JP2020200400A - 繊維複合材組成物およびそれを含む成形体 - Google Patents

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【課題】繊維複合材の、弾性率および耐衝撃性のバランスが向上した繊維複合材組成物を提供する。【解決手段】135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.8〜4.0dl/gであるポリプロピレン樹脂(A)と、特定の要件を満たすポリプロピレン樹脂(B)と、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する繊維複合材組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維複合材組成物およびそれを含む成形体に関し、詳しくは、特定のポリプロピレン樹脂等を含有する繊維複合材組成物およびそれを含む成形体に関する。
繊維は軽量かつ高強度であることから、熱硬化性樹脂を基材とした繊維複合材料が航空・宇宙分野で使用されてきた。自動車車体の軽量化のための材料として、この繊維複合材料を用いた自動車構造部材の展開が期待されているが、成形加工性(迅速成形性)に課題がある。
成形加工性を改良するには、熱可塑性樹脂を基材とする方法などが挙げられる。例えば、ポリプロピレン樹脂は低比重で剛性が高く成形性が良いことから、複合材料の基材に適すると思われる。繊維としては炭素繊維が使用されることが多いが、しかしながら、炭素繊維とポリプロピレン樹脂とは相互作用し難く、弾性率が低いことが課題である。
ところで、炭素繊維には樹脂との接着性をよくするために表面処理を行い、サイジング剤と呼ばれる集束剤で処理してから炭素繊維束をボビンに巻き取って製品にする。したがって、炭素繊維およびポリプロピレン樹脂からなる炭素繊維強化プロピレン系複合材料は、サイジング処理された炭素繊維とポリプロピレン樹脂とを溶融状態で混練するか、または含浸させるなどして製造される。
炭素繊維強化プロピレン系複合材料の機械的強度は、炭素繊維とポリプロピレン樹脂との相互作用やポリプロピレン樹脂マトリックス中での炭素繊維の分散性(炭素繊維の開繊性)によって大きく影響されると考えられる。そこで、炭素繊維とポリプロピレン樹脂との相互作用を高めることを目的として、炭素繊維用の特定のサイジング剤(特許文献1)や、サイジング処理した炭素繊維と無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン樹脂とからなる複合材料(特許文献2)などが開示されているが、特に繊維強化プロピレン系複合材料の物性向上にはまだ改良の余地がある。
特開2002−013069号公報 特開2003−277525号公報
本発明は、繊維複合材の、弾性率および耐衝撃性のバランスが向上した繊維複合材組成物およびその成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記組成の繊維複合材組成物により、弾性率および耐衝撃性のバランスを向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[5]に関する。
[1]135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.8〜4.0dl/gであるポリプロピレン樹脂(A)と、以下の要件(I)〜(IV)を満たすポリプロピレン樹脂(B)と、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する繊維複合材組成物。
(I)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下である。
(II)示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度が120℃以下である。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.7dl/gである。
(IV)13C−NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0〜99.9%である。
[2]前記炭素繊維(D)を10〜90質量%含有し、前記ポリプロピレン樹脂(A)、前記ポリプロピレン樹脂(B)および前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50〜99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5〜30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1〜20質量部を含有する、前記[1]に記載の繊維複合材組成物。
[3]前記変性ポリオレフィン樹脂(C)がマレイン酸変性プロピレン系重合体および無水マレイン酸変性プロピレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体である、前記[1]または[2]に記載の繊維複合材組成物。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の繊維複合材組成物を含む成形体。
[5]自動車部品である、前記[4]に記載の成形体。
本発明によれば、繊維複合材の、弾性率および耐衝撃性のバランスが向上した繊維複合材組成物およびその成形体を提供することができる。
以下、本発明の繊維複合材組成物および成形体について説明する。
本明細書において数値範囲「n1〜n2」を記載する場合、当該数値範囲には上限値および下限値も含まれるものとする。
[繊維複合材組成物]
本発明の繊維複合材組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、それぞれ以下に説明する、ポリプロピレン樹脂(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)と、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する。
<ポリプロピレン樹脂(A)>
ポリプロピレン樹脂(A)としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量の他のモノマーとの共重合体が挙げられる。他のモノマーとしては、例えば、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンおよび4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。他のモノマーは1種または2種以上用いることができる。
前記共重合体においては、プロピレン由来の構造単位量が通常は50モル%以上99.9モル%未満、好ましくは60モル%以上99.5モル%未満、更に好ましくは70モル%以上99モル%未満であり、他のモノマー由来の構造単位量が通常は0.1モル%を超えて50モル%以下、好ましくは0.5モル%を超えて40モル%以下、更に好ましくは1モル%を超えて30モル%以下である。ここで、プロピレン由来の構造単位量と他のモノマー由来の構造単位量との合計を100モル%とする。
ポリプロピレン樹脂(A)は、後述する要件(I)〜(IV)を満たすポリプロピレン樹脂(B)以外のポリプロピレン樹脂であって、さらに、ポリプロピレン樹脂(A)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.8〜4.0dl/gであり、好ましくは0.8〜2.0dl/gである。
ポリプロピレン樹脂(A)は、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒などの一般的な触媒の存在下で製造される。
ポリプロピレン樹脂(A)は1種または2種以上用いることができる。
<ポリプロピレン樹脂(B)>
ポリプロピレン樹脂(B)は、下記要件(I)〜(IV)を満たす。
≪要件(I)≫
要件(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下であること、である。分子量が1000以下の低分子量成分が少ないことにより、ポリプロピレン樹脂(B)とポリプロピレン樹脂(A)との絡み合いが高まり、弾性率および耐衝撃性などの機械物性の向上に寄与する。
≪要件(II)≫
要件(II)は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度(Tc)が120℃以下であること、である。Tcは、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜120℃である。
結晶化温度(Tc)が120℃以下であると、繊維複合材組成物中の樹脂部分の結晶化を遅延させる効果を発揮し、繊維複合材組成物中の炭素繊維(D)の配向を高くすることが可能であり、それによって繊維複合材組成物の機械物性が高まると考えられる。
≪要件(III)≫
要件(III)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.7dl/gであること、である。極限粘度[η]が0.2dl/g以上であることで、ポリプロピレン樹脂(B)とポリプロピレン樹脂(A)や他の成分との分子の絡み合いが充分となり、得られる繊維複合材組成物の機械物性が向上する点で好ましい。極限粘度[η]が0.7dl/g以下であることで、ポリプロピレン樹脂(A)中におけるポリプロピレン樹脂(B)の分散性が充分となり、得られる繊維複合材組成物の機械物性が向上する点で好ましい。
≪要件(IV)≫
要件(IV)は、13C−NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0〜99.9%であること、である。mmmmは、好ましくは92.5〜99.9%、さらに好ましくは93.0〜99.9%、特に好ましくは95.0〜99.0%、最も好ましくは95.0〜98.8%である。mmmmが前記下限値以上であると、得られる繊維複合材組成物において耐熱性および機械物性の観点で好ましい。mmmmは、メタロセン触媒などのオレフィン重合用触媒を適切に選択し、重合温度等の重合条件を適切に設定することにより前記範囲内に調整することができる。
≪構成≫
ポリプロピレン樹脂(B)は、通常、プロピレンを主成分とする重合体である。
プロピレンを主成分とする重合体としては、例えば、プロピレンの単独重合体;プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体などの、プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
他のモノマーとしては、例えば、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンおよび4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。他のモノマーは1種または2種以上用いることができる。
プロピレンを主成分とする共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のモノマーとの共重合体においては、プロピレン由来の構造単位量が通常は70モル%以上99.9モル%未満、好ましくは80モル%以上99.5モル%未満、更に好ましくは90モル%以上99モル%未満であり、他のモノマー由来の構造単位量が通常は0.1モル%を超えて30モル%以下、好ましくは0.5モル%を超えて20モル%以下、更に好ましくは1モル%を超えて10モル%以下である。ここで、プロピレン由来の構造単位量と他のモノマー由来の構造単位量との合計を100モル%とする。
ポリプロピレン樹脂(B)は1種または2種以上用いることができる。
≪ポリプロピレン樹脂(B)の製造方法≫
ポリプロピレン樹脂(B)は、メタロセン触媒の存在下でプロピレンを単独重合するか、またはプロピレンと他のモノマーとを共重合することによって製造された重合体であることが好ましい。
〈メタロセン化合物〉
メタロセン触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格などの配位子を分子内に持つメタロセン化合物を含む重合触媒である。前記メタロセン化合物としては、例えば、式(I)に示すメタロセン化合物(I)および式(II)に示す架橋型メタロセン化合物(II)が挙げられ、好ましくは架橋型メタロセン化合物(II)である。
Figure 2020200400
式(I)および(II)において、Mは、周期表第4族遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムであり、Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数であり、Cp1およびCp2は、Mを挟んだサンドイッチ構造を形成するシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、およびこれらの基やシクロペンタジエニル基に1個以上のハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびハロゲン化炭化水素基等の置換基が置換した基が挙げられ、置換シクロペンタジエニル基がインデニル基、フルオレニル基およびアズレニル基である場合、シクペンタジエニル基に縮合する不飽和環の二重結合の一部は水添されていてもよい。
式(II)において、Yaは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、−Ge−、2価のゲルマニウム含有基、−Sn−、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NRa−、−P(Ra)−、−P(O)(Ra)−、−BRa−または−AlRa−である。Raは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基が1個もしくは2個結合したアミノ基である。また、Yaの一部は、Cp1および/またはCp2と結合して環を形成していてもよい。
前記メタロセン化合物としては、式(III)に示す架橋型メタロセン化合物(III)が好ましい。
Figure 2020200400
式(III)において、R1〜R14は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン化炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭化水素基である。Yは、第14族元素であり、好ましくは炭素、ケイ素またはゲルマニウムであり、より好ましくは炭素である。Mは、周期表第4族遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子である。jは1〜4の整数であり、好ましくは2であり、jが2以上のとき、Qは同一でも異なっていてもよい。
1〜R14における各原子および基の具体例は以下のとおりである。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等の直鎖状または分岐状炭化水素基;シクロアルキル基、多環式飽和炭化水素基等の環状飽和炭化水素基;アリール基、シクロアルケニル基、多環式不飽和炭化水素基等の環状不飽和炭化水素基;アリール基置換アルキル基等の環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常は1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10である。
上記ケイ素含有基としては、例えば、式−SiR3(前記式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、またはフェニル基である)で表される基が挙げられる。
上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基等の、上記炭化水素基が有する1または2以上の水素原子をハロゲン原子に置換してなる基が挙げられる。
5〜R12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、具体的には、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基およびオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを形成してもよい。このうち特に、R6、R7、R10およびR11が同時に水素原子ではないフルオレン環を形成するのが好ましい。
13およびR14は、互いに結合して環を形成してもよく、また、R5〜R12の隣接した
基またはR1〜R4の隣接した基と互いに結合して環を形成してもよい。
Qにおいて、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ;炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基や、炭素数3〜10、好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、例えば、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが挙げられる。
アニオン配位子としては、例えば、メトキシ、t−ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリーロキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基が挙げられる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
Qは、好ましくはハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基である。
メタロセン化合物の具体例としては、国際公開第2001/27124号、国際公開第2005/121192号、国際公開第2014/050817号、国際公開第2014/123212号、国際公開第2017/150265号などに記載された化合物が挙げられる。
前記メタロセン化合物としては、国際公開第2014/050817号などに記載された、式(IV)に示す架橋型メタロセン化合物(IV)がより好ましい。
Figure 2020200400
式(IV)中、R1bは、炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン化炭化水素基である。R2b〜R12bは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびハロゲン化炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜3の整数である。Mは、周期表第4族遷移金属である。Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子である。jは1〜4の整数であり、好ましくは2であり、jが2以上のとき、Qは同一でも異なっていてもよい。
式(IV)中の上述のハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン化炭化水素基、周期表第4族遷移金属、Qにおけるハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、孤立電子対で配位可能な中性配位子については、それぞれ式(III)の説明で列挙した具体例が挙げられる。
2bからR12bまでの置換基のうち、2つの置換基が互いに結合して環を形成していてもよく、前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。2つの置換基が互いに結合して形成された環(スピロ環、付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環、ベンゼン環、水素化ベンゼン環、シクロペンテン環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
1bは、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがさらに好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
1bとしては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基が挙げられ、より好ましくはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert−ブチル基、1−アダマンチル基である。
4bおよびR5bは、好ましくは水素原子である。
2b、R3b、R6bおよびR7bは、好ましくは水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基である。また、R2bとR3bが互いに結合して環を形成し、かつR6bとR7bが互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
8bは、好ましくは水素原子である。
9bは、炭化水素基であることが好ましく、炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがより好ましく、炭素数2以上のアルキル基であることがさらに好ましい。
また、合成上の観点からは、R10bおよびR11bは水素原子であることも好ましい。
あるいは、n=1である場合、R9bおよびR10bが互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。この場合、R11bは水素原子であることが好ましい。
あるいは、R8bおよびR9bは、それぞれ炭化水素基であってもよい。
12bは、好ましくは炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
nは1〜3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
式(IV)に示すメタロセン化合物としては、例えば、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド、[3-(2',7'-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-(1-アダマンチル)-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド、または(8-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレン)-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドが特に好ましい。ここで、上記オクタメチルフルオレンとは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレンのことである。
〈助触媒〉
メタロセン触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(助触媒)をさらに含むことが好ましい。
有機金属化合物(ただし、有機アルミニウムオキシ化合物を除く)としては、例えば、有機アルミニウム化合物が挙げられ、具体的には、一般式Ra mAl(ORbnpq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロヘキシルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。具体的には、メチルアルミノキサンが挙げられる。
アルミノキサンとしては、固体助触媒成分としての固体状アルミノキサンが好適に用いられ、例えば、国際公開第2010/055652号、国際公開第2013/146337号、あるいは、国際公開第2014/123212号で開示される固体状アルミノキサンが特に好適に用いられる。
「固体状」とは、固体状アルミノキサンが用いられる反応環境下において、当該アルミノキサンが実質的に固体状態を維持することを意味する。より具体的には、例えばメタロセン触媒を構成する各成分を接触させて固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエン等の不活性炭化水素媒体中、特定の温度・圧力環境下において前記アルミノキサンが固体状態であることを表す。
固体状アルミノキサンは、好ましくは式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するアルミノキサンを含有し、より好ましくは式(1)で表される構成単位を有するアルミノキサンを含有し、さらに好ましくは式(1)で表される構成単位のみからなるポリメチルアルミノキサンを含有する。
Figure 2020200400
式(1)中、Meはメチル基である。
式(2)中、R1は炭素数2〜20の炭化水素基、好ましくは炭素数2〜15の炭化水素基、より好ましくは炭素数2〜10の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、エチル、プロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;シクロヘキシル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;フェニル、トリル等のアリール基が挙げられる。
固体状アルミノキサンの構造は必ずしも明らかにされておらず、通常は、式(1)および/または式(2)で表される構成単位が2〜50程度繰り返されている構成を有すると推定されるが、当該構成に限定されない。また、その構成単位の結合態様は、例えば、線状、環状またはクラスター状と種々であり、アルミノキサンは、通常、これらのうちの1種からなるか、または、これらの混合物であると推定される。また、アルミノキサンは、式(1)または式(2)で表される構成単位のみからなってもよい。
固体状アルミノキサンとしては、固体状ポリメチルアルミノキサンが好ましく、式(1)で表される構成単位のみからなる固体状ポリメチルアルミノキサンがより好ましい。
固体状アルミノキサンは、通常は粒子状であり、体積基準のメジアン径(D50)が好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは5〜50μmである。D50は、例えば、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
固体状アルミノキサンは、後述する実施例欄に記載の均一性指数が、通常は0.40以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.27以下である。均一性指数の下限は、特に限定されないが、例えば0.15でもよい。均一性指数が大きくなるほど粒度分布が広いことを示す。
固体状アルミノキサンは、比表面積が好ましくは100〜1000m2/g、より好ましくは300〜800m2/gである。比表面積は、BET吸着等温式を用い、固体表面におけるガスの吸着および脱着現象を利用して求めることができる。
固体状アルミノキサンは、例えば、国際公開第2010/055652号および国際公開第2014/123212号に記載された方法により調製することができる。
メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物としては、例えば、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US5321106号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
〈担体〉
メタロセン触媒は、担体をさらに含むことができる。担体は、好ましくは粒子状であり、その表面および/または内部にメタロセン化合物を固定化させることで、前記メタロセン触媒が形成される。このような形態の触媒は一般にメタロセン担持触媒と呼ばれる。
なお、上述した固体状アルミノキサンは、担体として機能する。このため、固体状アルミノキサンを用いる場合は、担体として、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、塩化マグネシウム等の固体状無機担体、またはポリスチレンビーズ等の固体状有機担体を用いなくともよい。
担体は、例えば、無機または有機の化合物からなる。固体状無機担体としては、例えば、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物等の無機化合物からなる担体が挙げられる。固体状有機担体としては、例えば、ポリスチレンビーズ等の担体が挙げられる。
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の酸化物、またはこれらを含む複合物もしくは混合物が挙げられる。例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOが挙げられる。
無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
粘土は、通常は粘土鉱物を主成分として構成される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物としては、例えば、粘土、粘土鉱物、または六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が挙げられる。
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が挙げられる。
担体の体積基準のメジアン径(D50)は、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは5〜50μmである。体積基準のD50は、例えば、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
〈有機化合物成分〉
メタロセン触媒は、さらに必要に応じて、有機化合物成分を含有することもできる。有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩が挙げられる。
〈重合条件〉
固体助触媒成分等の担体にメタロセン化合物が担持された固体触媒成分においては、エチレン、α−オレフィン等のオレフィンが予備重合されていてもよく(予備重合触媒成分)、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
プロピレン重合の際には、メタロセン触媒における各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。メタロセン触媒を用いてプロピレン重合を行うに際して、前記触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。
メタロセン化合物は、反応容積1L当り、通常は10-10〜10-2モル、好ましくは10-9〜10-3モルとなるような量で用いられる。
助触媒としての有機金属化合物は、当該化合物と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M;すなわち周期表第4族遷移金属)とのモル比[有機金属化合物/M]が、通常は10〜10000、好ましくは30〜2000、より好ましくは50〜500となるような量で用いることができる。
助触媒としての有機アルミニウムオキシ化合物は、当該化合物中のアルミニウム原子(Al)と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比[Al/M]が、通常は10〜10000、好ましくは30〜2000、より好ましくは50〜500となるような量で用いることができる。
助触媒としてのメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物(イオン対形成化合物)は、当該化合物と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)とのモル比[イオン対形成化合物/M]が、通常は1〜10000、好ましくは2〜2000、より好ましくは10〜500となるような量で用いることができる。
ポリプロピレン樹脂(B)は、上述したメタロセン触媒の存在下で少なくともプロピレンを重合させることで得ることができる。
重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施することができる。液相重合法において、重合溶媒として、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;脂環族炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素などの不活性有機溶媒を用いることができる。また、プロピレン等のオレフィン自体を重合媒体として用いることもできる。
重合体の分子量を調整するため、水素分子を重合系に添加してもよい。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001〜100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
また、重合系内の重合触媒被毒物質を補足する目的で前述した有機金属化合物(ただし、有機アルミニウムオキシ化合物を除く)を添加してもよい。系内に有機金属化合物を添加する場合、反応容積1L当り、通常は10-6〜0.1モル、好ましくは10-5〜10-2モルとなるような量で用いられる。
さらに、重合系内に帯電防止剤を添加してもよい。帯電防止剤としてはポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールジステアレート、エチレンジアミン−ポリエチレングリコール(PEG)−ポリプロピレングリコール(PPG)−ブロックコポリマー、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体(PEG−PPG−PEG))などが好ましく、特にポリオキシアルキレン(PEG−PPG−PEG)が好ましい。これらの帯電防止剤は、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)の1モルに対する質量(g)の比(g/mol)が通常100〜100,000、好ましくは100〜10,000となるような量で用いられる。
重合は、例えば、20〜150℃、好ましくは50〜100℃の温度で、また常圧〜10MPa/G、好ましくは常圧〜5MPa/Gの圧力下で行うことができる。重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。
<変性ポリオレフィン樹脂(C)>
変性ポリオレフィン樹脂(C)は、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物(以下「化合物(M)」ともいう)により変性された樹脂である。以下、化合物(M)による変性を「酸変性」ということもある。
一方、前述したポリプロピレン樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)は、通常、化合物(M)による変性がなされていないポリプロピレン樹脂である。
変性ポリオレフィン樹脂(C)は、炭素繊維(D)とポリプロピレン樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)との界面強度を向上させ、破壊応力や曲げ強さ等の強度特性を向上させる。
変性されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンの重合体が挙げられる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが挙げられ、好ましくはプロピレンが挙げられる。オレフィンは1種または2種以上用いることができる。
変性されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体などのエチレン系重合体;プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体などのプロピレン系重合体が挙げられる。エチレン系重合体では、全構造単位量のうちエチレン由来の構造単位量が最も大きく、エチレン由来の構造単位量は、好ましくは70モル%以上または80モル%以上である。プロピレン系重合体では、全構造単位量のうちプロピレン由来の構造単位量が最も大きく、プロピレン由来の構造単位量は、好ましくは70モル%以上または80モル%以上である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などの不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、不飽和カルボン酸の、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩が挙げられ、具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、マレイン酸エチル、アクリルアミド、マレイン酸アミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムが挙げられる。
化合物(M)の中でも、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましい。
化合物(M)は1種または2種以上用いることができる。
変性の方法としては、特に制限は無く、公知の方法を用いればよい。例えば、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解し、化合物(M)およびラジカル発生剤を添加して加熱、撹拌する方法、上記各成分を押出機に供給してグラフト共重合させる方法、固相変性法が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂(C)中の化合物(M)由来の構造単位量(例:グラフト量)は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。前記構造単位量は、樹脂のIRスペクトルを測定し、例えば1670cm-1〜1810cm-1のピーク面積に基づき別途作成した検量線から決定される。
変性ポリオレフィン樹脂(C)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1〜3.0dl/gである。極限粘度[η]が0.1dl/g以上であれば成形体の強度特性等の物性が低下し難くなり、3.0dl/g以下であれば組成物の流動性が低下し難くなり良好な成形性が維持される。
変性ポリオレフィン樹脂(C)としては、酸変性プロピレン系重合体および酸変性エチレン系重合体から選ばれる1種以上の樹脂を用いることが好ましく、マレイン酸変性プロピレン系重合体、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体、マレイン酸変性エチレン系重合体および無水マレイン酸変性エチレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体を用いることがより好ましく、マレイン酸変性プロピレン系重合体および無水マレイン酸変性プロピレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体を用いることがさらに好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂(C)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)および変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50〜99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5〜30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1〜20質量部を含有することが好ましく、ポリプロピレン樹脂(A)65〜98.5質量部、ポリプロピレン樹脂(B)1〜20質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.5〜15質量部を含有することがより好ましい。
本発明の組成物の全量100質量%中、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)および変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計の含有割合は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜60質量%である。
<炭素繊維(D)>
炭素繊維(D)は、比強度に優れている点で、軽量性と強度とが重視される用途、例えば自動車用、航空機用には優位にある。炭素繊維(D)としては、公知の種々の炭素繊維を使用することができる。例えば、ポリアクリルニトリル系、レーヨン系、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、再生セルロース系、メゾフェーズピッチから製造されたピッチ系などの炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は、汎用繊維でもよいし、高強度繊維でもよい。
炭素繊維(D)としては、集束剤(サイジング剤)で処理してなる炭素繊維が好ましい。炭素繊維の集束剤(サイジング剤)としては、機械的強度を高める観点から、ウレタン系エマルジョン、エポキシ系エマルジョン、ナイロン系エマルジョン、オレフィン系エマルジョンが好ましい。
炭素繊維(D)は、長繊維、短繊維、チョップドファイバー、リサイクル繊維であってもよい。
炭素繊維(D)の平均長さ、すなわち平均繊維長は、通常は0.1mm以上、15.0mm未満であり、好ましくは0.3〜13.0mm、より好ましくは0.5〜13.0mmである。平均繊維長が0.1mm以上である場合には、繊維による機械物性の補強効果が発現される傾向にあり、一方、平均繊維長が15.0mm未満であると、繊維複合材組成物中の繊維の分散性が良くなり、外観が良好となる傾向にある。
炭素繊維(D)の平均繊維径は、通常は3〜30μmであり、好ましくは5〜21μm、より好ましくは5〜19μmである。繊維の平均繊維径が3μm以上である場合には、成形時に繊維が破損し難くなることに加えて、得られる成形体の衝撃強度が不足し難い傾向にある。繊維の平均繊維径が30μm以下である場合には、成形体の外観低下が生じないと共に繊維のアスペクト比が低下せず、成形体の剛性、耐熱性などの機械的物性に充分な補強効果が得られる傾向にある。
炭素繊維(D)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物は、X線CTにより測定された平面投影法での繊維配向指数が、炭素繊維(D)として短繊維を含む場合においては76〜90degであることが好ましい。繊維配向指数が前記下限値以上であると繊維複合材の射出成形時の繊維流れに沿って炭素繊維(D)が配向しており配向度が高いことを表す。繊維配向指数の最大値は90degである。
本発明の組成物の全量100質量%中、炭素繊維(D)の含有割合は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは40〜70質量%である。
<繊維複合材組成物の製造方法>
本発明の組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、変性ポリオレフィン樹脂(C)および炭素繊維(D)が通常は溶融混練されたものであって、ペレット等の形状に成形されていてもよい。溶融混練時の温度は、通常は190〜250℃、好ましくは200〜230℃である。
[成形体]
本発明の組成物から各種の成形体を製造することができる。本発明の組成物は、例えば、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、成形体に加工することが可能である。
成形体は、日用品やレクリエーション用途などの家庭用品から、一般産業用途、工業用品に至る広い用途で用いられる。例えば、家電材料部品、通信機器部品、電気部品、電子部品、自動車部品、その他の車両の部品、船舶材料、航空機材料、機械機構部品、建材関連部材、土木部材、農業資材、電動工具部品、食品容器、フィルム、シート、繊維が挙げられる。
自動車部品の具体例としては、フロントドア、バックドア、スライドドア、フロントエンドモジュール、ドアモジュール、フェンダー、サンルーフ、ホイルキャップ、ガソリンタンク、座席(詰物、表地など)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、タイヤ、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被服材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、デッキパネル、カバー類、合板、天井板、仕切り板、側壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、防音板、断熱板、窓材などが挙げられる。
家電材料部品、通信機器部品、電気部品、電子部品の具体例としては、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、ヘッドホンステレオ、携帯電話、電話機、ファクシミリ、複写機、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具などの事務・OA機器;洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵などの家電機器;TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレイヤー、スピーカー、液晶ディスプレイなどのAV機器;コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計などが挙げられる。
日用品の具体例としては、衣類、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、自転車、楽器などの生活・スポーツ用品などが挙げられる。
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[分子量1000以下の成分の含有割合]
樹脂などの試料の分子量1000以下の成分の含有割合は、カラムとして東ソー株式会社製TSKgelGMH6−HT×2本およびTSKgelGMH6−HTL×2本(カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mm)を直列接続した、液体クロマトグラフ(Waters製Alliance/GPC2000型)を用いて、測定した。移動相媒体は、o−ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、試料濃度は0.15%(V/W)、流速1.0ml/分、140℃で測定を行った。標準ポリスチレンは、分子量が500〜20,600,000については東ソー社製を用いた。得られたクロマトグラムはWaters製データ処理ソフトEmpower2を用いて、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、分子量1000以下の成分の含有割合を算出した。
[結晶化温度(Tc)]
結晶化温度(Tc)は、示差走査型熱量測定(降温速度:10℃/分)によって決定される。Tcは、以下の条件で測定する。樹脂などの試料について、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の加熱速度で30℃から230℃に昇温し、230℃で5分間保持した後、更に10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、30℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で30℃から230℃に昇温し、230℃で5分間保持した後、再度10℃/分の冷却速度で30℃まで降温する。最初の降温時に観測された結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を得た。
[極限粘度[η]]
樹脂などの試料をデカリンに溶かし希薄溶液を作った。この希薄溶液に対し、自動粘度測定装置でウベローデ改良型粘度計を用いて、135℃の比粘度を測定し、極限粘度を算出した。
[ペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)]
ペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)は、Macromolecules 8、687(1975)に基づいて帰属した、13C−NMRスペクトルのピーク強度比により算出した。13C−NMRスペクトルは、日本電子製EX−400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
[合成例1]
<遷移金属錯体(メタロセン化合物(M−1))の合成>
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8−オクタメチルフルオレン−12'−イル−(2−(アダマンタン−1−イル)−8−メチル−3,3b,4,5,6,7,7a,8−オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(M−1))を合成した。
<固体助触媒成分の調製>
使用する固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物は公知の手法(国際公開第2014/123212号)に基づいて調製した。具体的には、攪拌機付の1Lガラス製オートクレーブにトルエン40mL、アルベマール社製ポリメチルアルミノキサンの20質量%トルエン溶液(Al濃度=2.95mmol/mL、166mL、490mmol)を加え、その後撹拌しながら45℃に昇温した。続いてn−Octanophenone(14.7g、71.8mmol)のトルエン溶液(20.5mL)を80分かけて添加した。添加後45℃で30分間攪拌し、0.80℃/分の昇温速度で115℃まで昇温し、115℃で30分間反応させた。その後、0.58℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で150分間反応させた。反応後室温まで冷却し、得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の紛体を脱水トルエンで3回洗浄した。その後脱水トルエンを加えて固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリーを得た。
得られた固体状ポリアルミノキサン組成物の粒度分布を測定した。体積基準のメジアン径(D50)は9.8μm、均一性指数は0.237であった。
固体助触媒成分の体積基準のメジアン径(D50)および粒度分布は、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めた。粒度分布測定には、固体助触媒成分を、窒素流通下、湿潤デシケーター中で事前に失活させたサンプルを用いた。分散媒には主にメタノールを用いた。
固体助触媒成分粒子の均一性を下記式で表される均一性指数により評価した。
均一性指数 = ΣXi|D50−Di|/D50ΣXi
式中、Xiは粒度分布測定における粒子iのヒストグラム値、D50は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。固体助触媒成分粒子のXi、D50およびDiは、前記レーザー回折・散乱法により求めた。
<固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製>
充分に窒素置換した、撹拌器を取り付けた200mL三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製ヘキサンを17.8mL、および先に合成した固体助触媒成分のトルエンスラリー20.5mL(固体状ポリアルミノキサン組成物(固体助触媒成分)の固形分として2.00g)を装入し、懸濁液とした。その後撹拌しながら35℃に昇温した。続いて、先に合成したメタロセン化合物(M−1)80.0mg(10mg/mLのトルエン溶液として8.0mL)を撹拌しながら加えた。60分間反応させた後、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を3.75mL加え、60分間反応させた。室温まで降温し撹拌を停止した後、上澄み液(17mL)をデカンテーションで除去した。得られた固体触媒成分はヘキサン(75mL)を用いて室温で3回洗浄し、その後ヘキサンを加えて、全量50mLのスラリーを調製した。
<予備重合触媒成分(BPP)の調製>
上記のとおり調製した固体触媒成分のスラリーに、窒素気流下、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を2.0mL加えた。その後20℃に冷却し、エチレン(6.3g)を6時間かけて装入した。エチレン装入完了後、撹拌を停止し、室温にてヘキサンによるデカンテーション洗浄を行い(洗浄効率98%)、50mLのヘキサンスラリーとした。得られたスラリー10mLをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水ヘキサン10mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して予備重合触媒成分(BPP−1)を紛体として得た。これをミネラルオイルと混合して、予備重合触媒成分濃度が9.98質量%のミネラルオイルスラリーを得た。得られた予備重合触媒成分(BPP−1)中のジルコニウム含量を測定したところ、0.087質量%であった。
予備重合触媒成分中のジルコニウム含量は、島津製作所社製のICP発光分光分析装置(ICPS−8100型)を用いて測定した。サンプルは硫酸および硝酸にて湿式分解した後、定容(必要に応じてろ過および希釈を含む)したものを検液とし、濃度既知の標準試料を用いて作成した検量線から定量を行った。
[重合例B−1]
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP−1)のミネラルオイルスラリー129.9mg、ヘキサン8.0mLとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素4.6Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、244.8gのポリプロピレン樹脂(B−1)を得た。分析結果を表1に示す。
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂(A)としてポリプロピレン(プロピレン単独重合体、プライムポリマー社製「J13B」、分析結果を表1に示す)と、ポリプロピレン樹脂(B)としてポリプロピレン樹脂(B−1)と、変性ポリオレフィン樹脂(C)としてマレイン酸変性ポリプロピレン(C−1)(極限粘度[η]=0.40dl/g、マレイン酸によるグラフト量=3質量%)と、炭素繊維(D)として炭素繊維の連続繊維(東邦テナックス社製HTS40 E13 12K 800tex、平均繊維径=7μm)を平均繊維長10mmに切断した繊維とを、表2に示す割合で混合し、[繊維複合材組成物の作製方法]に記載の方法で、引張試験用試験片およびシャルピー衝撃試験用試験片となる繊維複合材組成物を作製した。これらの試験片を用いて引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施した。
[実施例2、比較例1〜2]
配合成分および含有割合を表2のようにしたこと以外は実施例1と同様にして、繊維複合材組成物を得た。表2中の「NP−805」は、ハイワックス(商標)NP−805(三井化学社製、プロピレン系ワックス、分析結果を表1に示す)である。
[繊維複合材組成物の作製方法]
Xplore Instruments社製小型混練機DSM Xplore MC15Mのホッパー部に実施例または比較例に記載の、樹脂および繊維の混合物を投入し、200℃で3分間混練した。得られた混練物を、その後直ちに、試験片作製用射出成型機DSM Xplore IM12Mの200℃のポット部に投入し、40℃の金型に一次圧9MPa、二次圧12MPaで射出成形し、35秒間保持して、JIS K7162 1994に準拠したダンベル型試験片(引張試験用試験片)、およびJIS K7111に準拠したノッチ付き多目的試験片(シャルピー衝撃試験用試験片)を作製した。
[引張強度、引張弾性率]
繊維複合材組成物の引張強度および引張弾性率は、前記ダンベル型試験片を用いて、引張試験により測定した。インテスコ社製引張試験機2005-5を用い、JIS K7162 1994に準拠して23℃、試験速度50mm/分で行った。
[シャルピー衝撃強度]
繊維複合材組成物のシャルピー衝撃強度は、JIS K7111に準拠して、ノッチ付き多目的試験片を用いて測定した。
[繊維配向指数(平面投影法)]
繊維配向指数は平面投影法を用いて算出した。株式会社リガク製3DマイクロX線CT撮像装置(nano3DX)を用いて下記条件により測定を行った。
ターゲット:Cu
管電流:40kV
管電流:30mA
使用レンズ:1080
スキャン数(異なる角度の数):1000
1角度あたりの露光時間:45秒
得られた像に対して平面投影法により射出方向に対する繊維の角度を算出し、その角度を繊維配向指数とした。90°(90deg)は射出方向に平行な方向であることを示し、90°(90deg)から小さくなるほど、射出方向と繊維方向がずれていると考える。
試験片として、前述のシャルピー衝撃試験用の射出試験片(厚さ4mm)の中央部より、4mm(樹脂流れ方向)×2mm(樹脂流れと垂直方向)×2mm(厚さ方向)の直方体(厚さ方向については、表面を含み、表面から中心部までの2mm)を切り出して使用した。
Figure 2020200400
Figure 2020200400
[実施例と比較例の対比]
ポリプロピレン樹脂(B)を含有する実施例1および2の組成物は、ポリプロピレン樹脂(B)を含有しない比較例1の組成物に対して、引張弾性率、引張強度およびシャルピー衝撃強度に優れている。ポリプロピレン樹脂(B)に該当しないプロピレン系ワックスを含有する比較例2の組成物は、引張弾性率は比較例1よりも向上が認められるものの、シャルピー衝撃強度に劣っていることがわかる。

Claims (5)

  1. 135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.8〜4.0dl/gであるポリプロピレン樹脂(A)と、
    以下の要件(I)〜(IV)を満たすポリプロピレン樹脂(B)と、
    ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、
    炭素繊維(D)と
    を含有する繊維複合材組成物。
    (I)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下である。
    (II)示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度が120℃以下である。
    (III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2〜0.7dl/gである。
    (IV)13C−NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0〜99.9%である。
  2. 前記炭素繊維(D)を10〜90質量%含有し、
    前記ポリプロピレン樹脂(A)、前記ポリプロピレン樹脂(B)および前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50〜99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5〜30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1〜20質量部を含有する、
    請求項1に記載の繊維複合材組成物。
  3. 前記変性ポリオレフィン樹脂(C)がマレイン酸変性プロピレン系重合体および無水マレイン酸変性プロピレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体である、請求項1または2に記載の繊維複合材組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維複合材組成物を含む成形体。
  5. 自動車部品である、請求項4に記載の成形体。
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