JP2021038287A - 樹脂組成物、成形体、接合体、および接合体の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、成形体、接合体、および接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被着体に対して成形体を良好に接合させる一方で、当該成形体の寸法安定性を向上させる新たな技術の提供。【解決手段】所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と、所定の炭化水素系重合体を含み、前記成形体中の前記炭化水素系重合体の含有量が、前記成形体中の前記アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下である、成形体。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物、成形体、接合体、および接合体の製造方法に関する。
従来から、医薬品や食品の包装、太陽電池モジュール用封止材、有機EL素子用封止材、および電子部品用封止材等の作製に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が用いられている。
このような熱可塑性樹脂には、当該樹脂を成形して得られるシート等の成形体をガラスや金属などの材料からなる基材(被着体)と良好に接合させるべく、アルコキシシリル基を導入させることがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−72012号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術には、被着体に対して成形体を良好に接合させつつ、成形体の熱による変形を抑制する(即ち、寸法安定性を向上させる)ことが求められていた。
そこで、本発明は、被着体に対して成形体を良好に接合させる一方で、当該成形体の寸法安定性を向上させる新たな技術の提供を目的とする。
本発明者らは、特に芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂について、上記要求が高まっていることに着目した。そして、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂に、アルコキシシリル基が導入されてなる樹脂(以下、「アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂」と称する場合がある。)について上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む成形体を、被着体としての基材に接合させて接合体を作製するに際し、所定の性状を有する炭化水素系重合体を所定量用いることで、成形体を被着体に対して良好に接合させつつ、成形体の寸法安定性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂組成物は、アルコキシシリル基を有する樹脂と、炭化水素系重合体を含む樹脂組成物であって、前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、前記炭化水素系重合体は、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下であり、そして、前記樹脂組成物中の前記炭化水素系重合体の含有量が、前記樹脂組成物中の前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下であることを特徴とする。このように、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と炭化水素系重合体を上述した量比で含む樹脂組成物を用いれば、被着体に対して良好に接合し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を得ることができる。
ここで、本発明の樹脂組成物は、前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方であることが好ましい。アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂として、アルコキシシリル基含有ポリエチレンおよび/またはアルコキシシリル基含有ポリプロピレンを用いれば、成形体を、被着体に対して一層良好に接合させることができる。
そして、本発明の樹脂組成物において、前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下であることが好ましい。ヨウ素価が上述した値以下である炭化水素系重合体を用いれば、成形体の耐光性を向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の成形体は、アルコキシシリル基を有する樹脂と、炭化水素系重合体を含む成形体であって、前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、前記炭化水素系重合体は、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下であり、そして、前記成形体中の前記炭化水素系重合体の含有量が、前記成形体中の前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下であることを特徴とする。このように、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と炭化水素系重合体を上述した量比で含む成形体は、被着体に対して良好に接合し得り、且つ寸法安定性に優れる。
ここで、本発明の成形体は、前記アルコキシシリル基を有する樹脂を含む樹脂成形体と、前記樹脂成形体の少なくとも一部の表面を覆い、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜とを備えることが好ましい。アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体の表面に炭化水素系重合体を含む樹脂膜を備える成形体は、樹脂膜を介して被着体と一層良好に接合することができる。
そして、本発明の成形体は、前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方であることが好ましい。アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂として、アルコキシシリル基含有ポリエチレンおよび/またはアルコキシシリル基含有ポリプロピレンを用いれば、成形体を、被着体に対して一層良好に接合させることができる。
なお、本発明の成形体において、前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下であることが好ましい。ヨウ素価が上述した値以下である炭化水素系重合体を用いれば、成形体の耐光性を向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接合体は、上述した本発明の成形体の何れかと、基材とが接合してなる接合体であることを特徴とする。上述した何れかの成形体を用いて得られる接合体は、成形体と、被着体である基材とが良好に接合しており、また寸法安定性に優れる。
ここで、本発明の接合体は、前記成形体と前記基材の接着強度が4N/cm以上であることが好ましい。成形体と基材の接着強度が4N/cm以上であれば、成形体と基材が十分に良好に接合している。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接合体の製造方法は、アルコキシシリル基を有する樹脂を含む樹脂成形体と、基材とを接着して接合体を製造する方法であって、前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、前記樹脂成形体と前記基材の少なくとも一方の表面に、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下である炭化水素系重合体を、前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下供給し、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を含むことを特徴とする。このような工程を経れば、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体と基材を、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して(特に低温条件下でも)良好に接着させることができ、成形体と基材が良好に接合した接合体を得ることができる。また得られる接合体は、寸法安定性に優れる。
ここで、本発明の接合体の製造方法は、前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方であることが好ましい。アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂として、アルコキシシリル基含有ポリエチレンおよび/またはアルコキシシリル基含有ポリプロピレンを用いれば、成形体と基材とが一層良好に接合してなる接合体を得ることができる。
なお、本発明の接合体の製造方法において、前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下であることが好ましい。ヨウ素価が上述した値以下である炭化水素系重合体を用いれば、成形体および接合体の耐光性を向上させることができる。
そして、本発明の接合体の製造方法は、前記基材が有機基材であり、前記有機基材の前記樹脂成形体との接着面は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされていることが好ましい。上述した表面処理の何れかが施された有機基材を用いれば、成形体と有機基材とが一層良好に接合してなる接合体を得ることができる。
更に、本発明の接合体の製造方法は、前記接着における接着温度が、前記アルコキシシリル基を有する樹脂のビカット軟化温度未満であることが好ましい。本発明の製造方法によれば、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂のビカット軟化温度未満で接着を行ったとしても、成形体と被着体とが良好に接合してなる接合体を得ることができ、また、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂のビカット軟化温度未満で接着を行うことで、熱による変形を抑制することができる。
本発明によれば、被着体に対して良好に接着し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、被着体に対して良好に接着し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を提供することができる。
そして、本発明によれば、寸法安定性に優れる成形体を備え、当該成形体が被着体としての基材に良好に接合している接合体を提供することができる。
本発明に従う成形体の一例の構造を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、例えば、本発明の成形体を形成する用途に用いることができる。また、本発明の成形体は、被着体としての基材と接合して、本発明の接合体を形成することができる。そして、本発明の接合体は、例えば、本発明の接合体の製造方法を用いて作製することができる。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と、所定の炭化水素系重合体とを含み、任意にその他の成分を含む。ここで、本発明の樹脂組成物は、炭化水素系重合体を、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下含むことを必要とする。
そして、本発明の樹脂組成物は、所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と所定の炭化水素系重合体とを上述した量比で含んでいるため、本発明の樹脂組成物を用いれば、被着体に対して良好に接合し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を形成することができる。
<アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂>
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂は、上述した通り、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂に、アルコキシシリル基が導入されてなる樹脂である。
なお、本発明において、「芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体」とは、スチレン等の芳香族ビニル化合物由来の構造単位(繰り返し単位)を主成分とする重合体ブロックと、1,3−ブタジエン等の鎖状共役ジエン化合物(直鎖状共役ジエン化合物、分岐鎖状共役ジエン化合物)由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体、およびその水素化物を意味する。ここで、重合体ブロックがある構造単位を「主成分とする」とは、当該重合体ブロック中の全構造単位中に占める当該ある構造単位の割合が70質量%以上であることを意味する。
[熱可塑性樹脂]
ここで、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・ビニルノルボルネン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;
エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体水素化物、シクロヘキサジエン重合体等のシクロオレフィンポリマー;
エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体に例示されるオレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;
エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー樹脂;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;
ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のビスフェノール類と塩化カルボニル等のカルボニル化合物との反応で得られるポリカーボネート樹脂;
ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸トリシクロデシル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体;
エチレン・酢酸ビニル共重合体;
ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等の含ハロゲン系樹脂;
ポリウレタン系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の芳香族系樹脂;
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T等のポリアミド系樹脂;等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(共)重合体」は、単独重合体および/または共重合体を意味する。
上述した熱可塑性樹脂、そしてアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、成形体を被着体に対して一層良好に接合させる観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。即ち、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂としては、アルコキシシリル基含有ポリエチレン、アルコキシシリル基含有ポリプロピレンが好ましい。
[アルコキシシリル基]
上述した熱可塑性樹脂に導入されるアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1〜20アルキル)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;等が挙げられる。これらの内、成形体を被着体に対してより一層良好に接合させる観点から、トリメトキシシリル基が特に好ましい。また、アルコキシシリル基は、熱可塑性樹脂に、炭素数1〜20のアルキレン基や、炭素数2〜20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
熱可塑性樹脂へのアルコキシシリル基の導入量は、通常、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。アルコキシシリル基の導入量が上記上限値以下であれば、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりする等の問題が生じ難くなる。また、アルコキシシリル基の導入量が上記下限値以上であれば、成形体を被着体に対して特に良好に接着させることができる
なお、アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、H−NMRスペクトルにて算出することができる。
また、熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基を導入する方法は、特に限定されず既知の方法を用いることができる。
そして、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂の分子量は、成形体の寸法安定性及び機械的強度を向上させる観点から、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下、更に好ましくは100,000以下である。
また、分子量分布(Mw/Mn)は、成形体の寸法安定性及び機械的強度を向上させる観点から、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは3.0以下である。
<炭化水素系重合体>
炭化水素系重合体としては、オレフィン重合体、オレフィン重合体を水素化してなる重合体(オレフィン重合体水素化物)を用いることができる。ここで、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物は併用してもよい。なお、本発明において、ある重合体が、「炭化水素系重合体」と「アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂」の双方に該当する場合、当該重合体は、「炭化水素系重合体」に含まれ、「アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂」には含まれないものとする。
オレフィン重合体としては、オレフィンに由来する構造単位が連なった高分子であれば特に限定されず、人工的に重合して得られる重合体であっても、天然の重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。
ここで、オレフィン重合体を人工的に重合して調製する場合、単量体であるオレフィンとしては、特に限定されず、イソブテン、1−ブテン、4−メチルペンテン、1−オクテン、ブタジエン、イソプレンなどの鎖状オレフィンや、各種環状オレフィンが挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、オレフィン重合体の水素化は、特に限定されず、既知の方法を用いて行うことができる。
そして、炭化水素系重合体の例としては、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンの水素化物、ポリブテン、ポリブテンの水素化物、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテンの水素化物、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−オクテンの水素化物、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体の水素化物、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂の水素化物、脂環族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂の水素化物、ポリイソプレン、ポリイソプレンの水素化物が挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、炭化水素系重合体は、アルコキシシリル基、エステル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基等の極性基を有してもよい。炭化水素系重合体は、これらの極性基を、1種単独で有していてもよく、また2種以上有していてもよい。
また、炭化水素系重合体としては、成形体の耐光性を向上させる観点から、オレフィン重合体水素化物が好ましい。
<<炭化水素系重合体の性状>>
炭化水素系重合体のヨウ素価は、2.0g/100g以下であることが好ましく、1.0g/100g以下であることがより好ましく、0.5g/100g以下であることが更に好ましい。ヨウ素価が上記上限値以下であれば、成形体の耐光性が向上する。
なお、「ヨウ素価」は、炭化水素系重合体100gと反応するヨウ素の量(g数)に換算して表される値(g/100g)である。そして、「ヨウ素価」は、炭化水素系重合体を濃度10質量%のシクロヘキサン溶液とし、一塩化ヨウ素を用いるウィイス(Wijs)法で測定することができる。
炭化水素系重合体の分子量は、THFを溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で、300以上5000以下であることが必要であり、好ましくは350以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは450以上であり、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下である。炭化水素系重合体のMnが上記下限値未満であると、樹脂組成物の成形等の際に気泡を発生し易くなるため好ましくない。また、炭化水素系重合体のMnが上記上限値を超えると、成形体を被着体に対して良好に接合させることができない。
<<炭化水素系重合体の含有量>>
そして、本発明の樹脂組成物中の炭化水素系重合体の含有量は、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり、0.01質量部以上50質量部以下であることが必要であり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、3質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。炭化水素系重合体の含有量が上記下限値未満であると、成形体を被着体に対して良好に接合させることができない。また、炭化水素系重合体の含有量が上記上限値を超えると、成形体の寸法安定性が低下する。
<その他の成分>
その他の成分としては、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー等が挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらその他の成分としては、既知のもの、例えば、国際公開第2014/077267号に記載のものを用いることができる。
<樹脂組成物の調製方法>
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂に、上述した炭化水素系重合体および任意に用いられるその他の成分を配合して樹脂組成物を調製する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用できる。
例えば、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂のペレットおよび炭化水素系重合体、並びにその他の成分を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出し機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレット状にする方法や、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を、サイドフィーダーを備えた二軸押出し機により、サイドフィーダーから炭化水素系重合体およびその他の成分を連続的に添加しながら、溶融混練して押出し、ペレット状にする方法等によって、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂および炭化水素系重合体、並びにその他の成分が均一に分散された樹脂組成物を製造することができる。
(成形体)
本発明の成形体は、所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と、所定の炭化水素系重合体とを含み、任意にその他の成分を含む。ここで、本発明の成形体は、炭化水素系重合体をアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下含むことを必要とする。
そして、本発明の成形体は、所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂と所定の炭化水素系重合体とを上述した量比で含んでいるため、被着体に対して良好に接合し得り、且つ寸法安定性に優れる。
<アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂、炭化水素系重合体、およびその他の成分>
ここで、本発明の成形体に含まれるアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂および炭化水素系重合体、並びに任意に含まれるその他の成分の具体例、性状、および量比等は、上述した本発明の樹脂組成物と同様であるため、本項での説明は省略する。
<成形体の形状>
成形体の形状は特に限定されず、所望の用途に応じてシート状など任意の形状とすることができる。
ここで、本発明の成形体中において、炭化水素系重合体は均一に分散した状態であってもよいが、成形体の表面に偏在した状態であることが好ましい。例えば、成形体は、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体とその表面の少なくとも一部を覆う樹脂膜とを備え、当該樹脂膜が、炭化水素系重合体からなる膜であることが好ましい。炭化水素系重合体が成形体の表面に偏在した状態であることで、成形体は、炭化水素系重合体が存在する表面を介して被着体と一層良好に接合することができるからである。
炭化水素系重合体が表面に偏在した状態である成形体の一例を、図1に示す。図1の成形体10は、シート状の成形体であり、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂および任意に用いられるその他の成分を含むシート状の樹脂成形体20と、炭化水素系重合体を含む樹脂膜30を備える。そして、図1において、樹脂膜30は、樹脂成形体20の一方の主面(最大面積を有する面)20S上に形成されている。なお、図1では、樹脂膜30は、樹脂成形体20の主面20Sの全体を覆っているが、主面20Sの一部を覆っていてもよい。シート状の樹脂成形体の主面に占める樹脂膜の割合は、特に限定されないが、一方の主面の面積(すなわち、平面視面積)を100%として、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。
また、樹脂膜には、炭化水素系重合体以外の成分が含まれていてもよいが、樹脂膜中に占める炭化水素系重合体の割合は、樹脂膜の質量を100質量%として、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%である(即ち、樹脂膜が炭化水素系重合体のみからなる)ことが特に好ましい。
なお、成形体がシート状である場合、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
シート状の成形体の厚みは均一であっても不均一であっても良い。また、シート状の成形体は、凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、貫通孔等の不均一構造を有するものであっても良い。
<成形体の製造方法>
ここで、本発明の成形体を製造する方法は、特に限定されないが、
1)上述した本発明の樹脂組成物を用いて成形体を得る方法、および
2)アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体の表面に炭化水素系重合体を供給して、樹脂成形体の表面に炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成して成形体を得る方法が挙げられる。
そして、1)本発明の樹脂組成物を用いて成形体を形成する方法としては、特に限定されず、既知の成形方法を用いることができる。このような成形方法としては、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、射出成型法などが挙げられる。これらの中でも、成形体の形状がシート状である場合、溶融押出し成形法が好ましく、比較的経済的で高品質な製品を得られる点で、Tダイからキャストロール面に押し出す方法が好ましく用いられる。また成形の際の条件(樹脂温度など)は、適宜設定することができる。
このように、上述した本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体では、通常、炭化水素系重合体は均一に分散した状態となる。
また、2)樹脂成形体の表面に炭化水素系重合体を供給して成形体を形成する方法としては、特に限定されず、塗布や浸漬など既知の供給方法を用いることができる。このような供給方法としては、バーコーター法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などが挙げられる。これらの中でも、バーコーター法が好ましく用いられる。
このように、樹脂成形体の表面に炭化水素系重合体を供給して樹脂膜を形成して得られる成形体では、通常、炭化水素系重合体は樹脂成形体の表面に偏在した状態となる。すなわち、当該成形体は、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体と、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を備えることとなる。なお、当該成形体において、炭化水素系重合体は、その一部が樹脂成形体に滲みこんでいてもよい。
(接合体)
本発明の接合体は、上述した本発明の成形体と、被着体としての基材とが接合してなる。本発明の接合体は、本発明の成形体を用いて形成されているため、成形体と被着体とが良好に接合しており、また寸法安定性に優れる。
<成形体>
成形体としては、上述した本発明の成形体を用いることができる。
<基材>
基材としては、特に限定されないが、有機基材、無機基材が挙げられる。
<<有機基材>>
有機基材としては、各種樹脂材料および任意に添加されるその他の成分からなる基材を用いることができる。
[樹脂材料]
ここで、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れも用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、「アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂」の項で上述した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂;等が挙げられる。
これらの樹脂材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、優れた透明性、機械的強度等の観点から、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体がより好ましい。
有機基材が、熱可塑性樹脂を主成分とする場合、有機基材中における熱可塑性樹脂の含有量は、有機基材を100質量%として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
また、有機基材が、熱硬化性樹脂を含む場合、有機基材中における熱硬化性樹脂の含有量は、有機基材を100質量%として、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
[その他の成分]
有機基材に含まれるその他の成分としては、「樹脂組成物」の項で上述した、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー等が挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[有機基材の製造方法]
上述した樹脂材料および任意に添加されるその他の成分を成形して有機基材を得る方法は、特に限定されず、「成形体」の項で上述した公知の成形方法を用いることができる。
[表面処理]
ここで、有機基材は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされていることが好ましい。これらのうち少なくとも何れかの表面処理が施された有機基材を用いれば、当該有機基材と成形体が一層良好に接合した接合体を得ることができるからである。
―プラズマ照射―
プラズマ照射としては、大気圧下でプラズマ照射を行う常圧プラズマ照射、減圧下でプラズマ照射を行う減圧プラズマ照射が挙げられ、より簡便に均一に照射を行う観点から、常圧プラズマ照射が好ましい。
常圧プラズマ照射は、大気圧下、水素、ヘリウム、窒素、酸素、アルゴンから選択される少なくとも1種のガス雰囲気下で行うことが好ましく、大気圧下、窒素と乾燥空気又は窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で行うことがさらに好ましい。
常圧プラズマ照射において、プラズマ照射の出力は0.1kW以上2kW以下であることが好ましい。プラズマ照射の照射速度は1cm/分以上100cm/分以下が好ましい。プラズマ発生源と有機基材との距離は1mm以上20mm以下が好ましい。
プラズマ照射を減圧下で行うときは、0.001kPa以上10kPa以下(絶対圧)の低圧ガス(アルゴン、酸素、窒素、又はこれらの混合ガス等)を用いてプラズマ照射を行うことが好ましい。
低圧ガスとしては、窒素と酸素との混合ガスを用いることが特に好ましい。窒素と酸素との混合比は体積比で10:1〜1:10であることが好ましい。減圧プラズマ照射において、プラズマ照射の出力は好ましくは50W以上500W以下である。
―紫外線照射―
紫外線照射は、窒素と乾燥空気又は酸素との混合ガスを流しながらエキシマ紫外線ランプを用いてエキシマ紫外線照射することが好ましい。該混合ガスの酸素濃度は、好ましくは0.01体積%以上15体積%以下、より好ましくは0.05体積%以上5体積%以下である。
エキシマ紫外線ランプと有機基材の被照射面との距離は、10mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。
照射の強度(照度)は、好ましくは5mW/cm以上200mW/cm以下、より好ましくは30mW/cm以上150mW/cm以下である。
―コロナ放電―
コロナ放電は、乾燥空気雰囲気下で行うことが好ましい。
コロナ放電の出力は好ましくは50W以上1000W以下、放電電量は好ましくは20W・分/m以上550W・分/m以下である。電極と有機基材との距離は1mm以上20mm以下が好ましい。
―火炎吹き付け―
火炎吹き付けは、有機基材の表面に対して燃料ガスの火炎を吹き付けることにより行う。火炎の温度は、好ましくは500℃以上1,500℃以下、より好ましくは550℃以上1,200℃以下、更に好ましくは600℃以上900℃以下である。火炎の温度は、使用する燃料ガスの種類や、燃料ガスおよび空気の流量によって、適宜調節することができる。
火炎による処理時間は、好ましくは0.1秒以上100秒以下、より好ましくは0.3秒以上30秒以下、更に好ましくは0.5秒以上20秒以下である。
上述した表面処理は1種を単独で、また2種以上を組み合わせて実施することができる。そしてこれらの表面処理の中でも、成形体と有機基材が一層強固に接合してなる接合体を安定して製造する観点から、プラズマ照射、コロナ放電および火炎吹き付けが好ましく、プラズマ照射およびコロナ放電がより好ましい。
<<無機基材>>
無機基材としては、各種無機材料からなる基材を用いることができる。ここで、無機材料としては、ガラス、銅、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、プラチナなどが挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
<基材の形状>
ここで、基材の形状は特に限定されず、所望の用途に応じてシート状、板状など任意の形状とすることができる。
なお、基材がシート状または板状である場合、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
シート状または板状の基材の厚みは均一であっても不均一であっても良い。また、シート状または板状の基材は、凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、貫通孔等の不均一構造を有するものであっても良い。
<接合体の性状>
ここで、成形体と基材の接着強度は、特に限定されないが、好ましくは4N/cm以上、より好ましくは6N/cm以上、更に好ましくは8N/cm以上、特に好ましくは10N/cm以上である。接着強度が4N/cm以上であれば、成形体と基材が十分強固に接合しているといえ、これらが容易には剥離しない。接着強度は、実施例に記載されたJIS 6854−3:1999の方法により測定することができる。
なお、成形体と基材の接着強度の上限は、特に限定されないが、例えば30N/cm以下である。
また、表面に炭化水素系重合体を含む樹脂膜が形成されてなる成形体と、基材とを接着して得られた接合体においては、経時により炭化水素系重合体が成形体および/または基材(特には有機基材)中に滲み込んで、成形体および/または基材中に分散していてもよい。
そして、本発明の接合体の構造としては、少なくとも一つ以上の本発明の成形体と、少なくとも一つ以上の基材とを備えていれば特に限定されない。すなわち、本発明の接合体は、成形体と基材をそれぞれ複数有していてもよく、例えば、成形体/基材の構成からなる2部材接合体(2層接合体);成形体/基材/成形体、基材/成形体/基材等の構成からなる3部材接合体(3層接合体);成形体/基材/成形体/基材の構成からなる4部材接合体(4層接合体);成形体/基材/成形体/基材/成形体、基材/成形体/基材/成形体/基材等の構成からなる5部材接合体(5層接合体)といった構造をとることができる。
また、本発明の接合体は、ハードコート層、金属メッキ部位などを有していてもよい。
なお、本発明の接合体を合わせガラスとして使用する場合、使用する2枚以上のガラス板同士は、厚さや材質等が互いに同一であっても、相異なっていてもよい。使用するガラス板の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.05mm以上10mm以下である。また、例えば、ガラス板/シート状の成形体/ポリカーボネート樹脂からなるシート状の有機基材/シート状の成形体/ガラス板のような5層構成となるような、耐貫通性に優れた合わせガラス(それぞれの厚みは、例えば、1mm(ガラス板)/0.8mm(成形体)/2mm(有機基材)/0.8mm(成形体)/1mm(ガラス板))等とすることもできる。
(接合体の製造方法)
ここで、上述した本発明の接合体を得る方法は、特に限定されない。例えば、上述した接合体は、本発明の接合体の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の接合体の製造方法は、所定のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体と、基材とを接着して接合体を製造する方法である。
そして、本発明の接合の製造方法は、
樹脂成形体と基材の少なくとも一方の表面に、所定の炭化水素系重合体を、樹脂成形体に含まれるアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下供給し、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程(樹脂膜形成工程)と、
樹脂成形体と基材とを、樹脂膜を介して接着する工程(接着工程)と、
を少なくとも含む。
上述した工程を経れば、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体を、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して、被着体としての基材に(特に低温条件下でも)良好に接着させて、寸法安定性に優れると共に、成形体と基材が良好に接合してなる接合体を得ることができる。
<樹脂膜形成工程>
樹脂膜形成工程では、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体と、基材の少なくとも一方の表面に、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する。
<<樹脂成形体>>
樹脂成形体としては、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂および任意にその他の成分を含む組成物を成形してなる樹脂成形体を用いることができる。
ここで、樹脂成形体の成形に用いられる、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂、その他の成分、成形方法等は、「樹脂組成物」および「成形体」の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
<<基材>>
基材としては、「接合体」の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
<<樹脂膜>>
樹脂膜の形成に用いられる炭化水素系重合体、および炭化水素系重合体の樹脂成形体表面への供給方法は、「樹脂組成物」および「成形体」の項で上述したものと同様である。
そして、本発明の接合体の製造方法において、炭化水素系重合体の供給量は、樹脂成形体に含まれるアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部当たり、0.01質量部以上50質量部以下であることが必要であり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、3質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。炭化水素系重合体の供給量が上記下限値未満であると、成形体を基材に対して良好に接合させることができない。また、炭化水素系重合体の供給量が上記上限値を超えると、成形体および接合体の寸法安定性が低下する。
なお、「炭化水素系重合体の供給量」とは、樹脂成形体と基材の双方の表面に炭化水素系重合体を供給する場合は、その合計量を意味する。
<接着工程>
接着工程では、樹脂成形体と、基材とを、少なくともそれらの一方の表面に供給された炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して接着させる。ここで、接着させる方法としては、加熱圧着が好ましい。
加熱圧着の方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂成形体と基材を、樹脂膜を介して重ね合わせ、得られた積層物を可撓性の袋(以下、「バッグ」ということがある。)に入れて、バッグ内の空気を脱気しながら、加熱圧着して接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物をバックに入れて、バッグ内の空気を脱気した後、オートクレーブ中で、加熱圧着して貼り合わせて接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物を熱プレス装置で加熱圧着して接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物を、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の加圧機を使用して加熱圧着する方法等を用いることができる。
なお、接着工程における接着は、樹脂膜の形成時から(樹脂膜形成工程終了時から)、好ましくは24時間以内、より好ましくは18時間以内、更に好ましくは12時間以内、特に好ましくは1時間以内に行う(換言すると、樹脂膜の形成時から、好ましくは24時間以内、より好ましくは18時間以内、更に好ましくは12時間以内、特に好ましくは1時間以内に、樹脂成形体と基材とを樹脂膜を介して接触させる)。
樹脂成形体と基材とを、樹脂膜を介して接着させる際の温度(接着温度)は、樹脂成形体に含まれるアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂のビカット軟化温度未満であることが好ましい。アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂のビカット軟化温度未満で接着を行うことで、熱による変形を抑制することができる。
具体的に、接着温度としては、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。接着温度が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K7206A法に基づいて測定することができる。このビカット軟化温度の測定は、プラスチック試験片に10Nの試験荷重をかけて、昇温速度50℃/時間で伝熱媒体を昇温させ、針状圧子が試験片の表面から1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を測定することにより行う。そして、測定装置としては、例えば、東洋精機製のHDT(ヒートディストーションテスター)装置を用いることができる。
オートクレーブ中で加熱圧着を行う際の圧力(加熱圧着圧力)は、好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以上1.2MPa以下、更に好ましくは0.3MPa以上1.0MPa以下である。加熱圧着圧力が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
熱プレス装置を使用して加熱圧着を行う際の圧力(加熱圧着圧力)は、好ましくは0.1MPa以上10MPa以下、より好ましくは0.2MPa以上5MPa以下、更に好ましくは0.3MPa以上2MPa以下である。加熱圧着圧力が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
オートクレーブ中で加熱圧着を行う際の時間(加熱圧着時間)は、十分な生産性を維持する観点から、好ましくは10分以上60分以下、より好ましくは15分以上50分以下、更に好ましくは20分以上40分以下である。
熱プレス装置を使用して加熱圧着を行う際の時間(加熱圧着時間)は、十分な生産性を維持する観点から、好ましくは0.2分以上15分以下、より好ましくは0.4分以上10分以下、更に好ましくは0.5分以上5分以下である。
<その他の工程>
本発明の接合体の製造方法は、上述した樹脂膜形成工程、接着工程以外の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、有機基材の表面に対して「基材」の項で上述した表面処理を行う工程が挙げられる。
以下に実施例を示しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂および炭化水素系重合体の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用いた。
(2)接着強度
得られた接合体から、長さ200mm×幅25mmの試験片を採取した。試験片の非接合部位(積層の際に剥離フィルムを挟んだことにより、成形体と基材が接合していない部位)から、JIS K6854−3:1999(接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離)に準じて、オートグラフ(島津製作所製、製品名「AGS−X」)を使用して、剥離速度100mm/分で成形体と基材を剥離し、剥離強度(接着強度)を測定した。
(3)寸法安定性
成形体(実施例1〜10:炭化水素系重合体が塗布された樹脂成形体、比較例1〜3:炭化水素系重合体が塗布されていない樹脂成形体)を、厚さ3.2mm、幅200mm、長さ200mmの2枚の白板ガラスに挟み、真空プレス装置にて、130℃、減圧下で加熱脱気した後、10分間加熱加圧して接着し、合わせガラス試験片を作成した。この合わせガラス試験片を使用して、オーブン中で、架台を用いて片面のガラス板のみ保持し、もう一方のガラス板は保持しないように垂直に立てて、90℃で168時間保存した後、合わせガラス試験片を目視観察し、成形体の熱変形による位置ずれを評価した。
寸法安定性を、位置ずれが観察されない場合を「良好」、位置ずれが観察される場合を「不良」として評価した。
(4)耐光性
成形体(実施例1〜10:炭化水素系重合体が塗布された樹脂成形体、比較例1〜3:炭化水素系重合体が塗布されていない樹脂成形体)を使用して、JIS K−6251に記載のダンベル状3号形試験片を作成した。キセノンウェザーメーターを使用し、厚さ3.2mmの白板ガラスを通して試験片に光照射するように試験片を設置し、ブラックパネル温度83℃、放射照度60W/m、水暴露無しにして、700時間の照射を行い、照射前に対する照射後の引張り強度および伸びの保持率を測定した。
耐光性を、照射後の引張り強度が照射前の引張り強度の80%以上で、かつ、照射後の伸びが照射前の伸びの80%以上である場合を「良好」、これら2つのうち少なくとも1つが80%未満である場合を「不良」として評価した。
(実施例1)
<樹脂成形体の調製>
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂としてのアルコキシシリル基含有ポリエチレン(三菱ケミカル社製、製品名「リンクロン(登録商標) SS732N」、ビカット軟化温度95℃)のペレット100部に対して、紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)0.2部を添加して、均等に混合した。得られた混合物を、直径20mmのスクリューを備えた単軸押出し機、Tダイ(幅300mm)、および、梨地エンボスパターンを有するキャストロール(幅300mm)を備えたシート引取機からなるフィルム成形機(商品名「SZW20−25MG」、テクノベル社製)を使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃、キャストロール温度60℃の成形条件でシート状の樹脂成形体(厚さ0.40mm、幅230mm)を作製した。樹脂成形体はロール状に巻き取り回収した。
<有機基材の準備>
ポリカーボネート樹脂のシート(帝人化成社製、製品名「パンライト(登録商標)シート」、PC−2151、厚さ0.5mm)から、縦300mm×横200mmのシート状の試験片を作製し、この試験片の片面に対して、コロナ表面処理装置(ウェッジ社製、製品名「A3SW−LW」)を使用してコロナ放電による表面処理(出力60W、電極とシートの距離10mm、処理速度1m/分)を行い、表面処理が施されたポリカーボネート樹脂からなる有機基材を準備した。
<樹脂膜形成工程>
上述の樹脂成形体の片方の主面に、バーコーター(番線No.2)を用いて、炭化水素系重合体としての流動パラフィン(製品名ハイコール(登録商標)K350、カネダ株式会社製、Mn700、ヨウ素価0.2、水素化物)を塗布し、縦300mm×横200mmのシート状に切り出し、成形体とした。なお、流動パラフィンの塗布量は、樹脂成形体中のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100部当たり0.9部とした。得られた成形体(炭化水素系重合体が塗布された樹脂成形体)を用いて、寸法安定性および耐光性を評価した。結果を表1に示す。
<接着工程>
樹脂膜形成工程終了時から1時間以内に、上述の有機基材と、炭化水素系重合体が塗布された上述の樹脂成形体とを、有機基材における表面処理面と、樹脂成形体における炭化水素系重合体の塗布面が対向するように重ねて積層物とした。この際、縦端部の50mmには離形フィルムを挟んだ。
この積層物を、NY(ナイロン)/接着層/PP(ポリプロピレン)の層構成を有する厚さ75μmの樹脂製の袋に入れた。袋の開口部の中央部を200mm幅残して両側をヒートシーラーでヒートシールした後、密封パック器(パナソニック社製、製品名「BH−951」)を使用して、袋内を脱気しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、温度55℃、圧力0.8MPaで30分間加熱圧着し、接合体を作製した。得られた接合体を用いて、接着強度を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
流動パラフィンの塗布量を、樹脂成形体中のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100部当たり0.1部(実施例2)、5部(実施例3)、20部(実施例4)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂として、アルコキシシリル基含有ポリエチレンに替えてアルコキシシリル基含有ポリプロピレン(三菱ケミカル社製、製品名「リンクロン PK500N」、ビカット軟化温度135℃)を用い、そして流動パラフィンの塗布量を、樹脂成形体中のアルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100部当たり50部とし、加熱圧着時の温度を65℃とした以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
表面処理が施されたポリカーボネート樹脂からなる有機基材に代えて、銅からなる無機基材(縦300mm×横200mm×厚さ0.1mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
ポリカーボネート樹脂のシートに代えてポリエチレンテレフタレートのシート(東レ社製、製品名「ルミラー(登録商標) S−10」、縦300mm×横200mm×厚さ0.25mm)に対して実施例1と同様に表面処理を行い、表面処理が施されたポリエチレンテレフタレートからなる有機基材を用いた以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂として、アルコキシシリル基含有ポリエチレンに替えてアルコキシシリル基含有ポリプロピレン(三菱ケミカル社製、製品名「リンクロン PK500N」、ビカット軟化温度135℃)を用い、加熱圧着時の温度を65℃とした以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例9)
炭化水素系重合体として、流動パラフィンに代えて水添ポリブテン(日油社製、製品名「日油ポリブテン10SH」、Mn1500、ヨウ素価0.2)を用いた以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例10)
炭化水素系重合体として、流動パラフィンに代えてポリブテン(日油社製、製品名「日油ポリブテン10N」、Mn1000、ヨウ素価17.7)を用いた以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
樹脂膜形成工程を実施しなかった(即ち、接着工程において炭化水素系重合体が塗布されていない樹脂成形体を用いた)以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
以下のようにして調製した樹脂成形体を用い、表面処理が施されたポリカーボネート樹脂からなる有機基材に代えて、ガラスからなる無機基材(縦300mm×横200mm×厚さ0.5mm)を用い、樹脂膜形成工程を実施せず(即ち、接着工程において炭化水素系重合体が塗布されていない樹脂成形体を用い)、そして、加熱圧着時の温度を65℃とした以外は、実施例1と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
<樹脂成形体の調製>
アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂としてのアルコキシシリル基含有ポリプロピレン(三菱ケミカル社製、製品名「リンクロン PK500N」、ビカット軟化温度135℃)100部に対して、紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)0.2部を均等に混合した。得られた混合物を、直径20mmのスクリューを備えた単軸押出し機、Tダイ(幅300mm)、および、梨地エンボスパターンを有するキャストロール(幅300mm)を備えたシート引取機からなるフィルム成形機(商品名:「SZW20−25MG」、テクノベル社製)を使用し、液添ポンプで炭化水素系重合体としての流動パラフィン(製品名「ハイコール K350」、カネダ株式会社製、Mn700、ヨウ素価0.2、水素化物)55部を添加しながら、溶融樹脂温度160℃、Tダイ温度160℃、キャストロール温度60℃の成形条件でシート状の樹脂成形体(厚さ0.40mm、幅230mm)を作製した。樹脂成形体はロール状に巻き取り回収した。
(比較例3)
炭化水素系重合体として、流動パラフィンに代えて水添ポリブテン(日油社製、製品名「日油ポリブテン10SH」、Mn1500、ヨウ素価0.2)を用いた以外は、比較例2と同様にして接合体を製造し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
なお、以下に示す表1および表2中、
「Si−PE」は、アルコキシシリル基含有ポリエチレンを示し、
「Si−PP」は、アルコキシシリル基含有ポリプロピレンを示し、
「PC」は、ポリカーボネート樹脂を示し、
「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを示し、
「Cu」は、銅を示し、
「使用量[質量部]」は、「アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂100質量部
当たりの使用量[質量部]」を示す。
Figure 2021038287
Figure 2021038287
表1および2より、アルコキシシリル基含有熱可塑性樹脂を含む樹脂成形体と基材の接着を、所定の炭化水素系重合体を所定範囲内の量用いて行った実施例1〜10では、接着強度および寸法安定性に優れる接合体が得られていることが分かる。
一方、接着を、所定の炭化水素系重合体を用いずに行った比較例1では、接着強度が低下することが分かる。また、所定の炭化水素系重合体の使用量が所定の上限を超える比較例2および3では、寸法安定性が低下することが分かる。更に比較例2および3では、接着強度が低下することも分かる。
本発明によれば、被着体に対して良好に接着し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、被着体に対して良好に接着し得り、且つ寸法安定性に優れる成形体を提供することができる。
そして、本発明によれば、寸法安定性に優れる成形体を備え、当該成形体が被着体としての基材に良好に接合している接合体を提供することができる。
10 成形体
20 樹脂成形体
20S 主面
30 樹脂膜

Claims (14)

  1. アルコキシシリル基を有する樹脂と、炭化水素系重合体を含む樹脂組成物であって、
    前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、
    前記炭化水素系重合体は、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下であり、そして、
    前記樹脂組成物中の前記炭化水素系重合体の含有量が、前記樹脂組成物中の前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下である、樹脂組成物。
  2. 前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. アルコキシシリル基を有する樹脂と、炭化水素系重合体を含む成形体であって、
    前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、
    前記炭化水素系重合体は、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下であり、そして、
    前記成形体中の前記炭化水素系重合体の含有量が、前記成形体中の前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下である、成形体。
  5. 前記アルコキシシリル基を有する樹脂を含む樹脂成形体と、前記樹脂成形体の少なくとも一部の表面を覆い、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜とを備える、請求項4に記載の成形体。
  6. 前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方である、請求項4または5に記載の成形体。
  7. 前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下である、請求項4〜6の何れかに記載の成形体。
  8. 請求項4〜7の何れかに記載の成形体と、基材とが接合してなる接合体。
  9. 前記成形体と前記基材の接着強度が4N/cm以上である、請求項8に記載の接合体。
  10. アルコキシシリル基を有する樹脂を含む樹脂成形体と、基材とを接着して接合体を製造する方法であって、
    前記アルコキシシリル基を有する樹脂は、芳香族ビニル化合物−鎖状共役ジエン化合物系ブロック共重合体以外の熱可塑性樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる樹脂であり、
    前記樹脂成形体と前記基材の少なくとも一方の表面に、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下である炭化水素系重合体を、前記アルコキシシリル基を有する樹脂100質量部当たり0.01質量部以上50質量部以下供給し、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程と、
    前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を含む、接合体の製造方法。
  11. 前記アルコキシシリル基を有する樹脂が、アルコキシシリル基含有ポリエチレンとアルコキシシリル基含有ポリプロピレンの少なくとも一方である、請求項10に記載の接合体の製造方法。
  12. 前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下である、請求項10または11に記載の接合体の製造方法。
  13. 前記基材が有機基材であり、
    前記有機基材の前記樹脂成形体との接着面は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされている、請求項10〜12の何れかに記載の接合体の製造方法。
  14. 前記接着における接着温度が、前記アルコキシシリル基を有する樹脂のビカット軟化温度未満である、請求項10〜13の何れかに記載の接合体の製造方法。

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