1.コンタクトレンズケア用組成物 本発明のコンタクトレンズケア用組成物(以下、CLケア用組成物と表記することもある)は、ポリヘキサニド及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(A)成分と表記することもある)を含有する。
ポリヘキサニドは、ポリヘキサメチレンビグアニド又はPHMBと称される公知の殺菌剤である。本発明で使用されるポリヘキサニドについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではないが、具体的には、下記一般式(1)に示される化合物が例示される。
一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、下記一般式(2)で示される基又はアミノ基を示す。好ましくはR1がアミノ基であり、且つR2が一般式(2)で示される基又はアミノ基であり、更に好ましくはR1がアミノ基であり、R2が一般式(2)で示される基である。
また、一般式(1)中、nは、1〜500の整数を示す。好ましくは、2〜200の整数、更に好ましくは4〜100の整数、特に好ましくは8〜20の整数を示す。
ポリヘキサニドの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り、特に制限されない。ポリヘキサニドの塩として、具体的には、塩酸、臭化水素、硫酸、ホウ酸等の無機酸塩;酢酸、グルコン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸塩が例示される。これらのポリヘキサニドの塩の中でも、好ましくは無機酸塩であり、更に好ましくは塩酸塩である。これらのポリヘキサニドの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明のCLケア用組成物において、(A)成分は、ポリヘキサニド及びその塩の中から1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。(A)成分の中でも、殺菌作用を一層安定に保持させ、更には白濁等を防止して外観性状を一層良好に保つという観点から、好ましくは一般式(1)で示されるポリヘキサニド又はその無機酸塩、更に好ましくは一般式(1)で示されるポリヘキサニド又はその塩酸塩、特に好ましくは一般式(1)で示されるポリヘキサニドの塩酸塩が挙げられる。ここで例示する(A)成分は、(B)成分の低分子化を抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、上記(A)成分の含有割合は、該(A)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(A)成分が総量で0.00005〜0.00012w/v%、好ましくは0.00006〜0.00012w/v%、更に好ましくは0.00007〜0.00012w/v%が例示される。(A)成分が上記含有割合の範囲内にあれば、高い安全性を有しつつ、殺菌作用及び外観性状を一層安定に維持することができる。また、(A)成分の上記含有割合は、本発明の他の効果をより有効に奏させる上でも好適である。
本発明のCLケア用組成物は、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(以下、(B)成分と表記することもある)を含有する。また、以下、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、括弧内の数字は付加モル数を表す。
POEPOPグリコールは、プロピレンオキシドを付加重合させて得られるポリプロピレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した化合物であり、下記の一般式で示される。
本発明で使用されるPOPPOEグリコールについては、その分子量、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの平均重合度等については特に制限されないが、平均分子量は1000〜30000が好ましく、1500〜20000がより好ましく、2000〜15000が特に好ましい。また、上記一般式中yで表されるプロピレンオキサイドの平均重合度は5〜100が好ましく、20〜80がより好ましく、30〜70がさらに好ましく、60〜70が特に好ましい。また、上記一般式中xおよびzで表されるエチレンオキサイドの平均重合度は、併せて3〜250が好ましく、20〜220がより好ましく、50〜200がさらに好ましく、150〜200が特に好ましい。これらのPOPPOEグリコールとしては、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、平均分子量11500)、POE(24)POP(20)グリコール(ポロクサマー124、平均分子量2200)、POE(160)POP(30)グリコール(ポロクサマー188、平均分子量8350)、POE(54)POP(39)グリコール(ポロクサマー235、平均分子量4600)、POE(200)POP(70)グリコール等が挙げられる。これらの中でも、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、POPPOEグリコールの低分子化をより有効に抑制させるという観点から、好ましくは、ポロクサマー407が例示される。ここで例示する(B)成分は、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、上記(B)成分の含有割合は、該(B)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(B)成分が総量で0.01〜0.5w/v%、好ましくは0.01〜0.3w/v%、更に好ましくは0.05〜0.2w/v%が例示される。(B)成分が上記含有割合の範囲内にあれば、殺菌作用及び外観性状を一層安定に維持することができる。また、(B)成分の上記含有割合は、本発明の他の効果をより有効に奏させる上でも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、特に制限されるものではないが、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁等を防止して外観性状を一層良好に保つという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、上記(B)成分の総量が80〜10000重量部、好ましくは80〜6000重量部、更に好ましくは400〜4000重量部となる範囲が例示される。ここで例示する比率は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
また、本発明のCLケア用組成物は、更にヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(C)成分と表記することもある)を含有する。
本発明に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されるものではない。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の含有量についても、特に制限されないが、例えば、分子(100重量%)内に、メトキシ基が19〜31.5重量%及びヒドロキシプロポキシ基が4〜12重量%含まれるものが例示される。本発明に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)等が挙げられる。
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではない。塩の形態の中でも、好ましくは無機塩基との塩、より好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩、特に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらのヒドロキシプロピルメチルセルロースの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩の分子量については、置換基の種類や置換度等によって異なるが、通常、重量平均分子量で0.1万〜150万、好ましくは0.5万〜130万、更に好ましくは1万〜100万程度のものを使用することができる。
本発明のCLケア用組成物において、(C)成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩の中から1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。(C)成分の中でも、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁等を防止して外観性状を一層良好に保つという観点から、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。ここで例示する(C)成分は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、上記(C)成分の含有割合は、該(C)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(C)成分が総量で0.01〜0.5w/v%、好ましくは0.01〜0.3w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%が例示される。(C)成分が上記含有割合の範囲内にあれば、殺菌作用及び外観性状を一層安定に維持することができる。また、(C)成分の上記含有割合は、本発明の他の効果をより有効に奏させる上でも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、特に制限されるものではないが、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁等を防止して外観性状を一層良好に保つという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、上記(C)成分の総量が80〜10000重量部、好ましくは80〜6000重量部、更に好ましくは80〜2000重量部となる範囲が例示される。ここで例示する比率は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
更に、本発明のCLケア用組成物は、上記(A)〜(C)成分に加えて、エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(D)成分と表記することもある)を0.04〜0.2w/v%の含有割合で含む。このように、上記(A)〜(C)成分と共に、特定の含有割合の(D)成分を含有することによって、CLケア用組成物の殺菌作用を安定に保持させ、更には経時的に白濁が生じることなく、外観性状を良好に保つことが可能になる。また、上記(A)〜(C)成分と特定の含有割合の(D)成分を一体として含むことによって、(B)成分の低分子化を抑制し、CLケア用組成物の使用感を向上させ、乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇を抑制することも可能になる。
本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸は、エチレンジアミンの2つのアミノ基に対して1〜4個のカルボキシメチル基が結合した化合物であり、本発明において上記(D)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸としては、具体的には、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)等が例示される。また、エチレンジアミン酢酸の誘導体としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等が例示される。これらのエチレンジアミン酢酸及びその誘導体の中でも、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。これらのエチレンジアミン酢酸及び/又はその誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
また、エチレンジアミン酢酸及び/又はその誘導体の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩、特に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
なお、(D)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸、その誘導体及び/又はそれらの塩は、水和物の形態であってもよい。
本発明のCLケア用組成物において、(D)成分は、エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩の中から1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。(D)成分の中でも、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して外観性状を一層良好に保つという観点から、好ましくはエチレンジアミン四酢酸及びその塩、更に好ましくはエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、特に好ましくはエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、更に特に好ましくはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが挙げられる。なお、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムとは、第十五改正日本薬局方のエデト酸ナトリウム水和物(二水和物)を意味する。ここで例示する(D)成分は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、上記(D)成分の含有割合は、該CLケア用組成物の総量に対して、該(D)成分が総量で0.04〜0.2w/v%を充足する範囲であればよいが、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には外観性状を一層良好に保つという観点から、好ましくは0.04〜0.15w/v%、更に好ましくは0.04〜0.1w/v%が例示される。(D)成分が上記含有割合の範囲内にあれば、低刺激性で良好な使用感を備えさせつつ、殺菌作用及び外観性状を一層安定に維持することができる。また、(D)成分の上記含有割合は、本発明の他の効果をより有効に奏させる上でも好適である。
本発明のCLケア用組成物において、(A)成分に対する(D)成分の比率については、特に制限されるものではないが、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して外観性状を一層良好に保つという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、上記(D)成分の総量が300〜4000重量部、好ましくは300〜3000重量部、更に好ましくは300〜2000重量部となる範囲が例示される。ここで例示する比率は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
また、本発明のCLケア用組成物において、(C)成分に対する(D)成分の比率については、特に制限されるものではないが、CLケア用組成物の殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して外観性状を一層良好に保つという観点から、(C)成分の総量1重量部当たり、上記(D)成分の総量が0.08〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.4〜10重量部となる範囲が例示される。ここで例示する比率は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
更に、本発明のCLケア用組成物は、ホウ酸緩衝剤(以下、(E)成分と表記することもある)を含有することが好ましい。
本発明で使用されるホウ酸緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されないが、例えば、ホウ酸(オルトホウ酸)、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸及びこれらの塩等が挙げられる。これらの塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が例示される。(E)成分として使用されるホウ酸緩衝剤として、具体的には、ホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、テトラホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等が例示される。これらは、水和物であってもよい。これらのホウ酸緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(E)成分として、好ましくはホウ酸とホウ砂の組合せ(併用)が例示される。尚、ホウ酸、ホウ砂は、日本薬局方適合品が好適に用いられ、これらは市販のものを用いることができる。
(E)成分として、例えばホウ酸とホウ砂を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されるものではないが、ホウ酸100重量部当たり、ホウ砂が総量で、通常0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、更に好ましくは5〜50重量部が挙げられる。
本発明のCLケア用組成物において、上記(E)成分の含有割合は、該(E)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(E)成分が総量で0.1〜2.0w/v%、好ましくは0.2〜1.5w/v%、更に好ましくは0.4〜1.0w/v%が例示される。
また、本発明のCLケア用組成物は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種(以下、(F)成分と表記することもある)を含有することが好ましい。
本発明のCLケア用組成物において、(F)成分は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの中から一方を単独で使用してもよく、また双方を組み合わせて使用してもよい。(F)成分として、好ましくは塩化ナトリウムと塩化カリウムの組み合わせ(併用)が例示される。
(F)成分として、塩化ナトリウムと塩化カリウムを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されるものではないが、塩化ナトリウム100重量部当たり、塩化カリウムが総量で、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは5〜20重量部が挙げられる。
本発明のCLケア用組成物において、上記(F)成分の含有割合は、該(F)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(F)成分が総量で0.01〜2w/v%、好ましくは0.02〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%が例示される。
本発明のCLケア用組成物において、殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して外観性状を一層良好に保つために、上記(E)成分と(F)成分を組み合わせて含有することが好ましい。とりわけ、上記(F)成分の総量100重量部あたり、上記(E)成分が総量で100重量部以上、好ましくは100〜300重量部、更に好ましくは100〜200重量部、特に好ましくは100〜150重量部の比率を充足することによって、殺菌作用の安定保持効果及び白濁抑制効果を格段顕著に向上させることが可能になる。また、上記の(E)成分と(F)成分の併用及びそれらの上記比率は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
更に、本発明のCLケア用組成物は、モノテルペン(以下、(G)成分と表記することもある)を含有することが好ましい。本発明のCLケア用組成物において、更に(G)成分を含有することによって、殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して性状外観を一層良好に保つことが可能になる。また、(G)成分は、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感のより一層の向上にも寄与しうる。
モノテルペンは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有し、清涼化剤として汎用されている公知の化合物である。
本発明に使用されるモノテルペンとしては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。モノテルペンとして、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、モノテルペンとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
これらのモノテルペンの中でも、好ましくは、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、更に好ましくはl-メントール、dl-メントール、d-カンフル及びdl-カンフルが挙げられ、これらを含有する精油としてクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等が例示される。
本発明のCLケア用組成物において、上記(G)成分の含有割合は、該(G)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(G)成分が総量で0.0001〜0.02w/v%、好ましくは0.0002〜0.01w/v%、更に好ましくは0.0005〜0.005w/v%が例示される。なお、(G)成分として、モノテルペンを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のモノテルペン含有量が上記含有割合を満たすように設定される。
本発明のCLケア用組成物は、上記(E)成分以外の緩衝剤を含有してもよい。本発明のCLケア用組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。
また、本発明のCLケア用組成物は、上記(B)成分以外の界面活性剤を含有してもよい。本発明のCLケア用組成物に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
本発明のCLケア用組成物は、更に上記(F)成分以外の等張化剤を含有してもよい。本発明のCLケア用組成物に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
本発明のCLケア用組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明のCLケア用組成物において、殺菌作用をより一層安定に保持させ、更には白濁を抑制して性状外観を一層良好に保つために、本発明のCLケア用組成物のpHの一例として、6.0〜8.0、好ましくは6.2〜8.0、更に好ましくは6.5〜7.8となる範囲が挙げられる。また、上記のpHは、(B)成分の低分子化を一層抑制する、CLケア用組成物の使用感を一層向上させる、又は乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇に対する抑制作用を一層高めるという観点からも好適である。
また、本発明のCLケア用組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明のCLケア用組成物の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、更に好ましくは0.9〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
本発明のCLケア用組成物には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分等が例示できる。
また、本発明のCLケア用組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、液剤の調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。
以下に本発明のCLケア用組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒など。
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウムなど。
本発明のCLケア用組成物は、所望量の上記(A)〜(D)成分、及び必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。
本発明のCLケア用組成物は、コンタクトレンズの洗浄、消毒、保存等に利用できる限り、その剤型については特に制限されないが、液状が好ましい。本発明のCLケア用組成物を液状(水性組成物)にする場合、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を水性担体として使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。これらの定義は第十五改正日本薬局方に基づく。尚、本発明のCLケア用組成物を水性組成物とする場合の水の含有割合については、通常、CLケア用組成物の全量に対し、水を総量で50w/v%以上、より好ましくは80w/v%以上、更に好ましくは90w/v%以上、特に好ましくは95w/v%以上とすればよい。
本発明のCLケア用組成物は、コンタクトレンズの洗浄、消毒、保存等のコンタクトレンズケアに使用されるものであり、その製剤形態として、具体的には、コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤、コンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤(マルチパーパスソリューション)等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤(マルチパーパスソリューション)が好適である。また、コンタクトレンズ消毒・洗浄・保存剤(マルチパーパスソリューション)は、コンタクトレンズの消毒・洗浄・保存を一剤で行うため、コンタクトレンズを介して角膜に直接接触する製剤である。従って、有効性、安全性等の面から、本発明のCLケア用組成物の製剤形態として特に好適である。
なお、本発明において、コンタクトレンズとは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、及び酸素透過性ハードコンタクトレンズのいずれをも包含する。また、ソフトコンタクトレンズとは、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズでは無いソフトコンタクトレンズ)の双方を包含する。
コンタクトレンズの中でも、ソフトコンタクトレンズは、微生物が付着しやすく、CLケア用組成物による微生物の殺菌が強く要求される。更に、ソフトコンタクトレンズは、白濁等により均一性が損なわれたCLケア用組成物で処理すると、物性変化を受け易いレンズでもある。また、乾燥によるレンズ硬度の上昇が起こりやすく、柔らかさの保持が強く求められる。かかる観点から、本発明のCLケア用組成物は、ソフトコンタクトレンズケア用組成物(即ち、適用対象レンズがソフトコンタクトレンズであるCLケア用組成物)が好適である。
また、本発明のCLケア用組成物をソフトコンタクトレンズに適用する場合、適用対象となるソフトコンタクトレンズの含水率については特に制限されないが、例えば、含水率が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50〜90%である。
ここでソフトコンタクトレンズの含水率とは、ソフトコンタクトレンズ中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のソフトコンタクトレンズの重量)×100かかる含水率はISO18369-4:2006の記載に従って、重量測定方法により測定され得る。
また、ソフトコンタクトレンズの中でも、含水率が50%以上であるレンズは高含水ソフトコンタクトレンズと呼ばれ、素材中に含まれる水分が多いため微生物が繁殖しやすく、より高い殺菌力が求められる。また、高含水ソフトコンタクトレンズの中でも、特にFDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズは、上記ソフトコンタクトレンズ、高含水ソフトコンタクトレンズの特性に加え、乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇を受け易く、当該硬度上昇の抑制が強く求められる。更に、ソフトコンタクトレンズの中でも、高含水ソフトコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズの物性は、白濁等により均一性が損なわれたCLケア用組成物によって悪影響を受け易く、白濁等がなく均一性の高いCLケア用組成物での処理が強く求められる。これに対して、本発明のCLケア用組成物によれば、優れた殺菌作用と共に、乾燥によるコンタクトレンズの硬度上昇を有効に抑制でき、更には白濁が生じることなく組成の均一性を保持できるので、高含水ソフトコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズの上記欠点を解消することができる。かかる利点を鑑みれば、本発明のCLケア用組成物の好適な適用対象のコンタクトレンズの一例として、高含水ソフトコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズが挙げられる。
本発明のCLケア用組成物を用いて、コンタクトレンズの洗浄、消毒、保存等の処理を行う方法については特に制限されないが、好適な一例として下記態様が例示される。コンタクトレンズを洗浄する場合:コンタクトレンズに1〜10滴、好ましくは2〜4滴の本発明のCLケア用組成物を滴下し、両面各々20〜30回程度指でこすり洗いした後に、1〜20mL、好ましくは1〜5mL程度の本発明のCLケア用組成物ですすぎを行う。コンタクトレンズを消毒・保存する場合:コンタクトレンズ1枚を、0.5〜5mL、好ましくは1〜3mLの本発明のCLケア用組成物に浸漬して、1分以上、好ましくは10分以上、更に好ましくは4時間以上保存する。コンタクトレンズを本発明のCLケア用組成物に浸漬する際に用いるレンズケースの種類については特に制限されないが、プラスチック製レンズケースが好適である。このようなレンズケースを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS樹脂)のようなアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂等が挙げられる。
なお、本発明のCLケア用組成物がコンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤(マルチパーパスソリューション)である場合には、上記の洗浄と消毒・保存を一連に行えばよい。
本発明のCLケア用組成物は、容器に収容して、コンタクトレンズケア用品として提供される。本発明のCLケア用組成物を収容する容器の種類については特に制限されず、プラスチック製及びガラス製のいずれであってもよいが、プラスチック製容器は、軽量でスクイズ性が良好で、繰り返しの押圧に対する耐久性を有しているので、CLケア用組成物の収容に好適である。
本発明のCLケア用組成物の収容に使用されるプラスチック製容器を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;硬質塩化ビニル樹脂等が例示される。
上記熱可塑性樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂、特にPETを構成樹脂とする容器は、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用を経時的に減弱させ易い傾向にあり、更にはポリヘキサニド及び/又はその塩を含むコンタクトレンズケア用組成物の経時的な白濁を招き易く、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化をも招きやすい特性がある。これに対して、本発明のCLケア用組成物によれば、ポリエステル系樹脂、特にPETを構成樹脂とする容器に収容しても、このような懸念を払拭して、CLケア用組成物の殺菌作用を安定に保持させ、更には経時的に白濁が生じることなく外観性状を安定に保持することができる。かかる観点に鑑みれば、本発明のCLケア用組成物を収容する容器の好適な一例として、ポリエステル系樹脂製容器、好ましくはPET製容器を挙げることができる。PET製容器としては、PETを樹脂全体の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有していればよい。
また、本発明のCLケア用組成物を容器に収容してコンタクトレンズケア用品として提供する場合、本発明のCLケア用組成物の容器への充填量については、特に制限されないが、通常50〜1000mL、好ましくは80〜600mLが例示される。
2.ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下抑制方法;CLケア用組成物にポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を付与する方法 前述するように、上記(A)〜(C)成分と共に、特定の含有割合の(D)成分を一体として含有することによって、CLケア用組成物において、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用を経時的に低減させることなく、安定に保持させることができる。
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(E)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を併用することを特徴とする、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する方法を提供する。また、本発明は、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有するCLケア用組成物に、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を配合することを特徴とする、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の経時的な低下を抑制する作用を該CLケア用組成物に付与する方法をも提供する。
これらの方法において、使用する(A)〜(D)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、組成物の製剤形態、容器、適用対象となるコンタクトレンズの種類、等については、前記「1.コンタクトレンズケア用組成物」と同様である。
3.CLケア用組成物の白濁防止方法;CLケア用組成物に白濁を防止する作用を付与する方法 前述するように、上記(A)〜(C)成分と共に、特定の含有割合の(D)成分を一体として含有することによって、CLケア用組成物において、経時的な白濁の発生を防止又は抑制して、外観性状を良好に保つことができる。
従って、本発明は、更に別の観点から、CLケア用組成物において、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を併用することを特徴とする、該CLケア用組成物における白濁を防止又は抑制する方法を提供する。また、本発明は、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有するCLケア用組成物に、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を0.04〜0.2w/v%配合することを特徴とする、白濁を防止又は抑制する作用を該CLケア用組成物に付与する方法をも提供する。更に、本発明は、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、並びに(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有するCLケア用組成物に、(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を配合することを特徴とする、白濁を防止又は抑制する作用を該CLケア用組成物に付与する方法をも提供する。
これらの方法において、使用する(A)〜(D)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、組成物の製剤形態、適用対象となるコンタクトレンズの種類等については、前記「1.コンタクトレンズケア用組成物」と同様である。
4.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化抑制方法;CLケア用組成物にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を抑制する作用を付与する方法 前述するように、上記(A)〜(C)成分と共に、特定の含有割合の(D)成分を一体として含有することによって、(B)成分が経時的に低分子化するのを抑制することができる。
従って、本発明は、更に別の観点から、CL用組成物において、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を併用することを特徴とする、該コンタクトレンズケア用組成物におけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を抑制する方法を提供する。また、本発明は、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を配合することを特徴とする、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法をも提供する。
これらの方法において、使用する(A)〜(D)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、組成物の製剤形態、適用対象となるコンタクトレンズの種類等については、前記「1.コンタクトレンズケア用組成物」と同様である。
5.乾燥によるコンタクトレンズの硬度の上昇の抑制方法;CLケア用組成物に乾燥によるコンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を付与する方法 前述するように、上記(A)〜(C)成分と共に、特定の含有割合の(D)成分を一体として含有するCLケア用組成物でコンタクトレンズを処理することによって、乾燥によるコンタクトレンズの硬度の上昇を抑制でき、乾燥した雰囲気に晒されてもコンタクトレンズの柔軟性を保持させることが可能になる。
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を含有するコンタクトレンズケア用組成物を用いて、コンタクトレンズを処理することを特徴とする、乾燥によるコンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する方法を提供する。また、本発明は、CLケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04〜0.2w/v%を配合することを特徴とする、乾燥によるコンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該CLケア用組成物に付与する方法をも提供する。
これらの方法において、使用する(A)〜(D)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、組成物の製剤形態、適用対象となるコンタクトレンズの種類、CLケア用組成物でコンタクトレンズを処理する方法等については、前記「1.コンタクトレンズケア用組成物」と同様である。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1:保存後の殺菌力、外観性状等の評価 表1に示す組成のCLケア用組成物を調製し、下記の方法に従って、保存後の殺菌力、製剤の性状外観、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの安定性を評価した。
1.保存後の殺菌力の測定方法 各CLケア用組成物をPET製容器(PET含有量90%以上、容量100mL)に100mLずつ充填し、キャップを施した上で60℃にて1ヶ月間保存した。これら60℃1ヶ月保存後及び保存前(調製直後)のCLケア用組成物を用いて、ISO14729の試験方法に従い、殺菌力試験を実施した。具体的にはISO14729で定められる細菌3菌種に1菌種を加えた4菌種(Staphylococcus aureus ATCC 6538、Pseudomonasaeruginosa ATCC9027、 Serratia marcescens ATCC13880、Escherichia coli ATCC 8739)及び真菌2菌種(Candidaalbicans ATCC10231, Fusarium solani ATCC36031)を用いて実施した。具体的には、細菌をトリプトソイ寒天(TSA)培地で、真菌をサブロー・デキストロース寒天(SDA)培地で混釈し、寒天が固化した後、細菌は32.5℃で48時間、真菌は22.5℃で72時間培養して発育する集落を計数した。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩液(CaCl2,MgCl2不含有,DPBS)または0.05重量%Tween80を含むダルベッコのリン酸緩衝生理食塩液(CaCl2,MgCl2不含有,DPBST)に浮遊させて、約1×107コロニー形成単位(CFU)/mLの生菌を含む菌浮遊液を調製した。この菌浮遊液に対して、各CLケア用組成物を適量添加して、初期濃度が表2の濃度となるように調整した後に23±1℃で保存した。
各CLケア用組成物について、保存4時間後の1mL当たりの生菌数を測定した。測定した生菌数から下記の判定基準に従って、各菌に対する殺菌力を評価した。<判定基準>細菌に対する殺菌力の判定基準○:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が全ての菌種で4log以上である△:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が3log以上4log未満の菌種が1以上ある×:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が3log未満の菌種が1以上ある−:評価せず真菌に対する殺菌力の判定基準◎:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が全ての菌種で3log以上である○:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が2log以上3log未満の菌種が1以上ある△:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が1log以上2log未満の菌種が1以上ある×:保存前の菌数のlog値に対して保存後の菌数のlog値減少が1log未満の菌種が1以上ある−:評価せず
2.外観性状の測定方法 各CLケア用組成物をPET製容器(PET含有量90%以上、容量100mL)に100mLずつ充填し、60℃で2週間及び40℃で1.5ヶ月間、遮光条件下で保存した。保存後、製剤の白濁の有無について黒色背景を用いて肉眼で観察した。
3.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの安定性測定方法 CLケア用組成物(実施例2−3及び比較例4−5)をPET製容器(PET含有量90%以上、容量100mL)に100mLずつ充填し、60℃で2週間、遮光条件下で保存した。保存後、高速液体クロマトグラフィーを用いて、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのクロマトグラムを得、保存前のクロマトグラムと比較し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの分子量分布の変化を評価した。
3.結果 殺菌力及び外観性状の測定結果を表3に示す。
性状外観については、実施例1〜3及び比較例1〜6のいずれのCLケア用組成物でも、調製直後は澄明で外観性状に問題はなかったが、保存後では、比較例4及び5のCLケア用組成物において、明らかな白濁が認められた。これに対して、実施例1〜3のCLケア用組成物では、保存後でも白濁を生じることなく、澄明な外観性状を維持できていた。なお、いずれのCLケア用組成物でも、60℃2週間保存後の外観性状は、40℃1.5ヶ月間保存後の場合と同じ結果であった。即ち、この試験結果からは、エデト酸2ナトリウムの濃度が0.02w/v%以下の場合には、たとえポリヘキサニド塩酸塩、ポロクサマー407、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを組み合わせて含有しても、白濁を防止できないことが確認された。
殺菌力については、実施例1〜3及び比較例1〜6のいずれのCLケア用組成物でも、調製直後には判定結果が×となるものが無かったにも拘らず、60℃1ヶ月保存後には、比較例1〜3及び6のCLケア用組成物において、殺菌力が大きく低下し、判定結果が×になっており、保存により殺菌作用の低下を招いていた。尚、ISO14729の規定によれば、上記判定基準において、判定結果が「×」のものは、規格に適合していないとされており、比較例1〜3及び6のCLケア用組成物は、実用に供することができないものである。これに対して、実施例1〜3のCLケア用組成物では、保存後でも優れた殺菌力を保持できていた。尚、比較例4、5については、保存後に白濁が生じていたことから、保存後の殺菌力を評価するまでもなかった。
以上の結果から明らかなように、比較例1〜7のCLケア用組成物には、保存後の殺菌力の維持と白濁の抑制された優れた外観性状を兼ね備えるものは無かったが、実施例1〜3のCLケア用組成物のいずれでも、保存後に殺菌力が安定に保持されており、更に保存によって白濁が生じることなく澄明な外観性状を維持できていた。
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの保存後のクロマトグラムを確認した結果、比較例4及び5のCLケア用組成物では明らかにポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化が進んでいたのに対し、実施例2及び3のCLケア用組成物の処方では、殆ど低分子化していなかった。
従って、本試験結果から、ポリヘキサニド塩酸塩、ポロクサマー407、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エデト酸2ナトリウム0.04〜0.2 w/v%を一体として含有することによって、保存後でも、ポリヘキサニド及び/又はその塩による殺菌作用を安定に保持し、且つ澄明な優れた外観性状を維持できることが明らかとなった。
試験例2:使用感の評価 表4に示す実施例2及び比較例7のCLケア用組成物(製造直後)を用いて、使用感を評価するために、こすり洗いのし易さ及び装着感に関する試験を5名のパネラーにて実施した。具体的には、コンタクトレンズに各CLケア用組成物2滴を滴下し、指の腹で両面各々20回〜30回のこすり洗いを行い、軽く1〜3mLの各CLケア用組成物でコンタクトレンズをすすいだ後に、コンタクトレンズを目に装着した。その際のこすり洗いのし易さ、及び装着感について、VAS法(visual analogue scale法)で評価した。
VAS法の評価軸は、「こすり洗いのし易さ」については、10cmのスケール上の左端に「予想される中で最もこすり洗いし難い状態」を0点(0cm)、「予想される中で最もこすり洗いし易い状態」を10点(10cm)とした。その上で、各試験液について相当すると思われる「こすり洗いのし易さ」の点をスケール上に自由に記す方法で評価した。同様に、「装着感」については、10cmのスケール上の左端に「予想される中で最も装着感が悪い状態」を0点(0cm)、「予想される中で最も装着感が良い状態」を10点(10cm)とした。その上で、各試験液について相当すると思われる「装着感」の点をスケール上に自由に記す方法で評価した。
結果を表4に併せて示す。この結果から、実施例2のCLケア用組成物は、こすり洗いのし易さ、及び装着感が共に顕著に優れており、使用感が極めて良好であることが明らかとなった。尚、実施例2のCLケア用組成物をPET容器に充填し、40℃1.5ヶ月保存した後に同様の試験を実施したところ、こすり洗いのし易さ及び装着感共に、製造直後の場合と同様の良好な結果であった。
試験例3:乾燥によるコンタクトレンズの硬度変化の評価 表1に示す実施例2及び3のCLケア用組成物(製造直後)を用いて、乾燥によるコンタクトレンズの硬度変化を評価するために、以下の試験を実施した。具体的には、コンタクトレンズ(グループIV 含水率58%、素材:EtafilconA)を、生理食塩液、実施例2又は3のCLケア用組成物に15時間浸漬した。その後、コンタクトレンズを取り出し、余分な水分を拭き取った後に、30分間室温で放置した。次いで、コンタクトレンズの硬度を、Bubble TesterT-1T(TECHNO HASHIMOTO Co., Ltd製)を用いて下記の条件にて測定した。<硬度の測定条件>・サイクル試験(サイクル回数1)・往復幅:10mm・移動速度:10mm/s・加速速度:0.1G・開始位置:190mm。
測定した各コンタクトレンズの硬度を元に、生理食塩液で処理した場合の硬度を100とした場合の、各CLケア用組成物で処理した場合の硬度の比率(硬度比:%)を算出した。なお、硬度が小さいほどコンタクトレンズが柔らかさを保っていると考えられる。
結果を表5に示す。この結果から、実施例2及び3のCLケア用組成物に浸漬処理したコンタクトレンズは、乾燥条件下に置いて柔らかさが保持できていることが確認された。尚、実施例2のCLケア用組成物をPET容器に充填し、40℃1.5ヶ月保存した後に同様の試験を実施したところ、製造直後の場合と同様の良好な結果であった。
製剤例 表6〜9に記載の処方で、コンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤(マルチパーパスソリューション)(実施例4−31)を調製した。
実施例4−17のコンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤を調製直後にPET製容器(PET含有量90%以上、容量500mL)に500mLずつ充填し、キャップを施した上で60℃にて2週間保存した。保存後に、上記試験例1及び2と同条件で、殺菌力、外観性状、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの安定性、使用感について評価を行った。また、調製直後に上記試験例3と同条件で、乾燥によるコンタクトレンズの変化について評価を行った。この結果、実施例4−17のコンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存剤のいずれでも、殺菌力、外観性状、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化の抑制効果、使用感、及び乾燥によるコンタクトレンズの変化の抑制効果は、良好であった。