以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1,図2,図3に示すように、本実施形態の巻線機100は、ワーク6に対してコイル形成用の線材Wを巻き付けるように構成されている。
なお、図5に示すように、本実施形態のワーク6は、外周を形成するヨーク部Yと、ヨーク部Yから半径方向内側に突出する複数の極Cと、を備えるインナーコアタイプの多極電機子である。換言すれば、ワーク6は、コイル形成用の線材Wが巻き付けられるように構成されている。
ヨーク部Yは、第1開口端6aから第2開口端6bにかけて延設された筒状の部材である。複数の極Cは、それぞれ、ヨーク部Yの筒状内面から径方向内側に突出するように構成されている。ワーク6は、複数の渡り線用突起部6cを備える。複数の渡り線用突起部6cは、ヨーク部Yの第2開口端6bに立設されている。また、ワーク6は、ワーク6の外周面において、位置決め溝6dを備える。位置決め溝6dは、ワーク6の高さ方向に平行に延びるように形成されている。ワーク6の高さ方向は、第1開口端6aから第2開口端6bに向かう方向に平行な方向である。また、ワーク6の幅方向は、ワーク6の高さ方向に垂直な方向である。ワーク6は、複数の位置決め溝6dを備えている。複数の位置決め溝6dは、それぞれ、ワーク6の外周面のうち周方向における異なる位置に形成されている。
巻線機100は、図1,図2,図3に示すように、第1ベース1、第2ベース2、割出回転用モータ4、ノズル駆動用モータ5、ワーク保持部40、ノズル回動ユニット70、を備える。ノズル回動ユニット70は、ノズル3と、ノズル保持具60(以下、ノズルブラケット60ともいう)と、ユニット本体700と、を備える。ノズル3は、コイル形成用の線材Wを保持するように構成されている。ノズル保持具60は、ノズル3を保持するように構成されている。ユニット本体700は、ノズル保持具60を回動するように構成されている。ユニット本体700は、連結板24を介してリニアブロック25に固定されている。
第1ベース1および第2ベース2は、それぞれ図示しないメインベースに固定される。第1ベース1は、割出回転用モータ4を回動不能に固定するように構成されている。割出回転用モータ4およびノズル駆動用モータ5は、駆動装置であり回転駆動機構である。
割出回転用モータ4は、ワーク6を回転させる駆動力を発生するように構成されている。割出回転用モータ4の出力軸(図示省略)は、回転する軸であるスピンドル軸33に連結されている。スピンドル軸33は、ワーク保持部40と連結されている。ワーク保持部40は、クランプ機構41および位置決め凸部43を備える。ワーク保持部40は、クランプ機構41および位置決め凸部43によりワーク6を固定するように構成されている。このため、割出回転用モータ4の回転駆動力がワーク保持部40に伝達されると、ワーク保持部40に固定されたワーク6が回転する。このようにワーク6が回転することで、ノズル保持具60に対するワーク6の相対位置が変更される。
ノズル駆動用モータ5は、ノズル保持具60を移動するための駆動力を発生するように構成されている。なお、ノズル保持具60の移動方向は、例えば、鉛直方向に平行な上下方向の直線移動などが含まれる。ノズル駆動用モータ5は、支持部材12に固定されている。
支持部材12は、左右移動部16に固定されている。左右移動部16は、リニアガイド19を備えている。リニアガイド19は、リニアレール20に沿って移動するように構成されている。リニアレール20は、前後移動枠14に固定されている。
左右移動部16は、リニアガイド19がリニアレール20に沿って移動することで、ワーク6に対する左右方向に移動するように構成されている。巻線機100は、左右移動部16を移動させるための左右移動用モータ21を備える。なお、ここでの「ワーク6に対する左右方向」は、巻線機100を正面側から見たときの左右方向である。換言すれば、「ワーク6に対する左右方向」は、図1においては、図面の奥側から手前に向かう方向、あるいは、図面の手前から奥側に向かう方向である。「ワーク6に対する左右方向」は、図2においては、図面の左右方向である。「ワーク6に対する左右方向」は、図3においては、図面の上下方向である。
左右移動用モータ21の出力する回転駆動力は、カップリング22を介してボールねじ装置22a(図3参照)により回転運動から直線運動に変換されて、左右移動部16を直線移動させるための駆動力となる。つまり、左右移動部16は、左右移動用モータ21の駆動力によりリニアレール20に沿って移動することで、左右移動部16のワーク6に対する左右方向の相対位置を変更できるように構成されている。
前後移動枠14は、リニアガイド13を備えている。リニアガイド13は、リニアレール15に沿って移動するように構成されている。リニアレール15は、第2ベース2に固定されている。リニアレール15は、リニアレール20に対して直交する方向に配置されている。換言すれば、リニアレール15は、ワーク6に対する前後方向に沿って配置されている。なお、ここでの「ワーク6に対する前後方向」は、巻線機100を正面側から見たときの前後方向である。換言すれば、「ワーク6に対する前後方向」は、図1においては、図面の左右方向である。「ワーク6に対する前後方向」は、図2においては、図面の奥側から手前に向かう方向、あるいは、図面の手前から奥側に向かう方向である。「ワーク6に対する前後方向」は、図3においては、図面の左右方向である。
前後移動枠14は、リニアガイド13がリニアレール15に沿って移動することで、ワーク6に対する前後方向に移動するように構成されている。巻線機100は、前後移動枠14を移動させるための前後移動用モータ17を備える。前後移動用モータ17の出力する回転駆動力は、カップリング18を介してボールねじ装置(図示省略)により回転運動から直線運動に変換されて、前後移動枠14を直線移動させるための駆動力となる。ボールねじ装置は、リニアレール15に平行に配置された棒状部材であり、外表面にネジ溝が形成された棒状部材である。つまり、前後移動枠14は、前後移動用モータ17の駆動力によりリニアレール15に沿って移動することで、前後移動枠14とワーク6との距離を変更できるように構成されている。
ノズル回動ユニット70は、連結板24に対してビス等で固定される。連結板24は、リニアブロック25に対してビスなどで固定される。リニアブロック25は、リニアレール23に沿って移動するように構成されている。リニアレール23は、支持部材12に固定されている。リニアレール23は、リニアレール15およびリニアレール20のそれぞれに対して直交する方向(図1では、上下方向)に配置されている。換言すれば、リニアレール23は、ワーク6に対する上下方向(図1では、上下方向)に沿って配置されている。このため、ノズル回動ユニット70は、リニアブロック25がリニアレール23に沿って移動することで、ワーク6に対する上下方向に沿って移動するように構成されている。
なお、ここでの「ワーク6に対する上下方向」は、巻線機100を正面側から見たときの上下方向である。換言すれば、「ワーク6に対する上下方向」は、図1においては、図面の上下方向である。「ワーク6に対する上下方向」は、図2においては、図面の上下方向である。「ワーク6に対する上下方向」は、図3においては、図面の奥側から手前に向かう方向、あるいは、図面の手前から奥側に向かう方向である。
ノズル駆動用モータ5は、ノズル回動ユニット70を上下移動させるための駆動力を発生するように構成されている。ノズル駆動用モータ5の出力する回転駆動力は、プーリ(図示省略)およびタイミングベルト(図示省略)を介して回転運動から直線運動に変換されて、リニアブロック25を直線移動させるための駆動力となる。つまり、リニアブロック25は、ノズル駆動用モータ5の駆動力によりリニアレール23に沿って移動することで、ワーク6に対する上下方向の相対位置を変更できるように構成されている。ノズル回動ユニット70は、連結板24を介してリニアブロック25に固定されて、ノズル駆動用モータ5の駆動力により上下移動することで、ワーク6に対する上下方向の相対位置を変更するように移動する。
図3に示すように、本実施形態では、前後方向は、ワーク6に対する前後移動枠14の移動であって、リニアレール15に沿って前後移動枠14が移動する方向と定義されている。作業者により巻線前のワーク6(図5参照)がワーク保持部40に固定された後に、ワーク6とノズル回動ユニット70(詳細には、ノズル保持具60)とを互いに近づけるように前後移動枠14が前後方向に移動することで、巻線機100によるワーク6への巻線作業が可能になる。このときの前後移動枠14およびノズル回動ユニット70の移動方向は、図3における「前移動方向」である。
また、巻線機100によるワーク6への巻線作業が完了した後に、ワーク6とノズル回動ユニット70(詳細には、ノズル保持具60)とを遠ざけるように前後移動枠14が前後方向に移動することで、ワーク保持部40からワーク6を取り外すことが可能となる。このときの前後移動枠14およびノズル回動ユニット70の移動方向は、図3における「後移動方向」である。
同様に、左右方向は、2つのワーク6が配列される方向と定義されている。換言すれば、左右方向は、2つのワーク6の中心点どうしを結ぶ線の延長方向である。ワーク6の巻線作業におけるノズル送り方向は、左右方向に対して平行である。ノズル送り方向は、ワーク6の極Cに対して線材Wを1周巻き付ける毎に、ノズル3を所定ピッチ寸法(例えば、線材Wの太さ寸法)毎に移動させるときの移動方向である。ノズル送り方向は、極の中心軸に沿った方向であり、ワーク6の半径方向となる。
ワーク保持部40は、ワーク6を配置するように構成されたワーク配置部40aを備える。ワーク配置部40aに配置されたワーク6に対して、ノズル保持具60の一部がワーク6の内部に移動することで、ワーク6の内部にノズル3を配置できる。
図3に示すように、ノズル送り方向は、前移動方向・後移動方向に対して交差する(例えば直交する)ように設定されている。このとき、ワーク供給作業・ワーク取出作業を行う作業者から見てノズル送り方向は左右方向となる。また、ノズル送り方向は、2個のワーク6の配列方向に対して平行である。ノズル送り方向がこのように設定されることで、ワーク供給作業・ワーク取出作業を行う作業者にとって、ノズル3を目視しやすくなり、ワーク6に対する巻線状態の確認が容易である。なお、「2個のワーク6の配列方向」とは、図3の平面視(ワーク6の軸線方向視)で、2個のワーク6の中心点どうしを結んだ方向(換言すれば、左右方向)である。
本実施形態の巻線機100は、2個のワーク6に対して同時に線材Wを巻き付けるように構成されている。つまり、巻線機100は、2個のノズル3を備える2連タイプ巻線機である。巻線機100は、ノズル3、割出回転用モータ4、ノズル保持具60、ノズル回動ユニット70などを2個ずつ備えている。
[1−2.ノズル回動ユニット]
次に、ノズル回動ユニット70について説明する。なお、図4に示すように、巻線機100は、2個のノズル回動ユニット70を備える。
図4〜図5に示すように、ノズル回動ユニット70は、ノズル保持具60、ノズル3、ユニット本体700、を備える。ユニット本体700は、ノズル保持具60を回動するように構成されている。ユニット本体700は、上述のように、連結板24を介してリニアブロック25に固定されている。
ユニット本体700は、回動軸71と、駆動アクチュエータ72と、連結アーム73と、を備える。回動軸71は、ノズル保持具60に連結するように構成されている。駆動アクチュエータ72は、伸縮するエアシリンダを備えて構成されている。連結アーム73は、駆動アクチュエータ72の端部72aと回動軸71とを連結する部材である。駆動アクチュエータ72は、連結アーム73を介して、回動軸71を回動するように構成されている。
ユニット本体700は、駆動アクチュエータ72が伸長状態または短縮状態に切り替わることで、回動軸71の回動位置を異なる2つの位置のいずれかに切り替えることができる。これにより、ユニット本体700は、ノズル保持具60を、巻線状態または線処理状態の2つの状態のいずれかに切り替えることができる。巻線状態は、巻線工程におけるノズル保持具60の状態である。線処理状態は、線処理工程におけるノズル保持具60の状態である。
回動軸71は、軸線方向が前後方向と平行で、かつ軸線方向が左右方向に対して直交するように、配置されている。換言すれば、回動軸71は、それぞれ、2個のワーク6の配列方向に対して直交して配置されている。ノズル回動ユニット70によるノズル3の送り方向は、2個のノズル3に対応する2個のワーク6の配列方向に対して平行に設定されている。
ノズル回動ユニット70は、ノズル保持具60の回動位置を変更することで、ノズル3とワーク6との相対位置を、次の2つの状態のいずれかに切り換えるように構成されている。2つの状態は、巻線状態および線処理状態である。
ここで、図5に示すノズル保持具60とワーク6との相対位置は、巻線状態における相対位置である。巻線状態においては、ノズル3の先端がワーク6の内周面に対向する状態となるように、ノズル保持具60の回動位置が設定される。
図示は省略するが、線処理状態におけるノズル保持具60とワーク6との相対位置は、図5に示すノズル保持具60が回動軸71を中心として反時計回りに90°回動したときの相対位置である。つまり、線処理状態においては、ワーク保持部40に保持されたワーク6の上端面にノズル3の先端が対向する状態となるように、ノズル保持具60の回動位置が設定される。
巻線状態は、ワーク6の各極Cに線材Wを巻き付けるための状態である。巻線状態において、ワーク6に対する相対的なノズル3の移動軌跡は、周方向成分と厚み方向成分とが組み合わされた形態の軌跡を有する。周方向成分は、ワーク6とノズル3との相対的な移動成分のうち、ワーク保持部40によってワーク6が周方向に回動することで変化する移動成分である。厚み方向成分は、ワーク6とノズル3との相対的な移動成分のうち、ワーク6またはノズル保持具60がワーク6の厚み方向(換言すれば、上下方向)に移動することで変化する移動成分である。
巻線状態においては、ノズル3は、ワーク6に対して周方向成分に沿って相対移動することで、巻線すべき極Cの上側または下側をワーク6の周方向に移動することができる。ノズル3は、ワーク6に対して厚み方向成分に沿って相対移動することで、巻線すべき極C及びそれに隣接する極Cの間に形成される隙間(スロット)を通り抜けるように移動することができる。周方向成分の相対移動および厚み方向成分の相対移動を適宜組み合わせて繰り返し実行することで、ノズル3が極Cの周囲を周回する動作を実行できる。これにより、ノズル3は、線材Wを極Cに対して巻き付けることができる。
線処理状態は、ワーク保持部40に保持されたワーク6の上端面に線材Wを配置するための状態である。換言すれば、線処理状態は、回動軸71の回動によって巻線状態とは異なる位置に配置されたノズル3を用いて、ワーク6のうち複数の極Cとは異なる部位に線材Wを配置する状態である。
ノズル3は、ノズル保持具60とともに回動軸71を中心として回動することで、線処理状態または巻線状態に設定される。つまり、ノズル3およびノズル保持具60は、巻線状態と線処理状態との間で状態遷移することで、ワーク6に対する姿勢が変換される。このため、ノズル3およびノズル保持具60は、巻線状態と線処理状態とでワーク6に対する姿勢が異なる。
ワーク6は、ヨーク部Yと、複数の極Cと、を備える。ヨーク部Yは、第1開口端6aから第2開口端6bにかけて延設された筒状の部材である。複数の極Cは、それぞれ、ヨーク部Yの筒状内面から径方向内側に突出するように構成されている。ワーク6は、複数の渡り線用突起部6cを備える。複数の渡り線用突起部6cは、ヨーク部Yの第2開口端6bに立設されている。
ワーク6は、第1開口端6aが下側になり、第2開口端6bが上側になる状態で、ワーク保持部40に保持される。このとき、複数の位置決め溝6dのうちいずれか1つは、位置決め凸部43と嵌め合わされる。ワーク6に線材Wが巻き付けられることで、複数の極Cのそれぞれに巻き付けられた線材Wが複数のコイルWc(図11参照)として備えられる。ワーク6は、線材Wの端部が第1開口端6aに配置され、複数のコイルWcどうしを連結する線材Wである渡り線Wt(図11参照)が第2開口端6bに配置されるように構成されている。渡り線Wtは、複数のコイルWcどうしを連結する線材Wである。
線処理状態のノズル3は、巻線状態のノズル3(図5参照)に比べて、回動軸71を中心として反時計回りに90°回動した状態となる。線処理状態において、ワーク6に対するノズル3の相対移動状態は、複数の移動状態を含む。複数の移動状態としては、例えば、掛け渡し状態や絡げ状態などが挙げられる。掛け渡し状態は、線材Wをワーク6の第2開口端6bに立設された渡り線用突起部6cに対して、線材Wを渡り線Wtとして掛け渡すように、ノズル3がワーク6に対して相対移動する状態である。絡げ状態は、本実施形態のワーク6とは異なる構成の他種ワーク(図示省略)において利用できる状態である。他種ワークは、例えば、第2開口端に立設された絡げピンを備える。絡げ状態は、線材Wを他種ワークの絡げピンに絡げるように、ノズル3が他種ワークに対して相対移動する状態である。
なお、本実施形態では、絡げピンを備えないワーク6を用いて説明するが、巻線機100は、このようなワーク6のみならず、絡げピンを備える他種ワークに対しても絡げ状態で線材Wを絡げることができる。
巻線機100は、ワーク6に対して線材Wを巻き付ける一連の動作(一連の工程)において、巻線工程と、線処理工程と、引出部形成工程と、を切り替えるように構成されている。巻線工程および引出部形成工程では、ノズル3とワーク6との相対位置が巻線状態に設定される。線処理工程では、ノズル3とワーク6との相対位置が線処理状態に設定される。巻線機100は、回動軸71の回動に伴うノズル保持具60の回動により、巻線状態と線処理状態とを切り替えるように構成されている。
巻線状態は、ノズル3及び/又はワーク6をワーク6の周方向及び厚み方向にそれぞれ移動させることにより、複数の極Cのそれぞれに対してノズル3を相対的に周回移動させることで、複数の極Cのそれぞれに線材Wを巻き付ける状態である。また、巻線状態は、ノズル3をワーク6の第1開口端6aよりも外側に移動させて、ワーク6と後述する線材支持部44とを結ぶように線材Wを配置する場合にも利用される状態でもある。線処理状態は、回動軸71の回動によって巻線状態とは異なる位置に配置されたノズル3を用いて、複数の極Cとは異なる部位に線材Wを配置する状態である。
[1−3.ノズル保持具]
次に、ノズル保持具60(ノズルブラケット60)について説明する。
図5に示すように、ノズル保持具60は、ノズル3を保持するとともに、回動軸71に連結されるように構成されている。
ノズル保持具60は、ノズル腕部601と、連結腕部603と、を備える。ノズル腕部601は、第1ノズル腕部601aと、第2ノズル腕部601bと、を備える。連結腕部603は、第1連結腕部603aと、第2連結腕部603bと、第3連結腕部603cと、を備える。
図5および図12に示すように、第1ノズル腕部601aは、ノズル固定部601a1と、滑車601a2と、2つのネジ穴601a3と、を備える。ノズル固定部601a1は、ノズル3を固定するように構成された貫通穴である。ノズル3は、長手方向における第1端から第2端にかけて貫通する挿通孔3aを備えている。滑車601a2は、ノズル3に供給される線材Wを位置決めするためのガイド部材として備えられる。2つのネジ穴601a3は、それぞれ、第1固定ネジ611と螺合するように構成されている。
図5に示すように、第2ノズル腕部601bは、第1端から第2端にかけて延びる長尺形状の部材である。第2ノズル腕部601bは、第1端で第1ノズル腕部601aと連結し、第2端で連結腕部603(詳細には、第1連結腕部603a)と連結するように構成されている。第1ノズル腕部601aおよび第2ノズル腕部601bは、2つのネジ穴601a3に螺合された2つの第1固定ネジ611(図12参照)によって互いに連結される。第2ノズル腕部601bおよび連結腕部603は、第2固定ネジ612によって互いに連結される。
つまり、ノズル腕部601は、ノズル3を保持しつつ、連結腕部603に連結するように構成されている。
次に、第1連結腕部603aは、第1端から第2端にかけて延びる長尺形状の部材である。第1連結腕部603aは、第1端でノズル腕部601(詳細には、第2ノズル腕部601b)と連結し、第2端で第2連結腕部603bと連結するように構成されている。
第2連結腕部603bは、第1端から第2端にかけて延びる長尺部と、長尺部の第2端から長尺部の長手方向に対して直交する方向に延びる接続部と、を備える。第2連結腕部603bは、長尺部の第1端で第1連結腕部603aと連結し、接続部で第3連結腕部603cと連結するように構成されている。第1連結腕部603aおよび第2連結腕部603bは、2つの第3固定ネジ613によって互いに連結される。第2連結腕部603bおよび第3連結腕部603cは、2つの第4固定ネジ614によって互いに連結される。
第3連結腕部603cは、第1端から第2端にかけて延びる長尺形状の部材である。第3連結腕部603cは、長手方向のうち第1端よりも第2端に近い領域に軸連結部603c1を備える。軸連結部603c1は、回動軸71の一部を挿通するように構成された貫通穴として備えられる。第3連結腕部603cは、第1端で第2連結腕部603bと連結し、軸連結部603c1で回動軸71と連結するように構成されている。第3連結腕部603cおよび回動軸71は、4個の第5固定ネジ615によって互いに連結される。第3連結腕部603cは、回動軸71の回動に応じて、回動軸71を中心として回動する。
このように、連結腕部603は、軸連結部603c1を備えるとともに、ノズル腕部601と連結されるように構成されている。連結腕部603は、ノズル固定部601a1と軸連結部603c1とが互いに離れた状態で、ノズル腕部601と回動軸71とを連結するように構成されている。
ノズル腕部601は、連結腕部603と連結された場合には、回動軸71の軸線方向に垂直な仮想平面に平行な方向に延設されるように構成されている。換言すれば、ノズル保持具60が回動軸71に連結された状況下では、ノズル腕部601は、前記の仮想平面に平行な方向に延設される状態で配置される。
このように構成されたノズル保持具60は、回動軸71と連結された端部を起点として第1方向D1に延設された部分(換言すれば、第3連結腕部603c)を備える。第1方向D1は、回動軸71の軸線方向に垂直な仮想平面に平行、かつノズル腕部601の延設方向に平行な方向である。ノズル保持具60は、第3連結腕部603cの端部を起点として第2方向D2に延設された部分(換言すれば、第2連結腕部603bの一部)を備える。第2方向D2は、連結腕部603のうち回動軸71の軸線に垂直、かつ第1方向D1とは平行ではない方向である。ノズル保持具60は、第2連結腕部603bの一部を起点として第3方向D3に延設された部分(換言すれば、第2連結腕部603bの他の一部および第1連結腕部603a)を備える。第3方向D3は、連結腕部603のうち回動軸71の軸線に平行な方向である。ノズル保持具60は、第1連結腕部603aを起点として第1方向D1に延設された部分(換言すれば、ノズル腕部601)を備える。図5に示すように、ノズル保持具60は、ノズル3の先端が回動軸71の延長線L1(詳細には、回動軸71の中心軸線の延長線L1)上に配置されるように、構成されている。
なお、第1方向D1および第2方向D2は、いずれも回動軸71の軸線方向に垂直な仮想平面に平行な方向である。しかし、第1方向D1および第2方向D2は、互いに平行ではなく、それぞれ異なる方向である。
ノズル保持具60は、軸連結部603c1を起点として、第1方向D1に沿って回動軸71から離れる方向に延設されて、そこから第2方向D2に延設されて、そこから回動軸71に平行な第3方向D3に延設されて、そこから第1方向D1に沿って回動軸71の延長線L1に近づく方向に延設されるように形成されている。これにより、ノズル保持具60は、回動軸71の延長線L1にノズル3の先端を配置できるように構成されている。
図12に示すように、ノズル保持具60は、滑車601a2により線材Wを位置決めして、ノズル3の挿通孔3aに線材Wを供給するように構成されている。挿通孔3aに供給された線材Wは、挿通孔3aの後端から先端に向けて挿通される。これにより、ノズル3は、ノズル3の先端(換言すれば、挿通孔3aの先端)からワーク6に対して線材Wを供給するように構成されている。
[1−4.ワーク保持部(ワーク保持治具)]
次に、ワーク保持部40について説明する。
図5〜図8に示すように、ワーク保持部40は、2個のクランプ機構41と、保持本体部42と、位置決め凸部43と、複数の線材支持部44と、複数の補助支持部46と、を備える。
図6は、図3に示すA−A断面で切断した状態のワーク保持部40を斜め上方から見たときの断面図である。図7は、図2に示すB−B断面で切断した状態のワーク保持部40を斜め上方から見たときの断面図である。図8は、図2に示すB−B断面で切断した状態のワーク保持部40の断面図である。なお、図8は、ワーク保持部40の断面図に加えて、解放操作部50の外観図を表した説明図である。
保持本体部42は、ワーク6を配置する開口端42aを有する筒状の部材である。開口端42aは、保持本体部42のうち鉛直方向の上側端部に形成されている。保持本体部42は、筒状の側面に複数の側面開口部42bを備える。保持本体部42は、内部に環状支持部42cを備える。環状支持部42cは、保持本体部42の内面に固定されている。環状支持部42cは、開口端42aから保持本体部42の内部に挿入されたワーク6を支持するように構成されている。
図5に示すように、2個のクランプ機構41は、それぞれ、保持本体部42の外周面に備えられている。クランプ機構41は、長尺形状のクランプ部材41aを備える。クランプ部材41aは、クランプ軸41bで軸支されている。クランプ部材41aは、長手方向の第1端に操作端部41cを備え、長手方向の第2端にワーク当接部41dを備える。2個のクランプ部材41aは、使用者によって2個の操作端部41cのそれぞれが保持本体部42に近づくように操作されると、2個のクランプ軸41bを中心に回動して、2個のワーク当接部41dどうしの距離が大きくなるように構成されている。このように、2個のワーク当接部41dどうしの距離が大きくなることで、保持本体部42の開口端42aにワーク6を挿入することができる。このあと、使用者による操作端部41cの操作が終了すると、2個のワーク当接部41dどうしの距離が小さくなり、2個のワーク当接部41dと環状支持部42cとの間でワーク6が保持される。保持本体部42の内側空間のうち2個のワーク当接部41dと環状支持部42cとの間の空間が、ワーク配置部40aである。
位置決め凸部43は、保持本体部42の上部に固定されている。位置決め凸部43は、保持本体部42の径方向内側に突出する凸部を備えて構成されている。位置決め凸部43の凸部は、ワーク6の位置決め溝6dに嵌め合うことができる大きさに構成されている。ワーク6がワーク配置部40aに配置される場合に、複数の位置決め溝6dのうちいずれか1つが位置決め凸部43と嵌め合わされる。これにより、ワーク保持部40とワーク6との相対的な周方向位置にズレが生じるのを抑制できる。
ワーク6は、図5に示すように、第1開口端6aが下側、第2開口端6bが上側になる状態で、開口端42aから保持本体部42に挿入されることで、ワーク保持部40のワーク配置部40aに配置される。つまり、保持本体部42は、第1開口端6aを覆い、第2開口端6bを露出する状態で、ワーク6を保持するように構成されている。
図5〜図8に示すように、複数の線材支持部44は、それぞれ、保持本体部42の下側領域において保持本体部42の周方向に分散して配置されている。本実施形態のワーク保持部40は、6個の線材支持部44を備える。
図6および図7に示すように、複数の線材支持部44の各々は、可動部44aと、固定部44bと、弾性部44cと、を備える。
可動部44aは、線材Wと当接する線材当接部44a1を備える。可動部44aは、回動軸44a2で軸支されて回動するように構成されている。可動部44aは、回動軸44a2を中心に回動することで、可動部44aの姿勢が変化するように構成されている。可動部44aは、固定部44bと当接する固定当接部44a3を備える。
図9に示すように、可動部44aは、可動部44aの姿勢が、線材当接部44a1での線材Wの支持が維持される第1姿勢と、線材当接部44a1から線材Wが解放される第2姿勢と、に変化するように構成されている。
複数の線材支持部44は、それぞれ、可動部44aが第1姿勢になることで、可動部44aの一部が、保持本体部42の筒状内面から保持本体部42の径方向内側に突出するように構成されている。複数の線材支持部44は、それぞれ、可動部44aが第1姿勢になることで、ワーク6に巻き付けられる線材Wを線材当接部44a1で支持するように構成されている。
固定部44bは、可動部44aの固定当接部44a3に当接する固定当接面44b1を備える。固定部44bは、可動部44aに当接することにより可動部44aの姿勢の変化を制限するように構成されている。固定部44bは、ワーク保持部40の上側端部から下側端部に向かう軸線方向(以下、直線移動方向DF1ともいう)に対して平行に直線移動するように構成されている。固定部44bは、可動部44aとの相対位置が変化するように直線移動することで、固定部44bの状態が第1状態と第2状態とに切り替わるように構成されている。
固定部44bの第1状態は、可動部44aの姿勢が第1姿勢に制限される状態で、固定部44bが可動部44aに当接する状態である。具体的には、固定部44bの第1状態は、固定部44bの固定当接面44b1が可動部44aの固定当接部44a3に当接する状態である。固定当接面44b1が固定当接部44a3に当接することで、固定部44bが可動部44aの姿勢変化を制限することができ、この結果、可動部44aの姿勢が第1姿勢に制限される。
固定部44bの第2状態は、可動部44aが第1姿勢と第2姿勢とに自由に姿勢を変化できるように、固定部44bが第1状態とは異なる位置に配置される状態である。具体的には、固定部44bの第2状態は、固定部44bの固定当接面44b1が可動部44aの固定当接部44a3から離れた状態である。固定当接面44b1が固定当接部44a3から離れることで、可動部44aは自由に姿勢を変化できる状態となる。この結果、可動部44aは、第1姿勢と第2姿勢とに自由に姿勢を変化できる状態となる。
弾性部44cは、固定部44bに対して可動部44aに向かう方向(換言すれば、直線移動方向DF1の上向き方向)の付勢力を加えるように構成されている。弾性部44cは、弾性部44cの長さ寸法が大きくなるように弾性変形することで、付勢力を発揮するように構成されている。弾性部44cは、例えば、スプリングで構成されている。
つまり、固定部44bが弾性部44cの付勢力により上側に移動して、固定当接面44b1が可動部44aの固定当接部44a3に当接する状態が、線材支持部44の第1状態である。固定部44bが解放操作部50からの付勢力により下側に移動して、固定当接面44b1が可動部44aの固定当接部44a3から離れた状態が、線材支持部44の第2状態である。
巻線機100は、図3,4,8に示すように、4つの解放操作部50を備えている。解放操作部50は、複数の線材支持部44の各々を第1状態から第2状態に切り替えるように構成されている。
4つの解放操作部50の各々は、複数の押下部50aを備えている。複数の押下部50aは、それぞれ、固定部44bの押下当接部44b2に対応した位置に形成されている。4つの解放操作部50がそれぞれ下側に移動することで、複数の押下部50aは、それぞれ対応する複数の押下当接部44b2に当接しつつ、対応する複数の固定部44bを下側に移動させる。これにより、複数の線材支持部44は、それぞれ、第1状態から第2状態に変化すると共に、可動部44aが第2姿勢に姿勢変化できる状態となる。このようにして、解放操作部50は、複数の線材支持部44の各々を第1状態から第2状態に切り替えるように構成されている。
なお、4つの解放操作部50がそれぞれ上側に移動することで、複数の押下部50aは、それぞれ対応する複数の押下当接部44b2から離れた状態になり、複数の固定部44bは、弾性部44cの付勢力により上側に移動する。これにより、複数の線材支持部44は、それぞれ、第2状態から第1状態に変化すると共に、可動部44aが第1姿勢に制限された状態となる。
このように、複数の線材支持部44の各々は、第1状態と第2状態とに切り替わるように構成されている。線材支持部44の第1状態は、可動部44aが第1姿勢となる状態で、固定部44bが可動部44aに当接する状態である。線材支持部44の第2状態は、可動部44aから固定部44bが離れて、可動部44aが第1姿勢から第2姿勢となるまで姿勢を変化できる状態である。
固定当接面44b1は、固定部44bの直線移動方向DF1に対して平行な面ではなく、直線移動方向DF1に対して傾斜した傾斜面として形成されている。図9では、固定当接面44b1の延長線を点線で表しており、固定当接面44b1が直線移動方向DF1に対して傾斜した傾斜面であることがわかる。詳細には、固定当接面44b1は、ワーク保持部40の上下方向において下側よりも上側になるに従い、ワーク保持部40の中心軸L2から遠ざかるような形状の傾斜面である。
このように、固定当接面44b1が傾斜面として形成されることで、固定当接面44b1が直線移動方向DF1に対する平行面である場合に比べて、第1状態において固定部44bと可動部44aとの固着が生じ難くなる。このため、固定当接面44b1が傾斜面として形成されることで、線材支持部44の状態を第1状態から第2状態に切り替えるにあたり、可動部44aから固定部44bを離す作業をスムーズに実行できる。
図6〜図8に示すように、複数の補助支持部46の各々は、保持本体部42の筒状内面から径方向内側に向かって突出するように構成されている。補助支持部46は、延設部46aと、板状部46bと、を備える。延設部46aは、保持本体部42の筒状内面から保持本体部42の径方向内側に向けて延設されている。板状部46bは、延設部46aの端部において、保持本体部42の上側に延びる板状に形成されている。
複数の補助支持部46の各々は、保持本体部42の筒状内面の周方向において、複数の線材支持部44どうしの間の領域に形成されている。換言すれば、線材支持部44および補助支持部46は、保持本体部42の周方向において、交互に配置されている。また、複数の補助支持部46の各々は、保持本体部42の筒状内面において、補助支持部46のうち線材Wと当接する部位が、線材支持部44の線材当接部44a1よりも開口端42aに近い位置となるように形成されている。詳細には、延設部46aのうち線材Wと当接する部位が、線材支持部44の線材当接部44a1よりも開口端42aに近い位置となるように形成されている。
また、図6〜図9に示すように、複数の線材支持部44のうち1つの線材支持部44は、線材絡げ部44a4と、絡げ溝部44a5と、を備える。線材絡げ部44a4は、可動部44aの端部において突出する形態で構成されている。絡げ溝部44a5は、可動部44aの端部において線材Wを配置できる大きさの溝状に形成されている。
線材絡げ部44a4および絡げ溝部44a5は、ワーク6に対して線材Wを巻き付けるにあたり、最初に、線材Wの先端を固定するために備えられている。つまり、まず、線材Wの先端を絡げ溝部44a5に配置し、その後、線材Wを線材絡げ部44a4に巻き付けることで、線材Wの端部を線材絡げ部44a4に固定することができる。なお、この作業は、巻線機100が、ノズル3とワーク保持部40(詳細には、線材絡げ部44a4)との相対位置を変更しつつ、線材絡げ部44a4に対する相対的なノズル3の移動軌跡を制御することにより実現される。線材W(後述する引出部Wp)の先端のうち、絡げ溝部44a5に配置される部分は、例えば、図11に示すように、折り曲げ部Wp1として備えられる。
巻線機100は、ワーク6に対して線材Wを巻き付けるにあたり、最初に、線材Wの先端を線材支持部44の線材絡げ部44a4に絡げて固定し、その後、巻線工程、線処理工程、引出部形成工程などを実行することで、ワーク6の必要箇所に線材Wを巻き付ける一連の工程を実施する。なお、一連の工程が実行された後、線材W(後述する引出部Wp)の終端が切断されることで、例えば、図11に示すように、終端部Wp2が形成される。
[1−5.引出部形成工程]
巻線機100は、ワーク6に対して線材Wを巻き付けるための工程として、巻線工程および線処理工程に加えて、引出部形成工程を実行するように構成されている。
引出部形成工程は、線材Wの一部である引出部Wpを形成する工程である。引出部Wpは、ワーク6の第1開口端6aから引き出された線材Wで構成されている。引出部Wpは、ワーク6の極Cに巻きつけられた線材W(コイルWc)につながっている。
巻線機100は、引出部形成工程では、ノズル保持具60を巻線状態に設定した状態で、ノズル3を所定の移動軌跡に沿って移動させることで、線材Wの引出部Wpを形成するように構成されている。具体的には、巻線機100は、巻線工程を実施してワーク6の1つの極Cに線材Wを巻き付けてコイルWcを形成した後、ノズル保持具60を巻線状態に設定した状態で引出部形成工程を実施して、引出部Wpを形成する。
巻線機100は、引出部形成工程では、図10に示すように、線材Wを、線材支持部44の線材当接部44a1、補助支持部46の延設部46aの上側、別の線材支持部44の線材当接部44a1の順に引掛けた後、線材Wを線材支持部44からワーク6の他の極Cにかけて配置するように、ノズル3の移動状態(移動軌跡)を制御する。このとき、線材支持部44に当接する線材Wは、やや窪んだ形状の線材当接部44a1に配置されることで、線材支持部44からの脱落が抑制される。また、補助支持部46の延設部46aに当接する線材Wは、板状部46bに当接することで、補助支持部46からの脱落が抑制される。
このようなワーク保持部40は、複数の線材支持部44どうしの間に線材Wを配置する際に、補助支持部46で線材Wを支持することで、線材Wの弛みが生じるのを抑制できる。これにより、巻線機100は、ワーク6に対して線材Wを配置するにあたり、ワーク6における線材Wの配置状態が不適切になることを抑制できる。
なお、引出部形成工程の実行時には、巻線機100は、線材支持部44を第1状態(図9参照)に設定する。これにより、線材支持部44は、ノズル3の移動に伴い線材Wからの外力が印加された場合でも、同じ姿勢(第1姿勢)を維持することができる。これにより、引出部形成工程の実行時に、ワーク6に巻き付けた線材Wに弛みが生じるのを抑制できる。
巻線機100は、引出部形成工程が完了した後、ワーク6の種類や構成に応じて巻線工程および線処理工程などの必要な工程を実行することで、ワーク6の必要箇所に線材Wを巻き付ける一連の工程を実施するように構成されている。これにより、ワーク保持部40に保持されたワーク6に対して、極CのコイルWc(図11参照)、渡り線用突起部6cにおける渡り線Wt(図11参照)、第1開口端6aから引き出された引出部Wp(図11参照)などが形成される。
なお、巻線機100は、ワーク6の構成に応じて、複数回にわたり引出部形成工程を実施して、複数の引出部Wpを形成できるように構成してもよい。本実施形態の巻線機100は、1つのワーク6に対して4つの引出部Wpを形成するように構成されている。
このようにして、ワーク保持部40に保持されたワーク6に対して線材Wが配置された後、巻線機100は、複数の固定部44bが下側に移動するように複数の解放操作部50を制御して、複数の線材支持部44を第2状態(図9参照)に設定する。これにより、複数の線材支持部44のうち可動部44aが姿勢を変更できるようになる。このとき、使用者によってワーク6がワーク配置部40aから持ち上げられると、引出部Wpからの外力によって可動部44aが回動して図9に示す第2状態になる。これにより、線材支持部44は、線材支持部44の線材当接部44a1から引出部Wpを解放できる状態となる。線材支持部44が第2状態に設定されると、使用者は、線材Wが巻き付けられた状態のワーク6を、巻線機100のワーク保持部40から取り外すことができる。
巻線機100から取り外されたワーク6は、例えば、図11に示すように、複数の引出部Wpが形成された状態となる。このあと、複数の引出部Wpは、例えば、それぞれ点線S1の位置で切断されると、6つの引出部Wpとなる。これにより、ワーク6は、6本の引出部Wpを備えた多極電機子(詳細には、三極電機子)として利用できる。
なお、引出部Wpの切断位置は、点線S1の位置に限られることはなく、例えば、点線S2の位置であってもよい。この場合、6つの引出部Wpは、点線S1で切断した場合に比べて、ワーク6からの突出寸法(引出寸法)が短くなる。よって、6つの引出部Wpにおける必要寸法に応じて、切断位置を変更してもよい。
[1−6.効果]
以上説明したように、巻線機100は、ワーク保持部40と、ノズル3と、を備える。
ワーク保持部40は、第2開口端6bをワーク保持部40の外部に露出した状態でワーク6を保持できるため、第2開口端6bに対して渡り線Wtを配置する作業(渡り線配置作業)を容易に実行できる。つまり、ワーク保持部40を用いる場合には、第2開口端6bが狭い空間に配置される場合に比べて、より広い空間を利用して第2開口端6bに対して渡り線配置作業を実行できる。
また、ワーク保持部40は、複数の線材支持部44を備えるため、ワーク6に対する線材Wの巻き付け作業の途中段階において、第1開口端6aから引き出される線材Wを複数の線材支持部44のうちいずれかで支持することができる。つまり、ワーク保持部40を用いることで、ワーク6の第1開口端6aから線材Wを引き出す作業を実行できる。これにより、ワーク6に対して引出部Wpを形成することができる。
よって、ワーク保持部40によれば、第1開口端6aから第2開口端6bまでの高さ寸法が大きいワーク6に対して、ワーク6の第1開口端6aから線材Wを引き出すことができるとともに、ワーク6の第2開口端6bにおいて渡り線配置作業を実行することができる。また、このワーク保持部40によれば、高さ方向に垂直な幅寸法が小さいワーク(図示省略)に対して、ワークの第1開口端から線材を引き出すことができるとともに、ワークの第2開口端において渡り線配置作業を実行することができる。
上述のように、ワーク保持部40において、複数の線材支持部44の各々は、可動部44aと、固定部44bと、を備える。
このようなワーク保持部40は、ワーク6に対する線材Wの巻き付け作業時においては、線材支持部44が第1状態となることで、第1開口端6aから引き出された線材Wを線材支持部44で支持する状態を維持できる。また、ワーク保持部40は、ワーク6に対する線材Wの巻き付け作業後においては、線材支持部44が第1状態から第2状態に状態変化することで、線材支持部44に支持されていた線材Wを線材支持部44の線材当接部44a1から解放することができ、線材Wの巻き付け作業が完了したワーク6を保持本体部42から取り外すことができる。
上述のように、ワーク保持部40においては、固定部44bは、可動部44aとの相対位置が変化するように直線移動することで、第1状態と第2状態とに切り替わるように構成されている。固定部44bのうち可動部44aと当接する固定当接面44b1は、直線移動方向DF1に対して傾斜した傾斜面として形成されている。
このように固定当接面44b1が傾斜面として形成されることで、第1状態において固定部44bと可動部44aとの固着が生じ難くなり、第1状態から第2状態に切り替えるにあたり、可動部44aから固定部44bを離す作業をスムーズに実行できる。
上述のように、ワーク保持部40は、補助支持部46を備えている。このようなワーク保持部40は、複数の線材支持部44どうしの間に線材Wを配置する際に、補助支持部46で線材Wを支持することで、線材Wの弛みが生じるのを抑制できる。これにより、ワーク6に対して線材Wを巻き付けるにあたり、線材Wの配置状態が不適切になることを抑制できる。
上述のように、ワーク保持部40においては、保持本体部42は、第1開口端6aを鉛直方向下側に配置し、第2開口端6bを鉛直方向上側に配置する状態で、ワーク6を保持するように構成されている。このワーク保持部40は、このような状態でワーク6を保持することで、第2開口端6bの周囲におけるノズル3を配置できる空間を広く確保できる。
次に、巻線機100は、ワーク保持部40を備えるため、第1開口端6aから第2開口端6bまでの高さ寸法が大きいワーク6に対して、ワーク6の第1開口端6aから線材Wを引き出すことができるとともに、ワーク6の第2開口端6bにおいて渡り線配置作業を実行することができる。また、巻線機100は、ワーク保持部40を備えるため、高さ方向に垂直な幅寸法が小さいワーク(図示省略)に対して、ワークの第1開口端から線材を引き出すことができるとともに、ワークの第2開口端において渡り線配置作業を実行することができる。
[1−7.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
ワーク保持部40がワーク保持治具の一例に相当し、解放操作部50が解放操作機の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
(2a)上記実施形態では、6個の線材支持部44を備えるワーク保持部40(ワーク保持治具)について説明したが、ワーク保持治具における線材支持部の個数は6個に限られるものではない。例えば、ワーク保持治具は、ワークに形成する引出部Wpの個数に応じて、線材支持部の個数を設定してもよい。
(2b)上記実施形態では、補助支持部46を備えるワーク保持部40(ワーク保持治具)について説明したが、ワーク保持治具は、補助支持部を備えない構成であってもよい。つまり、引出部形成工程において線材Wの弛みが一定程度許容できる用途においては、ワーク保持治具は、補助支持部を備えることなく、複数の線材支持部のみが線材Wを支持することで、引出部Wpを形成する構成であってもよい。
(2c)上記実施形態では、ワーク6をワーク保持部40(ワーク保持治具)から取り外した後に、引出部Wpを切断する形態について説明したが、ワーク保持治具はこのような構成に限られることはない。例えば、図10に模式的に示すように、線材切断部53を備えて、ワーク6をワーク保持治具から取り外す前に、引出部Wpを線材切断部53により切断する構成であってもよい。線材切断部53は、例えば、側面開口部42bからワーク保持部40の内部に挿入できる大きさの電動カッターなどを用いて構成してもよい。線材切断部53は、先端53aで引出部Wp(換言すれば、線材W)を切断する構成であってもよい。
線材切断部53は、ワーク保持部40の内部と外部との間を移動できるように駆動部を備えて構成されてもよい。そして、ワーク6に引出部Wpを形成した後に、駆動部によって線材切断部53がワーク保持部40の内部に移動して、引出部Wpを切断するように、線材切断部53を構成してもよい。なお、引出部Wpは、換言すれば、複数の線材支持部44とワーク6とを結ぶように配置された線材Wである。
つまり、線材切断部53を備えるワーク保持部40は、ワーク6に対する線材Wの巻き付け作業後に、線材切断部53を用いて引出部Wpを切断することで、線材Wによる複数の線材支持部44とワーク6との連結状態を解消でき、ワーク6を保持本体部42から取り外すことができる。
なお、このように線材切断部53を備える場合には、複数の線材支持部は、可動部を備えることなく、補助支持部46のように固定状態の構成であってもよい。つまり、線材切断部53で引出部Wpを切断することで、複数の線材支持部が、図9に示すような第2状態になることなく、ワーク6をワーク保持部40(ワーク保持治具)から取り外すことができる。
(2d)上記実施形態では、2個のクランプ機構41が使用者によって操作される形態について説明したが、このような形態に限定されるものではない。例えば、巻線機は、クランプ機構41の操作端部41cを押下する駆動力を発揮するように構成されたクランプ押下部を備えてもよい。クランプ押下部は、ワーク保持治具に対するワーク供給作業・ワーク取出作業の実行タイミングになると、操作端部41cを押下するように構成されている。これにより、使用者は、クランプ機構41を操作する手間を省略することができ、ワーク供給作業・ワーク取出作業を効率的に実行できる。なお、クランプ押下部は、モータなどの動力源を備えて、その動力を操作端部41cを押下する駆動力として利用する構成であってもよい。
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。