JP2021100844A - サドル昇降装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サドルの高さを所定の位置で的確にロックでき、乗員の体重にも耐え得る強固で安定したサドル昇降装置を実現する。【解決手段】固定筒1にスライド自在に挿入される昇降ロッド2と、昇降ロッド2を筒軸方向上方へ付勢するストロークバネ5b,5cと、昇降ロッド2を所定高さでロックするロック機構Aと、ロック機構Aを昇降ロッド2の昇降許容状態とロック状態とに切り替えるロック切替手段Bとを備え、ロック機構Aは、筒軸方向に沿って複数の係止凹部20aを有する係止部材20と、係止凹部20aに噛み合うツメ掛け22aを有するツメ部材22とを備え、ロック切替手段Bは、乗員が操作する操作部30からの引っ張りが入力された状態でワイヤ32に引かれてツメ掛け22aを係止凹部20aから離脱させ、ツメ掛け22aを係止凹部20aに噛み合う方向へ押圧するツメ切替部材24とを備えるサドル昇降装置10とした。【選択図】図1

Description

この発明は、自転車のサドルを乗車中に昇降させるサドル昇降装置に関するものである。
一般に、自転車のサドルは、車体フレームが備える上下方向のシートチューブに、シートポストがスライド自在に挿入され、そのシートポストの上端に取り付けられている。シートポストをスライド方向に対して任意の位置でクランプによりシートチューブに締め付けて、適宜の高さに設定されるようになっている。
ところで、サドルの高さは、走行中には高めに設定しておいたほうがペダルを漕ぎやすく、停車時には低くしたほうが地面に足を着きやすくて安全である。しかし、上記のような通常のサドル昇降装置では、乗車中にサドルの高さを変更することはできない。
そこで、例えば、特許文献1,2には、乗車中にサドルを昇降させることができる装置として、サドルをばねで上昇方向へ付勢すると共に、サドルの急激な昇降をショックアブソーバや流体ばね等で抑制し、且つ、ハンドル側に設けたレバーの操作によって、サドル昇降の許容及び阻止を切り替えるものが提案されている。
サドルは、シートポスト内に挿入された昇降ロッド(ピストン)の上端に固定され、昇降ロッドは、シートポストの内側空間(シリンダ)内で上下方向へスライド可能である。シートポストの上部には下受具が、昇降ロッドの上部には上受具がそれぞれ取り付けられ、下受具と上受具とがリンク機構で連結されている。リンク機構は、下受具に連結された下リンク片と上受具に連結された上リンク片とが、昇降ロッドのスライドに伴い所定範囲で開閉し、その開閉によりサドルが昇降する。また、下リンク片と上リンクとはばねにより開く方向へ付勢されているので、昇降ロッドは上方へ突出する方向に付勢されている。また、特許文献2では、この昇降ロッドの上方への付勢手段として、シートポスト内に設けた流体ばねによる弾性力を併用している。
また、リンク機構は、サドルの昇降を許容する昇降許容状態と、サドルの昇降を規制するロック状態とに切り替える昇降切替手段を備えている。その昇降切替手段は、サドルの昇降許容状態として、サドルの上昇のみを許容する上昇限定状態と、下降のみを許容する下降限定状態とに切り替えることもできるとされている。
特開2006−27497号公報 特開2009−83839号公報
上記従来のサドル昇降装置では、サドルの昇降切替手段として、ギヤとそれに噛み合う爪を備えたラチェット機構を採用している。このラチェット機構は、リンク機構の下リンク片と上リンク片との間に設けられている。
しかし、昇降切替手段は乗員の体重に耐え得る構造とする必要があるため、昇降切替手段をリンク機構内に設けるとすると、リンク機構が大型化する恐れがある。サドルの高さを所定の位置で的確にロックするためには、強固で安定した昇降切替手段が求められる。
そこで、この発明の課題は、自転車のサドルを乗車中に昇降させるサドル昇降装置に関し、サドルの高さを所定の位置で的確にロックでき、乗員の体重にも耐え得る強固で安定したサドル昇降装置を実現することである。
上記の課題を解決するために、この発明は、自転車のフレームに挿入される固定筒と、サドルが上端部に取り付けられ前記固定筒にスライド自在に挿入される昇降ロッドと、前記昇降ロッドを前記固定筒に対して筒軸方向上方へ付勢するストロークバネと、前記固定筒に対して前記昇降ロッドを所定高さでロックするロック機構と、前記ロック機構を前記昇降ロッドの昇降を許容する昇降許容状態と前記昇降ロッドの昇降を規制するロック状態とに切り替えるロック切替手段と、を備え、前記ロック機構は、前記固定筒内に設けられ筒軸方向に沿って複数の係止凹部を有する係止部材と、前記昇降ロッドに設けられ前記係止凹部に噛み合うツメ掛けを有するツメ部材と、を備え、前記ロック切替手段は、乗員が操作する操作部から引っ張りの入力を受けるワイヤと、前記引っ張りが入力された状態で前記ワイヤに引かれて前記ツメ掛けを前記係止凹部から離脱させ、前記引っ張りの入力が解除された状態で前記ツメ掛けを前記係止凹部に噛み合う方向へ押圧するツメ切替部材と、を備えるサドル昇降装置を採用した。
ここで、前記係止部材は、前記固定筒内に立ち上がる軸芯棒であり、前記係止凹部は前記軸心棒の軸回りに複数設けられ、複数の前記係止凹部にそれぞれ前記ツメ掛けが同時に噛み合っている構成を採用することができる。
また、前記ツメ切替部材は、前記ワイヤに接続されたワイヤ掛筒に設けられ、前記ワイヤ掛筒の下端は前記昇降ロッドに押しバネを介して支持され、前記ワイヤ掛筒の上端は前記昇降ロッドに戻しバネを介して支持される構成を採用することができる。
これらの各態様において、前記係止凹部は、前記ツメ掛けの上端に係止する凹部上面と、前記ツメ掛けの下端に係止する凹部下面と、前記凹部上面及び前記凹部下面とを結ぶ凹部底面と、を備え、前記凹部上面の面方向は軸直交方向又は前記凹部底面から遠ざかるにつれて下方へ向かう勾配であり、前記凹部下面の面方向は前記凹部底面から遠ざかるにつれて下方へ向かう下り勾配である構成を採用することができる。
この発明は、自転車のサドルを乗車中に昇降させるサドル昇降装置に関し、サドルの高さを所定の位置で的確にロックでき、乗員の体重にも耐え得る強固で安定したサドル昇降装置を実現することができる。
この発明の一実施形態を示すサドル昇降装置の縦断面図 図1の要部拡大図 同実施形態のサドル昇降装置の作用図 図1の上方からの要部斜視図 (a)はリンク機構の上リンク片を示す側面図、(b)はリンク機構の正面図、(c)はリンク機構の下リンク片を示す側面図 係止部材とツメ部材との係合状態を示す拡大図 (a)(b)は、同実施形態の作用を示す要部拡大縦断面図 図7の要部拡大図 ツメ切替部材を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は(a)の一部切断正面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の底面図 ツメ受部材を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は(a)の一部切断正面図、(d)は(c)の右側面図、(e)は(c)の底面図 ツメ部材を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は(b)の右側面図 操作部を示す平面図 サドル昇降装置を用いた自転車の全体図
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、市販の自転車、例えば、シティサイクルと呼ばれる一般的な自転車に装着される汎用のサドル昇降装置である。
図1から図4にサドル昇降装置10の主要部を示し、図5から図12にサドル昇降装置10の作用及び構成部品を示す、また、図13にサドル昇降装置10を搭載した自転車60を示す。自転車60は、前後の車輪56,56を結ぶフレーム59を備え、そのフレーム59は、自転車60の前後方向中央付近に上下方向に伸びる筒状のシートチューブ57を備えている。サドル昇降装置10は、そのシートチューブ57に取り付けられている。以下、各部部材の素材は、特に記載したもの以外は金属を主体とするが、強度や耐久性が確保できる限りにおいて、樹脂、繊維強化樹脂、カーボン素材等、周知の素材を採用することができる。
サドル昇降装置10の構成は、シートチューブ57の上端開口から内部に挿入される固定筒1と、サドル50が上端部に取り付けられ固定筒1にスライド自在に挿入される昇降ロッド2とを備えている。固定筒1は、自転車に通常用いられるシートポストと同じように、クランプによってシートチューブ57に締め付けて固定される。サドル50は、サドルフレーム53に取り付けられた保持具54により、昇降ロッド2の上端部に取り付けられている。また、サドルフレーム53とサドル50との間にはサドルバネ55が配置され、乗員の乗り心地を確保している。
昇降ロッド2は、ストロークバネ5b,5cによって固定筒1に対して筒軸方向上方へ付勢されている。ストロークバネ5b,5cは、固定筒1と昇降ロッド2との間に設けられたリンク機構5に設けられている。
リンク機構5の構成を説明すると、固定筒1の上部に下受具(外ツバ受)3が取り付けられ、昇降ロッド2の上部には上受具(サドル受)4がそれぞれ取り付けられ、下受具3と上受具4とが、左右一対のリンク機構5で連結されている。下受具3は、固定筒1にカシメ固定され、上受具4も昇降ロッド2にカシメ固定されている。各リンク機構5は、下リンク片6と上リンク片7とが昇降ロッド2のスライドに伴い所定範囲で開閉する構成とされている。下リンク片6と上リンク片7とは、ストロークバネ5b,5cによって開く方向に付勢されているので、その付勢力によって、昇降ロッド2が上昇すればその昇降ロッド2とともにサドル50が上昇し、付勢力に抗して乗員の体重が下向きに作用すれば昇降ロッド2とともにサドルは下降する。
下リンク片6は、図5に示すように、左右に配置された2つ部材で構成され、その先端部は、固定筒1の上部に固定された下受具3にピン6aで結合されて、下受具3と下リンク片6とはピン6aの軸回りに回動自在である。下リンク片6の根元部は、筒状を成す軸芯部材5aの軸方向両端の外周に嵌合され、その軸方向両端はネジ5eで固定されている。下リンク片6と軸芯部材5aとは、互いの嵌合部に設けた凹凸により回り止めされている。
上リンク片7は、左右の下リンク片6間に配置された1つ部材で構成され、その先端部は、昇降ロッド2の上部に固定された上受具4にピン7aで結合されて、上受具4と上リンク片7とはピン7aの軸回りに回動自在である。上リンク片7の根元部は、内ツバボスと呼ばれる筒状部材で構成され、その根元部の内ツバボスは軸芯部材5aの外周に嵌合されている。上リンク片7は、軸方向両側の下リンク片6間に挟まれて軸方向に位置決めされ、上リンク片7と軸芯部材5aとは、軸回りに回動自在である。上リンク片7の内ツバボスの外周にはヘリカルギヤが形成されている。また、そのヘリカルギヤに噛み合うウォームギヤ7bが、内ツバボスの外周側に設けられている。
軸心部材5aの外周には、図5に示すように、軸方向両側にそれぞれストロークバネ5b,5cが配置される。ストロークバネ5b,5cは、外径側に位置するストロークバネ5bと、内径側に位置するストロークバネ5cとからなり、それらの内外のストロークバネ5b,5cが、連続する1本の線材で構成されて内外の二重構造のコイルバネとなっている。内外のストロークバネ5b,5c同士は、軸方向外側の位置でコイルバネの直径方向へ延びる連結材5b´´で連結されている。
外径側に位置するストロークバネ5bは、左右のそれぞれのストロークバネ5bにおいて、コイルバネの軸方向内側の先端5b´が、上リンク片7の根元部に設けたバネ掛け穴に係止されている。また、内径側に位置するストロークバネ5cは、同じく左右のそれぞれのストロークバネ5cにおいて、コイルばねの軸方向内側の先端5c´が、軸芯部材5aに設けたバネ入り部に係止されている。すなわち、外巻きのストロークバネ5bの先端5b´は、ヘルカルギヤを備えた内ツバボスのバネ掛け穴に嵌り、内巻きのストロークバネ5cの先端5c´は、軸芯部材5aのバネ入り部に嵌っている。
図5の左側のストロークバネ5b,5cにおいて、コイルバネの巻き方は、軸方向内側の先端5b´,5c´から軸方向外側へ向かって見ると、それぞれ外径側に位置するストロークバネ5bは左巻き(反時計回りへの巻回)、内径側に位置するストロークバネ5cは右巻き(時計回りへの巻回)となっている。また、図5の右側のストロークバネ5b,5cにおいて、コイルバネの巻き方は、軸方向内側の先端5b´,5c´から軸方向外側へ向かって見ると、それぞれ外径側に位置するストロークバネ5bは右巻き(時計回りへの巻回)、内径側に位置するストロークバネ5cは左巻き(反時計回りへの巻回)となっている。すなわち、内外のストロークバネ5b,5c同士は逆向きに巻回され、左右のストロークバネ5b,5c同士は、図5(b)に示す正面視において、軸芯部材5aの軸方向中心を挟んで左右対称の巻き方となっている。
このため、ウォームギヤ7bを一方向に回転させることで、それに噛み合うヘリカルギヤを介して内ツバボスを軸回り一の方向へ回転させ、左右のストロークバネ5b,5cによる付勢力がそれぞれ高くなるように調整することができる。また、ウォームギヤ7bを他方向に回転させることで、それに噛み合うヘリカルギヤを介して内ツバボスを軸回り他の方向へ回転させ、左右のストロークバネ5b,5cによる付勢力がそれぞれ低くなるように調整することができる。
なお、下リンク片6と上リンク片7には、最大開度を規制するストッパ6c,7cがそれぞれ設けられている。また、下受具3には、サドル50が下限まで下降したとき上受具4が着座するゴム製の当り部材を設けてもよい。
このように、固定筒1と昇降ロッド2とは、リンク機構5のストロークバネ5b,5cによって、サドル50が上昇する方向へ付勢されている。なお、固定筒1に対して昇降ロッド2を上方へ付勢する手段としてのストロークバネは、この実施形態には限定されず、他にも例えば、固定筒1がシリンダとなり、昇降ロッド2がピストンとなって、固定筒1及び昇降ロッド2に亘って空気やその他ガス等の気体が圧入されることで、その気体の圧縮・膨張に伴い弾性を発揮する流体ばねを構成してもよい。また、ストロークばねとして、例えば、固定筒1又は昇降ロッド2の内部に、固定筒1に対して昇降ロッド2を上方へ付勢するバネ(コイルバネ等)を配置してもよい。
このようなストロークバネ5b,5cの付勢力は、停車状態からの発進時に運転者がペダル58を漕ごうとするだけで、ペダル58への荷重分散に伴い、自らペダル58上に立ち上がろうとしなくても、サドル50を上昇させることができるようにする。例えば、ストロークばねの付勢力として、サドル50の下降状態において、運転者の体重よりもやや小さい300〜400N程度に設定しておくとよい。
また、このサドル昇降装置10では、固定筒1に対して昇降ロッド2を所定高さでロックするロック機構Aが備えられている。さらに、そのロック機構Aを、昇降ロッド2の昇降を許容する昇降許容状態と、昇降ロッド2の昇降を規制するロック状態とに切り替えるロック切替手段Bが備えられている。
ロック機構Aは、固定筒1に対して昇降ロッド2を所定高さでロックすることができる。また、ロック機構Aは、固定筒1に対する昇降ロッド2の昇降を許容する昇降許容状態と、昇降ロッド2の昇降を規制するロック状態とに切り替えることができるものである。ロック機構Aは、固定筒1内に設けられ筒軸方向に沿って複数の係止凹部20aを有する係止部材20と、昇降ロッド2に設けられ係止凹部20aに噛み合うツメ掛け22aを有するツメ部材22とを備えている。
また、ロック切替手段Bは、乗員が操作する操作部30から引っ張りの入力を受けるワイヤ32と、引っ張りが入力された状態でワイヤ32に引かれてツメ掛け22aを係止凹部20aから離脱させ、引っ張りの入力が解除された状態で押しバネ13の付勢力によりツメ掛け22aを係止凹部20aに噛み合う方向へ押圧するツメ切替部材24とを備えている。
係止部材20は、固定筒1内に軸方向に沿って立ち上がる軸芯棒、すなわち軸状部材である。この係止部材20は、固定筒1の下部内側に固定された袋ネジ(固定回り止め)9によって、その固定筒1内に軸芯が一致した状態で固定されている。
係止凹部20aは、その係止部材20の軸方向中ほどから上部にかけて、軸方向に沿って所定の間隔をおいて複数設けられて、軸方向に沿って並列する係止凹部20a群を構成している。また、その軸方向に沿って並列する係止凹部20a群は、軸回りに沿って複数列設けられている。この実施形態では、2列の係止凹部20a群が、軸芯を挟んで反対側の位置に並列して設けられている。複数列の係止凹部20a群は、互いに軸方向同一の位置に対応する係止凹部20aが設けられており、その対応する係止凹部20a同士は、互いに大きさ及び形状、軸方向への始終端が同一となっている。なお、この実施形態では、係止部材20の軸心を挟んで両側にそれぞれ1列の係止凹部20a群を備えているが、これを3列以上とすることもできるし、逆に1列のみで構成することもできる。
昇降ロッド2の軸方向下方寄りの部分には、外周全周に亘るシール嵌合溝が設けられ、そのシール嵌合溝にシール16が嵌合している。昇降ロッド(ピストン)2の外径(直径)は、固定筒(シリンダ)1の内径(直径)よりも約1ミリだけ小さくしている。これにより、仮に固定筒1の内部に油が回っても、昇降ロッド2の外側との間に隙間があるため、昇降ロッド2の外周に油が付かないようになっている。また、シール16の介在により、固定筒1と昇降ロッド2との軸方向へのスライドが案内されている。
昇降ロッド2の内側には、図1に示すように、補強筒11、ワイヤ掛筒12が設けられている。補強筒11は、昇降ロッド2を構成する筒状部材のすぐ内側に配置され、上受具4を介して補強筒11と昇降ロッド2とは一体に動くように固定されている。ワイヤ掛筒12は、補強筒11のすぐ内側に配置され、補強筒11に対して筒軸方向へスライド自在である。
ワイヤ掛筒12の上部には、ワイヤ係止具(シリンダ回り止め)15が嵌合固定されている。このワイヤ係止具15に、ハンドル51に取り付けられた操作部(手元切替装置)30から引き出されたワイヤ32が接続されている(図12及び図13参照)。乗員が操作部30の上昇レバー31aを指で引けば、ワイヤ32は上昇レバー31aから引っ張りの入力を受けて、ワイヤ32はワイヤ掛筒12を上方へ引き上げる。また、乗員が操作部30の下降レバー31bを指で引けば、ワイヤ32への引っ張りの入力は解除された状態となるので、ワイヤ掛筒12は、その上部に配置した戻しバネ14の弾性力によって、下方へ降下する。この実施形態では、戻しバネ14としてコイルバネを採用している。
ワイヤ掛筒12の下部には、軸方向上方から下方に向かって、ツメ切替部材24、ツメ部材22、ツメ受部材21が配置されている。また、ツメ切替部材24と補強筒11の下端との間には、押しバネ13が配置されている。この実施形態では、押しバネ13としてコイルバネを採用している。ワイヤ掛筒12が上方へ引き上げられた際、ツメ切替部材24がワイヤ掛筒12とともに上昇するが、その上昇は、押しバネ13の弾性力に抗して行うこととなる。なお、ツメ受部材21は、ワイヤ掛筒12の下端にネジ込まれたナット25によって昇降ロッド2からの脱落が防止され、ツメ部材22は、そのツメ受部材21に係止されている。
ロック機構Aの構成は、前述のように、固定筒1内に設けられる係止部材(軸芯棒)20と、前述のツメ部材22とを備えている。係止部材20は、筒軸方向に沿って複数の係止凹部20aを有している。この実施形態では、係止部材20は、固定筒1内に固定筒1と同軸で立ち上がる軸芯棒を採用している。
ツメ部材22は、図11に示すように、円柱状の支持部22cと、その支持部22cの柱軸方向中ほどから上方へ延びるアーム部22dと、アーム部22dの上端に設けられるツメ掛け22aとツメ耳22bとを備えている。アーム部22dが支持部22cの柱軸回りに回動することで、ツメ掛け22aは係止部材20の係止凹部20aに噛み合う状態(噛合状態)と、その噛み合いから離脱した状態(離脱状態)とに切り替わる。
ツメ部材22は、図10に示すツメ受部材21に支持されている。ツメ受部材21は、昇降ロッド2の内部に収容され、その外周に設けた凸状の回り止め21gが、昇降ロッド2の内面に設けた凹状の凹み部(図示せず)に入り込んで、ツメ受部材21と昇降ロッド2とが軸心周りに回り止めされている。ツメ受部材21の回り止め21gは、図10に示すように、その外周に沿って複数箇所(実施形態では4箇所)に設けられている。また、ツメ受部材21は、その側面中央において、軸心を挟む対の横方向溝からなるツメ軸入部21fを備えている。このツメ軸入部21fにツメ部材22の円柱状の支持部22cが入り込んで支持されている。
ツメ受部材21の中心部には、断面四角形の穴からなる軸芯入部21bが設けられている。軸芯入部21bは、上部21aから下部21cへ上下方向に貫通している。この軸芯入部21bに、係止部材20を構成する軸芯棒が入り込む。断面が四角形の係止部材20が断面四角形の軸芯入部21bにぴったりと嵌り、両者が軸回りに回り止めされている。なお、図10中の符号21dは上部21aと下部21cとを結ぶツメ軸21dであり、符号21eは、ツメ部材22のアーム部22dが入り込むスリット部21eである。
ツメ切替部材24は、本体部24aの上部中心部に断面円形の軸芯入部(ワイヤ掛パイプ穴)24bがあり、この軸芯入部24bにワイヤ掛筒12の下端が嵌合固定されている。ツメ切替部材24の下部側面にはツメ開部(ツメ解除部)24dがあり、上部外周から下方向に向かってツメ押部(ツメ押さえ)24cが伸びている。本体部24aの下部中心部は断面四角形の穴となっており、この穴に係止部材20を構成する軸芯棒が入り込むことで回り止めされている。なお、図9中の符号24eは溝24eであり、符号24fは本体部24aの裾部24fである。ツメ切替部材24は、これらの各部部材が樹脂や金属等によって一体成型されている。
ワイヤ32に引かれて、ワイヤ掛筒12とともにツメ切替部材24が上昇すると(例えば上側に6ミリ程度押し上げると)、図6〜図8に示すように、ツメ開部24dがツメ耳22bに当接し、そのツメ耳22bを外側に押圧する。これにより、アーム部22dとともにツメ掛け22aも外側へ回動して、ツメ掛け22aは係止凹部20aへの噛合状態から離脱状態へと移行する。逆に、ワイヤ掛筒12とともにツメ切替部材24が下降すると(例えば上側に6ミリ程度押し下げると)、ツメ押部24cがツメ耳22bを内側へ押圧する。これにより、アーム部22dとともにツメ掛け22aも内側へ回動して、ツメ掛け22aは係止凹部20aからの離脱状態から噛合状態へと移行する。
ここで、ワイヤ掛筒12の下端は昇降ロッド2に押しバネ13を介して支持され、ワイヤ掛筒12の上端は昇降ロッド2に戻しバネ14を介して支持されている。このため、ツメ掛け22aの係止凹部20aへの噛合状態は、押しバネ13による下向きの付勢力によってより強固に固定されている。
1つの列の係止凹部20a群と、他の列の係止凹部20a群との間において、両者の係止凹部20aの軸方向位置、大きさ、形状は共通であるので、ツメ部材22が備える2つのツメ掛け22aが、それぞれ対面する係止凹部20aに同時に噛み合っている。このため、より強固で安定したロック状態を維持できるようになっている。
また、各係止凹部20aは、図6に示す軸心を通る断面において、ツメ掛け22aの上端22fに係止する凹部上面20bと、ツメ掛け22aの下端22eに係止する凹部下面20cと、その凹部上面20b及び凹部下面20cとを結ぶ凹部底面20dとを備える断面形状となっている。また、凹部上面20bはフラット面であり、その面方向は軸直交方向となっている(図中の軸方向に対する角度b=90°)。さらに、凹部下面20cもフラット面であり、その面方向は凹部底面20dから遠ざかるにつれて下方へ向かう下り勾配となっている(図中の軸直交方向に対する角度a>0°)。
ツメ掛け22aが、係止凹部20aへの噛合状態から離脱状態へと移行する際について説明すると、ワイヤ32に引かれてツメ切替部材24が上昇すると、ツメ開部24dがツメ耳22bに当接してそのツメ耳22bを外側に押圧する。この操作の前段では、乗員の荷重(体重)によって、昇降ロッド2は、固定筒1の底部に配置されたクッションバネ8の付勢力に抗して下向きに押圧されており、これにより、補強筒11とともにツメ切替部材24も下向きに押圧されているが、乗員がやや腰を浮かせるとその荷重が緩和されて、軽やかなワイヤ32の操作でツメ切替部材24が上昇しやすくなる。乗員の荷重が最大限作用している時は、その荷重によりツメ掛け22aの下端22eと凹部下面20cとは強く噛み合った状態であるが、その荷重が緩和されることで、ツメ切替部材24が持ち上がりやすくなるので、アーム部22dとともにツメ掛け22aも外側へ回動しやすい。これにより、昇降ロッド2の昇降を許容する昇降許容状態となるので、乗員の荷重を大きく作用させて昇降ロッド2を降下させたり、あるいは、荷重を緩和した状態でストロークバネ5b,5cの付勢力により昇降ロッド2を上昇させたりすることができる。
ツメ掛け22aが、係止凹部20aからの離脱状態から噛合状態へと移行する際について説明すると、乗員の荷重を作用させて昇降ロッド2が所望の高さになった時に、押しバネ13の作用によりワイヤ掛筒12とともにツメ切替部材24を下降させると、ツメ押部24cがツメ耳22bを内側へ押圧する。このとき、乗員の荷重(体重)によって、昇降ロッド2はクッションバネ8の付勢力に抗して下向きに押圧されており、ツメ切替部材24は強い力でツメ耳22bを内側へ押圧する。これにより、アーム部22dとともにツメ掛け22aも内側へ回動して、ツメ掛け22aは係止凹部20aからの離脱状態から噛合状態へと移行する。ここで、図6に示すように、ツメ掛け22aの上端22fとそれに対向する凹部上面20bとの間には軸方向への隙間があるので、噛み込みの動作がスムーズである。また、その後、乗員の荷重が緩和されても、ツメ掛け22aの上端22fとそれに対向する凹部上面20bとが係合するので、噛合状態が維持される。なお、凹部上面20bの面方向を、凹部底面20dから遠ざかるにつれて下方へ向かう勾配としてもよい。
この実施形態では、図6に示すように、噛合状態において、アーム部22dの中心線方向に対するツメ耳22bの外面の面方向との成す角度が図中の符号dの部分であり、昇降ロッド2の軸心方向に対するツメ押部24cの内面の面方向との成す角度が図中の符号eの部分である。ここで、角度d<角度eに設定されており、ツメ耳22bの外面とツメ押部24cとが面接触し、より確実に噛合状態へ移行し、その噛合状態が保持できるようになっている。
以上のように、この実施形態では、サドル50から作用する乗員の荷重による負荷は、昇降ロッド2が固定筒1に対して上昇しようとする力と、昇降ロッド2内においてツメ部材22を係止凹部20a側へ回動させて、その噛合いによって係止部材20へ荷重を伝達させることで受けることになる。これにより、サドル50の高さを所定の位置で的確にロックでき、また、乗員の体重にも耐え得る強固で安定したサドル昇降装置を実現することができる。
さらに、係止部材20のツメ嵌り凹み面を構成する係止凹部20aの下面(下降止面)20cと上面(上昇止面)20bとの軸心方向への間隔は、噛合状態におけるツメ部材22のツメ掛け22aの軸心方向への長さ、すなわち、ツメ掛り突起長さよりも長く(例えば、1ミリ長く)設定されている。サドル50からの荷重がツメ部材22を通じて係止凹部20aの下面20cに作用している状態においてに、ツメ掛け22aの上端22fと係止凹部20aの上面20bとの間に、隙間(この例では1ミリの隙間)ができる。これにより、ツメ部材22が噛合状態から離脱状態に移行する際にツメ掛け22aが回動し、その回動に伴ってツメ掛け22aの上端22fの位置はやや上昇(この例では0.35ミリ上昇)するが、係止凹部20aの上面20bとの間にはまだ隙間(この例では0.65ミリの隙間)があるのでツメ部材22の回動を阻害しない。
また、図1及び図2に示すように、固定筒1内における昇降ロッド2の下側にクッションバネ8を自由長よりも圧縮した状態で配置する。この実施形態では、クッションバネ8は、大径の外バネ8aと小径の内バネ8bからなる2本のコイルバネで構成し、大径の外バネ8aは線径が太く、小径の内バネ8bは外バネ8aよりも線径を細くしている。クッションバネ8の上端はバネ受ワッシャ23で、クッションバネ8の下端は回り止バネ受け9で支持する。
図1に示すように、係止部材20の下端近く、具体的には、昇降ロッド2の最下降位置よりも下(例えば、最下降位置より1ミリ下)において、回り止バネ受け9から上方へ立ち上がる筒状の係止部材支持部には係止部材20の下端が嵌合して、係止部材20は回り止バネ受け9から立ち上がるように支持されている。係止部材支持部には、(例えば、最下降位置より47ミリ下に)横方向に貫通するピン穴が設けられている(図1の下部参照)。ピン穴にはピンが差し込まれ係止部材20の抜け止めとしている。また、そのピンの両端が係止部材20の外面から突出して(例えば、1ミリ突出して)、回り止バネ受け9の上限当て止めとしている。この上限当て止めによってクッションバネ8の弾性力を制限した分だけ、サドル50上に座る乗員の荷重に対してクッションの機能は効かなくなる。しかし、車輪56から突き上げるような挙動が生じる段差の衝撃を吸収する機能は発揮することができる。
なお、この実施形態では、クッションバネ8は、大径の外バネ8aと小径の内バネ8bからなる2本のコイルバネとで構成されているが、これを1本のコイルバネで構成してもよいし、コイルバネ以外の他の弾性部材としてもよい。
1 固定筒(シリンダ)
2 昇降ロッド(ピストン)
3 下受具
4 上受具
5 リンク機構
5a 軸芯部材
5b ストロークバネ(外バネ)
5c ストロークバネ(内バネ)
5d ヘリカルギヤ
6 下リンク片
6a ピン
7 上リンク片
7a ピン
7b ウォームギヤ
8 クッションバネ
8a 外バネ
8b 内バネ
9 袋ネジ(回り止バネ受け)
10 サドル昇降装置
11 補強筒
12 ワイヤ掛筒
13 押しバネ
14 戻しバネ
15 ワイヤ係止具(シリンダ回り止め)
16 シール
20 係止部材(軸芯棒)
20a 係止凹部
20b 凹部上面
20c 凹部下面
21 ツメ受部材
21a 上部
21b 軸芯入部
21c 下部
21d ツメ軸
21e スリット部
21f ツメ軸入部
21g 回り止め
22 ツメ部材
22a ツメ掛け
22b ツメ耳
22c ツメ軸
22d アーム部
23 バネ受ワッシャ
24 ツメ切替部材
24a 本体部
24b 軸芯入部
24c ツメ押部
24d ツメ開部
24e 溝
24f 裾部
25 ナット
30 操作部(手元切替装置)
31a 上昇レバー
31b 下降レバー
32 ワイヤ
33 外ケース
34 バネ受
35a 扇状部
35b レバー部
36 バネ
50 サドル
51 ハンドル
52 グリップ
53 サドルフレーム
55 サドルバネ
56 車輪
59 フレーム
60 自転車
A ロック機構
B ロック切替手段
ここで、前記係止部材は、前記固定筒内に立ち上がる軸芯棒であり、前記係止凹部は前記軸棒の軸回りに複数設けられ、複数の前記係止凹部にそれぞれ前記ツメ掛けが同時に噛み合っている構成を採用することができる。

Claims (4)

  1. 自転車のフレームに挿入される固定筒(1)と、
    サドル(50)が上端部に取り付けられ前記固定筒(1)にスライド自在に挿入される昇降ロッド(2)と、
    前記昇降ロッド(2)を前記固定筒(1)に対して筒軸方向上方へ付勢するストロークバネ(5b,5c)と、
    前記固定筒(1)に対して前記昇降ロッド(2)を所定高さでロックするロック機構(A)と、
    前記ロック機構(A)を前記昇降ロッド(2)の昇降を許容する昇降許容状態と前記昇降ロッド(2)の昇降を規制するロック状態とに切り替えるロック切替手段(B)と、
    を備え、
    前記ロック機構(A)は、前記固定筒(1)内に設けられ筒軸方向に沿って複数の係止凹部(20a)を有する係止部材(20)と、前記昇降ロッド(2)に設けられ前記係止凹部(20a)に噛み合うツメ掛け(22a)を有するツメ部材(22)と、
    を備え、
    前記ロック切替手段(B)は、乗員が操作する操作部(30)から引っ張りの入力を受けるワイヤ(32)と、前記引っ張りが入力された状態で前記ワイヤ(32)に引かれて前記ツメ掛け(22a)を前記係止凹部(20a)から離脱させ、前記引っ張りの入力が解除された状態で前記ツメ掛け(22a)を前記係止凹部(20a)に噛み合う方向へ押圧するツメ切替部材(24)と、
    を備えるサドル昇降装置。
  2. 前記係止部材(20)は、前記固定筒(1)内に立ち上がる軸芯棒であり、前記係止凹部(20a)は前記軸心棒の軸回りに複数設けられ、複数の前記係止凹部(20a)にそれぞれ前記ツメ掛け(22a)が同時に噛み合っている請求項1に記載のサドル昇降装置。
  3. 前記ツメ切替部材(24)は、前記ワイヤ(32)に接続されたワイヤ掛筒(12)に設けられ、前記ワイヤ掛筒(12)の下端は前記昇降ロッド(2)に押しバネ(13)を介して支持され、前記ワイヤ掛筒(12)の上端は前記昇降ロッド(2)に戻しバネ(14)を介して支持される請求項1又は2に記載のサドル昇降装置。
  4. 前記係止凹部(20a)は、前記ツメ掛け(22a)の上端に係止する凹部上面(20b)と、前記ツメ掛け(22a)の下端に係止する凹部下面(20c)と、前記凹部上面(20b)及び前記凹部下面(20c)とを結ぶ凹部底面(20d)と、を備え、
    前記凹部上面(20b)の面方向は軸直交方向又は前記凹部底面(20d)から遠ざかるにつれて下方へ向かう勾配であり、前記凹部下面(20c)の面方向は前記凹部底面(20d)から遠ざかるにつれて下方へ向かう下り勾配である請求項1から3のいずれか一つに記載のサドル昇降装置。
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