JP2020119845A - 硫化物系固体電解質粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
全固体電池の中でも全固体リチウムイオン電池は、リチウムイオンの移動を伴う電池反応を利用するためエネルギー密度が高いという点、また、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
本開示は、上記実情に鑑み、所望のイオン伝導度を維持しながら、微粒化することが可能な硫化物系固体電解質粒子の製造方法を提供することを目的とする。
リチウムとリンと硫黄を含む硫化物系固体電解質材料を準備する工程と、
炭化水素系化合物とエーテル系化合物との混合溶媒を準備する工程と
不活性ガス雰囲気下、前記混合溶媒中で前記硫化物系固体電解質材料に対して粉砕処理を行い、当該硫化物系固体電解質材料を微粒化する工程と、を含み、
前記混合溶媒の水分濃度が100質量ppm以上200質量ppm以下である、ことを特徴とする硫化物系固体電解質粒子の製造方法を提供する。
リチウムとリンと硫黄を含む硫化物系固体電解質材料を準備する工程と、
炭化水素系化合物とエーテル系化合物との混合溶媒を準備する工程と
不活性ガス雰囲気下、前記混合溶媒中で前記硫化物系固体電解質材料に対して粉砕処理を行い、当該硫化物系固体電解質材料を微粒化する工程と、を含み、
前記混合溶媒の水分濃度が100質量ppm以上200質量ppm以下である、ことを特徴とする硫化物系固体電解質粒子の製造方法を提供する。
しかし、硫化物系固体電解質は水分と反応してイオン伝導度が低下するため、硫化物系固体電解質の粉砕時に硫化物系固体電解質と混ぜる溶媒の水分濃度を管理する必要がある。
本研究者は、硫化物系固体電解質のイオン伝導度の低下を抑制しつつ、効率的に硫化物系固体電解質を粉砕可能な溶媒の種類及び水分濃度範囲を見出した。
以下、各工程について順に説明する。
硫化物系固体電解質材料を準備する工程は、リチウムとリンと硫黄を含む硫化物系固体電解質材料を準備する工程である。
本開示において硫化物系固体電解質材料は、微粒化される前の材料である。
硫化物系固体電解質材料は、リチウムとリンと硫黄を主成分とするものである。なお、「主成分とする」とは、硫化物系固体電解質材料におけるリチウム、リンおよび硫黄の総含有量が、50mol%以上であることを意味し、中でも、60mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましい。
硫化物系固体電解質材料としては、全固体電池の硫化物系固体電解質として用いられる材料を挙げることができる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S−P2S5、Li2S−SiS2、LiX−Li2S−SiS2、LiX−Li2S−P2S5、LiX−Li2O−Li2S−P2S5、LiX−Li2S−P2O5、LiX−Li3PO4−P2S5、及びLi3PS4等が挙げられる。なお、上記「Li2S−P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。また、上記LiXの「X」は、ハロゲン元素を示す。
また、硫化物系固体電解質が、LiX(X=F、Cl、Br、I)を含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiXの割合は、例えば、1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。本開示においては、上記XがCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、BrおよびIであることがより好ましい。硫化物系固体電解質粒子のLiイオン伝導度をより向上させることができるからである。LiXが2種以上含まれる場合、2種以上のLiXの混合比率は特に限定されない。
硫化物系固体電解質の組成物の具体例としては、15LiBr−10LiI−75(0.75Li2S−0.25P2S5)が挙げられる。なお、当該組成物中の数値はモル比である。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調製することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
硫化物系固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の硫化物系固体電解質を用いる場合、2種以上の硫化物系固体電解質を混合してもよい。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
ガラスセラミックスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
硫化物系固体電解質材料の平均粒子径(D50)は、例えば、取扱い性が良いという観点から5μm〜200μmの範囲内であってもよく、10μm〜100μmの範囲内であってもよい。
混合溶媒を準備する工程は、炭化水素系化合物とエーテル系化合物との混合溶媒を準備する工程である。
混合溶媒の水分濃度を100質量ppm〜200質量ppmに制御する方法は、特に限定されず、混合溶媒に吸着剤を投入して水分濃度を調節する方法や、混合溶媒を蒸留して水分濃度を調節する方法等が挙げられる。また、混合溶媒は上記範囲内の水分濃度を有する混合溶媒として市販されているものを用いてもよい。
エーテル系化合物は、硫化物系固体電解質材料の粉砕促進剤として機能し、混合溶媒中のエーテル系化合物の含有割合が多いほど、硫化物系固体電解質材料を細かく粉砕できるが、混合溶媒中のエーテル系化合物の含有割合が40質量%を超えると、硫化物系固体電解質材料がエーテル系化合物と反応し、硫化物系固体電解質材料が劣化する恐れがある。
微粒化工程は、不活性ガス雰囲気下、前記混合溶媒中で前記硫化物系固体電解質材料に対して粉砕処理を行い、当該硫化物系固体電解質材料を微粒化する工程である。
微粒化工程は、硫化物系固体電解質材料が混合溶媒中に分散した分散液を調製して、当該分散液に対して粉砕処理を行ってもよい。
微粒化工程において混合溶媒を用いて硫化物系固体電解質材料を湿式粉砕することで、粉砕時における硫化物系固体電解質材料の造粒、および、容器などの壁面に硫化物系固体電解質材料が付着することを抑制できる。
不活性ガスとしては、窒素ガス、及びアルゴンガス等が挙げられる。
粉砕用ボールのボール径(φ)としては、例えば、0.05mm〜2mmの範囲内であることが好ましく、0.3mm〜1mmの範囲内であることがより好ましい。上記ボール径が小さすぎると、粉砕用ボールのハンドリングが難しく、コンタミの原因となる可能性があるからであり、上記ボール径が大きすぎると、硫化物系固体電解質材料を所望の粒子径に粉砕することが困難になる可能性があるからである。
また、遊星型ボールミルを行う際の台盤回転数としては、例えば、100rpm〜400rpmの範囲内であることが好ましく、150rpm〜300rpmの範囲内であることがより好ましい。台盤回転数が100rpm未満では硫化物系固体電解質材料を所望の粒子径に粉砕することが困難になる可能性があり、台盤回転数が400rpmを超えると硫化物系固体電解質材料を過粉砕して硫化物系固体電解質粒子が凝集してしまう可能性がある。
また、遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、例えば、0.5時間〜15時間の範囲内であることが好ましく、1時間〜10時間の範囲内であることがより好ましい。
本開示において、粒子の平均粒子径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒子径の小さい粒子から順に粒子を並べた場合に、粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
本開示の製造方法で得られる硫化物系固体電解質粒子は、全固体電池の正極、負極、及び固体電解質層からなる群より選ばれる少なくとも1つを構成する材料として用いられることが全固体電池の性能を向上させる観点から好ましい。
Ar雰囲気中でZrO2ボール(φ0.3mm)40g、硫化物系固体電解質材料(15LiBr−10LiI−75(0.75Li2S−0.25P2S5)2g、ヘプタン5g、ジ−n−ブチルエーテル3gを、50cm3のジルコニアポットに投入して分散液を得た。そして、ジルコニアポットを当該ジルコニアポット内の雰囲気がAr雰囲気となるように密閉した。
用意したヘプタン5gとジ−n−ブチルエーテル3gの混合溶媒の水分濃度をカールフィッシャー水分計(平沼産業製、AQ−300)で測定した結果100質量ppmであった。
その後、このジルコニアポットを、遊星型ボールミル(フリッチュ製、P−7)に取り付け、台盤回転数200rpm、10時間の条件で湿式メカニカルミリングを行うことにより硫化物系固体電解質材料の粉砕を行い、スラリーを得た。
その後、ホットプレートにて120℃、3時間の条件でスラリーの乾燥を行い、粉砕した硫化物系固体電解質粒子を得た。このときの平均粒子径をレーザー回折式粒度分布計(マイクロトラック・ベル製、MicrotracII)で測定した結果、D50=0.376μmであった。
得られた硫化物系固体電解質粒子をホットプレートにて200℃、3時間の条件で熱処理を行った。熱処理を行った硫化物系固体電解質粒子を圧粉し、面積1cm2、厚さ約0.5mmのペレットを作製し、交流インピーダンス測定により硫化物系固体電解質粒子のLiイオン伝導度を算出した。
なお、交流インピーダンスの測定にはソーラトロン1260を用い、測定条件は、印加電圧5mV、測定周波数域0.01MHz〜1MHzとし、100kHzの抵抗値を読み、ペレットの厚さで補正し、Liイオン伝導度へ換算した。
実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(実施例1のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)を算出した結果、0.955であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が150質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.359μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(実施例2のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は1.000であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が200質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.206μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(実施例3のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は0.974であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が75質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.578μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(比較例1のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は0.965であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が250質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.212μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(比較例2のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は0.929であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が350質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.225μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(比較例3のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は0.922であった。
用いたヘプタンとジ−n−ブチルエーテルの混合溶媒の水分濃度が500質量ppmであること以外は実施例1と同様に硫化物系固体電解質粒子を製造した。得られた硫化物系固体電解質粒子は、平均粒子径D50=0.244μm、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比(比較例4のLiイオン伝導度/実施例2のLiイオン伝導度)は0.903であった。
表1に示すように、混合溶媒水分濃度が75質量ppmでは、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比は0.965と高いものの、平均粒子径が0.578μmと大きい。
混合溶媒水分濃度が100質量ppm〜200質量ppmでは、実施例2を基準としたLiイオン伝導度の比が0.955以上を維持しながら、平均粒子径が0.376μm以下と小さくなることが分かった。
一方、混合溶媒水分濃度が250質量ppm以上では、平均粒子径は小さいもののLiイオン伝導度が低く、所望のLiイオン伝導度が得られないことが分かった。
また、混合溶媒の水分濃度が250質量ppm以上の場合、硫化物系固体電解質粒子の所望のLiイオン伝導度が得られなかったため、徐々に硫化物系固体電解質粒子の劣化反応が進むと考えられる。
Claims (1)
- 硫化物系固体電解質粒子の製造方法であって、
リチウムとリンと硫黄を含む硫化物系固体電解質材料を準備する工程と、
炭化水素系化合物とエーテル系化合物との混合溶媒を準備する工程と
不活性ガス雰囲気下、前記混合溶媒中で前記硫化物系固体電解質材料に対して粉砕処理を行い、当該硫化物系固体電解質材料を微粒化する工程と、を含み、
前記混合溶媒の水分濃度が100質量ppm以上200質量ppm以下である、ことを特徴とする硫化物系固体電解質粒子の製造方法。
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