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗疲労剤。
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする抗アレルギー剤。
- ガラクトオリゴ糖および/またはイヌリン加水分解物を有効成分とする、肥満による代謝障害改善剤。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の剤を含有してなる、食品。
- バクテロイデス・ユニフォルミスを、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤の存在下で培養することを含む、バクテロイデス・ユニフォルミスおよび/またはその培養物の製造方法。
- バクテロイデス・ユニフォルミスを、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤の存在下で培養して得られた、バクテロイデス・ユニフォルミスを含む培養物。
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