JP2020155674A - 圧粉磁心 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1では、結晶質磁性材料と、非晶質磁性材料とを均一に混合し、分散させた複合磁性材料粉末に、絶縁材として、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂等の有機高分子樹脂、水ガラスを使用し、作製された高周波用圧粉磁芯が開示されている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、更なる鉄損の抑制を目的とし、以下の形態として実現することが可能である。
前記軟磁性金属粒子と前記粒界相との界面の断面構造を10μm×10μmの正方形の第1視野で観察した場合に、前記軟磁性金属粒子の表面粗さRaが0.05μm以上0.20μm以下であり、Rzが0.20μm以上0.70μm以下であることを特徴とする圧粉磁心。
前記酸化被膜と前記粒界相との間に反応相が存在することを特徴とする〔1〕に記載の圧粉磁心。
3つ以上の前記軟磁性金属粒子によって囲まれた粒界多重点について、
[1]互いに隣接する前記軟磁性金属粒子の表面間を最も近接した部位同士で結んだ第1結合線、及び[2]互いに隣り合う前記第1結合線の端部同士を、前記軟磁性金属粒子の外形線のうちの前記粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ第2結合線、によって囲まれた領域から気孔を除いた前記粒界相の領域の面積をS1とし、
前記3つ以上の前記軟磁性金属粒子の1つあたりの平均面積をS2とすると、
1/10≦S1/S2≦1/3
を充足する前記粒界多重点が1視野あたり平均して5カ所以上存在することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
前記粒界相が前記第4視野を占める面積割合を互いに相違する3カ所で測定して平均値を求めた平均面積割合が5〜10%であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
上記〔2〕の発明によれば、渦電流損失をより小さくすることができる。
上記〔3〕の発明によれば、ヒステリシス損失をより小さくすることができる。
上記〔4〕の発明によれば、渦電流損失を更に小さくすることができる。
上記〔5〕の発明によれば、ヒステリシス損失を更に小さくすることができる。
圧粉磁心1は、図1の右図(断面図)に示すように、平均粒子径5μm以上30μm以下の軟磁性金属粒子3と、Al(アルミニウム)及びSi(ケイ素)の少なくとも1つを含む結晶性物質が存在する粒界相6と、を備えてなる。
軟磁性金属粒子3と粒界相6との界面の断面構造を10μm×10μmの正方形の第1視野で観察した場合に、軟磁性金属粒子3の表面粗さRaが0.05μm以上0.20以下であり、Rzが0.20μm以上0.70以下である。
軟磁性金属粒子3は、軟磁性の金属粒子であれば、特に限定されず、幅広く用いることができる。軟磁性金属粒子3として、軟磁性である純鉄の粒子、鉄基合金の粒子を幅広く用いることができる。鉄基合金としては、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金(センダスト)、Ni−Fe合金(パーマロイ)、Ni−Fe−Mo合金(スーパーマロイ)、Fe基アモルファス合金、Fe−Si合金、Ni−Fe合金、Fe−Co合金等を好適に用いることができる。これらの中でもFe−Si−Cr合金、Ni−Fe合金(パーマロイ)、Ni−Fe−Mo合金(スーパーマロイ)、Fe基アモルファス合金が透磁率、保磁力、周波数特性の観点から好ましい。
Fe−Si−Cr合金を用いる場合には、例えば、Si:0.1質量%〜10質量%、Cr:0.1質量%〜10質量%、残部:Fe及び不可避的不純物の組成の合金を用いることができる。
軟磁性金属粒子3の平均粒子径は、5μm以上30μm以下であり、10μm以上25μm以下が好ましく、15μm以上22μm以下がより好ましい。軟磁性金属粒子3の平均粒子径は、使用する周波数帯域によって適宜変更することができる。特に100kHzを超える高周波帯域での使用を想定した場合は10μm以上25μm以下であることがより好ましい。なお、軟磁性金属粒子3の平均粒子径は、圧粉磁心1の断面をFE−SEM JSM−6330Fによって観察した粒子面積から面積円相当径を算出し、平均粒子径とする。
酸化被膜を構成する金属酸化物は特に限定されない。例えば、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、及び酸化タングステンからなる群より選ばれた1種以上の金属酸化物が好ましい。特に、金属酸化物に、酸化クロム及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの好ましい金属酸化物を用いることで、渦電流損失が効果的に抑制される。
なお、軟磁性金属粒子3として、Fe−Si−Cr合金の粒子を用いた場合には、酸化クロムCr2O3を有する酸化被膜を容易に形成することができる。すなわち、Fe−Si−Cr合金中のCrが酸化することにより軟磁性金属粒子3の外縁部に金属酸化物層が形成される。
また、酸化被膜の厚みは、特に限定されない。厚みは、好ましくは1nm以上20nm以下、より好ましくは5nm以上15nm以下とすることができる。
なお、酸化被膜の厚みは、XPS(X線光電子分光法)を用いて測定できる。
反応相は、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。
なお、反応相の存在及び組成は、XPSにより確認できる。また、反応相の厚みは、XPSを用いて測定できる。
軟磁性金属粒子3のアスペクト比をこの範囲とすると、ヒステリシス損失をより小さくすることができる。
本発明の圧粉磁心1は、軟磁性金属粒子3と粒界相6との界面の断面構造を10μm×10μmの正方形の第1視野で観察した場合に、軟磁性金属粒子3の表面粗さRaが0.05μm以上0.20μm以下であり、Rzが0.20μm以上0.70μm以下である。
なお、Raは、JIS B0601(2001年)で定義された算術平均粗さである。Rzは、JIS B0601(2001年)で定義された最大高さ粗さである。軟磁性金属粒子3のRaとRzの測定方法としては、JIS B0601(2001年)に準拠した測定方法を用いればよい。例えば、図2に示すような軟磁性金属粒子3と粒界相6との界面の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)画像から、軟磁性金属粒子3の表面の断面曲線を得て、RaとRzを算出する方法等を挙げることができる。
なお、このRaとRzの要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、10μm×10μmの正方形の視野を複数観察して、そのうちの少なくとも1つの視野において満たしていればよい。
本要件は、軟磁性金属粒子の原料となる軟磁性金属粉末(軟磁性金属粒子3)の表面粗さを適宜設定することでコントロールできる。圧粉磁心1のプレス成形時に軟磁性金属粒子3同士の摩擦等により凹凸形状が付与される場合には、プレス成形時に付与されうる凹凸形状を勘案して原料の表面粗さを設定しておけばよい。
本発明者らは、圧粉磁心1の鉄損を抑制すべく鋭意検討を重ねた。この際、従来の無機物からなる粒界相や無機物にセラミックス粒子を分散させた粒界相では、軟磁性金属粒子と粒界相との間の界面における絶縁抵抗が十分ではない点に着目し、軟磁性金属粒子3のRaとRzと圧粉磁心1の鉄損との関係について研究した。そして、平均粒子径が特定範囲の軟磁性金属粒子3を用いた圧粉磁心1では、粒界相6にAl及びSiの少なくとも1つを含む結晶性物質が存在し、かつ、上述の軟磁性金属粒子3の表面粗さに関する要件を満たすと、圧粉磁心1の鉄損を抑制できるという新たな知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
このように本実施形態において、所望の効果が得られる理由は定かではないが、次のように推測される。
Ra及びRzが上記範囲の下限値以上では、軟磁性金属粒子3の比表面積が大きくなり、軟磁性金属粒子3と粒界相6との界面抵抗を高くすることができる。さらに、Ra及びRzが上記範囲の下限値以上では、軟磁性金属粒子3と粒界相6との結着性が向上する。これらの結果、渦電流損を抑制して、圧粉磁心1の鉄損を抑制できると推測される。
また、Ra及びRzが上記範囲の上限値以下では、軟磁性金属粒子3の表面に粗大な凹凸形状がないから、軟磁性金属粒子3の表面の凹みに粒界相6が十分に入り込み、軟磁性金属粒子3と粒界相6との間に気孔35ができにくい。さらに、Ra及びRzが上記範囲の上限値以下では、圧粉磁心1をプレス成形する際に、軟磁性金属粒子3同士が引っ掛かりにくく、軟磁性金属粒子3を密に充填することができる。これらの結果、ヒステリシス損失を抑制して、圧粉磁心1の鉄損を抑制できると推測される。
粒界相6は、上述のように、Al及びSiの少なくとも1種を含む結晶が存在する。
Al及びSiの少なくとも1種を含む結晶の一例は、シリケート化合物であり、例えば、Al2SiO5、Y2Si2O7、Zn2SiO4、CaSiO3、及びMgSiO3からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、Al(アルミニウム)を含む結晶として、アルミナゾルに由来する結晶性の化合物を例示できる。Al(アルミニウム)を含む結晶は、アルミナゾルを熱処理することで生成する。なお、Al(アルミニウム)を含む結晶は、α−Al2O3とは異なる化合物であり、例えばベーマイトが挙げられる。
Al及びSiの少なくとも1種を含む結晶の粒子径は、渦電流抑制の観点から、25nm以上200nm以下が好ましい。
なお、結晶は、圧粉磁心1の断面をFE−SEM(例えば、JSM−6330F)によって、検出できる。結晶の粒径は、FE−SEMで観察した粒子面積から面積円相当径を算出し、粒子径とする。
なお、粒界相6は、高抵抗という性質を有している。
圧粉磁心1は、ヒステリシス損失を更に小さくするという観点から、次の面積割合(占有率)(%)に関する要件を満たしていることが更に好ましい。
圧粉磁心1の断面構造を50μm×50μmの正方形の第4視野で観察した際に、粒界相6が第4視野を占める面積割合を互いに相違する3カ所で測定して平均値を求めた平均面積割合が5〜10%であることが好ましく、6〜9%であることがより好ましい。なお、粒界相6の面積には、気孔35の面積は含まれないものとする。
ここで、図1を参照しつつ、この要件を説明する。図1に示すような圧粉磁心1の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像上で、50μm×50μmの正方形の領域を第4視野とする。この第4視野の範囲内でEPMA(Electron Probe Micro Analyser)を用いた画像解析を行い、粒界相6が第4視野全体に占める面積割合(%)を求める。この粒界相6の面積割合(%)を3カ所において求め、その平均値を算出する。算出された平均値が粒界相6の平均面積割合(%)である。
なお、この面積割合(%)の要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、50μm×50μmの正方形の視野を3カ所以上観察して、そのうちから任意に選ばれる3つの視野において満たしていればよい。
本要件は、粒界相6を形成する材料の配合量を調整することでコントロールできる。
(3.1)気孔率に関する要件
圧粉磁心1は、ヒステリシス損失をより小さくするという観点から、次の気孔率(%)に関する要件を満たしていることがより好ましい。
圧粉磁心1の断面構造を50μm×50μmの正方形の第2視野で観察した場合に、気孔35が第2視野を占める割合を互いに相違する10カ所で測定して平均値を求めた平均気孔率が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。平均気孔率の下限値は特に定めるものではないが、1%以上としてもよい。
気孔率(%)は、(2.1)粒界相6の面積割合に関する要件と同様の解析手段を用いて算出する。圧粉磁心1の断面のSEM画像上で、50μm×50μmの正方形の領域を第2視野とする。この第2視野の範囲内でEPMAを用いた画像解析を行い、気孔35が第2視野全体に占める面積割合(%)を求める。この気孔35の面積割合(%)を10カ所において求め、その平均値を算出する。算出された平均値が気孔35の平均気孔率(%)である。
なお、この気孔率(%)の要件は、圧粉磁心1の断面構造を観察した際に、50μm×50μmの正方形の視野を10カ所以上観察して、そのうちから任意に選ばれる10の視野において満たしていればよい。
本要件は、プレス成形時の成形圧を調整することでコントロールできる。
圧粉磁心1は、ヒステリシス損失を更に小さくするという観点から、次の気孔率差(%)に関する要件を満たしていることが更に好ましい。
圧粉磁心1の断面構造を100μm×100μmの正方形の第5視野で観察して、気孔35が第5視野を占める面積割合P(%)を求める。面積割合Pの最大値をP1、面積割合Pの最小値をP2とすると、P1とP2の差(気孔率差)は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。平均気孔率の下限値は特に定めるものではないが、0%以上としてもよい。
ここで、図5〜図7を参照してこの要件を説明する。
まず、圧粉磁心1の断面構造を観察する際に、気孔35が第5視野を占める面積割合Pが最大の場所D1と、気孔35が第5視野を占める面積割合Pが最小の場所D2の決定方法を説明する。圧粉磁心1は、一対の型でプレス成形することで製造される。一対の型によって、圧力が加えられた面は、圧粉磁心1の形状によって特定される。例えば、図5のトロイダル形状の圧粉磁心1では、圧力が加えられた面は、プレス面PS1及びプレス面PS2である。そして、最も高い圧力が加えられた場所はプレス面PS1,PS2の近傍であり、当業者であればシミュレーションや経験等により一義的に特定可能である。例えば、図5の圧粉磁心1の場合には、符号D2で示さる場所が最も高い圧力が加えられた場所である。他方、最も低い圧力が加えられた場所は、当業者であればシミュレーションや経験等により一義的に特定可能である。例えば、図5の圧粉磁心1の場合には、符号D1で示さる場所が最も低い圧力が加えられた場所である。
最も低い圧力が加えられた場所D1において、圧粉磁心1の断面構造を100μm×100μmの正方形の第5視野で観察して、気孔35が第5視野を占める面積割合P(%)を求める(図6参照)。この最も低い圧力が加えられた場所D1における面積割合P(%)が、面積割合Pの最大値たるP1(%)に該当する。すなわち、D1の場所は、最も加えられた圧力が低く、気孔35が最も多く残っている可能性がある場所となる。
他方、最も高い圧力が加えられた場所D2において、圧粉磁心1の断面構造を100μm×100μmの正方形の第5視野で観察して、気孔35が第5視野を占める面積割合P(%)を求める(図7参照)。この最も低い圧力が加えられた場所D2における面積割合P(%)が、面積割合Pの最小値たるP2(%)に該当する。すなわち、D2の場所は、最も加えられた圧力が高く、気孔35が最も少ない場所となる。
このようにして、面積割合Pの最大値をP1、面積割合Pの最小値をP2として、P1とP2の差を求めることができる。
圧粉磁心1は、渦電流損失を更に小さくするという観点から、次の粒界多重点に関する要件を満たしていることが更に好ましい。ここで粒界多重点とは、圧粉磁心1の断面を観察した像において、3つ以上の軟磁性金属粒子3によって囲まれた部分であり、3つの軟磁性金属粒子3によって囲まれた粒界三重点や、4つの軟磁性金属粒子3によって囲まれた粒界四重点等が含まれる(通常、5つ以下の軟磁性金属粒子3によって囲まれた部分である)。
圧粉磁心1の断面構造を50μm×50μmの正方形の第3視野にて、互いの視野が重ならないように上下又は左右方向に連続して10視野観察した場合に、3つ以上の軟磁性金属粒子3によって囲まれた粒界多重点について、以下[1][2]に規定する第1結合線及び第2結合線によって囲まれた領域から気孔35を除いた粒界相6の領域の面積をS1とする。
[1]第1結合線は、互いに隣接する軟磁性金属粒子3の表面間を最も近接した部位同士で結んだ線とする。
[2]第2結合線は、互いに隣り合う第1結合線の端部同士を、軟磁性金属粒子3の外形線のうちの粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ線とする。
また、3つ以上の軟磁性金属粒子3の1つあたりの平均面積をS2とする。
なお、粒界相6の領域の面積S1を算出するにあたって、第1結合線と第2結合線によって囲まれた領域の一部が第3視野から欠ける場合には、その領域についてはS1を算出しない。また、軟磁性金属粒子3の平均面積S2を算出するにあたって、軟磁性金属粒子3の一部が第3視野から欠ける場合には、観察視野を拡大して軟磁性金属粒子3全体の面積を求める。面積S1及び面積S2は、(2.1)粒界相6の面積割合に関する要件と同様に、圧粉磁心1の断面のSEM画像上で、EPMAを用いた画像解析によって算出する。
圧粉磁心1は、1/10≦S1/S2≦1/3を充足する粒界多重点が1視野あたり平均して5カ所以上存在することが好ましく、平均して8カ所以上存在することがより好ましい。なお、1/10≦S1/S2≦1/3を充足する粒界多重点の1視野あたりの平均箇所数(凝集部の平均個数)は、小数点以下を四捨五入して整数で求める。なお、凝集部の平均個数は、通常、15カ所以下である。
1/10≦S1/S2≦1/3の範囲において、下限値以上である場合には、気孔35が生じやすい粒界多重点に粒界相6が凝集して凝集部7が形成され、粒界相6の絶縁抵抗を確保することができる。
1/10≦S1/S2≦1/3の範囲において、上限値以下である場合には、隣接する軟磁性金属粒子3同士が十分に近接して配置されることで、圧粉磁心1における軟磁性金属粒子3の充填率を十分なものとすることができる。
凝集部7の平均個数が5個以上の圧粉磁心1では、気孔35が生じやすい粒界多重点が粒界相6によって十分に埋められることで、粒界相6の絶縁抵抗を確保して、渦電流損失を低減できる。
ここで、図3、図4を参照してこの要件を説明する。
粒界相6の面積S1を求める方法について説明する。図3に示すように、軟磁性金属粒子3A、軟磁性金属粒子3B、軟磁性金属粒子3Cによって囲まれた粒界三重点において、軟磁性金属粒子3Aと軟磁性金属粒子3Bの表面間を最も近接した部位A2,B1同士で結んだ線と、軟磁性金属粒子3Bと軟磁性金属粒子3Cの表面間を最も近接した部位B2,C1同士で結んだ線と、軟磁性金属粒子3Cと軟磁性金属粒子3Aの表面間を最も近接した部位C2,A1同士で結んだ線を第1結合線L1とする。A1とA2同士を、軟磁性金属粒子3Aの外形線のうちの粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ線と、B1とB2同士を、軟磁性金属粒子3Bの外形線のうちの粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ線と、C1とC2同士を、軟磁性金属粒子3Cの外形線のうちの粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ線を第2結合線L2とする。そして、第1結合線L1と第2結合線L2によって囲まれた領域から気孔35を除いた面積を算出して、粒界相6の面積S1を求める。なお、軟磁性金属粒子3の表面に酸化被膜や反応相からなる層4が形成されている場合には、この層4の面積についてもS1に含める。
軟磁性金属粒子3A,3B,3Cの1つあたりの平均面積S2を求める方法について説明する。図4に示すように、軟磁性金属粒子3Aの面積S2Aと、軟磁性金属粒子3Bの面積S2Bと、軟磁性金属粒子3Cの面積S2Cをそれぞれ算出する。そして、これらの面積を合算し、粒子数で除して平均面積S2を求める(S2=(S2A+S2B+S2C)/3)。
そして、観察した連続する10視野について、視野ごとに1/10≦S1/S2≦1/3の要件を充足する粒界多重点の数を数える。各視野の上記要件を充足する粒界多重点の数を合算し、観察した視野数である10で除することにより、1視野あたりの平均箇所数(凝集部7の平均個数)を求めることができる。
なお、1/10≦S1/S2≦1/3の要件を充足する粒界多重点の数は、粒界相6を形成する材料の流動性、粒界相6を形成する材料の配合量、圧粉磁心1製造時のプレス圧等によって制御できる。
圧粉磁心1の製造方法は、特に限定されない。図8に、圧粉磁心1の製造方法の一例を示し、この製造方法について以下に説明する。
(1)軟磁性金属粉末の準備
まず、原料としての軟磁性金属粉末(軟磁性金属粒子3)を用意する(ステップS1)。
(2)熱処理
次に、軟磁性金属粉末を熱処理する(ステップS2)。この熱処理の条件は、特に限定されない。熱処理条件として、例えば、熱処理温度:700℃〜900℃、昇温速度:1℃〜10℃/min、保持時間:1分〜120分、不活性雰囲気(N2雰囲気、Ar雰囲気)の条件が好適に採用される。
(3)バインダーコーティング
次に、軟磁性金属粉末にバインダーをコーティングする(ステップS3)。コーティング方法は、特に限定されず、例えば、スプレーコーティング法、ディッピング法、湿式混合法が好適に用いられる。バインダーは、アルミ化合物粒子を含んでいる。すなわち、バインダーは、アルミナ水和物のコロイド溶液であるアルミナゾルを好適に用いることができる。コーティングした軟磁性金属粉末は、例えば乾燥温度:60℃〜150℃、乾燥時間:30分〜120分の条件で乾燥される。
(4)成形(プレス成形)
圧粉磁心1の形状を作るためには、通常、プレス成形(例えば金型一軸成形)が用いられる(ステップS4)。プレス成形の際の成形圧は1.2GPa〜2.4GPaが好ましく、高密度の成形体を得るためには高圧でプレスした方がよい。また、プレス成形時に室温〜200℃の範囲で金型を加熱してもよい。金型を加熱することで軟磁性金属粉末が塑性変形しやすくなり、高密度の成形体を得ることができる。他方、200℃を超える温度でのプレス成形は、軟磁性金属粉末の酸化が問題となりあまり好ましくない。
得られた成形体について、プレス成形の際に加えられた歪みを開放するため、熱処理(焼鈍)する(ステップS5)。熱処理条件として、例えば、熱処理温度:700℃〜900℃、昇温速度:1℃〜10℃/min、保持時間:1分〜120分、不活性雰囲気(N2雰囲気、Ar雰囲気)の条件が好適に採用される。
熱処理の条件は、使用する軟磁性金属粉末の種類によって適宜変更される。
本実施形態の圧粉磁心1によれば、鉄損が抑制される。
圧粉磁心1は、酸化被膜と粒界相との間に反応相が存在することで、渦電流損失をより小さくすることができる。
圧粉磁心1は、気孔率に関する要件を満たすことで、ヒステリシス損失をより小さくすることができる。
圧粉磁心1は、粒界多重点に関する要件を満たすことで、渦電流損失を更に小さくすることができる。
圧粉磁心1は、粒界相6の平均面積割合に関する要件を満たすことで、ヒステリシス損失を更に小さくすることができる。
なお、実験例1〜15は実施例であり、実験例16〜22は比較例である。
表において、実験例を「no.」を用いて示す。また、表において「16*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。
(1)実験例1〜17、19〜22(no.1〜17、19〜22)
軟磁性金属粒子(原料粉末)には、表1に記載の平均粒子径を有する各種粒子を用いた。なお、表1中、「Fe−Si−Cr」の記載は、水アトマイズ法によって作製したFe−5.5質量%Si−4.0質量%Cr粒子を意味している。
まず、軟磁性金属粉末を熱処理した。熱処理条件は、熱処理温度:200〜400℃、昇温速度:1.0〜10℃/min、保持時間:10〜45分、不活性雰囲気(Ar、N2)又は真空雰囲気とした。
次に軟磁性金属粒子を、コーティング液を用いてコーティングした。コーティング液には、アルミナゾルを使用した。なお、表1中、「Al、Siの結晶性物質」の欄が「○」とされている場合には、コーティング液にアルミ化合物粒子を用いたことを示しており、「Al、Siの結晶性物質」の欄が「×」とされている場合には、コーティング液にアルミ化合物粒子やケイ素化合物粒子を用いていないことを示している。
次いで、コーティングした軟磁性金属粉末を熱処理した。熱処理条件は、熱処理温度:200〜400℃、昇温速度:60〜180℃/min、保持時間:10〜45分、不活性雰囲気(Ar、N2)又は真空雰囲気とした。
そして、1.0〜2.5GPaの成形圧でプレス成形して成形体(トロイダル形状(外径:8mm、内径:4.5mm、高さ:1.5mm))とした。この成形体を熱処理温度:400〜800℃、昇温速度:1.0〜10℃/min、保持時間:10〜45分、不活性雰囲気(Ar、N2)又は真空雰囲気の条件で熱処理した。以上のようにして、実験例1〜17、19〜22に係る圧粉磁心を得た。
なお、プレス成形の成形圧を変えることで、凝集部の平均個数と、気孔率をコントロールした。
軟磁性金属粒子(原料粉末)には、表1に記載の平均粒子径を有する粒子を用いた。そして、実験例1〜17、19〜22と同様の条件で軟磁性金属粉末を熱処理した。
次に軟磁性金属粒子を、コーティング液を用いてコーティングした。コーティング液には、シリカゾルを用いた。そして、実験例1〜17、19〜22と同様の条件でコーティング後の軟磁性金属粒子を乾燥し、コーティング後の軟磁性金属粒子を熱処理した。以上のようにして、実験例18に係る圧粉磁心を得た。
なお、プレス成形の成形圧を変えることで、凝集部の平均個数と、気孔率をコントロールした。
「Ra」、「Rz」の欄は、「(1.2)軟磁性金属粒子の表面粗さに関する要件」の欄で記載された方法で測定された算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを示している。
「面積割合」の欄は、「(2.1)粒界相6の面積割合に関する要件」の欄で記載された方法で測定された平均面積割合(%)を示している。
「凝集部の平均個数」の欄は、「(4)粒界多重点に関する要件」の欄で記載された方法で測定された凝集部の平均個数を示している。
「気孔率」の欄は、「(3.1)気孔率に関する要件」の欄で記載された方法で測定された平均気孔率(%)を示している。
測定装置(B−Hアナライザ、岩崎通信機株式会社製、型番SY−8218)により、下記の鉄損に関する修正steinmetz方程式を用いて、以下の条件にて鉄損を評価した。
コア条件:外径φ8mm−内径φ4.5mm 厚み1.5mm
エナメル線φ0.3 15巻 バイファイラ巻
ヒステリシス損失(kW/m3)
「☆」…600未満
「◎」…600以上700未満
「○」…700以上800未満
「△」…800以上900未満
「×」…900以上
渦電流損失(kW/m3)
「☆」…15未満
「◎」…15以上30未満
「○」…30以上50未満
「△」…50以上80未満
「×」…80以上
評価結果を表1に示す。
実施例である実験例1〜15は、下記要件(a)(b)(c)(d)を満たしている。
・要件(a):軟磁性金属粒子の平均粒子径が5μm以上30μm以下である。
・要件(b):粒界相には、Al及びSiの少なくとも1つを含む結晶性物質が存在する。
・要件(c):軟磁性金属粒子の表面粗さRaが0.05μm以上0.20μm以下である。
・要件(d): 軟磁性金属粒子の表面粗さRzが0.20μm以上0.70μm以下である。
実験例16では、要件(a)を満たしてない。
実験例17では、要件(a)を満たしてない。
実験例18では、要件(b)を満たしてない。
実験例19では、要件(c)を満たしてない。
実験例20では、要件(c)を満たしてない。
実験例21では、要件(d)を満たしてない。
実験例22では、要件(d)を満たしてない。
また、実施例である実験例1〜15のうち、更に下記要件(e)を満たしている実験例5〜15は、ヒステリシス損失がより少なかった。
また、実施例である実験例5〜15のうち、更に下記要件(f)を満たしている実験例9〜15は、渦電流損失がより少なかった。
また、実施例である実験例9〜15のうち、更に下記要件(g)を満たしている実験例12〜15は、ヒステリシス損失がより少なかった。
・要件(e):平均気孔率が8%以下である。
・要件(f):凝集部の平均個数が5個以上である((4)粒界多重点に関する要件に相当)。
・要件(g):粒界相の面積割合が5〜10%である((2.1)粒界相6の面積割合に関する要件)。
本実施例の圧粉磁心は、ヒステリシス損失及び渦電流損失が共に少なかった。
3,3A,3B,3C…軟磁性金属粒子
4 …酸化被膜と反応相からなる層
6 …粒界相
35 …気孔
L1 …第1結合線
L2 …第2結合線
D1 …気孔が第5視野を占める面積割合Pが最大の場所
D2 …気孔が第5視野を占める面積割合Pが最小の場所
PS1 …プレス面
PS2 …プレス面
Claims (5)
- 平均粒子径5μm〜30μmの軟磁性金属粒子と、Al及びSiの少なくとも1つを含む結晶性物質が存在する粒界相と、を備えてなる圧粉磁心であって、
前記軟磁性金属粒子と前記粒界相との界面の断面構造を10μm×10μmの正方形の第1視野で観察した場合に、前記軟磁性金属粒子の表面粗さRaが0.05μm以上0.20μm以下であり、Rzが0.20μm以上0.70μm以下であることを特徴とする圧粉磁心。 - 前記軟磁性金属粒子は、表面に酸化被膜が形成され、
前記酸化被膜と前記粒界相との間に反応相が存在することを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。 - 前記圧粉磁心の断面構造を50μm×50μmの正方形の第2視野で観察した場合に、気孔が前記第2視野を占める割合を互いに相違する10カ所で測定して平均値を求めた平均気孔率が8%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心。
- 前記圧粉磁心の断面構造を50μm×50μmの正方形の第3視野にて、互いの視野が重ならないように上下又は左右方向に連続して10視野観察した場合に、
3つ以上の前記軟磁性金属粒子によって囲まれた粒界多重点について、
[1]互いに隣接する前記軟磁性金属粒子の表面間を最も近接した部位同士で結んだ第1結合線、及び[2]互いに隣り合う前記第1結合線の端部同士を、前記軟磁性金属粒子の外形線のうちの前記粒界多重点側の内側部分を辿って結ぶ第2結合線、によって囲まれた領域から気孔を除いた前記粒界相の領域の面積をS1とし、
前記3つ以上の前記軟磁性金属粒子の1つあたりの平均面積をS2とすると、
1/10≦S1/S2≦1/3
を充足する前記粒界多重点が1視野あたり平均して5カ所以上存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。 - 前記圧粉磁心の断面構造を50μm×50μmの正方形の第4視野で観察した際に、
前記粒界相が前記第4視野を占める面積割合を互いに相違する3カ所で測定して平均値を求めた平均面積割合が5〜10%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
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