本発明の第一実施形態に係る成形品は、樹脂含有組成物を成形してなる成形品であって、本体部と、本体部の縁に設けられた壁部と、を有する。以下では、成形品の成形材料である樹脂含有組成物について説明する。
樹脂含有組成物は、
樹脂と、下記化学式(1):
で表される化合物と、を含む。
ここで、上記式(1)中、Arは、それぞれ独立して、Arが結合する窒素原子および炭素原子とともに、芳香族複素環を形成し、R1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロアリール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロアリール基であり、Xは、窒素原子、C−電子求引性基、またはC−Hである。
以下、本明細書において、式(1)で表される化合物を本化合物とも称する。
以下、本実施形態について詳細に説明する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
[樹脂]
本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂は、特に限定されるものではなく、成形体を形成した際に要求される製品品質等を考慮して、適宜選択して用いることができる。例えば、当該樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。成形体に使用する場合には、熱硬化樹脂は溶融混練時に硬化する可能性があることから、本発明に係る樹脂組成物が含有する樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。本発明において用いられる樹脂としては、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合には、相溶性の高い樹脂同士を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明において用いられる樹脂としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂;メラミン系樹脂やユリア樹脂等のアミノ系樹脂;フェノール系樹脂;不飽和ポリエステル系樹脂等の硬化性樹脂が挙げられる。
中でも、本化合物の分散性が高いことから、樹脂としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましく、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、および塩化ビニル系樹脂が好ましく、本化合物と組み合わせることでより優れた引張疲労特性を発現することからポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンや環状カーボネートなどのカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合物として使用することができる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,14−テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16−ヘキサデカンジオール、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−1−フェニルエタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}プロパン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ビフェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル}プロパン、2,2−ビス{3−t−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−4−メチルペンタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2−ビス{3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}フルオレン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、1,3−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−5,7−ジメチルアダマンタン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ホスゲンなどのカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメートなどのハロホルメートなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルもまた、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたは1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンのような三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また、ポリカーボネート樹脂を2種またはそれ以上混合して得られた混合物であってもよい。
ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂である。より好ましくは、芳香族ジヒドロキシ化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンを用いた芳香族ポリカーボネート樹脂である。
ポリカーボネート樹脂としては市販品を用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、12,000〜30,000であることが好ましく、14,000〜27,000であることがより好ましく、15,000〜25,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、組成物として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、塩化メチレンを溶媒として、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:[η]=1.23×10−4Mv0.83の式から算出される。
[化学式(1)で表される化合物]
下記化学式(1):
で表される化合物について説明する。本化合物を樹脂組成物に用いることで得られる成形品が優れた引張疲労特性を発現する。
(Ar)
式(1)中、Arは、Arが結合する窒素原子および炭素原子とともに、芳香族複素環を形成する。以下、Ar、Arが結合する窒素原子および炭素原子が形成する芳香族複素環を単にArによる芳香族複素環とも称する。
Arによる芳香族複素環としては、芳香性を有するものであれば特に限定されるものではない。Arによる芳香族複素環としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環などの5員環;ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環などの6員環;イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、キノキサリン環等の複数個の5員環または6員環が縮合してなる縮合芳香環が挙げられる。縮合芳香環としては、縮環数が2または3であることが好ましく、合成上の煩雑さなどの点から2であることがより好ましい。
Arによる芳香族複素環は、置換基を有していないものであってもよく、1個または複数個の置換基を有していてもよい。当該芳香環が有する置換基としては、化合物の効果を阻害しない任意の基であればよい。なお、本明細書において、置換基と同種の置換基が当該置換基に置換されることはない。例えば、アルキル基の置換基がアルキル基となることはない。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アルキルスルフォニル基、ハロゲノスルフォニル基、チオール基、アルキルチオ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、アシル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基、アリール基およびヘテロアリール基等が挙げられる。
Arによる芳香族複素環上に存在しうる置換基としては、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキルチオ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルスルフォニル基、フッ素、塩素、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがさらにより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、炭素数1〜4の分岐鎖アルキル基であることが最も好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。これらの基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基(tert−ブチル基)、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、イソプロピニル基、1−ブチニル基、イソブチニル基等が挙げられる。
アルキルスルフォニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミドカルボニル基、アルキルカルボニルアミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、及びトリアルコキシシリル基におけるアルキル基部分としては、前記アルキル基と同様のものが挙げられる。例えば、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。また、例えば、モノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等を挙げることができ、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ブチルエチルアミノ基等を挙げることができる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾール基等の5員環ヘテロアリール基;ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の6員環ヘテロアリール基;インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基などの縮合ヘテロアリール基を挙げることができる。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基は、無置換の基であってもよく、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。好ましくは無置換である。
Arによる芳香族複素環上に存在しうる置換基数は、特に限定されるものではないが、1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
本発明の効果が一層奏されることから、Arによる芳香族複素環は、下記化学式(2−1)〜(2−13)からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記化学式(2−1)〜(2−13)中、R3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基である。ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基の例示としては、上記Arによる芳香族複素環の置換基の欄に記載したものと同様である。中でも、初期の引張特性向上の観点から、R3は、炭素原子数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがさらにより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、炭素数1〜4の分岐鎖アルキル基であることが最も好ましい。
上記化学式(2−1)〜(2−3)中、nは、それぞれ独立して、0または1〜4の整数である。中でも、初期の引張特性向上の観点から、n=0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、1であることがさらにより好ましい。
上記化学式(2−4)〜(2−6)中、mは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数である。中でも、初期の引張特性向上の観点から、m=0、1または2であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
上記化学式(2−7)〜(2−9)中、pは、それぞれ独立して、0または1〜6の整数である。中でも、初期の引張特性向上の観点から、p=0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、1であることがさらにより好ましい。
上記化学式(2−10)〜(2−13)中、oは、それぞれ独立して、0または1〜5の整数である。中でも、初期の引張特性向上の観点から、o=0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
中でも、初期の引張特性向上の観点から、Arによる芳香族複素環は、化学式(2−1)、(2−4)、(2−9)および(2−11)からなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、化学式(2−1)、(2−9)および(2−11)からなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、化学式(2−9)であることがさらにより好ましい。
また、本発明の好適な一実施形態は、Arによる芳香族複素環が、化学式(2−1)、(2−9)および(2−11)からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ、R2における置換基が炭素原子数3〜20の直鎖アルコキシ基である。
式(1)に存在する2つのArは同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。
(R1)
R1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロアリール基である。ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはヘテロアリール基の具体的例示は、上記Arによる芳香族複素環の置換基の欄に記載したものと同様である。
4つのR1は同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。
アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基に存在しうる置換基としては、化合物の効果を阻害しない任意の基であればよい。具体的な例示としては、上記Arによる芳香族複素環の置換基の欄に記載したものと同様である。
R1は、引張疲労特性のさらなる向上の観点からは、ハロゲン原子、あるいは置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、あるいは置換または非置換のフェニル基、ナフチル基、インデニル基またはビフェニル基であることがより好ましく、フッ素原子またはフェニル基であることが特に好ましい。
(R2)
R2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数2〜20のヘテロアリール基である。
R2は、引張疲労特性のさらなる向上の観点からは、置換の炭素原子数6〜20のアリール基、または置換の炭素原子数2〜20のヘテロアリール基であることが好ましく、置換の炭素原子数6〜20のアリール基であることがより好ましく、置換のフェニル基、ナフチル基、インデニル基またはビフェニル基であることがさらにより好ましく、置換のフェニル基であることが特に好ましい。
アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはヘテロアリール基に存在しうる置換基としては、化合物の効果を阻害しない任意の基であればよい。具体的な例示としては、上記Arによる芳香族複素環の置換基の欄に記載したものと同様である。中でも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはヘテロアリール基に存在しうる置換基としては、アルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素原子数3〜20のアルコキシ基であることがさらにより好ましく、樹脂との相互作用や本化合物同士のπ−π相互作用が高くなる観点や化合物物性の観点から、炭素原子数3〜20の直鎖アルコキシ基であることが特に好ましく、炭素原子数6〜12の直鎖アルコキシ基であることが最も好ましい。特にアルキル鎖が長くなる場合は、アルキル鎖が分岐しているとかさ高くなり、アルキル鎖同士の疎水相互作用が弱くなることが考えられるため、本化合物に基づく場合は、直鎖の方がより好ましいと考えられる。
2つのR2は同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。
(X)
Xは、窒素原子、C−電子求引性基、またはC−Hである。
電子求引性基としては、例えば、トリフルオロメチル基などのようなハロゲン化メチル基;ニトロ基;シアノ基;アリール基;ヘテロアリール基;アルキニル基;アルケニル基;カルボキシル基、アシル基、カルボニルオキシ基、アミド基、アルデヒド基などのカルボニル基を有する置換基;スルホキシド基;スルホニル基;アルコキシメチル基;アミノメチル基などが挙げられ、これらの電子求引性基を置換基として持つアリール基やヘテロアリール基なども使用することができる。これらの電子求引性基の中でも、引張疲労特性を一層向上させる観点からは、強い電子求引性基として機能し得るトリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、スルホニル基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
引張疲労特性を一層向上させる観点からは、Xが、C−電子吸引性基であることが好ましい。
本発明の好適な一実施形態は、Arによる芳香族複素環が、化学式(2−9)であり、Xが、C−電子吸引性基である。
[樹脂含有組成物]
樹脂含有組成物において、引張疲労特性を一層向上させることから、樹脂および本化合物の含有質量比が、樹脂:本化合物=1:0.000001から1:0.01までの範囲であることが好ましく、1:0.000005から、1:0.001までの範囲であることがより好ましく、1:0.00001から1:0.0005までの範囲であることがさらに好ましい。
樹脂含有組成物には公知の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、特に限定されるものではないが、酸化防止剤(リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、離型剤(グリセリン脂肪酸エステル等)、滑剤(パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等)、着色剤(酸化チタン、染料、顔料等)、充填剤(炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カーボンブラック、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等)、流動性改良剤、展着剤(エポキシ化大豆油、流動パラフィン等)、難燃剤などが挙げられる。また、樹脂が硬化性樹脂であり、硬化性樹脂組成物として用いる場合には、公知の硬化剤、硬化促進剤、または光重合開始剤等を添加してもよい。
本発明の樹脂含有組成物の製造方法は、各成分を反応容器内で混合ないし混練する工程を有する。混合はバッチ式であっても、連続式であってもよい。
さらに、本発明の樹脂含有組成物の製造方法は、必要に応じて各成分を予備混合して予備混合物を得る工程と、各成分ないし必要に応じて得られた予備混合物を溶融混合ないし溶融混練して、溶融物を得る工程を有する方法が挙げられる。この方法は主に樹脂が熱可塑性樹脂である場合に使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂含有組成物の製造方法において、高濃度で本化合物を含むマスターバッチを製造してから、得られたマスターバッチを樹脂で希釈して、本発明の樹脂含有組成物を製造することもできる。この方法も主に樹脂が熱可塑性樹脂である場合に使用することが好ましい。マスターバッチを用いた本発明の樹脂含有組成物の製造方法は、必要に応じて各成分を予備混合して予備混合物を得る工程と、各成分ないし必要に応じて得られた予備混合物を溶融混合ないし溶融混練してマスターバッチを得る工程と、さらに、得られたマスターバッチに樹脂を加えて溶融混合ないし溶融混練して溶融物を得る工程を有する。マスターバッチ中の本化合物の割合は、樹脂および本化合物の含有質量比が、樹脂:本化合物=1:0.00001から1:0.1までの範囲であることが好ましく、1:0.00005から0.01までの範囲であることがより好ましく、1:0.0001から1:0.005までの範囲であることがさらに好ましい。
前記予備混合の方法としては公知の方法でよく、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等の混合機を用いてドライブレンドを行う方法があげられる。溶融混合ないし溶融混練する方法としては公知の方法が挙げられ、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で、樹脂を加熱し、樹脂を溶融させた状態で、各成分を混合ないし混練する方法が挙げられる。その際、樹脂の加熱温度としては、樹脂の溶融温度以上であれば特に限定されない。
前記溶融物の形態は本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、ストランド状に押出した後に切断してペレット状、チップ状などの顆粒状に賦形することもできる。
本発明の成形品は、前記樹脂含有組成物を成形してなる。また本発明の成形品の製造方法は、前記樹脂含有組成物を成形する工程を有する。成形方法は、公知の方法であれば特に限定されない。樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、前記樹脂含有組成物を、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、引抜成形、ブロー成形、3D造形法(熱溶解積層法、インクジェット粉末積層法)などにより溶融成形する方法が挙げられ、このうち射出成形が好ましい。射出成形については一般的に知られている方法を用いることができ、射出成形機の種類は特に制限されない。例えば、プランジャ式、プリプラ式、インラインスクリュ式等の射出成形機が使用できる。また、射出成形条件も特に制限されない。
なお、溶融成形の際の樹脂の加熱温度は、上記樹脂含有組成物の製造方法と同様であってよい。また、樹脂が硬化性樹脂であって樹脂含有組成物が液状、または適宜、溶剤を用いてワニス化されたものである場合、ポッティング、キャスティング、基材に含浸、または金型に注型して、加熱ないし活性エネルギー線照射により硬化する方法や3D造形法(光造形法、インクジェット粉末積層法)等が挙げられ、また、樹脂が硬化性樹脂であって樹脂含有組成物が固形の場合、溶融後注型、あるいはトランスファー成形などにより成型し、さらに加熱ないし活性エネルギー線照射により硬化するという方法が挙げられる。
[成形品]
次に、成形品10について説明する。図1〜図3は、第一実施形態に係る成形品10を示す図、図4〜図7は、第一実施形態に係る成形品10の使用方法を示す図である。なお、図面に付されたX軸は成形品10の短手方向を示し、Y軸は成形品10の長手方向を示し、Z軸は成形品10の表面21側が向く方向を示している。
図1〜図3を参照して、第一実施形態に係る成形品10は、上記樹脂含有組成物を成形してなる成形品である。第一実施形態に係る成形品10は、溶融チョコレート40(流動性材料に相当する)を固化した状態に成形するために使用されるチョコレート成形型10A(成形型に相当する)である。成形品10は、板形状を有する本体部20と、本体部20の縁23(23a、23b、23c、23dの総称)に設けられ本体部20に対して交差する方向に向けて突出する壁部30(30a、30b、30c、30dの総称)と、を有する。
本体部20は、Z軸方向に沿って平面視した面50(図5を参照)が矩形形状を有する。本体部20の縁23は、短手方向(X軸)に伸びて向かい合う2つの縁23a、23cと、長手方向(Y軸)に伸びて向かい合う2つの縁23b、23dと、を有する。本体部20は、表面21側から裏面22側に向けて窪んだ凹所25を有する。凹所25は、溶融チョコレート40が受け入れられる。溶融チョコレート40は、凹所25に充填するために、本体部20の表面21側に供給される。本体部20の表面21は、供給された溶融チョコレート40のうち余剰分をスクレーパ等(図示せず)によって除去するために平坦面に形成されている。凹所25の形状および個数は特に限定されない。凹所25は、製品であるチョコレートの外形形状に対応した内面形状を有する。図示する凹所25は、長溝形状を有し、底縁がアール面に形成されている。凹所25は、長手方向(Y軸)に12個、短手方向(X軸)に3個の合計36個形成されている。
壁部30は、本体部20の縁23のそれぞれに、本体部20の裏面22側から伸びるように設けられている。図3に示すように、壁部30aは、本体部20の縁23aに連続して伸びている。壁部30aの外側面は、本体部20の縁23aを含む外側面に連続して形成されている。同様に、壁部30b、30c、30dは、それぞれ、本体部20の縁23b、23c、23dに連続して伸びている。壁部30b、30c、30dの外側面は、それぞれ、本体部20の縁23b、23c、23dを含む外側面に連続して形成されている。それぞれの壁部30a、30b、30c、30dは、本体部20に対して交差する方向に向けて突出する。
ここに「本体部20に対して交差する方向に向けて突出」とは、本体部20を平面視した面50(図5を参照)と平行な方向に壁部30が突出せず、壁部30が面50と交差するように突出していることを意味する。壁部30と面50とがなす角度θ(図3を参照)は、壁部30と面50とが交差する関係にある限りにおいて特に限定されず、鈍角、直角、あるいは鋭角でもよい。但し、成形品10を樹脂成形するときの型抜きを考慮すると、角度θは、抜き勾配の存在によって鈍角となる。壁部30の肉厚およびZ軸方向の高さ寸法は、要求される耐荷重に応じて、適切な断面係数となるように適宜選択される。
本体部20の縁23に壁部30を設けることによって、成形品10の外周部分の断面係数が大きくなり、図中Z軸方向に沿って作用する引張り荷重に対する剛性が高くなる。したがって、成形品10は、成形材料である樹脂含有組成物が高い引張疲労特性を備えることと、本体部20に壁部30を備えることとが相まって、引張り荷重に対する強度が高い。
隣り合う壁部30aと30b、30bと30c、30cと30d、30dと30aは、連続するように一体的に形成され、連結エッジ31を形成している。隣り合う壁部30が連結エッジ31を介して連結されていることから、連結エッジ31の部分に図中Z軸方向に沿う引張り荷重が作用しても、隣り合う壁部30同士が拡がり難い。この点からも、成形品10は、引張り荷重に対する強度が高い。
次に、成形品10の使用方法を説明する。
第一実施形態に係る成形品10は、チョコレート成形型10Aである。チョコレートは、複数の製造工程を経て製造される。チョコレートの製造工程は、温度調整された溶融チョコレート40を本体部20の凹所25に充填する工程(充填工程)、チョコレート成形型10Aを冷却コンベアに載せて冷やし、凹所25に受け入れた溶融チョコレート40を固化する工程(冷却工程)、固化したチョコレートを凹所25から剥がす工程(型抜き工程)、製品への異物の混入や製品形状の不良品を検出する検査工程、および製品をパッケージ化する包装工程などを含んでいる。
図4を参照して、成形品10は、チョコレート成形型10Aとして、本体部20の凹所25に受け入れた溶融チョコレート40を固化した状態に成形するために使用される。凹所25に溶融チョコレート40を充填した後の余剰の溶融チョコレート40は、スクレーパ等(図示せず)によって除去される。
次に、引張り荷重が作用する環境下において成形品10を使用する方法について説明する。
本化合物は、樹脂に添加すると、成形品10の引張疲労特性が向上する。そのため、第一実施形態に係る成形品10は、引張り荷重が作用する環境下において使用する用途において、特に有用である。
図5を参照して、本体部20を平面視した面50は、矩形形状を有する。面50の4つの角部61〜64を、図中左手奥側から反時計回り方向に順に、第1角部61、第2角部62、第3角部63、第4角部64と称する。第1角部61と第3角部63とを結ぶ第1対角線51が形成され、第2角部62と第4角部64とを結ぶ第2対角線52が形成される。一対の対角線51、52(第1対角線51および第2対角線52)の交点を中心点53とする。成形品10を使用する場合には、第2対角線52(一方の対角線に相当する)を含む領域に含まれ中心点53を境に反対側に位置する部位54a、54bのそれぞれにおいて、成形品10を拘束した状態とする。そして、第1対角線51(他方の対角線に相当する)を含む領域に含まれ中心点53を境に反対側に位置する部位55a、55bのそれぞれにおいて、成形品10に引張り荷重Wを同じ方向に作用させる。
ここに「対角線51、52を含む領域」とは、対角線51、52の上のみならず、対角線51、52の周囲に拡がる一定の範囲を含む領域を意味する。「一定の範囲」は、対角線51、52に対して直交する方向に特定寸法(例えば、数mm)だけ拡がる範囲を指すものではない。「一定の範囲」は、一方の部位において成形品10を拘束することができ、他方の部位において成形品10に所望の引張り荷重Wを作用させることができる範囲であればよい。
また、「同じ方向」としたのは、一の部位55aにおいては引張り荷重Wが図中上方に向かう方向に作用し、他の部位55bにおいては引張り荷重Wが図中下方に向かう方向に作用する形態を除外する意図である。引張り荷重Wは、2か所の部位55a、55bにおいてともに、図中上方に向かう方向に作用させ、または図中下方に向かう方向に作用させる。2か所の部位55a、55bのそれぞれにおいて引張り荷重Wを作用させる方向は、必ずしも平行である必要はなく、交差する方向であってもよい。
上記の使用方法によって、成形品10における引張り荷重Wに対する強度を高めた効果を好適に発揮させることができる。
第2対角線52を含む領域の両端部のそれぞれにおいて、成形品10を拘束し、第1対角線51を含む領域の両端部のそれぞれにおいて、成形品10に引張り荷重Wを作用させることが好ましい。一方の部位54a、54bにおいて成形品10を簡単に拘束することができ、他方の部位55a、55bにおいて成形品10に所望の引張り荷重Wを簡単に作用させることができるからである。
図6を参照して、上述した成形品10の使用方法を具現化した装置について説明する。
チョコレートの製造工程の型抜き工程において、成形品10は、型抜き装置100によって、固化した溶融チョコレート40を凹所25から剥がすために引張り荷重Wが作用される。型抜き装置100は、成形品10を拘束した状態とする2つの拘束治具110と、成形品10に引張り荷重Wを同じ方向に作用させる2つのアクチュエータ120と、を有する。
2つの拘束治具110は、第2角部62および第4角部64のそれぞれにおいて成形品10を拘束することが可能に配置されている。拘束治具110は、成形品10を搬送する搬送テーブル(図示せず)の上方に固定具(図示せず)によって固定されている。拘束治具110は、アングル形状を有し、XY平面において搬送テーブルに向かい合いように配置される第1プレート111と、XZ平面において成形品10の側面に向かい合いように配置される第2プレート112と、を有する。搬送テーブルの上面と拘束治具110の第1プレート111との間のZ軸方向の高さ寸法は、成形品10の高さ寸法よりも若干大きい。成形品10は、X軸方向に沿って順次搬送され、所定の位置において搬送が停止され位置決めされる。位置決めされた成形品10は、第2角部62および第4角部64のそれぞれが、拘束治具110の第1プレート111の下側に位置する。
2つのアクチュエータ120は、第1角部61および第3角部63のそれぞれにおいて成形品10に引張り荷重Wを同じ方向に作用させることが可能に配置されている。アクチュエータ120は、成形品10の搬送路の下方に配置されている。アクチュエータ120は、圧縮空気などの流体圧によって作動ロッド121を進退駆動する流体圧シリンダ122と、作動ロッド121の先端に取り付けられたパッド123とを有する。パッド123は、壁部30の下端面32に接触する。位置決めされた成形品10は、第1角部61および第3角部63のそれぞれが、アクチュエータ120のパッド123の上側に位置する。
図5の説明図をも参照して、型抜き装置100は、2つの拘束治具110によって、第2対角線52上において中心点53を境に反対側に位置する部位54a、54bのそれぞれにおいて、成形品10を拘束した状態とすることができる。2つのアクチュエータ120によって、第1対角線51上において中心点53を境に反対側に位置する部位55a、55bのそれぞれにおいて、成形品10に引張り荷重Wを同じ方向に作用させることができる。図示例の型抜き装置100は、特に、第2対角線52の両端部のそれぞれにおいて、成形品10を拘束し、第1対角線51の両端部のそれぞれにおいて、成形品10に引張り荷重Wを作用させることができる。
上記構成の型抜き装置100によって型抜きを実施するとき、アクチュエータ120を1回または複数回作動させる。アクチュエータ120の作動に伴って、成形品10の第1角部61および第3角部63が上昇および下降する。このとき、成形品10の第2角部62および第4角部64の周辺部分が拘束治具110に接触することによって、成形品10が拘束された状態となる。図6に破線によって示すように、成形品10の第1角部61および第3角部63がZ軸方向に持ち上げられ、成形品10に引張り荷重Wが作用する。これによって、固化した溶融チョコレート40は、凹所25から剥がされる。その後、成形品10は、型抜き装置100から搬出される。
図7を参照して、型抜き装置100から搬出された成形品10は、表裏が反転される。成形品10は、ハンマー棒130によって裏面22側が1回または複数回叩かれる。ハンマー棒130は、壁部30の下端面32(図7においては上方側に示される)に接触する。ハンマー棒130は、接続されたアクチュエータ(図示せず)によって上下駆動される。成形品10は、引張り荷重Wに対する強度が高められているため、ハンマー棒130からの荷重が作用しても破損等の不具合が生じることがない。成形品10が叩かれることによって、固化したチョコレートが凹所25から下方に落下する。その後、チョコレートは、次工程(検査工程や包装工程など)に順次送られる。
上述したように、固化したチョコレートを離型する場合、チョコレート成形型10Aとしての成形品10にひねりの動作を加え、裏面22側から叩く動作を加えることが必要である。成形品10は、成形材料である樹脂含有組成物が高い引張疲労特性を備えることと、本体部20に壁部30を備えることとが相まって、引張り荷重Wに対する強度が高い。このため、チョコレート成形型10Aとしての成形品10の長寿命化を図ることができる。成形品10の長寿命化によって、食品であるチョコレートへの異物混入を長期にわたって抑制することが可能となる。
[成形品の変形例1]
以下、成形品の変形例について説明する。
図8および図9は、変形例1に係る成形品11を示す斜視図および断面図である。
変形例1に係る成形品11は、本体部20の裏面22側にリブ部70を有する点において、実施形態の成形品10と異なっている。なお、図8および図9において、実施形態の成形品10における部材と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
変形例1に係る成形品11は、実施形態の成形品10と同様に、本体部20と、壁部30と、を有する。一対の壁部30aと30cは向かい合って対をなし、一対の壁部30bと30dは向かい合って対をなしている。成形品11は、一対の壁部30を相互に連結するリブ部70をさらに有する。リブ部70は、本体部20の裏面22側、つまり壁部30が形成されている側と同じ側に形成されている。リブ部70は、短手方向(X軸)に伸び、長手方向(Y軸)の壁部30bと30dの内面に接続されている。リブ部70は、2本設けられている。リブ部70は、本体部20および壁部30と一体的に成形される。
リブ部70のZ軸方向の高さ寸法およびY軸方向の幅寸法は、要求される耐荷重に応じて適宜選択される。変形例1においては、リブ部70の高さ寸法は、壁部30の高さ寸法よりも小さい。リブ部70の底面71(図8および図9においては上方側に示される)に樹脂成形型のゲート部を設定しても、ゲート部周辺に生じるバリが壁部30の下端面32を越えない。これによって、バリ取り等の後処理を簡素にできる。
変形例1に係る成形品11は、本体部20の裏面22側にリブ部70を設けることによって、引張り荷重Wに対する強度がさらに高められる。
[成形品の変形例2、変形例3、変形例4]
リブ部を形成する方向、本数、連結する壁部30の組み合わせは、変形例1に係る成形品11の場合に限定されず、適宜改変できる。
図10〜図12は、変形例2〜4に係る成形品12、13、14をそれぞれ示す背面図である。
図10を参照して、変形例2に係る成形品12のリブ部72は、1本だけ設けられ、長手方向(Y軸)に伸び、短手方向(X軸)の壁部30aと30cの内面に接続されている。
図11を参照して、変形例3に係る成形品13のリブ部73は、2本設けられ、十字形状を有している。一方のリブ部73aは、実施形態の成形品10と同様に、短手方向(X軸)に伸び、長手方向(Y軸)の壁部30bと30dの内面に接続されている。他方のリブ部73bは、変形例2の成形品12と同様に、長手方向(Y軸)に伸び、短手方向(X軸)の壁部30aと30cの内面に接続されている。
図12を参照して、変形例4に係る成形品14のリブ部74は、2本設けられ、X軸およびY軸に対して傾斜して伸びている。一対の壁部30aと30dは隣り合って対をなし、一対の壁部30bと30cは隣り合って対をなしている。一方のリブ部74aは、隣り合って対をなす一対の壁部30aと30dの内面に接続されている。他方のリブ部74bは、隣り合って対をなす一対の壁部30bと30cの内面に接続されている。
変形例2〜4に係る成形品12〜14も、変形例1と同様に、本体部20の裏面22側にリブ部72〜74を設けることによって、引張り荷重Wに対する強度がさらに高められる。
[成形品のその他の変形例]
隣り合う壁部30a、30b、30c、30dが連結エッジ31を介して連結された成形品10〜14を例に挙げて説明したが本発明はこの場合に限定されるものではない。要求される耐荷重に対応して、隣り合う壁部30a、30b、30c、30d同士の間に隙間を設けてもよい。また、一つの縁23に設けられる壁部30が1枚の板形状を有する形態を図示したが、この場合に限定されない。要求される耐荷重に対応して、一つの縁23に複数の壁部を部分的に設けることができる。
流動性材料として溶融チョコレート40を使用し、チョコレート成形型10Aに適用した成形品10〜14を例に挙げて説明したが本発明はこの場合に限定されるものではない。流動性材料は、液体、粘性体、粒状体などでもよい。適用される成形型は、アイス製品、冷凍食品などの食品用の成形型のほか、医薬の錠剤用の成形型にも適用可能である。
さらに、成形品10は、成形型10Aに限定されるものではなく、板形状を有する本体部20と、本体部20の縁23に設けられ本体部20に対して交差する方向に向けて突出する壁部30と、を有する限りにおいて広く適用することができる。成形品10は、成形材料である樹脂含有組成物が高い引張疲労特性を備えることと、本体部20に壁部30を備えることとが相まって、引張り荷重Wに対する強度が高い。そのため、成形品に引張り荷重に対する強度が要求される種々の用途において、特に有用である。このため、成形品10の用途としては、上述した成形型のほか、3Dプリンタ用フィラメント、光学機械部品体、自動車・車両部品などが好適である。
[食品の製造方法]
本発明の食品の製造方法は、本発明の成形品に流動性材料を流し込む工程と、流し込んだ流動性材料を固形化する工程と、該成形品に引張り荷重を作用させて固形化した材料を該成形品から分離する工程を有する。また、本発明の食品の製造方法は、半流動性材料に本発明の成形品を押し付けて賦型する工程と、該成形品に引張り荷重を作用させて賦形した前記材料を該成形品から分離する工程を有する。
本発明において固形化とは、固体状態、または、材料が流動性を失い、重力に抗してその形態が保たれる程度の粘弾性と硬度を保持した状態(ゲル化も含む)を言うものとする。前記流動性材料としては、流動性を有する食品類であれば特に限定されず、チョコレートの他に、シロップ;スープ;コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、麦茶、野菜、果物などの天然物の原料から水抽出して得られる原料抽出液;バター、チーズ、アイスクリームの原材料となる乳製品等が挙げられる。流動性材料の固形化は、該流動性材料自体が温度変化や時間経過等により固体状、固形化ないし半固形化するものであれば温度変化や時間経過等により固体状、固形化ないし半固形化させればよく、また、ゲル化剤、増粘剤などを本発明の成形品に流し込む前または流し込んだ後に添加することによって固形化ないし半固形化することもできる。また、前記半流動性材料としては、焼き菓子の生地や和菓子等の生菓子の練り生地等が挙げられる。
本発明の成形品は、引張疲労特性に優れるため、引張り荷重が作用する環境下での食品製造用途において、特に有用である。
本発明の効果を、以下の実施例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
(実施例1)
ポリカーボネート樹脂(商品名「SD POLYCA(TM) 301−4」(住化ポリカーボネート社製))100質量部および下記化合物1 0.005質量部を押出機を使用して混練・押出(ペレット化)を行い、ダンベル試料射出成型によりJIS K7139:2009準拠多目的試験片タイプA1 厚さ4mmの試験片を作製した。
(実施例2〜9)
化合物1の代わりに下記化合物2〜9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
なお、各化合物は公知の反応により製造することができる。以下、化合物1の合成例を一例として記載する。
[製造例]化合物1の合成
化合物1は、Organic Letters、2012年、第4巻、2670〜2673ページ及びChmestry A European Journal、2009年、第15巻、4857〜4864ページを参照にして、以下のように行なった。
2L容四口フラスコに4−ヒドロキシベンゾニトリル(25.3g、212mmol)、アセトン800mL、炭酸カリウム(100g、724mmol)、1−ブロモオクタン(48g、249mmol)を入れ、終夜加熱還流した。無機塩をろ過後、アセトンを減圧除去し、得られた残渣に酢酸エチルを加え、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、4−オクトキシベンゾニトリル(A−1)の無色透明液体を得た(収量:45.2g、収率:92%)。
次に、アルゴン気流下、500mL容四口フラスコにtert−ブチルオキシカリウム(25.18g、224.4mmol)、tert−アミルアルコール160mLを入れた。そこへ、先に合成した化合物(A−1)(14.8g、64mmol)をtert−アミルアルコール7mLと混合した溶液を加えた。加熱還流下、コハク酸ジイソプロピルエステル(6.5g、32mmol)をtert−アミルアルコール10mLに混合した溶液を約3時間かけて滴下し、滴下終了後、6時間加熱還流した。室温に戻した後、粘性の高い反応液を酢酸:メタノール:水=1:1:1の溶液に入れ、加熱還流を数分行うと赤い固体が析出した。固体をろ別し、加熱したメタノール、及び水で洗浄することによって3,6−(4−オクチルオキシフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン(A−2)の赤色固体を得た(収量:5.6g、収率:32%)。
また、200mL容三口フラスコに3−tert−ブチルアニリン(10g、67mmol)、酢酸70mL、チオシアン酸ナトリウム(13g、160mmol)を入れた。系内を15℃以下に保ちながら、臭素(4.5mL、87mmol)を約20分間かけて滴下し、その後3.5時間15℃以下で攪拌した。反応液を28%アンモニア水150mLに入れ、しばらく攪拌し、析出した固体をろ別後、この固体をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水で洗浄した。ジエチルエーテルを減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製し、2−アミノ−7−tert−ブチルベンゾチアゾール(A−3)を淡黄色固体として得た(収量:10.32g、収率:69%)。
次に、水冷下、1L容4つ口フラスコに水酸化カリウム(75.4g、1340mmol)、エチレングリコール(175mL)を入れた。系内をアルゴン雰囲気下にし、化合物(A−3)(7.8g、37.8mmol)を入れ、系内の酸素を除去するために、アルゴンでバブリングを行った後、110℃で18時間反応させた。反応液を40℃以下に水冷し、予めアルゴンバブリングをした2mol/L塩酸を系内に滴下して、中和を行った(pH7付近)。析出した白色固体をろ別し、水洗後、減圧乾燥した。白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、5−tert−ブチル−2−メルカプトアニリン(A−4)の白色固体を得た(収量:2.39g、収率:35%)。
更に、100mL容三口フラスコに酢酸(872mg、14.5mmol)、アセトニトリル30mLを入れ、系内をアルゴン雰囲気下にした。アルゴン雰囲気下、マロノニトリル(2.4g、36.3mmol)、化合物(A−4)(2.39g、13.2mmol)を加え、2時間加熱還流した。アセトニトリルを減圧除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで処理した。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、2−(7−tert−ブチルベンゾチアゾール−2−イル)アセトニトリル(A−5)の単黄色固体を得た(収量:1.98g、収率:65%)。
続いて、アルゴン気流下200mL容三口フラスコに化合物(A−2)(1.91g、3.5mmol)、化合物(A−5)(1.77g、7.68mmol)、トルエン68mLを加え、加熱還流した。加熱還流下、オキシ塩化リン(2.56mL、27.4mmol)をシリンジで滴下し、更に2時間加熱還流した。反応終了後、氷冷しながら、ジクロロメタン40mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mLを加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで処理し、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で不純物をおおまかに除去した。溶媒を留去して得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、前駆体(A−6)の緑色固体を得た(収量:1.56g、収率:46%)。
最後に、アルゴン気流下、200mL容三口フラスコに前駆体(A−6)(1.52g、1.57mmol)、トルエン45mL、トリエチルアミン(4.35mL、31.4mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.88mL、62.7mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液を氷冷し、析出した固体をろ別し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、50%メタノール水溶液及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥させた。得られた残渣をトルエンに溶解し、メタノールを加えて、沈殿させることで化合物1の濃緑色固体を得た(収量:1.25g、収率:75%)。
(比較例1〜4)
化合物1の代わりに下記比較化合物1〜4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(評価方法:引張疲労特性)
島津製作所製 油圧サーボ式疲労・耐久試験機 サーボパルサEHF−LVを用いて、周波数10Hz、波形正弦波、試験温度23℃の条件で試験片の長さ方向に圧縮−圧縮サイクルの繰り返し応力を付加した。最大負荷応力40(Mpa)での破断するまでのサイクル数を測定した。化合物を添加しない成形体についても同様にしてサイクル数を測定した。化合物を添加しない成形体でのサイクル数に対する各実施例、比較例のサイクル数の相対値を計算し、以下評価基準に従って評価した。評価結果を下記表1に記載する。
(評価基準:6段階)
5:1.4以上
4:1.36を超え1.4未満
3:1.32を超え1.36以下
2:1.28を超え1.32以下
1:1.25を超え1.28以下
0:1.25以下
以上の結果より、樹脂含有組成物は、引張疲労特性に顕著に優れていることがわかる。よって、樹脂含有組成物を成形してなる本発明の成形品は、成形材料が高い引張疲労特性を備えることと、本体部に壁部を備えることとが相まって、引張り荷重に対する強度が高いことがわかる。