JP2021121677A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の課題は、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)の引きちぎり性を維持しながら、耐ストレスクラッキング性(ESCR)に優れる組成物を提供することにある。
[1]高圧法低密度ポリエチレン(A)70〜99質量部と、下記要件(B−1)〜(B−3)を満たす重合体(B)1〜30質量部(ただし、前記(A)および(B)の合計を100質量部とする)とを含む、組成物(X)。
(B−1)1−ブテンから導かれる構成単位(U1)と、エチレンから導かれる構成単位(U2)と、プロピレンから導かれる構成単位(U3)との含有量の合計Tを100モル%としたときに、前記U1の含有量が5〜100モル%である。
(B−2)前記U2の含有量が全構成単位量の40モル%以下である。
(B−3)動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度(Tg)が、
−15℃以下である。
[組成物(X)]
本発明の組成物(X)は、高圧法低密度ポリエチレン(A)70〜99質量部と、後述する要件(B−1)〜(B−3)を満たす重合体(B)1〜30質量部とを含む。ただし、前記(A)および(B)の合計を100質量部とする。以下、前記(A)および(B)をそれぞれ「成分(A)」および「成分(B)」ともいう。
高圧法低密度ポリエチレン(A)としては公知のものを制約なく用いることができる。高圧法低密度ポリエチレンとは、一般にエチレンを高温高圧下においてラジカル重合することによって得られるポリエチレンであり、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば500〜2000気圧、150〜300℃の条件下でラジカル重合させるラジカル重合法等が挙げられ、ここで重合開始剤としては、例えば有機過酸化物が挙げられる。
成分(A)は、ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1〜20g/10分である。
重合体(B)が満たす要件(B−1)〜(B−3)について説明する。また、重合体(B)は後述する要件(B−4)および/または(B−5)を満たすことが好ましく、これらについても説明する。
成分(B)は、1−ブテンから導かれる構成単位(U1)と、エチレンから導かれる構成単位(U2)と、プロピレンから導かれる構成単位(U3)との含有量の合計Tを100モル%としたときに、前記U1の含有量が5〜100モル%である。
成分(B)は、前記U2の含有量が全構成単位量の40モル%以下であり、好ましくは30モル%以下である。このような態様であれば、得られる組成物(X)の引きちぎり性とESCRが優れる。これは、高圧法低密度ポリエチレン(A)と重合体(B)との相溶化が抑制され、後述するように、組成物(X)において重合体(B)が島相となる海島構造が形成されやすくなるためと考えられる。
成分(B)は、動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度(Tg)が−15℃以下であり、好ましくは−18℃以下、より好ましくは−20℃以下である。下限については特に制約はないが、通常は−80℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲にあることによって、亀裂伝搬を防止する特性に優れた組成物(X)を得ることができ、それは分子鎖の運動性の高さに起因した応力吸収による効果と考えられる。
成分(B)は、ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にある。このような態様であれば、成分(B)は耐環境応力亀裂性を示すに十分な分子量を有すると考えられる。メルトフローレート(MFR)は、成分(B)の製造時に重合系に水素を存在させ、その濃度を調整することや、重合温度の調節などによって調整可能である。
成分(B)は、ASTM D1505に準拠して測定した密度が830〜940kg/m3の範囲にあることが好ましく、より好ましくは840〜920kg/m3、さらに好ましくは850〜910kg/m3である。
重合体(B)の製造方法は、下記オレフィン重合用触媒の存在下、1−ブテンを単独重合する、または、1−ブテンと、エチレンおよびプロピレンから選ばれる少なくとも1種とを共重合する工程を有する。上述した要件が満たされる限り、その他のモノマーをさらに共重合してもよい。
式(1)または(2)中のR2がtert−ブチル基の場合、R1がメチル基またはエチル基であることが好ましく、好ましくはメチル基である。この場合の式(1)中のR3、R4はメチル基またはフェニル基であり、好ましくはメチル基である。またR3、R4は互いに同一であることが好ましい。更に式(1)および(2)中のR2がtert−ブチル基、R1がメチル基の場合、R5〜R12が水素であるものでもよい。更に式(1)中のR2がtert−ブチル基、R1がエチル基の場合、R5、R7、R8、R9、R10、R12が水素であり、R6、R11がtert−ブチル基であるものが好適に使用される。
成分(b2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(b21)、前記メタロセン化合物(b1)と反応してイオン対を形成する化合物(b22)、および有機アルミニウム化合物(b23)から選ばれる少なくても1種である。
成分(b21)としては、従来公知のアルミノキサンを使用できる。
成分(b22)としては、特開平1−501950号公報や特開2004−51676号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げられる。
成分(b23)としては、例えば、Ra mAl(ORb)nHpXqで表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。前記式中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
粒子状担体(b3)としては、例えば、無機または有機の化合物であって、粒子状の固体が挙げられる。無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物が挙げられる。有機化合物としては、例えば、粒子状のα−オレフィン重合体が挙げられる。
上記重合は、塊状重合、懸濁重合、溶解重合等の液相重合法または気相重合法のいずれでも実施できる。液相重合法では、不活性炭化水素溶媒を用いてもよく、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの2種以上の混合物が挙げられる。また1−ブテンを含むオレフィン類自身を溶媒とする塊状重合を実施することもできる。
重合に際して生成する重合体(B)の分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加することができ、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
他の重合体(C)としては、高圧法低密度ポリエチレン(A)および重合体(B)とは異なる熱可塑性樹脂を広く用いることができる。他の重合体(C)の含有量は、組成物(X)の総質量中、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。他の重合体(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性ポリオレフィン系樹脂:例えば、低密度、中密度、高密度ポリエチレン等のポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン(A)を除く)、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(これらにおいて重合体(B)を除く)、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン、およびこれらのオレフィン系樹脂を変性した変性ポリオレフィン樹脂、
熱可塑性ポリアミド系樹脂:例えば、脂肪族ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、
熱可塑性ポリエステル系樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー、
熱可塑性ビニル芳香族系樹脂:例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(例:スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、これらの水素添加物)、
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂および石油樹脂;
共重合体ゴム:例えば、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン・ジエン共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム;
等が例示される。
他の重合体(C)の一部または全部は、極性モノマーによりグラフト変性されたものであってもよい。
添加剤(D)としては、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤が挙げられる。
添加剤(D)の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、組成物(X)の総質量中、配合される添加剤それぞれについて0.001〜30質量%であることが好ましい。
本発明の組成物(X)は、上述したように引きちぎり性とESCRに優れるという特性がある。この特性が発現する理由について発明者らは次のように考えている。組成物(X)において、高圧法低密度ポリエチレン(A)が海相となり、重合体(B)が島相となる海島構造が形成されることで、引張伸びが抑制されて引きちぎり性に優れる傾向が得られ、しかも島相をなす重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が特定温度以下であることにより、島相の柔軟性が確保され、成形体に負荷される応力を効果的に緩和することによってクラックの発生を抑制しうると推測される。
本発明の組成物(X)の製造方法は特に限定されないが、例えば、高圧法低密度ポリエチレン(A)と、重合体(B)と、他の任意成分とを混合したのち、溶融混練して得られる。
本発明の組成物(X)を含む各種成形体は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができる。成形体は、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等の公知の熱成形方法により得られる。
[合成例1]プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(PBER)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、乾燥ヘキサン917mlと1−ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム1.0mmolとを常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドと、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソー・ファインケム(株)製)とを混合して、アルミニウム原子およびジルコニウム原子が、アルミニウム原子/ジルコニウム原子=300/1(モル比)の割合で含まれるトルエン溶液を調製した。次いで、当該トルエン溶液の内の、ジルコニウム原子が0.002mmol含まれる量(したがってアルミニウム原子が0.6mmol含まれる量)を採取して重合装置内に添加した。内温を65℃に保ち、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液から共重合体を析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られた共重合体は、収量は60.4gであった。上記工程をスケールアップして実施し十分な量の共重合体を得た。
実施例、参考例および比較例で用いた樹脂および下記分析値を表1に示す。表中、特に言及しない限り「−」はデータなしを意味する。
構成単位の含有量は、以下の装置および条件により、13C−NMRスペクトルより算出した。
測定装置:核磁気共鳴装置
(ブルカー・バイオスピン(株)製AVANCE III cryo-500型)
観測核:13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:5.0μ秒(45°パルス)
ポイント数:64k
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:128回
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:4/1)混合溶媒
試料濃度:60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:29.73ppm
ティーエーインスツルメント社製動的粘弾性装置RSA−IIIを用い、窒素雰囲気で−90〜200℃の温度範囲を3℃/分で昇温した。印加した歪は0.1%、周波数は1Hzとした。損失弾性率(E'')が極大値を示す温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。
密度は、ASTM D1505(密度勾配管法)に準拠して測定した。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重または230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
表2に示す組成に従って、各樹脂のペレット同士を室温にて混合(ドライブレンド)した後に、モダンマシナリー(株)製φ40mm単軸押出機を用い、シリンダー温度210℃、スクリュー回転数50rpm、混練時間2分で溶融混練し、φ4mmの丸孔ダイスから吐出された溶融ストランドを10℃に設定した水槽にて冷却固化させたのち、フリージアマクロス(株)製ストランドカッター(型式ST−SG3.0)にて切断することによりペレットを得た。得られたペレットを以下の方法で評価した。結果を表2に併せて示す。
表2に示す樹脂のペレットを以下の方法で評価した。結果を表2に併せて示す。
ペレットについて、(株)名機製作所製射出成形機(型式MEIKI M−50AII−DM、型締力50トン)を用い、シリンダー温度210℃、金型温度30℃とし、射出圧力70MPaにて厚さ3mmの試験片を得た。得られた試験片を、引張試験とショアーD硬度測定に用いた。
試験片の状態調整を23℃で3日間行い、ASTM D638に従って、(株)インテスコ製引張試験機(型式2005−5)を用い、23℃、チャック間距離64mm、試験速度50mm/分にて、引張弾性率(YM)、降伏点伸び(YEL)、降伏点強度(YS)、破断点伸び(EL)、破断点強度(TS)を測定した。なお、降伏点伸びおよび破断点伸びはチャック間伸び率として算出した。表2中、YELおよびYSの「−」は降伏点がなかったことを意味する。
試験片の状態調整を23℃で24時間行い、ASTM D2240に従って、デュロメータの加圧面を真上から一定速度で垂直に押し付け、密着直後の値を「硬さ」とした。
ペレットについて、210℃に設定した関西ロール(株)製油圧式熱プレス機を用い、予熱を5分程度し、7.5MPaで2分間加圧した後、20℃に設定した別の関西ロール(株)製油圧式熱プレス機を用い、7.5MPaで圧縮し、4分冷却して、厚さ2mmのプレスシートからなる測定用試料を作成した。
プレスシートからの打ち抜き試験片を使用し、半数破壊時間F50値を求めた。
ベントストリップ法:ASTM D1693
薬液:イゲパール CO 630
薬液濃度:10%
試験温度:50℃
ノッチ深さ:0.35mm
最大時間:600hrs
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
表2に示すように、重合体(B)を含まず、LDPEを主成分として含む比較例組成物は、ESCR値が充分ではなかった(比較例1〜4、10、11)。また、LDPEを含まず、LLDPEを主成分として含む比較例組成物は、引張伸びが大きかった(比較例5〜9、12)。これに対して、実施例組成物および参考例組成物はLDPEおよび重合体(B)を含むため、EL値が130%以下であり、またESCR値も12hrs以上という結果となり、成形体の引きちぎり性およびESCRに優れていた。
Claims (1)
- 高圧法低密度ポリエチレン(A)80〜92質量部と、
下記要件(B−1)〜(B−3)を満たす重合体(B)8〜20質量部(ただし、前記(A)および(B)の合計を100質量部とする)と
を含む、組成物(X)を含み、
食品容器、医薬品容器、化粧品容器、洗剤容器、工業薬品容器及び農薬容器からなる群より選ばれる容器である成形体。
(B−1)1−ブテンから導かれる構成単位(U1)と、エチレンから導かれる構成単位(U2)と、プロピレンから導かれる構成単位(U3)との含有量の合計Tを100モル%としたときに、前記U1の含有量が19〜50モル%である。
(B−2)前記U2の含有量が全構成単位量の40モル%以下である。
(B−3)動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度(Tg)が、
−15℃以下である。
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