JP7443699B2 - 接合体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、接合体の製造方法に関する。
従来から、医薬品や食品の包装、太陽電池モジュール用封止材、有機EL素子用封止材、電子部品用封止材、および合わせガラス中間膜等の作製に、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックと、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体に対して、水素化反応を施して得られる重合体(ブロック共重合体水素化物)が用いられている。
このようなブロック共重合体水素化物は、通常、他の成分と混合し、得られた樹脂組成物を所望の形状を有する樹脂成形体に成形することで、上述した用途に用いられる。
例えば、特許文献1では、アルコキシシリル基が導入された所定のブロック共重合体水素化物100重量部に対し、数平均分子量が300~5000である炭化水素系重合体1~50重量部を配合してなる樹脂組成物が提案されている。そして特許文献1によれば、当該樹脂組成物を用いて形成される樹脂成形体は、ガラスや金属などの材料からなる基材(被着体)と良好に接着することができ、樹脂成形体と基材とが強固に接着した接合体を得ることができる。
国際公開第2014/077267号
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、接着温度を低下させた場合であっても、樹脂成形体と基材を一層良好に接着させることが求められていた。
そこで、本発明は、接着温度が低い場合であっても、樹脂成形体と基材とを良好に接着して、樹脂成形体と基材の接着強度に優れる接合体を得る方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、所定のブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体を、低温条件で被着体としての基材に接着させて接合体を作製するに際し、樹脂成形体および/または基材の少なくとも一方の表面に所定の性状を有する炭化水素系重合体を所定量以上供給し、当該炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して樹脂成形体と基材とを接着させることで、樹脂成形体と基材の接着強度に優れる接合体を作成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接合体の製造方法は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とを有するブロック共重合体であって、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwa、前記鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwbとしたときに、waとwbとの比(wa:wb)が30:70~65:35であるブロック共重合体の、前記構造単位[b]由来の炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体と、基材とを接着して接合体を製造する方法であって、前記樹脂成形体と前記基材の少なくとも一方の表面に、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下である炭化水素系重合体を、前記ブロック共重合体水素化物100質量部当たり1質量部以上供給し、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を含むことを特徴とする。このような工程を経れば、接着温度が低い場合であっても、樹脂成形体と基材とを炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して良好に接着させることができ、樹脂成形体と基材の接着強度に優れる接合体を得ることができる。
ここで、本発明の接合体の製造方法において、前記ブロック共重合体水素化物がアルコキシシリル基を有することが好ましい。アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物を用いれば、樹脂成形体と基材の接着強度を更に向上させることができる。
そして、本発明の接合体の製造方法において、前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下であることが好ましい。ヨウ素価が上述した値以下である炭化水素系重合体を用いれば、接合体の耐光性を向上させることができる。
また、本発明の接合体の製造方法は、前記基材が樹脂材料を含む基材であり、前記基材の前記樹脂成形体との接着面は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされていることが好ましい。上述した表面処理の何れかが施された基材を用いれば、樹脂成形体と基材の接着強度を更に向上させることができる。
更に、本発明の接合体の製造方法は、前記接着における接着温度が、前記ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満であることが好ましい。本発明の製造方法によれば、ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満で接着を行ったとしても、樹脂成形体と被着体とが良好に接合してなる接合体を得ることができる。また、ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満で接着を行うことで、樹脂成形体の熱による変形を抑制することができる。
ここで、本発明の接合体の製造方法は、前記樹脂膜を形成する工程終了時から、24時間以内に前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を行うことが好ましい。
本発明の製造方法によれば、接着温度が低い場合であっても、樹脂成形体と基材とを良好に接着して、樹脂成形体と基材の接着強度に優れる接合体を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の接合体の製造方法は、所定のブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体と、基材とを接着して接合体を製造する方法である。
そして、本発明の接合の製造方法は、
樹脂成形体と基材の少なくとも一方の表面に、所定の炭化水素系重合体を、樹脂成形体に含まれるブロック共重合体水素化物100質量部当たり1質量部以上供給し、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程(樹脂膜形成工程)と、
樹脂成形体と基材とを、樹脂膜を介して接着する工程(接着工程)と、
を少なくとも含む。
上述した工程を経れば、低温の接着条件であっても、ブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体を、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して、被着体としての基材に良好に接着させることができる。
(樹脂膜形成工程)
樹脂膜形成工程では、ブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体と、基材の少なくとも一方の表面に、炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する。
<樹脂成形体>
樹脂成形体としては、ブロック共重合体水素化物および任意にその他の成分を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体を用いることができる。
<<ブロック共重合体水素化物>>
ブロック共重合体水素化物は、所定のブロック共重合体を水素化してなる重合体である。
[ブロック共重合体]
ブロック共重合体は、ブロック共重合体水素化物の前駆体であり、芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とを含有する高分子である。
―重合体ブロック[A]―
ここで、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[A]中の、芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位および/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[A]に対し、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]の含有量が少なすぎると、樹脂成形体の熱による変形が抑制できない(即ち、寸法安定性が低下する)おそれがある。
ブロック共重合体に含まれる複数の重合体ブロック[A]同士は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同一であっても、相異なっていても良い。例えば、複数の重合体ブロック[A]それぞれの構造単位の組成および/またはブロック長は、互いに同一であっても、相異なっていても良い。
―重合体ブロック[B]―
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位および/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[B]に対して、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]の含有量が上記範囲にあると、樹脂成形体に柔軟性が付与されるので好ましい。
ブロック共重合体が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同一であっても、相異なっていても良い。例えば、複数の重合体ブロック[B]それぞれの構造単位の組成および/またはブロック長は、互いに同一であっても、相異なっていても良い。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類;4-クロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4-メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類;4-フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
鎖状共役ジエン化合物(直鎖状共役ジエン化合物、分岐鎖状共役ジエン化合物)としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、1,3-ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
その他のビニル化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン等の炭素数2~20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の炭素数5~20の環状オレフィン;等の、極性基を含有しないものが好ましく、炭素数2~20の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
―ブロック共重合体の性状―
ここで、ブロック共重合体中の重合体ブロック[A]の数は、通常3個以下、好ましくは2個である。ブロック共重合体中の重合体ブロック[B]の数は、通常2個以下、好ましくは1個である。
ブロック共重合体のブロックの形態は、特に限定されず、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるのが、機械的強度に優れ好ましい。
ブロック共重合体の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]-[B]-[A])である。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]がブロック共重合体全体に占める質量分率をwaとし、ブロック共重合体中の全鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]がブロック共重合体全体に占める質量分率をwbとしたときに、waとwbとの比(wa:wb)は、30:70~65:35であり、好ましくは40:60~58:42、より好ましくは45:55~55:45である。waが多過ぎる場合は、樹脂成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、waが少な過ぎる場合は、樹脂成形体の剛性が低下するおそれがある。
なお、「waとwbとの比(wa:wb)」については、ブロック共重合体を製造する過程において、ブロック共重合体の重合に用いた芳香族ビニル化合物、鎖状共役ジエン化合物およびその他のビニル化合物の部数と、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定されたブロック共重合体の各ブロックの重合終了段階での用いたモノマーの重合体への重合転化率より、算出することができる。
また、ブロック共重合体中の全重合体ブロック[A]が、ブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]が、ブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、好ましくは30:70~65:35、より好ましくは40:60~58:42、更に好ましくは45:55~55:45である。wAが多過ぎる場合は、樹脂成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、wAが少な過ぎる場合は、樹脂成形体の剛性が低下するおそれがある。
そして、ブロック共重合体の分子量は、樹脂成形体の寸法安定性および機械的強度を向上させる観点から、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは35,000以上、より好ましくは38,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは100,000以下である。また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、樹脂成形体の寸法安定性および機械的強度を向上させる観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.7以下である。
―ブロック共重合体の製造方法―
ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、ブロック共重合体の製造方法としては、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号等に記載の方法が挙げられる。
[水素化]
上述したブロック共重合体の少なくとも鎖状共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合を水素化することで、ブロック共重合体水素化物を得ることができる。
ここで、ブロック共重合体水素化物は、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよいし、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
水素化に際して、ブロック共重合体の、構造単位[b](鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位)由来の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、樹脂成形体の耐光性及び寸法安定性を向上させる観点から、90%以上であることが必要であり、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
例えば、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、90%以上であることが必要であり、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合を水素化することにより、樹脂成形体の耐光性および寸法安定性が向上する。そして、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率が90%を下回る場合、樹脂成形体の耐光性および寸法安定性が劣るおそれがある。また、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率を15%以下に抑制することにより、樹脂成形体の寸法安定性を維持し易くなる。
また例えば、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する場合、水素化率は、全炭素-炭素不飽和結合の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。水素化率を90%以上にすることにより、樹脂成形体は、耐光性及び寸法安定性に優れる。
ブロック共重合体水素化物の、鎖状共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率並びに芳香族ビニル化合物に由来する炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、前駆体であるブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物のH-NMRを測定することにより、求めることができる。
ブロック共重合体中の不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法に従って行えばよい。
ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合を選択的に水素化する方法としては、例えば、特開2015-78090号公報等に記載された公知の水素化方法が挙げられる。
また、ブロック共重合体の鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化する方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法が挙げられる。
水素化反応終了後においては、水素化触媒、或いは、水素化触媒および重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液から溶剤を除去してブロック共重合体水素化物を回収することができる。
回収したブロック共重合体水素化物は、通常、ペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応やシートの成形加工に供することができる。
ブロック共重合体水素化物の分子量は、樹脂成形体に十分な溶融成形性と機械的強度を付与する観点から、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは35,000以上、より好ましくは38,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは100,000以下である。
また、ブロック共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、樹脂成形体に十分な溶融成形性と機械的強度を付与する観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.7以下である。
[アルコキシシリル基の導入]
ブロック共重合体水素化物は、樹脂成形体を基材に対して一層良好に接着させて、樹脂成形体と基材の接着強度を更に向上させる観点から、アルコキシシリル基を有することが好ましい。
ここで、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物を得る方法は特に限定されない。例えば、上述したブロック共重合体水素化物に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応させることにより、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物を得ることができる。
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1~20アルキル)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;等が挙げられる。これらの内、樹脂成形体と基材の接着強度をより一層向上させる観点から、トリメトキシシリル基が特に好ましい。また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物に、炭素数1~20のアルキレン基や、炭素数2~20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
ブロック共重合体水素化物へのアルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。アルコキシシリル基の導入量が上記上限値以下であれば、得られる変性ブロック共重合体水素化物を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりする等の問題が生じ難くなる。また、アルコキシシリル基の導入量が上記下限値以上であれば、樹脂成形体を基材に対して特に良好に接着させることができる
なお、アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、H-NMRスペクトルにて算出することができる。
用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入するものであれば、特に限定されない。エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、等が好適に用いられる。
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
有機過酸化物としては、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下のものが好ましく使用される。例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
有機過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物100質量部に対して、通常0.05質量部以上2質量部以下であり、好ましくは0.08質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
上記のブロック共重合体水素化物とエチレン性不飽和シラン化合物とを、有機過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することにより、ブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入することができる。二軸混練機による混練温度は、通常180℃以上220℃以下であり、好ましくは185℃以上、より好ましくは190℃以上であり、好ましくは210℃以下、より好ましくは200℃以下である。加熱混練時間は、通常0.1分以上10分以下、好ましくは0.2分以上、より好ましくは0.3分以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは2分以下である。
具体的には、ブロック共重合体水素化物へのアルコキシシリル基の導入は、温度および滞留時間が上記範囲になるようにして、ブロック共重合体水素化物、エチレン性不飽和シラン化合物および有機過酸化物を連続的に混練、押出しをすればよい。
変性ブロック共重合体水素化物の分子量は、樹脂成形体の寸法安定性及び機械的強度を向上させる観点から、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは35,000以上、より好ましくは38,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは100,000以下である。
また、分子量分布(Mw/Mn)は、樹脂成形体の寸法安定性及び機械的強度を向上させる観点から、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。
<<その他の成分>>
樹脂組成物および樹脂成形体に任意に含まれるその他の成分としては、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー、ブロッキング防止剤、水分吸着剤(ハイドロタルサイトなどの吸湿性粒子)等が挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらその他の成分としては、既知のもの、例えば、国際公開第2014/077267号、特開2019-131724号公報に記載のものを用いることができる。
<<樹脂成形体の製造方法>>
樹脂成形体は、上記ブロック共重合体水素化物、および任意に上記その他の成分を含む樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
ブロック共重合体水素化物に、任意に用いられるその他の成分を配合して樹脂組成物を調製する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用できる。
例えば、ブロック共重合体水素化物のペレットおよびその他の成分を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出し機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレット状にする方法や、ブロック共重合体水素化物を、サイドフィーダーを備えた二軸押出し機により、サイドフィーダーからその他の成分を連続的に添加しながら、溶融混練して押出し、ペレット状にする方法等によって、ブロック共重合体水素化物およびその他の成分が均一に分散された樹脂組成物を製造することができる。
上述した樹脂組成物を、既知の成形方法を用いて成形して樹脂成形体を得ることができる。このような成形方法としては、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、射出成型法などが挙げられる。これらの中でも、樹脂成形体の形状がシート状である場合、溶融押出し成形法が好ましく、比較的経済的で高品質な製品を得られる点で、Tダイからキャストロール面に押し出す方法が好ましく用いられる。また成形の際の条件(樹脂温度など)は、適宜設定することができる。
<<樹脂成形体の形状>>
樹脂成形体の形状は特に限定されず、所望の用途に応じてシート状など任意の形状とすることができる。
なお、樹脂成形体がシート状である場合、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
シート状の樹脂成形体の厚みは均一であっても不均一であっても良い。また、シート状の成形体は、凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、貫通孔等の不均一構造を有するものであっても良い。
<基材>
上述した樹脂成形体を接着させる被着体としての基材は、所望の接合体の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、接合体が有機ELデバイスである場合、樹脂成形体の接着対象である基材としては、円偏光板や、有機EL素子(SiO、SiN、Alなどの無機膜により表面が被覆されていてもよい。)を用いることができる。また、例えば、接合体が合わせガラスである場合、樹脂成形体の接着対象である基材としては、ガラス板を用いることができる。
<<基材の構成材料>>
基材を構成する主たる材料としては、樹脂材料、無機材料が挙げられる。また基材の構成材料としては、樹脂材料および無機材料以外の成分(その他の成分)を用いることもできる。更に、基材の作製には、樹脂材料と無機材料を併用することもできる。
[樹脂材料]
樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れも用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチルペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・ビニルノルボルネン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;
エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体水素化物、シクロヘキサジエン重合体等のシクロオレフィンポリマー;
エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体に例示されるオレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;
エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー樹脂;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;
ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルオキシド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のビスフェノール類と塩化カルボニル等のカルボニル化合物との反応で得られるポリカーボネート樹脂;
ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸トリシクロデシル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体;
エチレン・酢酸ビニル共重合体;
ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等の含ハロゲン系樹脂;
ポリウレタン系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の芳香族系樹脂;
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T等のポリアミド系樹脂;等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、
エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂;等が挙げられる。
これらの樹脂材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、優れた透明性、機械的強度等の観点から、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体がより好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(共)重合体」は、単独重合体および/または共重合体を意味する。
[無機材料]
無機材料としては、ガラス、銅、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、プラチナ、SiO(二酸化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)、Al(アルミナ)などが挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
[その他の成分]
その他の成分は特に限定されないが、基材が上述した樹脂材料を含む基材である場合、その他の成分としては、「樹脂成形体」の項で上述した、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤等を用いることができる。これらは、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<<基材の製造方法>>
基材を製造する方法は特に限定されず、基材の種類、形状等に応じて既知の方法を選択して採用すればよい。
<<基材の表面処理>>
ここで、基材が樹脂材料を含む基材である場合、基材は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされていることが好ましい。これらのうち少なくとも何れかの表面処理が施された基材を用いれば、樹脂成形体と基材の接着強度を一層向上させることができるからである。
[プラズマ照射]
プラズマ照射としては、大気圧下でプラズマ照射を行う常圧プラズマ照射、減圧下でプラズマ照射を行う減圧プラズマ照射が挙げられ、より簡便に均一に照射を行う観点から、常圧プラズマ照射が好ましい。
常圧プラズマ照射は、大気圧下、水素、ヘリウム、窒素、酸素、アルゴンから選択される少なくとも1種のガス雰囲気下で行うことが好ましく、大気圧下、窒素と乾燥空気又は窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で行うことがさらに好ましい。
常圧プラズマ照射において、プラズマ照射の出力は0.1kW以上2kW以下であることが好ましい。プラズマ照射の照射速度は1cm/分以上100cm/分以下が好ましい。プラズマ発生源と基材との距離は1mm以上20mm以下が好ましい。
プラズマ照射を減圧下で行うときは、0.001kPa以上10kPa以下(絶対圧)の低圧ガス(アルゴン、酸素、窒素、又はこれらの混合ガス等)を用いてプラズマ照射を行うことが好ましい。
低圧ガスとしては、窒素と酸素との混合ガスを用いることが特に好ましい。窒素と酸素との混合比は体積比で10:1~1:10であることが好ましい。減圧プラズマ照射において、プラズマ照射の出力は好ましくは50W以上500W以下である。
[紫外線照射]
紫外線照射は、窒素と乾燥空気又は酸素との混合ガスを流しながらエキシマ紫外線ランプを用いてエキシマ紫外線照射することが好ましい。該混合ガスの酸素濃度は、好ましくは0.01体積%以上15体積%以下、より好ましくは0.05体積%以上5体積%以下である。
エキシマ紫外線ランプと基材の被照射面との距離は、10mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。
照射の強度(照度)は、好ましくは5mW/cm以上200mW/cm以下、より好ましくは30mW/cm以上150mW/cm以下である。
[コロナ放電]
コロナ放電は、乾燥空気雰囲気下で行うことが好ましい。
コロナ放電の出力は好ましくは50W以上1000W以下、放電電量は好ましくは20W・分/m以上550W・分/m以下である。電極と基材との距離は1mm以上20mm以下が好ましい。
[火炎吹き付け]
火炎吹き付けは、基材の表面に対して燃料ガスの火炎を吹き付けることにより行う。火炎の温度は、好ましくは500℃以上1,500℃以下、より好ましくは550℃以上1,200℃以下、更に好ましくは600℃以上900℃以下である。火炎の温度は、使用する燃料ガスの種類や、燃料ガスおよび空気の流量によって、適宜調節することができる。
火炎による処理時間は、好ましくは0.1秒以上100秒以下、より好ましくは0.3秒以上30秒以下、更に好ましくは0.5秒以上20秒以下である。
上述した表面処理は1種を単独で、また2種以上を組み合わせて実施することができる。そしてこれらの表面処理の中でも、樹脂成形体と基材の接着強度に一層優れる接合体を安定して製造する観点から、プラズマ照射、コロナ放電および火炎吹き付けが好ましく、プラズマ照射およびコロナ放電がより好ましい。
<<基材の形状>>
上述した基材の形状は特に限定されず、所望の用途に応じて決定すればよい。
なお、基材がシート状または板状である場合、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
また、シート状または板状の基材の厚みは均一であっても不均一であっても良い。また、シート状または板状の基材は、凹凸パターン、エンボス形状、段差、溝形状、貫通孔等の不均一構造を有するものであっても良い。
<樹脂膜>
そして、樹脂膜形成工程では、上述した樹脂成形体と基材の少なくとも一方の表面に、所定の炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する。
<<炭化水素系重合体>>
炭化水素系重合体としては、オレフィン重合体、オレフィン重合体を水素化してなる重合体(オレフィン重合体水素化物)を用いることができる。なお、オレフィン重合体とオレフィン重合体水素化物は併用してもよい。
オレフィン重合体としては、オレフィンに由来する構造単位が連なった高分子であれば特に限定されず、人工的に重合して得られる重合体であっても、天然の重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。
ここで、オレフィン重合体を人工的に重合して調製する場合、単量体であるオレフィンとしては、特に限定されず、イソブテン、1-ブテン、4-メチルペンテン、1-オクテン、ブタジエン、イソプレンなどの鎖状オレフィンや、各種環状オレフィンが挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、オレフィン重合体の水素化は、特に限定されず、既知の方法を用いて行うことができる。
そして、炭化水素系重合体の例としては、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンの水素化物、ポリブテン、ポリブテンの水素化物、ポリ-4-メチルペンテン、ポリ-4-メチルペンテンの水素化物、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-オクテンの水素化物、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体の水素化物、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂の水素化物、脂環族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂の水素化物、ポリイソプレン、ポリイソプレンの水素化物が挙げられる。これらは、1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、炭化水素系重合体は、アルコキシシリル基、エステル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水物基等の極性基を有してもよい。炭化水素系重合体は、これらの極性基を、1種単独で有していてもよく、また2種以上有していてもよい。
また、炭化水素系重合体としては、接合体の耐光性を向上させる観点から、オレフィン重合体水素化物が好ましい。
<<炭化水素系重合体の性状>>
炭化水素系重合体のヨウ素価は、2.0g/100g以下であることが好ましく、1.0g/100g以下であることがより好ましく、0.5g/100g以下であることが更に好ましい。ヨウ素価が上記上限値以下であれば、接合体の耐光性が向上する。
なお、「ヨウ素価」は、炭化水素系重合体100gと反応するヨウ素の量(g数)に換算して表される値(g/100g)である。そして、「ヨウ素価」は、炭化水素系重合体を濃度10質量%のシクロヘキサン溶液とし、一塩化ヨウ素を用いるウィイス(Wijs)法で測定することができる。
炭化水素系重合体の分子量は、THFを溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で、300以上5000以下であることが必要であり、好ましくは350以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは450以上であり、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下である。炭化水素系重合体のMnが上記下限値未満であると、接着等の際に気泡を発生し易くなるため好ましくない。また、炭化水素系重合体のMnが上記上限値を超えると、樹脂成形体を基材に対して良好に接合させることができない。
<<炭化水素系重合体の供給>>
樹脂成形体および/または基材の表面に炭化水素系重合体を供給して樹脂膜を形成する方法としては、特に限定されず、塗布や浸漬など既知の供給方法を用いることができる。このような供給方法としては、バーコーター法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、スピンコート法などが挙げられる。これらの中でも、バーコーター法、スピンコート法が好ましく用いられる。
そして、本発明の接合体の製造方法において、炭化水素系重合体の供給量は、樹脂成形体に含まれるブロック共重合体水素化物100質量部当たり、1質量部以上であることが必要であり、3質量部以上であることがより好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。炭化水素系重合体の供給量が上記下限値未満であると、樹脂成形体と基材の接着強度が低下する。また、炭化水素系重合体の供給量が上記上限値以下とすることで、炭化水素系重合体に起因する樹脂成形体および接合体の寸法安定性の低下を抑制することができる。
なお、「炭化水素系重合体の供給量」とは、樹脂成形体と基材の双方の表面に炭化水素系重合体を供給する場合は、その合計量を意味する。
<接着工程>
接着工程では、樹脂成形体と、基材とを、少なくともそれらの一方の表面に供給された炭化水素系重合体を含む樹脂膜を介して接着させる。ここで、接着させる方法としては、加熱圧着が好ましい。
加熱圧着の方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂成形体と基材を、樹脂膜を介して重ね合わせ、得られた積層物を可撓性の袋(以下、「バッグ」ということがある。)に入れて、バッグ内の空気を脱気しながら、加熱圧着して接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物をバックに入れて、バッグ内の空気を脱気した後、オートクレーブ中で、加熱圧着して貼り合わせて接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物を熱プレス装置で加熱圧着して接合体とする方法;上記と同様にして得られた積層物を、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の加圧機を使用して加熱圧着する方法等を用いることができる。
なお、接着工程における接着は、樹脂膜の形成時から(樹脂膜形成工程終了時から)、好ましくは24時間以内、より好ましくは18時間以内、更に好ましくは12時間以内、特に好ましくは1時間以内に行う(換言すると、樹脂膜の形成時から、好ましくは24時間以内、より好ましくは18時間以内、更に好ましくは12時間以内、特に好ましくは1時間以内に、樹脂成形体と基材とを樹脂膜を介して接触させる)。
樹脂成形体と基材とを、樹脂膜を介して接着させる際の温度(接着温度)は、樹脂成形体に含まれるブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満であることが好ましい。ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満で接着を行うことで、樹脂成形体の熱による変形を抑制することができる。
具体的に、接着温度としては、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。接着温度が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、樹脂成形体の熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
なお、ガラス転移温度は、実施例に記載された方法により測定することができる。
オートクレーブ中で加熱圧着を行う際の圧力(加熱圧着圧力)は、好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以上1.2MPa以下、更に好ましくは0.3MPa以上1.0MPa以下である。加熱圧着圧力が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
熱プレス装置を使用して加熱圧着を行う際の圧力(加熱圧着圧力)は、好ましくは0.1MPa以上10MPa以下、より好ましくは0.2MPa以上5MPa以下、更に好ましくは0.3MPa以上2MPa以下である。加熱圧着圧力が上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られ、また上記上限値以下であれば、熱変形を抑制しつつ気泡等の不良発生を十分に防止することができる。
オートクレーブ中で加熱圧着を行う際の時間(加熱圧着時間)は、十分な生産性を維持する観点から、好ましくは10分以上60分以下、より好ましくは15分以上50分以下、更に好ましくは20分以上40分以下である。
熱プレス装置を使用して加熱圧着を行う際の時間(加熱圧着時間)は、十分な生産性を維持する観点から、好ましくは0.2分以上15分以下、より好ましくは0.4分以上10分以下、更に好ましくは0.5分以上10分以下である。
なお、本発明の製造方法により得られる接合体においては、経時により炭化水素系重合体が樹脂成形体および/または基材中に滲み込んで、樹脂成形体および/または基材中に分散していてもよい。
(その他の工程)
本発明の接合体の製造方法は、上述した樹脂膜形成工程、接着工程以外の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、基材の表面に対して「基材」の項で上述した表面処理を行う工程が挙げられる。
以下に実施例を示しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体、ブロック共重合体水素化物、および炭化水素系重合体の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8320GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物の主鎖、側鎖および芳香環の水素化率は、ブロック共重合体およびブロック共重合体水素化物のH-NMRを測定して算出した。
(3)ガラス転移温度
ブロック共重合体水素化物(変性ブロック共重合体水素化物)をプレス成形して、長さ50mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS-K7244-4法に基づき、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、ARES)を使用して、-100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定した。損失正接tanδの高温側のピークトップ温度からガラス転移温度(Tg)を求めた。
(実施例1)
<変性ブロック共重合体水素化物の調製>
<<ブロック共重合体の調製>>
十分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、n-ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn-ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液0.88部を加えて重合を開始した。
攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.096部を加えて反応を停止した。得られたブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は47,200、分子量分布は1.05、wa:wb=50:50、であった。
なお、上記「wa:wb」は、芳香族ビニル化合物としてのスチレンに由来する構造単位がブロック共重合体に占める質量分率をwaとし、鎖状共役ジエン化合物としてのイソプレンに由来する構造単位がブロック共重合体に占める質量分率をwbとしたときのwaとwbとの比(wa:wb)を表す。
<<水素化>>
上記のようにして得られた重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、トルエン1.0部中で、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド0.042部とジエチルアルミニウムクロライド0.122部を混合した溶液を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度90℃、圧力1.0MPaにて5時間水素化反応を行った。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は49,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
水素化反応終了後、反応溶液に水0.10部を添加して、60℃で60分間攪拌した。その後、30℃以下まで冷却し、活性白土(製品名「ガレオンアース(登録商標)」、水澤化学工業社製)1.5部およびタルク(製品名「ミクロエース(登録商標)」、日本タルク社製)1.5部を添加して、反応溶液を濾過ろ過して不溶物を除去した。濾過された溶液にフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](SONGWON社製、製品名「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットしてブロック共重合体水素化物のペレット92部を得た。得られたブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は48,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。また、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素-炭素二重結合の水素化率は99%、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素-炭素二重結合の水素化率は5%未満であった。
[アルコキシシリル基の導入]
上述のようにして得られたブロック共重合体水素化物のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部および2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加し、混合物を得た。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60~70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物のペレット97部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いで変性ブロック共重合体水素化物を凝固させ、濾別した。濾別後、25℃で真空乾燥して変性ブロック共重合体水素化物のクラム9.0部を単離した。FT-IRスペクトルでは、1090cm-1にSi-OCH基、825cm-1と739cm-1にSi-CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075cm-1、808cm-1、および766cm-1と異なる位置に観察された。また、H-NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。なお、変性ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度は、125℃であった。
<樹脂成形体および複層物の調製>
得られた変性ブロック共重合体水素化物のペレット100部に対して、紫外線吸収剤である2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)0.2部を添加して、均等に混合した。得られた混合物を30%のシクロヘキサン溶液に調整し、水分吸着剤であるハイドロタルサイトを樹脂成分(変性ブロック共重合体水素化物)に対して30%になるように混合し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(離型処理PETフィルム、三菱樹脂株式会社製、製品名「MRV38」)上にアプリケータを用いて塗布し、110℃のホットプレートで3分間乾燥した。これにより、PETフィルムと、その上に形成された樹脂成形体とを含む複層物を得た。複層物における樹脂成形体の厚み50μmであり、その中に分散したハイドロタルサイト粒子を30%含んでいた。
<樹脂膜形成工程>
基板上に、上述の複層物を、PETフィルムと基板が接するようにして固定し、炭化水素系重合体としての流動パラフィン(製品名「ハイコール(登録商標) K350」、カネダ株式会社製、Mn700、ヨウ素価0.2、水素化物)をスピンコート法により塗布し、樹脂成形体の表面に樹脂膜(厚さ0.5μm)を形成した。なお、流動パラフィンの塗布量は、樹脂成形体中の変性ブロック共重合体水素化物100部当たり3部とした。
<円偏光板(基材)の貼り付け>
樹脂膜形成工程終了時から1時間以内に、樹脂膜形成工程において樹脂膜が形成された複層物の樹脂膜側の面(即ち、樹脂膜が形成された樹脂成形体側の面)を、基材としての円偏光板(ポリカーボネート樹脂製、1/4λ板)に重ね合わせた。
なお、円偏光板には、上記重ね合わせに先んじて、大気圧下で下記条件にてプラズマ照射による表面処理を行った。
表面処理装置:「AP-T03-L」(積水化学社製)
出力:1.5kw
周波数:25kHz
窒素ガス流量:50L/分
照射速度:30cm/分
<有機EL素子の貼り付け>
上記のようにして基材としての円偏光板が重ね合わされた複層物について、反対側の面(円偏光板がないPETフィルム側の面)にも、炭化水素系重合体としての流動パラフィン(製品名「ハイコール(登録商標) K350」、カネダ株式会社製、Mn700、ヨウ素価0.2、水素化物)をスピンコート法により塗布し、樹脂成形体の表面に樹脂膜(厚さ0.5μm)を形成した。なお、流動パラフィンの塗布量は、樹脂成形体中の変性ブロック共重合体水素化物100部当たり5部とした。
上述のようにして樹脂膜が形成された複層物の樹脂膜側の面を、有機EL素子としてのOLEDモジュール(発光素子駆動回路)に重ね合わせ、積層物を得た。
<接着工程>
上述の積層物について、熱プレス装置を使用して、温度40℃、圧力0.3MPaで10分間加熱ラミネート処理を行い、接合体を作製した。
<25℃におけるピール強度評価>
上述のようにして得られた接合体を室温(25℃)まで冷却し、ピール強度(25℃)を測定したところ14N/cmであった。
なお、25℃におけるピール強度の測定は、以下のように行った。まず、得られた接合体を幅25mm、長さ100mmに切り出して試験片を得た。試験片の円偏光板を、精密万能試験機(島津製作所社製「オートグラフAGS-5kNG」)の上部チャックで掴み、20mm/分の速度で、試験片の主面(25mm×100mmの面)に対して垂直上向きへ引っ張ることで、基材としての円偏光板を、試験片の長さ方向に樹脂成形体から剥離した。このとき、円偏光板を引っ張る力の大きさを測定した。試験片の長手方向において測定された力の大きさが安定している50mmの範囲の測定値から平均を求め、この平均値をピール強度(25℃)とした。
<100℃におけるピール強度評価>
上述のようにして得られた接合体を100℃の環境下におき、ピール強度(25℃)と同様の操作によりピール強度(100℃)を測定したところ10N/cmであった。
(比較例1)
<変性ブロック共重合体水素化物、樹脂成形体および複層物の調製>
実施例1と同様にして、変性ブロック共重合体水素化物、樹脂成形体および複層物を調製した。
<円偏光板(基材)および有機EL素子の貼り付け>
樹脂膜形成工程終了時から1時間以内に、上述の複層物と基材としての円偏光板(ポリカーボネート樹脂製、1/4λ板)とを、複層物の樹脂成形体と円偏光板が接するように重ね合わせた。また複層物の他方の面(PETフィルム側の面)を有機EL素子としてのOLEDモジュール(発光素子駆動回路)に重ね合わせ、積層物を得た。
<接着工程>
上述の積層物について、熱プレス装置を使用して、温度40℃、圧力0.3MPaで10分間加熱ラミネート処理を行い、接合体を作製した。
<25℃、100℃におけるピール強度評価>
そして、実施例1と同様にして、25℃および100℃におけるピール強度評価をそれぞれ行ったところ、ピール強度(25℃)は4N/cm、ピール強度(100℃)は2N/cmであった。
(実施例2)
<変性ブロック共重合体水素化物の調製>
実施例1と同様にして、変性ブロック共重合体水素化物を調製した。
<樹脂成形体および複層物の調製>
得られた変性ブロック共重合体水素化物のペレット100部に対して、紫外線吸収剤である2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329、BASFジャパン社製)0.2部を添加して、均等に混合した。得られた混合物を30%のシクロヘキサン溶液に調整し、水分吸着剤であるハイドロタルサイトを樹脂成分(変性ブロック共重合体水素化物)に対して30%になるように混合し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(離型処理PETフィルム、三菱樹脂株式会社製、製品名「MRV38」)上にアプリケータを用いて塗布し、110℃のホットプレートで3分間乾燥した。これにより、PETフィルムと、その上に形成された樹脂成形体とを含む複層物を得た。複層物における樹脂成形体の厚み50μmであり、その中に分散したハイドロタルサイト粒子を30%含んでいた。
<樹脂膜形成工程>
シクロオレフィン樹脂のシート(日本ゼオン社製、製品名「ゼオノア(登録商標)ZF-16」、厚さ50mm)を縦300mm×横200mmのシート状に切り出し、SiOをスパッタリングしてバリアフィルムを得た。このバリアフィルムと上述した複層物を、バリアフィルムのSiO側の面と複層物のPETフィルム側の面が接するように貼り合わせ、130℃で1時間のベーク処理を行い、貼合体を得た。
ベーク処理後の貼合体を室温(25℃)まで冷却した。冷却後の貼合体の樹脂成形体側の面に、ポリブテン(日油社製、製品名「日油ポリブテン10N」、Mn1000、ヨウ素価17.7)をバーコート法により塗布し、樹脂成形体の表面に樹脂膜(厚さ1μm)を形成した。なお、ポリブテンの塗布量は、樹脂成形体中の変性ブロック共重合体水素化物100部当たり3部とした。
<接着工程>
貼合体の樹脂膜が形成された面に、基材としての素子(ガラス基板上にAl電極を形成し、その上に発光材料を蒸着し、更にその上に透明電極(ITO電極)を蒸着したもの。サイズは50mm×100mm。)を、樹脂膜と透明電極側の面が接するように重ね合わせ、積層物を得た。
上述の積層物について、熱プレス装置を使用して、温度40℃、圧力0.3MPaで10分間加熱ラミネート処理を行い、接合体を作製した。
<25℃におけるピール強度評価>
上述のようにして得られた接合体を室温(25℃)まで冷却し、ピール強度(25℃)を測定したところ12N/cmであった。
なお、25℃におけるピール強度の測定は、以下のように行った。まず、得られた接合体を幅25mm、長さ100mmに切り出して試験片を得た。試験片の素子を、精密万能試験機(島津製作所社製「オートグラフAGS-5kNG」)の上部チャックで掴み、20mm/分の速度で、試験片の主面(25mm×100mmの面)に対して垂直上向きへ引っ張ることで、基材としての素子を、試験片の長さ方向に樹脂成形体から剥離した。このとき、素子を引っ張る力の大きさを測定した。試験片の長手方向において測定された力の大きさが安定している50mmの範囲の測定値から平均を求め、この平均値をピール強度(25℃)とした。
<100℃におけるピール強度評価>
上述のようにして得られた接合体を100℃の環境下におき、ピール強度(25℃)と同様の操作によりピール強度(100℃)を測定したところ9N/cmであった。
(比較例2)
<変性ブロック共重合体水素化物、樹脂成形体および複層物の調製>
実施例2と同様にして、変性ブロック共重合体水素化物、樹脂成形体および複層物を調製した。
<接着工程>
上述の複層物の樹脂成形体側の面に、基材としての素子(ガラス基板上にAl電極を形成し、その上に発光材料を蒸着し、更にその上に透明電極(ITO電極)を蒸着したもの。サイズは50mm×100mm。)を、樹脂成形体と透明電極側の面が接するように重ね合わせ、積層物を得た。
上述の積層物について、熱プレス装置を使用して、温度40℃、圧力0.3MPaで10分間加熱ラミネート処理を行い、接合体を作製した。
<25℃、100℃におけるピール強度評価>
そして、実施例1と同様にして、25℃および100℃におけるピール強度評価(100℃)をそれぞれ行ったところ、ピール強度(25℃)は5N/cm、ピール強度(100℃)は3N/cmであった。
上述した結果より、ブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体と基材の接着を、40℃という低い接着温度であっても、所定の炭化水素系重合体を所定範囲内の量用いて行った実施例1~2では、接着強度に優れる接合体が得られていることが分かる。
一方、接着を、所定の炭化水素系重合体を用いずに行った比較例1~2では、接着強度が低下することが分かる。
また実施例1~2のピール強度(100℃)は同実施例1~2のピール強度(25℃)よりも若干低下はしているが、比較例1~2のピール強度(25℃)と比較しても優れている。このことから、実施例1~2では、高温による接着強度の低下が十分に抑制されているといえる。
本発明の製造方法によれば、接着温度が低い場合であっても、樹脂成形体と基材とを良好に接着して、樹脂成形体と基材の接着強度に優れる接合体を得ることができる。

Claims (7)

  1. 芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とを有するブロック共重合体であって、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位[a]が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwa、前記鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位[b]が前記ブロック共重合体全体に占める質量分率をwbとしたときに、waとwbとの比(wa:wb)が30:70~65:35であるブロック共重合体の、前記構造単位[b]由来の炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化してなるブロック共重合体水素化物を含む樹脂成形体と、樹脂材料、無機材料、またはこれらの組み合わせを含む基材とを接着して接合体を製造する方法であって、
    レフィン重合体とオレフィン重合体水素化物の少なくとも一方であり、数平均分子量が300以上5000以下である炭化水素系重合体を含む液体(但し、前記ブロック共重合体水素化物を含むものを除く。)を、前記ブロック共重合体水素化物100質量部当たり前記炭化水素系重合体1質量部以上、前記樹脂成形体と前記基材の少なくとも一方の表面に供給し、前記炭化水素系重合体を含む樹脂膜を形成する工程と、
    前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を含む、接合体の製造方法。
  2. 前記ブロック共重合体水素化物がアルコキシシリル基を有する、請求項1に記載の接合体の製造方法。
  3. 前記炭化水素系重合体はヨウ素価が2.0g/100g以下である、請求項1または2に記載の接合体の製造方法。
  4. 前記基材が樹脂材料を含む基材であり、
    前記基材の前記樹脂成形体との接着面は、プラズマ照射、紫外線照射、コロナ放電、および火炎吹き付けからなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理がされている、請求項1~3の何れかに記載の接合体の製造方法。
  5. 前記接着における接着温度が、前記ブロック共重合体水素化物のガラス転移温度未満である、請求項1~4の何れかに記載の接合体の製造方法。
  6. 前記樹脂膜を形成する工程終了時から、24時間以内に前記樹脂成形体と前記基材とを、前記樹脂膜を介して接着する工程を行う、請求項1~5の何れかに記載の接合体の製造方法。
  7. 前記樹脂材料が、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、芳香族系樹脂、またはそれらの組み合わせであり、
    前記無機材料が、酸化インジウムスズ、ガラス、銅、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、プラチナ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、またはそれらの組み合わせである、請求項1~6の何れか一項に記載の接合体の製造方法。
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