以下、本発明を具体化した最良の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本発明に係る実施形態の車両用シート搬送装置により搬送される車両用のシートについて説明し、次に、そのシートを搬送する車両用シート搬送装置について説明する。
<シート>
本実施形態に係る車両用のシートについて、図1から図3により説明する。図1に、シート1の斜視図を示す。本形態のシート1は、着座可能な展開状態と、展開状態から折りたたまれた格納状態との間で変形できるものである。図1には、展開状態のシート1を示している。また、図1には、前後方向を軸方向とするX軸、左右方向を軸方向とするY軸、上下方向を軸方向とするZ軸を示している。X軸について、正方向が前方であり、負方向が後方である。Y軸について、正方向が左方向であり、負方向が右方向である。Z軸について、正方向が上方であり、負方向が下方である。なお、前後左右上下の各方向は、車両基準のものであり、図2以降の図においても同様である。
シート1は、シートクッション10、シートバック20、支持ユニット30を有している。シートクッション10およびシートバック20は、骨格となるフレームの外側に発泡層および表層を設けてなるものであり、これらの下方に位置する支持ユニット30に連結されている。シートクッション10は、上面が座面11である。シートクッション10は、座面11とは反対側の下方側にて、支持ユニット30により支持されている。また、図1には、シートクッション10について、前端部15、後端部16、左端部17、右端部18を、符号を付して示している。
シートバック20は、前面21および前面21とは反対側の背面22を有しており、前面21が背もたれとなる面である。また、図1には、シートバック20について、上端部25、下端部26、左端部27、右端部28を、符号を付して示している。シートバック20は、下端部26にて、支持ユニット30により支持されている。さらに、シートバック20の上端部25にはヘッドレスト29が設けられている。ヘッドレスト29は、格納状態では、シートバック20の前面21側へと折りたたまれる。
支持ユニット30は、スライド機構40およびリクライニング機構50がベース部材60に設けられてなるものである。スライド機構40は、シートクッション10の左端部17および右端部18のそれぞれ下方を支持する左スライド機構40Lおよび右スライド機構40Rを有している。左スライド機構40Lおよび右スライド機構40Rは、シートクッション10の左端部17および右端部18の下方をそれぞれ、前後移動可能に支持している。
リクライニング機構50は、左リクライニング機構50Lおよび右リクライニング機構50Rを有している。左リクライニング機構50Lは、シートバック20の下端部26における左側に連結された左リクライニングアーム51Lを有している。右リクライニング機構50Rは、シートバック20の下端部26における右側に連結された右リクライニングアーム51Rを有している。左リクライニング機構50Lおよび右リクライニング機構50Rは、シートバック20の下端部26の左右の両端側にそれぞれ、シートバック20を前後方向へ回動可能に連結されている。ベース部材60は、シート1の土台となる部分であるとともに、シート1の車両内への固定等にも用いられるものである。
図2に、格納状態のシート1の斜視図を示す。格納状態のシート1は、展開状態からスライド機構40およびリクライニング機構50が作動したことにより、図2に示すように、シートバック20がシートクッション10の前方側へ倒伏した状態となったものである。このため、格納状態のシート1において、シートバック20は、前面21が下方に、背面22が上方に向いた状態となっている。さらに、格納状態において、シートバック20の上端部25は前方側に、下端部26は後方側に位置している。また、図2に示すように、シートバック20の下端部26には、凹部23が2か所、設けられている。
スライド機構40は、図2に示すように、左スライドカバー41Lおよび右スライドカバー41Rを有している。左スライドカバー41Lおよび右スライドカバー41Rはそれぞれ、作動時に前後に移動する左スライド機構40Lおよび右スライド機構40Rの動作部材を覆う部材である。また、ベース部材60の後方部62の左右の端部にはそれぞれ、挿通孔65L、65Rが設けられている。挿通孔65L、65Rは、車両への固定の際にボルトが挿入される貫通孔である。なお、本形態では省略しているが、ベース部材60の前端部61側等にも、車両への固定の際にボルトが挿入される貫通孔が適宜、設けられている。
図3に、格納状態のシート1の断面図を示す。図3に示すシート1は、車両90の内方のフロア91に設けられた固定位置92に固定された状態のものである。本形態の車両90は、第1列に運転席および助手席が設けられ、その後方の第2列に2列シート93が設けられ、第3列にシート1が設けられる3列構成のものである。また、シート1は、第3列に2つ、左右方向に並べて設けられるリヤ席用のものである。このため、格納状態のシート1の前方には、2列シート93が位置している。図3に示すように、シート1のベース部材60の挿通孔65Rは、車両90のフロア91に設けられためねじ穴96(床面ネジ部)と位置が合わせられており、これらには固定用の固定ボルト95が挿入されている。その他の挿通孔65L等についても同様である。これにより、シート1が車両90内方の固定位置92へと固定されている。
また、図3には、二点鎖線により、展開状態のシート1を示している。図3に示すように、シートクッション10は、格納状態では、展開状態よりも、スライド機構40の動作により、後方側へと移動した位置をとっている。これにより、格納状態のシート1では、シートクッション10の前方側に、倒伏したシートバック20が収納される空間が確保されている。格納状態のシート1において、シートクッション10の前端部15とシートバック20の下端部26との間には、おおむね前後方向の隙間Cxが形成されている。隙間Cxは、シートクッション10の前端部15およびシートバック20の下端部26に沿って、左右方向に延びている。
本形態のシート1は、図3に示すように、右スライド機構40Rの右スライドカバー41Rの内側は、閉じられておらず、開放されている。また、右スライドカバー41Rは、座面11よりも上方へと出っ張っている。このため、右スライドカバー41Rの上部を構成している右スライドカバー上面部42Rと座面11との間には、上下方向の隙間Czが形成されている。この隙間Czは、左スライド機構40Lの左スライドカバー41Lと座面11との間についても同様に形成されている。そして、本形態では、シート1を車両90の外方から内方へと搬送する際には、隙間Cxおよび隙間Czを利用してシート1を保持する。この点については後述する。
図3には、シートバック20に内蔵されたシートフレーム70の一部を示している。シートフレーム70は、図3に示すように、メインフレーム71、ヘッドレストフレーム72、ワイヤフレーム73(補強用ワイヤ部材)を有している。ヘッドレストフレーム72は、メインフレーム71に前後方向について回動可能に設けられており、メインフレーム71とヘッドレスト29とを連結している。ワイヤフレーム73は、メインフレーム71に接続されており、シートバック20の下端部26に設けられている。ワイヤフレーム73は、図2に示すようにシートバック20の下端部26に沿って左右方向に延びるように設けられ、シートバック20の下端部26を補強するものである。
また、格納状態では、ヘッドレスト29は、シートバック20の前面21側に折りたたまれており、シートバック20とフロア91との間に位置している。さらに、格納状態のシート1は、シートバック20の背面22が、シートクッション10の座面11とほぼ同じ面上に位置している。よって、車両90内における格納状態のシート1の上方には、荷物等の積載に用いることができる十分な空間が確保されている。
そして、このような本形態のシート1は、格納状態において、前後方向に長いものである。このため、図3に示すように、シート1とその前方の2列シート93との隙間は、小さくなりがちである。よって、シート1は、例えば、一般的な外側から把持する構成の把持部を用い、前後方向について把持した場合には、前方側の把持爪が2列シート93へと干渉してしまうおそれがある。また、シート1を前後方向について外側から把持した場合、前後の把持位置が遠くなり、シート1が左右方向について不安定になりがちである。また例えば、シート1を左右方向について外側から把持する場合には、左右方向について隣り合うシート1や、車両90の内側面に干渉してしまうおそれがある。
<車両用シート搬送装置>
次に、本実施形態に係る車両用シート搬送装置について、図4から図10により説明する。
図4に、車両用シート搬送装置100を示す。車両用シート搬送装置100は、平面移動部110、アーム120、シート保持機構130を備えている。平面移動部110は、車両90の上方に設けられたレールに沿って前後方向および左右方向に移動可能である。アーム120は、平面移動部110とシート保持機構130とを接続する多関節アーム部である。これにより、車両用シート搬送装置100は、シート保持機構130を上下方向、左右方向、前後方向へと移動させることができる。
シート保持機構130は、格納状態のシート1を上方から保持することができる。車両90の外方の保管位置150には、シート1が格納状態にて載置されている。車両用シート搬送装置100は、保管位置150に載置されたシート1を、シート保持機構130を保持状態とすることで保持し、保持したシート1を車両90の内方の固定位置92まで搬送する。なお、本形態の車両用シート搬送装置100は、シート1を、車両90の後方の開口部94(バックドア開口部)より車両90の内方へと挿入する。開口部94には、開口部94を塞ぐバックドアが取り付けられる。また、固定位置92は、車両90の第3列に2つ、左右方向に並べて設けられている。車両用シート搬送装置100は、固定位置92までシート1を搬送した後、シート1の保持を解除する保持解除状態をとる。これにより、車両90へとシート1を搭載する。
本形態のシート保持機構130について、図5から図10により説明する。図5および図6は、シート保持機構130の平面図である。なお、図5は、シート1の保持が解除された保持解除状態のシート保持機構130の平面図である。図6は、シート1を保持する保持状態のシート保持機構130の平面図である。
図5に示すように、シート保持機構130は、基台200、支持ユニット保持部300、シートバック保持部400、シートバック支持部500、位置決め部600を有しており、左右対称に構成されている。また、図5には、保持対象であるシート1についても示している。なお、シート保持機構130の平面図である図5および図6においては、基台200および位置決め部600を二点鎖線により示している。
基台200には、シリンダ210が装着されている。シリンダ210は、ボディおよびボディに対して可動に構成されたロッドを有し、ボディにて基台200に装着されている。また、本形態において、シリンダ210は、空気圧により直動の駆動力を発生させることができるエアシリンダであり、その駆動力の作用する方向は前後方向である。シート保持機構130の保持解除状態を示す図5において、シリンダ210は、ロッドがボディから押し出された押出端にある。シリンダ210のロッドの先端には、前後可動ブロック220が連結されている。このため、前後可動ブロック220は、シリンダ210の作動により前後方向に移動可能である。また、前後可動ブロック220の左側には、左前後移動ピン230Lにより、左リンク部材240Lが回動可能に設けられている。前後可動ブロック220の右側には、右前後移動ピン230Rにより、右リンク部材240Rが回動可能に設けられている。このため、シリンダ210が作動した際には、左前後移動ピン230Lおよび右前後移動ピン230Rについても前後方向に移動する。
支持ユニット保持部300は、支持ユニット保持部材310、可動部320、ガイドブロック360、ガイドレール350(案内部)を有している。支持ユニット保持部材310は、スライド機構40に係合可能な構成であり、左側の左支持ユニット保持部材310Lと右側の右支持ユニット保持部材310Rとで一対のものである。可動部320は、左側の左可動部320Lと右側の右可動部320Rとで一対のものである。そして、左支持ユニット保持部材310Lは左可動部320Lの後方側に、右支持ユニット保持部材310Rは右可動部320Rの後方側にそれぞれ連結されている。左支持ユニット保持部材310Lは左支持ユニット係合爪311Lを左方に、右支持ユニット保持部材310Rは右支持ユニット係合爪311Rを右方に向けた状態で設けられている。つまり、支持ユニット保持部材310は、一対の支持ユニット係合爪311(第1係合爪)をそれぞれ左右方向の外側に向けている。また、左可動部320Lの前方側には左カム溝321Lが、右可動部320Rの前方側には右カム溝321Rがそれぞれ形成されている。左カム溝321Lおよび右カム溝321Rはともに、前後方向を長手方向とするカム溝である。
ガイドブロック360およびガイドレール350は、ガイドブロック360がガイドレール350に沿って移動可能なガイドユニットである。ガイドレール350は、基台200に固定されており、左右方向に延設されている。このため、ガイドブロック360は、ガイドレール350に沿って左右方向に移動可能である。また、左側の左ガイドブロック360Lは左可動部320Lに、右側の右ガイドブロック360Rは右可動部320Rにそれぞれ連結されている。さらに、左可動部320Lには、左方左右移動ピン330Lにより、左リンク部材240Lが回動可能に設けられている。右可動部320Rには、右方左右移動ピン330Rにより、右リンク部材240Rが回動可能に設けられている。つまり、左方左右移動ピン330Lおよび右方左右移動ピン330Rはともに、左右方向に移動可能に設けられている。また、両端部がそれぞれ回動可能に固定された左リンク部材240Lおよび右リンク部材240Rは、全体として、後方側ほど広がるように傾斜した状態で保持されている。
シートバック保持部400は、シートバック保持部材410、軸受部420を有している。シートバック保持部材410は、シートバック20の下端部26に係合可能なシャフト状の構成である。本形態では、シートバック保持部材410として、左側の左シートバック保持部材410Lおよび右側の右シートバック保持部材410Rがある。軸受部420は、シートバック保持部材410を、上下方向を回転軸の方向として回動可能に支持しているものである。つまり、軸受部420に支持された部材の回転方向は、水平方向である。左シートバック保持部材410Lは左軸受部420Lにより、右シートバック保持部材410Rは右軸受部420Rにより、それぞれ支持されている。
また、左シートバック保持部材410Lには、その径方向に離れた位置に左カムフォロア440Lが、左アーム部430Lにより連結されている。このため、左カムフォロア440Lは、左シートバック保持部材410Lとともに回転可能である。また、左カムフォロア440Lは、左可動部320Lに形成された左カム溝321Lの内部に挿入されている。右シートバック保持部材410Rには、その径方向に離れた位置に右カムフォロア440Rが、右アーム部430Rにより連結されている。このため、右カムフォロア440Rは、右シートバック保持部材410Rとともに回動可能である。右カムフォロア440Rは、右可動部320Rに形成された右カム溝321Rの内部に挿入されている。
シートバック支持部500は、シートバック当接部510、作動部材520、作動支点カムフォロア530(支持部)を有している。シートバック当接部510は、シートバック20の背面22を支持可能な構成である。作動部材520は、前後方向を長手方向とし、前端部521にシートバック当接部510が連結され、後端部522が前後可動ブロック220に中央前後移動ピン540により連結されている。つまり、作動部材520の後端部522は、前後可動ブロック220を介してシリンダ210に連結されている。また、作動部材520は、前端部521と後端部522との間の箇所が、作動支点カムフォロア530により支持されている。これにより、作動部材520は、シリンダ210の作動時には、作動支点カムフォロア530を回動の支点として回動可能である。
位置決め部600は、位置決めピン610を有している。位置決めピン610は、シート1と車両90との位置合わせに用いられる構成である。位置決めピン610としては、左側の左位置決めピン610Lおよび右側の右位置決めピン610Rがある。左位置決めピン610Lは、基台200に固定された左位置決めホルダ620Lに保持されている。右位置決めピン610Rは、基台200に固定された右位置決めホルダ620Rに保持されている。左位置決めピン610Lおよび右位置決めピン610Rを、それぞれシート1のベース部材60の挿通孔65L、65Rに挿入することで、保持したシート1の車両90への位置合わせを行うことが可能である。
図6は、シート保持機構130の保持状態を示す平面図である。つまり、図6は、図5の状態からシリンダ210が作動し、ロッドがボディ内へと引き込まれた引込端にある。保持状態では、シリンダ210のロッドが引込端にあることで、保持解除状態のときよりも、前後可動ブロック220は後方側へと移動している。これに伴い、前後可動ブロック220に連結された左リンク部材240Lおよび右リンク部材240Rは、保持状態では、全体として、後方側が保持解除状態のときよりも広がっている。このため、支持ユニット保持部300においては、保持状態では、左可動部320Lと右可動部320Rとは、保持解除状態のときよりも、互いに離間した位置をとっている。よって、左可動部320Lに連結された左支持ユニット保持部材310Lと、右可動部320Rに連結された右支持ユニット保持部材310Rとについても、保持状態では、保持解除状態のときよりも、互いに離間した位置をとっている。これにより、保持状態では、支持ユニット保持部材310がスライド機構40に係合する。支持ユニット保持部材310の係合、係合解除の詳細については、後に詳述する。
また、保持状態では、保持解除状態のときよりも、左可動部320Lと右可動部320Rとが互いに離間していることで、それらのカム溝にそれぞれ挿入された左カムフォロア440Lと右カムフォロア440Rとについても互いに離間している。これにより、シートバック保持部400においては、保持状態では、保持解除状態のときよりも、平面図にて、左シートバック保持部材410Lは時計周りに、右シートバック保持部材410Rは反時計回りにそれぞれ回転移動した位置をとっている。これにより、保持状態では、シートバック保持部材410がシートバック20に係合する。シートバック保持部材410の係合、係合解除の詳細については、後に詳述する。
また、保持状態では、保持解除状態のときよりも、前後可動ブロック220が後方側に位置していることで、それに連結された作動部材520の後端部522についても同様に後方側に位置している。これにより、シートバック支持部500においては、保持状態では、保持解除状態の位置から作動部材520が作動支点カムフォロア530を支点として回転移動している。よって、作動部材520の前端部521に連結されたシートバック当接部510についても、保持状態では、保持解除状態の位置から回転移動している。これにより、保持状態では、シートバック支持部500はシートバック20を支持可能な支持状態となる。シートバック支持部500の支持状態、支持解除状態については、後に詳述する。
続いて、シート保持機構130の上下方向の構成について図7および図8により説明する。図7には、シート保持機構130の左端部付近の構成を示している。図8には、シート保持機構130の左右方向における中央付近の構成を示している。まず、図7により、シート保持機構130の左端部付近の構成について説明する。図7には、シート保持機構130の左側付近に位置する支持ユニット保持部300、シートバック保持部400、位置決め部600の構成を示している。なお、図7には、シート保持機構130の保持状態を示している。
図7に示すように、シート保持機構130は、車両用シート搬送装置100のアーム120の先端下方に、基台200にて連結されている。支持ユニット保持部300は、基台200の下方に設けられている。具体的に、基台200の下側には、支持ユニット保持部300の構成として、ガイドレール350、左ガイドブロック360L、左可動部320L、左支持ユニット保持部材310Lが下方に向けてこの順で配置されている。左支持ユニット保持部材310Lの左支持ユニット係合爪311Lは、前後方向および上下方向について、左スライド機構40Lの左スライドカバー41Lの左スライドカバー上面部42Lと座面11との間の隙間Czに対応した位置に設けられている。
この支持ユニット保持部300の構成は、右側についても同様である。つまり、支持ユニット保持部材310(310L、310R)の支持ユニット係合爪311(311L、311R)は、前後方向および上下方向について、スライドカバー上面部42(42L、42R)と座面11との間の隙間Czに対応した位置に設けられている。
シートバック保持部400は、基台200の左側面部における前方側に設けられている。具体的に、基台200の左側面には、シートバック保持部400の左軸受部420Lが固定されており、左軸受部420Lには、左シートバック保持部材410Lが回動可能に支持されている。左シートバック保持部材410Lは、下方に位置するシートバック係合爪部411(第2係合爪)と、シートバック係合爪部411を上下方向に支持する基軸部412とを有しており、基軸部412の上端部分が、左軸受部420Lに挿入されている。基軸部412の左軸受部420Lへの挿入部分よりも下方には、左アーム部430Lが固定されており、左アーム部430Lの先端には、左カムフォロア440Lが固定されている。左カムフォロア440Lは、左可動部320Lの左カム溝321Lへと挿入されている。また、保持状態における左シートバック保持部材410Lのシートバック係合爪部411は、シートクッション10とシートバック20との隙間Cxへとその上方より挿入されつつ、シートバック20の下端部26の下方まで延びている。
このシートバック保持部400の構成は、右側についても同様である。つまり、軸受部420(420L、420R)には、シートバック保持部材410(410L、410R)が、基軸部412にて回動可能に支持されている。基軸部412には、径方向に延設されたアーム部430(430L、430R)が連結されており、その先端は可動部320(320L、320R)へと連結されている。また、保持状態におけるシートバック保持部材410(410L、410R)のシートバック係合爪部411は、シートクッション10とシートバック20との隙間Cxへとその上方より挿入されている。加えて、保持状態におけるシートバック係合爪部411は、シートバック20の下端部26の下方まで延びている。
位置決め部600は、基台200の後方部分に設けられている。具体的に、基台200の後方部分の左側には、位置決め部600の左位置決めホルダ620Lが設けられており、左位置決めホルダ620Lには、左位置決めピン610Lが、ピン先端部611を下方に突出させた状態で保持されている。左位置決めピン610Lのピン先端部611は、シート1の車両90の固定位置92への位置合わせの際には、支持ユニット30の挿通孔65Lを通って車両90のめねじ穴96へと挿入される。
この位置決め部600の構成は、右側についても同様である。つまり、基台200の後方部分の左右にはそれぞれ左位置決めホルダ620L、右位置決めホルダ620Rが設けられている。また、左位置決めホルダ620L、右位置決めホルダ620Rにはそれぞれ、ピン先端部611を下方に突出させた状態で左位置決めピン610L、右位置決めピン610Rが保持されている。左位置決めピン610L、右位置決めピン610Rの先端部6110はそれぞれ、シート1を車両90の固定位置92へと載置する際には、支持ユニット30の挿通孔65L、65Rを通って、車両90のめねじ穴96へと挿入される。これにより、シート1と車両90との位置決めが行われる。
続いて、図8により、シート保持機構130の左右方向における中央付近の構成について説明する。図8には、シート保持機構130の左右方向における中央付近に位置するシリンダ210、シートバック支持部500の構成を示している。なお、図8には、シート保持機構130の保持状態を示している。
図8に示すように、シリンダ210は、基台200に固定されたフローティングブラケット215に固定されている。また、シートバック支持部500の作動部材520には、前後方向を長手方向とするカム溝525が形成されており、そのカム溝252に、作動支点カムフォロア530が挿入されている。作動支点カムフォロア530は、ブラケット550により、基台200に固定されている。作動支点カムフォロア530の位置は、作動部材520の後端部522の前後可動ブロック220への連結位置よりも上側にある。このため、作動部材520は、シリンダ210に連結された後端部522が前後方向へと移動された際に、実線で示す保持状態と二点鎖線で示す保持解除状態との間で、作動支点カムフォロア530を回転支点として上下方向へ回動することができる。また、保持状態では、シートバック当接部510がシートバック20の背面22に当接する。これにより、保持状態のシートバック支持部500は、シートバック20をその背面22より支持することができる支持状態となる。一方、保持解除状態では、シートバック当接部510がシートバック20の背面22から離れた位置へと移動することで、支持解除状態となる。
次に、支持ユニット保持部300の保持状態、保持解除状態について説明する。図9は、支持ユニット保持部300を後方側より見た図である。図9には、保持状態における支持ユニット保持部材310および可動部320を実線により、保持解除状態における支持ユニット保持部材310および可動部320を二点鎖線により示している。また、シート1を、支持ユニット保持部材310の位置での断面により示している。図9に示すように、左可動部320Lと右可動部320Rとは、それぞれ左支持ユニット保持部材310Lと右支持ユニット保持部材310Rとともに左右方向に移動可能であり、保持状態では、これらが互いに離間した前進端320Aに位置する。一方、これらは、保持解除状態では、保持状態のときよりも近づいた後退端320Bに位置する。
そして、左支持ユニット保持部材310Lは、前進端320Aにおいては、左支持ユニット係合爪311Lが、左スライドカバー上面部42Lと座面11との間の隙間Czより、左スライドカバー上面部42Lの下方へと挿入されている。これにより、左支持ユニット係合爪311Lは、左スライドカバー上面部42Lの左内端部43Lの下面を支持可能となる。すなわち、左可動部320Lが前進端320Aに位置する保持状態において、左支持ユニット係合爪311Lは、左スライドカバー上面部42Lの左内端部43Lに係合される。一方、左支持ユニット保持部材310Lは、左可動部320Lが後退端320Bに位置する保持解除状態においては、左スライドカバー上面部42Lよりも左右方向における内側へと位置している。これにより、左支持ユニット係合爪311Lと左内端部43Lとは、係合解除される。
右支持ユニット保持部材310Rは、前進端320Aにおいては、右支持ユニット係合爪311Rが、右スライドカバー上面部42Rと座面11との間の隙間Czより、右スライドカバー上面部42Rの下方へと挿入されている。これにより、右支持ユニット係合爪311Rは、右スライドカバー上面部42Rの右内端部43Rの下面を支持可能となる。すなわち、右可動部320Rが前進端320Aに位置する保持状態において、右支持ユニット係合爪311Rは、右スライドカバー上面部42Rの右内端部43Rに係合される。一方、右支持ユニット保持部材310Rは、右可動部320Rが後退端320Bに位置する保持解除状態においては、右スライドカバー上面部42Rよりも左右方向における内側へと位置している。これにより、右支持ユニット係合爪311Rと右内端部43Rとは、係合解除される。
このように、本形態の支持ユニット保持部300は、スライド機構40の左内端部43Lおよび右内端部43R(左右内端部)にそれぞれ係合する支持ユニット係合爪311を備えている。すなわち、支持ユニット保持部300は、支持ユニット係合爪311により、シート1の支持ユニット30を内側から保持することができる。これにより、本形態の支持ユニット保持部300は、格納状態のシート1の外縁よりも内側を保持することができ、シート1に対して小さく構成されている。
次に、シートバック保持部400の保持状態、保持解除状態について説明する。図10は、シートバック保持部400の左シートバック保持部材410Lの斜視図である。図10には、保持状態における左シートバック保持部材410Lを実線により、保持解除状態における左シートバック保持部材410Lを二点鎖線により示している。また、図10には、シート1を、左シートバック保持部材410Lの位置での断面により示している。
左シートバック保持部材410Lは、前述したように、左可動部320Lに連結されており、左可動部320Lの左右方向の移動に伴って回動する。そして、左可動部320Lが前進端320Aに位置するときには、実線で示すように、左シートバック保持部材410Lのシートバック係合爪部411が、シートバック20の方へと向いている。これにより、シートバック係合爪部411は、シートバック20の下端部26の下方を支持可能となる。すなわち、左可動部320Lが前進端320Aに位置する保持状態において、シートバック係合爪部411は、シートバック20の下端部26に係合される。
一方、左シートバック保持部材410Lは、左可動部320Lが後退端320Bに位置するときには、二点鎖線で示すように、シートバック係合爪部411が、左右に延びる隙間Cxの延伸方向に向いている。これにより、シートバック係合爪部411は、シートバック20の下端部26の下方から外れている。すなわち、左可動部320Lが後退端320Bに位置する保持解除状態において、シートバック係合爪部411とシートバック20の下端部26とは係合解除される。右シートバック保持部材410Rのシートバック20の下端部26との係合、係合解除についても、その回動の向きが反対向きであること以外、左シートバック保持部材410Lと同様である。
このように、本形態のシートバック保持部400は、シートバック20の下端部26に係合するシートバック係合爪部411を備えている。すなわち、シートバック保持部400は、シートバック係合爪部411により、格納状態のシート1の外縁よりも内側を保持することができ、シート1に対して小さく構成されている。
また、本形態において、シートバック係合爪部411が係合するシートバック20の下端部26には、ワイヤフレーム73が内蔵されている。よって、シートバック係合爪部411が係合するシートバック20の下端部26の位置は、ワイヤフレーム73によって変形しにくいものでる。よって、本形態においては、シートバック係合爪部411が係合するとき、シートバック20の下端部26の変形を抑制できる。これにより、本形態では、シートバック保持部400により、シート1を安定して保持することができる。
また、本形態において、シートバック係合爪部411が係合するシートバック20の下端部26の位置は、凹部23が形成された位置である。これにより、シートバック係合爪部411が挿入される箇所では、シートクッション10とシートバック20との隙間Cxが広く確保されている。よって、本形態では、隙間Cxへと挿入されるシートバック係合爪部411によりシートクッション10やシートバック20が損傷してしまうことが抑制されている。
<作用効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両用シート搬送装置100は、格納状態のシート1を上方から保持するシート保持機構130を備え、保持したシート1を車両90の外方の保管位置150から車両90の内方の固定位置92まで搬送する。シート1は、シートクッション10、シートバック20、支持ユニット30を備える。支持ユニット30は、シートクッション10の左端部17および右端部18をそれぞれ前後移動可能に支持するスライド機構40、シートバック20を前後方向へ回動可能とするリクライニング機構50を備える。また、シート保持機構130には、スライド機構40の左内端部43Lおよび右内端部43R(左右内端部)に係合する支持ユニット係合爪311(311L、311R)が備えられている。さらに、シート保持機構130には、シートクッション10の前端部15とシートバック20の下端部26との隙間Cxに挿入してシートバック20の下端部26に係合するシートバック係合爪部411(411L、411R)が備えられている。すなわち、本形態の車両用シート搬送装置100では、格納状態のシート1を保持するシート保持機構130の小型化が図られている。これにより、車両90の他の部品等に干渉することなく、シート1を車両90内の固定位置92まで搬送することができる。よって、コンパクトな構成でシートを保持しつつ、シートを車両内へと搬送することができる車両用シート搬送装置が実現されている。
また、シート保持機構130は、基台200、シリンダ210(駆動部)、ガイドレール350(案内部)、左右一対の可動部320(320L、320R)を備えている。シリンダ210は基台200に装着されている。ガイドレール350は、基台200に固定され左右方向に延設されている。左右一対の可動部320(320L、320R)は、ガイドブロック360(360L、360R)に固定されており、ガイドレール350に案内されてシリンダ210の動作に伴って左右方向に移動可能である。また、左右一対の各可動部320(320L、320R)には、支持ユニット保持部材310(310L、310R)が連結されている。さらに、左右一対の可動部320(320L、320R)は、各支持ユニット保持部材310(310L、310R)の支持ユニット係合爪311(311L、311R:第1係合爪)がそれぞれ左内端部43Lおよび右内端部43Rに係合する前進端320Aと、係合解除される後退端320Bとの間を移動する。これにより、シート保持機構130では、1つの駆動源により、各支持ユニット係合爪311(311L、311R)を、左内端部43Lおよび右内端部43Rにそれぞれ係合した状態、その係合が解除された状態との間で変位させることができる。すなわち、1つのシリンダ210により、支持ユニット係合爪311の係合、係合解除を行うことができる。よって、シート保持機構130の駆動源の数を少なくし、簡素化を図ることができている。
また、シートバック係合爪部411(第2係合爪)は、シートバック保持部材410(410L、410R)において、基軸部412に上下方向に支持されている。また、基台200には、基軸部412を回動可能に支持する軸受部420(420L、420R)が備えられている。さらに、基軸部412から径方向に延設されたアーム部430(430L、430R)は、軸受部420(420L、420R)を中心に水平方向へ回動可能に設けられている。加えて、アーム部430(430L、430R)は、各可動部320(320L、320R)に連結されている。そして、可動部320(320L、320R)の前進端320Aでは、シートバック係合爪部411とシートバック20の下端部26とが係合される。また、可動部320(320L、320R)の後退端320Bでは、その係合が解除される。これにより、1つのシリンダ210により、シートバック係合爪部411の係合、係合解除を行うことができる。よって、シート保持機構130の駆動源の数を少なくし、簡素化を図ることができている。
また、シート保持機構130には、シートバック20の背面22に当接するシートバック当接部510が備えられている。シート1においては、支持ユニット30の占める重量割合が高くなりがちである。このため、シート1の重心は、支持ユニット30が設けられた後方側に片寄る傾向にあり、支持ユニット30およびシートバック20の下端部を保持した構成の場合、シート1が、シートバック20が上方に起き上がるように傾いてしまうおそれがある。そこで、シートバック20の背面22をシートバック当接部510によって支持することで、シート1の重心の片寄りに起因する傾きを抑制することができる。よって、シート保持機構130により、シート1を安定して保持することができる。
また、基台200には、前端部521がシートバック当接部510に連結され、後端部522がシリンダ210に連結された作動部材520を、上下方向へ回動可能に支持する作動支点カムフォロア530(支持部)が備えられている。そして、シートバック当接部510は、シリンダ210の動作に伴って、シートバック20の背面22に当接する。これにより、1つのシリンダ210により、シートバック当接部510をシートバック20の背面に当接させることができる。よって、シート保持機構130の駆動源の数を少なくし、簡素化を図ることができている。
また、シートバック係合爪部411が係合するシートバック20の下端部26の位置に、ワイヤフレーム73(補強用ワイヤ部材)が内蔵されている。これにより、シートバック係合爪部411が係合した際におけるシートバック20の下端部26の変形を抑制することができる。よって、シート1をより安定して保持することができる。
また、シート1は、車両90の後方側の開口部94(バックドア開口部)から投入される第3列(リヤ席用)のものである。さらに、支持ユニット30のベース部材60には、車両90のフロア91のめねじ穴96(床面ネジ部)に固定する固定ボルト95の挿通孔65L、65Rが形成されている。挿通孔65L、65Rの位置は、ベース部材60の後方部62であり、車両90の開口部94寄りである。そして、シート保持機構130には、挿通孔65L、65Rとめねじ穴96とに挿入可能な位置決めピン610(610L、610R)が備えられている。このように、車両90の後方の開口部94から投入されるシート1において、挿通孔65L、65Rが開口部94よりに設けられていることで、その挿通孔65L、65Rとめねじ穴96との位置合わせを行う作業者の作業性を向上させることができる。
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、左内端部43Lおよび右内端部43Rがシートクッション10の座面11よりも上方にあり、これらの間にシートバック係合爪部411(411L、411R)が入り込むだけの十分な隙間Czが存在するものとして説明した。しかし、例えば、シートクッションが分厚く、座面が高いことにより、十分な隙間Czが存在しない場合もある。このような場合、シートクッションの座面を下方に押圧する押圧部を設けることで、十分な隙間Czを確保することとしてもよい。
図11には、座面11Aが高いシートクッション10Aの場合の変形例に係る支持ユニット保持部を示している。図11に示すように、基台200には、押圧部700L、700Rが設けられている。押圧部700L、700Rはそれぞれ、その下面710L、710Rが、シートバック係合爪部411(411L、411R)よりも下方に位置している。これにより、押圧部700L、700Rは、シートバック係合爪部411(411L、411R)の下方のシートクッション10Aを押圧することで、座面11Aを凹ませている。これにより、シートバック係合爪部411(411L、411R)が挿入できるだけの十分な隙間Czを形成している。また、このように座面11Aを押し下げることで、シートバック係合爪部411(411L、411R)と座面11Aとの干渉を抑制し、座面11Aが損傷することも抑制できる。
また例えば、上記実施形態では、支持ユニット係合爪311(311L、311R)が左内端部43Lおよび右内端部43Rに係合する具体例について説明した。しかし、支持ユニット係合爪311(311L、311R)の係合箇所は、支持ユニット30の左右内端部であればよく、左内端部43Lおよび右内端部43Rに限定されるものではない。また例えば、支持ユニット係合爪311(311L、311R)、シートバック係合爪部411(411L、411R)、シートバック当接部510等の可動部の駆動機構等は単なる一例であり、他の機構を用いることもできる。