JP2020104765A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐久性、サイド部の高い剛性及び軽量化が達成された空気入りタイヤの提供。【解決手段】このタイヤ2は、コード及びトッピングゴムを備えそれぞれがカーカス12の軸方向外側に位置する一対のサイド補強層22を備えている。半径方向において、サイド補強層22の内側端Pはこのタイヤ2の最大幅位置Aより内側でかつクリンチ8の外側端36より内側に位置し、サイド補強層22の外側端Qは最大幅位置Aより外側に位置している。内側端Pから引いたこのサイド補強層22の法線LVに沿って計測した、この内側端Pとタイヤ2の外面との距離Lrの、この法線LVに沿って計測したタイヤ2の厚みTに対する比(Lr/T)は、35%以上65%以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
車両が走行すると、タイヤのサイド部には大きな荷重が負荷される。この荷重に耐えて良好な操縦安定性や、直進走行と旋回走行との間を移行する際の良好な過渡特性を実現するには、サイド部は十分な剛性を有することが求められる。
一方で、近年の車への環境性能の要求の高まりにより、タイヤには軽量化が求められている。このために、カーカスプライの枚数をできるだけ減らすことが検討されている。しかし、カーカスプライの枚数を減らすと、サイド部の剛性が小さくなる。これは、良好な操縦安定性及び過渡特性の実現の妨げとなりうる。
十分なサイド部の剛性を有しつつ軽量化を実現するために、サイド部に補強層を設ける方法がある。この方法では、補強層によりサイド部の剛性を高めることで、カーカスプライの枚数を減らしている。サイド部に補強層を有するタイヤについての検討が、特開平8−310206号公報及び特開2015−63172公報で開示されている。
特開平8−310206号公報 特開2015−63172公報
補強層はサイド部の所定の部分に設けられ一方で、カーカスは一方のサイド部のビードの部分から、他方のサイド部のビードの部分の全体に渡り、存在している。カーカスプライの枚数を減らしたとき、優れた耐久性を実現できるかが、課題となる。タイヤの優れた耐久性を実現しつつ、サイド部の高い剛性及び軽量化が達成されたタイヤが求められている。
本発明の目的は、優れた耐久性、サイド部の高い剛性及び軽量化が達成された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、カーカスと、一対のクリンチと、一対のサイド補強層とを備えている。それぞれのサイド補強層は、コード及びトッピングゴムを備え上記カーカスの軸方向外側に位置している。半径方向において、上記サイド補強層の内側端Pはこのタイヤの最大幅位置より内側でかつ上記クリンチの外側端より内側に位置し、上記サイド補強層の外側端Qは上記最大幅位置より外側に位置している。上記内側端Pから引いたこのサイド補強層の法線LVに沿って計測した、この内側端Pとタイヤの外面との距離Lrの、この法線LVに沿って計測したタイヤの厚みTに対する比(Lr/T)は、35%以上65%以下である。
好ましくは、上記比(Lr/T)は40%以上60%以下である。
好ましくは、上記クリンチが外側層とこの外側層の軸方向内側に位置する内側層とを備えており、上記内側層の硬さは上記外側層の硬さより高い。
好ましくは、上記クリンチが外側層とこの外側層の軸方向内側に位置する内側層とを備えており、上記内側端Pは、上記外側層と上記内側層との間に位置する。
好ましくは、上記内側端Pと上記外側端Qとの半径方向距離Hrの、このタイヤの断面高さHに対する比(Hr/H)は、10%以上50%以下である。
好ましくは、上記ビードベースラインから上記外側端Qまでの半径方向高さHqの、このタイヤの断面高さHに対する比(Hq/H)は、70%以下である。
このタイヤが一対のビードをさらに備えており、上記カーカスがカーカスプライを備えており、上記カーカスプライが、両側のビードの間に架け渡されこのビードの周りにて折り返されており、この折り返しにより上記カーカスプライに主部と折返し部とが形成されている場合において、好ましくは、半径方向において、上記外側端Qは上記折返し部の端より外側に位置している。
本発明に係る空気入りタイヤでは、半径方向において、サイド補強層の内側端Pは最大幅位置の内側でかつクリンチの外側端の内側に位置し、サイド補強層の外側端Qは最大幅位置の外側に位置する。荷重が負荷されたときに撓みが大きくなる最大幅位置からクリンチの外側端の位置まで、サイド補強層が存在する。このサイド補強層は、サイド部の剛性及び耐久性に寄与する。さらにこのタイヤでは、上記比(Lr/T)は35%以上65%以下である。すなわち、荷重が負荷されたときに応力が集中し易い内側端Pを、歪みの少ないタイヤの厚み方向の中央近辺に位置させている。これは、タイヤの耐久性に効果的に寄与する。さらに、このサイド補強層は耐久性に効果的に寄与するため、優れた耐久性を実現した上でカーカスプライの枚数を減らしうる。このタイヤでは、優れた耐久性を実現しつつ、サイド部の高い剛性及び軽量化が達成されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2が示された断面図である。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。実線BBLは、ビードベースラインを表す。ビードベースラインBBLは、リムのリム径(JATMA参照)を規定する線に相当する。ビードベースラインBBLは、軸方向に延びる。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面CLに対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18、一対のチェーファー20及び一対のサイド補強層22を備えている。このタイヤ2では、トレッド4の端から半径方向内側に延びる部分はサイド部24と称される。サイドウォール6、クリンチ8、ビード10、チェーファー20及びサイド補強層22は、サイド部24に位置している。カーカス12及びインナーライナー18の一部も、サイド部24に位置している。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド4には、溝27が刻まれている。この溝27により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6の半径方向内側端は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。図1で示されるように、クリンチ8は外側層28と内側層30とを備える。外側層28の外面は、このタイヤ2の外面の一部を構成する。外側層28は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。外側層28は、タイヤ2がリムに装着されたとき、リムのフランジと当接する。内側層30は、外側層28の軸方向内側に位置している。半径方向において、内側層30の外側端32は、外側層28の外側端34より外側に位置している。この実施形態では、クリンチ8の半径方向外側端36は、内側層30の半径方向外側端32である。このクリンチ8では、内側層30の硬さHDiは、外側層28の硬さHDoより高い。
本発明では、硬さHDi及び硬さHDoは、「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられ、硬さが測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
クリンチ8が、内側層30を備えなくてもよい。クリンチ8が、外側層28のみで形成されていてもよい。このとき、クリンチ8の半径方向外側端36は、外側層28の半径方向外側端34である。
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア38と、このコア38から半径方向外向きに延びるエイペックス40とを備えている。コア38はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス40は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス40は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス12は、カーカスプライ42からなる。カーカスプライ42は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ42は、コア38の周りにて、折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ42には、主部44と折返し部46とが形成されている。主部44は、一方のビード10の軸方向内側から他方のビード10の軸方向内側まで延びている。主部44は、インナーライナー18の外側に積層されている。折返し部46は、軸方向において、エイペックス40の外側かつ内側層30の内側を通って半径方向に延びている。図から明らかなように、折返し部46の端48は、後述するこのタイヤ2の最大幅位置Aの近くに位置している。このタイヤ2のカーカス12は、「ハイターンアップ(HTU)」構造を有している。
カーカスプライ42は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス12が、2枚以上のカーカスプライ42から形成されてもよい。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、第一層50及び第二層52からなる。図示されていないが、第一層50及び第二層52のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面CLに対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。第一層50のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第二層52のコードの赤道面CLに対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト14の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、チェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー20は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。チェーファー20が、クリンチ8と一体として構成されていてもよい。このとき、チェーファー20の材質は、クリンチ8の材質と同じである。
それぞれのサイド補強層22は、軸方向において、サイドウォール6の内側に位置している。サイド補強層22は、軸方向において、カーカス12の外側に位置している。サイド補強層22は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、周方向に対して傾斜している。典型的には、傾斜角度の絶対値は、0°以上5°以下である。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このコードの材質は、カーカスプライ42のコードの材質と同じである。このコードの材質が、カーカスプライ42のコードの材質と異なっていてもよい。
図2には、図1のサイド補強層22の近辺が拡大されて示されている。図1及び2において、符号Aはこのタイヤ2の外面上の位置を表す。位置Aにおいて、このタイヤ2の幅は最大となる。位置Aは、最大幅位置である。図2において、符号Pはサイド補強層22の半径方向内側端を表す。符号Qは、サイド補強層22の半径方向外側端を表す。
図2から明らかなように、半径方向において、内側端Pは最大幅位置Aより内側に位置している。内側端Pは、クリンチ8の外側端36よりも内側に位置している。内側端Pは、外側層28と内側層30との間に位置している。半径方向において、外側端Qは最大幅位置Aより外側に位置している。
図2において、直線LVは、内側端Pにおけるこのサイド補強層22の法線である。両矢印Lrは、法線LVに沿って計測した、法線LVとこのタイヤ2の外面との交点と、内側端Pとの距離を表す。距離Lrは、内側端Pにおけるサイド補強層22の厚み方向の中点から計測される。両矢印Tは、法線LVに沿って計測したタイヤ2の厚みを表す。厚みTは、法線LVに沿って計測した、このタイヤ2の内面と外面との距離である。このタイヤ2では、距離Lrの厚みTに対する比(Lr/T)は、35%以上65%以下である。
以下、本発明の作用効果が説明される。
本発明に係る空気入りタイヤ2では、半径方向において、サイド補強層22の内側端Pは、最大幅位置Aの内側でかつクリンチ8の外側端36の内側に位置し、外側端Qは最大幅位置Aの外側に位置する。荷重が負荷されたときに撓みが大きくなる最大幅位置Aからクリンチ8の外側端36の位置まで、サイド補強層22が存在する。このサイド補強層22は、最大幅位置Aからクリンチ8の外側端36の位置までの剛性を効果的に高める。このサイド補強層22は、サイド部24の剛性を効果的に高める。これは、良好な耐久性及び操縦安定性に寄与する。
このタイヤ2では、比(Lr/T)は35%以上65%以下である。このタイヤ2のサイド部24が外向きに凸となるように撓んだとき、サイド部24の内面側には圧縮力が負荷され、外面側には引っ張り力が負荷される。内面と外面との中央部分では、負荷される圧縮力及び引っ張り力は、ともに小さい。比(Lr/T)を35%以上65%以下とすることで、応力が集中し易い内側端Pを、タイヤ2の厚み方向の中央(内面と外面との中央)近辺に位置させることができる。これは、内側端Pの近辺での応力の集中を効果的に抑える。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。この観点から、比(Lr/T)は40%以上60%以下がより好ましく、50%がさらに好ましい。
このサイド補強層22は、サイド部24の所定の位置に設けられているため、タイヤ2質量に与える影響は小さい。サイド補強層22は、上記のとおり、耐久性に寄与しているため、サイド補強層22により、優れた耐久性を実現した上で、カーカスプライ42の枚数を従来より減らすことができる。例えば、これまで耐久性のために2枚のカーカスプライを備えていたタイヤについて、サイド補強層22を備えることでカーカスプライ42を1枚にすることができる。このサイド補強層22により、タイヤ2の軽量化が実現されうる。
前述のとおり、クリンチ8の内側層30の硬さHDiは、外側層28の硬さHDoより高いのが好ましい。リムと当接する外側層28の硬さは、高くされている。このタイヤ2では、外側層28よりさらに硬さの高い内側層30を、外側層28の内側に位置させることで、質量を増加させることなくビード10の部分の歪みが効果的に抑えられている。このタイヤ2では、質量を増加させることなく、優れた耐久性が実現されている。
内側層30の硬さHDiは70以上が好ましい。硬さHDiを70以上とすることで、内側層30は、ビード10の部分の歪みを効果的に抑える。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。硬さHDiは90以下が好ましい。硬さHDiを90以下とすることで、タイヤ2の縦バネ定数が適度に抑えられる。このタイヤ2では、優れた乗り心地が維持されている。
内側層30の硬さHDiと外側層28の硬さHDoとの差(HDi−HDo)は、5以上が好ましい。この差を5以上とすることで、この内側層30は、ビード10の部分の歪みを効果的に抑える。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。差(HDi−HDo)は15以下が好ましい。この差を15以下とすることで、内側層30と外側層28との境界において、硬さの差に起因する歪みが抑えられる。これは、タイヤ2の耐久性に寄与する。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。
サイド補強層22の内側端Pは、外側層28と内側層30との間に位置しているのが好ましい。このようにすることで、応力が集中し易い内側端Pとカーカス12との間に、内側層30が存在する。これは、内側端Pの近辺での応力の集中を効果的に緩和する。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。
図1において、両矢印Hは、ビードベースラインBBLから、タイヤ2の半径方向外側端までの半径方向高さを表す。高さHは、このタイヤ2の断面高さである。図2において、両矢印Hrは、内側端Pと外側端Qとの半径方向距離を表す。
距離Hrの高さHに対する比(Hr/H)は10%以上が好ましい。比(Hr/H)を10%以上とすることで、このサイド補強層22は、サイド部24の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ2では、優れた耐久性及び操縦安定性が実現されている。この観点から、比(Hr/H)は20%以上がより好ましい。比(Hr/H)は50%以下が好ましい。比(Hr/H)を50%以上とすることで、このサイド補強層22がタイヤ2質量に与える影響が抑えられている。このタイヤ2では、良好な転がり抵抗が実現されている。この観点から、比(Hr/H)は40%以下がより好ましい。
図2において、両矢印HqはビードベースラインBBLから外側端Qまでの半径方向高さを表す。高さHqの高さHに対する比(Hq/H)は70%以下が好ましい。比(Hq/H)を70%以下とすることで、このサイド補強層22がタイヤ2質量に与える影響が抑えられている。このタイヤ2では、良好な転がり抵抗が実現されている。この観点から、比(Hq/H)は60%以下がより好ましい。
図2において、両矢印Hcは、半径方向におけるビードベースラインBBLから折返し部46の端48までの高さを表す。図で示されるように、半径方向において、サイド補強層22の外側端Qは、折返し部46の端48よりも外側に位置するのが好ましい。すなわち、高さHqの高さHcに対する比(Hq/Hc)は100%より大きいのが好ましい。荷重が負荷されたとき、折返し部46の端48近辺にはクラックが発生し易い。このようにすることで、折返し部46の端48の軸方向外側に、サイド補強層22が位置する。これは、折返し部46の端48近辺での歪を低減し、クラックの発生を効果的に抑える。このタイヤ2では、優れた耐久性が実現されている。この観点から、比(Hq/Hc)は、105%以上がより好ましい。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−2に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、205/70R15である。このタイヤの諸元が表1に示されている。このタイヤのカーカスプライの数は、一枚である。このタイヤでは、サイド補強層の内側端Pはタイヤの最大幅位置より半径方向内側に位置し、外側端Qはタイヤの最大幅位置より半径方向外側に位置する。このタイヤのクリンチは、内側層と外側層とを備える。このことが、表1の「内側層の有無」の欄に、「有」として示されている。内側層の硬さは80、外側層の硬さは70とされた。このタイヤでは、比(Hq/H)は70%とされた。このタイヤでは、サイド補強層の内側端Pは、内側層と外側層との間に位置している。このことが、表1の「内側層と外側層間」の欄に、「Yes」として示されている。このタイヤでは、比(Hq/Hc)は110%とされた。
[比較例1]
比較例1のタイヤは、サイド補強層を備えず、2枚のカーカスプライを備える。このタイヤのクリンチは、内側層を備えない。その他は実施例1と同様である。
[実施例2]
内側端Pの位置を変更して比(Hr/H)を表1の通りとしたことの他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。このタイヤでは、実施例1と比べて内側端Pの位置が半径方向外側に移動したため、内側端Pは内側層と外側層との間に位置していない。このことが、表1の「内側層と外側層間」の欄に、「No」として示されている。
[実施例3−4]
比(Lr/H)を表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−4のタイヤを得た。
[実施例5]
クリンチが内側層を備えないことの他は実施例1と同様にして、実施例5のタイヤを得た。
[耐久性]
タイヤを正規リム(15×6JJ)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を290kPaとした。このタイヤを走行試験機に装着し、10.27kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラム上を走行させ、タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を確認した。実施例のタイヤについては、サイド補強層の内側端P近辺での損傷が発生するまでの走行距離及び最大幅位置近辺での損傷が発生するまでの走行距離のそれぞれが確認された。この値が、比較例1のタイヤにおいて最大幅位置近辺で損傷が発生した走行距離を100とした指数で、それぞれ「内側端耐久性」及び「サイド部耐久性」として、表1に示されている。値が大きいほど、耐久性に優れる。値が大きいほど、好ましい。
[質量]
タイヤの質量を測定した。この結果が、比較例1を100とした指数として下記の表1に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[操縦安定性]
タイヤを正規リム(15×6JJ)に組み込み、このタイヤに内圧が230Paとなるように空気を充填した。このタイヤを、乗用車に装着した。この乗用車をアスファルトからなるテストコースで走行させて、ドライバーによる官能評価を行った。評価項目は、操縦安定性である。この結果が、比較例1を100とした指数として下記の表1に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 2020104765
表1に示されるように、実施例のタイヤは比較例のタイヤより総合的に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された空気入りタイヤは、種々の車両に使用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・バンド
18・・・インナーライナー
20・・・チェーファー
22・・・サイド補強層
24・・・サイド部
26・・・トレッド面
28・・・内側層
30・・・外側層
36・・・クリンチの外側端
38・・・コア
40・・・エイペックス
42・・・カーカスプライ
44・・・主部
46・・・折返し部
48・・・折返し部の先端
50・・・第一層
52・・・第二層

Claims (7)

  1. カーカスと、一対のクリンチと、一対のサイド補強層とを備えており、
    それぞれのサイド補強層が、コード及びトッピングゴムを備え上記カーカスの軸方向外側に位置しており、
    半径方向において、上記サイド補強層の内側端Pがこのタイヤの最大幅位置より内側でかつ上記クリンチの外側端より内側に位置し、上記サイド補強層の外側端Qが上記最大幅位置より外側に位置しており、
    上記内側端Pから引いたこのサイド補強層の法線LVに沿って計測した、この内側端Pとタイヤの外面との距離Lrの、この法線LVに沿って計測したタイヤの厚みTに対する比(Lr/T)が、35%以上65%以下である、空気入りタイヤ。
  2. 上記比(Lr/T)が40%以上60%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 上記クリンチが、外側層と、この外側層の軸方向内側に位置する内側層とを備えており、
    上記内側層の硬さが上記外側層の硬さより高い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記クリンチが、外側層と、この外側層の軸方向内側に位置する内側層とを備えており、
    上記内側端Pが、上記外側層と上記内側層との間に位置する、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 上記内側端Pと上記外側端Qとの半径方向距離Hrの、このタイヤの断面高さHに対する比(Hr/H)が10%以上50%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 上記ビードベースラインから上記外側端Qまでの半径方向高さHqの、このタイヤの断面高さHに対する比(Hq/H)が70%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 一対のビードをさらに備えており、
    上記カーカスがカーカスプライを備えており、
    上記カーカスプライが、両側のビードの間に架け渡されこのビードの周りにて折り返されており、この折り返しにより上記カーカスプライに主部と折返し部とが形成されており、
    半径方向において、上記外側端Qが上記折返し部の端より外側に位置している、請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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