JP2020180263A - 印刷インキ用バインダー組成物及びその製造方法、並びに印刷インキ - Google Patents

印刷インキ用バインダー組成物及びその製造方法、並びに印刷インキ Download PDF

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Abstract

【課題】非芳香族系溶剤に可溶なポリウレタン樹脂を用いながら、良好な耐ブロッキング性を有するとともに、易接着処理が施されていないプラスチックフィルム表面に対して優れた密着性を有する印刷インキを形成できる、印刷インキ用バインダー組成物を提供すること。【解決手段】ポリウレタン樹脂と、ポリプロピレングリコールと、を含有する印刷インキ用バインダー組成物が開示される。ポリウレタン樹脂が、ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物である。ウレタンプレポリマーが、ポリオール、炭素数8以上の長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートの反応生成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、印刷インキ用バインダー組成物及びその製造方法、並びに印刷インキに関する。
従来、印刷インキ用バインダーとしてポリウレタン樹脂が広く用いられている。印刷インキは、通常、バインダーを溶解する溶剤を含む。この溶剤としてトルエン等の芳香族系溶剤を使用しない、非芳香族系溶剤型印刷インキ(一般に「ノントルエン型印刷インキ」とも称される。)が望まれることがある。例えば、特許文献1は、非芳香族系溶剤型印刷インキに適した印刷インキ用バインダーを得るために、ポリウレタンを得るための高分子ジオールの構成成分として2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオールを用いることを開示している。
特開2000−26782号公報
しかしながら、非芳香族系溶剤に可溶なポリウレタン樹脂を含む従来の印刷インキは、プラスチックフィルムに対する密着性が不足する傾向がある。特に、良好な耐ブロッキング性を維持しながら、易接着処理が施されていないプラスチックフィルム表面との十分な密着性を確保することは非常に困難であった。
そこで、本発明の一側面は、非芳香族系溶剤に可溶なポリウレタン樹脂を用いながら、良好な耐ブロッキング性を有するとともに、易接着処理が施されていないプラスチックフィルム表面に対して優れた密着性を有する印刷インキを形成できる、印刷インキ用バインダー組成物を提供する。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、ポリオール、長鎖アルキルアルコール及びポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタン樹脂が、非芳香族系溶剤に対して良好な溶解性を有すること、さらにこれを印刷インキ用バインダーとして含む印刷インキが、良好な耐ブロッキング性を有するとともに、易接着性処理が施されていないプラスチックフィルム表面に対して優れた密着性を示すことを本発明者らは見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一側面は、印刷インキ用バインダー組成物に関する。当該バインダー組成物は、ポリウレタン樹脂と、ポリプロピレングリコールとを含有する。前記ポリウレタン樹脂が、ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物である。前記ウレタンプレポリマーが、ポリオール、炭素数8以上の長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートの反応生成物である。
本発明の別の一側面は、上記印刷インキ用バインダー組成物と、着色剤と、を含有する、印刷インキに関する。
本発明の一側面によれば、非芳香族系溶剤に可溶なポリウレタン樹脂を用いながら、良好な耐ブロッキング性を有するとともに、易接着処理が施されていないプラスチックフィルム表面に対して優れた密着性を有する印刷インキを形成できる、印刷インキ用バインダー組成物が提供される。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
一実施形態に係るバインダー組成物は、ポリウレタン樹脂を含有する。ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物である。ウレタンプレポリマーは、ポリオール、長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートとの反応生成物である。言い換えると、ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーに由来する構成単位と、鎖延長剤に由来する構成単位とを含む。ウレタンプレポリマーに由来する構成単位と、鎖延長剤に由来する構成単位とが交互に結合していてもよい。
ウレタンプレポリマーに由来する構成単位(ポリウレタン鎖)は、例えば、下記式(I)で表される2価の基であってもよい。式(I)中、Xは両末端にイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーの残基(イソシアネート基を除いた部分)である。
Figure 2020180263
鎖延長剤に由来する構成単位は、例えば、下記式(II)で表される2価の基であってもよい。式(II)中、Lは鎖延長剤の残基を示し、Z及びZはそれぞれ独立に−O−又は−NH−を示す。
Figure 2020180263
ウレタンプレポリマーを構成するポリオールは2以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、高分子ポリオールを含んでもよい。言い換えると、ポリウレタン樹脂は、ポリオールに由来する構成単位として、高分子ポリオールに由来する構成単位を含んでいてもよい。高分子ポリオールに由来する構成単位は、例えば下記式(1)で表される基である。式(1)中のRは、高分子ポリオールの残基(ヒドロキシ基を除いた部分)を示す。式(I)中のXが式(1)の構成単位を含み得る。
Figure 2020180263
高分子ポリオールの数平均分子量が、500〜5000であってもよい。高分子ポリオールの数平均分子量が500以上であることは、印刷インキの印刷性の改善に寄与する。高分子ポリオールの数平均分子量が5000以下であることは、ポリウレタン樹脂が、ポリウレタン樹脂の非芳香族系溶剤への高い溶解性向上と、印刷インキの耐ブロッキング性の改善に寄与する。同様の観点から、高分子ポリオールの数平均分子量が700〜4000であってもよい。
ここで、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる、標準ポリスチレン換算値を意味する。数平均分子量を決定するためのGPCは、溶媒がテトラヒドロフランで、流量が1.0ml/分で、検出器が示差屈折率計である条件で測定される。GPC用のカラムとして、日立化成製HPLC用充填カラム「GL−A160−S」、「GL−A150−S」及び「GL−A130−S」を使用し、これらを直列に連結してもよい。
高分子ポリオールは、2個のヒドロキシ基を有する化合物であってもよい。高分子ポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエングリコール、ビスフェノールAの酸化エチレン付加物、及びビスフェノールAの酸化プロピレン付加物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
ポリエーテルポリオールは、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、若しくはテトラヒドロフランの重合体、又はこれらから選ばれる2種以上の化合物の共重合体であってもよい。ポリエーテルポリオールが、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラフドロフランであってもよい。
ポリエステルポリオールは、例えば、グリコールと、二塩基酸若しくはこれに対応する酸無水物との脱水縮合物であってもよい。二塩基酸の例としては、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びスベリン酸が挙げられる。ポリエステルポリオールが、グリコール及び3個以上のヒドロキシ基を有するその他のポリオールと、二塩基酸若しくはこれに対応する酸無水物との脱水縮合物であってもよい。その他のポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、及びペンタエリスリトールが挙げられる。ポリエステルポリオールは、例えば、環状エステル化合物を開環重合によって形成される重合体であってもよい。
ポリウレタン樹脂及びウレタンプレポリマーを構成するポリオールは、以上例示された高分子ポリオールに加えて、その他のポリオールを含んでいてもよい。その他のポリオールに由来する構成単位の割合は、ポリオールに由来する構成単位の全体量に対して20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
ウレタンプレポリマーを得るために用いる長鎖アルキルアルコールは、炭素数8以上のアルキル基を有するアルコール化合物であり、脂肪族アルコールであってもよい。長鎖アルキルアルコールをポリオールとともにポリイソシアネートと反応させることにより、ウレタンプレポリマーに長鎖アルキル基が導入される。長鎖アルキルアルコールは、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びリノリルアルコールから選ばれる1種以上の脂肪族アルコールであってもよい。長鎖アルキルアルコールの炭素数は、16以上であってもよく、30以下、又は22以下であってもよい。
ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネートは、芳香族、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネート化合物であることができる。ポリイソシアネートに由来する構成単位は、例えば下記式(2)で表される2価の基であってもよい。式(2)中のRはポリイソシアネートの残基(イソシアネート基を除いた部分)を示す。式(I)中がXが、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位とを含み、これら構成単位が交互に結合することによりポリウレタン鎖が形成されていてもよい。
Figure 2020180263
ポリイソシアネートは、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及びダイマージイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。ダイマージイソシアネートは、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えた化合物である。
ポリウレタン樹脂を構成する鎖伸長剤は、ウレタンプレポリマーと反応してポリウレタン樹脂を形成する化合物である。鎖延長剤は、例えば、アミノ基及びヒドロキシ基から選ばれる反応基を2個以上有する化合物であることができる。鎖延長剤の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、及びダイマージアミンが挙げられる。鎖延長剤が、ヒドロキシ基を有するジアミンであってもよく、その例としては、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、及びジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。鎖延長剤が、グリコールを含んでもよい。これら鎖伸長剤は、1種を単独で、2種類以上を組み合わせて用いられる。
ポリウレタン樹脂は、1級アミノ基、2級アミノ基又はこれらの両方を有していてもよい。その場合、ポリウレタン樹脂のアミン価は、0.5mgKOH/g以上、0.6mgKOH/g以上、又は2.0mgKOH/g以上であってもよく、10mgKOH/g以下、7.0mgKOH/g以下、又は4.0mgKOH/g以下であってもよい。アミン価がこれら範囲内にあると、易接着処理が施されていないプラスチックフィルム表面に対する密着性がより一層向上する傾向がある。ポリウレタン樹脂中のアミノ基は、例えば鎖延長剤のアミノ基に由来する。
本明細書において、アミン価は、以下の方法で決定される値を意味する。
ポリウレタン樹脂を含む試料を0.5〜10g精秤し、試料の質量Sgを記録する。精秤した試料にメチルエチルケトン(MEK)/イソプロピルアルコール(IPA)を体積比で1/1の割合で含む混合溶剤50mLを加え、これを溶解させる。得られた溶液に、指示薬としてブロモクレゾールグリーンを加え、0.5mol/Lの塩酸(力価:f)で滴定を行う。溶液の色が、緑から黄色に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)から、次式により試料のアミン価を算出する。
アミン価[mgKOH/g]=(A×f×5.611)/S
得られたアミン価の数値を、試料におけるポリウレタン樹脂の濃度に基づいて、ポリウレタン樹脂単独でのアミン価に換算することができる。
ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5000〜100000であってもよい。数平均分子量が5000以上であると、印刷インキの乾燥性、耐ブロッキング性、印刷皮膜の強度等がより一層向上する傾向がある。数平均分子量が100000以下であると、ポリウレタン樹脂の粘度が過度に高くなることがある。数平均分子量は、GPCによって求められる、標準ポリスチレン換算値である。
バインダー組成物を構成するポリプロピレングリコールは、特に制限されないが、その分子量が500〜3000、又は700〜2000であってもよい。
バインダー組成物におけるポリプロピレングリコールの含有量が、ウレタンプレポリマーに由来する構成単位及びポリプロピレングリコールの合計量に対して0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよく、20質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。ポリプロプレングリコールの含有量がこれら範囲内であると、密着性向上の効果がより一層顕著に得られる傾向がある。
一実施形態に係るバインダー組成物は、溶媒を更に含有してもよい。溶媒にポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールが溶解していてもよい。溶媒は、非芳香族系溶剤であってもよい。特に、溶媒が酢酸エチル、イソピロピルアルコール、又はこれらの両方を含んでいてもよい。この場合、溶媒全量に対する酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの割合が、60〜100質量%、70〜100質量%、80〜100質量%、又は90〜100質量%であってもよい。
バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂の濃度は、特に制限はされず、印刷インキ製造のための作業性等を考慮して適宜決定される。ポリウレタン樹脂の濃度は、典型的には、バインダー組成物の質量を基準として15〜60質量%程度である。
バインダー組成物の粘度は、25℃において50〜100000mPa・sであってもよい。
バインダー組成物は、ポリアミド、ニトロセルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂、ケトン樹脂等のその他の成分を更に含有してもよい。
バインダー組成物は、例えば、ポリオール、炭素数8以上の長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートの反応によりウレタンプレポリマーを生成させる工程と、溶媒中でウレタンプレポリマーと鎖伸長剤との反応によりポリウレタン樹脂を生成させる工程と、ポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールを含有するバインダー組成物を得る工程とを含む方法によって製造することができる。ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応は、非芳香族系溶剤(例えば酢酸エチル、イソピロピルアルコール)を含む溶媒中で行ってもよい。ポリオール、長鎖アルキルアルコール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一度に反応させてポリウレタン樹脂を生成させる1段法を採用してもよい。ポリウレタン樹脂を含む均一な溶液を得るために、2段法を選択してもよい。溶液からポリウレタン樹脂を単離することなく、反応に用いられた非芳香族系溶剤をバインダー組成物の構成成分として用いてもよい。すなわち、反応により生成したポリウレタン樹脂及び非芳香族系溶剤を含む溶液とポリプロピレングリコールとを混合することにより、バインダー組成物を得ることができる。得られたバインダー組成物を、そのまま、又は必要により追加の溶媒等を添加して、印刷インキを調製するために用いることができる。
ウレタンプレポリマーを生成させる工程において、イソシアネート基(NCO)の量がヒドロキシ基(OH)に対して過剰であると、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られ易い。例えば、ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量に対する、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の量のモル比(NCO/OH)が、1.1〜4.0であってもよい。NCO/OHのモル比が1.4以上であると、印刷インキの耐ブロッキング性がより向上する傾向がある。NCO/OHのモル比が3.0以下であると、印刷インキの密着性がより向上する傾向がある。同様の観点から、モル比(NCO/OH)が1.4〜3.0、1.6〜2.4、又は1.6〜1.8であってもよい。
ウレタンプレポリマーを生成させる工程において、長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基の割合が、ポリオールに含まれるヒドロキシ基及び長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基の合計量に対して0.1モル%以上、0.3モル%以上、又は0.5モル%以上であってもよく、10モル%以下、7.0モル%以下、又は5.0モル%以下であってもよい。長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基の割合がこの範囲内であると、密着性向上の効果がより一層顕著に得られる傾向がある。
ポリオールとポリイソシアネートとを、反応を促進する触媒の存在下で反応させてもよい。触媒は、ウレタン化反応の触媒として通常用いられるものから選択できる。触媒の例としては、アミン触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、錫系触媒(ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等)、及びチタン系触媒(テトラブチルチタネート等)が挙げられる。触媒の量は、ポリオール及びポリイソシアネートの合計量に対して通常0.1質量%以下である。
一実施形態に係る印刷インキは、上述の実施形態に係るバインダー組成物と、着色剤とを含有する。言い換えると、印刷インキは、上述の実施形態に係るポリウレタン樹脂と、ポリプロピレングリコールと、溶媒と、着色剤とを含有してもよい。着色剤は、印刷インキの着色剤として通常用いられている顔料及び染料等から任意に選択することができる。
印刷インキにおけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計の濃度は、例えば、印刷インキの質量を基準として3〜20質量%であってもよい。
印刷インキは、流動性及び印刷皮膜の表面を改良するための界面活性剤、ワックス等の各種添加剤を更に含有してもよい。
印刷インキは、バインダー組成物を含む構成成分を、ボールミル、アトライター、サンドミル等の通常のインキ製造装置を用いて混練することにより製造することができる。
一実施形態に係る印刷インキを各種基材に印刷することにより、基材表面を覆う印刷皮膜が形成される。印刷インキを、包装材料として用いられるプラスチックフィルムの装飾又は表面保護のための印刷皮膜を形成するために用いてもよい。例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等の各種プラスチックフィルムの易接着処理が施されていない表面に印刷インキを適用することができる。本実施形態に係る印刷インキは、これらフィルムに対しても十分な密着力を有する印刷皮膜を形成することができる。印刷インキの印刷方法は、特に限定されないが、例えばグラビア印刷であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。「部」及び「%」は質量基準の値である。
1.原材料
1−1.ポリオール
・ポリエステルポリオールA1:数平均分子量2000、株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールP2010」
・ポリエステルポリオールA2:数平均分子量4000、株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールP4010」
・ポリエステルポリオールA3:数平均分子量5000、株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールP5010」
・ポリエステルポリオールA4:数平均分子量1000、株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールP1010」
・長鎖アルキルアルコールB1:炭素数12〜14、新日本理科株式会社製、商品名「コノール20F」
・長鎖アルキルアルコールB2:炭素数22、新日本理科株式会社製、商品名「コノール2280」
1−2.ポリアルキレングリコール
・ポリプロピレングリコールC1:旭ガラス株式会社製、商品名「エクセノール2000」
・ポリプロピレングリコールC2:三洋化成工業株式会社製、商品名「サンニックスPP600」
・ポリエチレングリコール(PEG):三洋化成株式会社製、商品名「PEG-2000」
2.ポリウレタン樹脂の合成
実施例1
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、ポリエステルポリオールA1を499.5部、長鎖アルキルアルコールB1を0.5部、イソホロンジイソシアネートを78部入れた。窒素気流下、105℃で3時間の加熱により、フラスコ内の混合物を無溶剤下で反応させた。この反応により遊離イソシアネート基含量1.5%のウレタンプレポリマーが生成した。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル370部を添加した。
生成したウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液948部を、イソホロンジアミン35部、酢酸エチル609部、及びイソプロピルアルコール419部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度は800mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は2.2mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC1を32部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
実施例2
ポリエステルポリオールA2を499.5部、長鎖アルキルアルコールB1を0.5部、イソホロンジイソシアネート67部を丸底フラスコに仕込んだこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量2.6%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル363部を添加した。
生成したウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液930部を、イソホロンジアミン52部、酢酸エチル626部、及びイソプロピルアルコール424部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度は粘度は720mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は4.0mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC2を69部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
実施例3
ポリエステルポリオールA1を497部、長鎖アルキルアルコールB1を3.0部、イソホロンジイソシアネート102部を丸底フラスコに仕込んだこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量2.9%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル385部を添加した。
生成したウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液987部を、イソホロンジアミン64部、酢酸エチル678部、及びイソプロピルアルコール456部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃のおける粘度は850mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は7.0mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC1を21部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
実施例4
ポリエステルポリオールA3を499.7部、長鎖アルキルアルコールB2を0.3部、イソホロンジイソシアネート36部を丸底フラスコに仕込んだこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量0.9%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル343部を添加した。
生成したウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液879部を、イソホロンジアミン17部、酢酸エチル540部及びイソプロピルアルコール378部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度は820mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は1.7mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC2を98部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
実施例5
ポリエステルポリオールA4を489.5部、長鎖アルキルアルコールB1を10.5部、イソホロンジイソシアネート183部を丸底フラスコに仕込んだこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量3.8%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル437部を添加した。
生成したウレタンプレポリマーを含む溶液1120部を、イソホロンジアミン87部、酢酸エチル792部、及びイソプロピルアルコール526部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度が30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度が620mPa・s/25℃であった。ポリウレタン樹脂のアミン価は0.6mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC1を41部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
比較例1
ポリエステルポリオールA1を500部、イソホロンジイソシアネート111部を丸底フラスコに仕込み、長鎖アルキルアルコールを用いなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量3.4%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル391部を添加した。
得られたウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液1002部を、イソホロンジアミン79部、酢酸エチル710部、及びイソプロピルアルコール472部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5質量%で含むポリウレタン樹脂溶液を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度は820mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は1.0mgKOH/gであった。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、ポリプロピレングリコールC1を36部と、希釈溶剤としての酢酸エチルとを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
比較例2
ポリエステルポリオールA5を498.3部、長鎖アルキルアルコールB1を1.7部、イソホロンジイソシアネート31部を丸底フラスコに仕込んだこと以外は実施例1と同様の手順で、遊離イソシアネート基含量0.8%のウレタンプレポリマーを生成させた。生成したウレタンプレポリマーを含む反応液に、希釈溶剤として酢酸エチル340部を添加した。
得られたウレタンプレポリマー及び酢酸エチルを含む溶液871部を、イソホロンジアミン16部、酢酸エチル533部、及びイソプロピルアルコール374部の混合物に加えた。得られた溶液を65℃で3時間加熱した。これにより、イソホロンジアミンによって鎖延長されたポリウレタン樹脂を濃度30.5%で含むポリウレタン樹脂溶液(バインダー組成物)を得た。ポリウレタン樹脂溶液の25℃における粘度は600mPa・sであった。ポリウレタン樹脂のアミン価は2.2mgKOH/gであった。
比較例3
実施例1と同様の手順で、イソホロンジアミンで鎖延長されたポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂溶液を得た。そこにポリエチレングリコール32部と酢酸エチルを添加して、バインダー組成物を得た。バインダー組成物におけるポリウレタン樹脂及びポリエチレングリコールの合計濃度は、バインダー組成物の質量を基準として30%であった。
3.ポリウレタン樹脂のアミン価
ポリウレタン樹脂の溶液の試料を精秤し、その質量Sgを記録した。精秤した試料にメチルエチルケトン(MEK)/イソプロピルアルコール(IPA)を体積比で1/1の割合で含む混合溶剤50mLを加え、試料を溶解させた。得られた溶液に、指示薬としてブロモクレゾールグリーンを加え、0.5mol/Lの塩酸(力価:f)で滴定を行った。溶液の色が、緑から黄色に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)から、次式により試料のアミン価を算出した。
アミン価[mgKOH/g]=(A×f×5.611)/S
得られたアミン価の数値を、試料におけるポリウレタン樹脂の濃度(30質量%)に基づいて、ポリウレタン樹脂単独でのアミン価に換算した。
4.印刷インキの調製
実施例又は比較例で得た各バインダー組成物(ポリウレタン樹脂を含む溶液)29部、チタン白(ルチル型)31部、酢酸エチル28部、イソプロピルアルコール12部の混合物を練肉して、元インキを得た。この元インキ100部に、粘度調整のための酢酸エチル35部及びイソプロピルアルコール15部を加え、白色の印刷インキを調製した。
5.評価
5−1.試料の作製
得接着処理面を有する二軸延伸ポリオレフィン(OPP)フィルム、及び易接着処理されていない未処理面を有するOPPフィルムを準備した。それぞれのOPPフィルムの易接着処理面又は未処理面に、調製した各印刷インキを、グラビア印刷機(ロータリーコーター、RKプリントコートインスツルメント製)を用いて印刷した。印刷された印刷インキを80℃で乾燥し、印刷皮膜を有する印刷フィルムを得た。得られた印刷フィルムを密着性、及び耐ブロッキング性の試験に供した。
5−2.密着性
印刷皮膜の面にセロファンテープを貼り付けた。セロファンテープを、印刷皮膜の面に対して90°の方向に引っ張って急速に剥した。その後、印刷インキの皮膜の外観を目視で観察し、印刷フィルム側に残存した印刷皮膜の面積の割合に基づいて、密着性を以下の基準で判定した。
AA:95面積%以上
A:80面積%以上95面積%未満
B:50面積%以上80面積%未満
C:50面積%未満
5−3.耐ブロッキング性
印刷フィルムを、印刷皮膜を内側にして折り曲げ、印刷皮膜同士を接触させた。折り曲げられた印刷フィルムに2.0N(200gf)/cmの荷重を加え、その状態で40℃で24時間放置した。放置後の印刷面の付着状態を目視で観察し、印刷皮膜の接触面積のうち、印刷皮膜同士が付着した部分の面積の割合に基づいて、耐ブロッキング性を以下の基準で評価した。付着の割合が少ないことは、耐ブロッキング性が優れることを意味する。
AA:0面積%以上50面積%未満
A:5面積%以上20%未満
B:20面積%以上50%未満
C:50面積%以上
5−4.酢酸エチルに対する耐性
各印刷インキを、OPPフィルムの片面に小型卓上印刷機(倉敷紡績株式会社製GP−2)を用いて印刷した。形成された印刷皮膜の上に酢酸エチルを印刷した。印刷インキの印刷皮膜のうち、酢酸エチルの印刷後にOPPフィルム上に残存した部分の割合に基づいて、以下の基準により、酢酸エチルに対する耐性を判定した。
A:80面積%以上
B:50面積%以上80面積%未満
C:50面積%未満
Figure 2020180263
Figure 2020180263
表1及び表2に評価結果が示される。表中、「(A)/(B) OH モル比」は、(A)ポリエステルオールに含まれるヒドロキシ基と、(B)長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基とのモル比である。「NCO/OH モル比」は、(A)ポリエステルポリオールに含まれるヒドロキシ基の量に対する、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の量のモル比である。「ウレタンプレポリマー/(C)」は、ウレタンプレポリマーに由来する構成単位とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとの質量比である。実施例の印刷インキは、OPPフィルムの未処理面上に印刷された場合でも、優れた密着性及び耐ブロッキング性を示した。

Claims (9)

  1. ポリウレタン樹脂と、
    ポリプロピレングリコールと、
    を含有し、
    前記ポリウレタン樹脂が、ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物であり、
    前記ウレタンプレポリマーが、ポリオール、炭素数8以上の長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートの反応生成物である、
    印刷インキ用バインダー組成物。
  2. 前記ポリオールが、500〜5000の数平均分子量を有する高分子ポリオールを含む、請求項1に記載の印刷インキ用バインダー組成物。
  3. 前記ポリウレタン樹脂のアミン価が0.5〜10mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の印刷インキ用バインダー組成物。
  4. 前記ポリプロピレングリコールの含有量が、前記ウレタンプレポリマーに由来する構成単位及びポリプロピレングリコールの合計量に対して0.5〜20質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷インキ用バインダー組成物。
  5. ポリオール、炭素数8以上の長鎖アルキルアルコール、及びポリイソシアネートの反応によりウレタンプレポリマーを生成させる工程と、
    溶媒中で前記ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤との反応によりポリウレタン樹脂を生成させる工程と、
    前記ポリウレタン樹脂及びポリプロピレングリコールを含有するバインダー組成物を得る工程と、
    を含む、
    印刷インキ用バインダー組成物を製造する方法。
  6. 前記溶媒が、酢酸エチル、イソピロピルアルコール、又はこれらの両方を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ウレタンプレポリマーを生成させる前記工程において、前記ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量に対する、前記ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の量のモル比が、1.1〜4.0である、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記ウレタンプレポリマーを生成させる前記工程において、前記長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基の割合が、前記ポリオールに含まれるヒドロキシ基及び前記長鎖アルキルアルコールに含まれるヒドロキシ基の合計量に対して0.1〜10モル%である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷インキ用バインダー組成物と、着色剤と、を含有する、印刷インキ。
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