JP7230641B2 - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、内容物を変質させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を遮断する性質(ガスバリア性)が要求される。また、包装材料には、保管環境によらず高いガスバリア性を示すことが要求される。
ガスバリア性を有する包装材料としては一般的に、ガスバリア層を有するものが用いられる。ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着膜、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の水溶性高分子、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂からなる樹脂膜、上記水溶性高分子と無機層状鉱物との複合膜等が用いられる(特許文献1~5)。
上記水溶性高分子と無機層状鉱物との複合膜は、水溶性高分子からなる樹脂膜に比べて高湿度雰囲気下での酸素バリア性に優れる。しかし、水溶性高分子と無機層状鉱物との複合膜は一般的に、基材との密着性が低い問題がある。
特許文献6には、良好なガスバリア性を示しつつ、基材との密着性に優れるガスバリア性フィルムとして、熱可塑性樹脂基材の少なくとも片面上に、水溶性高分子と、水溶性又は水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂と、平均粒径が5μm以下で厚さが500nm以下の無機層状鉱物とを主たる構成成分とした皮膜を形成したガスバリア性フィルムが提案されている。また、特許文献6には、高湿度下での密着性を保つために、皮膜中に架橋剤を0.01~10質量%含有させることが提案されている。
特開2001-287294号公報 特開平11-165369号公報 特開平6-93133号公報 特開平9-150484号公報 特許第3764109号公報 特許第3351208号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、水溶性高分子と水性ポリウレタン樹脂と無機層状鉱物との複合膜は、水に溶出しやすい有機物を含んでいる。この有機物は、複合膜が架橋剤(硬化剤)を含む場合でも溶出する。そのため、この複合膜を有するガスバリア性フィルムは、食品等の水分を含む内容物に複合膜が直接接触するような形態では包装材料として使用できず、複合膜と内容物との間に他の層を介在させる等の対策が必要になる。
本発明は、水溶性高分子と水性ポリウレタン樹脂と無機層状鉱物との複合膜が水分を含む内容物に直接接触するような形態でも包装材料として使用できるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の表面に接して位置する皮膜とを備え、
前記皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたものであり、
前記皮膜の表面積1cmあたり2mLの蒸留水を前記皮膜に接触させ、60℃で30分間保持して得られる試験液の過マンガン酸カリウム消費量が、10.0μg/mL以下であり、
30℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過度が、2.0cm/(m・day・atm)以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
〔2〕前記皮膜の単位面積あたりの前記水溶性高分子(A)と前記水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量が、0.47g/m以下である前記〔1〕のガスバリア性フィルム。
〔3〕前記皮膜の総質量に対し、前記水溶性高分子(A)が25~80質量%、前記無機層状鉱物(B)が8~20質量%、前記水性ポリウレタン樹脂(C)率が5~60質量%、前記硬化剤(D)が5~20質量%である前記〔1〕又は〔2〕のガスバリア性フィルム。
〔4〕前記皮膜の厚さが、0.32~0.55μmである前記〔1〕~〔3〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
〔5〕前記水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比((D)/(A)比)が、10/90~30/70である前記〔1〕~〔4〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
〔6〕前記樹脂基材が、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、又はポリアミド系樹脂フィルムである前記〔1〕~〔5〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
本発明のガスバリア性フィルムは、水溶性高分子と水性ポリウレタン樹脂と無機層状鉱物との複合膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出が抑制されている。また、ガスバリア性も充分に優れる。したがって、複合膜が水分を含む内容物に直接接触するような形態でも包装材料として使用できる。
実施形態に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式断面図である。 実施形態に係るガスバリア性フィルムの他の例を示す模式断面図である。
本発明のガスバリア性フィルムの実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1~図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムは、樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一方の表面に接して位置する皮膜とを備える。
図1は、本実施形態に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式断面図である。
この例のガスバリア性フィルム1は、樹脂基材3と、樹脂基材3の一方の表面に接して位置する皮膜5とを有する。
図2は、本実施形態に係るガスバリア性フィルムの他の例を示す模式断面図である。
この例のガスバリア性フィルム2は、樹脂基材3と、樹脂基材3の一方の表面及び他方の表面それぞれに接して位置する皮膜5とを有する。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムの酸素透過度は、2.0cm/(m・day・atm)以下であり、1.0cm/(m・day・atm)以下が好ましい。酸素透過度が上記上限値以下であると、包装材料として有用である。
酸素透過度は、30℃、相対湿度60%の条件下で測定される値である。
ガスバリア性フィルムの酸素透過度は、皮膜を形成するコ-ティング剤の組成、皮膜の厚さにより調整できる。
(樹脂基材)
樹脂基材は、樹脂を含む。樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セロファン、エンジニアリングプラスチック等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2~10のオレフィンの単独重合体及び共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-ペンテン共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独重合体及び共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルの総称であり、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルも同様である。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリイミド等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂基材は、フィラー、アンチブロッキング剤(以下、「AB剤」ともいう。)、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、スリップ剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、核剤、顔料、染料等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
AB剤は、樹脂基材の表面やその表面に形成されるガスバリア層の表面に凹凸を生じさせてガスバリア性フィルムのブロッキング耐性を高め、ガスバリア性フィルムを巻き取りやすくしたり、ガスバリア性フィルムの加工特性を高めたりする。したがって、樹脂基材はAB剤を含むことが好ましい。
樹脂基材がAB剤を含む場合、AB剤は樹脂基材中に分散し、樹脂基材の一方の面又は他方の面には局所的に、AB剤に由来する複数の突起部が存在する。一方の面及び他方の面において、AB剤は露出していてもよいし、樹脂で覆われていてもよい。
AB剤は、固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
AB剤の平均粒径は、例えば、ガスバリア性フィルムの外観、透明性、AB剤の脱落可能性、アンチブロッキング性能を考慮すると、0.1~4μmが好ましい。
AB剤の平均粒径は、コールター法により測定される重量平均径である。
AB剤の平均粒径が大きすぎると、樹脂基材の表面に大きな突起部が形成され、皮膜を形成する際に、皮膜にガス透過の経路となる欠陥が生じやすくなり、酸素バリア性が低下するおそれが生じる。
樹脂基材がAB剤を含有する場合、AB剤の含有量は、例えば、樹脂基材を構成する樹脂100質量部に対して、0.1~0.5質量部が好ましい。AB剤の含有量が上記下限値以上であると、樹脂基材やその原料となるフィルムの加工特性を高めやすい。AB剤の含有量が上記上限値以下であると、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性の低下を抑制しやすい。
樹脂基材は、単層でもよく、2層以上であってもよい。樹脂基材としては、単一の樹脂で構成された単層フィルム、複数の樹脂で構成された単層又は積層フィルム、樹脂層と他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)とが積層された積層フィルム等が挙げられる。
複数の樹脂で構成された積層フィルムの一例として、一方の面側から、樹脂及びAB剤を含む第1の表層、樹脂を含みAB剤を含まない基層、樹脂及びAB剤を含む第2の表層がこの順に積層したフィルムが挙げられる。
樹脂基材としては、入手の容易さ、水蒸気バリア性の点で、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、又はポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)が好ましく、ポリオレフィン系樹脂フィルムが特に好ましい。
樹脂基材は、未延伸フィルムであってもよく、一軸又は二軸延伸配向フィルムであってもよい。
樹脂基材としては、水蒸気バリア性に優れる観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)が特に好ましい。OPPは、ホモポリマー、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーから選ばれる少なくとも一種のポリマーがフィルム状に加工されたものであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる少量のコモノマーがランダムに共重合し、均質な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相を形成するポリプロピレンである。樹脂基材がOPPの場合、OPPは1層でもよく2層以上でもよい。
樹脂基材は、皮膜が積層する面、つまりコーティング剤が塗布される面に、コーティング剤に対する濡れ性と、皮膜に対する接着強度とを向上させるために、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、低温プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
樹脂基材は、皮膜が積層する面に、アンカーコート又はアンダーコート処理が施されてもよい。
樹脂基材の厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途に応じて適宜選択されるが、実用的には3~200μmであり、好ましくは5~120μmであり、より好ましくは10~100μmである。
樹脂基材の厚さは、樹脂基材又はガスバリア性フィルムを厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。樹脂基材がAB剤を含む場合、樹脂基材の厚さは、AB剤に由来する突起部が存在しない平坦部における厚さである。
(皮膜)
皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたもの、つまり水溶性高分子と水性ポリウレタン樹脂と無機層状鉱物との複合膜である。かかる皮膜を備えるガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す、包装材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない等の利点がある。
皮膜は、湿式コート法により樹脂基材の少なくとも一方の表面にコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。コーティング剤については後で詳しく説明する。
皮膜は、皮膜の表面積1cmあたり2mLの蒸留水を皮膜に接触させ、60℃で30分間保持して得られる試験液の過マンガン酸カリウム消費量が、10.0μg/mL以下である。過マンガン酸カリウム消費量は、皮膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出量の指標である。過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL以下であると、ガスバリア性フィルムを、皮膜が水分を含む内容物に直接接触するような形態でも包装材料として使用できる。
過マンガン酸カリウム消費量は少ないほど好ましく、下限は特に限定されない。
本明細書における過マンガン酸カリウム消費量は、下記測定方法により算出する。この測定方法は、厚生省告示第370号、「食品、添加物等の規格基準」に記載されている過マンガン酸カリウム消費量試験法を参考にしている。
「過マンガン酸カリウム消費量の測定方法」
(1)試料(ガスバリア性フィルム)の皮膜の表面積1cmあたり2mLの蒸留水を60℃に加温し、この水に試料の皮膜を接触させ、60℃に保ちながら30分間放置した後、水を回収する。この水を1試料につき400mL作製し、試験液とする。
(2)三角フラスコに蒸留水100mL、30質量%硫酸5mL及び0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液5mLを入れ、5分間煮沸した後、液を捨て蒸留水で洗浄する。洗浄した三角フラスコに試験液100mLを採り、希釈硫酸(硫酸(JIS特級)を3倍希釈したもの)5mLを加え、更に0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液10mLを加え、加熱して5分間煮沸する。次いで、加熱をやめ、直ちに0.005mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液10mLを加えて脱色した後、0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液で微紅色が消えずに残るまで滴定し、その滴定量a(mL)を本試験の0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液の滴定量とする。
(3)洗浄した三角フラスコに、試験液の代わりに蒸留水100mLを採ること以外は前記した(2)と同様の操作を行い、その滴定量b(mL)を空試験の0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液の滴定量とする。
(4)次式により過マンガン酸カリウム消費量を求める。
過マンガン酸カリウム消費量(μg/mL)=((a-b)×0.316×f×1000)/100
ここで、fは過マンガン酸カリウム溶液の濃度ファクターを示す。
過マンガン酸カリウム消費量は、皮膜の単位面積あたりの水溶性高分子(A)と水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量(g/m)、水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比、皮膜の厚さにより調整できる。
皮膜中の各成分の質量は、固形分換算での質量である。
皮膜中の水溶性高分子(A)の含有量は、皮膜の総質量に対し、25~80質量%が好ましく、35~70質量%がより好ましい。水溶性高分子(A)の含有量が上記下限値以上であると、無機層状鉱物(B)を分散しやすい。水溶性高分子(A)の含有量が上記上限値以下であると、水性ポリウレタン樹脂(C)を多く配合しやすい。
皮膜中の無機層状鉱物(B)の含有量は、皮膜の総質量に対し、8~20質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましい。無機層状鉱物(B)の含有量が上記下限値以上であると、高湿度環境下での酸素バリア性を効果的に発揮しやすい。無機層状鉱物(B)の含有量が上記上限値以下であると、皮膜の凝集強度を維持しやすい。
皮膜中の水性ポリウレタン樹脂(C)の含有量は、皮膜の総質量に対し、5~60質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。水性ポリウレタン樹脂(C)の含有量が上記下限値以上であると、皮膜の樹脂基材への密着強度がより優れる。水性ポリウレタン樹脂(C)の含有量が上記上限値以下であると、コーティング剤の水分散安定性を良好にしやすい。
水溶性高分子(A)に対する水性ポリウレタン樹脂(C)の質量比((C)/(A)比)は、85/15~5/95が好ましく、75/25~10/90がより好ましく、70/30~15/85がさらに好ましい。(C)/(A)比が85/15となるよりも水性ポリウレタン樹脂(C)の含有量が少ないと、塗工時のムラの発生を抑制しやすい。(C)/(A)比が5/95となるよりも水性ポリウレタン樹脂(C)の含有量が多いと、樹脂基材への濡れ性が良好で、塗工時のはじきによるムラの発生を抑制しやすい。塗工時のムラは、外観の悪化や酸素バリア性の低下につながるため、塗工時のムラの発生を抑制することで、外観の悪化や酸素バリア性の低下を抑制しやすい。したがって、(C)/(A)比が上記範囲内であると、ムラなくコーティング剤を塗工することができ、外観や酸素バリア性が良好な皮膜を形成しやすい。
皮膜中の硬化剤(D)の含有量は、皮膜の総質量に対し、5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。硬化剤(D)の含有量が上記下限値以上であると、過マンガン酸カリウム消費量を10.0μg/mL以下としやすい。また、硬化剤(D)の含有量が上記範囲内であると、樹脂基材への良好な濡れ性を保ちつつ、皮膜の凝集力及び樹脂基材への密着強度を充分に高めることができる。
水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比((D)/(A)比)は、10/90~30/70が好ましく、15/85~25/75がより好ましい。(D)/(A)比が10/90となるよりも硬化剤(D)の含有量が多いと、過マンガン酸カリウム消費量を10.0μg/mL以下としやすい。(D)/(A)比が30/70となるよりも硬化剤(D)の含有量が少ないと、樹脂基材への良好な濡れ性を保ちつつ、皮膜の凝集力及び樹脂基材への密着強度を充分に高めることができる。
水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)との合計の含有量は、皮膜の総質量に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。この合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
皮膜の厚さ、すなわちコーティング剤からなる塗膜の乾燥後の厚さは、例えば0.1μm~3μmであってよい。
皮膜の厚さは、0.32~0.55μmが好ましく、0.35~0.55μmがより好ましい。皮膜の厚さが上記下限値以上であると、均一な塗膜面を形成することが容易であり、十分な酸素バリア性が得られやすい。皮膜の厚さが上記上限値以下であると、過マンガン酸カリウム消費量を10.0μg/mL以下としやすい。
皮膜の単位面積あたりの水溶性高分子(A)と水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量は、0.47g/m以下が好ましい。水溶性高分子(A)と水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量が0.47g/m以下であると、過マンガン酸カリウム消費量を10.0μg/mL以下としやすい。
(コーティング剤)
本実施形態に係るコーティング剤は、主たる構成成分として、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含む。
コーティング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性高分子(A)、無機層状鉱物(B)、水性ポリウレタン樹脂(C)、硬化剤(D)以外の成分(他の成分)を含有してもよい。
コーティング剤は典型的には水性媒体を含み、水性媒体中に上記の各成分が溶解又は分散している。
水性媒体としては、水、水溶性又は親水性の有機溶剤、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。水性媒体としては、水、又は水を主成分として含む混合溶媒が好ましい。
水性媒体中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
水溶性又は親水性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
<水溶性高分子(A)>
「水溶性高分子」とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力にくらべ水分子との分子間力が強くなり高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。
本明細書において、高分子とは、質量平均分子量が10000以上の化合物のことをいう。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準物質としてポリスチレンを用いて求めることができる。
水溶性高分子(A)の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール系重合体及びその誘導体等)、他のビニル系重合体(ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらのエステル、それらの塩及びそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びその共重合体等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、でんぷん類(酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等)、極性基を有する共重合ポリエステル(スルホイソフタル酸構造を含むポリエステル等)、ウレタン系高分子(ただし、後述する水性ポリウレタン樹脂を除く。)、又は、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。水溶性高分子(A)は、皮膜凝集強度を考慮すると、重合度が300以上であることが好ましい。
コーティング剤に含まれる水溶性高分子(A)は1種でもよく2種以上でもよい。
水溶性高分子(A)は、少なくともポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、鹸化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300~2400が好ましく、450~2000がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高いほど、吸湿膨潤性が低くなる。ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%以上であると、充分なガスバリア性が得られやすい。重合度が2400以下であると、コーティング剤の粘度が充分に低く、他の成分と均一に混合することが容易であり、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合が生じにくい。
ポリビニルアルコール樹脂のケン化度及び重合度は、JIS K 6726に記載の方法により測定できる。
<無機層状鉱物(B)>
「無機層状鉱物」とは、極薄(例えば、厚さ10~500nm)の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。皮膜が無機層状鉱物(B)を含むことで、ガスが透過する経路を長くする迷路効果を発揮し、高湿度雰囲気下でも良好な酸素バリア性が得られやすい。
無機層状鉱物(B)としては、水中で膨潤及びへき開の双方又は一方の性質を有する化合物が好ましく、水への膨潤性を有する粘土化合物が特に好ましい。より具体的には、無機層状鉱物(B)は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収及び膨潤の双方又は一方の性質を有する粘土化合物が好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等が、O2-及びOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
無機層状鉱物(B)の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物;アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物;白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母又はマイカ族粘土鉱物;等が挙げられる。これらの無機層状鉱物(B)は、1種単独で、又は2種以上が組み合わせられて用いられる。これらの無機層状鉱物(B)の中でも、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
無機層状鉱物(B)の大きさは、平均粒径が10μm以下で、かつ、厚さが500nm以下であることが好ましい。平均粒径、厚さがそれぞれ上記上限値以下であると、コーティング剤から形成される皮膜の中で無機層状鉱物(B)が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性、膜凝集強度が高いものとなる。無機層状鉱物(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定できる。無機層状鉱物(B)の厚さは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定できる。
無機層状鉱物(B)は、少なくとも、水膨潤性合成雲母を含むことが好ましい。
水膨潤性合成雲母は、水溶性高分子(A)及び水性ポリウレタン樹脂(C)との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ない。そのため、無機層状鉱物(B)として水膨潤性合成雲母を用いると、不純物に由来する酸素バリア性の低下や膜凝集力の低下を抑制しやすい。また、水膨潤性合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性の湿度依存性を低く抑えることにも寄与する。加えて、水膨潤性合成雲母は、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて、高いアスペクト比を有することから、迷路効果がより効果的に働き、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性が特に高く発現するのに寄与する。
水膨潤性合成雲母の平均粒径は、例えば、1~10μmが好ましく、3~8μmがより好ましい。水膨潤性合成雲母の平均粒径が上記下限値以上であると、酸素バリア性を向上しやすい。水膨潤性合成雲母の平均粒径が上記上限値以下であると、皮膜の中で均一に整列しやすい。
水膨潤性合成雲母の厚さは、例えば、10~100nmが好ましく、10~80nmがより好ましい。水膨潤性合成雲母の厚さが上記下限値以上であると、酸素バリア性を向上しやすい。水膨潤性合成雲母の厚さが上記上限値以下であると、皮膜の中で均一に整列しやすい。
水膨潤性合成雲母の含有量は、例えば、無機層状鉱物(B)の総質量に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
<水性ポリウレタン樹脂(C)>
水性ポリウレタン樹脂(C)は、皮膜に柔軟性と、ガスバリア性、特に酸素バリア性を付与するために用いられる。また、コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂(C)を含んでいることにより、コーティング剤の樹脂基材への濡れ性、及びコーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材への密着強度が優れやすい。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、酸基を有するポリウレタン樹脂(以下、「酸基含有ポリウレタン樹脂」ともいう。)及びポリアミン化合物を含むことが好ましい。水性ポリウレタン樹脂(C)が、酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含むことで、高湿度雰囲気下でも良好な酸素バリア性が発現しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂及びポリアミン化合物を含む水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシル基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
水性ポリウレタン樹脂(C)を構成する酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸基を有することから、アニオン性及び自己乳化性を有しており、アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂とも称される。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、ポリウレタン樹脂の末端又は側鎖に位置してもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。この酸基は、通常中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。なお、酸基は水性ポリウレタン樹脂(C)を構成するポリアミン化合物のアミノ基(イミノ基又は第三級窒素原子)と結合可能である。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性又は水分散性を付与できる範囲で選択することができる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、5~100mgKOH/gが好ましく、10~70mgKOH/gがより好ましく、15~60mgKOH/gがさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が上記下限値以上であると、水性ポリウレタン樹脂(C)と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性を向上しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が上記上限値以下であると、皮膜の耐水性の低下や酸素バリア性の低下を抑制しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K 0070に記載の方法により測定できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度及びウレア基(尿素基)濃度の合計(合計濃度)は、酸素バリア性の観点から、15質量%以上が好ましく、20~60質量%がより好ましい。合計濃度が上記下限値以上であると、酸素バリア性をより向上しやすい。合計濃度が上記上限値以下であると、皮膜が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、ポリウレタン樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、ウレタン基濃度及びウレア基濃度は、反応成分の仕込みベース、すなわち各成分の使用割合をベースとして算出できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂は、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有していることが好ましい。すなわち、酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族及び非芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つ)を含むことが好ましい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、10~70質量%が好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。炭化水素環で構成された単位の割合が上記下限値以上であると、酸素バリア性の低下を抑制しやすい。炭化水素環で構成された単位の割合が上記上限値以下であると、皮膜が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800~1,000,000が好ましく、800~200,000がより好ましく、800~100,000がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が上記下限値以上であると、酸素バリア性の低下を抑制しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が上記上限値以下であると、コーティング剤の粘度の上昇を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸素バリア性を高めるため、結晶性であってもよい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、100~200℃が好ましく、110~180℃がより好ましく、120~150℃がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が上記下限値以上であると、酸素バリア性の低下を抑制しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、典型的には、上記上限値以下である。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、中和剤を含み、酸基含有ポリウレタン樹脂が水性媒体中に溶解あるいは分散した状態で形成されることが好ましい。
水性媒体は前記したとおりである。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が溶解した水溶液の形態であってよく、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が分散した水分散体の形態であってもよい。
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒子径は特に限定されず、20~500nmが好ましく、25~300nmがより好ましく、30~200nmがさらに好ましい。分散粒子の平均粒子径が上記下限値以上であると、酸素バリア性を向上しやすい。分散粒子の平均粒子径が上記上限値以下であると、分散粒子と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性の低下を抑制しやすく、酸素バリア性の低下を抑制しやすい。
分散粒子の平均粒子径は、固形分濃度が0.03~0.3質量%の状態で(水で希釈して)濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR-10)にて計測される値である。
水性ポリウレタン樹脂(C)を構成するポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ、酸素バリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物が用いられる。塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合し得る窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を有するポリアミン化合物が好ましい。
ポリアミン化合物の具体例としては、例えば、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類、複数の塩基性窒素原子を有するケイ素化合物等が挙げられる。アルキレンジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~10のアルキレンジアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類としては、例えばテトラアルキレンポリアミン等が挙げられる。複数の塩基性窒素原子(アミノ基などの窒素原子を含む)を有するケイ素化合物としては、例えば2-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕エチルトリメトキシシラン、3-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕プロピルトリエトキシシラン等の、複数の塩基性窒素原子を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
ポリアミン化合物のアミン価は、100~1900mgKOH/gが好ましく、150~1900mgKOH/gがより好ましく、200~1900mgKOH/gがさらに好ましく、200~1700mgKOH/gが特に好ましく、300~1500mgKOH/gが最も好ましい。ポリアミン化合物のアミン価が上記下限値以上であると、酸素バリア性をより向上しやすい。ポリアミン化合物のアミン価が上記上限値以下であると、水性ポリウレタン樹脂(C)の水分散安定性に優れる。
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定できる。
試料を0.5~2g精秤する(試料量Sg)。精秤した試料にエタノール30gを加え溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点とし、このときの滴定量(AmL)を計量し、以下の計算式1を用いてアミン価を求める。
計算式1:アミン価=A×f×0.2×56.108/S〔mgKOH/g〕
水性ポリウレタン樹脂(C)において、ポリアミン化合物の含有量は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物の塩基性窒素原子とのモル比(酸基/塩基性窒素原子)が10/1~0.1/1となる量が好ましく、5/1~0.2/1となる量がより好ましい。酸基/塩基性窒素原子が上記数値範囲内であると、酸基含有ポリウレタンの酸基とポリアミン化合物の架橋反応が適切におこり、高湿度雰囲気下でも、皮膜に良好な酸素バリア性が発現しやすい。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。水性ポリウレタン樹脂(C)の製造方法は、特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が用いられる。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分及び鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、水性ポリウレタン樹脂(C)を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性又は水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解又は分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液又は水分散体を調製できる。このようにして得られた酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液又は水分散体にポリアミン化合物を添加し、必要に応じて加熱することにより、水溶液又は水分散体の形態の水性ポリウレタン樹脂(C)を調製できる。加熱する場合、加熱温度は、30~60℃が好ましい。
<硬化剤(D)>
硬化剤(D)は、コーティング剤中の成分(水溶性高分子(A)、無機層状鉱物(B)、水性ポリウレタン樹脂(C)等)との反応性を有する。コーティング剤が硬化剤(D)を含むことで、皮膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出を抑制し、過マンガン酸カリウム消費量を低減できる。また、皮膜と樹脂基材との密着性をより強固にできる。
硬化剤(D)としては、コーティング剤中の成分との反応性を持つものであれば特に限定されないが、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、又はエポキシ化合物が好ましい。これらのうち、樹脂基材への密着性の点では、イソシアネート化合物が好ましい。
イソシアネート化合物としては、イソシアネート基(-NCO)を有する化合物であれば特に限定することなく使用可能である。イソシアネート基は、水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基等と反応し、強固な結合を形成する。したがって、コーティング剤がイソシアネート化合物を含むことで、皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材や他の基材との密着力を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。
イソシアネート化合物としては、分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましく、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート又はテトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート化合物、これらの有機ポリイソシアネート化合物の誘導体等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、水に対する分散性を有するイソシアネート化合物(水分散性イソシアネート化合物)が好ましい。水分散性イソシアネート化合物としては、例えば、(1)上記有機ポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基を、ポリエチレンオキサイド、カルボキシ基又はスルホン酸基等の親水性基によって変性して自己乳化型にしたイソシアネート化合物、(2)上記有機ポリイソシアネート化合物を界面活性剤等によって強制乳化して水分散可能にしたイソシアネート化合物、(3)上記有機ポリイソシアネート化合物から誘導される種々のプレポリマー類、(4)上記有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の一部をアルコール類、フェノール類、オキシム類、メルカプタン類、アミド類、イミド類又はラクタム類等のブロック化剤でブロックした化合物、いわゆるブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、一般に用いられているものを使用でき、例えばケイ素原子に結合したアルコキシ基と有機反応基とを有する化合物が挙げられる。シランカップリング剤のアルコキシ基は、加水分解してシラノール基を生成し、無機化合物との反応、吸着等の相互作用効果を発揮する。前記コーティング剤では、無機層状鉱物(B)とシランカップリング剤とが相互作用することで、皮膜の凝集強度が向上する。また、シランカップリング剤の有機反応基が水溶性高分子(A)、水性ポリウレタン樹脂(C)等の有機成分と反応することで、皮膜の樹脂基材への密着強度が向上する。したがって、コーティング剤がシランカップリング剤を含むことで、皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材や他の基材との密着性を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることができる。
シランカップリング剤としては、例えばRSiX(ここで、Rは有機反応基であり、Xはアルコキシ基である。)で表される化合物が挙げられる。有機反応基としては、コーティング剤中の成分との反応性を持つものが好ましく、例えばアミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はイソシアヌレート基を有する基が挙げられる。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の両方を示す。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤として、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。ビニル基を有するシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤として、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート基を有するシランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤として、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基は、水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基と良好な反応性を有する。エポキシ基が水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基等と反応し、強固な結合を形成することで、皮膜の樹脂基材への密着強度が特に強く発揮される。
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定することなく使用可能である。エポキシ基は、前記したように、水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基等と反応し、強固な結合を形成する。したがって、コーティング剤がエポキシ化合物を含むことで、皮膜の凝集強度を高め、樹脂基材や他の基材との密着力を向上させて、包装材料としての実用強度を高めることが可能である。また、反応速度が適正な領域内であるために、硬化剤(D)添加後のコーティング剤の可使期間も長い。
エポキシ化合物は、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物でもよく、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物でもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤以外の単官能エポキシ化合物として、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの単官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキセンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらの多官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物としては、複雑で強固な架橋構造を形成できる点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、又は多官能エポキシ化合物が好ましい。多官能エポキシ化合物としては、より複雑な架橋構造の形成が可能である点から、3官能以上のエポキシ化合物が好ましい。
他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤等の添加剤が挙げられる。
コーティング剤の固形分の質量に対する水溶性高分子(A)、無機層状鉱物(B)、水性ポリウレタン樹脂(C)、硬化剤(D)それぞれの固形分での含有量の好ましい範囲は、皮膜の総質量に対する各成分の含有量の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤中の水溶性高分子(A)に対する水性ポリウレタン樹脂(C)の固形分での質量比の好ましい範囲は、前記した(C)/(A)比の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤中の水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の固形分での質量比の好ましい範囲は、前記した(D)/(A)比の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤の固形分の質量に対する、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)との合計の含有量の好ましい範囲は、皮膜の総質量に対する、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)との合計の含有量の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤の23℃における粘度は、10~80mPa・sが好ましく、10~50mPa・sがより好ましい。
コーティング剤の粘度は、E型粘度計により測定される値である。
本実施形態のコーティング剤は、水溶性高分子(A)と、無機層状鉱物(B)と、水性ポリウレタン樹脂(C)と、硬化剤(D)と、必要に応じて他の成分と、必要に応じてさらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。硬化剤は、他成分と一緒に混合しても、樹脂基材へ塗工する直前に添加してもよい。
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
本実施形態のガスバリア性フィルムは、例えば、樹脂基材の少なくとも一方の面に皮膜を形成することにより製造できる。
樹脂基材としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
皮膜は、前記したように、湿式コート法により樹脂基材の少なくとも一方の面にコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
湿式コート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の湿式コート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50~200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒~5分間が好ましい。
(作用効果)
本実施形態に係るガスバリア性フィルムにあっては、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化物(D)とを含むコーティング剤から形成された皮膜を備えるので、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す。また、樹脂基材と皮膜との密着性が優れる。さらに、前記した測定方法により測定される過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL以下であるので、皮膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出が抑制されている。したがって、皮膜が水分を含む内容物(食品等)に直接接触するような形態でも包装材料として使用できる。
以上、実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。
本発明のガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、熱シールによって密封可能なものとなる。ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に位置することが好ましい。
熱融着層は、例えば、樹脂基材の少なくとも一方の面に皮膜を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(使用材料)
<樹脂基材>
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、AB剤平均粒径2μm、AB剤含有量0.2質量%、A.J.Plast社製)。
<水溶性高分子(A)>
(A1):ケン化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコール(ポバールPVA-105、クラレ社製)。
(A2):ケン化度98~99%、重合度1000のポリビニルアルコール(ポバールPVA-110、クラレ社製)。
<無機層状鉱物(B)>
(B1):水膨潤性合成雲母(ソマシフ(登録商標)MEB-3、コープケミカル社製)。
(B2):精製モンモリロナイト(クニピア-F、クニミネ工業社製)。
<水性ポリウレタン樹脂(C)>
(C1):酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(タケラックWPB-341、三井化学社製の水性ポリウレタンディスパージョン「タケラック(登録商標)WPB-341」)。
<硬化剤(D)>
(D1):水溶性ポリイソシアネート(タケネートWD-725、三井化学社製)。
(実施例1~10、比較例1~4)
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に示す固形分配合比率で配合して、80℃にて加熱、混合した後、室温まで冷却し、溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9%となるようにイオン交換水とイソプロパノールで希釈し、塗工直前に表1に記載の固形分比率で成分(D)を添加し、コーティング剤を調製した。
上記のコーティング剤を、グラビアコーターを用いて、樹脂基材の一方の面に塗工し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥し、表1に示す厚さの皮膜を形成してガスバリア性フィルムを得た。
(酸素透過度)
各例のガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、60%RHの雰囲気下、酸素透過度(cc/(m2・day・atm))を測定した。測定結果を表1に示す。
(過マンガン酸カリウム消費量)
各例のガスバリア性フィルムについて、上述した測定方法にて過マンガン酸カリウム消費量を4回測定し、その平均値を過マンガン酸カリウム消費量とした。測定結果を表1に示す。
Figure 0007230641000001
実施例1~10のガスバリア性フィルムは、過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL以下であり、有機物の溶出が抑制されていた。また、30℃60%RH雰囲気下における酸素透過度の値が2.0cm/(m・day・atm)以下と低く、酸素バリア性にも優れていた。
一方、比較例1~4のガスバリア性フィルムは、過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL超、あるいは30℃60%RH雰囲気下における酸素透過度の値が2.0cccm/(m・day・atm)超であり、有機物の低溶出と優れた酸素バリア性とを兼ね備えることが出来なかった。
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば、湿気や酸素を嫌う食品(乾燥食品、菓子、パン、珍味等)、使い捨てカイロ、医薬品(錠剤、粉末薬、湿布、貼付剤等)等の各種の内容物の包装材料として使用できる。
本発明のガスバリア性フィルムは、水分を含む内容物(例えば野菜、果物)の包装材料として有用である。
1 ガスバリア性フィルム、2 ガスバリア性フィルム、3 樹脂基材、5 皮膜

Claims (6)

  1. 樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の表面に接して位置する皮膜とを備え、
    前記皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたものであり、
    前記皮膜の表面積1cmあたり2mLの蒸留水を前記皮膜に接触させ、60℃で30分間保持して得られる試験液の過マンガン酸カリウム消費量が、10.0μg/mL以下であり、
    30℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過度が、2.0cm/(m・day・atm)以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記皮膜の単位面積あたりの前記水溶性高分子(A)と前記水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量が、0.47g/m以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記皮膜の総質量に対し、前記水溶性高分子(A)が25~80質量%、前記無機層状鉱物(B)が8~20質量%、前記水性ポリウレタン樹脂(C)が5~60質量%、前記硬化剤(D)が5~20質量%である請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記皮膜の厚さが、0.32~0.55μmである請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比((D)/(A)比)が、10/90~30/70である請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記樹脂基材が、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、又はポリアミド系樹脂フィルムである請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
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