JP2020142430A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性や透明性を有し、かつボイルなどの熱水処理後の水への浸漬によってもラミネート強度が低下することのない積層体を提供する。【解決手段】積層体1は、樹脂基材12と主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層13とガスバリア被覆層14を含むガスバリア積層フィルム11と、ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン水性分散体からなり、ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、オレフィン成分がプロピレンを含む接着剤に、無機バインダーを乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなる接着剤層15と、少なくとも接着剤層に接する面がポリプロピレンからなるヒートシール層16からなる。【選択図】図1

Description

本発明は、レトルト食品の包装分野に用いられる包装用のプラスチックフィルムの積層体に関し、特に環境適応性の高い水性接着剤を使用しながらも高い耐水性、レトルト適性を有する積層体に関する。
近年、食品及び医薬品や電子部材等の非食品等の包装に用いられる包装材料は内容物の変質を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
そのため、従来のガスバリア層としては、ポリビニルアルコールとエチレンビニル共重合体やポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、これらの樹脂をコーティングしたプラスチックフィルム、あるいはアルミ等の金属からなる金属箔やそれら金属蒸着フィルム等が主に用いられてきた。
樹脂フィルムとしては、例えば特許文献1に、樹脂からなる基材上に、Si(O−CH3)4等のアルコキシシランと、エポキシシラン等のシランカップリング剤と、ポリビニルアルコールを含む組成物をゾル−ゲル法により重縮合して得られる積層フィルムが開示されている。しかしながら、この被覆層は、水素結合からなるため、水により膨潤して溶解しやすかった。このため、ボイルやレトルト処理等の過酷な条件下ではガスバリア性が劣化し易かった。
一方、金属箔や金属蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物が確認できないこと、検査の際に金属探知器が使用できないこと、及び廃棄の際に不燃物として処理しなければならないこと等の課題があった。また、ガスバリア性樹脂フィルム、及びガスバリア性樹脂をコーティングしたフィルムは、温湿度依存性が大きく、十分なガスバリア性を維持できない。更に、ガスバリア性樹脂として使用される塩化ビニリデンやポリアクリロニトリル等は、廃棄・焼却の際に有害物質の原料となりうる可能性がある。
さらに、近年の環境意識の高まりや、製造現場の作業環境改善に関する規制などに対応して、有機溶剤を使用しない水性接着剤を使用した積層体やラミネート方法も提案されている(例えば特許文献2)。また特許文献3では、特定の成分を含むことで不溶化されたガスバリア被覆層が設けられた積層体が開示され、金属箔を使用せずに透明性に優れ、金属探知器に適用可能であり、高温高湿下でのガスバリア性を持ち、ボイル及びレトルト包材として使用可能であり、環境を破壊する物質を使用せず、包装材料として最適であるとしている。
しかしながら、積層体のラミネートに水性接着剤を用いたときには、接着基材の材質によっては耐水性が不十分となり、レトルト包材に使用すると、ボイルなどの熱水処理後や、さらに水に浸漬したときにラミネート強度が低下したり、剥離したりしてしまうことがあり、さらなる改善が望まれていた。
特許第2556940号公報 特開2018−39967号公報 特許第4200972号公報
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、環境適合性の高い水性接着剤によりラミネートした積層体であり、レトルト包材に適用したときに要求されるガスバリア性や透明性を有し、かつボイルなどの熱水処理後の水への浸漬によってもラミネート強度が低下することのない積層体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、
ガスバリア積層フィルム層と、接着剤層と、ヒートシール層とがこの順で積層された積層体であって、
前記ガスバリア積層フィルム層は、
樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
(但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
前記接着剤層は、
ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン水性分散体からなり、前記ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、前記オレフィン成分がプロピレンを含む接着剤に、無機バインダーが乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなり、
前記ヒートシール層は、少なくとも前記接着剤層に接する面がポリプロピレンからなる
ことを特徴とする積層体である。
また、本発明の請求項2に係る発明は、
ガスバリア積層フィルム層と、接着剤層と、押出樹脂層と、ヒートシール層とをこの順で積層した積層体であって、
前記ガスバリア積層フィルム層は、
樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
(但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
前記接着剤層は、
ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン水性分散体からなり、前記ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し
、前記オレフィン成分がプロピレンを含む接着剤に、無機バインダーが乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなり、
前記押出樹脂層は、ポリプロピレンの溶融押出しにより形成され、
前記ヒートシール層は、少なくとも前記押出樹脂層に接する面がポリプロピレンからなることを特徴とする積層体である。
また、本発明の請求項3に係る発明は、
ガスバリア積層フィルム層と、第1接着剤層と、熱可塑性樹脂からなる中間層と、第2接着剤層と、ヒートシール層とがこの順で積層された積層体であって、
前記ガスバリア積層フィルム層は、
樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
(但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
前記第1接着剤層は、ポリウレタン樹脂を水に分散させたポリウレタンディスパージョンからなる接着剤に対して、無機バインダーを乾燥時の重量比で3〜20%となる様に添加されてなることを特徴とする積層体である。
また、本発明の請求項4に係る発明は、
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂またはナイロン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の積層体である。
また、本発明の請求項5に係る発明は、
前記無機バインダーが、オルトケイ酸テトラエチル加水分解溶液を主成分とするシリカゾルバインダーであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体である。
また、本発明の請求項6に係る発明は、
請求項1に記載の積層体の各層をドライラミネート法により積層した後、前記接着剤に含まれるポリプロピレンの融点以上の温度で熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法である。
本発明によれば、レトルト包材に適用したときに要求されるガスバリア性や透明性については、金属箔を用いないため透明であり、ガスバリア被覆層が3つの成分を含むことで不溶化されてガスバリア蒸着層と組み合わされて十分なガスバリア性を呈すると共に、接着剤層に無機バインダーが所定の比率で添加されることで、環境適合性の高い水性接着剤であっても、ボイルによる熱水処理後の水への浸漬でもラミネート強度が低下せず、レトルト包材に好適に適用できる積層体を提供できる。
本発明の積層体の第1の実施形態を示す断面図である。 本発明の積層体の第2の実施形態を示す断面図である。 本発明の積層体の第3の実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1に、本発明の積層体の第1の実施形態を表す断面図を示す。積層体1は、樹脂基材12上にガスバリア蒸着層13とガスバリア被覆層14が順次積層されたガスバリア積層フィルム層11に、接着剤層15、ヒートシール層16がこの順で積層されて構成されている。
以下各層の構成および機能を詳細に説明する。
(樹脂基材)
樹脂基材12は、透明な樹脂であると好ましい。このような樹脂材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、66−ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のエンプラフィルム等があげられる。この樹脂材料は、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械強度や寸法安定性を有するものが良い。この樹脂材料はフィルム状に加工して基材として使用される。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。更に、包装材料に使用する場合、価格面、防湿性、充填適性、風合い、及び廃棄性を考慮すると、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムが好ましいが、中でもポリエステルフィルムフィルムがより好ましい。
樹脂基材12の厚さは特に制限を受けるものでないが、包装材料としての適性、および加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmが好ましく、より好ましくは6〜30μmである。
また、この樹脂基材12の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤を、必要に応じて適用することができる。
また密着性を良くするために、樹脂基材12の表面に、前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理などを施すことができる。更に、樹脂基材12の表面に薬品処理、及び溶剤処理等を施すことができる。特に、プラズマ処理は樹脂基材12表面と次に積層させる無機化合物からなるガスバリア蒸着層13との密着を強固にするため好ましい。
(ガスバリア蒸着層)
ガスバリア蒸着層13に使用される無機化合物としては、例えばケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、及びマグネシウムなどの酸化物、それらの窒化物、及びそれらのフッ化物、及びこの酸化物、窒化物、及びフッ化物の複合物があげられる。
ガスバリア蒸着層13は、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法などの真空プロセスにより形成され得る。特に、酸化アルミニウムは、無色透明であり、ボイル・レトルト殺菌処理による耐水性にも優れ、広範囲の用途に使用することができることから、好ましく使用できる。
酸化アルミニウムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がAl:O=1:1.5〜1:2.0であることが好ましい。一般にAl:O=1:1.5より酸素が少なくアルミニウム量が多いものは、級密な膜を形成するために良好なガスバリア性が得られるが、蒸着膜が黒く着色し、光線透過量が低くなる傾向がある。逆にAl:O=1:1.5より酸素が多くアルミニウム量が低いものは、疎な膜を形成し、ガスバリア性は劣るが光線透過量は高く透明なものが得られる。
ボイル及びレトルト殺菌処理に好適なガスバリア積層フィルム層11は、ガスバリア蒸着層13と、次に説明するガスバリア被覆層14との組み合わせにより実現するため、Al:O=1:1.5〜2.0であることが好ましい。
ガスバリア蒸着層13の膜厚は、用途や、ガスバリア被覆層14の膜厚によって多少異なるが、数十Åから5000Åの範囲がのぞましい。しかし50Å以下では薄膜の連続性に問題があり、また3000Åを超えるとクラックが発生しやすく、可撓性が低下するため、好ましくは50〜3000Åである。
(ガスバリア被覆層)
ガスバリア被覆層14は、
一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
(但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成されている。
ガスバリア被覆層14は、この3つの成分を含むことにより不溶化される。一般式(2)のNCO−RSi(ORは、加水分解により一般式(1)のSi(OR及び水溶性高分子と水素結合を形成するため、バリアの孔になり難く、また一方で、有機官能基はネットワークをつくることで、水溶性高分子がその水素結合に水が付加することにより膨潤することを防ぎ、耐水性を向上させる。
なお、バリアの孔とは、膜の中で緻密なネットワークを作らず気体の透過を容易にする部分をいう。樹脂基材上12に、ガスバリア被覆層14をガスバリア蒸着層13と組み合わせて設けることにより、高いガスバリア性が得られる。
一般式(2)の1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮合体である。1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、Si(ORと水酸基を有する水溶性高分子に添加することにより、水素結合に基づきガスバリア積層フィルムが水による膨潤することを防ぎ、耐水性を向上させることができる。また、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランは、反応性が高く、液安定性が低いのに対し、ヌレート部はその極性により、水溶性ではないが水系液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができ、その耐水性性能は3−イソシアネートアルキルアルコキシシランと同等である。さらにヌレート部の極性により水溶性高分子はバリアの孔になりにくい。
1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3−イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3−イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。
ガスバリア被覆層14中の水酸基を有する水溶性高分子とは、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類が好ましい。特にポリビニルアルコール(以下PVA)を用いた
場合にガスバリア性が最も優れる。
ガスバリア被覆層14を形成するためのコーティング溶液には、インキ、接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止を考慮して、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物や、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加剤などを、ガスバリア性や耐水性を阻害しない範囲で添加することができる。
乾燥後のガスバリア被覆層14の厚みは特に限定しないが、厚みが50μm以上を越えるとクラックが生じ易くなる可能性があるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
ガスバリア被覆層14の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。これらの塗工方式を用いてガスバリア蒸着層13の上に塗化する。
ガスバリア被覆層14の乾燥法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射などガスバリア被覆層14に熱をかけて、水分子を飛ばす方法であれば、これらのいずれでも、またこれらを2つ以上組み合わせてもかまわない。
(接着剤層)
接着剤層15は、ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体に無機バインダーが乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなる。
接着剤層15のポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含んでおり、オレフィン成分は、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを含んでいる。プロピレン以外のオレフィンは、ブテンを含み、エチレンを含まないものとすると好ましい。プロピレン/プロピレン以外のオレフィン、の質量比は60/40〜80/20であると、接着性などの点でから好ましいことが知られている。
ポリオレフィン樹脂の各成分の共重合形態は特に限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等の公知の重合法のいずれでも採用できるが、重合のし易さの点からはランダム共重合もしくはグラフト共重合が好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、特に限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等が例示できる。なかでも無水マレイン酸がより好ましい。
接着剤層15のポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散もしくは一部溶解されている。ここで水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、ポリオレフィン樹脂を分散または溶解し易くするため、有機溶剤や塩基性化合物が添加されていてもよい。
水性媒体としては、水のほかに、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどが主剤として好適に使用できるものとして例示できるが、これらに限定されるものではない。またこれらを複数混合して使用してもよい。
塩基性化合物としては、特に限定するものではないが、アンモニア、または有機アミン化合物が好ましい。有機アミン化合物の具体例としては、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどが例示できるが、これらに限定されない。塩基性化合物の配合量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましい。
接着剤層15に含まれる無機バインダーとしては、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーが好適であり、必要に応じてシランカップリング剤を加え、塩酸とエタノールの混合溶媒に混ぜることで調製できる。無機バインダーを添加することにより、ガスバリア被覆層14との間での水素結合を減少させ、有機シラン同士の結合が増加するため、接着強度を安定化することができる。接着剤層15の形成方法としては、前述したような通常のコーティング方法を適宜用いることができる。
無機バインダーの添加量としては、接着剤層15の乾燥時の重量比で5〜20%となる様にすると好ましい。5%を下回ると添加の効果が小さく、20%を上回ると、後述するヒートシール層16との接着面積が狭まり、強度低下に繋がるおそれがあるため好ましくない。
(ヒートシール層)
ヒートシール層16は、レトルト包装袋などを形成する際の接着部に利用されるものであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂、およびそれらを組み合わせて用いることができる。なおその際、前記接着剤層に接する面がポリプロピレンとなる様にする。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
ヒートシール層16の形成方法としては、上述樹脂からなるフィルム状のものを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントドライラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等いずれも公知の積層方法により形成することができる。
上記各層に加え、必要に応じて印刷層を積層する事も可能である。あるいは、接着剤を介して複数の樹脂を積層する事も可能である。また、樹脂基材12のガスバリア蒸着層13と反対面にも印刷層、ヒートシール層、接着剤を介する複数の樹脂の積層が可能である。
また、樹脂基材12とガスバリア蒸着層13の間にプライマー層を設けると、無機化合物からなる蒸着層が均一に形成されてガスバリア性が向上し得る。またガスバリア蒸着層13の組成および存在比に影響されることなく、密着性が安定して得られるため、プライマー層を設けても良い。
プライマー層としては、特に限定するものではないが、例えばアクリルポリオールとイソシアネート化合物、シランカップリング剤の組み合わせが好ましい。この組み合わせからなるプライマー層を用いると、基材と蒸着層の間に、安定したさらに高い密着性を得ることができる。
プライマー層の厚みは、一般的には乾燥後の厚さで、0.005〜5μmの範囲になる
ようにコーティングする事が望ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。0.01μm未満の場合は塗工技術の点から均一な塗膜が得られ難く、逆に1μmを越える場合は不経済となる傾向がある。
図2に、本発明の積層体の第2の実施形態を示す断面図を示す。図示するように、この積層体2は、樹脂基材22上にガスバリア蒸着層23とガスバリア被覆層24が順次積層されたガスバリア積層フィルム層21に、接着剤層25、ポリプロピレンの溶融押出しにより形成された押出樹脂層26、ヒートシール層27がこの順で積層されて構成されている。すなわち接着剤層25とヒートシール層27との間に、押出樹脂層26が設けられている以外は、図1と同様の構成を有する。
このような押出樹脂層26を設けることにより、接着剤層25とヒートシール層27との間に安定した高い密着性が得られる。
図3に、本発明の積層体の第3の実施形態を示す断面図を示す。図示するように、この積層体3は、樹脂基材32上にガスバリア蒸着層33とガスバリア被覆層34が順次積層されたガスバリア積層フィルム層31に、第1接着剤層35、熱可塑性樹脂からなる中間層36、第2接着剤層37、ヒートシール層38がこの順で積層されて構成されている。ガスバリア積層フィルム層31は、前述の第1の実施形態と同様の構成として良い。また、第1の実施形態と同様に、印刷層などの付加的な層をさらに設けても良い。
第1接着剤層35は、ポリウレタン樹脂を水性溶媒に分散させたポリウレタンディスパージョンに、無機バインダーが添加されてなる。
第1接着剤層35に含まれる無機バインダーとしては、第1の実施形態において例示したものと同様のものを用いることができる。このとき無機バインダーの添加量としては、ポリウレタン樹脂を水に分散させたポリウレタンディスパージョンからなる接着剤に対して、乾燥時の重量比で3〜20%となる様にすると好ましい。3%を下回ると添加の効果が小さく、20%を上回ると、水溶液とウレタンが分離してラミネート強度低下に繋がるおそれがあるため好ましくない。また第1接着剤層35の塗布量は乾燥時で4g/m程度とすると好ましい。
ポリウレタンディスパージョンとしては、ポリウレタンディスパージョンの態様で上市されているものを使用して良い。
中間層36の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂が好適なものとして例示できる。
第2接着剤層37は、エステル系接着剤、エーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤などから要求仕様に合わせて選択できるが、レトルト耐性などの点から、ウレタン樹脂系の接着剤が好ましく用いられる。
ヒートシール層38は、第1の実施形態におけるヒートシール層16と同様の材料構成および形成方法により設けることができる。
以上の様な構成とすることで、本発明の積層体は十分なガスバリア性を呈すると共に、環境適合性の高い水性接着剤を使用しても、ボイルによる熱水処理後の水への浸漬でもラミネート強度が低下せず、レトルト包材に好適に適用できる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
<試料1>
ガスバリア積層フィルム、接着剤層、ヒートシール層の3層構成の積層体試料1を以下の様に作製した。
(1)ガスバリア積層フィルム:
アルミナ蒸着2軸延伸PETフィルム(厚さ12μm)に、下記方法にて調液した塗布液用溶液(A)〜(C)を下記の割合で混合し、これを塗布液とした。これをバーコーターによりアルミナ蒸着層の上面に塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を形成し、ガスバリア積層フィルムとした。
・ガスバリア被覆層用溶液
(A):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2換算)の加水分解溶液。
(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノールアルコール=95/5(重量比)水溶液。
(C):1,3,5−トリス(3−メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に希釈、調整した溶液。
(A)/(B)/(C)=100/20/10
(2)接着剤層:
・変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(アローベースDB−4010(ユニチカ製))
1部
・希釈溶剤:エタノール(シカ1級(関東化学製) 3部
・無機バインダー 適量
(無機バインダーは、トリエチルエトキシシラン(TEOS)とシランカップリング剤
を、塩酸とエタノールの混合溶剤に混合して調製した。)
上記の3種を混合し、乾燥時重量で0.5g/mとなる様に塗布、乾燥した。
なおここで、無機バインダーの添加比率を、表1に示したように乾燥時重量比で0.0%から30.0%の範囲で変えてそれぞれ試料を作成し、比較例1〜4、実施例1〜4、比較例5、6の試料とした。
(3)ヒートシール層:
無延伸ポリプロピレンフィルム(トレファンZK207(東レ製)、厚さ70μm)。
<積層>
ガスバリア積層フィルムに接着剤層を塗工・乾燥し、ヒートシール層を重ね、ポリプロピレンの融点よりも高い温度である200℃、0.2MPa、1sの条件で熱圧着し、積層体とした。
<試験>
121℃、30分の条件で熱水処理を行い、処理後のラミネート強度と、さらに測定界面を水に浸漬した状態でのラミネート強度をT型剥離試験法(JIS K 6854−3)にて測定した。比較のため熱水処理前のラミネート強度も測定しておく。
<評価>
測定界面を水に浸漬した状態でのラミネート強度が、1N/15mm以上であれば、ラミネート強度が維持できているとする。結果を表1にまとめる。
Figure 2020142430
<試料2>
ガスバリア積層フィルム、接着剤層、押出樹脂層、ヒートシール層の4層構成の積層体サンプルを以下の様に作製した。
ガスバリア積層フィルム、接着剤層、ヒートシール層は前述の<試料1>と同様の材料を使用する。
接着剤層の無機バインダーの添加比率は、前述の<試料1>と同様に、表2に示したように乾燥時重量比で0.0%から30.0%の範囲で変えてそれぞれ試料を作成し、比較例7〜10、実施例5〜8、比較例11、12の試料とした。
<積層>
ガスバリア積層フィルムに接着剤層を塗工・乾燥し、押出ラミネート機でポリプロピレン樹脂を押出し、ヒートシール層と貼り合せた。
試料1と同様に試験および評価を行った結果を表2にまとめる。
Figure 2020142430
<試料3>
ガスバリア積層フィルム、第1接着剤層、中間層、第2接着剤層、ヒートシール層の5層構成の積層体サンプルを以下の様に作製した。
(1)ガスバリア積層フィルム:
ガスバリア積層フィルム、ヒートシール層は前述の<試料1>と同様の材料を使用する。 (2)第1接着剤層:
・水系ウレタンディスパージョン(Epotal CF500(BASF製)、固形分濃度45%) 1部
・無機バインダー 適量
(無機バインダーは、トリエチルエトキシシラン(TEOS)とシランカップリング剤
を、塩酸とエタノールの混合溶剤に混合して調製した。)
第1接着剤層は塗布量を4g/mとして、無機バインダーの添加比率は、表3に示したように乾燥時重量比で0.0%から50.0%の範囲で変えてそれぞれ試料を作成し、実施例9〜12、比較例13〜15の試料とした。
(3)中間層:
中間層はポリエチレンテレフタレート樹脂とした。
(4)第2接着剤層:
第2接着剤層はウレタン樹脂系接着剤とした。
(5)ヒートシール層:
ヒートシール層は前述の<試料1>と同様の材料を使用した。
<積層>
・ガスバリア積層フィルムに第1接着剤層を塗工し、100℃のオーブンで1分以上加熱乾燥した。
・ラミネート装置にてラミニップ温度常温で中間層、第2接着剤層、ヒートシール層をラミネートした。
・ラミネート後、常温で72時間エイジングを行った。
試料1と同様に試験および評価を行った結果を表3にまとめる。
Figure 2020142430
<試料4>
中間層をナイロン樹脂とした他は、試料3と同様に試料を作成し、実施例13〜16、比較例16〜18の試料とした。
試料1と同様に試験および評価を行った結果を表4にまとめる。
Figure 2020142430
各実施例の積層体においては、いずれも十分なラミネート強度が得られることが確認された。一方、比較例の積層体では、ラミネート強度が低下してしまった。
1、2、3・・・積層体
11、21、31・・・ガスバリア積層フィルム層
12、22、32・・・樹脂基材
13、23、33・・・ガスバリア蒸着層
14、24、34・・・ガスバリア被覆層
15、25・・・接着剤層
16、27、38・・・ヒートシール層
26・・・押出樹脂層
35・・・第1接着剤層
36・・・中間層
37・・・第2接着剤層

Claims (6)

  1. ガスバリア積層フィルム層と、接着剤層と、ヒートシール層とがこの順で積層された積層体であって、
    前記ガスバリア積層フィルム層は、
    樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
    一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
    一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
    (但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
    および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
    前記接着剤層は、
    ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン水性分散体からなり、前記ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、前記オレフィン成分がプロピレンを含む接着剤に、無機バインダーが乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなり、
    前記ヒートシール層は、少なくとも前記接着剤層に接する面がポリプロピレンからなる
    ことを特徴とする積層体。
  2. ガスバリア積層フィルム層と、接着剤層と、押出樹脂層と、ヒートシール層とをこの順で積層した積層体であって、
    前記ガスバリア積層フィルム層は、
    樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
    一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
    一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
    (但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
    および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
    前記接着剤層は、
    ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有するポリオレフィン水性分散体からなり、前記ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有し、前記オレフィン成分がプロピレンを含む接着剤に、無機バインダーが乾燥時の重量比5〜20%になる様に添加されてなり、
    前記押出樹脂層は、ポリプロピレンの溶融押出しにより形成され、
    前記ヒートシール層は、少なくとも前記押出樹脂層に接する面がポリプロピレンからなることを特徴とする積層体。
  3. ガスバリア積層フィルム層と、第1接着剤層と、熱可塑性樹脂からなる中間層と、第2接着剤層と、ヒートシール層とがこの順で積層された積層体であって、
    前記ガスバリア積層フィルム層は、
    樹脂基材と、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、ガスバリア被覆層とがこの順で積層され、前記ガスバリア被覆層は、
    一般式 Si(OR ・・・(1)で表されるケイ素化合物およびその加水分解物のうち一つ、
    一般式 (NCO−RSi(OR ・・・(2)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートおよびその加水分解物のうち一つ
    (但し一般式(1)、(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは(CH、nは1以上、を表す。)、
    および水酸基を有する水溶性高分子、を含む塗布液を塗布、乾燥して形成され、
    前記第1接着剤層は、ポリウレタン樹脂を水に分散させたポリウレタンディスパージョンからなる接着剤に対して、無機バインダーを乾燥時の重量比で3〜20%となる様に添加されてなることを特徴とする積層体。
  4. 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂またはナイロン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
  5. 前記無機バインダーが、オルトケイ酸テトラエチル加水分解溶液を主成分とするシリカゾルバインダーであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
  6. 請求項1に記載の積層体の各層をドライラミネート法により積層した後、前記接着剤に含まれるポリプロピレンの融点以上の温度で熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114744363A (zh) * 2022-03-29 2022-07-12 中材锂膜(宁乡)有限公司 锂离子电池隔膜浆料、其制备方法及隔膜
WO2023037895A1 (ja) * 2021-09-08 2023-03-16 凸版印刷株式会社 積層フィルム、包装袋、及び包装体
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