JP7230641B2 - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
〔1〕樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の表面に接して位置する皮膜とを備え、
前記皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたものであり、
前記皮膜の表面積1cm2あたり2mLの蒸留水を前記皮膜に接触させ、60℃で30分間保持して得られる試験液の過マンガン酸カリウム消費量が、10.0μg/mL以下であり、
30℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過度が、2.0cm3/(m2・day・atm)以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
〔2〕前記皮膜の単位面積あたりの前記水溶性高分子(A)と前記水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量が、0.47g/m2以下である前記〔1〕のガスバリア性フィルム。
〔3〕前記皮膜の総質量に対し、前記水溶性高分子(A)が25~80質量%、前記無機層状鉱物(B)が8~20質量%、前記水性ポリウレタン樹脂(C)率が5~60質量%、前記硬化剤(D)が5~20質量%である前記〔1〕又は〔2〕のガスバリア性フィルム。
〔4〕前記皮膜の厚さが、0.32~0.55μmである前記〔1〕~〔3〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
〔5〕前記水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比((D)/(A)比)が、10/90~30/70である前記〔1〕~〔4〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
〔6〕前記樹脂基材が、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、又はポリアミド系樹脂フィルムである前記〔1〕~〔5〕のいずれかのガスバリア性フィルム。
図1~図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
この例のガスバリア性フィルム1は、樹脂基材3と、樹脂基材3の一方の表面に接して位置する皮膜5とを有する。
この例のガスバリア性フィルム2は、樹脂基材3と、樹脂基材3の一方の表面及び他方の表面それぞれに接して位置する皮膜5とを有する。
酸素透過度は、30℃、相対湿度60%の条件下で測定される値である。
ガスバリア性フィルムの酸素透過度は、皮膜を形成するコ-ティング剤の組成、皮膜の厚さにより調整できる。
樹脂基材は、樹脂を含む。樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セロファン、エンジニアリングプラスチック等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2~10のオレフィンの単独重合体及び共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-ペンテン共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独重合体及び共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルの総称であり、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルも同様である。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリイミド等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂基材がAB剤を含む場合、AB剤は樹脂基材中に分散し、樹脂基材の一方の面又は他方の面には局所的に、AB剤に由来する複数の突起部が存在する。一方の面及び他方の面において、AB剤は露出していてもよいし、樹脂で覆われていてもよい。
AB剤の平均粒径は、コールター法により測定される重量平均径である。
AB剤の平均粒径が大きすぎると、樹脂基材の表面に大きな突起部が形成され、皮膜を形成する際に、皮膜にガス透過の経路となる欠陥が生じやすくなり、酸素バリア性が低下するおそれが生じる。
複数の樹脂で構成された積層フィルムの一例として、一方の面側から、樹脂及びAB剤を含む第1の表層、樹脂を含みAB剤を含まない基層、樹脂及びAB剤を含む第2の表層がこの順に積層したフィルムが挙げられる。
樹脂基材としては、水蒸気バリア性に優れる観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)が特に好ましい。OPPは、ホモポリマー、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーから選ばれる少なくとも一種のポリマーがフィルム状に加工されたものであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる少量のコモノマーがランダムに共重合し、均質な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相を形成するポリプロピレンである。樹脂基材がOPPの場合、OPPは1層でもよく2層以上でもよい。
樹脂基材は、皮膜が積層する面に、アンカーコート又はアンダーコート処理が施されてもよい。
樹脂基材の厚さは、樹脂基材又はガスバリア性フィルムを厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。樹脂基材がAB剤を含む場合、樹脂基材の厚さは、AB剤に由来する突起部が存在しない平坦部における厚さである。
皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたもの、つまり水溶性高分子と水性ポリウレタン樹脂と無機層状鉱物との複合膜である。かかる皮膜を備えるガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す、包装材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない等の利点がある。
皮膜は、湿式コート法により樹脂基材の少なくとも一方の表面にコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。コーティング剤については後で詳しく説明する。
過マンガン酸カリウム消費量は少ないほど好ましく、下限は特に限定されない。
「過マンガン酸カリウム消費量の測定方法」
(1)試料(ガスバリア性フィルム)の皮膜の表面積1cm2あたり2mLの蒸留水を60℃に加温し、この水に試料の皮膜を接触させ、60℃に保ちながら30分間放置した後、水を回収する。この水を1試料につき400mL作製し、試験液とする。
(2)三角フラスコに蒸留水100mL、30質量%硫酸5mL及び0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液5mLを入れ、5分間煮沸した後、液を捨て蒸留水で洗浄する。洗浄した三角フラスコに試験液100mLを採り、希釈硫酸(硫酸(JIS特級)を3倍希釈したもの)5mLを加え、更に0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液10mLを加え、加熱して5分間煮沸する。次いで、加熱をやめ、直ちに0.005mol/Lシュウ酸ナトリウム溶液10mLを加えて脱色した後、0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液で微紅色が消えずに残るまで滴定し、その滴定量a(mL)を本試験の0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液の滴定量とする。
(3)洗浄した三角フラスコに、試験液の代わりに蒸留水100mLを採ること以外は前記した(2)と同様の操作を行い、その滴定量b(mL)を空試験の0.002mol/L過マンガン酸カリウム溶液の滴定量とする。
(4)次式により過マンガン酸カリウム消費量を求める。
過マンガン酸カリウム消費量(μg/mL)=((a-b)×0.316×f×1000)/100
ここで、fは過マンガン酸カリウム溶液の濃度ファクターを示す。
皮膜中の各成分の質量は、固形分換算での質量である。
皮膜の厚さは、0.32~0.55μmが好ましく、0.35~0.55μmがより好ましい。皮膜の厚さが上記下限値以上であると、均一な塗膜面を形成することが容易であり、十分な酸素バリア性が得られやすい。皮膜の厚さが上記上限値以下であると、過マンガン酸カリウム消費量を10.0μg/mL以下としやすい。
本実施形態に係るコーティング剤は、主たる構成成分として、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含む。
コーティング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性高分子(A)、無機層状鉱物(B)、水性ポリウレタン樹脂(C)、硬化剤(D)以外の成分(他の成分)を含有してもよい。
水性媒体としては、水、水溶性又は親水性の有機溶剤、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。水性媒体としては、水、又は水を主成分として含む混合溶媒が好ましい。
水性媒体中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
水溶性又は親水性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
「水溶性高分子」とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力にくらべ水分子との分子間力が強くなり高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。
本明細書において、高分子とは、質量平均分子量が10000以上の化合物のことをいう。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準物質としてポリスチレンを用いて求めることができる。
コーティング剤に含まれる水溶性高分子(A)は1種でもよく2種以上でもよい。
ポリビニルアルコール樹脂のケン化度及び重合度は、JIS K 6726に記載の方法により測定できる。
「無機層状鉱物」とは、極薄(例えば、厚さ10~500nm)の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。皮膜が無機層状鉱物(B)を含むことで、ガスが透過する経路を長くする迷路効果を発揮し、高湿度雰囲気下でも良好な酸素バリア性が得られやすい。
無機層状鉱物(B)としては、水中で膨潤及びへき開の双方又は一方の性質を有する化合物が好ましく、水への膨潤性を有する粘土化合物が特に好ましい。より具体的には、無機層状鉱物(B)は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収及び膨潤の双方又は一方の性質を有する粘土化合物が好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等が、O2-及びOH-に対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
水膨潤性合成雲母は、水溶性高分子(A)及び水性ポリウレタン樹脂(C)との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ない。そのため、無機層状鉱物(B)として水膨潤性合成雲母を用いると、不純物に由来する酸素バリア性の低下や膜凝集力の低下を抑制しやすい。また、水膨潤性合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性の湿度依存性を低く抑えることにも寄与する。加えて、水膨潤性合成雲母は、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて、高いアスペクト比を有することから、迷路効果がより効果的に働き、コーティング剤から形成される皮膜の酸素バリア性が特に高く発現するのに寄与する。
水膨潤性合成雲母の厚さは、例えば、10~100nmが好ましく、10~80nmがより好ましい。水膨潤性合成雲母の厚さが上記下限値以上であると、酸素バリア性を向上しやすい。水膨潤性合成雲母の厚さが上記上限値以下であると、皮膜の中で均一に整列しやすい。
水膨潤性合成雲母の含有量は、例えば、無機層状鉱物(B)の総質量に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、皮膜に柔軟性と、ガスバリア性、特に酸素バリア性を付与するために用いられる。また、コーティング剤が水性ポリウレタン樹脂(C)を含んでいることにより、コーティング剤の樹脂基材への濡れ性、及びコーティング剤から形成される皮膜の樹脂基材への密着強度が優れやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂及びポリアミン化合物を含む水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシル基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、ポリウレタン樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、ウレタン基濃度及びウレア基濃度は、反応成分の仕込みベース、すなわち各成分の使用割合をベースとして算出できる。
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、10~70質量%が好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。炭化水素環で構成された単位の割合が上記下限値以上であると、酸素バリア性の低下を抑制しやすい。炭化水素環で構成された単位の割合が上記上限値以下であると、皮膜が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
水性媒体は前記したとおりである。
水性ポリウレタン樹脂(C)は、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が溶解した水溶液の形態であってよく、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が分散した水分散体の形態であってもよい。
分散粒子の平均粒子径は、固形分濃度が0.03~0.3質量%の状態で(水で希釈して)濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR-10)にて計測される値である。
ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を有するポリアミン化合物が好ましい。
試料を0.5~2g精秤する(試料量Sg)。精秤した試料にエタノール30gを加え溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点とし、このときの滴定量(AmL)を計量し、以下の計算式1を用いてアミン価を求める。
計算式1:アミン価=A×f×0.2×56.108/S〔mgKOH/g〕
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分及び鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、水性ポリウレタン樹脂(C)を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性又は水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解又は分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液又は水分散体を調製できる。このようにして得られた酸基含有ポリウレタン樹脂の水溶液又は水分散体にポリアミン化合物を添加し、必要に応じて加熱することにより、水溶液又は水分散体の形態の水性ポリウレタン樹脂(C)を調製できる。加熱する場合、加熱温度は、30~60℃が好ましい。
硬化剤(D)は、コーティング剤中の成分(水溶性高分子(A)、無機層状鉱物(B)、水性ポリウレタン樹脂(C)等)との反応性を有する。コーティング剤が硬化剤(D)を含むことで、皮膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出を抑制し、過マンガン酸カリウム消費量を低減できる。また、皮膜と樹脂基材との密着性をより強固にできる。
これらのイソシアネート化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基は、水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基と良好な反応性を有する。エポキシ基が水溶性高分子(A)や水性ポリウレタン樹脂(C)が持つ水酸基等と反応し、強固な結合を形成することで、皮膜の樹脂基材への密着強度が特に強く発揮される。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤以外の単官能エポキシ化合物として、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの単官能エポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
コーティング剤中の水溶性高分子(A)に対する水性ポリウレタン樹脂(C)の固形分での質量比の好ましい範囲は、前記した(C)/(A)比の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤中の水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の固形分での質量比の好ましい範囲は、前記した(D)/(A)比の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤の固形分の質量に対する、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)との合計の含有量の好ましい範囲は、皮膜の総質量に対する、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)との合計の含有量の好ましい範囲と同様である。
コーティング剤の粘度は、E型粘度計により測定される値である。
本実施形態のガスバリア性フィルムは、例えば、樹脂基材の少なくとも一方の面に皮膜を形成することにより製造できる。
樹脂基材としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
皮膜は、前記したように、湿式コート法により樹脂基材の少なくとも一方の面にコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
湿式コート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の湿式コート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50~200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒~5分間が好ましい。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムにあっては、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化物(D)とを含むコーティング剤から形成された皮膜を備えるので、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す。また、樹脂基材と皮膜との密着性が優れる。さらに、前記した測定方法により測定される過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL以下であるので、皮膜中の水に溶出しやすい有機物の溶出が抑制されている。したがって、皮膜が水分を含む内容物(食品等)に直接接触するような形態でも包装材料として使用できる。
ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、熱シールによって密封可能なものとなる。ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に位置することが好ましい。
熱融着層は、例えば、樹脂基材の少なくとも一方の面に皮膜を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
<樹脂基材>
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、AB剤平均粒径2μm、AB剤含有量0.2質量%、A.J.Plast社製)。
(A1):ケン化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコール(ポバールPVA-105、クラレ社製)。
(A2):ケン化度98~99%、重合度1000のポリビニルアルコール(ポバールPVA-110、クラレ社製)。
(B1):水膨潤性合成雲母(ソマシフ(登録商標)MEB-3、コープケミカル社製)。
(B2):精製モンモリロナイト(クニピア-F、クニミネ工業社製)。
(C1):酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂(タケラックWPB-341、三井化学社製の水性ポリウレタンディスパージョン「タケラック(登録商標)WPB-341」)。
(D1):水溶性ポリイソシアネート(タケネートWD-725、三井化学社製)。
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に示す固形分配合比率で配合して、80℃にて加熱、混合した後、室温まで冷却し、溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9%となるようにイオン交換水とイソプロパノールで希釈し、塗工直前に表1に記載の固形分比率で成分(D)を添加し、コーティング剤を調製した。
各例のガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、60%RHの雰囲気下、酸素透過度(cc/(m2・day・atm))を測定した。測定結果を表1に示す。
各例のガスバリア性フィルムについて、上述した測定方法にて過マンガン酸カリウム消費量を4回測定し、その平均値を過マンガン酸カリウム消費量とした。測定結果を表1に示す。
一方、比較例1~4のガスバリア性フィルムは、過マンガン酸カリウム消費量が10.0μg/mL超、あるいは30℃60%RH雰囲気下における酸素透過度の値が2.0cccm3/(m2・day・atm)超であり、有機物の低溶出と優れた酸素バリア性とを兼ね備えることが出来なかった。
本発明のガスバリア性フィルムは、水分を含む内容物(例えば野菜、果物)の包装材料として有用である。
Claims (6)
- 樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の表面に接して位置する皮膜とを備え、
前記皮膜は、水溶性高分子(A)と無機層状鉱物(B)と水性ポリウレタン樹脂(C)と硬化剤(D)とを含むコ-ティング剤から形成されたものであり、
前記皮膜の表面積1cm2あたり2mLの蒸留水を前記皮膜に接触させ、60℃で30分間保持して得られる試験液の過マンガン酸カリウム消費量が、10.0μg/mL以下であり、
30℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過度が、2.0cm3/(m2・day・atm)以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。 - 前記皮膜の単位面積あたりの前記水溶性高分子(A)と前記水性ポリウレタン樹脂(C)との合計質量が、0.47g/m2以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記皮膜の総質量に対し、前記水溶性高分子(A)が25~80質量%、前記無機層状鉱物(B)が8~20質量%、前記水性ポリウレタン樹脂(C)が5~60質量%、前記硬化剤(D)が5~20質量%である請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記皮膜の厚さが、0.32~0.55μmである請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記水溶性高分子(A)に対する硬化剤(D)の質量比((D)/(A)比)が、10/90~30/70である請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記樹脂基材が、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、又はポリアミド系樹脂フィルムである請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
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