JP7248511B2 - 繊維複合材組成物およびそれを含む成形体 - Google Patents
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Description
[1]135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.8~4.0dl/gであるポリプロピレン樹脂(A)と、以下の要件(I)~(IV)を満たすポリプロピレン樹脂(B)と、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する繊維複合材組成物。
(I)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下である。
(II)示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度が120℃以下である。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~0.7dl/gである。
(IV)13C-NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0~99.9%である。
[2]前記炭素繊維(D)を10~90質量%含有し、前記ポリプロピレン樹脂(A)、前記ポリプロピレン樹脂(B)および前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5~30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1~20質量部を含有する、前記[1]に記載の繊維複合材組成物。
[3]前記変性ポリオレフィン樹脂(C)がマレイン酸変性プロピレン系重合体および無水マレイン酸変性プロピレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体である、前記[1]または[2]に記載の繊維複合材組成物。
[4]前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の繊維複合材組成物を含む成形体。
[5]自動車部品である、前記[4]に記載の成形体。
本明細書において数値範囲「n1~n2」を記載する場合、当該数値範囲には上限値および下限値も含まれるものとする。
本発明の繊維複合材組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、それぞれ以下に説明する、ポリプロピレン樹脂(A)と、ポリプロピレン樹脂(B)と、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する。
ポリプロピレン樹脂(A)としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量の他のモノマーとの共重合体が挙げられる。他のモノマーとしては、例えば、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセンおよび4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。他のモノマーは1種または2種以上用いることができる。
ポリプロピレン樹脂(A)は1種または2種以上用いることができる。
ポリプロピレン樹脂(B)は、下記要件(I)~(IV)を満たす。
≪要件(I)≫
要件(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下であること、である。分子量が1000以下の低分子量成分が少ないことにより、ポリプロピレン樹脂(B)とポリプロピレン樹脂(A)との絡み合いが高まり、弾性率および耐衝撃性などの機械物性の向上に寄与する。
要件(II)は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度(Tc)が120℃以下であること、である。Tcは、好ましくは40~120℃、より好ましくは60~120℃である。
結晶化温度(Tc)が120℃以下であると、繊維複合材組成物中の樹脂部分の結晶化を遅延させる効果を発揮し、繊維複合材組成物中の炭素繊維(D)の配向を高くすることが可能であり、それによって繊維複合材組成物の機械物性が高まると考えられる。
要件(III)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~0.7dl/gであること、である。極限粘度[η]が0.2dl/g以上であることで、ポリプロピレン樹脂(B)とポリプロピレン樹脂(A)や他の成分との分子の絡み合いが充分となり、得られる繊維複合材組成物の機械物性が向上する点で好ましい。極限粘度[η]が0.7dl/g以下であることで、ポリプロピレン樹脂(A)中におけるポリプロピレン樹脂(B)の分散性が充分となり、得られる繊維複合材組成物の機械物性が向上する点で好ましい。
要件(IV)は、13C-NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0~99.9%であること、である。mmmmは、好ましくは92.5~99.9%、さらに好ましくは93.0~99.9%、特に好ましくは95.0~99.0%、最も好ましくは95.0~98.8%である。mmmmが前記下限値以上であると、得られる繊維複合材組成物において耐熱性および機械物性の観点で好ましい。mmmmは、メタロセン触媒などのオレフィン重合用触媒を適切に選択し、重合温度等の重合条件を適切に設定することにより前記範囲内に調整することができる。
ポリプロピレン樹脂(B)は、通常、プロピレンを主成分とする重合体である。
プロピレンを主成分とする重合体としては、例えば、プロピレンの単独重合体;プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体などの、プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のモノマーとの共重合体においては、プロピレン由来の構造単位量が通常は70モル%以上99.9モル%未満、好ましくは80モル%以上99.5モル%未満、更に好ましくは90モル%以上99モル%未満であり、他のモノマー由来の構造単位量が通常は0.1モル%を超えて30モル%以下、好ましくは0.5モル%を超えて20モル%以下、更に好ましくは1モル%を超えて10モル%以下である。ここで、プロピレン由来の構造単位量と他のモノマー由来の構造単位量との合計を100モル%とする。
ポリプロピレン樹脂(B)は1種または2種以上用いることができる。
ポリプロピレン樹脂(B)は、メタロセン触媒の存在下でプロピレンを単独重合するか、またはプロピレンと他のモノマーとを共重合することによって製造された重合体であることが好ましい。
メタロセン触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格などの配位子を分子内に持つメタロセン化合物を含む重合触媒である。前記メタロセン化合物としては、例えば、式(I)に示すメタロセン化合物(I)および式(II)に示す架橋型メタロセン化合物(II)が挙げられ、好ましくは架橋型メタロセン化合物(II)である。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等の直鎖状または分岐状炭化水素基;シクロアルキル基、多環式飽和炭化水素基等の環状飽和炭化水素基;アリール基、シクロアルケニル基、多環式不飽和炭化水素基等の環状不飽和炭化水素基;アリール基置換アルキル基等の環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常は1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
R5~R12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、具体的には、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基およびオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを形成してもよい。このうち特に、R6、R7、R10およびR11が同時に水素原子ではないフルオレン環を形成するのが好ましい。
基またはR1~R4の隣接した基と互いに結合して環を形成してもよい。
Qにおいて、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ;炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のアルキル基や、炭素数3~10、好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基が挙げられる。
メタロセン化合物の具体例としては、国際公開第2001/27124号、国際公開第2005/121192号、国際公開第2014/050817号、国際公開第2014/123212号、国際公開第2017/150265号などに記載された化合物が挙げられる。
R2b、R3b、R6bおよびR7bは、好ましくは水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。また、R2bとR3bが互いに結合して環を形成し、かつR6bとR7bが互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
R9bは、炭化水素基であることが好ましく、炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがより好ましく、炭素数2以上のアルキル基であることがさらに好ましい。
あるいは、n=1である場合、R9bおよびR10bが互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。この場合、R11bは水素原子であることが好ましい。
R12bは、好ましくは炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
nは1~3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
メタロセン触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(助触媒)をさらに含むことが好ましい。
固体状アルミノキサンは、通常は粒子状であり、体積基準のメジアン径(D50)が好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。D50は、例えば、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
メタロセン触媒は、担体をさらに含むことができる。担体は、好ましくは粒子状であり、その表面および/または内部にメタロセン化合物を固定化させることで、前記メタロセン触媒が形成される。このような形態の触媒は一般にメタロセン担持触媒と呼ばれる。
メタロセン触媒は、さらに必要に応じて、有機化合物成分を含有することもできる。有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩が挙げられる。
固体助触媒成分等の担体にメタロセン化合物が担持された固体触媒成分においては、エチレン、α-オレフィン等のオレフィンが予備重合されていてもよく(予備重合触媒成分)、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
助触媒としての有機金属化合物は、当該化合物と、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M;すなわち周期表第4族遷移金属)とのモル比[有機金属化合物/M]が、通常は10~10000、好ましくは30~2000、より好ましくは50~500となるような量で用いることができる。
重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施することができる。液相重合法において、重合溶媒として、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;脂環族炭化水素;芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素などの不活性有機溶媒を用いることができる。また、プロピレン等のオレフィン自体を重合媒体として用いることもできる。
変性ポリオレフィン樹脂(C)は、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物(以下「化合物(M)」ともいう)により変性された樹脂である。以下、化合物(M)による変性を「酸変性」ということもある。
変性ポリオレフィン樹脂(C)は、炭素繊維(D)とポリプロピレン樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)との界面強度を向上させ、破壊応力や曲げ強さ等の強度特性を向上させる。
化合物(M)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)および変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5~30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1~20質量部を含有することが好ましく、ポリプロピレン樹脂(A)65~98.5質量部、ポリプロピレン樹脂(B)1~20質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.5~15質量部を含有することがより好ましい。
炭素繊維(D)は、比強度に優れている点で、軽量性と強度とが重視される用途、例えば自動車用、航空機用には優位にある。炭素繊維(D)としては、公知の種々の炭素繊維を使用することができる。例えば、ポリアクリルニトリル系、レーヨン系、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、再生セルロース系、メゾフェーズピッチから製造されたピッチ系などの炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は、汎用繊維でもよいし、高強度繊維でもよい。
炭素繊維(D)の平均長さ、すなわち平均繊維長は、通常は0.1mm以上、15.0mm未満であり、好ましくは0.3~13.0mm、より好ましくは0.5~13.0mmである。平均繊維長が0.1mm以上である場合には、繊維による機械物性の補強効果が発現される傾向にあり、一方、平均繊維長が15.0mm未満であると、繊維複合材組成物中の繊維の分散性が良くなり、外観が良好となる傾向にある。
本発明の組成物は、X線CTにより測定された平面投影法での繊維配向指数が、炭素繊維(D)として短繊維を含む場合においては76~90degであることが好ましい。繊維配向指数が前記下限値以上であると繊維複合材の射出成形時の繊維流れに沿って炭素繊維(D)が配向しており配向度が高いことを表す。繊維配向指数の最大値は90degである。
本発明の組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、変性ポリオレフィン樹脂(C)および炭素繊維(D)が通常は溶融混練されたものであって、ペレット等の形状に成形されていてもよい。溶融混練時の温度は、通常は190~250℃、好ましくは200~230℃である。
本発明の組成物から各種の成形体を製造することができる。本発明の組成物は、例えば、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、成形体に加工することが可能である。
[分子量1000以下の成分の含有割合]
樹脂などの試料の分子量1000以下の成分の含有割合は、カラムとして東ソー株式会社製TSKgelGMH6-HT×2本およびTSKgelGMH6-HTL×2本(カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mm)を直列接続した、液体クロマトグラフ(Waters製Alliance/GPC2000型)を用いて、測定した。移動相媒体は、o-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、試料濃度は0.15%(V/W)、流速1.0ml/分、140℃で測定を行った。標準ポリスチレンは、分子量が500~20,600,000については東ソー社製を用いた。得られたクロマトグラムはWaters製データ処理ソフトEmpower2を用いて、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、分子量1000以下の成分の含有割合を算出した。
結晶化温度(Tc)は、示差走査型熱量測定(降温速度:10℃/分)によって決定される。Tcは、以下の条件で測定する。樹脂などの試料について、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の加熱速度で30℃から230℃に昇温し、230℃で5分間保持した後、更に10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、30℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で30℃から230℃に昇温し、230℃で5分間保持した後、再度10℃/分の冷却速度で30℃まで降温する。最初の降温時に観測された結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を得た。
樹脂などの試料をデカリンに溶かし希薄溶液を作った。この希薄溶液に対し、自動粘度測定装置でウベローデ改良型粘度計を用いて、135℃の比粘度を測定し、極限粘度を算出した。
ペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)は、Macromolecules 8、687(1975)に基づいて帰属した、13C-NMRスペクトルのピーク強度比により算出した。13C-NMRスペクトルは、日本電子製EX-400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o-ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
<遷移金属錯体(メタロセン化合物(M-1))の合成>
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(M-1))を合成した。
使用する固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物は公知の手法(国際公開第2014/123212号)に基づいて調製した。具体的には、攪拌機付の1Lガラス製オートクレーブにトルエン40mL、アルベマール社製ポリメチルアルミノキサンの20質量%トルエン溶液(Al濃度=2.95mmol/mL、166mL、490mmol)を加え、その後撹拌しながら45℃に昇温した。続いてn-Octanophenone(14.7g、71.8mmol)のトルエン溶液(20.5mL)を80分かけて添加した。添加後45℃で30分間攪拌し、0.80℃/分の昇温速度で115℃まで昇温し、115℃で30分間反応させた。その後、0.58℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で150分間反応させた。反応後室温まで冷却し、得られたスラリーをフィルター濾過し、フィルター上の紛体を脱水トルエンで3回洗浄した。その後脱水トルエンを加えて固体助触媒成分である固体状ポリアルミノキサン組成物のトルエンスラリーを得た。
固体助触媒成分の体積基準のメジアン径(D50)および粒度分布は、Microtrac社製のMicrotrac MT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めた。粒度分布測定には、固体助触媒成分を、窒素流通下、湿潤デシケーター中で事前に失活させたサンプルを用いた。分散媒には主にメタノールを用いた。
均一性指数 = ΣXi|D50-Di|/D50ΣXi
式中、Xiは粒度分布測定における粒子iのヒストグラム値、D50は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。固体助触媒成分粒子のXi、D50およびDiは、前記レーザー回折・散乱法により求めた。
充分に窒素置換した、撹拌器を取り付けた200mL三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製ヘキサンを17.8mL、および先に合成した固体助触媒成分のトルエンスラリー20.5mL(固体状ポリアルミノキサン組成物(固体助触媒成分)の固形分として2.00g)を装入し、懸濁液とした。その後撹拌しながら35℃に昇温した。続いて、先に合成したメタロセン化合物(M-1)80.0mg(10mg/mLのトルエン溶液として8.0mL)を撹拌しながら加えた。60分間反応させた後、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を3.75mL加え、60分間反応させた。室温まで降温し撹拌を停止した後、上澄み液(17mL)をデカンテーションで除去した。得られた固体触媒成分はヘキサン(75mL)を用いて室温で3回洗浄し、その後ヘキサンを加えて、全量50mLのスラリーを調製した。
上記のとおり調製した固体触媒成分のスラリーに、窒素気流下、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を2.0mL加えた。その後20℃に冷却し、エチレン(6.3g)を6時間かけて装入した。エチレン装入完了後、撹拌を停止し、室温にてヘキサンによるデカンテーション洗浄を行い(洗浄効率98%)、50mLのヘキサンスラリーとした。得られたスラリー10mLをフィルター濾過し、フィルター上の粉体を脱水ヘキサン10mLで2回洗浄した。洗浄後の粉体を2時間減圧乾燥して予備重合触媒成分(BPP-1)を紛体として得た。これをミネラルオイルと混合して、予備重合触媒成分濃度が9.98質量%のミネラルオイルスラリーを得た。得られた予備重合触媒成分(BPP-1)中のジルコニウム含量を測定したところ、0.087質量%であった。
充分に窒素置換した内容量3.4LのSUS製オートクレーブに、上記の通り調製した予備重合触媒成分(BPP-1)のミネラルオイルスラリー129.9mg、ヘキサン8.0mLとトリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al=0.5M)1.5mLとの混合物を装入した。次いで液体プロピレン600g、水素4.6Lを装入し、充分に撹拌しながら70℃で40分間重合を行った。得られたポリマーは80℃で10時間、減圧乾燥を行い、244.8gのポリプロピレン樹脂(B-1)を得た。分析結果を表1に示す。
ポリプロピレン樹脂(A)としてポリプロピレン(プロピレン単独重合体、プライムポリマー社製「J13B」、分析結果を表1に示す)と、ポリプロピレン樹脂(B)としてポリプロピレン樹脂(B-1)と、変性ポリオレフィン樹脂(C)としてマレイン酸変性ポリプロピレン(C-1)(極限粘度[η]=0.40dl/g、マレイン酸によるグラフト量=3質量%)と、炭素繊維(D)として炭素繊維の連続繊維(東邦テナックス社製HTS40 E13 12K 800tex、平均繊維径=7μm)を平均繊維長10mmに切断した繊維とを、表2に示す割合で混合し、[繊維複合材組成物の作製方法]に記載の方法で、引張試験用試験片およびシャルピー衝撃試験用試験片となる繊維複合材組成物を作製した。これらの試験片を用いて引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施した。
配合成分および含有割合を表2のようにしたこと以外は実施例1と同様にして、繊維複合材組成物を得た。表2中の「NP-805」は、ハイワックス(商標)NP-805(三井化学社製、プロピレン系ワックス、分析結果を表1に示す)である。
Xplore Instruments社製小型混練機DSM Xplore MC15Mのホッパー部に実施例または比較例に記載の、樹脂および繊維の混合物を投入し、200℃で3分間混練した。得られた混練物を、その後直ちに、試験片作製用射出成型機DSM Xplore IM12Mの200℃のポット部に投入し、40℃の金型に一次圧9MPa、二次圧12MPaで射出成形し、35秒間保持して、JIS K7162 1994に準拠したダンベル型試験片(引張試験用試験片)、およびJIS K7111に準拠したノッチ付き多目的試験片(シャルピー衝撃試験用試験片)を作製した。
繊維複合材組成物の引張強度および引張弾性率は、前記ダンベル型試験片を用いて、引張試験により測定した。インテスコ社製引張試験機2005-5を用い、JIS K7162 1994に準拠して23℃、試験速度50mm/分で行った。
繊維複合材組成物のシャルピー衝撃強度は、JIS K7111に準拠して、ノッチ付き多目的試験片を用いて測定した。
繊維配向指数は平面投影法を用いて算出した。株式会社リガク製3DマイクロX線CT撮像装置(nano3DX)を用いて下記条件により測定を行った。
ターゲット:Cu
管電流:40kV
管電流:30mA
使用レンズ:1080
スキャン数(異なる角度の数):1000
1角度あたりの露光時間:45秒
試験片として、前述のシャルピー衝撃試験用の射出試験片(厚さ4mm)の中央部より、4mm(樹脂流れ方向)×2mm(樹脂流れと垂直方向)×2mm(厚さ方向)の直方体(厚さ方向については、表面を含み、表面から中心部までの2mm)を切り出して使用した。
ポリプロピレン樹脂(B)を含有する実施例1および2の組成物は、ポリプロピレン樹脂(B)を含有しない比較例1の組成物に対して、引張弾性率、引張強度およびシャルピー衝撃強度に優れている。ポリプロピレン樹脂(B)に該当しないプロピレン系ワックスを含有する比較例2の組成物は、引張弾性率は比較例1よりも向上が認められるものの、シャルピー衝撃強度に劣っていることがわかる。
Claims (5)
- 135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.8~4.0dl/gであるポリプロピレン樹脂(A)と、
以下の要件(I)~(IV)を満たすポリプロピレン樹脂(B)と、
ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性された変性ポリオレフィン樹脂(C)と、
炭素繊維(D)と
を含有する繊維複合材組成物。
(I)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、分子量が1000以下の成分の含有割合が1.0質量%以下である。
(II)示差走査型熱量計(DSC)により測定した結晶化温度が120℃以下である。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~0.7dl/gである。
(IV)13C-NMRにより測定したペンタッドアイソタクティシティー(mmmm)が90.0~99.9%である。 - 前記炭素繊維(D)を10~90質量%含有し、
前記ポリプロピレン樹脂(A)、前記ポリプロピレン樹脂(B)および前記変性ポリオレフィン樹脂(C)の合計100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~99.4質量部、ポリプロピレン樹脂(B)0.5~30質量部、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1~20質量部を含有する、
請求項1に記載の繊維複合材組成物。 - 前記変性ポリオレフィン樹脂(C)がマレイン酸変性プロピレン系重合体および無水マレイン酸変性プロピレン系重合体から選ばれる1種以上の重合体である、請求項1または2に記載の繊維複合材組成物。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維複合材組成物を含む成形体。
- 自動車部品である、請求項4に記載の成形体。
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