JP2020122036A - 防汚性膜及び防汚性膜形成用液組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】撥水撥油性を有し、特に膜に付着した油性マジックの汚れを簡便に落とすことができる防汚性膜及びこうした防汚性膜を形成し得る防汚性膜形成用液組成物を提供する。【解決手段】防汚性膜は、膜表面に平均粒径0.1〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70〜500個存在し、表面粗さSqが45〜95nmであって、膜成分中のフッ素Fと炭素Cとケイ素Siの質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)である。防汚性膜形成用液組成物は、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、シリカゾルゲルを100質量%に対してシリカゾルゲルがペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分を0.5〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基成分を0.5〜20質量%とメチル基成分を0.2〜10質量%含み、溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又はこのアルコール以外の溶媒である。【選択図】なし

Description

本発明は、撥水撥油性を有し、特に油性マジックの汚れを簡便に落とすことができる防汚性膜及びこうした防汚性膜を形成し得る液組成物に関するものである。
従来、撥水撥油性を付与することができる化合物として、特定のペルフルオロアミン構造を有する含フッ素シラン化合物が開示されている(例えば特許文献1(要約)参照。)。この含フッ素シラン化合物は、炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有せず、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)又はペルフルオロオクタン酸(PFOA)を生成する懸念がない化学構造でありながら、優れた撥水撥油性を付与することが可能であり、多種多様な用途に適用可能性を有するフッ素系シランカップリング剤として有用である特徴がある。
特許文献1に示される含フッ素シラン化合物を少量だけ添加して液組成物を調製すると、この液組成物により形成した膜に撥水撥油性を付与することができる。しかしこの含フッ素シラン化合物を一般的なアルコール溶媒とを混合して液組成物を調製した場合、この含フッ素シラン化合物の表面張力がアルコール溶媒の表面張力と大きく異なってしまう。このため、この液組成物を基材上にバーコーターで塗布した場合、塗膜に水玉模様やコーター筋が生じて、成膜性に劣る。更に含フッ素シラン化合物と溶媒だけを混合した液組成物で塗膜を形成した場合、塗膜の強度が低いうえ、塗膜の基材への密着性が十分でない。更に成膜した後の膜厚が、可視光線の波長程度(100nm〜800nm)である場合、液組成物を塗布した後の溶媒が揮発する乾燥過程でウェット膜厚が薄い部位から徐々に揮発していくときに、膜に虹色の干渉縞を発生する問題があった。
この問題を解決するために、本出願人は、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、シリカゾルゲルを100質量%とするときに、このシリカゾルゲルが下記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分(F)を0.5質量%〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基成分(G)を0.5質量%〜20質量%含み、溶媒が、水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは炭素数1〜4のアルコールと前記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする膜形成用液組成物を提案した(特許文献2(請求項1)参照。)。
特開2015−196644号公報 国際公開2018/123126号公報
特許文献2に示される膜形成用液組成物を用いて、油汚れをした基材を拭き取った場合、油汚れは拭き取ることができるものの、油性マジックの汚れは、この液組成物を含浸した布で基材を複数回強く擦らないと、落とすことができないまだ解決すべき課題があった。
本発明の目的は、撥水撥油性を有し、特に油性マジックの汚れを簡便に落とすことができる防汚性膜及びこうした防汚性膜を形成し得る防汚性膜形成用液組成物を提供することにある。
本発明の第1の観点は、膜表面に平均粒径0.1μm〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70個〜500個存在し、表面粗さSqが45nm〜95nmであって、膜成分中のフッ素(F)と炭素(C)とケイ素(Si)の質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)であることを特徴とする防汚性膜である。
本発明の第2の観点は、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、前記シリカゾルゲルを100質量%とするときに、前記シリカゾルゲル下記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は下記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基成分を0.5質量%〜20質量%とメチル基成分を0.2質量%〜10質量%含み、前記溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であることを特徴とする防汚性膜形成用液組成物である。
上記式(1−1)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また、Rf1は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。また上記式(1−1)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
上記式(1−2)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また上記式(1−2)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
本発明の第1の観点の防汚性膜では、膜表面に平均粒径0.1μm〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70個〜500個存在するため、膜表面凹凸が生じることで、油性マジックのふき取り性の効果を有する。また防汚性膜の表面粗さSqが45nm〜95nmであるため、良好な外観を維持しつつ油性マジックのふき取り性の効果を有する。更に膜成分中のフッ素(F)と炭素(C)とケイ素(Si)の質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)であるため、適切なフッ素含有量と適切な炭素含有量により、撥水並びに撥油性が付与され、良好な外観を維持しつつ油性マジックのふき取り性の効果を有する。
本発明の第2の観点の防汚性膜形成用液組成物では、液組成物がシリカゾルゲルを主成分とするため、高い強度の防汚性膜が得られ、かつ防汚性膜の基材への密着性が良好となる。また液組成物が上記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は上記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基成分を0.5質量%〜20質量%含むため、形成した防汚性膜に優れた撥水撥油性を付与することができる。またメチル基成分を0.2質量%〜10質量%含むため、油性マジックの汚れを簡便に落とすことができる。また溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であるため、防汚性膜を成膜性良く形成することができる。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
〔防汚性膜形成用液組成物の製造方法〕
本実施形態の防汚性膜形成用液組成物の製造方法を説明する。この製造方法では、先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、下記の一般式(2−1)又は下記の一般式(2−2)で示されるフッ素含有基成分としてのフッ素含有シランと、アルキレン基含有成分としてのエポキシ基含有シランと、メチル基成分としてのメチル基含有シランと、エタノール、2−プロパノール等のアルコールと、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素と、水とを混合して混合液を調製する。上記アルキレン基含有成分は、エポキシ基の開環反応によって得られるため、アルキレン基の元になるエポキシ基含有シランで混合する。次いでこの混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合してケイ素アルコキシドとエポキシ基含有シランとメチル基含有シランとを加水分解することにより加水分解物を調製する。この時点で、エポキシ基は、開環反応が生じ、アルキレン基が得られる。次にこの加水分解物に、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒とを混合して、シリカゾルゲルを含む防汚性膜形成用液組成物を製造する。
上記式(2−1)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また、Rf1は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。また上記式(2−1)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。更に上記式(2−1)中、R1及びZはアルコキシ基である(ただし、aは0〜3の整数)。
上記式(2−2)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また上記式(2−2)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。更に上記式(2−2)中、R1及びZはアルコキシ基である(ただし、aは0〜3の整数)。
上記ケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、硬度の高い防汚性膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
上記アルキレン基成分として用いるエポキシ基含有シランとしては、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン又は多官能エポキシシランが挙げられる。エポキシ基含有シランは、シリカゾル中のアルキレン基成分が0.5質量%〜20質量%になるように添加する。アルキレン基成分が下限値の0.5質量%未満では、形成した膜に虹色の干渉縞が依然として発生しやすく、上限値の20質量%を超えると、形成した膜の強度が低くなりやすい。アルキレン基成分を上記0.5質量%〜20質量%の範囲含むと、形成した膜は虹色の干渉縞を発生しにくくなるのは、アルキレン基の成分となるエポキシ基が、加水分解重合過程において開環し重合に寄与し、膜成分中にアルキレン基として含有されることで、乾燥過程にレベリング性が改善し膜厚さが均一化されることによる。
上記メチル基成分として用いるメチル基含有シランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、のモノマーや、JNC社製FM−0441、FM−4411、FM−DA26、信越化学工業社製KR−500等メチル基含有オリゴマー、重合体が挙げられる。メチル基成分は、シリカゾルゲル中に0.2質量%〜10.0質量%含まれる。0.2質量%未満では、油性マジックのふき取り性の改善が現れず、10.0質量%を超えると、膜外観が悪化する。
上記フッ素含有官能基成分は加水分解物のシリカゾルゲル100質量%に対して0.5質量%〜10質量%含まれる。好ましい含有割合は1.0質量%〜10質量%である。フッ素含有官能基成分が下限値の0.5質量%未満では、形成した膜に撥水撥油性の防汚性が生じにくく、上限値の10質量%を超えると、成膜性に劣り、防汚性の機能を発現しにくい。
フッ素含有官能基成分として用いるフッ素含有シランは、上記一般式(2−1)で示される。上記式(2−1)中の含窒素ペルフルオロアルキル基としては、より具体的には、下記式(3)〜(14)で示されるペルフルオロアミン構造を挙げることができる。
また、上記式(2−1)中のX1としては、下記式(15)〜(19)で示される構造を挙げることができる。なお、下記式(15)はエーテル結合、下記式(16)はエステル結合、下記式(17)はアミド結合、下記式(18)はウレタン結合、下記式(19)はスルホンアミド結合を含む例を示している。
ここで、上記式(15)〜(19)中、R2及びR3は炭素数が0から10の炭化水素基、R4は水素原子または炭素数1から6の炭化水素基である。R2及びR3の炭化水素基の例とは、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられ、R4の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基の他、フェニル基、ビニル基等も挙げられる。
また、上記式(2−1)中、R1は、加水分解基のメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
また、上記式(2−1)中、Zは、加水分解されてSi−O−Si結合を形成可能な加水分解性基であれば特に限定されるものではない。このような加水分解性基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアラルキルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基を適用することが好ましい。
ここで、上記式(2−1)で表されるペルフルオロアミン構造を有するフッ素含有シランの具体例としては、例えば、下記式(20)〜(34)で表される構造が挙げられる。なお、下記式(20)〜(34)中、Rはメチル基又はエチル基である。
またフッ素含有シランは、上記一般式(2−2)で示される。上記式(2−2)中のペルフルオロエーテル基としては、より具体的には、下記式(35)〜(41)で示されるペルフルオロエーテル構造を挙げることができる。
ここで、上記式(2−2)で表されるペルフルオロエーテル構造を有するフッ素含有シランの具体例としては、例えば、下記式(42)〜(49)で表される構造が挙げられる。
上記炭素数1〜4の範囲にあるアルコールは、この範囲にある1種又は2種以上のアルコールが挙げられる。このアルコールとしては、例えば、メタノール(沸点64.7℃)、エタノール(沸点約78.3℃)、プロパノール(n−プロパノール(沸点97−98℃)、イソプロパノール(沸点82.4℃))が挙げられる。特にメタノール又はエタノールが好ましい。これらのアルコールは、ケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。ケイ素アルコキシド及びエポキシ基含有シランに炭素数1〜4の範囲にあるアルコールを添加して、好ましくは10℃〜30℃の温度で5分〜20分間撹拌することにより混合液を調製する。
〔加水分解物の調製〕
上記調製された混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合する。このとき液温を好ましくは30℃〜80℃の温度に保持して好ましくは1時間〜24時間撹拌する。これにより、混合液中のケイ素アルコキシドとエポキシ基含有シランとメチル基含有シランとが加水分解される。有機酸、無機酸又はチタン化合物は加水分解反応を促進させるための触媒として機能する。有機酸としてはギ酸、シュウ酸が例示され、無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸が例示され、チタン化合物としてはテトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、乳酸チタン等が例示される。触媒は上記のものに限定されない。
炭素数1〜4の範囲にあるアルコールは、加水分解物を100質量%とするときに、20質量%〜98質量%含まれることが好ましい。このアルコールの割合を前記範囲に限定したのは、アルコールの割合が下限値未満では、ケイ素アルコキシドが、溶液中に溶解せずに分離しやすく、加水分解反応中に反応液がゲル化しやすい。一方、上限値を超えると、加水分解に必要な水、触媒量が相対的に少なくなるために、加水分解の反応性が低下して、重合が進みにくく、防汚性膜の密着性が低下しやすくなる。
加水分解物中のSiO2濃度(SiO2分)は1質量%〜40質量%であるものが好ましい。加水分解物のSiO2濃度が下限値未満では、重合が不十分であり、防汚性膜の密着性の低下やクラックの発生が起こりやすく、上限値を超えると、加水分解により生じた水の割合が相対的に高くなりケイ素アルコキシドが溶解しにくく、反応液がゲル化しやすくなる。
上述したように、本実施の形態のフッ素含有シランは、窒素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロアルキル基、又は酸素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロエーテル基をそれぞれ1以上有する構造となっていて、分子内のフッ素含有率が高いため、形成した防汚性膜に優れた撥水撥油性を付与することができる。
炭素数1〜4のアルコールとともに用いられるアルコール以外の溶媒としては、沸点が120℃以上160℃未満の第1溶媒と、沸点が160℃以上220℃以下の第2溶媒が挙げられる。第1溶媒は沸点が120℃未満の炭素数1〜4の範囲にあるアルコールと第2溶媒の中間の沸点を有することから、塗膜の乾燥時に前記アルコールと第2溶媒の沸点差に伴う塗膜の乾燥速度の大きな差を緩和する作用があり、第2溶媒は第1溶媒よりも高沸点であり、塗膜の乾燥速度が遅いことから塗膜の急激な乾燥を防止して急激な乾燥に伴う膜の不均一性を防止する作用があり、前記アルコールは沸点が最も低いことから塗膜の乾燥を速くする作用がある。このように沸点の異なる3種類の溶媒を用いることにより溶媒の乾燥速度を調整して、より的確にかつ効率的に塗膜を成膜性良く形成することができる。この他、アルコール以外の溶媒として、イオン交換水ような水、トルエン等の沸点が120℃未満の有機溶媒が挙げられる。
第1溶媒を例示すれば、2−メトキシエタノール(沸点125℃)、2−エトキシエタノール(沸点136℃)、2−イソプロポキシエタノール(沸点142℃)、1−メトキシ−2−プロパノール(沸点120℃)及び1−エトキシ−2−プロパノール(沸点132℃)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒が挙げられる。また第2溶媒を例示すれば、ジアセトンアルコール(沸点169℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、N−メチルピロリドン(沸点202℃)及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点173℃)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒が挙げられる。
〔防汚性膜形成用液組成物〕
本実施の形態の防汚性膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、このシリカゾルゲルを100質量%とするときに、シリカゾルゲルが上記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は上記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基を0.5質量%〜20質量%とメチル基成分を0.2質量%〜10質量%含み、上記溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であることを特徴とする。
上記シリカゾルゲルは、上記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分と炭素数2〜7のアルキレン基成分を含む。より具体的には、上述した式(3)〜(34)で示されるペルフルオロアミン構造を挙げることができる。
また上記シリカゾルゲルは、上記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分と炭素数2〜7のアルキレン基成分を含む。より具体的には、上述した式(35)〜(49)で示されるペルフルオロエーテル構造を挙げることができる。
本実施の形態の防汚性膜形成用液組成物がシリカゾルゲルを主成分として含むため、防汚性膜の基材への密着性に優れ、高い強度の防汚性膜が得られる。またシリカゾルゲルが上記一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造又は上記一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造であるため、撥水並びに撥油の効果がある。シリカゾルゲル中のフッ素含有官能基成分の含有割合が0.5質量%未満では形成した膜に撥水撥油性の防汚機能を付与できず、10質量%を超えると防汚性膜の弾き等が発生し成膜性に劣る。好ましいフッ素含有官能基成分の含有割合は0.6質量%〜5質量%である。またシリカゾルゲル中の炭素数2〜7のアルキレン基成分の含有割合が0.5質量%未満では、防汚性膜の干渉縞が発生する不具合があり、20質量%を超えると膜強度が不足する不具合がある。好ましい炭素数2〜7のアルキレン基成分の含有割合は1質量%〜10質量%である。一方、炭素数が8以上では膜強度が不足する不具合がある。好ましいアルキレン基の炭素数は3〜5である。またシリカゾルゲル中のメチル基成分の含有割合が1質量%未満では、油性マジックの汚れが簡便に落ちず、10質量%を超えると成膜後、膜が白化し、外観を損ねる。
〔防汚性膜の形成方法〕
本実施の形態の防汚性膜は、例えば、基材であるステンレス鋼(SUS)、鉄、アルミニウム等の金属板上、窓ガラス、鏡等のガラス上、タイル上、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック上、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム上に、上記液組成物を、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法等により塗布した後に、室温乾燥もしくは乾燥機等により室温〜130℃の温度で乾燥させることにより、形成される。
〔防汚性膜〕
本実施の形態の防汚性膜は、膜表面に平均粒径0.1μm〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70個〜500個存在する。粒がシロキサン骨格の成分であることは、走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)による元素分析により測定することができる。粒の平均粒径が0.1μm未満では、膜の凹凸が少過ぎるため、油性マジックのふき取り性に劣り、5.0μmを超えると膜表面が荒れて外観が悪化する。好ましい平均粒径は0.2μm〜4μmである。この平均粒径はレーザー顕微鏡にて観察した粒子サイズを計測し、算術平均して求められる。また100μm2当りの粒の数が70個未満では、膜の凹凸が少過ぎるため、油性マジックのふき取り性の改善が見られず、又は膜表面が荒れて外観が悪化する。500個を超えると、膜の凹凸が多過ぎるため、外観が悪化する。好ましい粒の個数は100個〜400個である。防汚性膜の表面粗さSqは45nm〜95nmである。この表面粗さが45nm未満では、凹凸が小さ過ぎるため、油性マジックのふき取り性に劣り、95nmを超えると、凹凸が大き過ぎるため、外観が悪化する。好ましい表面粗さは50nm〜80nmである。更に膜成分中のフッ素(F)と炭素(C)とケイ素(Si)の質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)である。この範囲内であれば、適切な撥水撥油性の膜が得られ、油性マジックのふき取り性と膜の良好な外観性を両立した効果を有し、フッ素が少過ぎる場合には、撥油性に劣り、滑り性も悪くなる。炭素が多過ぎる場合には、親油性が強くなり過ぎ、油性マジックの拭き取り性も悪化する。好ましい質量比は、F:C:Si=(0.6〜6):(5〜20):(77〜84)である。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン(TMOS)の3〜5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)8.01gと、メチル基含有シランのオリゴマータイプ(JNC社製、商品名:FM−4411)0.09gと、式(31)で表わされるフッ素含有シラン0.09gと、エポキシ基含有シランとして、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.81gと、エタノール(EtOH)(沸点78.3℃)10.5gとに、トルエン10.5gを有機溶媒として添加し、更にイオン交換水0.006gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒として酢酸0.03gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより、シリカゾル加水分解物Iを調製した。得られたシリカゾルゲルである加水分解物Iをエタノール、1−プロパノール、2−プロパノールの混合液(比率 85:10:5)で5倍に希釈して、液組成物が得られた。加水分解物I(シリカゾルゲル)を作るための液組成を表1に、シリカゾルゲルと溶媒を含む液組成物を表2に、加水分解物I(シリカゾルゲル)の組成を表3にそれぞれ示す。
<実施例2〜7及び比較例1〜2>
表1〜表3に示すように、ケイ素アルコキシド、フッ素含有シラン、アルキレン基含有シラン、メチル基含有シラン、水、エタノール(EtOH)、トルエン、触媒を用い、実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜2の加水分解物II〜IX及び液組成物を得た。
<比較試験及び評価>
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた9種類の液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.3)を用いて、厚さ2mm、たて150mm、よこ75mmのSUS基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.5〜1μmとなるように塗布し、9種類の塗膜を形成した。ここで、先ずバーコーターによる塗布時の成膜性を評価した。続いてすべての塗膜を室温にて、20時間乾燥して9種類の防汚性が付与された膜を得た。これらの膜について、膜表面の撥水性、撥油性、n−ヘキサデカンの転落性、膜の基材への密着性、油性マジック汚れの拭き取り性、膜表面の粒の有無と粒のサイズ、膜の表面粗さ及び膜成分中のフッ素とケイ素と炭素の質量比を次の方法で測定して評価した。これらの結果を表4に示す。なお、表4では、n−ヘキサデカンを単に「HD」と表記している。
(1) 成膜性
成膜性は、膜を目視にて評価した。膜全体に弾き、筋等の発生がなく、液組成物を均一に塗布できたものは「良好」とし、膜の一部に僅かに弾き、筋等が生じたものは「可」とし、膜全体に弾き、筋等が生じたものは「不良」とした。
(2) 膜表面の撥水性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の撥水性を評価した。
(3) 膜表面の撥油性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着したn−ヘキサデカンの接触角を測定した。静止状態でn−ヘキサデカンが膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値をn−ヘキサデカンの接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。膜の表面状態が凸凹になって荒れていると通常よりも高い値を示すため、接触角が高過ぎる場合には、成膜性が不良であるとの判断基準となる。
(4) n−ヘキサデカンの転落性試験
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに25℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、水平に置いたSUS基材上にシリンジからn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、基材を2度/分の速度で傾斜させ、n−ヘキサデカンの液滴が移動開始するときの基材の傾けた角度を測定した。(3)の接触角が低くてもこの転落角度が小さい方が防汚性が高いことを意味する。
(5) 膜の基材への密着性
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に塗膜を形成した。塗膜の上に、セロファンテープを貼り付けた後、テープを剥がしたときに、塗膜がテープ側に全く付かなかった場合を密着性が「良好」であるとし、塗膜の大部分がテープ側に貼り付き、SUS基材界面で塗膜が剥がれてしまった場合を密着性が「不良」であるとした。
(6) 油性マジック汚れの拭き取り性
塗膜の上に、油性マジック[寺西化学工業(株)製 マジックインキ(登録商標)NO.700ゴクホソ(黒)]で長さ3cmの直線を書き、30分後に、ベンコット(旭化成社製)にて、書いた部分を擦った。擦った回数が1〜2回で油性マジックが容易に拭き取れたものを「良好」とし、3回以上擦って油性マジックが拭き取れたものを「可」とし、何回擦っても拭き取れなかったもの、又は塗膜が剥離してしまったものを「不可」とした。
(7) 膜表面の観察
走査型レーザー顕微鏡(LEXT OLS4500:オリンパス社製)にて、100μm2当りの塗膜を観察し、塗膜100μm2当り70〜500個の粒が存在するか否か、また存在する場合には、粒の大きさ(平均粒径)を観察した。
(8) 膜の表面粗さ
走査型レーザー顕微鏡(LEXT OLS4500:オリンパス社製)にて、塗膜面の凹凸を計測し、表面粗さとして二乗平均平方根高さSq値を算出した。
(9) 膜成分中のフッ素とケイ素と炭素の質量比
塗膜を走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX、日立ハイテクノロジー社製、SU−1500)により塗膜の元素分析を行い、フッ素とケイ素と炭素の質量比を求めた。
表4から明らかなように、比較例1の液組成物では、シリカゾルゲル中、メチル基成分が存在しないため、膜表面に粒が存在せず、表面粗さSq値に関しても42nmと低く、表面の凹凸が少ないこと、並びに、F:C:Siの比率にて、C値が13.8と低いことから、撥水性と滑り性がやや悪化するため、油性マジック汚れの拭き取り性は「可」であった。それ以外の評価項目については、成膜性、塗膜の撥水撥油性、ヘキサデカンの転落角、膜の基材への密着性はすべて良好であった。
また比較例2の液組成物では、シリカゾルゲル中、メチル基成分が11.2質量%と多過ぎたため、成膜性が「不可」であり、膜表面に粒が存在したが、粒のサイズが8.0μmと大き過ぎた。また、粒子の数も60個と少ないこと、表面粗さSq値も120nmと大き過ぎることから、油性マジック汚れの拭き取り性は「可」であった。塗膜の撥水撥油性は良好であったが、ヘキサデカンの転落性がやや劣っていた。膜の基材への密着性は良好であった。
これに対して、表4から明らかなように、実施例1〜7の液組成物では、成膜性、塗膜の撥水撥油性、ヘキサデカンの転落角、膜の基材への密着性はすべて良好であった。また膜表面にはすべて粒が70個〜500個の範囲内で存在し、その平均粒径は0.1μm〜5.0μmの範囲内にあった。また、F:C:Siの比率も、(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)の範囲内にあった。この結果、油性マジック汚れの拭き取り性は良好であった。
本発明の防汚性膜形成用液組成物は、機械油を使用する工場、油が飛散する厨房、油蒸気が立ちこめるレンジフード、換気扇、冷蔵庫扉等において、油汚れを防止する分野及び事務機器等の汚れを防止する分野に用いられる。
本発明は、撥水撥油性を有し、特に膜に付着した油性マジックの汚れ(以下、単に「油性マジックの汚れ」ということもある。)を簡便に落とすことができる防汚性膜及びこうした防汚性膜を形成し得る液組成物に関するものである。
特許文献2に示される膜形成用液組成物を基材上に塗布して塗膜を形成した後、塗膜に油性マジックの汚れが付着して長期間経過したときに、油性マジックの汚れは、布で基材を複数回強く擦らないと、落とすことができないまだ解決すべき課題があった。
本発明の第1の観点の防汚性膜では、膜表面に平均粒径0.1μm〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70個〜500個存在するため、膜表面凹凸が生じることで、油性マジックの汚れのふき取り性(以下、単に「油性マジックの拭き取り性」という。)の効果を有する。また防汚性膜の表面粗さSqが45nm〜95nmであるため、良好な外観を維持しつつ油性マジックのふき取り性の効果を有する。更に膜成分中のフッ素(F)と炭素(C)とケイ素(Si)の質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)であるため、適切なフッ素含有量と適切な炭素含有量により、撥水並びに撥油性が付与され、良好な外観を維持しつつ油性マジックのふき取り性の効果を有する。
ここで、上記式(15)〜(19)中、R2及びR3は炭素数が0から10の炭化水素基、R4は水素原子または炭素数1から6の炭化水素基である。R2及びR3の炭化水素基の例とは、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられ、R4の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基の他、フェニル基も挙げられる。
<比較試験及び評価>
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた9種類の液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.3)を用いて、厚さ2mm、たて150mm、よこ75mmのSUS304基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.5〜1μmとなるように塗布し、9種類の塗膜を形成した。ここで、先ずバーコーターによる塗布時の成膜性を評価した。続いてすべての塗膜を室温にて、20時間乾燥して9種類の防汚性が付与された膜を得た。これらの膜について、膜表面の撥水性、撥油性、n−ヘキサデカンの転落性、膜の基材への密着性、油性マジック汚れの拭き取り性、膜表面の粒の有無と粒のサイズ、膜の表面粗さ及び膜成分中のフッ素とケイ素と炭素の質量比を次の方法で測定して評価した。これらの結果を表4に示す。なお、表4では、n−ヘキサデカンを単に「HD」と表記している。
(2) 膜表面の撥水性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の撥水性を評価した。
(3) 膜表面の撥油性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着したn−ヘキサデカンの接触角を測定した。静止状態でn−ヘキサデカンが膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値をn−ヘキサデカンの接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。膜の表面状態が凸凹になって荒れていると通常よりも高い値を示すため、接触角が高過ぎる場合には、成膜性が不良であるとの判断基準となる。
(4) n−ヘキサデカンの転落性試験
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに25℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、水平に置いたSUS304基材上にシリンジからn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、基材を2度/分の速度で傾斜させ、n−ヘキサデカンの液滴が移動開始するときの基材の傾けた角度を測定した。(3)の接触角が低くてもこの転落角度が小さい方が防汚性が高いことを意味する。
表4から明らかなように、比較例1の液組成物では、シリカゾルゲル中、メチル基成分が存在しないため、膜表面に粒が存在せず、表面粗さSq値に関しても42nmと低く、表面の凹凸が少ないこと、並びに、F:C:Siの比率にて、C値が13.8と低いことから、撥水性と滑り性がやや悪化するため、油性マジック汚れの拭き取り性は「可」であった。それ以外の評価項目については、成膜性、塗膜の撥水撥油性、n−ヘキサデカンの転落角、膜の基材への密着性はすべて良好であった。
また比較例2の液組成物では、シリカゾルゲル中、メチル基成分が11.2質量%と多過ぎたため、成膜性が「不可」であり、膜表面に粒が存在したが、粒のサイズが8.0μmと大き過ぎた。また、粒子の数も60個と少ないこと、表面粗さSq値も120nmと大き過ぎることから、油性マジック汚れの拭き取り性は「可」であった。塗膜の撥水撥油性は良好であったが、n−ヘキサデカンの転落性がやや劣っていた。膜の基材への密着性は良好であった。
これに対して、表4から明らかなように、実施例1〜7の液組成物では、成膜性、塗膜の撥水撥油性、n−ヘキサデカンの転落角、膜の基材への密着性はすべて良好であった。また膜表面にはすべて粒が70個〜500個の範囲内で存在し、その平均粒径は0.1μm〜5.0μmの範囲内にあった。また、F:C:Siの比率も、(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)の範囲内にあった。この結果、油性マジック汚れの拭き取り性は良好であった。

Claims (2)

  1. 膜表面に平均粒径0.1μm〜5.0μmのシロキサン骨格の成分を含む粒が100μm2当り70個〜500個存在し、表面粗さSqが45nm〜95nmであって、膜成分中のフッ素(F)と炭素(C)とケイ素(Si)の質量比が、F:C:Si=(0.5〜8):(14〜21):(75〜85)であることを特徴とする防汚性膜。
  2. シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、
    前記シリカゾルゲルを100質量%とするときに、前記シリカゾルゲルが下記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は下記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基成分を0.5質量%〜20質量%とメチル基成分を0.2質量%〜10質量%含み、
    前記溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であることを特徴とする防汚性膜形成用液組成物。
    上記式(1−1)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また、Rf1は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。また上記式(1−1)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
    上記式(1−2)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また、また上記式(1−2)中、X1は、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合、O−CO−NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
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