JP2021190335A - 蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温環境下で長期間使用あるいは保管した後にもその変形が生じ難い蓄電装置とその蓄電装置用外装材を提供すること。【解決手段】少なくとも基材11、外層接着剤層12a、バリア層13、及び、シーラント層16をこの順で備える蓄電装置用外装材10であって、上記基材11が単層構造であり、この基材単体から長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、MD方向の伸び量とTD方向の伸び量のいずれもを、3mm以下とする。【選択図】図1
Description
本発明は蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置に関する。
蓄電装置として、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置の更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電装置の研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であるとともに、高い温度条件下(例えば100〜150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。全固体電池はこのように高温で使用することができるので、電池を冷却するための冷却システムに必要なスペース及びコストを低減することができる。
しかし、蓄電装置を高温環境下で使用しまた保管すると、蓄電装置が変形し、常温環境に戻ったときにもこの変形が戻らないという問題を抱えていた。変形した蓄電装置は、その外観が悪いだけでなく、本来の使用が困難になることもある。
本発明はこのような技術的事情に基づいてなされたもので、高温環境下で長期間使用あるいは保管した後にもその変形が生じ難い蓄電装置とその蓄電装置用外装材を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材、外層接着剤層、バリア層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、
上記基材が単層構造であり、この基材単体から長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、MD方向の伸び量とTD方向の伸び量のいずれもが、3mm以下であることを特徴とする蓄電装置用外装材を提供する。
上記基材が単層構造であり、この基材単体から長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、MD方向の伸び量とTD方向の伸び量のいずれもが、3mm以下であることを特徴とする蓄電装置用外装材を提供する。
蓄電装置を高温環境下で使用しまたは保管すると、さまざまな原因でこの蓄電装置が膨張する。例えば、電池内容物自体が膨張する。また、蓄電装置の内部に残った残存ガスが膨張する。また、硫化物系の固体電解質を使用した電池では、外部から侵入した水分がこの固体電解質と反応してH2Sガス等のガスが発生して、このガスによって膨張する。
このように高温環境下で使用・保管された場合にはこの蓄電装置が膨張するが、この膨張による内部圧力が上記外装材にかかる結果になる。しかも、高温環境下では外装材自体の強度が低下するため、この外装材が外に膨らんで、常温環境に戻ったときにもこの変形が戻らないことを本発明者らは見出した。そして、本発明者らは、上記基材にクリープ試験を施したとき、その伸び量を特定の範囲に制御することで、上記問題を解決できることを見出した。すなわち、本開示の外装材によれば、基材単体から長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、MD方向の伸び量とTD方向の伸び量のいずれもが、3mm以下であることにより、高温環境下で長期間使用あるいは保管した後にもその変形を抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材においては、MD方向の上記伸び量とTD方向の上記伸び量との差が2mm以下であってもよい。MD方向とTD方向のいずれか一方が伸び易いと、その伸び易い方向に応力が集中し易くなる。MD方向の伸び量とTD方向の伸び量との差が2mm以下の場合、このような応力の集中を防止することができる。
上記蓄電装置用外装材においては、上記基材が二軸延伸フィルムであってもよい。上述のように、ラミネート型のリチウムイオン電池では、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成しているから、この場合には基材が冷間成型によって成型できる成型性能を必要とする。上記基材が二軸延伸フィルムの場合には、優れた冷間成型性能を発揮する。
また、上記蓄電装置用外装材においては、上記基材が半芳香族ポリアミドから成るものでもよい。
また、上記蓄電装置用外装材においては、上記外層接着剤層がポリエステルポリウレタンから成るものであってもよい。この場合には、例えば150℃以上の高温環境下で基材とバリア層とを強固に接着することができる。
本発明によれば、高温環境下で長期間使用あるいは保管した後にもその変形が生じ難い蓄電装置とその蓄電装置用外装材を提供することができる。
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[蓄電装置用外装材]
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材11と、該基材11の一方の面側に設けられた外層接着剤層12aと、該外層接着剤層12aの基材11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の外層接着剤層12aとは反対側に設けられた内層接着剤層12bと、該内層接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材11と、該基材11の一方の面側に設けられた外層接着剤層12aと、該外層接着剤層12aの基材11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の外層接着剤層12aとは反対側に設けられた内層接着剤層12bと、該内層接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
<基材11>
基材11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たすと共に、蓄電装置を高温環境下で使用しまたは保管した際の内部圧力に耐えて、その後の変形を抑制する役割を果たす。
基材11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たすと共に、蓄電装置を高温環境下で使用しまたは保管した際の内部圧力に耐えて、その後の変形を抑制する役割を果たす。
このような役割を果たすため、基材11は、単層構造で、しかも、この単層構造の基材11を他の層に積層することがない単体の状態で、フィルム製膜時の流れ方向(MD方向)を長さ方向、上記流れ方向に直交する方向(TD方向)を幅方向として、長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、その長さ方向の伸び量(MD方向伸び量)が3mm以下であることが必要である。
また、TD方向を長さ方向、MD方向を幅方向として、同様に長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、その長さ方向の伸び量(TD方向伸び量)が3mm以下であることが必要である。
このようにクリープ試験のMD方向伸び量とTD方向伸び量のいずれもが3mm以下であるため、蓄電装置を高温環境下で使用しまたは保管した場合にも、蓄電装置の膨張圧力に耐えて、その変形を抑制する。もちろん、この蓄電装置を常温に戻した後においても変形が抑制されるのである。
なお、クリープ試験のMD方向伸び量とTD方向伸び量との差は2mm以下であることが望ましい。MD方向の伸び量とTD方向の伸び量との差が2mm以下の場合、その一方に上記膨張圧力が集中することを防止して、蓄電装置の変形を一層抑制することが可能となるのである。
このような基材11としては、半芳香族ポリアミドから成るフィルムが好適である。半芳香族ポリアミドは、そのモノマーとして芳香族モノマーと脂肪族モノマーの両方を使用したポリアミドで、脂肪族モノマーだけを使用した脂肪族ポリアミドに比較して耐熱性に優れるという特徴がある。芳香族モノマーとしては、テレフタル酸、ヘキサメチレンイソフタルアミド、あるいは2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド等が使用されている。また、モノマーの一部としてこれら芳香族モノマーを使用した半芳香族ポリアミドとしては、ユニチカ社製:ユニアミドEx、東レ社製:HT−ナイロン、三井化学社製:Ariene、BASF社製:Ultraamid等を例示できる。
なお、この基材11としては、二軸延伸されたフィルムを使用することが望ましい。基材が二軸延伸フィルムの場合には、優れた冷間成型性能を発揮するため、例えば、ラミネート型のリチウムイオン電池の外装材として好適に使用できる。
<外層接着剤層12a>
外層接着剤層12aは、基材11とバリア層13とを接着する層である。外層接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂の中でも、例えば150℃以上の高温環境下でも基材11とバリア層13とを強固に接着できることから、ポリエステルポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物とを用いたポリエステルウレタン樹脂が好ましい。
外層接着剤層12aは、基材11とバリア層13とを接着する層である。外層接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂の中でも、例えば150℃以上の高温環境下でも基材11とバリア層13とを強固に接着できることから、ポリエステルポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物とを用いたポリエステルウレタン樹脂が好ましい。
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
上述したポリウレタン樹脂を含む外層接着剤層12aの形成に用いられるポリウレタン系接着剤において、ポリオールに含まれる水酸基数に対する、多官能イソシアネート化合物に含まれるイソシアナト基数の比率(NCO/OH)は、2〜60であってもよく、5〜50であってもよく、10〜40であってもよい。この比率が2以上であると、高温環境下(例えば150℃)での基材11とバリア層13との接着強度をより向上させることができる。上記比率が60以下であると、未反応の水酸基が過剰に残存することを防ぐことができ、室温環境下及び高温環境下の両方での基材11とバリア層13との接着強度をより向上させやすい。なお、ポリウレタン系接着剤の硬化物(外層接着剤層12a)の耐熱性は、大気中又は接着剤中に含まれる微量の水と多官能イソシアネート化合物とが反応して発生するウレアやビューレットによって向上する。このため、多官能イソシアネート化合物が多いほどこれらのユニットが増え、それによりTgが高くなり、耐熱性が向上する傾向がある。
外層接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。なお、外層接着剤層12aの厚さが1μm以上であると、高い接着強度が得られやすいと共に、高温環境下での基材11及びバリア層13の熱膨張時に発生する剪断力の応力緩和がしやすい。一方、外層接着剤層の厚さが10μm以下であると、外装材の成型性をより向上させることができる。
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。また、アルミニウム箔は、20〜150℃における線膨張係数が23×10−6/℃付近であり、基材11の線膨張係数との差を低減しやすい。
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。また、アルミニウム箔は、20〜150℃における線膨張係数が23×10−6/℃付近であり、基材11の線膨張係数との差を低減しやすい。
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μmとすることが好ましく、15〜100μmとすることがより好ましい。
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と外層接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と内層接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と外層接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と内層接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
脱脂処理としては、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要はない。
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14a,14b(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
また、腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005〜0.200g/m2が好ましく、0.010〜0.100g/m2がより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m2以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
<内層接着剤層12b>
内層接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bが形成されたバリア層13とシーラント層16とを接着する層である。内層接着剤層12bには、バリア層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができ、例えば、上述した外層接着剤層12aと同様の接着剤を用いることができる。
内層接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bが形成されたバリア層13とシーラント層16とを接着する層である。内層接着剤層12bには、バリア層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができ、例えば、上述した外層接着剤層12aと同様の接着剤を用いることができる。
内層接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」とも言う)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」とも言う)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;及び、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。
シーラント層16は、ポリオレフィン系エラストマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン系エラストマーは、上述したベース樹脂に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有さないものであってもよいが、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
ベース樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜100μmの範囲であることがより好ましく、20〜80μmの範囲であることが更に好ましい。
シーラント層16は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。
以上、本実施形態の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
図1では、内層接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。また、図2に示す蓄電装置用外装材20において、バリア層13と接着性樹脂層15との間に内層接着剤層12bを設けてもよい。
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、並びにその酸無水物及びエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂は無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができる。また、接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であることが好ましい。
また、蓄電装置用外装材20においては、接着性樹脂層15及びシーラント層16の合計の厚さは、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5〜100μmの範囲であることが好ましく、20〜80μmの範囲であることがより好ましい。
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、外層接着剤層12aを用いて基材11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、内層接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005〜0.200g/m2が好ましく、0.010〜0.100g/m2がより好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60〜300℃の範囲で行うことができる。
(基材11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材11とを、外層接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した外層接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。外層接着剤層12aは、ドライ塗布量として1〜10g/m2の範囲、より好ましくは2〜7g/m2の範囲で設ける。
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材11とを、外層接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した外層接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。外層接着剤層12aは、ドライ塗布量として1〜10g/m2の範囲、より好ましくは2〜7g/m2の範囲で設ける。
(内層接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、内層接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、内層接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
ウェットプロセスの場合は、内層接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。内層接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、外層接着剤層12aと同様である。
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/内層接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/内層接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、外層接着剤層12aを用いて基材11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、外層接着剤層12aを用いて基材11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。
なお、基材11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
本工程により、図2に示すような、基材11/外層接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
以上、本開示の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本開示の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本開示の蓄電装置用外装材は、固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
[蓄電装置]
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電装置50は、電池要素(蓄電装置本体)52と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10である。外装材10では、基材11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように2つ折りにし、その一方を冷間成型した後、熱融着することにより、内部に電池要素52を収容して密封した構成としたものである。あるいは、2枚の外装材10のうち一方の外装材10を冷間成型した後、他方の外装材10を重ねて熱融着することにより、内部に電池要素52を収容して密封した蓄電装置50とすることもできる。なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電装置50は、電池要素(蓄電装置本体)52と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10である。外装材10では、基材11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように2つ折りにし、その一方を冷間成型した後、熱融着することにより、内部に電池要素52を収容して密封した構成としたものである。あるいは、2枚の外装材10のうち一方の外装材10を冷間成型した後、他方の外装材10を重ねて熱融着することにより、内部に電池要素52を収容して密封した蓄電装置50とすることもできる。なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
本実施形態の蓄電装置50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電装置50は、本実施形態の外装材10を用いているため、高温環境下(例えば150℃)で使用された場合であってもバリア層からの基材の浮きの発生を抑制することができる。
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
基材11として、3種類のフィルムを準備した。
まず、第1の基材11は、同時二軸延伸された半芳香族ポリアミドフィルム(ユニチカ社製、商品名:ユニアミドEx、厚さ:25μm)である。
また、第2の基材11は、逐次二軸延伸された易成型ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、厚さ:25μm)である。
そして、第3の基材11は、チューブラー法で製造されたポリブチレンテレフタレートフィルム(興人フィルム・アンド・ケミカル社製、商品名:ボブレット、厚さ:25μm)である。
次に、外層接着剤層12aに使用するウレタン系接着剤として、ポリエステルウレタン:ポリエステルポリオール(東洋モートン社製、商品名:TMK−55)とイソシアネート(TDI−アダクト、東洋モートン社製、商品名:CAT−10L)とを配合し、溶媒で希釈したポリエステルウレタン系接着剤を用いた。
バリア層13としては、両面に腐食防止処理層を設けたアルミニウム箔(厚さ:40μm)を用いた。
また、接着性樹脂層15に使用する樹脂としては酸変性ポリプロピレン樹脂を用いた。接着性樹脂層の厚さは27μmとした。
シーラント層16に使用する樹脂としてはポリプロピレン樹脂を用いた。シーラント層16の厚さは53μmである。
[外装材の作製]
(実施例1)
まず、両面に腐食防止処理層を設けたバリア層の一方の面にドライラミネート手法により、ポリエステルウレタン系接着剤(外層接着剤層)を用いて基材に貼りつけた。バリア層と基材との積層は、バリア層の一方の面にポリエステルウレタン系接着剤を塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材とラミネートし、80℃で120時間エージングすることで行った。
(実施例1)
まず、両面に腐食防止処理層を設けたバリア層の一方の面にドライラミネート手法により、ポリエステルウレタン系接着剤(外層接着剤層)を用いて基材に貼りつけた。バリア層と基材との積層は、バリア層の一方の面にポリエステルウレタン系接着剤を塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材とラミネートし、80℃で120時間エージングすることで行った。
次いで、サンドラミネーション法を使用して、バリア層とシーラント層とを接着した。すなわち、バリア層とシーラント層との間に、溶融した酸変性ポリプロピレン樹脂を押し出し、全体を圧着して一体化した。
(実施例2,3及び比較例1〜3)
基材及び/又は外層接着剤層を表1に示す構成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2,3及び比較例1〜3の外装材(基材/外層接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/内層接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
基材及び/又は外層接着剤層を表1に示す構成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2,3及び比較例1〜3の外装材(基材/外層接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/内層接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
[クリープ試験による伸び量の測定]
3種類の上記基材を切断して、長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成した。まず、1種類目のサンプルは、MD方向を上記長さ方向、TD方向を上記幅方向とするものである。
3種類の上記基材を切断して、長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成した。まず、1種類目のサンプルは、MD方向を上記長さ方向、TD方向を上記幅方向とするものである。
そして、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械分析装置(商品名:DMA7100)を使用し、150℃環境下で上記サンプルに一定加重5Nを3時間かけ続けて、その伸びた量(MD方向伸び量)を測定した。
次に、TD方向を上記長さ方向、MD方向を上記幅方向として、同様に長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、同様に150℃環境下で上記サンプルに一定加重5Nを3時間かけ続けて、その伸びた量(TD方向伸び量)を測定した。
[150℃環境下の蓄電装置の変形の評価]
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を、TD方向120mm×MD方向200mmの矩形状に切り取り、シーラント層が上方を向くように成型装置内に配置した。成型装置の成型深さを4.0mmに設定し、抑え圧を0.8MPaとし、室温23℃、露点温度−35℃の環境下で、冷間成型を行った。パンチ金型には、80mm×70mmの長方形の横断面を有し、底面に1mmのパンチラジアス(RP)を有し、側面に1mmのパンチコーナーラジアス(RCP)を有するものを使用した。また、ダイ金型には、開口部上面に1mmのダイラジアス(RD)を有するものを使用した。パンチ金型とダイ金型との間のクリアランスは170μmとした。成型エリアは、切り取った外装材の長手方向(MD方向)の略中央で分けた半面の略中央とし、パンチ金型の長手方向が外装材のTD方向に沿うようにした。
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を、TD方向120mm×MD方向200mmの矩形状に切り取り、シーラント層が上方を向くように成型装置内に配置した。成型装置の成型深さを4.0mmに設定し、抑え圧を0.8MPaとし、室温23℃、露点温度−35℃の環境下で、冷間成型を行った。パンチ金型には、80mm×70mmの長方形の横断面を有し、底面に1mmのパンチラジアス(RP)を有し、側面に1mmのパンチコーナーラジアス(RCP)を有するものを使用した。また、ダイ金型には、開口部上面に1mmのダイラジアス(RD)を有するものを使用した。パンチ金型とダイ金型との間のクリアランスは170μmとした。成型エリアは、切り取った外装材の長手方向(MD方向)の略中央で分けた半面の略中央とし、パンチ金型の長手方向が外装材のTD方向に沿うようにした。
こうして製造した蓄電装置を150℃環境下に1週間保管し、その後常温に戻して、目視により外観を検査した。また、評価基準は次のとおりである。
A:保管前後で外観に変化なし。
B:保管後、一部が膨らんで変形した。
C:保管後、全体的に膨らんで変形した。
A:保管前後で外観に変化なし。
B:保管後、一部が膨らんで変形した。
C:保管後、全体的に膨らんで変形した。
[成型性の評価]
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を使用し、冷間成型して、ピンホール及びクラックの発生の有無を評価した。なお、サンプル数は10個である。また、成型条件は上述のとおりである。評価基準は次のとおりである。
A:10個すべての外装材でピンホール及びクラックのいずれもが発生しない。
B:8個以上の外装材でピンホール及びクラックのいずれもが発生しない。
C:3個以上の外装材でピンホールとクラックのいずれか一方又は両方が発生した。
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を使用し、冷間成型して、ピンホール及びクラックの発生の有無を評価した。なお、サンプル数は10個である。また、成型条件は上述のとおりである。評価基準は次のとおりである。
A:10個すべての外装材でピンホール及びクラックのいずれもが発生しない。
B:8個以上の外装材でピンホール及びクラックのいずれもが発生しない。
C:3個以上の外装材でピンホールとクラックのいずれか一方又は両方が発生した。
[150℃環境下の耐剥離性の評価]
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を使用し、冷間成型し、150℃の環境に3日間保管した後、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて90度剥離試験により測定した。その評価基準は次のとおりである。
A:剥離強度が1N/15mm以上である。
C:剥離強度が1N/15mm未満である。
実施例2,3及び比較例1〜3の外装材を使用し、冷間成型し、150℃の環境に3日間保管した後、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて90度剥離試験により測定した。その評価基準は次のとおりである。
A:剥離強度が1N/15mm以上である。
C:剥離強度が1N/15mm未満である。
10…蓄電装置用外装材 11…基材 12a…外層接着剤層 12b…内層接着剤層 13…バリア層 14a…第1の腐食防止処理層 14b…第2の腐食防止処理層 15…接着性樹脂層 16…シーラント層
20…蓄電装置用外装材
50…蓄電装置、52…電池要素、53…金属端子
20…蓄電装置用外装材
50…蓄電装置、52…電池要素、53…金属端子
Claims (7)
- 少なくとも基材、外層接着剤層、バリア層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、
上記基材が単層構造であり、この基材単体から長さ20mm、幅10mmのサンプルを作成し、このサンプルに150℃環境下で一定加重5Nを3時間かけ続けるクリープ試験を行ったとき、MD方向の伸び量とTD方向の伸び量のいずれもが、3mm以下であることを特徴とする蓄電装置用外装材。 - MD方向の上記伸び量とTD方向の上記伸び量との差が2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
- 上記基材が二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
- 上記基材が半芳香族ポリアミドから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
- 上記外層接着剤層がポリエステルポリウレタンから成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
- 全固体電池用である、請求項1〜5のいずれかに記載の蓄電装置用外装材
- 蓄電装置本体と、
上記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、
上記電流取出し端子を挟持し且つ上記蓄電装置本体を収容する、請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電装置用外装材と、
を備える蓄電装置。
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2020
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