JP2021108263A - 蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下でも優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材を提供すること。【解決手段】少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、シーラント層が、(A)成分:ポリオレフィンユニットを含有し且つ融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である化合物と、(B)成分:ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂と、を含有する、蓄電装置用外装材。【選択図】図1

Description

本開示は、蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置に関する。
蓄電装置として、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置の更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2013−101765号公報
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電装置の研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であるとともに、高い温度条件下(例えば100〜150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
しかし、外装材として上記のような多層フィルムを使用してラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であると、ヒートシール後、高温環境下での層間密着性(ヒートシールにより融着させた層間の密着性)が確保できず、ヒートシール強度が低下して全固体電池のパッケージの密封性が低下するおそれがある。
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、高温環境下でも優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、(A)成分:ポリオレフィンユニットを含有し且つ融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である化合物と、(B)成分:ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂と、を含有する、蓄電装置用外装材を提供する。
上記蓄電装置用外装材によれば、上記構成のシーラント層を備えることにより、高温環境下でも優れたヒートシール強度を確保することができる。これは、上記(A)成分と上記(B)成分とを組み合わせて用いることで、(B)成分によって良好なヒートシール性を確保しつつ、(A)成分によってシーラント層に優れた耐熱性を付与することができるためである。そのため、上記外装材によれば、200℃程度のヒートシール温度で十分なヒートシール強度を得ることができるとともに、ヒートシール後、高温環境下(例えば150℃程度)であっても良好な層間密着性(ヒートシールにより融着させたシーラント層間の密着性)を維持することができ、優れたヒートシール強度を確保することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記(A)成分がポリアミド/ポリオレフィングラフト共重合体を含み、上記シーラント層における上記(A)成分の含有量が、上記(B)成分100質量部に対して5〜100質量部であってもよい。この場合、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得ることができるとともに、高温環境下でも優れたヒートシール強度をより十分に確保することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記(A)成分がポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体を含み、上記(B)成分が上記ポリプロピレン系樹脂を含み、上記シーラント層が、(C)成分:上記ポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体と相溶する部位及び上記ポリプロピレン系樹脂と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含有してもよい。(A)成分がポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体を含み、且つ、(B)成分がポリプロピレン系樹脂を含むことで、シーラント層の耐熱性をより一層向上させることができる。また、ポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体はポリプロピレン系樹脂に分散可能であるものの、相溶性に改善の余地がある。そのため、上記(C)成分を配合することで、(A)成分と(B)成分との相溶性を向上させることができ、ヒートシール強度をより一層向上させることができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記(A)成分がシクロオレフィンコポリマーを含み、上記シーラント層における上記(A)成分の含有量が、上記(B)成分100質量部に対して5〜100質量部であってもよい。この場合、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得ることができるとともに、高温環境下でも優れたヒートシール強度をより十分に確保することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記(A)成分がエチレン/シクロオレフィンコポリマーを含み、上記(B)成分が上記ポリプロピレン系樹脂を含み、上記シーラント層が、(C)成分:上記エチレン/シクロオレフィンコポリマーと相溶する部位及び上記ポリプロピレン系樹脂と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含有してもよい。(A)成分がエチレン/シクロオレフィンコポリマーを含み、且つ、(B)成分がポリプロピレン系樹脂を含むことで、シーラント層の耐熱性をより一層向上させることができる。また、エチレン/シクロオレフィンコポリマーはポリプロピレン系樹脂に分散可能であるものの、相溶性に改善の余地がある。そのため、上記(C)成分を配合することで、(A)成分と(B)成分との相溶性を向上させることができ、ヒートシール強度をより一層向上させることができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられていてもよい。腐食防止処理層を設けることで、バリア層の腐食を防止できるとともに、腐食防止処理層が介在することでバリア層とそれに隣接する層との密着力を高めることができる。また、全固体電池において、電解質に硫化物系の材料が用いられることがあるが、外装材内部に水分が侵入した場合、硫化物系化合物と水とが反応して硫化水素(HS)が発生する。このHSによってバリア層とそれに隣接する層との密着力が低下する場合がある。しかしながら、上記蓄電装置用外装材を全固体電池の外装材として用いた場合、バリア層表面に腐食防止処理層を備えることで、バリア層に耐HS性を付与することができ、バリア層とそれに隣接する層との密着力の低下を防ぐことができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記蓄電装置用外装材の上記基材層側を外側、上記シーラント層側を内側とした場合に、上記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が、硫化水素吸着物質を含有してもよい。上述したように、全固体電池では硫化水素(HS)が発生するおそれがあるが、バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が硫化水素吸着物質を含有することにより、硫化水素吸着物質を含有する層が外装材内部で発生したHSを吸着して無害化することができ、HSからバリア層や集電体(特に銅箔)、Niを含むような正極をより高いレベルで保護することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記シーラント層の厚さは10〜100μmであってもよい。この場合、外装材の薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とをバランス良く両立することができる。
上記蓄電装置用外装材は、全固体電池用であってもよい。
本開示はまた、蓄電装置本体と、上記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、上記電流取出し端子を挟持し且つ上記蓄電装置本体を収容する、上記本開示の蓄電装置用外装材と、を備える蓄電装置を提供する。上記蓄電装置は、全固体電池であってもよい。
本開示によれば、高温環境下でも優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することができる。
本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。 実施例におけるヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[蓄電装置用外装材]
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた第1の接着剤層12aと、該第1の接着剤層12aの基材層11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の第1の接着剤層12aとは反対側に設けられた第2の接着剤層12bと、該第2の接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材層11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電装置の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムからなる層であることが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。基材層11は、これらいずれかの樹脂フィルムで構成された単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムの2種以上で構成された積層フィルムであってもよい。
これらの中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムが好ましく、ポリアミドフィルムがより好ましい。これらのフィルムは二軸延伸フィルムであることが好ましい。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、突刺強度及び衝撃強度に優れる観点から、ナイロン6(ONy)が好ましい。
二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
また、基材層11は、シーラント層16の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有することが好ましい。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解ピーク温度は最も融解ピーク温度が高い層の融解ピーク温度を意味する。基材層11の融解ピーク温度は好ましくは290℃以上であり、より好ましくは290〜350℃である。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)などが挙げられる。基材層11として、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって基材層11を形成してもよい。なお、基材層11は単層構造であっても多層構造であってもよく、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
基材層11の融解ピーク温度T11とシーラント層16の融解ピーク温度T16の差(T11−T16)は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材10の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。
基材層11は後述するバリア層13又は第1の腐食防止処理層14a上に直接塗布することにより設けられてもよい。この場合、後述する第1の接着剤層12aは不要である。塗布による基材層11の形成方法としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂塗液を塗布し、紫外線照射、高温加熱、エージング(養生)処理等により硬化する方法を採用できる。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の各種方法を採用できる。
基材層11の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、6〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが更に好ましく、12〜30μmであることが特に好ましい。基材層11の厚さが5μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが50μmを超えると蓄電装置用外装材10の総厚が大きくなり、電池の電気容量を小さくしなければならない場合があるため望ましくない。
<第1の接着剤層12a>
第1の接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1の接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
第1の接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有する。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、更なる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いることがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μmとすることが好ましく、15〜100μmとすることがより好ましい。
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するためにバリア層13の表面に設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と第1の接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と第2の接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
脱脂処理としては、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14a,14b(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
上記リン酸又はその塩としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。中でも、外装材10における機能発現には、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が好ましい。また、上記希土類元素酸化物のゾルを用いて、各種コーティング法により希土類元素酸化物からなる腐食防止処理層14a,14bを形成させる時の乾燥造膜性(乾燥能力、熱量)を考慮すると、低温での脱水縮合性に優れる点から、ナトリウム塩がより好ましい。リン酸塩としては、水溶性の塩が好ましい。
希土類元素酸化物に対するリン酸(あるいはその塩)の配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して1質量部以上であれば、希土類元素酸化物ゾルがより安定になり、外装材10の機能がより良好になる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して5質量部以上がより好ましい。また、上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して100質量部以下であれば、希土類元素酸化物ゾルの機能が高まる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、下記アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいはポリ(メタ)アクリル酸を主成分として共重合した共重合体が挙げられる。この共重合体の共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。);(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基など。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
これらアニオン性ポリマーは、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14a,14b(酸化物層)の安定性を向上させる役割を果たす。これは、硬くて脆い酸化物層をアクリル系樹脂成分で保護する効果、及び、希土類元素酸化物ゾルに含まれるリン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)を捕捉する(カチオンキャッチャー)効果によって達成される。つまり、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14a,14b中に、特にナトリウムなどのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが含まれると、このイオンを含む場所を起点にして腐食防止処理層14a,14bが劣化しやすくなる。そのため、アニオン性ポリマーによって希土類元素酸化物ゾルに含まれるナトリウムイオンなどを固定化することで、腐食防止処理層14a,14bの耐性が向上する。
アニオン性ポリマーと希土類元素酸化物ゾルを組み合わせた腐食防止処理層14a,14bは、アルミニウム箔にクロメート処理を施して形成した腐食防止処理層14a,14bと同等の腐食防止性能を有する。アニオン性ポリマーは、本質的に水溶性であるポリアニオン性ポリマーが架橋された構造であることが好ましい。この構造の形成に用いる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、14a,14b−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸などのジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いてもよい。
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物、あるいはイソプロペニルオキサゾリンのような重合性モノマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどのアクリル系モノマーを共重合させたものが挙げられる。
また、アニオン性ポリマーとシランカップリング剤とを反応させ、より具体的には、アニオン性ポリマーのカルボキシ基とシランカップリング剤の官能基とを選択的に反応させ、架橋点をシロキサン結合としてもよい。この場合、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。中でも、特にアニオン性ポリマーあるいはその共重合物との反応性を考慮すると、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好ましい。
アニオン性ポリマーに対するこれらの架橋剤の比率は、アニオン性ポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して1質量部以上であれば、架橋構造が十分に形成されやすい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して50質量部以下であれば、塗液のポットライフが向上する。
アニオン性ポリマーを架橋する方法は、上記架橋剤に限らず、チタニウム、ジルコニウム化合物を用いてイオン架橋を形成する方法などであってもよい。
カチオン性ポリマーとしては、アミンを有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールなどのカチオン性のポリマーが挙げられる。ポリアリルアミンとしては、例えば、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体などが挙げられる。これらのアミンは、フリーのアミンであってもよく、酢酸あるいは塩酸による安定化物であってもよい。また、共重合体成分として、マレイン酸、二酸化硫黄などを使用してもよい。さらに、1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与したタイプも使用でき、また、アミノフェノールも使用できる。特に、アリルアミンあるいはその誘導体が好ましい。
カチオン性ポリマーは、カルボキシ基やグリシジル基などのアミン/イミンと反応が可能な官能基を有する架橋剤と併用することが好ましい。カチオン性ポリマーと併用する架橋剤としては、ポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも使用でき、例えば、ポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入した共重合体、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシ基を有する多糖類などが挙げられる。
カチオン性ポリマーは、接着性の向上という点でより好ましい材料である。また、カチオン性ポリマーも、上記アニオン性ポリマーと同様に、水溶性であることから、架橋構造を形成させて耐水性を付与することがより好ましい。カチオン性ポリマーに架橋構造を形成する際の架橋剤は、アニオン性ポリマーの項で説明した架橋剤を使用できる。腐食防止処理層14a,14bとして希土類元素酸化物ゾルを用いた場合、その保護層として上記アニオン性ポリマーを用いる代わりに、カチオン性ポリマーを用いてもよい。
クロメート処理に代表される化成処理による腐食防止処理層は、アルミニウム箔との傾斜構造を形成させるため、特にフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸あるいはこれらの塩を配合した化成処理剤を用いてアルミニウム箔に処理を施し、次いでクロムやノンクロム系の化合物を作用させて化成処理層をアルミニウム箔に形成させるものである。しかしながら、上記化成処理は、化成処理剤に酸を用いていることから、作業環境の悪化やコーティング装置の腐食を伴う。一方、前述したコーティングタイプの腐食防止処理層14a,14bは、クロメート処理に代表される化成処理とは異なり、アルミニウム箔を用いたバリア層13に対して傾斜構造を形成させる必要がない。そのため、コーティング剤の性状は、酸性、アルカリ性、中性などの制約を受けることがなく、良好な作業環境を実現できる。加えて、クロム化合物を用いるクロメート処理は、環境衛生上、代替案が求められている点からも、コーティングタイプの腐食防止処理層14a,14bが好ましい。
以上の内容から、上述したコーティングタイプの腐食防止処理の組み合わせの事例として、(1)希土類元素酸化物ゾルのみ、(2)アニオン性ポリマーのみ、(3)カチオン性ポリマーのみ、(4)希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー(積層複合化)、(5)希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー(積層複合化)、(6)(希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー:積層複合化)/カチオン性ポリマー(多層化)、(7)(希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー:積層複合化)/アニオン性ポリマー(多層化)、等が挙げられる。中でも(1)及び(4)〜(7)が好ましく、(4)〜(7)が特に好ましい。ただし、本実施形態は、上記組み合わせに限られるわけではない。例えば腐食防止処理の選択の事例として、カチオン性ポリマーは、後述する第2の接着剤層、接着性樹脂層又はシーラント層の説明で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好であるという点でも非常に好ましい材料であることから、第2の接着剤層、接着性樹脂層又はシーラント層が変性ポリオレフィン樹脂で構成される場合においては、第2の接着剤層、接着性樹脂層又はシーラント層に接する面にカチオン性ポリマーを設ける(例えば、構成(5)及び(6)などの構成)といった設計が可能である。
また、腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
<第2の接着剤層12b>
第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bが形成されたバリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層12bには、バリア層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第2の接着剤層12bは必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層12bは、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
第2の接着剤層12bが酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5〜20質量部(固形分比)であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、第1のシーラント層16aに用いる変性ポリオレフィン樹脂(a)として後述するものと同様のものを用いることができる。
第2の接着剤層12bには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
第2の接着剤層12bは、ラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
また、第2の接着剤層12bを形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。
第2の接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16は、(A)成分:ポリオレフィンユニットを含有し且つ融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である化合物と、(B)成分:ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂と、を含有する層である。
図1のようにシーラント層が単層である場合、当該シーラント層は、上記(A)成分及び(B)成分を含む層である。シーラント層が2以上の層を有する場合、少なくとも一層が上記(A)成分及び(B)成分を含む層であればよく、少なくとも最内層(基材層11から最も遠い位置に配置される層)が上記(A)成分及び(B)成分を含む層であることが好ましい。また、シーラント層16は、(C)成分:(A)成分と相溶する部位及び(B)成分と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含んでいてもよい。また、シーラント層16は、硫化水素吸着物質を更に含んでいてもよい。
((A)成分)
(A)成分は、ポリオレフィンユニットを含有し且つ融点(Tm)が175℃以上又はガラス転移温度(Tg)が75℃以上である化合物である。上記ポリオレフィンユニットとしては、例えば、ポリエチレンユニット、ポリプロピレンユニット、ポリブチレンユニット等が挙げられる。(A)成分は、オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。(A)成分としては、例えば、ポリアミド/ポリオレフィングラフト共重合体、シクロオレフィン/オレフィン共重合体(シクロオレフィンコポリマー)等が挙げられる。
ポリアミド/ポリオレフィングラフト共重合体としては、例えば、ポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体が挙げられる。ポリアミド/ポリオレフィングラフト共重合体の市販品としては、アルケマ社製の「アポリヤLP2」(融点:216℃)、「アポリヤLP21H」(融点:216℃)等が挙げられる。
シクロオレフィンコポリマーとしては、例えば、エチレン/シクロオレフィンコポリマーが挙げられる。シクロオレフィンコポリマーの市販品としては、三井化学株式会社製の「APEL」、TOPAS Advanced Polymers GmbH社製の「TOPAS」等が挙げられる。「APEL」としては、「APL6509」(Tg:80℃)、「APL6011T」(Tg:105℃)、「APL6013T」(Tg:125℃)、「APL6015T」(Tg:145℃)等が挙げられる。
(A)成分は、融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である化合物である。融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である(A)成分を用いることで、シーラント層16は、200℃程度のヒートシール温度で十分なヒートシール強度が得られるとともに、高温(例えば150℃程度)環境下でも十分なヒートシール強度を維持することができる。(A)成分は、融点が175℃以上且つガラス転移温度が75℃以上である化合物であってもよい。一方、融点が175℃未満であり且つガラス転移温度が75℃未満である化合物、融点が175℃未満であり且つガラス転移点を持たない化合物、又は、ガラス転移温度が75℃未満であり且つ融点を持たない化合物を用いた場合、高温(150℃程度)環境下において必ずしも十分なヒートシール強度を確保することができない。
(A)成分の融点は、高温(例えば150℃程度)環境下でのヒートシール強度をより向上させる観点から、180℃以上、190℃以上、200℃以上、又は、210℃以上であってもよい。また、(A)成分の融点は、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得る観点から、250℃以下、又は、240℃以下であってもよい。
(A)成分のガラス転移温度は、高温(例えば150℃程度)環境下でのヒートシール強度をより向上させる観点から、80℃以上、90℃以上、100℃以上、又は、120℃以上であってもよい。また、(A)成分のガラス転移温度は、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得る観点から、200℃以下、又は、180℃以下であってもよい。
シーラント層16における(A)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜90質量部であることがより好ましく、20〜80質量部であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が5質量部以上であることで、高温環境下でも優れたヒートシール強度をより十分に確保することができ、100質量部以下であることで、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得ることができるとともに、シーラント層の柔軟性の低下及びそれによる脆化を抑制することができる。
((B)成分)
(B)成分は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂である。(B)成分は、シーラント層16のベース樹脂となる成分である。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも、製膜性の観点から、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、分岐状低密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを含む重合単量体から得られた樹脂である。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、ヒートシール強度等の外装材の基本性能の観点から、ランダムポリプロピレンであることが好ましく、プロピレン−エチレンランダム共重合体であることがより好ましい。プロピレン−エチレンランダム共重合体は、低温でのヒートシール性に優れているため、(A)成分を用いることで十分なヒートシール強度を得るために必要なヒートシール温度が上昇することを抑制でき、200℃程度のヒートシール温度でより十分なヒートシール強度を得ることができる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において、エチレン含有量は0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。エチレン含有量が0.1質量%以上であると、エチレンを共重合させることにより、耐衝撃性が得られ、シール強度や耐成型白化性を向上できる傾向がある。エチレン含有量が10質量%以下であると、融点が下がりすぎることを抑制でき、過剰シール部分の発生をより十分に抑制できる傾向がある。なお、エチレン含有量は、重合時のモノマーの混合比率から算出することができる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体の融点は、120〜160℃であることが好ましく、125〜160℃であることがより好ましい。融点が120℃以上であると、過剰シール部分の発生をより十分に抑制できる傾向がある。
プロピレン−エチレンランダム共重合体は、酸変性されたものであってもよく、例えば、無水マレイン酸をグラフト変性させた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体であってもよい。酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体を用いることにより、タブシーラントがなくてもタブリードとの密着性を保つことができる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
((C)成分)
シーラント層16は、(A)成分と(B)成分との相溶性を向上させるために、(C)成分として、(A)成分と相溶する部位及び(B)成分と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含んでいてもよい。(C)成分は、(A)成分が(B)成分に対して非相溶である場合に、好適に用いられる。(A)成分が(B)成分に対して非相溶である場合、シーラント層16は、ベース樹脂である(B)成分中に(A)成分が分散された海島構造を有することとなるが、そこに上記相溶化剤を加えることで、海島構造の界面の密着強度を向上させることができ、それによってヒートシール強度をより向上させることができる。
(B)成分がプロピレン−エチレンランダム共重合体のようなポリプロピレン系樹脂であり、(A)成分がポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体やエチレン/シクロオレフィンコポリマーのようなポリエチレンユニットを含有する共重合体である場合、(C)成分としては、上記ポリプロピレン系樹脂と相溶する部位及び上記ポリエチレンユニットを含有する共重合体と相溶する部位を有する相溶化剤を用いることができる。
(C)成分としては、例えば、ポリエチレン又はエチレン・α−オレフィン共重合体から構成されたポリエチレンユニットと、ポリプロピレン又はプロピレン・α−オレフィン共重合体から構成されたポリプロピレンユニットとから構成されるブロック共重合体、ポリエチレンユニットと、エチレン・ブチレン共重合体ユニットとから構成されるブロック共重合体、あるいは、ポリエチレンユニットと、エチレン・1−オクテン共重合体ユニットとから構成されるブロック共重合体を用いることが可能である。このようなブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体のいずれの構造でも構わない。(B)成分が上記ポリプロピレン系樹脂であり、(A)成分が上記ポリエチレンユニットを含有する共重合体である場合に、(C)成分として上記ブロック共重合体を用いることで、(B)成分であるポリプロピレン系樹脂と(C)成分のポリプロピレンユニット、エチレン・ブチレン共重合体ユニット、もしくはエチレン・1−オクテン共重合体ユニットとが相溶し、(A)成分のポリエチレンユニットと(C)成分のポリエチレンユニットとが相溶する。
上述した相溶化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
シーラント層16が(C)成分を含有する場合、当該シーラント層16における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、2〜25質量部であることがより好ましく、2〜20質量部であることが更に好ましく、7〜15質量部であることが特に好ましい。(C)成分の含有量が1質量部以上であることにより、海島界面の密着強度を向上させやすくなり、ヒートシール強度の向上効果が得られやすくなる。一方、(C)成分の含有量を40質量部以下とすることにより、シーラント層16全体の凝集力並びにヒートシール強度の低下を抑制しやすくなる。
なお、シーラント層16が複数の層から構成されている場合、全ての層に(C)成分が添加されていることが好ましいが、少なくとも一層に添加されていれば、上述したヒートシール強度の向上効果を得ることができる。
(硫化水素吸着物質)
シーラント層16は、硫化水素吸着物質を更に含んでいてもよい。シーラント層16が硫化水素吸着物質を含むことで、硫化物系固体電解質を用いた全固体電池において発生し得る硫化水素をシーラント層16で捕捉して無害化することができる。なお、硫化水素吸着物質を第2の接着剤層12b又は後述する接着性樹脂層15に添加した場合でも、上記と同様の効果を奏することができるが、最内層であるシーラント層16が硫化水素吸着物質を含むことで、より優れた硫化水素吸着効果を得ることができる。硫化水素吸着物質は、外装材10の基材層11側を外側、シーラント層16側を内側とした場合に、バリア層13よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層に含有されていることが好ましいが、バリア層13よりも外側に配置された層のうちの少なくとも一層に含有されていてもよい。例えば、第1の接着剤層12aが硫化水素吸着物質を含有していてもよい。
硫化水素吸着物質としては、例えば、酸化亜鉛、非晶質金属ケイ酸塩(主に金属が銅、亜鉛であるもの)、ジルコニウム・ランタノイド元素の水和物、4価金属リン酸塩(特に金属が銅であるもの)、ゼオライト及び亜鉛イオンの混合物、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅(II)との混合物、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、硫酸銀、酢酸銀等が挙げられる。これらの中でも、硫化水素をより無害化しやすく、コストや取り扱いの観点から、酸化亜鉛が好ましい。硫化水素吸着物質は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
シーラント層16が硫化水素吸着物質を含有する場合、当該シーラント層16における硫化水素吸着物質の含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。硫化水素吸着物質の含有量が0.01質量%未満では硫化水素無害化の効果が小さく、30質量%を超えるとシーラント層16のシール強度等の物性が低下する傾向があるためである。
(添加成分)
シーラント層16は、上述した成分以外の添加成分を更に含んでいてもよい。添加成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、(B)成分に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有さないものであってもよいが、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、(B)成分中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、(B)成分中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
(B)成分がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シーラント層16がポリオレフィン系エラストマーを含有する場合、当該シーラント層16におけるポリオレフィン系エラストマーの含有量は、シーラント層16の固形分全量を基準として、5〜40質量%であってもよく、10〜40質量%であってもよい。ポリオレフィン系エラストマーの含有量が5質量%以上であると、シール特性の改善効果をより十分に得ることができ、40質量%以下であると、シーラント層16の耐熱性の低下を抑制できる。
また、シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、電池としての体積エネルギー密度の観点から、5〜150μmの範囲であることが好ましく、10〜120μmの範囲であることがより好ましく、20〜100μmの範囲であることが更に好ましい。
以上、本実施形態の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
図1では、第2の接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。また、図2に示す蓄電装置用外装材20において、バリア層13と接着性樹脂層15との間に第2の接着剤層12bを設けてもよい。
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、並びにその酸無水物及びエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂は無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができる。また、接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であることが好ましい。
また、蓄電装置用外装材20においては、接着性樹脂層15及びシーラント層16の合計の厚さは、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5〜150μmの範囲であることが好ましく、20〜100μmの範囲であることがより好ましい。
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60〜300℃の範囲で行うことができる。
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12aは、ドライ塗布量として1〜10g/mの範囲、より好ましくは3〜7g/mの範囲で設ける。
(第2の接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度(接着剤が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合は、その融点以上の温度)で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。
この場合、シーラント層16は、例えば、上述した(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて(C)成分、硫化水素吸着物質及び添加成分等を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2の接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
本工程により、図2に示すような、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
以上、本開示の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本開示の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本開示の蓄電装置用外装材は、固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
[蓄電装置]
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電装置50は、電池要素(蓄電装置本体)52と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10である。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
本実施形態の蓄電装置50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電装置50は、本実施形態の外装材10を用いているため、高温環境下で使用された場合であっても優れたヒートシール強度を確保することができる。
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ25μm)>
一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
<第1の接着剤層(厚さ4μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL−1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL−2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
<バリア層(厚さ40μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
<第2の接着剤層(厚さ3μm)>
エポキシ樹脂(アデカ社製、商品名:EP4100)100質量部及びポリアミドアミン系硬化剤(アデカ社製、商品名:EH4602)25質量部の混合物を酢酸エチルで固形分30質量%に希釈したエポキシ系接着剤を用いた。
<シーラント層>
シーラント層形成用樹脂組成物を構成する成分として、下記材料を準備した。
((B)成分)
B−1:プロピレン−エチレンランダム共重合体(ガラス転移温度:−5℃、融点:135℃)。
B−2:分岐状低密度ポリエチレン樹脂(ガラス転移温度:−125℃、融点:105℃)。
((A)成分)
A−1:アポリヤLP2(商品名、アルケマ社製、融点:216℃)
A−2:APL6013T(商品名、三井化学株式会社製、ガラス転移温度:125℃)
A−3:APL6509T(商品名、三井化学株式会社製、ガラス転移温度:80℃)
((A’)成分)
A’−1:アポリヤLC3(商品名、アルケマ社製、融点:130℃、ガラス転移温度:なし)
A’−2:バイロン RN−9300(商品名、東洋紡株式会社、融点:198℃、ガラス転移温度:73℃、ポリオレフィンユニットを有さない結晶性ポリエステル樹脂)
((C)成分)
C−1:INTUNE(商品名、DOW社製)
C−2:DYNARON(商品名、JSR社製)
C−3:BIOLLOY NM110NP(商品名、JSR社製、ポリエステル/ポリオレフィン相溶化剤)
(硫化水素吸着物質)
酸化亜鉛(堺化学工業社製)
[外装材の作製]
(実施例1)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL−1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL−1)と(CL−2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−1)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、エポキシ系接着剤(第2の接着剤層)を用いて、あらかじめキャストフィルムとして成膜しておいたシーラント層(厚さ80μm)に貼り付けて、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を製造した。シーラント層の成膜には、表1に示した組成を有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いた。バリア層とシーラント層との積層は、バリア層の第2の腐食防止処理層側にエポキシ系接着剤を、乾燥後の塗布量(単位面積当たりの質量)が3g/m(厚さ3μm)となるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。表1中のシーラント層の欄における数値は、シーラント層形成用樹脂組成物中の各成分の含有量(単位:質量部)を示している。なお、形成されたシーラント層中の各成分の含有量は、シーラント層形成用樹脂組成物中の各成分の含有量に等しい。
(実施例2〜8及び11〜13)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8及び11〜13の外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例9)
バリア層に第1及び第2の腐食防止処理層を設けなかったこと以外は実施例5と同様にして、実施例9の外装材(基材層/第1の接着剤層/バリア層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例10)
表1に示すようにシーラント層形成用樹脂組成物に硫化水素吸着物質を添加したこと以外は実施例9と同様にして、実施例10の外装材(基材層/第1の接着剤層/バリア層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(比較例1〜5)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1〜5の外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
[ヒートシール強度の測定]
外装材を120mm×60mmのサイズに切り出し、シーラント層が内側になるように半分に折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を表1に示したヒートシール温度、0.5MPa、3秒で幅10mmにわたってヒートシールした。なお、シーラント層の組成に合わせて、比較例1〜3のヒートシール温度は他の例よりも低温とした。これは、比較例1〜3の外装材を220℃でヒートシールした場合、シーラント層が流動しすぎてしまい、シール部のシーラント層膜厚が薄くなりすぎて絶縁性等に不具合が発生する恐れがあるためである。
次に、ヒートシールした外装材を室温で6時間保管後、ヒートシール部の長手方向中央部を幅15mm×長さ30mmで切り出し(図4を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。このサンプルを室温(25℃)、及び、150℃の試験環境に5分間放置した後、その温度条件下で、サンプルのヒートシール部に対し、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いてT字剥離試験を行った。これにより、室温環境及び高温環境下でのヒートシール強度を測定した。また、得られたヒートシール強度に基づき、以下の基準にて評価を行った。評価がA又はBの場合は合格、Cの場合は不合格である。結果を表1に示す。
A:室温及び150℃環境でのヒートシール強度がいずれも35N/15mm以上
B:室温環境でのヒートシール強度が35N/15mm以上、又は、150℃環境でのヒートシール強度が20N/15mm以上
C:室温及び150℃環境でのヒートシール強度の少なくとも一方が20N/15mm未満
[HS吸着性の測定]
容量2Lのテドラー(登録商標)バッグ内に、表1に示した組成のシーラント層形成用樹脂組成物を用いて形成した面積10cm、厚さ80μmのシーラント層のサンプルを封入した。このバッグ内に5体積ppmの硫化水素ガスを2L注入し、室温(25℃)にて24時間放置した後の硫化水素濃度をガス検知管にて測定した。硫化水素濃度が低いほど、シーラント層のHS吸着性が優れている。結果を表1に示す。
Figure 2021108263
本開示によれば、高温環境下でも優れたヒートシール強度を確保できる、耐熱性に優れた蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置が提供される。
10,20…蓄電装置用外装材、11…基材層、12a…第1の接着剤層、12b…第2の接着剤層、13…バリア層、14a…第1の腐食防止処理層、14b…第2の腐食防止処理層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、50…蓄電装置、52…電池要素、53…金属端子。

Claims (10)

  1. 少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、
    前記シーラント層が、(A)成分:ポリオレフィンユニットを含有し且つ融点が175℃以上又はガラス転移温度が75℃以上である化合物と、(B)成分:ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂と、を含有する、蓄電装置用外装材。
  2. 前記(A)成分がポリアミド/ポリオレフィングラフト共重合体を含み、
    前記シーラント層における前記(A)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して5〜100質量部である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
  3. 前記(A)成分がポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体を含み、
    前記(B)成分が前記ポリプロピレン系樹脂を含み、
    前記シーラント層が、(C)成分:前記ポリアミド/ポリエチレングラフト共重合体と相溶する部位及び前記ポリプロピレン系樹脂と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
  4. 前記(A)成分がシクロオレフィンコポリマーを含み、
    前記シーラント層における前記(A)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して5〜100質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  5. 前記(A)成分がエチレン/シクロオレフィンコポリマーを含み、
    前記(B)成分が前記ポリプロピレン系樹脂を含み、
    前記シーラント層が、(C)成分:前記エチレン/シクロオレフィンコポリマーと相溶する部位及び前記ポリプロピレン系樹脂と相溶する部位を有する相溶化剤を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  6. 前記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  7. 前記蓄電装置用外装材の前記基材層側を外側、前記シーラント層側を内側とした場合に、前記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が、硫化水素吸着物質を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  8. 前記シーラント層の厚さが10〜100μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  9. 全固体電池用である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  10. 蓄電装置本体と、
    前記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、
    前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電装置本体を収容する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材と、
    を備える蓄電装置。
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