JP4208530B2 - ノズル保持具、ノズル回動ユニット、巻線機及び巻線方法 - Google Patents

ノズル保持具、ノズル回動ユニット、巻線機及び巻線方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多極電機子(主としてモータコア)用の巻線機においてノズルを保持するノズル保持具、そのノズル保持具を用いてノズルの姿勢変換を行うノズル回動ユニット、及びそのノズル回動ユニットを用いた巻線機、並びに多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けるための巻線方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多極電機子(モータコア)の極にコイル形成用の線材を巻きつけるために巻線機が広く使用されている。モータ等、電機子の限られた大きさで性能をより良くするためには、多極電機子(ワーク)の限られた巻線スペースにいかに多くの巻線ができるかということが巻線機に要求される。それには、極に対し隣り合う線材同士を隙間なく整列して巻く、いわゆる整列巻が有効である。
【0003】
このような場合、例えば線材が繰り出されるノズルを駆動するモータと、ワークの割り出し回転をするモータとが個々に駆動し、ノズルとワークが相対的に移動することで極への巻線が短時間でかつ隙間なく、巻き付けることが可能となる。すなわち、ノズルは上下移動し、ワークはその中心を軸として回動運動することで線材が極に巻き付けられる。本明細書では、このような巻線方法(巻線機)をノズル・ワーク駆動式と呼ぶこととする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような巻線工程の前後には、線端部(線材の始端部又は終端部)をワーク保持治具に設けられた線端クランプ部に挟み込むクランプ工程、線材をワークに立設された絡げピンに絡げる絡げ工程、巻線部分以外の線材の中途部を渡り線として形成する渡り線形成工程等の線処理工程のうちの1又は複数工程が随伴して実施される場合が多い。そして、例えば実公平5−40694号公報や特開平10―271774号公報に記載されているように、ノズルを巻線工程とは異なる形態に姿勢変換させて、これらの線処理工程を実施することがある。これは、図16に示すように、線材Wが繰り出されるノズル503をワーク506の端面と平行状に配置される回動軸571周りにエアシリンダ572等により回動させ、巻線工程でのワーク半径方向に沿う形態(図16(c))から、厚み方向(軸線方向)に沿う形態(図16(b))へと約90°姿勢変換させるものである。
【0005】
このような姿勢変換の際、ノズル503の先端は図16(b)に示すa(巻線工程)の位置からb(線処理工程)の位置に変位するため、先端の下降変位量Y及び右変位量Xを生じ、これらの下降変位量Y・右変位量Xはノズル503から繰り出される線材Wのたるみを発生させる。このようなたるみが発生すると、例えば絡げピン506aに対する絡げ高さが一定せず、絡げ高さのバラツキや絡げミスが発生しやすくなり、製品(多極電機子)の歩留まりを低下させる。近年、多極電機子(モータコア)の小型化に伴って絡げピン506a等が短くなる傾向にあり、線材Wのたるみによる不具合がますます発生しやすくなっている。
【0006】
そこで、下降変位量Y・右変位量Xを減少ないしなくすために、ノズル503を回動軸571周りに回動させるのと同期して、下降変位量Yに相当する分だけノズル503を上昇させ、かつ右変位量Xに相当する分だけノズル503を左移動させる方法が考えられる。こうすることによりノズル503の姿勢変換に伴う線材Wのたるみを相殺して、絡げ高さのバラツキ・絡げミス等の発生を防止することが可能となる。しかし、ノズル回動機構とは別のノズル昇降装置・ノズル移動装置等を同期駆動させて下降変位量Y・右変位量Xを減少させるための複雑な機構や制御を要することになり、ノズル回動ユニットひいては巻線機の大型化・複雑化を招来するおそれがある。
【0007】
特に、ワーク506が外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプの場合、ワーク506が小型化(小径化)するにつれ、ノズル503を細くするとともに、回動軸571をワークの上方に位置させねばならなくなる。その結果ノズル503の回動(旋回)半径が大きくなり、上記した変位量Y・Xが増大するおそれがある。
【0008】
さらに、ノズル・ワーク駆動式の巻線機の場合、これまでのものは、ワーク供給・取出方向(巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出す方向)がノズル送り方向(線材をワークの極に1周巻き付ける毎にノズルを例えば線材の太さ分ずつ送る方向)と平行になるように配置されている。ワークの供給・取出作業を行う作業者から見て左右方向の機体幅が狭くできるので、左右方向に複数のワーク(ノズル)を連設するいわゆる多連式の巻線機を構成するのに有利とされてきた。しかし、巻線工程を監視するために、ワーク供給・取出方向側から画像撮影したり、供給・取出作業を行う作業者が目視したりするとき、ノズル部分が視認しにくく、巻線トラブルの発見が遅れたり、巻線不良が発見できなかったりするおそれがある。また、巻線工程に随伴して線処理工程が実施される場合には、絡げ工程等の視認も困難となり、製品歩留まりを低下させる原因となる。
【0009】
本発明の課題は、形状・配置等の工夫により、大型化・複雑化を招くことなく、製品歩留まりを向上させることができるノズル保持具、ノズル回動ユニット、巻線機及び巻線方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記の課題を解決するために、本発明のノズル保持具は、
コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線状態と、前記ノズルを前記ワークの端面と平行状に配置される回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記極に巻き付けられた巻線部分以外の線材に関する処理を行う線処理状態とに切り換え使用される巻線機に装着されるノズル保持具であって、
前記ワークの内側において前記ノズルが取り付けられる一端部(以下、ノズル側端部という)から所定方向に延び、方向変換部を経た後、前記ワークの外側において前記回動軸が取り付けられる他端部(以下、回動軸側端部という)に至る門形状を呈するとともに、
前記ノズルの中心線(以下、第一中心線という)と前記回動軸の中心線(以下、第二中心線という)とは、両中心線に平行な投影面においてほぼ直交することを特徴とする。
【0011】
このようなノズル保持具を用いることにより、機械的なノズル回動機構であっても、回動軸周りでのノズルの回動に伴うノズル先端の昇降変位量(上下移動量)を小さく抑えることができ、絡げミス等による不良品の発生を減少させることができる。したがって、本発明で用いたノズル回動機構とは別のノズル昇降装置等を同期駆動させて、昇降変位量を減少させるための複雑な機構及び制御を要しないので、ノズル回動ユニットあるいは巻線機全体の大型化・機構の複雑化を防止できる。
【0012】
なお、本発明におけるノズル・ワーク駆動式の巻線機について、「コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は半径方向に突出する複数の極を有するワークが該ワークの周方向に駆動されることにより、該ノズルが巻線すべき極から離間して相対移動する周方向成分と、前記ノズル及び/又はワークが前記ワークの厚み方向に駆動されることにより、該ノズルが前記巻線すべき極及びそれに隣接する極の間に形成されるスロットを通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有し、前記ワークの各極に前記線材を巻き付けるための巻線機」と表わすこともできる。
【0013】
つまり、本発明におけるノズル・ワーク駆動式の巻線機としては、以下の4タイプのいずれであってもよい。
(1)ワークが周方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極から離間して相対移動する周方向成分と、ノズルがワークの厚み方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極及びそれに隣接する極の間に形成されるスロットを通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有する。
(2)ワークが周方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極から離間して相対移動する周方向成分と、ワークが厚み方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極及びそれに隣接する極の間に形成されるスロットを通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有する。
(3)ノズルがワークの周方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極から離間して相対移動する周方向成分と、ノズルがワークの厚み方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極及びそれに隣接する極の間に形成されるスロットを通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有する。
(4)ノズルがワークの周方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極から離間して相対移動する周方向成分と、ワークが厚み方向に駆動されることにより、ノズルが巻線すべき極及びそれに隣接する極の間に形成されるスロットを通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有する。
【0014】
さらに、本発明において姿勢変換されたノズルにより行われる線処理状態(線処理工程)としては、以下に述べる各態様を単独で又は複数組み合わせて実施する状態(工程)が考えられる。
(1)線材をワークの端面に立設された絡げピン等に絡げる状態:絡げ工程
(2)線端部をワークの端面に立設された線保持部材にかしめるために挟む状態:かしめ工程
(3)巻線部分以外の線材の中途部をワークの端面に立設された壁や渡り線用ピンに対して渡り線として掛け渡す状態:渡り線形成工程
(4)線材をワーク保持治具、線材保持治具等に立設された掛け回し用ピン等に掛け回す状態:掛け回し工程
(5)線端部をワーク保持治具、線材保持治具等に設けられた線端クランプ部に挟む状態:クランプ工程
(6)巻線部分以外の線材の中途部をワーク保持治具、線材保持治具等に設けられた壁や渡り線用ピンに対して渡り線として掛け渡す状態:渡り線形成工程
なお、(4)〜(6)においては、ワークをワーク保持治具から巻線済みの多極電機子として取り出す際に、ピン、線端クランプ部等の線材保持部分に預けられていた線材がこれらの部分から外れるように保持させておく場合がある。
【0015】
ところで、このようなノズル保持具において、ノズル側端部にはノズルを取り付けるための第一軸孔が形成され、回動軸側端部には回動軸を取り付けるための第二軸孔が形成されているときには、予め所定の精度に加工されたこれらの軸孔にノズル及び回動軸を挿入固定すればよいので、組み付けに際して精密な寸法管理(位置合わせ等)を要しない。
【0016】
そして、第一中心線と第二中心線とがほぼ直交状に一点で交わる場合には、ノズル保持具の精密な寸法管理をしなくても、ノズル先端の昇降変位量(上下移動量)を容易に減少させることができる。
【0017】
その際、これらのノズル保持具において、ノズルの先端が第二中心線の延長線上に位置するように配置すれば、ノズルの先端と回動軸の中心とが一致することにより、回動軸周りでのノズルの回動に伴うノズル先端の昇降変位量を理論上ほぼ0にすることができるので、絡げミス等の不良発生を防止することができる。一方、第一中心線を含み第二中心線と直交する投影面において、ノズルの先端を両中心線の交点から第一中心線に沿って所定距離後退させる場合には、ノズル保持具が線処理状態から巻線状態に復帰する際に、線端部の上方移動量(上昇変位量)が減少する。これによって、ノズル出口における線材の曲がり(湾曲)に基づいて発生する、線端部の絡げピンからの抜け(絡げミス)等の線処理不良を防止することができる。
このとき、線材の断面直径をdとし、ノズルの先端後退距離Dを、D≧d/2となるように設定すると、線径(線材断面直径)dに応じてノズルの先端後退距離Dが設定され、太い線材(例えばd≧0.5mm)において特に上記線処理不良の発生を効果的に防止することができる。
【0018】
さらに、このノズル保持具では、第二中心線を含み第一中心線と直交する投影面において、ノズル側端部と回動軸側端部との間の最小距離をLとし、少なくともその最小距離Lの範囲にわたって第二中心線と平行な平坦部が方向変換部に形成され、これら第二中心線と平坦部との間の距離をHとし、
一方、ワークの外周半径をr、ワークの軸線方向の全厚さをt(ただし、ワークの端面に絡げピンを有する場合にはその絡げピンの突出高さを含む)としたとき、
L>rかつ、H>t
を満足するように設定することにより、この条件の範囲内でノズル保持具の小型化を図ることができる。
【0019】
さらに、このノズル保持具は、第二中心線がノズルの回動中心となり、巻線機に対して片持ち状に装着されるので、巻線機への装着に際し着脱が容易であり、製造上のコストダウンを図ることができる。また、外周半径rの異なるワークに変更する際にはノズル保持具を異なるサイズのものに交換すればよいので、汎用性を高めることができる。
【0020】
ノズル保持具は、第二中心線が水平状に固定して配置されるとともに、第一中心線は巻線状態において水平状に配置されるのが望ましく、このときワークの端面を最も安定した状態である水平状に保持できる。これにより、巻線工程あるいは線処理工程が高精度で実施できる。
【0021】
また、本発明のノズル保持具は、ワークが外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプの場合に、ノズル側端部をワークの内側に、回動軸側端部をワークの外側にそれぞれ配置することによって好適に用いることができ、インナーコアタイプのワークの小型化の要請にも応えることができる。
【0022】
そして、上記の課題を解決するために、本発明のノズル回動ユニットは、
前記ノズル保持具と、
そのノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた前記ノズルと、
同じく回動軸側端部に取り付けられた前記回動軸と、
その回動軸を回動駆動する駆動アクチュエータと、
を備えることを特徴とする。
【0023】
これによれば、簡素な機械的ノズル回動機構であっても、回動軸周りでのノズルの回動に伴うノズル先端の昇降変位量を小さく抑えることができるから、不良品の発生を減少させ製品歩留まりを向上させることができる。
【0024】
また、上記の課題を解決するために、本発明のノズル回動ユニットは、
複数の前記ノズル保持具と、
各々のノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた複数の前記ノズルと、
同じく回動軸側端部に取り付けられた複数の前記回動軸と、
これらの回動軸を一斉に又は個別に回動駆動する1又は複数の駆動アクチュエータとを備え、
各回動軸は、これらに対応する前記ワークの配列方向とほぼ直交して配置されることを特徴とする。
【0025】
回動軸が複数のワークの配列方向とほぼ直交して配置されているので、複数のノズルを有する、いわゆる多連式のものにおいても、各ノズルの巻線状態や絡げ等の線処理状態を同時に視認することができる。
【0026】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明のノズル回動ユニットは、
複数の前記ノズル保持具と、
各々のノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた複数の前記ノズルと、
同じく回動軸側端部に取り付けられた複数の前記回動軸と、
これらの回動軸を一斉に又は個別に回動駆動する1又は複数の駆動アクチュエータとを備え、
各ノズルによる各ワークの極への前記巻線状態において、前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、これらのノズルに対応する前記ワークの配列方向に沿って配置されることを特徴とする。
【0027】
ノズル送り方向が、各ノズルに対応するワークの配列方向に沿って配置されるので、巻線状態の監視の際、各ノズル部分の視認が容易に行える。
【0028】
さらに、駆動アクチュエータをエアシリンダで構成すれば、巻線状態における慣性をモータに比して小にできるので、高速での高精度の巻線が可能となる。
【0029】
次に、上記の課題を解決するために、本発明の巻線機は、
前記ノズル回動ユニットが装着され、
コイル形成用の前記線材を保持する前記ノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の前記極を有するインナーコアタイプの前記ワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線状態と、前記ノズルを前記第二中心線周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記極に巻き付けられた巻線部分以外の線材に関する処理を行う線処理状態とに切り換え使用されることを特徴とする。
【0030】
これによれば、簡素な機械的ノズル回動機構でありながら、回動軸周りでのノズルの回動に伴うノズル先端の昇降変位量を小さく抑えることができ、高精度の製品を安定して生産することのできる巻線機が得られる。
【0031】
一方、上記の課題を解決するために、本発明の巻線方法は、
コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線方法であって、
前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出すワーク供給・取出方向に対して交差するように設定されることを特徴とする。
【0032】
また、上記の課題を解決するために、本発明の巻線方法は、
コイル形成用の線材を各々保持する複数のノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプの複数のワークが各ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、各ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線方法であって、
前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、これらのノズルに対応する前記ワークの配列方向に沿って設定されることを特徴とする。
【0033】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明の巻線方法は、
コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線工程と、
前記ノズルを前記ワークの端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記線材を前記ワークの端面に立設された絡げピンに絡げる絡げ工程とを含む巻線方法であって、
前記巻線工程において、前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出すワーク供給・取出方向に対してほぼ直交するように設定されるとともに、
前記絡げ工程において、前記絡げピンの設置位置が、前記ワーク中心から見て前記ノズル送り方向に沿うように設定されることを特徴とする。
【0034】
これらの巻線方法によれば、巻線工程を監視するために、ワーク供給・取出方向側から画像撮影したり、供給・取出作業を行う作業者が目視したりするとき、ノズル部分がワークの陰に隠れずに視認(観察)しやすく、巻線状態の確認が容易となって製品歩留まりが向上する利点がある。また、絡げ工程において、絡げピンの設置位置がワーク中心から見てノズル送り方向に沿うように設定されるときには、絡げ工程の視認(観察)も容易となるほか、線端部のクランプ・カット・捨て線等を行う端末線処理装置を設ける際、絡げピンの設置位置がワーク中心から見てワーク供給・取出方向と直交するノズル送り方向に沿うように設定されるので、ワーク供給・取出方向と平行に設定される場合に比して絡げピンと線端クランプ部との距離を短くすることができ、捨て線量を少なくできる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明の実施例1としての巻線機100の全体側面図、図2は全体正面図、図3は全体平面図である。図1に示すように、巻線機100は、ベース1、ベース2、ノズル3、駆動装置であり回転駆動機構であるワーク(多極電機子)6の割出回転用モータ4及びノズル駆動用モータ5で主に構成される。ベース1及びベース2は図示しないメインベースに固定される。ベース1は割出回転用モータ4を回動不能に固定する。
【0036】
ノズル3は、ノズルブラケット60(ノズル保持具)に取り付けられ、ノズルブラケット60を含むノズル回動ユニット70がタイミングベルト11に固定されている。タイミングベルト11はノズル駆動用モータ5と接続される。このノズル駆動用モータ5付近は図2にて後に説明する。ノズル駆動用モータ5は支持部材12に固定され、支持部材12はリニアガイド13が取り付けられた前後移動枠14にビス等で固定される。リニアガイド13はリニアレール15が取り付けられた移動部材16(送り部材)上をワーク6に対して進退する方向(前後方向)に移動可能となっている。移動部材16には、前後移動枠14を移動させるための前後移動用モータ17が取り付けられる。前後移動用モータ17はカップリング18を介して、ボールねじ装置18a(図2,図3参照)により回転運動を直線運動に変換し、前後移動枠14をワーク6に対して進退する方向(前後方向)に移動することを可能にする。
【0037】
移動部材16には、リニアガイド19が取り付けられる。リニアガイド19はリニアレール20が取り付けられたベース2上を前後移動枠14に対して直交する方向(左右方向)に移動可能となっている。ベース2には、移動部材16を移動させるための横移動用モータ21(ノズル送りモータ)が取り付けられる。横移動用モータ21はカップリング22(図2参照)を介して、ボールねじ装置22a(図3参照)により回転運動を直線運動に変換し、移動部材16を前後移動枠14に対して直交する方向(左右方向)に移動することを可能にする。
【0038】
図2はノズル駆動用モータ5付近の正面図である。この巻線機100はノズル3を2箇所に設けたいわゆる2連タイプのもので、これに伴って割出回転用モータ4、ワーク6(図3参照)、ノズルブラケット60等も2個ずつ設けられている。既述の如くノズル3はノズルブラケット60に固定され、ノズルブラケット60を含むノズル回動ユニット70はリニアガイド24及びタイミングベルト11にビス等で固定される。リニアガイド24は、リニアレール23が取り付けられた支持部材12上を、ワーク6(図1参照)が取り付けられるスピンドル軸33(図1参照)と平行な方向(上下方向)に移動可能となっている。支持部材12にはノズル回動ユニット70を上下移動させるための回転駆動機構であるノズル駆動用モータ5が取り付けられている。ノズル駆動用モータ5は回転する軸である出力軸25から支持部材12に取り付けられたプーリ27を回転させる。プーリ27にはタイミングベルト11が掛けられ、一方のプーリ28と共にタイミングベルト11を移動させる。プーリ27とプーリ28はその回転を支持する軸が平行に設けられているため、その軸間においてタイミングベルト11に取り付けられたノズル回動ユニット70は上下方向に直線移動することが可能となる。
【0039】
図1に戻り、ベース1は割出回転用モータ4を回動不能に固定する。割出回転用モータ4の回転する軸である出力軸31には、回転する軸であるスピンドル軸33が直接取り付けられる。スピンドル軸33にかかる軸方向の負荷は、ベース1に装着されたスラストベアリング38にて支持されている。スピンドル軸33には、図示しないクランプ機構によりワーク6を固定するためのワーク受け40(ワーク保持治具の一例)が、ワーク受け連結部40aを介して一体的に取り付けられる。なお、スピンドル軸33とワーク受け40(ワーク受け連結部40a)とは締結部材39により一体回転可能に締結される。
【0040】
図3の平面図に示すように、本実施例では、前後方向がワーク6に対して前後移動枠14が進退する方向(進出側が前方、後退側が後方)とされ、作業者が巻線前のワーク6を供給し、巻線後のワーク6を取り出すワーク供給・取出方向が前後方向に沿って設定されている。同様に、左右方向が各ノズル3に対応してワーク6が配列される方向(ワーク6の中心点を結んだ方向)とされ、線材Wを極に1周巻き付ける毎にノズル3を所定ピッチ(例えば線材Wの太さずつ)でワーク6の半径方向に送るノズル送り方向が左右方向に沿って設定されている。また、ワーク6は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極Cを有するインナーコアタイプとされ、ノズルブラケット60のノズル側端部61がワーク6の内側に、回動軸側端部62がワーク6の外側にそれぞれ配置されている。
【0041】
図3に示すように、ノズル送り方向がワーク供給・取出方向に対して交差する(例えば直交する)ように設定されている。このとき、ワーク供給・取出作業を行う作業者から見てノズル送り方向は左右方向となる。また、ノズル送り方向はワークの配列方向に設定されている。供給・取出作業を行う作業者にとって、ノズル3部分が目視しやすく、巻線状態の確認が容易である。
【0042】
次に、図4によりノズル回動ユニット70について説明する。ノズル回動ユニット70は、ユニット本体700に、2個(2連)のノズルブラケット60(ノズル保持具)が、各々のノズルブラケット60の第二軸孔62に取り付けられた2個の回動軸71と、これらの回動軸71を個別に回動駆動する2個のエアシリンダ72(駆動アクチュエータ)とにより、同時に同方向に回動可能に取り付けられる。このノズル回動ユニット70のユニット本体700は、タイミングベルト11(図2参照)に固定されている。2個のノズルブラケット60の各々の第一軸孔61には、ノズル3が取り付けられている。73はエアシリンダ72のジョイント72aと回動軸71とを連結ピン72bを介して連結する連結アーム、74は連結ピン72bが当接することによってノズル3を後述する巻線状態(巻線工程)と絡げ状態(絡げ工程)との2位置に位置決め保持するためのストッパである。
【0043】
各回動軸71は、これらに対応するワーク6の配列方向とほぼ直交して配置されている。また、ノズル3の送り方向が、これらのノズル3に対応するワーク6の配列方向に沿って配置されている。ただし、ワーク6の配列方向とは、ここでは図4(a)の平面視(ワーク6の軸線方向視)でワーク6の中心点を結んだ方向をいう。
【0044】
ノズル3は、その先端が第二中心線O2(図5参照)の延長線上に位置する。つまり、ノズル3の先端と回動軸71の中心とが一致することにより、回動軸71周りでのノズル3の回動に伴うノズル3先端の昇降変位量はほぼ0になる。
【0045】
ここで、ノズル回動ユニット70は、次の2状態に切り換え使用される。
(1)ワーク6が周方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極Cから離間して相対移動する周方向成分と、ノズル3がワーク6の厚み方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極C及びそれに隣接する極Cの間に形成される隙間(スロット)を通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有することにより、ワーク6の各極Cに線材Wを巻き付ける巻線状態。
(2)ノズル3をエアシリンダ72によってワーク6の端面と平行状に配置される回動軸71周りに回動させ約90°姿勢変換した形態にて、線材Wをワーク6の端面に立設された絡げピン6aに絡げる状態と、巻線部分以外の線材Wの中途部をワーク6の端面に立設された渡り線用ピン6bに対して渡り線として掛け渡す状態。
【0046】
図5は図4のノズル回動ユニットに用いられるノズルブラケットを示す。ノズルブラケット60は、ワーク6の内側にてノズル3を取り付けるための第一軸孔61が形成されたノズル側端部601から所定方向に延び、方向変換部603を経た後、ワーク6の外側にて回動軸71を取り付けるための第二軸孔62が形成された回動軸側端部602に至る門形状を呈する。第一軸孔61の第一中心線O1と第二中心線O2とは、ほぼ直交状に一点で交わっているので、回動軸71(第二中心線O 2 )周りでのノズル3の回動に伴うノズル3先端の昇降変位量(上下移動量)を小さく抑えることができ、絡げミス等による不良品の発生を減少させることができる。ここで、所定方向とは、巻線状態においてはワーク厚み方向(上下方向)、絡げ状態と渡り線形成状態では水平方向となる。
【0047】
方向変換部603は、具体的には図13に示すように、巻線状態においてノズル側端部601から上方に延びる第一上下部603aと、回動軸側端部602の側から上方に延びる第二上下部603bと、第一上下部603a及び第二上下部603bとの間で第二中心線O2と平行な平坦部603cと、回動軸側端部602及び第二上下部603bの下端部の間に形成される水平方向の延出部603dとから構成されている。このように、方向変換部603は単純な4方向の部材から構成されているので、設計・製造が容易である。
【0048】
また、図5(c)に示すように、ノズル側端部601と回動軸側端部602との間の最小距離をLとし、少なくともその最小距離Lの範囲にわたって第二中心線O2と平行な平坦部603cが方向変換部603に形成され、これら第二中心線O2と平坦部603cとの間の距離をHとする。一方、ワーク6の外周半径をr、ワーク6の軸線方向の全厚さをt(ただし、ワーク6の端面に立設された絡げピン6a及び渡り線用ピン6bの突出高さを含む)としたとき、L>rかつ、H>tを満足するように設定されている。
【0049】
さらに、このノズルブラケット60の第二中心線O2がノズル3の回動中心とされ、巻線機100に対して片持ち状に装着されている。この第二中心線O2は水平状に固定して配置されるとともに、第一中心線O1は巻線状態において水平状、絡げ状態と渡り線形成状態ではワーク厚み方向(上下方向)となるように配置されている。
【0050】
次に、この巻線機100の作動について、主として図6〜図11により説明する。
【0051】
<ワーク供給工程>……図6(a)
ワーク受け40(図1参照)にワーク6を固定する。このとき、前工程の終了時にノズル3から引き出された終端部が線端クランプ部80(図3参照)に挟まれている。ノズル3はワーク6との干渉を避けるため、ワーク6の外側において、エアシリンダ72によってワーク6の端面と平行状に配置される回動軸71周りに回動させ約90°姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持しておくのが望ましい。
【0052】
<絡げ工程>……図6(b)
ノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持しつつ、線端クランプ部80(図3参照)に挟まれた線材Wをワーク6の端面に立設されたスタート用絡げピン6a1に絡げる。その後、ノズル3をもとの姿勢(図8のa位置)に戻す。
【0053】
<線端カット・捨て線工程>……図6(c)
図示しない左右(ワークの配列方向)移動用シリンダを作動させて、線端クランプ部80(図3参照)をワーク6から離れる方向に移動させ、線材Wの始端部を引き千切り、次に旋回用エアシリンダ81(図3参照)を作動させ、線端クランプ部80を旋回させて、線材Wの始端部を余り線LWとして機外に捨てる。
【0054】
<巻線工程>……図6(d)及び図9〜11
ワーク6が周方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極Cから離間して相対移動する周方向成分と、ノズル3がワーク6の厚み方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極C及びそれに隣接する極Cの間に形成される隙間(スロット)を通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有することにより、ワーク6の各極Cに線材Wを巻き付ける。
【0055】
この巻線工程を、巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明を示す図9によりさらに具体的に説明する。なお、図9はアウターコアタイプのワーク6’に関するものであるが、原理的には図6(d)と同様である。図9(a)に示すように、ノズル3内から線材Wが繰り出される。その後、図9(b)に示すようにノズル3がノズル駆動用モータ5(図1参照)により極C間の隙間(スロット)N1を下降する。
【0056】
図10は図9に続く巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明図である。図10(a)に示すようにノズル3が極C間の隙間N1を下降した後、割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を右回転させる。次に、図10(b)に示すように割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を右回転させて、ノズル3を極C間の隙間N1と隣接する隙間N2に位置するところで停止する。
【0057】
図11は図10に続く巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明図である。図11(a)に示すようにノズル3が上昇する。そして割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を左回転させる。そして線材Wは極Cの側面S2に当接する。図11(b)に示すようにノズル3は最初の隙間N1を下降する。
【0058】
図11(b)に示すようにノズル3が線材Wを極Cに1周巻き付ける毎に横移動用モータ21(図1,図2参照)を作動させて、線材Wの太さ分を基準とする所定のピッチでノズル3を巻線中の極Cの突出方向に送る。
【0059】
<渡り線形成工程>……図7(e)
ノズル3による1つの極Cへの巻線が終了したら、再びノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持し、線材Wの中途部をワーク6の端面に立設された渡り線用ピン6bに対して渡り線RWとして掛け渡す。渡り線RWの形成により、線材Wがワーク6の内径側に入り込むのが阻止される。その後巻線工程と渡り線形成工程とを繰り返す。3相モータコアの場合、2つ跳びの極Cに巻線される。
【0060】
<絡げ工程>……図7(f)
ノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持しつつ、線材Wをワーク6の端面に立設されたフィニッシュ用絡げピン6a2に絡げる。
【0061】
<クランプ工程>……図7(g)
引き続きノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持し、線材Wの終端部を線端クランプ部80(図3参照)に挟む。
【0062】
<線端カット工程>……図7(h)
図示しない左右(ワークの配列方向)移動用シリンダを作動させて、線端クランプ部80(図3参照)をワーク6から離れる方向に移動させ、線材Wの終端部を引き千切る。
【0063】
<次相セット工程>……図7(i)
割出回転用モータ4(図1参照)を回転させて、ノズル3が次相(3相モータコアの場合、2相目)の最初に巻線する極Cに近接した第2相のスタート用絡げピン6a3の近傍に位置するようにセットする。以下、各相毎に図6(a)〜図7(i)の工程を繰り返す。
【0064】
<ワーク取出工程>
各相について以上の全工程が終了すれば、ワーク受け40(図1参照)からワーク6を取り外す。
【0065】
以上に記載した実施例の絡げ工程(図6(b)又は図7(f)参照)では、絡げピン6a1,6a2の設置位置がワーク6の中心から見てノズル送り方向に沿うように設定されている。したがって、図12(a)に示す線端カット・捨て線工程において、絡げピン6a1,6a2の設置位置がワーク中心から見てワーク供給・取出方向と直交するノズル送り方向に沿うように設定されるので、図12(b)のようにワーク供給・取出方向と平行に設定される場合に比して絡げピン6a1,6a2と線端クランプ部80との距離を短くすることができ、それにより捨て線LWの量を少なくできる。つまり、図12(a)のように作業者から見て、ノズル3が9時又は3時の時計の短針位置にある場合に、絡げピン6a1,6a2と線端クランプ部80との距離を最も短くすることができ、これによって捨て線LWの量を少なくできる。
【0066】
図13には、ノズルブラケット60における線材Wの配線形態も表わされている。第一上下部603aと平坦部603cのノズル3突出側とは反対側の側面には線材Wの案内ローラR1,R2が配置され、平坦部603cには同一側面に案内孔H1も設けられている。そして、ノズル3の裏側に引き出され、案内ローラR1,R2,案内孔H1を介してノズル回動ユニット70のユニット本体700に形成された案内孔H2に至る線材Wは、図示しない線材収納部に配線されている。
【0067】
(実施例2)
次に本発明の実施例2としてのノズルブラケット160を説明する。図14(a)に示すノズルブラケット160は、ノズル側端部161a、回動軸側端部161b及び方向変換部161cとからなるブラケット本体部161と、回動軸側端部161bに取り付けられる回動軸取付部162と、ノズル側端部161aに取り付けられるノズル取付部163とを備えている。回動軸取付部162は、ノズルブラケット160を回動するための回動軸部162aと、回動軸側端面に接触する対向面を有するフランジ部162bと、フランジ部162bを回動軸側端部161bに固定するための固定部材(例えばねじ、ボルト等)162cとを含んで構成されている。一方、ノズル取付部163は、ノズル側端部161aの一側面に形成されたノズル嵌合溝163aと、外側からノズル3を押圧して取り付けるノズル押え板163bと、ノズル押え板163bをノズル側端部161aに固定するための固定部材(例えばねじ、ボルト等)162cとを含んで構成されている。この実施例では、回動軸部162aの軸径の異なるものやノズル3の長さの異なるものへの取り換えが、回動軸取付部162あるいはノズル取付部163のみの取り外しによって行えるので、交換や調整が容易である。なお、161dは実施例1の603c(図13参照)と同様に平坦部を構成する。
【0068】
(実施例3)
次に本発明の実施例3としてのノズルブラケット260を説明する。図14(b)に示すノズルブラケット260では、ノズル側端部261と回動軸側端部262とを連結する方向変換部263が平坦部264においてノズル3の軸線方向にねじれて配置される。
【0069】
(実施例4)
次に本発明の実施例4としてのノズル回動ユニット170を説明する。これは図15に示すように実施例1と同様の1連のノズルブラケット60を、回動軸171が巻線機100の左右方向(図3参照)に位置するように装着する。したがって、この実施例では、ノズル送り方向は従来と同様に機体前後方向に設定される。なお、図14及び図15において実施例1と共通する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
(実施例5)
次に本発明の実施例5としてのノズルブラケット360を説明する。図17に示すノズルブラケット360では、ノズル3は、その先端が第一中心線O1と第二中心線O2との交点Xから第一中心線O1に沿って距離Dだけ後退している。図18に拡大して示すように、ノズル3の先端後退距離D(ずらし量)は、線材Wの断面直径(線径)をdとしたときに、d/2以上に設定(例えば、d=0.65mmの場合にD=3mm=4.62d)されている。
【0071】
次に、図18の作用説明図である図19により、ノズル3のずらし量Dの機能について解説する。ノズルブラケット360が図18の実線で示される線処理状態(線処理工程)に姿勢変換されているとき、図19(a)に示すように、ノズル3から突出する線材Wは第一中心線O1と直交状に延びて線端部を構成することとなるので、ノズル3出口において線材Wには曲がり(湾曲)を生じる。このようなノズル3出口での線材Wの曲率半径R0は、一例として線径dを用いて次のように近似することができる。
(1)線径dが細い場合(例えば0.1mm以下)には、線材Wはノズル3の出口拡径部に沿って十分に曲がることができるので、R0≒d/2となる。
(2)線径dが太い場合(例えば0.5mm以上)には、線材Wはノズル3の出口拡径部に沿って十分に曲がることができないので、R0≒3dとなる。
【0072】
上記(1)(2)いずれの場合でも、ノズル3出口における線材Wの曲がり(湾曲)は、以下に述べるような不具合を生ずることがある。ここでは、線処理工程でノズル3がワーク6の渡り線用ピン6bに対して渡り線RWの掛け渡し(図7(e)参照)を終了し、巻線状態(図18の仮想線)に姿勢変換する場合について考察する。図19(b)において、ノズル3の先端を第一中心線O1と第二中心線O2との交点Xに一致させた状態でノズルブラケット360を回動すると、ノズル3の姿勢変換に伴って渡り線RWは交点Xを中心として回転し、渡り線用ピン6bの頂点に達する(又は頂点を超える)場合がある。このような状態で巻線工程が開始されると、渡り線RWが渡り線用ピン6bから外れて線処理不良を発生しやすくなる。つまり、ノズル3出口における線材Wの曲がり(湾曲)は、ノズルブラケット360が線処理状態から巻線状態に復帰するときに、渡り線RWや線端部の上方移動(上昇変位)を生じ、渡り線RWが渡り線用ピンから外れたり線端部が絡げピンから抜けたりして、線処理不良が発生しやすくなる。そして、かかる線処理不良は、上記した通り曲率半径R0が大きいほど、すなわち線径dが太いほど発生しやすい。
【0073】
そこで、図19(c)に示すように、ずらし量D≒曲率半径R0だけノズル3の先端を交点Xから後退させた状態でノズルブラケット360を回動すると、ノズル3は見かけ上渡り線RWの断面中心の周りに回動し、渡り線RWは渡り線用ピン6bから外れにくくなり、線処理不良を発生しにくくなる。
【0074】
なお、ずらし量D≒曲率半径R0の最適値は、渡り線RW(線材W)の引張力P、ノズル3のスロット突入幅Q、ノズル3の出口拡径部半径R等をパラメータとして決定されるが、簡易的には線径dのみにより経験的に設定しうる。表1にこのようにしてずらし量Dを設定する場合を例示する。
【0075】
【表1】
Figure 0004208530
【0076】
表1では、線径dに対してずらし量Dが不連続にならないように、境界値を重ね合わせてある。したがって、例えばd=0.5mmの場合、Dの値として最小値のd/2=0.25mmから、最大値の10d=5.0mmまでの中から選択できる。表1の各欄において、ずらし量Dが下限値を下回ると、上記した通り渡り線RWが渡り線用ピン6bから外れる等の線処理不良を発生しやすくなる。一方、ずらし量Dが上限値を上回ると、従来技術と同様にノズル3の姿勢変換に伴って線材Wのたるみが発生しやすくなる。
【0077】
ノズルブラケット360の方向変換部603は、図20に示すように構成されている。すなわち、方向変換部603は、巻線状態においてノズル側端部601から上方に延びる第一上下部603aと、回動軸側端部602の側から上方に延びる第二上下部603bと、第一上下部603a及び第二上下部603bとの間で第二中心線O2と平行な平坦部603cと、平坦部603cから第二上下部603bの上部に水平方向に延びる上方延長部603eとを有する。また、第一上下部603a、平坦部603c及び上方延長部603eと、第二上下部603bとは別体に構成されている。そして、第二上下部603bの凸部603b1と上方延長部603eの凹部603e1とが第二中心線O2と直交する方向に相対的にスライド可能に嵌合している。第二上下部603bには複数(例えば2個)のねじ孔603b2、上方延長部603eにはそれと同数の大径孔603e2が互いに対応させて形成されている。取付ねじ603fが大径孔603e2を貫通し、ねじ孔603b2と螺合されて、ノズルブラケット360の方向変換部603が組み立てられている。
【0078】
2本の取付ねじ603fを緩めて、第二上下部603bの凸部603b1及び/又は上方延長部603eの凹部603e1を第二中心線O2と直交する方向にスライドさせれば、大径孔603e2の余裕分だけノズル3のずらし量Dを調整することができる。大径孔603e2に代えて長孔を用いてもよい。なお、図17〜図20において実施例1と共通する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
本発明に係る巻線機には、ノズルブラケット(あるいはノズル回動ユニット)を3連以上の複数装着することができる。また、ノズル3の姿勢変換用のエアシリンダ72は、実施例1のように回動軸71を個別に回動駆動する以外に、複数の回動軸71を一斉に回動駆動するものであってもよい。
【0080】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、当業者が有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1としての巻線機の側面図。
【図2】図1の巻線機の正面図。
【図3】図1の巻線機の平面図。
【図4】図1の巻線機に装着されるノズル回動ユニットの平面図、正面図、側面図及び背面図。
【図5】図4のノズル回動ユニットを構成するノズルブラケットの平面図、正面図及び側面図。
【図6】実施例1に係る巻線機の作動説明図。
【図7】図6に続く作動説明図。
【図8】ノズルブラケットの作動説明図。
【図9】巻線工程におけるノズル及びワークの作動説明図。
【図10】図9に続く作動説明図。
【図11】図10に続く作動説明図。
【図12】捨て線の作用説明図。
【図13】線材の配線形態を示すノズルブラケットの斜視図。
【図14】本発明の実施例2及び3としてのノズルブラケットの斜視図。
【図15】本発明の実施例4としてのノズル回動ユニットの正面図及び側面図。
【図16】従来のノズル回動機構の正面図及び側面図。
【図17】本発明の実施例5として、図5に代わるノズルブラケットの平面図、正面図及び側面図。
【図18】図17のノズルブラケットの線処理工程における一部破断拡大正面図。
【図19】図18の作用説明図。
【図20】図13に代わり、線材の配線形態を示す図17のノズルブラケットの斜視図。
【符号の説明】
3 ノズル
6 ワーク
60 ノズルブラケット(ノズル保持具)
601 ノズル側端部
602 回動軸側端部
603 方向変換部
603c 平坦部
61 第一軸孔
62 第二軸孔
70 ノズル回動ユニット
71 回動軸
72 エアシリンダ(駆動アクチュエータ)
W 線材

Claims (17)

  1. コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線状態と、前記ノズルを前記ワークの端面と平行状に配置される回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記極に巻き付けられた巻線部分以外の線材に関する処理を行う線処理状態とに切り換え使用される巻線機に装着されるノズル保持具であって、
    前記ワークの内側において前記ノズルが取り付けられる一端部(以下、ノズル側端部という)から所定方向に延び、方向変換部を経た後、前記ワークの外側において前記回動軸が取り付けられる他端部(以下、回動軸側端部という)に至る門形状を呈するとともに、
    前記ノズルの中心線(以下、第一中心線という)と前記回動軸の中心線(以下、第二中心線という)とは、両中心線に平行な投影面においてほぼ直交することを特徴とするノズル保持具。
  2. 前記ノズル側端部には前記ノズルを取り付けるための第一軸孔が形成され、前記回動軸側端部には前記回動軸を取り付けるための第二軸孔が形成された請求項1に記載のノズル保持具。
  3. 前記第一中心線と前記第二中心線とは、ほぼ直交状に一点で交わる請求項1又は2に記載のノズル保持具。
  4. 前記ノズルは、その先端が前記第二中心線の延長線上に位置する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のノズル保持具。
  5. 前記ノズルの先端は、前記第一中心線を含み前記第二中心線と直交する投影面において、両中心線の交点から前記第一中心線に沿って所定距離後退している請求項1ないし3のいずれか1項に記載のノズル保持具。
  6. 前記ノズルの先端後退距離Dは、前記線材の断面直径をdとしたとき、
    D≧d/2
    を満足するように設定される請求項5に記載のノズル保持具。
  7. 前記第二中心線を含み前記第一中心線と直交する投影面において、前記ノズル側端部と前記回動軸側端部との間の最小距離をLとし、少なくともその最小距離Lの範囲にわたって前記第二中心線と平行な平坦部が前記方向変換部に形成され、これら第二中心線と平坦部との間の距離をHとし、
    一方、前記ワークの外周半径をr、該ワークの軸線方向の全厚さをt(ただし、当該ワークの端面に絡げピンを有する場合にはその絡げピンの突出高さを含む)としたとき、
    L>rかつ、H>t
    を満足するように設定される請求項1ないし6のいずれか1項に記載のノズル保持具。
  8. 前記第二中心線が前記ノズルの回動中心とされ、前記巻線機に対して片持ち状に装着される請求項1ないし7のいずれか1項に記載のノズル保持具。
  9. 前記第二中心線が水平状に固定して配置されるとともに、前記第一中心線は前記巻線状態において水平状に配置される請求項1ないし8のいずれか1項に記載のノズル保持具。
  10. 請求項1ないしのいずれか1項に記載されたノズル保持具と、
    そのノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた前記ノズルと、
    同じく回動軸側端部に取り付けられた前記回動軸と、
    その回動軸を回動駆動する駆動アクチュエータと、
    を備えることを特徴とするノズル回動ユニット。
  11. 請求項1ないしのいずれか1項に記載された複数のノズル保持具と、
    各々のノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた複数の前記ノズルと、
    同じく回動軸側端部に取り付けられた複数の前記回動軸と、
    これらの回動軸を一斉に又は個別に回動駆動する1又は複数の駆動アクチュエータとを備え、
    各回動軸は、これらに対応する前記ワークの配列方向とほぼ直交して配置されることを特徴とするノズル回動ユニット。
  12. 請求項1ないしのいずれか1項に記載された複数のノズル保持具と、
    各々のノズル保持具の前記ノズル側端部に取り付けられた複数の前記ノズルと、
    同じく回動軸側端部に取り付けられた複数の前記回動軸と、
    これらの回動軸を一斉に又は個別に回動駆動する1又は複数の駆動アクチュエータとを備え、
    各ノズルによる各ワークの極への前記巻線状態において、前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、これらのノズルに対応する前記ワークの配列方向に沿って配置されることを特徴とするノズル回動ユニット。
  13. 前記駆動アクチュエータは、エアシリンダである請求項10ないし12のいずれか1項に記載のノズル回動ユニット。
  14. 請求項10ないし13のいずれか1項に記載されたノズル回動ユニットが装着され、
    コイル形成用の前記線材を保持する前記ノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の前記極を有するインナーコアタイプの前記ワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線状態と、前記ノズルを前記第二中心線周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記極に巻き付けられた巻線部分以外の線材に関する処理を行う線処理状態とに切り換え使用されることを特徴とする巻線機。
  15. コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線方法であって、
    前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出すワーク供給・取出方向に対して交差するように設定されることを特徴とする巻線方法。
  16. コイル形成用の線材を各々保持する複数のノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプの複数のワークが各ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、各ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線方法であって、
    前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、これらのノズルに対応する前記ワークの配列方向に沿って設定されることを特徴とする巻線方法。
  17. コイル形成用の線材を保持するノズル及び/又は外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプのワークが該ワークの周方向及び厚み方向にそれぞれ駆動されることにより、前記ワークの各極に対して前記ノズルが相対的な周回移動を行って前記線材を繰り返し巻き付ける巻線工程と、
    前記ノズルを前記ワークの端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記線材を前記ワークの端面に立設された絡げピンに絡げる絡げ工程とを含む巻線方法であって、
    前記巻線工程において、前記ワークの軸線方向から見たとき、前記線材を前記極に1周巻き付ける毎に前記ノズルを巻線中の極の突出方向に所定ピッチで送るノズル送り方向が、巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出すワーク供給・取出方向に対してほぼ直交するように設定されるとともに、
    前記絡げ工程において、前記絡げピンの設置位置が、前記ワーク中心から見て前記ノズル送り方向に沿うように設定されることを特徴とする巻線方法。
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