JP2022041469A - 蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下(例えば150℃)でも絶縁破壊が生じにくい蓄電装置用外装材を提供する。【解決手段】少なくとも基材層、外層接着剤層、バリア層、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、基材層の、23℃環境下での体積抵抗率と150℃環境下の体積抵抗率との比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)が、1×100~1×103である、蓄電装置用外装材。【選択図】図1

Description

本開示は、蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置に関する。
蓄電装置として、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置の更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2013-101765号公報
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電装置の研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であるとともに、高い温度条件下(例えば100~150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。また、全固体電池を用いる場合、電池を冷却するための冷却システムに必要なスペース及びコストを低減することができる。
しかし、外装材として上記のような多層フィルムを使用してラミネート型の全固体電池を作製した場合、得られた全固体電池を高温環境下で作動させると、外装材の絶縁性が低下し、電圧印加による絶縁破壊が生じやすいという問題があることを本発明者は見出した。なお、現行のリチウムイオン電池においては、電解液を使用する関係から高温で使用されることがないため、高温環境下で使用する場合の外装材の上記問題点は、これまで課題として認識されていなかった。また、全固体電池ではバイポーラ化による高電圧の取り出しも検討されていることから、外装材における絶縁性の重要性はより高まる。
また、全固体電池に限らず、リチウムイオンキャパシタ等の他の蓄電装置でも、高温使用が可能なものが開発されつつある。そのため、蓄電装置の外装材には、蓄電装置を高温環境下で使用した場合でも絶縁破壊が生じにくいことが求められる。
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、高温環境下(例えば150℃)でも絶縁破壊が生じにくい蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材層、外層接着剤層、バリア層、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記基材層の、23℃環境下での体積抵抗率と150℃環境下の体積抵抗率との比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)が、1×10~1×10である、蓄電装置用外装材を提供する。
上記蓄電装置用外装材によれば、基材層の、23℃環境下での体積抵抗率と150℃環境下の体積抵抗率との比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)(以下、「抵抗変化比」とも言う)を上記範囲内とすることで、温度上昇に伴う基材層の体積抵抗率の急激な低下を抑制することができ、高温環境下(例えば150℃)において絶縁破壊が生じることを抑制することができる。ここで、温度上昇に伴う基材層の体積抵抗率の低下が急激であると、従来のリチウムイオン電池における電解液の沸点温度(80℃程度)以下で十分な絶縁性が確保できるように設計された外装材は、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)に絶縁破壊を引き起こすこととなる。これに対し、基材層の抵抗変化比を上記範囲内とすることで、80℃程度以下で十分な絶縁性が確保できるように設計された外装材を、そのまま高温環境下で絶縁破壊を生じることなく使用することが可能となる。
上記蓄電装置用外装材において、上記基材層の23℃環境下での体積抵抗率が1×1013Ω・m以上であってもよい。基材層の23℃環境下での体積抵抗率が上記範囲内であり、且つ、抵抗変化比が上述した範囲内であることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記基材層の150℃環境下での体積抵抗率が1×1012Ω・m以上であってもよい。基材層の150℃環境下での体積抵抗率が上記範囲内であり、且つ、抵抗変化比が上述した範囲内であることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記基材層の厚さが35μm以下であり、上記基材層の150℃環境下での体積抵抗率と上記基材層の厚さとを乗じた値が、5×1013(Ω・m×μm)以上であってもよい。基材層の厚さを上記範囲内とすることで、外装材の成型後のカールの発生を抑制することができ、それによって、後工程で行うヒートシール時のハンドリング性の低下を防ぐことができる。また、この基材層の厚さに150℃環境下での体積抵抗率を乗じた値が上記範囲内であることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記基材層が二軸延伸されたフィルムであってもよい。基材層が二軸延伸されたフィルムであることで、蓄電装置用外装材の成型性をより向上させることができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記基材層が半芳香族ポリアミドフィルムであってもよい。半芳香族ポリアミドフィルムは、抵抗変化比、23℃環境下での体積抵抗率、及び、150℃環境下での体積抵抗率を、上述した特定の範囲内としやすい。そのため、基材層が半芳香族ポリアミドフィルムであることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記外層接着剤層がポリエステルウレタン系接着剤を用いて形成された層であってもよい。外層接着剤層がポリエステルウレタン系接着剤を用いて形成されていることで、高温環境下(例えば150℃)においても優れた接着強度を維持することができる。
上記蓄電装置用外装材は、全固体電池用であってもよい。
本開示はまた、蓄電装置本体と、上記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、上記電流取出し端子を挟持し且つ上記蓄電装置本体を収容する、上記本開示の蓄電装置用外装材と、を備える蓄電装置を提供する。上記蓄電装置は、全固体電池であってもよい。
本開示によれば、高温環境下(例えば150℃)でも絶縁破壊が生じにくい蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することができる。
本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[蓄電装置用外装材]
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた外層接着剤層12aと、該外層接着剤層12aの基材層11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の外層接着剤層12aとは反対側に設けられた内層接着剤層12bと、該内層接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材層11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
<基材層11>
基材層11は、外装材10に成型性と絶縁性を付与する役割を果たす。また、基材層11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電装置の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
基材層11は、23℃環境下での体積抵抗率と150℃環境下の体積抵抗率との比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)が、1×10~1×10である。上記比(抵抗変化比)は、1×10~5×10であることが好ましく、1×10~1×10であることがより好ましい。抵抗変化比が上記上限値以下であることで、温度上昇に伴う基材層11の体積抵抗率の急激な低下を抑制することができ、高温環境下(例えば150℃)において絶縁破壊が生じることを抑制することができる。
基材層11は、23℃環境下での体積抵抗率が1×1013Ω・m以上であることが好ましく、5×1013Ω・m以上であることがより好ましく、1×1014Ω・m以上であることが更に好ましい。また、基材層11の23℃環境下での体積抵抗率の上限値は特に限定されないが、例えば、1×1016Ω・m以下、5×1015Ω・m以下、又は、1×1015Ω・m以下であってもよい。基材層11の23℃環境下での体積抵抗率が上記下限値以上であることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
基材層11は、150℃環境下での体積抵抗率が1×1012Ω・m以上であることが好ましく、5×1012Ω・m以上であることがより好ましく、1×1013Ω・m以上であることが更に好ましい。また、基材層11の150℃環境下での体積抵抗率の上限値は特に限定されないが、例えば、1×1015Ω・m以下、5×1014Ω・m以下、又は、1×1014Ω・m以下であってもよい。基材層11の150℃環境下での体積抵抗率が上記下限値以上であることで、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
基材層11の体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠し、温度23℃、相対湿度20%未満、又は、温度150℃で、電圧100Vの条件にて測定することができる。
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムからなる層であることが好ましい。
基材層11は、上述した抵抗変化比及び体積抵抗率の条件を満たすとともに、良好な成型性を確保する観点から、半芳香族ポリアミドフィルムからなる層であることが好ましい。
半芳香族ポリアミドフィルムを構成する半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを共重合させたものであり、ジカルボン酸成分又はジアミン成分中に芳香族基を含むものである。半芳香族ポリアミドは、高い耐熱性を有する。また、半芳香族ポリアミドは、良好な成型性を確保できると共に、寸法安定性にも優れる。半芳香族ポリアミドフィルムを基材層11とすることで、上述した抵抗変化比及び体積抵抗率の条件を満たしやすく、高温環境下(例えば150℃)でも絶縁破壊が生じにくい蓄電装置用外装材を形成することができる。
半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とすることが好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の割合は、60~100モル%であることが好ましい。
半芳香族ポリアミドを構成するジアミン成分は、炭素数が4~15である脂肪族ジアミンを主成分とすることが好ましい。炭素数が4~15である脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
半芳香族ポリアミドには、ε-カプロラクタム、ζ-エナントラクタム、η-カプリルラクタム、ω-ラウロラクタム等のラクタム類が共重合されていてもよい。
半芳香族ポリアミドの融点(Tm)は、ヒートシール時の耐熱性の観点から、シーラント層16の融点よりも30℃以上高いことが好ましい。半芳香族ポリアミドの融点は、例えば280~350℃であってもよい。半芳香族ポリアミドを構成するモノマーの種類や共重合比は、半芳香族ポリアミドの融点が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
上記半芳香族ポリアミドフィルム等の基材層11を構成する樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよいが、良好な成型性が得られやすいことから、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より良好な成型性が得られやすいことから、同時二軸延伸法又はチューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
基材層11は、1種類の樹脂フィルムで構成された単層フィルムであってもよく、2種類以上の樹脂フィルムで構成された積層フィルムであってもよい。
基材層11のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることが更に好ましい。基材層11のTgが100℃以上であることで、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。基材層11のTgの上限値は特に限定されないが、例えば400℃以下であってもよい。
基材層11の厚さは、5μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。また、基材層11の厚さは、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。基材層11の厚さが5μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが50μmを超えると蓄電装置用外装材10の総厚が大きくなり、電池の電気容量を小さくしなければならない場合があるため望ましくない。また、基材層11の厚さを50μm以下とすることで、蓄電装置用外装材10の成型後のカールの発生を抑制することができ、それによって、後工程で行うヒートシール時のハンドリング性の低下を防ぐことができる。
基材層11は、基材層11の150℃環境下での体積抵抗率と基材層11の厚さとを乗じた値が、5×1013(Ω・m×μm)以上であることが好ましく、1×1014(Ω・m×μm)以上であることがより好ましく、2×1014(Ω・m×μm)以上であることが更に好ましい。また、基材層11の150℃環境下での体積抵抗率と基材層11の厚さとを乗じた値は、1×1016(Ω・m×μm)以下であってもよく、5×1015(Ω・m×μm)以下であってもよい。この値が上記下限値以上であると、80℃程度以下での使用時、及び、高温環境下での使用時(例えば100~150℃での使用時)の両方において、絶縁破壊の発生をより十分に抑制することができる。
<外層接着剤層12a>
外層接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。外層接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂の中でも、高温環境下での剥離強度の低下をより抑制しやすいことから、ポリエステルポリオールと2官能以上のイソシアネート化合物とを用いたポリエステルウレタン樹脂が好ましい。
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
上述したポリウレタン樹脂を含む外層接着剤層12aの形成に用いられるポリウレタン系接着剤において、ポリオールに含まれる水酸基数に対する、多官能イソシアネート化合物に含まれるイソシアナト基数の比率(NCO/OH)は、2~60であってもよく、5~50であってもよく、10~40であってもよい。この比率が2以上であると、高温環境下(例えば150℃)での基材層11とバリア層13との接着強度をより向上させることができ、高温環境下でのバリア層13からの基材層11の浮きをより一層抑制しやすい。上記比率が60以下であると、未反応の水酸基が過剰に残存することを防ぐことができ、室温環境下及び高温環境下の両方での基材層11とバリア層13との接着強度をより向上させやすい。なお、ポリウレタン系接着剤の硬化物(外層接着剤層12a)の耐熱性は、大気中又は接着剤中に含まれる微量の水と多官能イソシアネート化合物とが反応して発生するウレアやビューレットによって向上する。このため、多官能イソシアネート化合物が多いほどこれらのユニットが増え、それによりTgが高くなり、耐熱性が向上する傾向がある。
外層接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。なお、外層接着剤層12aの厚さが1μm以上であると、高い接着強度が得られやすいと共に、高温環境下での基材層11及びバリア層13の熱膨張時に発生する剪断力の応力緩和がしやすい。一方、外層接着剤層の厚さが10μm以下であると、外装材の成型性をより向上させることができる。
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と外層接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と内層接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
脱脂処理としては、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14a,14b(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
また、腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
<内層接着剤層12b>
内層接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bが形成されたバリア層13とシーラント層16とを接着する層である。内層接着剤層12bには、バリア層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができ、例えば、上述した外層接着剤層12aと同様の接着剤を用いることができる。
内層接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」とも言う)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;及び、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。
シーラント層16は、ポリオレフィン系エラストマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン系エラストマーは、上述したベース樹脂に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有さないものであってもよいが、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
ベース樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5~100μmの範囲であることが好ましく、10~100μmの範囲であることがより好ましく、20~80μmの範囲であることが更に好ましい。
シーラント層16は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。
以上、本実施形態の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
図1では、内層接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。また、図2に示す蓄電装置用外装材20において、バリア層13と接着性樹脂層15との間に内層接着剤層12bを設けてもよい。
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、並びにその酸無水物及びエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂は無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができる。また、接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であることが好ましい。
また、蓄電装置用外装材20においては、接着性樹脂層15及びシーラント層16の合計の厚さは、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5~100μmの範囲であることが好ましく、20~80μmの範囲であることがより好ましい。
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、外層接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、内層接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、外層接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した外層接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。外層接着剤層12aは、ドライ塗布量として1~10g/mの範囲、より好ましくは2~7g/mの範囲で設ける。
(内層接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、内層接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
ウェットプロセスの場合は、内層接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。内層接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、外層接着剤層12aと同様である。
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/内層接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温~100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1~10日である。
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、外層接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
本工程により、図2に示すような、基材層11/外層接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
以上、本開示の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本開示の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本開示の蓄電装置用外装材は、固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
[蓄電装置]
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電装置50は、電池要素(蓄電装置本体)52と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10である。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
本実施形態の蓄電装置50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電装置50は、本実施形態の外装材10を用いているため、高温環境下(例えば150℃)で使用された場合であっても、外装材10の絶縁性が低下して絶縁破壊が生じることを抑制することができる。
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層>
半芳香族ポリアミド:表1に示す製膜方法により作製された、同表に示す厚さ及びTgを有する半芳香族ポリアミドフィルム
PET:表1に示す製膜方法により作製された、同表に示す厚さ及びTgを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー#25、#50)
PBT:表1に示す製膜方法により作製された、同表に示す厚さ及びTgを有するポリブチレンテレフタレートフィルム(興人フィルム&ケミカルズ社製、商品名:ボブレット)
ナイロン6:表1に示す製膜方法により作製された、同表に示す厚さ及びTgを有するナイロン6フィルム(ユニチカ社製、商品名:ON-U)
<外層接着剤層(厚さ:5μm)>
ポリエステルウレタン:ポリエステルポリオール(東洋モートン社製、商品名:TMK-55)とイソシアネート(TDI-アダクト、東洋モートン社製、商品名:CAT-10L)とを配合し、溶媒で希釈したポリエステルウレタン系接着剤を用いた。
PO系:日本製紙社製のアウローレン350S(商品名)と東洋モートン社製のDYNAGRAND CR-410B(商品名)とを配合し、溶媒で希釈したポリオレフィン系接着剤を用いた。
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
<バリア層(厚さ:40μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
<接着性樹脂層(厚さ:27μm)>
接着性樹脂として、ランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物(三井化学社製)を用いた。
<シーラント層(厚さ53μm)>
ポリプロピレン-ポリエチレンランダム共重合体(プライムポリマー社製、商品名:F744NP)を、シーラント層形成用樹脂組成物として用いた。
[外装材の作製]
(実施例1)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにダイレクトグラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにダイレクトグラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリエステルウレタン系接着剤(外層接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。バリア層と基材層との積層は、バリア層の第1の腐食防止処理層側の面上にポリエステルウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、基材層とラミネートし、80℃で120時間エージングすることで行った。
次いで、バリア層と基材層との積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に270℃、80m/minの加工条件で共押出しすることで接着性樹脂層(厚さ27μm)及びシーラント層(厚さ53μm)をこの順で積層した。なお、接着性樹脂層及びシーラント層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施して、外装材(基材層/外層接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例2~3及び比較例1~5)
基材層及び/又は外層接着剤層を表1に示す構成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~3及び比較例1~5の外装材(基材層/外層接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。なお、外層接着剤層として「PO系」を用いた場合、バリア層と基材層との積層時の条件は、100℃で30秒乾燥、及び、40℃で120時間エージングに変更した。
[体積抵抗率の測定]
実施例及び比較例で用いた基材層の体積抵抗率を、JIS K 6911に準拠し、温度23℃、相対湿度20%RH以下、又は、温度150℃で、電圧100Vの条件にて測定した。また、23℃環境下での体積抵抗率、及び、150℃環境下の体積抵抗率から、抵抗変化比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)を求めた。これらの結果を表1に示す。
[絶縁破壊電圧の測定]
実施例及び比較例で得られた外装材を100mm×100mmサイズに切断して試験片とした。この試験片の表面に垂直な方向の絶縁破壊電圧(交流、50Hz)をJIS C2110-1に準拠して測定した。試験条件の詳細は以下の通りである。測定された絶縁破壊電圧が8kV以上である場合を「A」、7kV以上8kV未満である場合を「B」、7kV未満である場合を「C」と判定した。結果を表1に示す。
(試験条件)
試験片数:3個
試験温度:150℃
周囲媒質:油中
電極形状:直径25mm円柱/直径25mm円柱
昇圧方式:短時間試験
昇圧速度:0.5kV/sec
[成型性の評価]
実施例及び比較例で得られた外装材を、TD方向120mm×MD方向200mmの矩形状に切り取り、シーラント層が上方を向くように成型装置内に配置した。成型装置の成型深さを5.0mmに設定し、抑え圧を0.8MPaとし、室温23℃、露点温度-35℃の環境下で、冷間成型を行った。パンチ金型には、80mm×70mmの長方形の横断面を有し、底面に1mmのパンチラジアス(RP)を有し、側面に1mmのパンチコーナーラジアス(RCP)を有するものを使用した。また、ダイ金型には、開口部上面に1mmのダイラジアス(RD)を有するものを使用した。パンチ金型とダイ金型との間のクリアランスは170μmとした。成型エリアは、切り取った外装材の長手方向(MD方向)の略中央で分けた半面の略中央とし、パンチ金型の長手方向が外装材のTD方向に沿うようにした。
上記条件にて深絞り成型したサンプルを10個作製し、(a)ピンホール及びクラックの発生の有無、並びに、(b)成型後のカールの有無、をそれぞれ観察して以下の判定基準に基づいて判定した。
(a)ピンホール及びクラックの発生の有無
A:全てのサンプルでピンホール及びクラックがない
B:80%以上100%未満のサンプルでピンホール及びクラックがない
C:ピンホール及びクラックがないサンプルが80%未満
(b)成型後のカールの有無
A:未成型部がカールしない、又は、カールしても未成型部の先端部分の旋回が1周しない
C:未成型部の先端部分の旋回が1周以上となるようにカールしている
上記(a)及び(b)の評価結果に基づいて、外装材の成型性を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
A:上記(a)及び(b)の評価結果がいずれも「A」判定
B:上記(a)の評価結果が「B」判定で、上記(b)の評価結果が「A」判定
C:上記(a)及び(b)の評価結果の少なくとも一方が「C」判定
[剥離強度の測定]
実施例及び比較例で得られた外装材を、幅15mm、長さ100mmのサイズに切断して試験片とした。この試験片について、150℃環境下での基材層とバリア層間の剥離強度を測定した。測定は、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いたT字剥離試験により行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて150℃環境下での剥離強度を評価した。結果を表1に示す。
A:剥離強度が1N/15mm以上
C:剥離強度が1N/15mm未満
Figure 2022041469000002
10,20…蓄電装置用外装材、11…基材層、12a…外層接着剤層、12b…内層接着剤層、13…バリア層、14a…第1の腐食防止処理層、14b…第2の腐食防止処理層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、50…蓄電装置、52…電池要素、53…金属端子。

Claims (10)

  1. 少なくとも基材層、外層接着剤層、バリア層、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
    前記基材層の、23℃環境下での体積抵抗率と150℃環境下の体積抵抗率との比(23℃環境下での体積抵抗率/150℃環境下での体積抵抗率)が、1×10~1×10である、蓄電装置用外装材。
  2. 前記基材層の23℃環境下での体積抵抗率が1×1013Ω・m以上である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
  3. 前記基材層の150℃環境下での体積抵抗率が1×1012Ω・m以上である、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
  4. 前記基材層の厚さが35μm以下であり、
    前記基材層の150℃環境下での体積抵抗率と前記基材層の厚さとを乗じた値が、5×1013(Ω・m×μm)以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  5. 前記基材層が二軸延伸されたフィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  6. 前記基材層が半芳香族ポリアミドフィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  7. 前記外層接着剤層がポリエステルウレタン系接着剤を用いて形成された層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  8. 全固体電池用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  9. 蓄電装置本体と、
    前記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、
    前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電装置本体を収容する、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材と、
    を備える蓄電装置。
  10. 全固体電池である、請求項9に記載の蓄電装置。
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