JP2020168834A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、かつブロッキングが起こらないガスバリア性フィルムを提供する。【解決手段】樹脂基材1と、樹脂基材の第一面1aに接して位置する酸素バリア性皮膜5とを有し、樹脂基材が基層4を含む2以上の樹脂層を有し、前記2以上の樹脂層のうち、樹脂基材の第一面を形成する樹脂層と第一面と反対側の第二面1bを形成する樹脂層がアンチブロッキング剤6を含み、アンチブロッキング剤により樹脂基材の第1面に形成された高さ0.2μm以上の突起6aの数(A)と、アンチブロッキングの脱落により形成された深さ0.2μm以上の凹み6bの数(B)の比(A)/(B)が4以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や品質を維持するため、内容物を変性させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を防ぐ性質、つまりガスバリア性が求められる。そのため、これらの包装材料には、ガスバリア性を有するフィルム材料(ガスバリア性フィルム)が用いられる。
ガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を樹脂基材の表面に設けたものが知られている。ガスバリア層としては、金属箔や金属蒸着膜、ウェットコート法により形成された皮膜が知られている。前記皮膜としては、酸素バリア性を示すものとして、水溶性高分子、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂を含むコーティング剤から形成された樹脂膜や、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された無機層状鉱物複合樹脂膜が知られている(特許文献1)。
ガスバリア性フィルムの製造工程において、樹脂基材の滑り性が低いと、バリア層塗工時のハンドリング性が十分でないために、製膜ライン中の樹脂基材にブロッキングが生じる原因となる。ブロッキングが発生した場合、材料ロス、作業時間ロス、収率低下といったコスト面で不利な状況となる。
樹脂基材の滑り性を向上するため、基材の表面自由エネルギーを低くする必要がある。その方法として、例えば、樹脂基材表面に凹凸形状を付与して接触面積を少なくする、スリップ剤を添加する、物質が変形する際のエネルギー損失の低減または接触時の比表面積を小さくするため、剛性の高い材料を使用する、等が挙げられる。
表面凹凸を利用して滑り性を付与するためにアンチブロッキング剤を樹脂基材に添加する構成は、例えば引用文献2、3のように、表面粗さと表面突起の個数を規定したものがある。
しかしながら、樹脂基材表面にアンチブロッキング剤を添加した場合、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性が、本来の酸素バリア性、つまり皮膜を構成する材料および皮膜の厚みから想定される酸素バリア性よりも劣ることがあった。特に、皮膜の厚みが薄くなると、かかる問題が生じやすい傾向があった。
特許第6176239号公報 特開2001−9983号公報 特開2001−48994号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、酸素バリア性を付与するための皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、かつブロッキングが起こらないガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、
樹脂基材と、前記樹脂基材の第一面に接して位置する酸素バリア性皮膜とを有し、
前記樹脂基材が基層を含む2以上の樹脂層を有し、
前記2以上の樹脂層のうち、前記樹脂基材の第一面を形成する樹脂層と第一面と反対側の第二面を形成する樹脂層がアンチブロッキング剤を含み、
アンチブロッキング剤により樹脂基材の第1面に形成された高さ0.2μm以上の突起の数(A)と、アンチブロッキングの脱落により形成された深さ0.2μm以上の凹みの数(B)の比(A)/(B)が4以下であることを特徴とするガスバリア性フィルムである。
また、本発明の請求項2に係る発明は、
前記樹脂基材がポリオレフィン系樹脂基材である請求項1に記載のガスバリア性フィルムである。
また、本発明の請求項3に係る発明は、
前記酸素バリア性皮膜の厚みが0.2〜0.7μmである請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムである。
また、本発明の請求項4に係る発明は、
前記酸素バリア性皮膜が、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜である請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムである。
また、本発明の請求項5に係る発明は、
前記コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂をさらに含む、請求項4に記載のガスバリア性フィルムである。
また、本発明の請求項6に係る発明は、
前記コーティング剤が硬化剤をさらに含む、請求項4または5に記載のガスバリア性フィルムである。
本発明のガスバリア性フィルムによれば、酸素バリア性を付与するための皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、かつブロッキングが発生しない。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの模式断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルム10の模式断面図である。図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なっている場合がある。
ガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1と酸素バリア性皮膜(以下、単に「皮膜」と称することがある)5とを有する。
皮膜5は、樹脂基材1の第一面1aに接して位置している。
(樹脂基材)
樹脂基材1は、基層4を含む2以上の樹脂層を有する。具体的には、基層4と、基層4の
一方面に位置する表層2と、基層4の他方面に位置する裏層3とを有する。
表層2は、樹脂基材1の最も第一面1a側に位置して、第一面1aを形成している。
裏層3は、樹脂基材1の最も第二面1b側に位置して、樹脂基材1の第一面1aと反対側の第二面1bを形成している。
樹脂基材1は樹脂を含み、樹脂基材1を構成する表層2、裏層3、基層4の各層も樹脂を含む。
基層4は、例えば、樹脂基材1の剛性、伸び、腰、引裂強さ、衝撃強度、突刺し強度、耐ピンホール性等の機械特性、水蒸気バリア性、ガスバリア性、保香性、耐薬品性、耐油性等の化学的特性、融点・ガラス転移点、耐熱温度、耐寒温度、熱収縮率等の熱的特性、透明性や光沢性等の光学特性等を調整する。
基層4の原料となる樹脂としては、入手の平易さ、水蒸気バリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。すなわち、樹脂基材1は、ポリオレフィン系樹脂基材であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる種類のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすポリプロピレンである。これらのポリオレフィン系樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
基層4は、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、対候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適性の観点から好ましい。
基層4における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
基層4は、典型的にはAB剤を含まない。
基層4は、単層構造でも多層構造でもよい。
基層4の厚みは、例えば、3〜200μmであってよく、6〜30μmであってよい。
表層2を構成する樹脂は、基層4を構成する樹脂と同一でも異なってもよい。例えば、表層2、基層4各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、表層2を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層4を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。これは、樹脂基材1と皮膜5の密着性を向上させるためである。表層2に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
裏層3を構成する樹脂は、表層2を構成する樹脂と同様に、基層4を構成する樹脂と同
一でも異なってもよい。例えば、裏層3、基層4各々を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、裏層3を構成するポリオレフィン系樹脂が、基層4を構成するポリオレフィン系樹脂よりも低融点のポリオレフィン系樹脂であってもよい。裏層3に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、表層2に用いることができるポリオレフィン系樹脂として挙げたものが挙げられる。
表層2及び裏層3は、図1に示すように、AB剤6を含む。AB剤6は表層2及び裏層3中に分散している。表層2及び裏層3がAB剤6を含むことで、樹脂基材1の第一面1a及び第二面1bに局所的に、AB剤6に由来する凸部6aが存在する。この凸部6aによって、樹脂基材1やガスバリア性フィルム10のブロッキングを抑制できる。第一面1a及び第二面1bにおいて、AB剤6は露出していてもよいし樹脂で覆われていてもよい。
AB剤6は、固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。AB剤6としては、有機系ではポリメチルメタクリレート粒子、無機系ではシリカ粒子が好ましい。
AB剤6の平均粒径は、典型的には、表層2及び裏層3の厚み以下である。第一面1a、第二面1bの外観、表層2、裏層3の透明性、AB剤6のアンチブロッキング性能を考慮すると、AB剤6の平均粒径は、0.1μm以上、5μm以下が好ましく、2μm以上、4μm以下が特に好ましい。AB剤6のフィラー粒子の平均粒径は、コールター法により測定される。
表層2及び裏層3におけるAB剤6の添加量は、例えば表層2及び裏層3のそれぞれの総質量に対して0.1〜0.4質量%である。
裏層3におけるAB剤6の添加量は、具体的には以下の式により求める。
AB剤の添加量[質量%]={(i)/100}×{(ii)/100}×100
式中、(i)は、樹脂にAB剤を添加して攪拌し、押出機内に投入して混練し、溶融押出によりペレット状に形成されるマスターバッチ樹脂チップにおけるAB剤の濃度(質量%)を示し、(ii)は、AB剤を含むマスターバッチ樹脂チップを、AB剤を含まない樹脂にブレンドするときの、裏層3を構成する樹脂ペレット総質量に対するAB剤を含むマスターバッチ樹脂チップの濃度(質量%)を示す。
表層2及び裏層3は、アンチブロッキング剤以外の添加剤として、公知の各種の添加剤から適宜選定し、それらを含んでもよい。添加剤の例としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のうち滑剤、スリップ剤は、加工適性の観点から添加することが好ましい。
表層2における添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
表層2の厚みは、例えば、0.1〜10μmであってよく、さらには0.5〜5.0μmであってよい。表層2の厚みは、AB剤6に由来する凸部6a及び凹部6bが存在しない部分の厚みである。
裏層3の厚みは、例えば、0.1〜10μmであってよく、さらには0.5〜5.0μ
mであってよい。裏層3の厚みは、AB剤6に由来する凸部6a及び凹部6bが存在しない部分の厚みである。
樹脂基材1は、表層2、裏層3、基層4の各層を共押出で積層した共押出フィルムであることが好ましい。樹脂基材1は、延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよい。
樹脂基材1は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは特に水蒸気バリア性能が優れるので、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することで、ガスバリア性フィルム10の水蒸気バリア性が優れる。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等の少なくとも1種がフィルム状に加工されたものであってよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、共押出フィルムであることが好ましい。
二軸延伸ポリオレフィンフィルムを有する樹脂基材は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるものであってもよく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとが積層されたものであってもよい。他の樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、およびポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
樹脂基材1の厚みは、用途、求められる特性等に応じて調整でき、特に制限されないが、例えば、3〜200μmであってよく、さらには6〜30μmであってよい。樹脂基材1の厚みは、AB剤6に由来する凸部6aが存在しない部分の厚みである。
樹脂基材1の表面(第一面1a、第二面1b)は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理およびオゾン処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理が施されていてもよい。
(酸素バリア性皮膜)
皮膜5は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。皮膜5は、ウェットコート法により樹脂基材1の第一面1aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。
皮膜5としては、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜(無機層状鉱物複合樹脂膜)が好ましい。ガスバリア層として無機層状鉱物複合樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示し、包装用材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない等の利点がある。コーティング剤については後で詳しく説明する。
皮膜5の厚み、すなわちコーティング剤からなる塗膜の乾燥後の厚みは、要求される酸素バリア性に応じて設定され、例えば0.2〜5μmであってよい。皮膜5の厚みとしては、0.2〜0.7μmが好ましく、0.3〜0.5μmがより好ましい。皮膜5の厚みが0.2μm以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。皮膜5の厚みが0.7μm以下であれば、第一面1aにおけるAB剤由来の凸部6aの有無が酸素バリア性に与える影響が大きく、本発明の有用性が高い。また、皮膜5の厚みが0.7μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
ガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1の第一面1aに皮膜5を形成することにより製造できる。樹脂基材1としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。皮膜5は、前記したように、ウェットコート法により樹脂基材1の第一面1aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件としては、例えば90℃で10秒間の条件が挙げられる。
樹脂基材を搬送する印刷装置、或いは搬送装置は、速度200m/min以上で搬送でき、樹脂基材を巻き取れる装置であれば、その用途と装置の数は限定されない。代表的な印刷装置として、前述のウェットコート法による塗膜形成に用いられる、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、スクリーン印刷機、スプレーコーターが挙げられる。
樹脂基材が200m/min以上の速度で印刷装置、或いは搬送装置のガイドロールと接触すると、基材フィルム表面に凸部6aを形成するAB剤が脱落する。AB剤が脱落した箇所は、脱落前に存在したAB剤フィラーの体積と同様の凹部6bとなる。
樹脂基材の第一面1aに形成したAB剤フィラー脱落後の凹部6bでは、ガスバリア性皮膜5に欠陥が発生しない。そのため、凹部6bはガスバリア性劣化の原因とはならない。
(コーティング剤)
コーティング剤の好ましい一態様は、前記したように、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤である。
本態様のコーティング剤は、典型的には、水性媒体をさらに含む。
本態様のコーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、硬化剤をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
<水溶性高分子>
水溶性高分子とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質でありながら高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ水分子との分子間力が強くなり、高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。水溶性高分子としては、無機層状鉱物の単位結晶間に侵入し、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば特に限定されない。
水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコールおよびその誘導体等)、他のビニル系重合体(ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩およびそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン類(酸化デンプン、エーテル化デンプン、デキストリン等)、極性基を有する共重合ポリエステル(スルホイソフタル酸構造を含むポリエステル等)、ウレタン系高分子、または、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。
水溶性高分子は、皮膜凝集速度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。また本態様のコーティング剤に含まれる水溶性高分子は1種でもよく2種以上でもよい。
水溶性高分子は、少なくとも、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、ケン化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことが特に好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300〜2400が好ましく、450〜2000が特に好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度や重合度が高いほど、吸湿膨潤性が低くなり高いガスバリア性を発揮する。ポリビニルアルコール樹脂のケン化度が95%以上であれば、充分なガスバリア性が得られやすい。また、ポリビニルアルコール樹脂の重合度が300以上であれば、酸素バリア性および皮膜凝集強度が優れる。一方、重合度が2400以下であれば、コーティング剤の粘度が充分に低く、他の成分と均一に混合することが容易であり、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合が生じにくい。
<無機層状鉱物>
無機層状鉱物とは、極めて薄い単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物としては、水中で膨潤および、またはへき開する化合物が好ましく、中でも、水への膨潤性を有する粘土化合物が好ましい。より具体的には、無機層状鉱物は、単位結晶層間に水を配位し、吸収および、または膨潤する性質を有する粘土化合物であることが好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2−に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等が、O2−およびOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
無機層状鉱物の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物、白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母またはマイカ族粘土鉱物、等が挙げられる。これらの無機層状鉱物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機層状鉱物としては、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
無機層状鉱物の大きさは、平均粒径が10μm以下で、厚みが500nm以下であることが好ましい。平均粒径が10μm以下で、厚さが500nm以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜中で無機層状鉱物が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性および膜凝集強度が高いものとなる。
無機層状鉱物の平均粒径の下限は、例えば1μmである。
無機層状鉱物の厚みの下限は、例えば10nmである。
無機層状鉱物の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定される。
無機層状鉱物の厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される。
無機層状鉱物は、少なくとも、平均粒径が1〜10μmで、厚さが10〜100nmで
ある水膨潤性合成雲母を含むことが特に好ましい。水膨潤性合成雲母は、水溶性高分子および水性ポリウレタン樹脂との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ない。そのため、無機層状鉱物として水膨潤性合成雲母を用いると、不純物に由来するガスバリア性の低下や膜凝集力の低下を招きにくい。また、水膨潤性合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、コーティング剤から形成される皮膜のガスバリア性の湿度依存性を抑制することにも寄与する。加えて、水膨潤性合成雲母は、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて高いアスペクト比を有するため、迷路効果がより効果的に働き、コーティング剤から形成される皮膜のガスバリア性を特に高く発現させる。
<水性媒体>
水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含むものである。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類のニトリル類等が挙げられる。コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含む場合、水性媒体は、酸基を中和する中和剤(塩基)を含んでよく、含まなくてもよい。通常は中和剤が含まれる。
<水性ポリウレタン樹脂>
水性ポリウレタン樹脂は、酸基を有するポリウレタン樹脂(以下、「酸基含有ポリウレタン樹脂」とも記す。)と、ポリアミン化合物とを含む。コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含んでいれば、コーティング剤の樹脂基材1への濡れ性、およびコーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度に優れる。さらに、水性ポリウレタン樹脂が、酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有することで、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を発現する。
水性ポリウレタン樹脂を構成する酸基含有ポリウレタン樹脂(アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂)の酸基は、水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物のアミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等)と結合可能である。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。酸基は、酸基含有ポリウレタン樹脂の末端に位置していてもよく、側鎖に位置していてもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性または水分散性を付与できる範囲で選択することができるが、通常、5〜100mgKOH/gであり、10〜70mgKOH/gであることが好ましく、15〜60mgKOH/gであることがより好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が5mgKOH/g未満であると、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶性または水分散性が不充分になり、水性ポリウレタン樹脂と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性の低下を生じる可能性がある。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g超であると、コーティング剤から形成される皮膜の耐水性や酸素バリア性の低下を招く可能性がある。よって、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が5〜100mgKOH/gの範囲内であることで、コーティング剤の分散安定性の低下およびコーティング剤から形成される皮膜の耐水性や酸素バリア性の低下を回避できる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K 0070に準じた方法により測定される。
酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基(尿素基)濃度の合計は、
15〜60質量%以上であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が15質量%以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が60質量%以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜の柔軟性がより優れる。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。
ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、酸基含有ポリウレタン樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、ウレタン基濃度およびウレア基濃度は、反応成分の仕込み、すなわち各成分の使用割合を基準として算出できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂は、通常、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有する。すなわち、酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、通常、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族および非芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つ)を含む。
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、通常、10〜70質量%であり、好ましくは15〜65質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合が10質量%以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合が70質量%以下であれば、コーティング剤から形成される皮膜の柔軟性がより優れる。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800〜1,000,000が好ましく、800〜200,000がより好ましく、800〜100,000がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が1,000,000以下であれば、コーティング剤の粘度上昇を抑制できる。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が800以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸素バリア性を高めるため、結晶性であってもよい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以上であれば、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、典型的には200℃以下、さらには180℃以下、さらには150℃以下である。上記各項目の好ましい範囲を満たす場合、酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が200℃よりも高くなることは実質的に可能性が低い。したがって、酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100〜200℃が好ましく、110〜180℃がより好ましく、120〜150℃がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物と、を結合させることにより、酸素バリア性を発現させる。
水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ酸素バリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物が用いられる。塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合しうる窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。ポリアミン化合物とポリウレタン樹脂の酸基との結合はイオン結合(例えば、第3級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を有するポリアミン化合物が好ましい。
ポリアミン化合物の具体例としては、例えばアルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類等が挙げられる。アルキレンジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン等のC2〜C10アルキレンジアミン等が挙げられる。ここで、Cは炭素数を意味する。ポリアルキレンポリアミン類としては、例えばテトラアルキレンポリアミン、2以上の塩基性窒素原子を有するケイ素化合物(シランカップリング剤等)が挙げられる。前記ケイ素化合物としては、例えば2−(N−(2−アミノエチル)アミノ)エチルトリメトキシシラン、3−(N−(2―アミノエチル)アミノ)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ポリアミン化合物のアミン価は、100〜1900mgKOH/gが好ましく、150〜1900mgKOH/gがより好ましく、200〜1900mgKOH/gがさらに好ましく、200〜1700mgKOH/gが特に好ましく、300〜1500mgKOH/gが最も好ましい。ポリアミン化合物のアミン価が100mgKOH/g以上であれば、水性ポリウレタン樹脂のガスバリア性がより優れる。ポリアミン化合物のアミン価が1900mgKOH/g以下であれば、水性ポリウレタン樹脂の水分散安定性がより優れる。
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定される。
「アミン価の測定方法」
試料を0.5〜2g秤量する(試料量Sg)。秤量した試料にエタノール30gを加え、溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点として、このときの滴定量(AmL)を用い、以下の計算式を用いてアミン価を求める。
計算式:アミン価(mgKOH/g)=A×f×0.2×56.108/S
水性ポリウレタン樹脂において、ポリアミン化合物の含有量は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物の塩基性窒素原子のモル比(酸基/塩基性窒素原子)が10/1〜0.1/1となる量が好ましく、5/1〜0.2/1となる量がより好ましい。酸基/塩基性窒素原子が10/1〜0.1/1であれば、酸基含有ポリウレタンの酸基とポリアミン化合物との架橋反応が適切におこり、コーティング剤から形成される皮膜が、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を発現できる。
水性ポリウレタン樹脂は、通常、水性媒体に溶解または分散した状態で形成される。水性媒体は前記したとおりである。水性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂が水性媒体に溶解した水溶液の形態であってよく、ポリウレタン樹脂が水性媒体に分散した水分散体
の形態であってもよい。
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒径は、特に限定されず、好ましくは20〜500nmであり、より好ましくは25〜300nmであり、さらに好ましくは30〜200nmである。分散粒子の平均粒径が500nm以下であれば、分散粒子と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性が良好で、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性がより優れる。分散粒子の平均粒径が20nm以上であれば、水分散体を得ることが容易である。平均粒径は、水を分散媒とし、固形分濃度が0.03〜0.3質量%の状態で、濃厚系粒径アナライザー(例えば、大塚電子社製 FPAR−10)にて計測される値である。
水性ポリウレタン樹脂は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。水性ポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等の、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が適用可能である。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、スズ系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中において、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、酸基含有ポリウレタン樹脂を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物とポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解させ、または分散させた後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液または水分散体を調製できる。このようにして得られた酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液または水分散体にポリアミン化合物を添加し、必要に応じて加熱することにより、水溶液または水分散体の形態の水性ポリウレタン樹脂を調製できる。加熱する場合、加熱温度は、30〜60℃が好ましい。
<硬化剤>
硬化剤は、コーティング剤中の成分(水溶性高分子、無機層状鉱物、水性ポリウレタン樹脂等)との反応性を有する。コーティング剤中に硬化剤を含有することで、コーティング剤からなる塗膜と樹脂基材1との密着性をより強固にできる。硬化剤の種類は、コーティング剤中の成分との反応性を持つものであれば特に限定されないが、シランカップリング剤、またはエポキシ化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、一般に用いられているものを使用でき、例えばケイ素原子に結合したアルコキシ基と有機反応基とを有する化合物が挙げられる。
シランカップリング剤のアルコキシ基は、加水分解してシラノール基を生成し、無機化合物との反応、吸着等の相互作用効果を発揮する。前記コーティング剤では、無機層状鉱物とシランカップリング剤とが相互作用することで、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度が向上する。また、シランカップリング剤の有機反応基が水溶性高分子、水性ポリウレタン樹脂等の有機成分と反応することで、コーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度が向上する。したがって、コーティング剤がシランカップリング剤を含むことで、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材1や他の基材との密着性を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。
シランカップリング剤としては、例えばRSiX(ここで、Rは有機反応基であり、Xはアルコキシ基である。)で表される化合物が挙げられる。有機反応基としては、例え
ばアミノ基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、イソシアヌレート基等を有するものが挙げられる。(メタ)アクリル基は、アクリル基およびメタアクリル基の両方を示す。アルコシキ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、有機反応基がコーティング剤中の成分との反応性を持つものが好ましい。例えば、ビニル基を持つシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を持つシランカップリング剤として、2(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。アミノ基を持つシランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基を持つシランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリル基を持つシランカップリング剤として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート基を持つシランカップリング剤として、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアヌレート基を持つシランカップリング剤として、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基は、水性ポリウレタン樹脂や水溶性高分子が持つ水酸基と良好な反応性を有するため、コーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材1への密着強度が特に強く発揮される。
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定することなく使用可能である。エポキシ化合物は、水性ポリウレタン樹脂の末端水酸基等と反応し、強固な結合を形成する。したがって、コーティング剤がエポキシ化合物を含むことで、皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材1や他の基材との密着力を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。また、反応速度が適正な領域内であるために、硬化剤添加後の可使用期間も長い。
エポキシ化合物は、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物でもよく、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物でもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤以外の単官能エポキシ化合物として、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの単官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾ
ルシノールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキセンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらの多官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物としては、複雑で強固な架橋構造を形成できる点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、または多官能エポキシ化合物が好ましい。多官能エポキシ化合物としては、より複雑な架橋構造の形成が可能である点から、3官能以上のエポキシ化合物が好ましい。
<各成分の含有割合>
コーティング剤中の水溶性高分子の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、25〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、35〜70質量%であることが特に好ましい。水溶性高分子の含有量が25〜80質量%であれば、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を保ちつつ、高湿度環境下でのバリア性を効果的に発揮することができる。
コーティング剤中の無機層状鉱物の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、5〜60質量%であることが好ましく、7〜45質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。無機層状鉱物の含有量が5〜60質量%であれば、コーティング剤から形成される皮膜の凝集強度を保ちつつ、高湿度環境下でのバリア性を効果的に発揮することができる。
コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂を含む場合、コーティング剤中の水性ポリウレタン樹脂と水溶性高分子との固形分での質量比(水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子)は、5/95〜85/15であることが好ましく、10/90〜75/25であることがより好ましく、15/85〜70/30であることが特に好ましい。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が85/15以下であれば、塗工時にムラが発生しにくい。塗工時のムラは、外観の悪化やバリア性の低下にもつながる。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が5/95以上であれば、樹脂基材1への濡れ性が良好で、塗工時にはじきむらが発生しにくい。はじきむらは、酸素バリア性の低下につながる可能性がある。水性ポリウレタン樹脂/水溶性高分子が5/95〜85/15であることで、コーティング剤の樹脂基材1への濡れ性が良好で、ムラなくコーティング剤を塗工することができ、外観やバリア性の良好な皮膜を形成できる。
コーティング剤が硬化剤を含む場合、コーティング剤中の硬化剤の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。硬化剤の含有量が0.5〜30質量%であれば、樹脂基材1への良好な濡れ性を保ちつつ、コーティング剤から形成される皮膜の凝集力および樹脂基材への密着強度を充分に高めることができる。
コーティング剤中、水溶性高分子と無機層状鉱物と水性ポリウレタン樹脂と硬化剤との合計の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。この合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。コーティング剤
の23℃における粘度は、10〜80mPa・sであることが好ましく、10〜50mPa・sであることが好ましい。コーティング剤の粘度は、E型粘度計により測定される値である。
本態様のコーティング剤は、水溶性高分子と、無機層状鉱物と、必要に応じて水性ポリウレタン樹脂と、必要に応じて硬化剤と、必要に応じて他の成分と、必要に応じてさらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。硬化剤は、他成分と一緒に混合しても、樹脂基材1へ塗工する直前に添加してもよい。
(作用効果)
以上説明したガスバリア性フィルム10にあっては、表層2、裏層3および基層4を有する樹脂基材1と、樹脂基材1の第一面1aに接して位置する皮膜5とを有し、表層2がAB剤を含むが、印刷装置による適当な搬送条件によりAB剤が脱落することで凸部が減少するため、皮膜5の厚みが薄くても、皮膜5にガスバリア性を著しく低下させるほど欠陥を発生させないため、本来の酸素バリア性を充分に発現でき、酸素バリア性に優れる。また、皮膜5の厚みを薄くでき、かつ製造時のブロッキングを抑制できるため、ガスバリア性フィルム10を低コストかつ安定的に提供できる。
AB剤による表面の凸部の存在下で、皮膜5の厚みが薄くても本来の酸素バリア性を充分に発現できる理由は、以下のように考えられる。
一般に樹脂基材には、ブロッキング防止のため、AB剤が含まれており、AB剤による凸部が樹脂基材の両面(第一面および第二面)に存在する。この樹脂基材にウェットコート法によりコーティング剤を塗布すると、特に塗布量が少ない場合、凸部の位置で局所的に塗膜が形成されず、欠陥となる。この欠陥がガス透過の経路となり、酸素バリア性が充分に発現しなかったと考えられる。
ガスバリア性フィルム10においては、表層2がAB剤を含むが、印刷機による搬送により凸部を形成するAB剤が脱落することで凹部となる。凹部の位置では塗膜は通常通り形成されるため、凸部の減少はすなわち塗膜欠陥の減少となる。
AB剤による凸部が第一面1aに酸素バリア性の発現を妨げない程度に存在するため、ブロッキングを抑制しつつ、本来の酸素バリア性を充分に発現すると考えられる。
以上、実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に配置される。ガスバリア性フィルムが融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、ヒートシールによって密封可能なものとなる。
熱融着層は、例えば、樹脂基材1の第一面1aに皮膜5を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。熱融着層は、樹脂基材1の第二面1b上に積層してもよく、皮膜5上に積層してもよい。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<製造例1>
・メタキシリレンジイソシアネート(以下、「mXDI」と記載することがある。)45.5g、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と記載することがある。)93.9g、エチレングリコール24.8g、ジメチロールプロピオン酸13.4gおよび溶剤としてメチルエチルケトン80.2gを混合し、窒素雰囲気下、70℃にて5時間反応させ、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を調製した。
・次いで、このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を、40℃にて、トリエチルアミン9.6gにより中和した。このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を、ホモディスパーにより、水624.8gに分散させて、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール21.1gで鎖伸長反応を行い、メチルエチルケトンを留去することにより、固形分25質量%、平均粒径90nm、酸価26.9mgKOH/gの酸基含有ポリウレタン樹脂の水分散体を得た。
・次いで、この酸基含有ポリウレタン樹脂の水分散体と、ポリアミン化合物としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(アミン価544mgKOH/g)とを、酸基と塩基性窒素原子のモル比が1/1となる比率で混合して、製造例1の水性ポリウレタン樹脂を得た。
<製造例2>
・酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(以下、「成分(C)」とも記す。)として、製造例1の水性ポリウレタン樹脂を用いた。
・水溶性高分子(以下、「成分(D)」とも記す。)として、ポリビニルアルコール樹脂(商品名:ポバールPVA−105、クラレ社製、ケン化度98〜99%、重合度500のポリビニルアルコール)を用いた。
・無機層状鉱物(以下、「成分(E)と記すことがある。)として、水膨潤性合成雲母(コープケミカル社製、ソマシフMEB−3)を用いた。
・成分(C)、成分(D)および成分(E)を、表1に示す固形分配合比率で配合し、80℃にて加熱、混合した後、室温まで冷却し、溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9質量%となるようにイオン交換水とイソプロパノールで希釈し、さらに硬化剤(以下、「成分(F)」とも記す。)として、水溶性ポリイソシアネート(三井化学社製、タケネートWD−725)を添加してコーティング剤を調製した。なお、成分(F)は、後述する実施例1〜3、比較例1〜2におけるコーティング剤の塗工直前に添加した。
<実施例1>
・樹脂基材として、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)を用いた。この樹脂基材(A)は、表層1層/基層3層/裏層1層がこの順に積層された合計5層の共押出フィルムである。
・樹脂基材(A)の第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。
・表層には、AB剤として平均粒径4μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子を、表層の総質量に対して1500ppmとなるように添加した。
・裏層には、AB剤として平均粒径4μmのシリカ粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
・グラビア印刷機を用いて速度300m/minで空通しし、樹脂基材(A´)とした。・樹脂基材(A´)の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したコーティング剤を塗工して塗膜を形成した。
・次いで、塗膜を形成した樹脂基材(A´)を90℃のオーブンに10秒間通過させて塗膜を乾燥させて皮膜を0.3μm形成し、実施例1のガスバリア性フィルムを得た。
<実施例2>
・実施例1と同様の製造方法で、樹脂基材(A´)に皮膜を0.7μm形成し、実施例2のガスバリア性フィルムを得た。
<実施例3>
・樹脂基材として、厚み18μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(B)を用いた。この樹脂基材(B)は、表層1層/基層3層/裏層1層がこの順に積層された合計5層の共押出フィルムである。
・樹脂基材(B)の第一面(表層側の表面)のみにコロナ処理を行った。
・表層には、AB剤として平均粒径4μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子を、表層の総質量に対して1000ppmとなるように添加した。
・裏層には、AB剤として平均粒径4μmのPMMA粒子を、裏層の総質量に対して2000ppmとなるように添加した。
・グラビア印刷機を用いて速度300m/minで空通しした樹脂基材(B)の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したコーティング剤を塗工して塗膜を形成した。
・次いで、塗膜を形成した樹脂基材(B)を90℃のオーブンに10秒間通過させて塗膜を乾燥させて皮膜を形成し、実施例3のガスバリア性フィルムを得た。
<比較例1>
・樹脂基材(A)の第一面に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したコーティング剤を塗工して塗膜を形成した。
・次いで、塗膜を形成した樹脂基材を90℃のオーブンに10秒間通過させて塗膜を乾燥させて皮膜を0.3μm形成し、比較例1のガスバリア性フィルムを得た。
<比較例2>
・比較例1と同様の製造方法で、被膜を0.7μm形成し、比較例2のガスバリア性フィルムを得た。
<評価>
・酸素バリア性
実施例1〜3および比較例1〜2で得たガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、60%RHの雰囲気下で酸素透過度(OTR)(cc/(m2・day・atm))を測定した。結果を表2に示す。
・水蒸気バリア性
実施例1〜3および比較例1〜2で得たガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(WVTR)(g/(m2・day))を測定した。結果を表2に示す。
・皮膜の厚み
実施例1〜3および比較例1〜2で得たガスバリア性フィルムについて、走査電子顕微鏡(商品名:JSM6700F、日本電子製)を用いて皮膜の厚みを測長した。結果を表2に示す。
・耐ブロッキング性
各例のガスバリア性フィルムを、50×50mmの大きさに切り、6枚を重ねて永久歪試験機(テスター産業製CO−201)を用いて加重200kg、50℃の条件下で48時間保管した。その後、ブロッキングが起きなければ〇、ブロッキングしていれば×として、耐ブロッキング性を判定した。
・表面の凹凸個数
各例のガスバリア性フィルムにおいて、3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS製、LEXT OLS4000)を用いて、以下の条件で突起の高さと凹みを測定した。突起の頂点と平面部の高さが0.2μm以上のものを突起と判定し、凹みの頂点と平面部の深さが0.2μm以上のものを凹みと判定した。
レンズ:対物レンズ 倍率50倍 MPLAPONLEXT50
測定面積:514μm×1285μm
フィルタ:表面補正
モード:プロフェッショナルモードにて、突起の頂点と平面部の高さを測定
表2に記載の結果から、実施例1〜3のガスバリア性フィルムは、30℃、相対湿度60%の雰囲気下における酸素透過度の値が0.8〜1.5cc/m/day/atmと、良好なガスバリア性が得られた。特に、実施例1及び実施例3はガスバリア層の厚み0.3μmと、ガスバリア層の薄膜化とガスバリア性を両立しており、ガスバリアフィルム製造時の材料費の面からのコストダウンに有効である。
一方、比較例1では、酸素透過度の値が5.2cc/m/day/atmとなり、良好なガスバリア性が得られなかった。比較例2では、ガスバリア性は2.0cc/m/day/atmと、ガスバリア層を厚膜化した割に、実施例1及び実施例3よりもガスバリア性が劣っている。
本発明のガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れたガスバリア性を安定的に示し、また、包装用材料として十分な密着強度や膜凝集強度を有する。さらに、酸素バリア性被膜の薄膜化による原材料コストの削減が可能となる。
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば包装用材料として好適に利用可能である。本発明のガスバリア性フィルムを包装用材料として用いることで、内容物の品質保持性を高めることができる。
1・・・樹脂基材
1a・・・第一面
1b・・・第二面
2・・・表層(樹脂基材の第一面を形成する樹脂層)
3・・・裏層(樹脂基材の第二面を形成する樹脂層)
4・・・基層
5・・・皮膜(酸素バリア性皮膜)
6・・・アンチブロッキング剤
6a・・・突起(アンチブロッキング剤の存在による第一面の隆起箇所)
6b・・・凹み(アンチブロッキング剤が脱落したことによる第一面の陥没箇所)
10・・・ガスバリア性フィルム

Claims (6)

  1. 樹脂基材と、前記樹脂基材の第一面に接して位置する酸素バリア性皮膜とを有し、
    前記樹脂基材が基層を含む2以上の樹脂層を有し、
    前記2以上の樹脂層のうち、前記樹脂基材の第一面を形成する樹脂層と第一面と反対側の第二面を形成する樹脂層がアンチブロッキング剤を含み、
    アンチブロッキング剤により樹脂基材の第1面に形成された高さ0.2μm以上の突起の数(A)と、アンチブロッキングの脱落により形成された深さ0.2μm以上の凹みの数(B)の比(A)/(B)が4以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記樹脂基材がポリオレフィン系樹脂基材である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記酸素バリア性皮膜の厚みが0.2〜0.7μmである請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記酸素バリア性皮膜が、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜である請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂をさらに含む、請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記コーティング剤が硬化剤をさらに含む、請求項4または5に記載のガスバリア性フィルム。
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