JP2020197283A - 車両用変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規な部品を用いることなく、複数のギヤを回転軸の軸方向に位置決めでき、製造作業の作業性の向上、製造コストの低減および小型化を図ることができる車両用変速機を提供すること。【解決手段】自動変速機2は、従動ギヤ44Fを有し、従動ギヤ44Fと一体で回転するカウンタ軸15と、従動ギヤ44Fを挟んでカウンタ軸15に設けられ、カウンタ軸15と相対回転自在な3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cとを備えており、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cは、同期装置46、47によってカウンタ軸15に選択的に連結される。これに加えて、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cは、従動ギヤ44Fの軸方向の前側面44fと後側面44rに当接している。【選択図】図2

Description

本発明は、車両用変速機に関する。
従来の変速機として、特許文献1に記載されたものが知られている。この変速機は、入力軸に相対回転自在に設けられた3速ギヤおよび4速ギヤと、入力軸の軸方向で3速ギヤおよび4速ギヤの間に設けられ、3速ギヤおよび4速ギヤを入力軸に選択的に連結する同期装置とを有する。
入力軸上の3速ギヤと4速ギヤは、他の軸に設けられた3速ギヤと4速ギヤにそれぞれ噛み合うので、噛み合いによるスラスト力が軸方向に加わる。このため、入力軸上の3速ギヤと4速ギヤを入力軸の軸方向に位置決めする必要がある。
従来の変速機にあっては、入力軸に段差を設け、3速ギヤを入力軸の軸方向で段差と同期装置の間に位置決めしている。
また、入力軸の径方向において4速ギヤと入力軸の間に鍔部を有するブッシュを介装し、4速ギヤを入力軸の軸方向で鍔部と同期装置の間に位置決めしている。
特許4716114号公報
このような従来の変速機にあっては、4速ギヤと入力軸の間に4速ギヤを位置決めするためのブッシュを介装する必要があるので、変速機の部品点数が増加する。これに加えて、ブッシュを組み付ける手間が発生し、変速機の製造作業の作業性が低下する上に変速機の製造コストが増加するおそれがある。
また、4速ギヤが入力軸の軸方向で鍔部に当接しているので、鍔部の厚さ分だけ4速ギヤと4速ギヤに隣り合うギヤとの間に入力軸の軸方向の隙間が生じる。これにより、入力軸が軸方向に長くなり、変速機が大型化するおそれがある。
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、新規な部品を用いることなく、複数のギヤを回転軸の軸方向に位置決めでき、製造作業の作業性の向上、製造コストの低減および小型化を図ることができる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
本発明は、固定ギヤを有し、前記固定ギヤと一体で回転する回転軸と、前記固定ギヤを挟んで前記回転軸に設けられ、前記回転軸と相対回転自在な第1のギヤおよび第2のギヤとを備え、前記第1のギヤおよび第2のギヤが同期装置によって前記回転軸に選択的に連結される車両用変速機であって、前記第1のギヤおよび前記第2のギヤが前記固定ギヤの軸方向の側面に当接していることを特徴とする。
このように上記の本発明によれば、新規な部品を用いることなく、複数のギヤを回転軸の軸方向に位置決めでき、車両用変速機の製造作業の作業性の向上、製造コストの低減および小型化を図ることができる。
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の断面図であり、内側入力軸と外側入力軸を上下に横切る平面で切った図である。 図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の軸の構成図である。 図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の斜視図であり、変速機ケースを外した状態を示す。 図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のフロントケースを後側から見た図である。 図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のカウンタ軸と後側出力軸を示す図である。
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、固定ギヤを有し、固定ギヤと一体で回転する回転軸と、固定ギヤを挟んで回転軸に設けられ、回転軸と相対回転自在な第1のギヤおよび第2のギヤとを備え、第1のギヤおよび第2のギヤが同期装置によって回転軸に選択的に連結される車両用変速機であって、第1のギヤおよび第2のギヤが固定ギヤの軸方向の側面に当接している。
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、新規な部品を用いることなく、複数のギヤを回転軸の軸方向に位置決めでき、車両用変速機の製造作業の作業性の向上、製造コストの低減および小型化を図ることができる。
以下、本発明の一実施例に係る自動変速機について、図面を用いて説明する。図1から図5は、本発明に係る一実施例の自動変速機を示す図である。図1から図5において、上下前後左右方向は、車両に自動変速機を搭載した状態での方向であって、車両の進行する方向を前、後退する方向を後とし、車両の幅方向が左右方向、車両の高さ方向が上下方向である。また、車両の幅方向を車幅方向ともいう。
まず、構成を説明する。
図1において、車両1には自動変速機2が搭載されており、自動変速機2は、内燃機関としてのエンジン3に固定された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。本実施例の自動変速機2は、本発明の車両用変速機を構成する。
図2に示すように、自動変速機2は、回転軸(タービン軸11、内側入力軸12、外側入力軸13、後側出力軸14、カウンタ軸15、後退軸16、前側出力軸17およびクラッチ軸18)を車両1の前後方向に沿って配置している。なお、以後の説明で回転軸の前端部、後端部は、自動変速機2を車両に搭載した状態での回転軸の軸方向の前端部、後端部をいう。
図1において、自動変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、トランスファフロントケース7と、トランスファリヤケース8と、トランスファアクチュエータケース9と、ギヤシフトケース6Aとを備えている。
変速機ケース4は、前から順にトルコンハウジング5、フロントケース6、トランスファフロントケース7、トランスファリヤケース8、トランスファアクチュエータケース9が配置され、フロントケース6の上部にギヤシフトケース6Aが配置され、相互に図示しないボルトによって結合されている。トルコンハウジング5の前端部は、図示しないボルトによってエンジン3に接続されている。
自動変速機2はシフトユニット100を備えており(図4参照)、シフトユニット100は、自動変速機2のシフト操作およびクラッチ操作を行う。シフト操作とは、自動変速機2の変速段を切り替える操作をいい、クラッチ操作とは、自動変速機2のクラッチ装置22(図2参照)を係合(接続)または解放(切断)する操作をいう。
トルコンハウジング5にはトルクコンバータ20が収容されている。トルクコンバータ20は、エンジン3の図示しないクランク軸に連結されるフロントカバー20Aと、フロントカバー20Aに連結されたシェル20Bとを備えており、エンジン3から自動変速機2にオイルを介して動力を伝達している。
シェル20Bの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。トルクコンバータ20の内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、タービン軸11に連結されている。ポンプインペラとタービンランナとの間には図示しないステータが設置されている。
エンジン3のクランク軸が回転すると、トルクコンバータ20において、フロントカバー20A、シェル20Bおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ20の内部の流体に、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。
ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換する。トルクコンバータ20は、エンジン3から受け取った動力をトルク増幅作用により増幅されてタービン軸11から出力する。
フロントカバー20Aの外周部には図示しないドライブプレートが設けられており、ドライブプレートの外周面にはリングギヤが形成されている。ドライブプレートは、エンジン3の始動時にスタータモータ19(図4参照)とリングギヤが噛み合うことにより、スタータモータ19の回転をフロントカバー20Aを介してエンジン3に伝達する。スタータモータ19は、トルコンハウジング5の左上部の後面に取付けられている。
トルコンハウジング5は、前方が開放した形状を有し、トルクコンバータ20の径方向外周を取り囲む周壁81と、この周壁81の内面に接続して設けられトルクコンバータ20の後方に配置される隔壁82とを有している。
隔壁82は、トルクコンバータ20とその後方に配置されるクラッチ装置22の間でタービン軸11を支持している。左側上部の周壁81には、スタータモータ19の装着部として、スタータモータ19が挿入されるスタータモータ19用の開口と、開口の周囲に取付けボスが形成されている。
隔壁82は、トルコンハウジング5の内部でトルクコンバータ20を収容するトルコン室30とフロントケース6の内部でクラッチ装置22を収容するクラッチ室31とを仕切っている。隔壁82には、トルクコンバータ20の出力軸となるタービン軸11が貫通して配置される軸受支持部が形成されている。タービン軸11は、隔壁82を貫通し、隔壁82に形成された軸受支持部において玉軸受23Aを介して回転自在に支持されている。
トルコンハウジング5にはオイルポンプ24が取付けられている。オイルポンプ24は、トルコンハウジング5の内部空間(トルコン室30)に突出するように隔壁82の前面に配置されており、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。オイルポンプ24は、前側ポンプハウジング25と後側ポンプハウジング26から構成されるポンプハウジングを有する。
後側ポンプハウジング26は、図示しないボルトによって隔壁82に締結されており、前側ポンプハウジング25は、図示しないボルトによって後側ポンプハウジング26に締結されている。
前側ポンプハウジング25および後側ポンプハウジング26はオイルポンプ24の筐体を構成している。前側ポンプハウジング25と後側ポンプハウジング26との間にはポンプ室27が形成されており、ポンプ室27にはインナロータ24Aおよびアウタロータ24Bが配置されている。インナロータ24Aは、円環状の部材であってタービン軸11が貫通した状態で取付けられており、シェル20Bに係合してシェル20Bと一体で回転する。
アウタロータ24Bは、円環状の部材であってインナロータ24Aの周囲を囲むようにインナロータ24Aの半径方向外方に配置されており、インナロータ24Aの外周部に形成された外歯と噛み合うことでインナロータ24Aの回転に伴って回転する。
トロコイド式のオイルポンプ24は、アウタロータ24Bの内周部に形成された内歯とインナロータ24Aに形成された外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない作動室を形成する。
エンジン3の動力がトルクコンバータ20を介してインナロータ24Aに伝達されると、オイルポンプ24において、インナロータ24Aとアウタロータ24Bとが一方向に回転する。このとき、オイルポンプ24は、外歯と内歯との間で形成された作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、作動室がオイルの吸入と排出を繰り返し、オイルを圧送することができる。
タービン軸11の後端部には円盤状のフランジ部11Aが形成されており、フランジ部11Aは、タービン軸11の前端部や中央部よりも大径に形成されている。フランジ部11Aにはフライホイール28が取付けられている。フライホイール28は、クラッチ室31に配置され、フロントケース6に収容されている。
フロントケース6には、クラッチ装置22が収容されている。クラッチ室31に配置されたクラッチ装置22は、フライホイール28の後面に取付けられている。クラッチ装置22は、乾式単板のクラッチであり、フライホイール28に取付けられるクラッチカバーと、フライホイール28とクラッチカバーの間に配置されるクラッチディスク22Aとによって構成されている。
なお、フロントケース6とトランスファフロントケース7によって変速機構29が収納される変速機構室32が形成されており、フロントケース6とトランスファフロントケース7には、後述する複数の変速ギヤや同期装置を有する変速機構29が収容されている。
フロントケース6は、クラッチ装置22および変速機構29を外周側から囲む周壁83を備えている。トランスファフロントケース7は、変速機構29を外周側から囲む周壁84を備えており、周壁84の前端部は、周壁83の後端部に連結されている。
フロントケース6の周壁83には隔壁86が形成されており、隔壁86は、フロントケース6の内部をクラッチ装置22が収納されるクラッチ室31と、変速機構29が収納される変速機構室32とに区画し、玉軸受23Bを介して外側入力軸13を回転自在に支持している。
クラッチ装置22は、内側入力軸12および外側入力軸13が貫通した状態で設置されており、内側入力軸12の周囲と外側入力軸13の軸方向の前端部13aの周囲に配置されている。 内側入力軸12および外側入力軸13は、フロントケース6およびトランスファフロントケース7に収容されている。
内側入力軸12は、外側入力軸13の内部に挿入されており、内側入力軸12は、外側入力軸13と同軸上に設置されて外側入力軸13と相対回転自在となっている。内側入力軸12は、タービン軸11と同軸上に設置されて、外側入力軸13の前端部13aから前方に突出する軸方向の前端部12aがタービン軸11のフランジ部11Aにスプライン嵌合されており、タービン軸11から動力が伝達される。
これにより、内側入力軸12は、タービン軸11と一体で回転する。なお、本実施例のスプライン嵌合とは、スプライン穴にスプライン軸を挿入および嵌合してスプライン継手を構成し、スプラインによる動力伝達が可能に組み立てられた状態を意味する。
内側入力軸12は、後側出力軸14と同軸上に設置されている。内側入力軸12の軸方向の後端部12bは、後側出力軸14の前端部14aに挿入され、後側出力軸14の前端部14aにニードル軸受23Cを介して相対回転自在に支持されている。
トランスファフロントケース7は、周囲が周壁84に接続する隔壁85が設けられている。隔壁85には、後側出力軸14が貫通配置される軸受支持部88が設けられている。軸受支持部88には、玉軸受23Dを介して後側出力軸14の軸方向の中央部が回転自在に支持されている。隔壁85は、変速機構29が収納される変速機構室32と2駆‐4駆切替機構が収納されるトランスファ室37とを仕切っている。
トランスファリヤケース8は、トランスファフロントケース7とともに2駆‐4駆切替機構が収納されるトランスファ室37を画成している。トランスファリヤケース8は、後側出力軸14の後部と後述するトランスファ装置36(図2参照)を外周側から取り囲む周壁87を備えており、周囲が周壁87に接続する隔壁89が設けられている。隔壁89には、後側出力軸14が貫通配置され玉軸受23Eを支持する軸受支持部89Aが設けられている。後側出力軸14の軸方向の中央部は、玉軸受23Eを介して軸受支持部89Aに回転自在に支持されている。
トランスファリヤケース8の軸受支持部89Aは、後方に向って延びる筒状部89Bを有する。筒状部89Bは、隔壁89から後方に筒状に延びている。筒状部89Bの内部には後側出力軸14の後端部が配置されており、リヤプロペラ軸の先端が筒状部89Bに挿入されて、リヤプロペラ軸と後側出力軸14とが連結される。
後側出力軸14の後部は、玉軸受23Eを介して隔壁89に回転自在に支持されており、後側出力軸14の後端部14bは、筒状部89Bに収容されている。
クラッチ装置22は、クラッチディスク22Aとクラッチカバーとを備えている。クラッチカバーは、フライホイール28と反対側のクラッチディスク22Aの面に当接するプレッシャプレート22Bと、プレッシャプレート22Bをフライホイール28側に付勢するダイヤフラムスプリング22Cとを備えている。
クラッチディスク22Aは外側入力軸13の前端部13aにスプライン嵌合しており、クラッチディスク22Aは外側入力軸13に一体的に回転し、かつ外側入力軸13の軸方向に移動自在に設けられている。
フロントケース6の隔壁86には、外側入力軸13が貫通配置される筒状部90が形成されている。筒状部90は、隔壁86の中央付近から外側入力軸13の軸方向に沿ってクラッチ装置22側に延びている。すなわち、筒状部90は、隔壁86からクラッチ室31側に突出して形成されている。
外側入力軸13の軸方向でクラッチ装置22と玉軸受23Bの間には環状のレリーズベアリング34が設置されている。レリーズベアリング34は、筒状部90の周囲に設けられており、筒状部90は、レリーズベアリング34を貫通して配置されている。レリーズベアリング34は、筒状部90に沿って外側入力軸13の軸方向に移動してダイヤフラムスプリング22Cの半径方向内方部分に接触および離隔する。
レリーズベアリング34は、レリーズレバー35(図3、図4参照)によって筒状部90に沿って外側入力軸13の軸方向で前方(クラッチ装置22側)に移動されると、ダイヤフラムスプリング22Cの中央付近(筒状部90の周辺付近)を前方に向かって押圧する。
これにより、ダイヤフラムスプリング22Cによるプレッシャプレート22Bへの付勢が解除され、プレッシャプレート22Bの押圧力が無くなり、クラッチディスク22Aがフライホイール28から離隔される。この結果、エンジン3のクランク軸の回転が外側入力軸13に伝達されなくなる。
なお、エンジン3の動力を伝達するためにダイヤフラムスプリング22Cがプレッシャプレート22Bを付勢する力は強力であり、この付勢を解除するためにレリーズベアリング34に作用するレリーズレバー35からの操作力も大きな力が必要となる。この力はトルコンハウジング5の隔壁82にて受け止められる。
レリーズベアリング34は、レリーズレバー35によって外側入力軸13の軸方向に対して後方に移動されると、ダイヤフラムスプリング22Cの中央付近(筒状部90の周辺付近)から離れる。
この状態では、ダイヤフラムスプリング22Cがプレッシャプレート22Bを付勢してクラッチディスク22Aをフライホイール28に押し付け、クラッチディスク22Aをプレッシャプレート22Bとフライホイール28にて挟持するので、エンジン3のクランク軸の回転を外側入力軸13に伝達する。
このようにレリーズベアリング34は、エンジン3の動力を外側入力軸13に伝達可能または遮断可能なようにクラッチ装置22を操作し、クラッチ装置22は、エンジン3のクランク軸と外側入力軸13との間で動力を伝達状態または遮断状態に切り替える。
レリーズレバー35は、前述のシフトユニット100に連結されており、シフトユニット100によって操作される。
フロントケース6およびトランスファフロントケース7にはカウンタ軸15が収容されており、カウンタ軸15は、フロントケース6の隔壁86、トランスファリヤケース8の隔壁89に回転自在に支持されている。
図2に示すように、カウンタ軸15は、内側入力軸12、外側入力軸13、後側出力軸14、後退軸16、前側出力軸17およびクラッチ軸18に対して平行に前後方向に延びている。すなわち、カウンタ軸15、内側入力軸12、外側入力軸13、後側出力軸14、後退軸16、前側出力軸17およびクラッチ軸18は、平行に配置され前後方向に延びている。
内側入力軸12は、フライホイール28およびクラッチ装置22の回転軸心を貫通して前後方向に延びている。内側入力軸12の前端部12aは、タービン軸11のフランジ部11Aの回転軸心に後方に向けて開口するように形成された嵌合穴11aに後側から挿入されて嵌合している。
嵌合穴11aの内面における後側部分は、内面にスプライン歯溝が形成されてスプライン穴となっている。また、内側入力軸12の前端部12aは、外周面にスプライン歯が形成されてスプライン軸となっている。
そして、内側入力軸12の前端部12aがタービン軸11の嵌合穴11aに挿入されると、内側入力軸12の前端部12aのスプライン軸部分と嵌合穴11aのスプライン穴部分が噛み合って、内側入力軸12とタービン軸11が一体的に回転するように連結される。
また、嵌合穴11aの内面における前側部分(奥側部分)はスプライン穴よりも小径の中空円筒状に形成されており、この中空円筒状に嵌合する様に内側入力軸12の前端部12aの先端は円筒状に形成されている。
すなわち、内側入力軸12は、前端部12aが嵌合穴11aに挿入されることにより、タービン軸11の軸線と内側入力軸12の軸線とが同一軸線上に位置するようにタービン軸11と内側入力軸12とが位置決めされる。
また、嵌合穴11aの後部のスプライン穴部分に内側入力軸12のスプライン軸部分がスプライン嵌合され、タービン軸11から内側入力軸12にエンジン3の動力が伝達される。
図2に示すように、軸方向でレリーズベアリング34よりも後側にオイルシール92が設けられている。オイルシール92は、筒状部90の内面と外側入力軸13の外周面の間に介装されて、変速機構室32の潤滑油がクラッチ室31に漏れ出さないように密封している。
軸方向でオイルシール92よりも後側に、内側入力軸12の外周面と外側入力軸13の内面との間にはオイルシール93が設けられている。軸方向でオイルシール92とオイルシール93を前後にずらして配置したので、筒状部90の外径を小さくすることができる。
内側入力軸12と外側入力軸13との間には、図示しないすべり軸受(ブッシュ)とニードル軸受23Gが配設され、内側入力軸12と外側入力軸13とは相対回転自在に相互に支持されている。つまり、外側入力軸13の前端部13aは、すべり軸受を介して内側入力軸12の前端部12aに相対回転自在に軸支されている。
また、オイルシール93よりも後方において内側入力軸12は、ニードル軸受23Gを介して外側入力軸13に相対回転自在に支持されている。
ニードル軸受23Gよりも後方であって外側入力軸13から後方に突出する内側入力軸12の部分には、1速−後退用ギヤ41が設けられている。1速−後退用ギヤ41は、外側入力軸13よりも大径に形成されているとともに、内側入力軸12と一体で回転する。
1速−後退用ギヤ41は、外側入力軸13の後端部と後側出力軸14の前端部の間に配置されている。つまり、内側入力軸12の軸方向において、外側入力軸13と後側出力軸14は、1速−後退用ギヤ41を前後方向で挟んで同軸上に設置されている。
外側入力軸13の後端部には、駆動ギヤ42が設けられている。内側入力軸12の軸方向で1速−後退用ギヤ41の側面と駆動ギヤ42の側面(外側入力軸13の後端面)の間にはスラスト軸受23Jが設けられており、外側入力軸13と内側入力軸12(1速−後退用ギヤ41)は、スラスト軸受23Jによって軸方向に位置決めされた状態で相対回転自在となっている。
後側出力軸14の前端部14aには、5速出力ギヤ43Dが設けられている。内側入力軸12の軸方向で1速−後退用ギヤ41の側面と5速出力ギヤ43Dの側面(後側出力軸14の前端面)の間にスラスト軸受23Kが設けられており、後側出力軸14と内側入力軸12(1速−後退用ギヤ41)は、スラスト軸受23Kにて軸方向に位置決めされた状態で相対回転自在となっている。
1速−後退用ギヤ41よりも後方において、内側入力軸12の後端部12bは、後側出力軸14の前端部14aに挿入されており、内側入力軸12の後端部12bと後側出力軸14の前端部14aとの間にはニードル軸受23Cが設けられている。つまり、後側出力軸14の前端部14aは、その内部に配置されたニードル軸受23Cによって内側入力軸12に相対回転自在に支持されている。
内側入力軸12の軸心にはオイル通路12Aが形成されているとともに、内側入力軸12には半径方向に延びるオイル通路12Bが形成されている。そして、オイル通路12Aは、オイル通路12Bを通して内側入力軸12の周囲(内側入力軸12と外側入力軸13の間の隙間)に連通している。
オイル通路12Aは、内側入力軸12の後端面から軸方向に沿い内側入力軸12の中央付近まで形成されている。つまり、オイル通路12Aの前端部は閉じられており、オイル通路12Aの後端部は、開口している。オイル通路12Bは、オイル通路12Aの前端部付近に連通している。
軸方向でオイル通路12Bの位置に対応する外側入力軸13の外周部には環状部材94が配置されており、環状部材94は、外側入力軸13の外周部を取り囲んでいる。環状部材94は、筒状部90と外側入力軸13の間に配置され、筒状部90に取付けられている(図1参照)。
環状部材94は、外側入力軸13の軸方向で玉軸受23Bの前方側に玉軸受23Bと並んで設置されており、玉軸受23Bと共に筒状部90と外側入力軸13の間に設置されている。環状部材94には半径方向に延びるオイル通路94Aが形成されており、オイル通路94Aは環状部材94の外径面と内径面に開口を有している。
隔壁86および筒状部90には図示しないオイル通路が形成されており、オイル通路94Aは、筒状部90のオイル通路を通して隔壁86のオイル通路に連通されている。
軸方向で環状部材94の位置に対応する外側入力軸13の部位には、半径方向に延びて外側入力軸13の内外を連通するオイル通路13Aが形成されている。そして、環状部材94のオイル通路94Aは、オイル通路13Aおよびオイル通路12Bを通してオイル通路12Aに連通されている。
これにより、隔壁86のオイル通路から筒状部90のオイル通路を通してオイル通路94Aに供給された潤滑油は、オイル通路13Aを通して内側入力軸12と外側入力軸13の間に供給される。この内側入力軸12と外側入力軸13の間に供給された潤滑油の一部は、オイル通路12Bを通してオイル通路12Aに供給される。
外側入力軸13と環状部材94の間には図示しない一対のシールリングが設けられており、外側入力軸13の軸方向でオイル通路13Aとオイル通路94Aは、軸方向で一対のシールリングの間に設けられている。
これにより、オイル通路94Aとオイル通路13Aが開口する環状部材94と外側入力軸13の間の空間が、一対のシールリングによって密閉され、オイル通路94Aからオイル通路13Aに流れる潤滑油が環状部材94と外側入力軸13の間から漏出されることが防止される。
自動変速機2において、環状部材94のオイル通路94Aからオイル通路13Aを通過する潤滑油は、内側入力軸12と外側入力軸13の間に流れ込む。内側入力軸12と外側入力軸13の間には、軸方向でオイル通路12Bとオイルシール93の間に図示しないシールリングが設けられており、オイル通路13Aを通過した潤滑油が、オイルシール93に過度に供給されることを防いでいる。
内側入力軸12と外側入力軸13の間に流れ込んだ潤滑油は、内側入力軸12の軸方向に沿って後方に流れてニードル軸受23Gを潤滑するとともに、その一部はオイル通路12Bに流れ込む。
ニードル軸受23Gを潤滑した潤滑油は、駆動ギヤ42(外側入力軸13の後端部13b)と1速−後退用ギヤ41の間の隙間から排出され、駆動ギヤ42と1速−後退用ギヤ41の側面を流れて駆動ギヤ42と1速−後退用ギヤ41を潤滑し、変速機構室32に排出される。
一方、内側入力軸12と外側入力軸13の間からオイル通路12Bに流れ込んだ潤滑油は、オイル通路12Aを内側入力軸12の軸方向に沿って後方に流れ、内側入力軸12の軸方向の後端部12b(後端面)に形成されたオイル通路12Aの後部の開口端から内側入力軸12と外側入力軸13の間に供給される。
この潤滑油は、径方向の外側に流れて内側入力軸12の外径面と外側入力軸13の内径面の間の隙間に流れ込み、内側入力軸12の軸方向に流れ、ニードル軸受23Cを潤滑する。ニードル軸受23Cを潤滑した潤滑油は、5速出力ギヤ43D(外側入力軸13の後端部13b)と1速−後退用ギヤ41の間の隙間から排出され、5速出力ギヤ43Dと1速−後退用ギヤ41の側面を流れて5速出力ギヤ43Dと1速−後退用ギヤ41を潤滑し、変速機構室32に排出される。
外側入力軸13の後端部には駆動ギヤ42が設けられている。後側出力軸14には、後端部14bから前端部14aに向かって順に1速−2速出力ギヤ43A、3速出力ギヤ43B、4速出力ギヤ43C、5速出力ギヤ43Dが設けられている。出力ギヤ43Aから出力ギヤ43Dは、後側出力軸14に固定されており、後側出力軸14と一体で回転する。
カウンタ軸15の前端部15aは、玉軸受23Lを介して隔壁86に回転自在に支持されており、カウンタ軸15の後端部15bは、玉軸受23Mを介して隔壁89に回転自在に支持されている。
カウンタ軸15には後端部15bから前端部15aに向かって順に1速−2速カウンタギヤ44A、3速カウンタギヤ44B、4速カウンタギヤ44C、5速カウンタギヤ44D、従動ギヤ44Eが設けられている。3速カウンタギヤ44Bと4速カウンタギヤ44Cの間には、後述する後退軸16の中間ギヤ60に噛み合う従動ギヤ44Fが設けられている。
従動ギヤ44Eは、カウンタ軸15にスプライン嵌合されており、カウンタ軸15と一体で回転する。従動ギヤ44Fは、カウンタ軸15と一体に形成されており、カウンタ軸15と一体で回転する。
後側出力軸14の軸方向において3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間には従動ギヤ44Fの軸方向の板厚よりも大きい隙間が形成されている。従動ギヤ44Fは、カウンタギヤ44A、44B、44C、44Dおよび従動ギヤ44Eよりも大径に形成されており、後側出力軸14の軸方向で3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間に位置している。
カウンタギヤ44Aからカウンタギヤ44Dは、ニードル軸受21A、21B、21C、21Dを介してカウンタ軸15に相対回転自在に取付けられている。
従動ギヤ44Eは、外側入力軸13の後端部13bに一体に形成された駆動ギヤ42に噛み合っている。同一の変速段を構成するカウンタギヤ44A、44B、44C、44Dは、それぞれ同一の変速段を構成する出力ギヤ43A、43B、43C、43Dに噛み合っている。
自動変速機2は、出力ギヤ43Aから出力ギヤ43Dと、カウンタギヤ44Aからカウンタギヤ44Dとによって1速段から5速段までの変速段が構成されている。
カウンタ軸15の軸方向で1速−2速カウンタギヤ44Aと3速カウンタギヤ44Bの間には1、2速−3速用の同期装置46が設置されている。
図5に示すように、1、2速−3速用の同期装置46は、ハブ46A、スリーブ46B、ギヤピース46C、46D、シンクロナイザリング46E、46Fを備えている。
ハブ46Aは、カウンタ軸15にスプライン嵌合されており、カウンタ軸15と一体で回転する。スリーブ46Bは、ハブ46Aにスプライン嵌合されており、ハブ46Aと一体的に回転するとともに、ハブ46Aに対してカウンタ軸15の軸方向に移動自在となっている。
1速−2速カウンタギヤ44Aおよび3速カウンタギヤ44Bにはギヤピース46C、46Dがスプライン嵌合されている。ギヤピース46C、46Dは、1速−2速カウンタギヤ44Aおよび3速カウンタギヤ44Bと一体で回転する。
シンクロナイザリング46E、46Fは、ギヤピース46C、46Dとハブ46Aとの回転を同期させるための機構であり、ハブ46Aとギヤピース46C、46Dの間に設置され、ギヤピース46C、46Dと摩擦接触する。
図1において、フロントケース6の上部には、ギヤシフトケース6Aが取付けられている。ギヤシフトケース6Aの内部には、シフトアンドセレクト軸33が設置されている。シフトアンドセレクト軸33は、外側入力軸13の軸方向と直交する車幅方向に延びている。
シフトアンドセレクト軸33は、ギヤシフトケース6Aに回転自在かつ、軸方向に移動自在に設けられており、シフトユニット100によって操作される。シフトユニット100は、変速機ケース4の右側に配置されており、フロントケース6およびトランスファフロントケース7の右側面に取付けられている。シフトユニット100は、油圧によって駆動されるシフトアクチュエータ100Aおよびクラッチアクチュエータ100B(図4参照)を有する。
シフトアンドセレクト軸33は、シフトアクチュエータ100Aによって操作され、レリーズレバー35は、クラッチアクチュエータ100Bによって操作される。また、シフトユニット100は、後述するクラッチ装置52に作動用油圧を供給し、クラッチ装置52を作動させる。
1、2速−3速用の同期装置46において、シフトユニット100によってシフトアンドセレクト軸33が操作されると、図3に示す1、2速−3速用のシフトヨーク49A、1、2速−3速用のシフト軸50A、1、2速−3速用のシフトフォーク51Aを介してスリーブ46Bがカウンタ軸15の軸方向に移動される。
1、2速−3速用の同期装置46において、スリーブ46Bが中立位置からカウンタ軸15の軸方向の後側に移動すると、シンクロナイザリング46Eがギヤピース46Cに摩擦接触することにより、1速−2速カウンタギヤ44Aの回転をハブ46Aの回転に同期させながら、1速−2速カウンタギヤ44Aを、スリーブ46Bおよびハブ46Aを介してカウンタ軸15に連結させる。
これにより、カウンタ軸15と後側出力軸14の間の前進1速段または前進2速段が成立し、動力がカウンタ軸15から1速−2速カウンタギヤ44Aおよび1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に伝達される。
1、2速−3速用の同期装置46において、スリーブ46Bが中立位置からカウンタ軸15の軸方向の前側に移動すると、シンクロナイザリング46Fがギヤピース46Dに摩擦接触することにより、3速カウンタギヤ44Bの回転をハブ46Aの回転に同期させながら、3速カウンタギヤ44Bを、スリーブ46Bおよびハブ46Aを介してカウンタ軸15に連結させる。
これにより、カウンタ軸15と後側出力軸14の間の前進3速段が成立し、動力がカウンタ軸15から3速カウンタギヤ44Bおよび3速出力ギヤ43Bを介して後側出力軸14に伝達される。
後側出力軸14の後端部14bには図示しないリヤプロペラ軸が連結されている。具体的には、リヤプロペラ軸の先端部には、内部にスプライン穴が形成された図示しないスライディングヨークが設けられている。後側出力軸14の後端外周にはスプライン部14sが形成されており、スライディングヨークは、筒状部89Bに挿入された状態でスプライン部14sにスプライン嵌合されている。
これにより、スライディングヨークは、後側出力軸14と一体で回転し、かつ、後側出力軸14の軸方向に移動可能となっている。したがって、リヤプロペラ軸は、スライディングヨークを介して後側出力軸14から動力を受け、後輪へ動力を伝達することができる。
リヤプロペラ軸の後端部は、図示しないリヤディファレンシャル装置に連結されている。そして、リヤディファレンシャル装置は、左右のリヤドライブ軸を介して左右の後輪に連結されている。つまり、動力が後側出力軸14からリヤプロペラ軸、リヤディファレンシャル装置、リヤ側の左右のリヤドライブ軸を介して左右の後輪に伝達される。
カウンタ軸15の軸方向で4速カウンタギヤ44Cと5速カウンタギヤ44Dの間には4速−5速用の同期装置47が設置されている。
4速−5速用の同期装置47は、ハブ47A、スリーブ47B、ギヤピース46C、46D、シンクロナイザリング46E、46Fを備えており、1、2−3速用の同期装置46と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
ハブ47Aは、カウンタ軸15にスプライン嵌合されており、カウンタ軸15と一体で回転する。スリーブ47Bは、ハブ47Aにスプライン嵌合されており、ハブ47Aと一体的に回転するとともにハブ47Aに対してカウンタ軸15の軸方向に移動自在となっている。
4速−5速用の同期装置47において、シフトユニット100によってシフトアンドセレクト軸33が操作されると、図3に示す4速−5速用のシフトヨーク49B、4速−5速用のシフト軸50B、4速−5速用のシフトフォーク51Bを介してスリーブ47Bがカウンタ軸15の軸方向に移動される。
4速−5速用の同期装置47において、スリーブ47Bが中立位置からカウンタ軸15の軸方向の後側に移動すると、シンクロナイザリング46Eがギヤピース46Cに摩擦接触することにより、4速カウンタギヤ44Cの回転をハブ47Aの回転に同期させながら、4速カウンタギヤ44Cを、スリーブ47Bおよびハブ47Aを介してカウンタ軸15に連結させる。
これにより、前進4速段が成立し、カウンタ軸15の動力が4速カウンタギヤ44Cおよび4速出力ギヤ43Cを介して後側出力軸14に伝達される。
4速−5速用の同期装置47において、スリーブ47Bが中立位置からカウンタ軸15の軸方向の前側に移動すると、シンクロナイザリング46Fがギヤピース46Dに摩擦接触することにより、5速カウンタギヤ44Dの回転をハブ47Aの回転に同期させながら、5速カウンタギヤ44Dを、スリーブ47Bおよびハブ47Aを介してカウンタ軸15に連結させる。
これにより、前進5速段が成立し、カウンタ軸15の動力が5速カウンタギヤ44Dおよび4速出力ギヤ43Dを介して後側出力軸14に伝達される。
4速段または5速段が成立すると、エンジン3の動力が後側出力軸14からリヤプロペラ軸、リヤディファレンシャル装置、リヤ側の左右のリヤドライブ軸を介して左右の後輪に伝達される。
本実施例の1、2速−3速用の同期装置46および4速−5速用の同期装置47は、本発明の同期装置を構成する。
図5において、従動ギヤ44Fは、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cよりも大径に形成されている。カウンタ軸15の軸方向において、従動ギヤ44Fのカウンタ軸15側の基部44aの厚みは、基部44aより半径方向外方の従動ギヤ44Fの厚みよりも厚く形成されている。以下、基部44aより半径方向外方の従動ギヤ44Fの部位を半径方向外周部44bという。
3速カウンタギヤ44Bと4速カウンタギヤ44Cは、カウンタ軸15の軸方向で従動ギヤ44Fを挟んで設置されている。
3速カウンタギヤ44Bは、軸方向の後端がハブ46Aに当接しており、前端が基部44aの軸方向の後側面44rに当接している。これにより、3速カウンタギヤ44Bは、ハブ46Aと従動ギヤ44Fによってカウンタ軸15の軸方向に位置決めされ、カウンタ軸15の軸方向に移動不能となっている。
4速カウンタギヤ44Cは、軸方向の前端がハブ47Aに当接しており、後端が基部44aの軸方向の前側面44fに当接している。これにより、4速カウンタギヤ44Cは、ハブ47Aと従動ギヤ44Fによってカウンタ軸15の軸方向に位置決めされ、カウンタ軸15の軸方向に移動不能となっている。
カウンタ軸15には段部15cが形成されており、ニードル軸受21Bは、カウンタ軸15の軸方向で段部15cと従動ギヤ44Fの基部44aによって位置決めされている。
カウンタ軸15には段部15dが形成されており、ニードル軸受21Cは、カウンタ軸15の軸方向で段部15dと従動ギヤ44Fの基部44aによって位置決めされている。
ハブ46Aは、カウンタ軸15の軸方向で段部15cと1速−2速カウンタギヤ44Aによって位置決めされている。カウンタ軸15にはスリーブ91が設けられており、スリーブ91の後端は、玉軸受23Mに当接している。スリーブ91の前端は、1速−2速カウンタギヤ44Aに当接しており、1速−2速カウンタギヤ44Aは、カウンタ軸15の軸方向でスリーブ91とハブ46Aによって位置決めされている。
ハブ47Aは、カウンタ軸15の軸方向で段部15dと5速カウンタギヤ44Dによって位置決めされている。5速カウンタギヤ44Dは、カウンタ軸15の軸方向でハブ47Aと従動ギヤ44Eによって位置決めされており、従動ギヤ44Eは、カウンタ軸15の軸方向で5速カウンタギヤ44Dと玉軸受23Lによって位置決めされている。
本実施例の従動ギヤ44Fは、本発明の固定ギヤを構成し、カウンタ軸15は、本発明の回転軸を構成する。3速カウンタギヤ44Bは、本発明の第1のギヤを構成し、4速カウンタギヤ44Cは、本発明の第2のギヤを構成する。基部44aの後側面44rと前側面44fは、本発明の固定ギヤの軸方向の側面を構成する。
図2において、クラッチ軸18の前端部18aは、コロ軸受23Nを介してフロントケース6に形成された図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
クラッチ軸18の軸方向の中央部は、玉軸受23Pを介してフロントケース6に取付けられた軸受支持部材95(図3、図4参照)に回転自在に支持されている。玉軸受23Pが設置された軸受支持部材95は、フロントケース6と別体に設けられており、フロントケース6に架設されている。
クラッチ軸18の後端部18bは、玉軸受23Qを介してトランスファフロントケース7の隔壁85に回転自在に支持されている。
図4に示すように、自動変速機2の高さ方向(上下方向)でクラッチ軸18が最も高い位置に設置されており、カウンタ軸15が最も低い位置に設置されている。自動変速機2の高さ方向で後側出力軸14は、カウンタ軸15よりも高い位置で、かつクラッチ軸18よりも低い位置に設置されている。
自動変速機2の高さ方向で後退軸16は、カウンタ軸15よりも高い位置で、かつ後側出力軸14よりも低い位置に設置されている。内側入力軸12と外側入力軸13は、後側出力軸14と同一軸上に設置されているので、自動変速機2の高さ方向で内側入力軸12と外側入力軸13は、カウンタ軸15よりも高い位置で、かつクラッチ軸18よりも低い位置に設置されている。
車幅方向で後側出力軸14と後退軸16は、カウンタ軸15とクラッチ軸18の間に設置されており、車幅方向において後退軸16は、後側出力軸14に対してクラッチ軸18側に位置し、後側出力軸14は、後退軸16に対してカウンタ軸15側に位置している。
つまり、軸方向から見て、クラッチ軸18は後側出力軸14に対して左側やや上方に配置され、後退軸16は後側出力軸14に対して左側やや下方に配置され、カウンタ軸15は後側出力軸14に対して右下に配置されている。
このような位置関係により、後側出力軸14の軸心O1とカウンタ軸15の軸心O2と後退軸16の軸心O3とクラッチ軸18の軸心O4と後側出力軸14の軸心O1とを結んだ仮想線Lは、略平行四辺形となるように後側出力軸14、カウンタ軸15、後退軸16およびクラッチ軸18が設置される。
図2において、クラッチ軸18の前端部18a側には湿式多板クラッチで構成されるクラッチ装置52が設置されている。クラッチ装置52は、クラッチドラム53およびクラッチハブ54を有する。クラッチドラム53の後部には入力ギヤ55がスプライン嵌合されて取付けられており、入力ギヤ55は、クラッチドラム53と一体で回転する。
入力ギヤ55は1速−後退用ギヤ41に噛み合っており、内側入力軸12の動力は、1速−後退用ギヤ41から入力ギヤ55を介してクラッチドラム53に伝達される。クラッチドラム53は、入力ギヤ55に対応する軸方向位置においてニードル軸受23Rを介してクラッチ軸18に相対回転自在に支持されている。
クラッチドラム53の内周部には環状の摩擦プレート56Aがスプライン嵌合されており、摩擦プレート56Bは、クラッチドラム53と一体で回転可能で、かつ、クラッチ軸18の軸方向に移動自在となっている。
クラッチハブ54は、クラッチドラム53の内側に配置されており、クラッチドラム53の前側でクラッチ軸18にスプライン嵌合されており、クラッチ軸18と一体で回転する。クラッチハブ54の外周部には摩擦プレート56Bがスプライン嵌合されている。
摩擦プレート56Bは、クラッチハブ54と一体で回転可能で、かつ、クラッチ軸18の軸方向に移動自在となっている。摩擦プレート56A、56Bは、クラッチ軸18の軸方向で交互に並ぶように設置されている。
クラッチ装置52は、その前側部分にクラッチピストン57および筒状の押圧プレート57Aを備えている。クラッチピストン57は、押圧プレート57Aの前側であって軸方向で押圧プレート57Aとコロ軸受23Nの間に配置されており、シフトユニット100から供給されるオイルによって駆動され、押圧プレート57Aをクラッチ軸18の軸方向で後方に押圧する。
押圧プレート57Aがクラッチピストン57によって後方に押圧されると、押圧プレート57Aが摩擦プレート56Aおよび摩擦プレート56Bを後方に押圧し、摩擦プレート56Aと摩擦プレート56Bが摩擦接触し、クラッチドラム53とクラッチハブ54が一体で回転される。
これにより、内側入力軸12の動力が1速−後退用ギヤ41から入力ギヤ55、クラッチ装置52を介してクラッチ軸18に伝達され、クラッチ軸18が回転される。
押圧プレート57Aにクラッチピストン57の押圧力が作用しなくなると、押圧プレート57Aが図示しないリタースプリングによって摩擦プレート56A、56Bから引き離される。これにより、摩擦プレート56A、56Bに作用していた押しつけ力が無くなり、摩擦プレート56Aと摩擦プレート56Bの間の摩擦力が低下して内側入力軸12の動力がクラッチ軸18に伝達されなくなる。
クラッチ軸18の軸方向でクラッチ装置52の後方には筒状部材58が設置されている。筒状部材58は、その後部がニードル軸受21Eを介してクラッチ軸18に回転自在に支持されている。
ニードル軸受21Eに対応する軸方向位置において筒状部材58の外周部には駆動ギヤ58Aが形成されている。駆動ギヤ58Aは、後述する中間ギヤ60に噛み合っている。
筒状部材58の前側部分は拡径されており、この筒状部材58の拡径部とクラッチ軸18の間にワンウェイクラッチ59が配置されている。つまり、ワンウェイクラッチ59は、筒状部材58を介して駆動ギヤ58Aとクラッチ軸18の間に配置されている。
そして、ワンウェイクラッチ59は、クラッチ軸18が駆動ギヤ58Aの回転速度を増速側に変更させる回転のみを駆動ギヤ58Aに伝達し、駆動ギヤ58Aの回転速度がクラッチ軸18の回転速度よりも速い場合には、駆動ギヤ58Aとクラッチ軸18の間で動力を伝達しない。
後退軸16の前端部16aは、玉軸受23Sを介して隔壁86に回転自在に支持されており、後退軸16の後端部16bは、玉軸受23Tを介して隔壁85に回転自在に支持されている。
後退軸16の軸方向の中央部には中間ギヤ60が固定されている。中間ギヤ60は、後退軸16と一体に形成されており、後退軸16と一体で回転する。中間ギヤ60は、クラッチ軸18に配置された駆動ギヤ58Aとカウンタ軸15に配置された従動ギヤ44Fに噛み合っており、駆動ギヤ58Aと従動ギヤ44Fの間で動力を伝達可能にしている。
これにより、クラッチ軸18は、駆動ギヤ58Aおよび中間ギヤ60を介して後退軸16に動力を伝達可能であり、後退軸16は、中間ギヤ60から従動ギヤ44Fを介してカウンタ軸15に動力を伝達可能である。つまり、クラッチ軸18は、ワンウェイクラッチ59、駆動ギヤ58A、中間ギヤ60(後退軸16)および従動ギヤ44F(カウンタ軸15)を介して後側出力軸14に動力を伝達可能となっている。
ここで、ワンウェイクラッチ59は、クラッチ軸18から駆動ギヤ58A、中間ギヤ60および従動ギヤ44Fを介してカウンタ軸15に回転速度を増加させる動力を伝達可能とし、カウンタ軸15から従動ギヤ44F、中間ギヤ60および駆動ギヤ58Aを介してクラッチ軸18に回転速度を増加させる動力を伝達することを不能とする。
後退軸16の後端部16bには後退ギヤ61が設けられており、後退ギヤ61は、ニードル軸受21Fを介して後退軸16に相対回転自在に支持されている。後退ギヤ61は、後側出力軸14に配置された1速−2速出力ギヤ43Aに噛み合っており、後退ギヤ61から動力が伝達される。これにより、後退軸16は、後退ギヤ61および1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に動力を伝達可能となっている。
後退軸16には後退用の同期装置48が設置されている。後退用の同期装置48は、ハブ48Aおよびスリーブ48Bを有する。ハブ48Aは、後退軸16にスプライン嵌合されており、後退軸16と一体で回転する。スリーブ48Bは、ハブ48Aにスプライン嵌合されており、後退軸16の軸方向に移動自在となっている。
後退用の同期装置48において、シフトユニット100によってシフトアンドセレクト軸33が操作されると、図3に示す後退用のシフトヨーク49C、後退用のシフト軸50C、後退用のシフトフォーク51Cを介してスリーブ48Bが後退軸16の軸方向に移動される。
後退用の同期装置48は、スリーブ48Bを中立位置から後退軸16の軸方向の後側に移動させることにより、後退ギヤ61を、スリーブ48Bおよびハブ48Aを介して後退軸16に連結させる。これにより、後退段が成立する。
後退段が成立すると、後退軸16の回転が後退ギヤ61から1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に伝達される。このとき、後側出力軸14が車両1の前進時と反対側に回転駆動され、エンジン3の動力が後側出力軸14からリヤプロペラ軸、リヤディファレンシャル装置、リヤ側の左右のリヤドライブ軸を介して左右の後輪に動力が伝達される。これにより、後輪が車両1の前進時と反対側に回転駆動され、車両1が後退される。
トランスファフロントケース7は、フロントケース6との合わせ面から左下方に延出するように形成された前壁(不図示、隔壁85に連続して形成されている)を有している。前側出力軸17の前端部は、トランスファフロントケース7の前壁から前方に突出して継手17aが設けられており、継手17aには図示しないフロントプロペラ軸が連結されている。フロントプロペラ軸は、図示しないフロントディファレンシャル装置および左右のフロントドライブ軸を介して左右の前輪に動力を伝達する。
前側出力軸17は、継手17aの後部(前側出力軸17の中央やや前側)が玉軸受23Uを介してトランスファフロントケース7の前壁(隔壁85)に回転自在に支持されており、後端部17bが玉軸受23Vを介してトランスファリヤケース8の隔壁89に形成されている図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
前側出力軸17の軸方向で玉軸受23Uと玉軸受23Vの間にはトランスファ従動ギヤ(従動スプロケット)62が設けられている。トランスファ従動ギヤ62は、前側出力軸17にスプライン嵌合されており、前側出力軸17と一体で回転する。
トランスファ従動ギヤ62は、トランスファチェーン65によってトランスファ駆動ギヤ(駆動スプロケット)64に連結されている。トランスファ駆動ギヤ64は、ニードル軸受23Wを介して筒状のスペーサ66に回転自在に支持されている。スペーサ66は、後側出力軸14に嵌合しており、挿入配置された後側出力軸14に取付けられている。
後側出力軸14の軸方向で、トランスファ駆動ギヤ64とその後方に配置された玉軸受23Eの間には、トランスファ同期装置67が設置されている。
トランスファ同期装置67は、二輪−四輪切替用のハブ67Aとスリーブ67Bとを有する。ハブ67Aは、後側出力軸14にスプライン嵌合されており、後側出力軸14と一体で回転する。スリーブ67Bは、ハブ67Aにスプライン嵌合されており、後側出力軸14の軸方向に移動自在となっている。
図1に示すように、スリーブ67Bには、二輪−四輪切替用のフォーク68が係合されている。フォーク68は、操作軸69に取付けられている。操作軸69は、前後方向に沿って配設され、トランスファフロントケース7とトランスファアクチュエータケース9にその前後端部が支持されており、軸方向に移動自在となっている。
操作軸69の後部は、トランスファアクチュエータケース9に収容されており、トランスファアクチュエータケース9は、操作軸69の後部を覆うようにしてトランスファリヤケース8に取付けられている。
トランスファアクチュエータケース9の上部にはトランスファアクチュエータ70が取付けられており、トランスファアクチュエータ70は、操作軸69を軸方向に移動させる。
トランスファアクチュエータ70が操作軸69を前側に移動させると、フォーク68が操作軸69と一体で前側に移動し、スリーブ67Bを中立位置から後側出力軸14の軸方向の前側に移動させる。
これにより、スリーブ67Bが四輪駆動位置となり、スリーブ67Bはトランスファ駆動ギヤ64に連結されて、トランスファ駆動ギヤ64がスリーブ67Bおよびハブ67Aを介してカウンタ軸15に連結される。
つまり、トランスファ駆動ギヤ64が後側出力軸14と一体で回転される。このため、後側出力軸14の動力がトランスファ駆動ギヤ64、トランスファチェーン65およびトランスファ従動ギヤ62を介して前側出力軸17に伝達される。
この結果、後側出力軸14に伝達されたエンジン3の動力は、リヤプロペラ軸等を介して後輪に伝達されるとともに、フロントプロペラ軸、フロントディファレンシャル装置、フロント側の左右のリヤドライブ軸を介して左右の前輪に伝達され、車両1が前後輪で駆動される。すなわち、車両1が四輪で駆動される。
一方、操作軸69が前側の位置であって車両が四輪駆動となる位置にある場合に、トランスファアクチュエータ70が操作軸69を後側に移動させると、フォーク68が操作軸69と一体で後側に移動し、スリーブ67Bを四輪駆動位置から後側出力軸14の軸方向の後側に移動させる。
これにより、スリーブ67Bとトランスファ駆動ギヤ64の連結が解除されてトランスファ駆動ギヤ64が後側出力軸14と相対回転可能となり、後側出力軸14からトランスファ駆動ギヤ64に動力が伝達されない。このため、後側出力軸14の動力が前側出力軸17に伝達されなくなり、後輪のみに動力が伝達される。すなわち、車両1は、二輪駆動となる。
このようにトランスファ装置36は、車両1の駆動状態を二輪駆動と四輪駆動とに切り替える。本実施例のトランスファ従動ギヤ62、トランスファ駆動ギヤ64、トランスファチェーン65、トランスファ同期装置67、フォーク68、操作軸69およびトランスファアクチュエータ70は、トランスファ装置36を構成する。
図1に示すように、フロントケース6の下部にはオイルパン73が取付けられており、オイルパン73にはオイルが貯留されている。オイルパン73とフロントケース6の下部との間にはバルブボディ74が収容されており、バルブボディ74は、図示しないボルトによってフロントケース6の下部に締結されている。
バルブボディ74は、オイルポンプ24によってオイルパン73から吸い上げられたオイルを、トルコンハウジング5の隔壁82に形成された図示しない油路を通してトルクコンバータ20に供給する。
次に、各変速段におけるエンジン3から後側出力軸14までの動力伝達経路を説明する。
(変速段が1速段の場合の動力伝達経路)
1速段においては、クラッチ装置22が解放された状態、すなわち、クラッチディスク22Aがプレッシャプレート22Bとフライホイール28にて挟持されておらずクラッチディスク22Aがフライホイール28から離隔された状態となる。
また、クラッチ装置52が締結された状態、すなわち、摩擦プレート56A、56Bが摩擦接触された状態となる。つまり、1速段においては、クラッチ装置22は解放されて動力伝達をしない状態となり、クラッチ装置52は締結されて動力伝達を行う状態となる。さらに、1、2速−3速用の同期装置46が中立位置から1速−2速カウンタギヤ44A側に移動し、1速−2速カウンタギヤ44Aがカウンタ軸15に連結された状態となる。
1速段において、エンジン3の動力は、タービン軸11からフライホイール28およびクラッチ装置22を介して外側入力軸13に伝達されずに、タービン軸11から内側入力軸12、1速−後退用ギヤ41、入力ギヤ55およびクラッチ装置52を介してクラッチ軸18に伝達される。
次いで、エンジン3の動力は、クラッチ軸18からワンウェイクラッチ59、駆動ギヤ58A、中間ギヤ60および従動ギヤ44Fを介してカウンタ軸15に伝達された後、カウンタ軸15から1、2速−3速用の同期装置46、1速−2速カウンタギヤ44Aおよび1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に伝達される。
(変速段が2速段の場合の動力伝達経路)
2速段においては、クラッチ装置22が係合された状態となり、クラッチ装置52は、締結された状態が維持される。さらに、1、2速−3速用の同期装置46が1速−2速カウンタギヤ44A側に移動した状態が維持され、1速−2速カウンタギヤ44Aがカウンタ軸15に連結された状態が維持される。
2速段において、エンジン3の動力は、タービン軸11からフライホイール28およびクラッチ装置22を介して外側入力軸13に伝達された後、駆動ギヤ42および従動ギヤ44Eを介してカウンタ軸15に伝達される。
次いで、エンジン3の動力は、カウンタ軸15から1、2速−3速用の同期装置46、1速−2速カウンタギヤ44Aおよび1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に伝達される。
1速段から2速段に変速する場合は、クラッチ装置52が締結された状態が維持され、クラッチ装置22の接続を行うことにより、変速段の切り替えが行われる。これにより、変速段の切り替えを円滑に行うことができる上に、変速ショックを抑制できる。
なお、2速段から1速段に変速する場合は、クラッチ装置52を締結された状態とし、クラッチ装置22を切断することにより、変速段の切り替えが行われる。こちらの場合も、変速段の切り替えを円滑に行うことができる上に、変速ショックを抑制することができる。
また、1速段から2速段に変速する場合、ワンウェイクラッチ59が機能する。走行中に2速段に変速すると、2速段の動力伝達によるカウンタ軸15の回転が従動ギヤ44Fから後退軸16の中間ギヤ60を介して筒状部材58の駆動ギヤ58Aに伝達されるが、筒状部材58の回転速度がクラッチ軸18の回転速度よりも速くなるので、ワンウェイクラッチ59によってカウンタ軸15からクラッチ軸18に動力が伝達されなくなる。
このため、2速段用の動力伝達経路(クラッチ装置22、外側入力軸13、カウンタ軸15を介して後側出力軸14にエンジン3の動力が伝達される動力伝達経路)が成立しても、1速段用の動力伝達経路(内側入力軸12、クラッチ装置52、後退軸16、カウンタ軸15を介して後側出力軸14にエンジン3の動力が伝達される動力伝達経路)が悪影響を及ぼすことは回避される。
また、2速段に移行した後、任意の時点において、クラッチ装置52が締結された状態から解放された状態に移行される。
(変速段が3速段の場合の動力伝達経路)
3速段においては、クラッチ装置22が係合された状態となり、クラッチ装置52は、解放された状態となる。さらに、1、2速−3速用の同期装置46が3速カウンタギヤ44B側に移動し、3速カウンタギヤ44Bがカウンタ軸15に連結された状態となる。
3速段において、エンジン3の動力は、タービン軸11からフライホイール28およびクラッチ装置22を介して外側入力軸13に伝達された後、駆動ギヤ42および従動ギヤ44Eを介してカウンタ軸15に伝達される。
次いで、エンジン3の動力は、カウンタ軸15から1、2速−3速用の同期装置46、3速出力カウンタギヤ44Bおよび3速出力ギヤ43Bを介して後側出力軸14に伝達される。
なお、4速段および5速段では、3速段の動力伝達経路に対して、動力伝達経路の一部が4速出力ギヤ43Cとカウンタギヤ44Cまたは、5速出力ギヤ43Dと5速カウンタギヤ44Dになるだけであるので、具体的な説明を省略する。
また、クラッチ装置22に関し、1速段から2速段への変速では締結するのみで、2速段から1速段への変速では解放するのみであるが、2速段以上の変速においては、同期装置46、47、48の切り替えに伴い解放と締結の両方を行うことになる。
(後退段)
後退段においては、クラッチ装置22が解放された状態となり、クラッチ装置52が締結された状態となる。さらに、後退用の同期装置48が中立位置から後退ギヤ61側に移動し、後退ギヤ61が後退軸16に連結された状態となる。
後退段において、エンジン3の動力は、クラッチ装置22が解放されているため、タービン軸11からフライホイール28およびクラッチ装置22を介して外側入力軸13に伝達されずに、タービン軸11から内側入力軸12、1速−後退用ギヤ41、入力ギヤ55およびクラッチ装置52を介してクラッチ軸18に伝達される。
次いで、エンジン3の動力は、クラッチ軸18からワンウェイクラッチ59、駆動ギヤ58A、中間ギヤ60を介して後退軸16に伝達された後、後退ギヤ61から後退用の同期装置48、1速−2速出力ギヤ43Aを介して後側出力軸14に伝達される。
つまり、後退段では、タービン軸11、内側入力軸12、クラッチ軸18、後退軸16、後側出力軸14の順に動力が伝達される。なお、1速と後退では、クラッチ装置52の締結力を調整することで動力の調整を行うことができ、これにより、停車状態からの発進をスムーズに行うことができる。また、トルクコンバータ20のトルク増幅作用により、発進をよりスムーズに行うことができる。
一方、図4に示すように、カウンタ軸15に配置された1速−2速カウンタギヤ44Aにはパーキングギヤ71が設けられており、パーキングギヤ71にパーキングポール72の係止爪72aが係合すると、1速−2速カウンタギヤ44Aの回転が規制される。
1速−2速カウンタギヤ44Aの回転が規制されると、1速−2速カウンタギヤ44Aに噛み合う1速−2速出力ギヤ43Aとともに後側出力軸14の回転が規制され、リヤプロペラ軸、リヤディファレンシャル装置、図示しないドライブシャフトを介して後輪が回転することが規制される。このため、車両1の停車状態が維持される。
パーキングギヤ71にパーキングポール72の係止爪72aが係合しない状態では、1速−2速カウンタギヤ44Aの回転が許容される。1速−2速カウンタギヤ44Aの回転が許容されると、後側出力軸14の回転が許容され、後輪が回転することが許容される。このため、車両1は走行可能な状態となる。
次に、本実施例の自動変速機2の効果を説明する。
本実施例の自動変速機2は、従動ギヤ44Fを有し、従動ギヤ44Fと一体で回転するカウンタ軸15と、従動ギヤ44Fを挟んでカウンタ軸15に設けられ、カウンタ軸15と相対回転自在な3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cとを備えている。
3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cは、1、2−3速用の同期装置46および4速−5速用の同期装置47によってカウンタ軸15に選択的に連結される。
これに加えて、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cは、従動ギヤ44Fの軸方向の前側面44fと後側面44rに当接している。
これにより、従来のように鍔部を有するブッシュ等の新規な部品を用いずに、既存の従動ギヤ44Fを利用して3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cをカウンタ軸15の軸方向に位置決めできる。
このため、ブッシュ等の新規な部品を自動変速機2に組み付ける必要がなくなり、自動変速機2の製造作業の作業を向上できる。また、ブッシュ等の新規な部品が不要になるので、自動変速機2の製造コストを低減できる。
また、ブッシュの鍔部等によって3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cをカウンタ軸15の軸方向に位置決めする必要がないので、3速カウンタギヤ44Bと3速カウンタギヤ44Bと隣り合う1速−2速カウンタギヤ44Aとの間の軸方向の隙間を小さくできる。
これに加えて、同様に4速カウンタギヤ44Cと4速カウンタギヤ44Cと隣り合う5速カウンタギヤ44Dとの間の軸方向の隙間を小さくできる。この結果、カウンタ軸15の軸長を短くでき、カウンタ軸15の周辺の空間を有効利用できる上に、自動変速機2の小型化を図ることができる。
また、3速カウンタギヤ44Bと3速出力ギヤ43Bとの噛み合いによって3速カウンタギヤ44Bに加わるスラスト力を従動ギヤ44Fで受けることができる。これに加えて、4速カウンタギヤ44Cと4速出力ギヤ43Cとの噛み合いによって4速カウンタギヤ44Bに加わるスラスト力を従動ギヤ44Fで受けることができる。
このため、カウンタ軸15と後側出力軸14との間で大きなトルクを伝達できる。この結果、3速カウンタギヤ44Bと3速出力ギヤ43Bの噛み合い部や4速カウンタギヤ44Cと4速出力ギヤ43Cの噛み合い部が軸方向にずれることを抑制でき、騒音の発生やカウンタ軸15から後側出力軸14への動力損失を低減できる。
また、本実施例の自動変速機2によれば、カウンタ軸15の軸方向において、従動ギヤ44Fのカウンタ軸15側の基部44aの厚みは、半径方向外周部44bの厚みよりも厚く形成されており、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cが基部44aに当接している。
従動ギヤ44Fの基部44aは、従動ギヤ44Fの中でカウンタ軸15に最も近いので、曲げモーメントの観点から半径方向外周部44bよりも変形し難い。
この基部44aを厚肉に形成し、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cを当接させることにより、従動ギヤ44Fが3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cから大きなスラスト荷重を受けた場合でも従動ギヤ44Fが倒れ込むことを防止できる。
このため、3速カウンタギヤ44Bと3速出力ギヤ43Bの噛み合い部や4速カウンタギヤ44Cと4速出力ギヤ43Cの噛み合い部が軸方向にずれることをより効果的に抑制できることに加えて、従動ギヤ44Fと中間ギヤ60の噛み合い部が軸方向にずれることを抑制できる。
この結果、騒音の発生やカウンタ軸15から後側出力軸14への動力損失および後退軸16からカウンタ軸15への動力損失を低減できる。
また、本実施例の自動変速機2によれば、従動ギヤ44Fは、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cよりも大径に形成されている。
これにより、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cを従動ギヤ44Fの径方向のどの部位にでも当接させることができ、3速カウンタギヤ44Bおよび4速カウンタギヤ44Cの設置の自由度を向上できる。
また、従動ギヤ44Fにより掻き上げられ、飛散した潤滑用のオイルを3速カウンタギヤ44Bと3速出力ギヤ43Bの噛み合い部や4速カウンタギヤ44Cと4速出力ギヤ43Cの噛み合い部に供給できる。
これにより、3速カウンタギヤ44Bと3速出力ギヤ43Bの噛み合い部や4速カウンタギヤ44Cと4速出力ギヤ43Cの噛み合い部の潤滑性能を向上できる。
また、本実施例の自動変速機2によれば、従動ギヤ44Fは、カウンタギヤ44A、44B、44C、44Dおよび従動ギヤ44Eよりも大径に形成されており、後側出力軸14の軸方向で3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間に位置している。
これにより、カウンタ軸15を後側出力軸14に近づけて設置でき、自動変速機2のより一層の小型化を図ることができる。
また、後側出力軸14の軸方向において3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間には従動ギヤ44Fの軸方向の板厚よりも大きい隙間が形成されており、従動ギヤ44Fは、3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間に位置している。
3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの間には3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cの歯切りのためのスペースが確保されている。このため、歯切りのために形成された3速出力ギヤ43Bと4速出力ギヤ43Cのスペースを利用して従動ギヤ44Fを3速出力ギヤ43Bと出力ギヤ43Cの間に設置できる。
したがって、従動ギヤ44Fをコンパクトに設置でき、自動変速機2の小型化を図ることができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
2...自動変速機、15...カウンタ軸(回転軸)、44a...基部、44b...半径方向外周部(基部に対して半径方向外方の固定ギヤ)、44B...3速カウンタギヤ(第1のギヤ)、44C...4速カウンタギヤ(第2のギヤ)、44F...従動ギヤ(固定ギヤ)、44f...前側面(固定ギヤの軸方向の側面)、44r...後側面(固定ギヤの軸方向の側面)

Claims (3)

  1. 固定ギヤを有し、前記固定ギヤと一体で回転する回転軸と、
    前記固定ギヤを挟んで前記回転軸に設けられ、前記回転軸と相対回転自在な第1のギヤおよび第2のギヤとを備え、
    前記第1のギヤおよび第2のギヤが同期装置によって前記回転軸に選択的に連結される車両用変速機であって、
    前記第1のギヤおよび前記第2のギヤが前記固定ギヤの軸方向の側面に当接していることを特徴とする車両用変速機。
  2. 前記回転軸の軸方向において、前記固定ギヤの前記回転軸側の基部の厚みは、前記基部に対して半径方向外方の前記固定ギヤの厚みよりも厚く形成されており、
    前記第1のギヤと前記第2のギヤが、前記基部に当接していることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
  3. 前記固定ギヤは、前記第1のギヤおよび前記第2のギヤよりも大径に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
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