JP2020117580A - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層として用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物であって、転がり抵抗が低く、且つ、タイヤに用いたときの嵌合性や耐久性に優れるタイヤ用ゴム組成物を提供する。【解決手段】天然ゴム50質量%以下と末端変性ブタジエンゴム50質量%以上とを含むゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積N2SAが70m2/g〜150m2/gであるカーボンブラックを含む充填剤を65質量部〜90質量部配合し、硬度Hsを70以上、60℃におけるtanδを0.18以下に設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、主として重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層に用いられるタイヤ用ゴム組成物に関する。
空気入りタイヤにおいては、環境負荷を低減するために走行時の燃費性能を向上することが求められている。そのため、空気入りタイヤの各部を構成するゴム組成物の発熱を抑制することが行われている。近年、燃費性能の更なる改善のために、例えば、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層を構成するゴム組成物についても発熱を抑制することが求められている。
ゴム組成物の発熱性の指標としては、一般に動的粘弾性測定による60℃におけるtanδ(以下、「tanδ(60℃)」という。)が用いられ、ゴム組成物のtanδ(60℃)が小さいほど発熱性が小さくなる。そして、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、例えばカーボンブラック等の充填材の配合量を少なくしたり、カーボンブラックの粒径を大きくすることが挙げられる。或いは、シリカを配合することも提案されている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、これらの方法では、必ずしもゴム硬度が十分に得られず、タイヤに利用したとき(特に、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層に用いたとき)に、タイヤへの嵌合性(以下、嵌合性という)やビード部の耐久性(以下、耐久性という)への影響が懸念される。そのため、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層として用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物において、タイヤに用いたときの嵌合性や耐久性を良好に維持しながら、低転がり性を向上する更なる対策が求められている。
特開2015‐059181号公報
本発明の目的は、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層として用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物であって、転がり抵抗が低く、且つ、タイヤに用いたときの嵌合性や耐久性に優れるタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム50質量%以下と末端変性ブタジエンゴム50質量%以上とを含むゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積N2 SAが70m2 /g〜150m2 /gであるカーボンブラックを含む充填剤が65質量部〜90質量部配合され、硬度Hsが70以上であり、60℃におけるtanδが0.18以下であることを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の配合で構成され、特定の硬度およびtanδを有するので、転がり抵抗を低減しながら、タイヤにしたときの嵌合性や耐久性を向上することができる。特に、特定の粒径のカーボンブラックと末端変性ブタジエンゴムとを組み合わせて用いているので、発熱性を悪化させずに、ゴム硬度を適度に高めることが可能になり、前述の性能をバランスよく改善することができる。
尚、本発明において、「硬度」とは、JIS K6253に準拠して、デュロメータのタイプAにより温度20℃で測定したゴム組成物の硬度である。「60℃におけるtanδ」は、JIS K6394に準拠して、製粘弾性スペクトロメータを用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で測定するものとする。「カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SA」は、JIS K6217‐2に準拠して測定するものとする。
本発明においては、末端変性ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることが好ましい。このように分子量分布を狭くすることで、ゴム物性がより良好になり、転がり抵抗を低減しながら嵌合性や耐久性を向上するには有利になる。尚、「重量平均分子量Mw」と「数平均分子量Mn」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
本発明においては、末端変性ブタジエンゴムの末端の官能基が水酸基、アミノ基、アミド基、アルコキシル基、エポキシ基、シロキサン結合基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これによりカーボンブラックとの親和性が高まり、カーボンブラックの分散性がより改善されるので、より効果的に、発熱性を低く維持しながらゴム硬度、嵌合性、耐久性を高めることができ、これら性能をバランスよく両立するには有利になる。
本発明においては、ゴム成分100質量部に対して、硫黄が1.0質量部〜2.0質量部配合されることが好ましい。このように硫黄を適度な量配合することで、ゴム物性をより良好にすることができ、転がり抵抗を低減しながら嵌合性や耐久性を向上するには有利になる。
上述の本発明のタイヤ用ゴム組成物は、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層に用いることが好ましい。本発明のタイヤ用ゴム組成物をリムクッションゴム層に用いた重荷重用空気入りタイヤは、その優れた物性により、低燃費性や嵌合性や耐久性を効果的に高めることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用する空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用する対象となる空気入りタイヤの一例を示す。この空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Rはリムを示す。尚、図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コード(スチールコードまたは有機繊維コード)を含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では4層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む。この補強コードは層間で補強コードどうしが互いに交差するように配列されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜60°の範囲に設定されている。尚、図示の例では、ベルト層7のみが設けられているが、更に、ベルト層7の外周側にベルト補強層(不図示)を設けることもできる。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層11が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層12が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層13が配されている。図示の例のトレッドゴム層11は、トレッド部1の表面に露出するキャップトレッド11Aと、このキャップトレッド11Aの径方向内側に埋設されるアンダートレッド11Bとからなる2層構造を有する。
特に、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いる対象として意図されるリムクッションゴム層13は、タイヤをリムRに装着した際に、リムRとタイヤとが接触する領域Aにおいてビードコア5およびビードフィラー6の周囲に配されたカーカス層4とリムRとの間に配されるゴム層(図の斜線部)である。このリムクッションゴム層13は、タイヤがリムRに装着されて、ビード部3がリムRに嵌合する際に、ビードコア5およびビードフィラー6の周囲に配されたカーカス層4とリムRとの間に挟まれることになるので、タイヤをリム組みする際の作業性(嵌合性)や、タイヤ内に空気を充填する際の密閉性に大きく寄与する部位である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、天然ゴムと末端変性ブタジエンゴムとを必ず含む。
天然ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるゴムを使用することができる。天然ゴムを配合することで、タイヤ用ゴム組成物として充分なゴム強度を得ることができる。ジエン系ゴム全体を100質量%としたとき、天然ゴムの配合量は50質量%以下、好ましくは10質量%〜50質量%、より好ましくは15質量%〜50質量%である。天然ゴムの配合量が50質量%を超えるとリムとの勘合性が悪化する。
末端変性ブタジエンゴムは、分子鎖の片末端または両末端が官能基を有する有機化合物で変性されたブタジエンゴムである。このような末端変性ブタジエンゴムを配合することにより、後述のカーボンブラックとの親和性を高くし分散性を改善するため、発熱性を低く維持しながら、カーボンブラックの作用効果を一層向上して、ゴム硬度を高めることができる。分子鎖の末端を変性する官能基としては、例えばアルコキシシリル基、ヒドロキシル基(水酸基)、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アルコキシル基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基、シロキサン結合基を挙げることができる。なかでもヒドロキシル基(水酸基)、アミノ基、アミド基、アルコキシル基、エポキシ基、シロキサン結合基から選ばれる少なくとも一つであるとよい。ここで、シロキサン結合基は、−O−Si−O−構造を有する官能基とする。
ゴム成分(ジエン系ゴム)全体を100質量%としたとき、末端変性ブタジエンゴムの配合量は、50質量%以上、好ましくは50質量%〜90質量%、より好ましくは50質量%〜85質量%である。末端変性ブタジエンゴムの配合量が50質量%未満であると低燃費性が悪化する。
本発明で使用する末端変性ブタジエンゴムは、ビニル含有量が好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.1質量%〜15質量%である。末端変性ブタジエンゴムのビニル含有量が0.1質量%未満であると、カーボンブラックとの親和性が不足し発熱を充分に低減することが難しくなる。末端変性ブタジエンゴムのビニル含有量が20質量%を超えると、ゴム組成物のガラス転移温度Tgが上昇し、転がり抵抗および耐摩耗性を十分に改良することができない。尚、末端変性ブタジエンゴムのビニル単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。末端変性ブタジエンゴムにおけるビニル単位含有量の増減は、触媒等、通常の方法で適宜調製することができる。
本発明で使用する末端変性ブタジエンゴムのガラス転移温度Tgは好ましくは−85℃以下、より好ましくは−90℃〜−100℃であるとよい。このようにガラス転移温度Tgを設定することで、発熱性を効果的に低減することができる。ガラス転移温度Tgが−85℃を超えると発熱性を低減する効果が充分に得られなくなる。尚、天然ゴムのガラス転移温度Tgは特に限定されないが、例えば−70℃〜−80℃に設定することができる。
末端変性ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.1〜1.6である。このように、末端変性ブタジエンゴムとして分子量分布が狭いものを用いることで、ゴム物性がより良好になり、転がり抵抗を低減しながら、タイヤにしたときの嵌合性や耐久性を効果的に向上することができる。末端変性ブタジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn)が2.0を超えるとヒステリシスロスが大きくなってゴムの発熱性が大きくなると共に、耐コンプレッションセット性が低下する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム、末端変性ブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを含有してもよい。他のジエン系ゴムとしては、例えば、末端変性していないブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラックが必ず配合される。カーボンブラックを配合することでゴム組成物の強度を高めることができる。特に、本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積N2 SAが70m2 /g〜150m2 /g、好ましくは70m2 /g〜100m2 /gである。このように特定の粒径のカーボンブラックを上述の末端変性ブタジエンゴムと組み合わせて配合することで、発熱性を低く維持しながら、ゴム硬度を効果的に高めることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2 SAが70m2 /g未満であるとタイヤにしたときの耐久性が悪化する。
カーボンブラックを含む充填材の配合量は、前述のジエン系ゴム100質量部に対して、65質量部〜90質量部、好ましくは70質量部〜85質量部である。充填剤の配合量が60質量部未満であるとゴム組成物の硬度が低下する。充填剤の配合量が90質量部を超えると、発熱性が悪化する虞がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばシリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム等を例示することができる。なかでもシリカを配合することが好ましい。シリカを上述の変性ブタジエンゴムと組み合わせて配合することで、耐久性の改善効果は若干低くなるが、発熱性を更に低くすることができる。充填剤として、カーボンブラックに加えてシリカを配合する場合、充填剤の総量に対するシリカの質量を好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下にするとよい。シリカの質量比率が過多であるとゴム組成物の破断強度が低下してタイヤにした時の耐久性が悪化する虞がある。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して硫黄を好ましくは1.0質量部〜2.0質量部、より好ましくは1.1質量部〜1.9質量部配合するとよい。このように適量の硫黄を配合することで、硬度と発熱性とをバランスよく両立することができる。硫黄の配合量が1.0質量部未満であると、ゴム組成物の硬度が低下し、タイヤにしたときの嵌合性や耐久性が低下する。硫黄の配合量が2.0質量部を超えると、破断強度低下による耐久性が低下する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、一般的に空気入りタイヤに使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
このような配合からなる本発明のタイヤ用ゴム組成物の硬度は65〜90、好ましくは67〜80である。また、本発明のタイヤ用ゴム組成物の60℃におけるtanδは0.18以下、好ましくは0.10〜0.17、より好ましくは0.15〜0.17である。本発明のゴム組成物はこのような物性を有するため、転がり抵抗を低減しながら、タイヤにしたときの嵌合性や耐久性を向上することができる。硬度が65未満であると、タイヤにした時の嵌合性や耐久性が悪化する。硬度が90を超えると転がり抵抗を充分に低減することが難しくなる。60℃におけるtanδが0.18を超えると、発熱が悪化し転がり抵抗を低減することができない。尚、これら硬度やtanδは上述の配合のみで決定されるものではなく、例えば混練条件や混練方法によっても調整可能な物性である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の配合や物性により、転がり抵抗を低減しながら、タイヤにしたときの嵌合性および耐久性を向上することができる。具体的には、ゴム成分として天然ゴムに加えて末端変性ブタジエンゴムを併用し、且つ、末端変性ブタジエンゴムと特定の粒径のカーボンブラックとを組み合わせて用いており、更に、ゴム組成物の硬度とtanδを上記のように特定の範囲に設定しているので、上述の性能をバランスよく改善することができる。そのため、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、重荷重用空気入りタイヤのリムクッションゴム層13に好適に用いることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物をリムクッションゴム層13に用いた重荷重用空気入りタイヤは、その優れた物性により、嵌合性および耐久性を良好に発揮しながら、低燃費性能を改善することができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3に示す配合からなる23種類のゴム組成物(標準例1〜2、比較例1〜5、実施例1〜16)を、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.8Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを1.8Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合してゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を所定の金型中で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した。
表1〜3におけるゴム硬度は、この加硫ゴム試験片を用いて、JIS K6253に準拠して、デュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。また、表1〜3におけるtanδは、JIS K6394に準拠して、製粘弾性スペクトロメータを用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で測定した。
得られたタイヤ用ゴム組成物について、下記に示す方法により、低燃費性能、嵌合性、およびビード部耐久性の評価を行った。
低燃費性能
各加硫ゴム試験片について、JIS K6394に準拠して、製粘弾性スペクトロメータを用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で60℃におけるtanδを測定し、低燃費性能の指標とした。評価結果は、測定値の逆数を用いて、表1〜2については標準例1の値を100とする指数、表3については標準例2の値を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れることを意味する。
嵌合性
得られたゴム組成物をリムクッションゴム層に使用した試験タイヤ(タイヤサイズ275/80R22.5)をそれぞれ5本ずつ作製し、各試験タイヤを標準リム(リムサイズ22.5×8.25)に組み付ける際の作業性と、その際にビード部に割れが発生するかを確認した。更に、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、酸素を55%含んだ混合気体にて空気圧を900kPa、速度45km/時、荷重47.4kNで240時間の予備走行試験を行い、予備走行試験後にリトレッド処理を施し、更生タイヤを作製し、各更生タイヤについても、標準リムに組み付ける際の作業性と、その際にビード部に割れが発生するかを確認した。評価結果は、以下の3段階で示した。
3:ビード部に割れが発生したタイヤの本数が0本であった。
2:ビード部に割れが発生したタイヤの本数が1本〜2本であった。或いは、ビード部に割れが発生したタイヤの本数が0本であったが組み付け作業に要する作業時間が60秒以上であった。
1:ビード部に割れが発生したタイヤの本数が3本以上であった。
ビード部耐久性
得られたゴム組成物をリムクッションゴム層に使用した試験タイヤ(タイヤサイズ275/80R22.5)を作製し、各試験タイヤを標準リム(リムサイズ22.5×8.25)に組み付けて、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、酸素を55%含んだ混合気体にて空気圧を900kPa、速度45km/h、荷重47.4kNで240時間の予備走行試験を行い、予備走行試験後にリトレッド処理を施して更生タイヤを作製し、各更正タイヤについて、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、空気圧900kPa、速度20km/h、荷重47.4kN、周囲温度30℃±3℃の条件で、ビード部に故障が生じるまでの走行距離を測定した。評価結果は、以下の3段階で示した。
3:ビード部に故障が発生せず、10000km以上走行した。
2:走行距離が7000km以上10000km未満であった。
1:走行距離が7000km未満であった。
Figure 2020117580
Figure 2020117580
Figure 2020117580
表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20(ガラス転移温度Tg=−65℃)
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1220(ガラス転移温度Tg=−105℃)
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol 1502(ガラス転移温度Tg=−60℃)
・変性S‐SBR:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol NS612(非油展品、ガラス転移温度Tg=−60℃)
・変性BR1:末端変性ブタジエンゴム、JSR社製 BR54(ガラス転移温度Tg:−107℃、官能基:シラノール基、分子量分布Mw/Mn=2.5)
・変性BR2:下記の方法で合成した末端変性ブタジエンゴム(ガラス転移温度Tg:−93℃、官能基:ポリオルガノシロキサン基、分子量分布については下記を参照)
・変性BR3:末端変性ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1250H(ガラス転移温度Tg:−96℃、官能基:N−メチルピロリドン基、分子量分布Mw/Mn=1.1)
・CB1:カーボンブラック、旭カーボン社製 #55(窒素吸着比表面積N2 SA:35m2 /g)
・CB2:カーボンブラック、東海カーボン社製 ニテロン#200(窒素吸着比表面積N2 SA:82m2 /g)
・シリカ:デグサ社製 Ultrasil VN3
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製 サントフレックス 6PPD
・硫黄:四国化成工業社製 ミュークロンOT‐20
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製 ノクセラーNS‐P
変性BR2の合成方法
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、1,3‐ブタジエン700gおよび、テトラメチルエチレンジアミン0.17mmolを仕込んだ後、シクロヘキサンと1,3‐ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量のn‐ブチルリチウムを添加し、更に、重合反応に用いる分のn−ブチルリチウムを8.33mmol加えて、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後に、1,3‐ブタジエン300gを30分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は80℃であった。連続添加終了後、更に15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の試料とした。その試料を用いて、重合体(活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に該当)のピークトップ分子量および分子量分布を測定したところ、それぞれ、「23万」および「1.04」であった。
前述の少量の重合溶液をサンプリングした直後、重合溶液に、1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmol(重合に使用したn‐ブチルリチウムの0.0345倍モルに相当)を40重量%シクロヘキサン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。更に、その後、ポリオルガノシロキサンA0.0382mmol(重合に使用したn‐ブチルリチウムの0.00459倍モルに相当)を20重量%キシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn‐ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加した。これにより、変性ブタジエンゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、ゴム成分100部あたり、老化防止剤として2,4‐ビス(n‐オクチルチオメチル)‐6‐メチルフェノール0.2部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性ブタジエンゴム(変性BR2)を得た。この変性ブタジエンゴム(変性BR2)について、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、ビニル結合含有量、および、ムーニー粘度を測定したところ、それぞれ、「51万」、「1.46」、「28%」、「11質量%」および「46」であった。
表1〜3から明らかなように、実施例1〜16の空気入りタイヤは、標準例1,2に対して嵌合性およびビード部耐久性を良好に維持しながら低燃費性能を向上した。
一方、比較例1は、末端変性ブタジエンゴムの代わりにスチレンブタジエンゴムを含むため、低燃費性能および嵌合性が悪化した。比較例2は、末端変性ブタジエンゴムの代わりに末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを含むため、低燃費性能が改善する効果が得られず、また、嵌合性およびビード部耐久性が悪化した。比較例3は、末端変性ブタジエンゴムの配合量が少ないため、低燃費性能を改善する効果が得られず、また、嵌合性が悪化した。比較例4は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が小さいため、低燃費性能およびビード部耐久性が悪化した。比較例5は、カーボンブラックの配合量が少ないため、嵌合性およびビード部耐久性が悪化した。比較例6は、ゴム組成物の硬度が小さいため、嵌合性およびビード部耐久性が悪化した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
11 トレッドゴム層
12 サイドゴム層
13 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道
R リム

Claims (5)

  1. 天然ゴム50質量%以下と末端変性ブタジエンゴム50質量%以上とを含むゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積N2 SAが70m2 /g〜150m2 /gであるカーボンブラックを含む充填剤が65質量部〜90質量部配合され、硬度Hsが70以上であり、60℃におけるtanδが0.18以下であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記末端変性ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記末端変性ブタジエンゴムの末端の官能基が水酸基、アミノ基、アミド基、アルコキシル基、エポキシ基、シロキサン結合基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分100質量部に対して、硫黄が1.0質量部〜2.0質量部配合されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 請求項1〜4に記載のタイヤ用ゴム組成物を、リムクッションゴム層に用いたことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
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