JP2020100528A - 積層体、積層体の製造方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法 - Google Patents
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本発明の積層体は、以下に説明するカーボン基板と、炭化珪素多結晶膜と、カーボン膜と、を備える。
カーボン基板は、その厚みが300μm〜10mmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)の基板である。基板としてカーボンを用いることにより、Si基板のような化学蒸着処理中に熱による軟化や形状の変化等が発生しないため、成膜中のSiC多結晶膜の反りが発生しない。また、カーボンであれば、燃焼によってSiC多結晶膜を容易に分離することができる。
炭化珪素多結晶膜は、カーボン基板に成膜する、厚みが300μm〜700μmの膜である。例えば、後述する積層体の製造方法により、カーボン基板へ化学蒸着によってSiC多結晶膜を成膜することができる。
カーボン膜は、炭化珪素多結晶膜に成膜する、厚みが50μm〜200μmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)の膜である。SiC多結晶膜をカーボン基板とカーボン膜で挟むことにより、カーボン基板とSiC多結晶膜の熱膨張係数が異なることに起因する、カーボン基板を分離した後のSiC多結晶膜の反りを緩和することができる。また、カーボン膜であれば、カーボン基板と同様に、燃焼によってSiC多結晶膜を容易に分離することができる。
本発明の積層体は、上記の他、その他の構成を備えることができる。例えば、カーボン基板やカーボン膜を燃焼させるための炉内に設置できることを条件として、SiC多結晶膜とカーボン膜からなる複合層を1層のみならず、2層、3層、4層以上と、複数層繰り返し備えてもよい。
次に、上記した本発明の積層体について、その製造方法の一態様を説明する。かかる製造方法は、以下に説明する第1成膜工程と、第2成膜工程と、を含む。
本工程は、厚みが300μm〜10mmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン基板に、化学蒸着によって厚みが300μm〜700μmの炭化珪素多結晶膜を成膜する工程である。カーボン基板の厚み、熱膨張係数、およびSiC多結晶膜の厚みについては、積層体の項目にて説明したとおりである。
原料ガスとしては、SiC多結晶膜を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用されるSi系原料ガスやC系原料ガスを用いることができる。Si系原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)を用いることができるほか、モノクロロシラン(SiH3Cl)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)などのエッチング作用があるClを含む、塩素系Si原料含有ガス(クロライド系原料)を用いることもできる。また、C系原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)やプロパン(C3H8)アセチレン(C2H2)等の炭化水素ガスを用いることができる。また、上記のほか、トリクロロメチルシラン(CH3Cl3Si)、トリクロロフェニルシラン(C6H5Cl3Si)、ジクロロメチルシラン(CH4Cl2Si)、ジクロロジメチルシラン((CH3)2SiCl2)、クロロトリメチルシラン((CH3)3SiCl)等のSiとCとを両方含むガスも、原料ガスとして用いることができる。
キャリアガスとしては、成膜を阻害することなく、原料ガスを基板へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、熱伝導率に優れ、SiCに対してエッチング作用がある水素(H2)を用いることができる。
また、これらの原料ガスおよびキャリアガスと同時に、第3のガスとして、目標とする導電率に見合う量の不純物ドーピングガスを同時に供給することもできる。例えば、導電型をn型とする場合には窒素(N2)ガス、p型とする場合にはトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いることができる。
本工程は、炭化珪素多結晶膜に、化学蒸着によって、厚みが50μm〜200μmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン膜を成膜する工程である。カーボン膜の厚みおよび熱膨張係数については、積層体の項目にて説明したとおりである。
原料ガスとしては、カーボン膜を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用されるC系原料ガスを用いることができる。例えば、メタン(CH4)やプロパン(C3H8)アセチレン(C2H2)等の炭化水素ガスを用いることができる。
キャリアガスとしては、カーボン膜の成膜を阻害することなく、原料ガスをSiC多結晶膜へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、第1成膜工程と同様に、水素(H2)を用いることができる。
また、これらの原料ガスおよびキャリアガスと同時に、第3のガスとして、例えば、エッチングガスとしてHClガスを用いることができる。SiC多結晶膜を成膜する際に、原料ガスやキャリアガスの種類と比率が適当でないと、Si粒が一部生成し、単一なSiC多結晶膜とならない場合があるため、Si粒が生成しないようエッチングガスを原料ガス、キャリアガスと同時に好適な比率で供給することができる。
本発明の積層体の製造方法は、上記した工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、成膜装置内の基板ホルダーにカーボン基板を複数枚セットする工程や、セットしたカーボン基板を加熱する工程、化学蒸着前のカーボン基板に、成膜を阻害するような何らかの反応が生じないよう、基板を不活性雰囲気下とするべく、アルゴン等の不活性ガスを流通させる工程等が挙げられる。
次に、本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法について、その一態様を説明する。かかる製造方法は、以下に説明する燃焼除去工程を含む。
本工程は、上記の積層体の製造方法により製造した積層体の、カーボン基板およびカーボン膜を燃焼させて除去する工程である。これにより、カーボン基板およびカーボン膜が消滅して、炭化珪素多結晶膜が残り、これが炭化珪素多結晶基板となる。
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、燃焼除去後、炭化珪素多結晶基板の表面を研磨する研磨工程を含んでもよい。炭化珪素多結晶基板は、例えば半導体の製造に用いられる基板とするのであれば、半導体製造プロセスで使用できる面精度が必要となる。そこで、本工程により、炭化珪素多結晶基板の表面を平滑化することが好ましい。
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、上記の工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、炭化珪素多結晶膜によって完全に被覆されたカーボン基板を燃焼除去させるため、燃焼除去工程の前に炭化珪素多結晶膜の一部を除去してカーボン基板を露出させる露出工程や、研磨工程後の炭化珪素多結晶基板を洗浄する洗浄工程等が挙げられる。
熱CVD装置の反応管内に、直径4インチまたは6インチ、厚み500μm、熱膨張係数4.9×10-6(/K)のカーボン基板10を1枚ずつ固定し、炉内へArガスを流入させながら排気ポンプにより炉内を減圧化した後、1350℃まで加熱し、その後、Arガスを停止させた。次いで、原料ガスとして、SiCl4、CH4、ドーピングガスとしてN2、キャリアガスとしてH2を混合した混合ガスを190l/minの流量で所定の時間反応管内へ流入させ、化学蒸着を行うことで、厚みが約500μmのSiC多結晶膜20を成膜させた(第1成膜工程)。
カーボン基板10の熱膨張係数を4.8×10-6(/K)とし、カーボン膜30の成膜厚みを約80μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜を実施し、積層体110を得た。得られたカーボン膜30の熱膨張係数は4.8×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で36μm、6インチのSiC多結晶基板では45μmであった。
カーボン基板10の熱膨張係数を5.0×10-6(/K)とし、カーボン膜30の成膜厚みを約100μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜を実施し、積層体110を得た。得られたカーボン膜30の熱膨張係数は4.8×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で31μm、6インチのSiC多結晶基板では39μmであった。
カーボン基板10の熱膨張係数を4.8×10-6(/K)とし、カーボン膜の成膜厚みを約10μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜等を実施し、積層体110と同様にカーボン基板10のおもて面とうら面にSiC多結晶膜およびカーボン膜が成膜した積層体を得た。得られたカーボン膜の熱膨張係数は4.9×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で140μm、6インチのSiC多結晶基板では190μmであった。
カーボン基板10の熱膨張係数を4.9×10-6(/K)とし、カーボン膜の成膜厚みを約30μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜等を実施し、比較例1と同様の積層体を得た。得られたカーボン膜の熱膨張係数は4.8×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で80μm、6インチのSiC多結晶基板では120μmであった。
カーボン基板10の熱膨張係数を3.5×10-6(/K)とし、カーボン膜の成膜厚みを約50μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜等を実施し、比較例1と同様の積層体を得た。得られたカーボン膜の熱膨張係数は4.9×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で190μm、6インチのSiC多結晶基板では250μmであった。
カーボン基板10の熱膨張係数を5.5×10-6(/K)とし、カーボン膜の成膜厚みを約50μmとした以外は、実施例1と同様の条件として成膜等を実施し、比較例1と同様の積層体を得た。得られたカーボン膜の熱膨張係数は4.8×10-6(/K)であった。また、実施例1と同様の工程により得られたSiC多結晶基板の反り量は、4インチのSiC多結晶基板で220μm、6インチのSiC多結晶基板では310μmであった。
以上より、本発明であれば、SiC多結晶基板の反りを低減することができるため、横型および縦型のダイオード用SiC基板としてデバイス製造工程に供することが可能である。また、フォトリソグラフィ工程におけるパターン形成不良や、イオン注入工程におけるイオン侵入深さの不均一等を抑制することができ、歩留まりの向上が期待できる。
11 カーボン基板10の表面
20 炭化珪素多結晶膜(SiC多結晶膜)
21 炭化珪素多結晶膜20の表面
30 カーボン膜
100 積層体
110 積層体
200 炭化珪素多結晶膜が成膜したカーボン基板
Claims (4)
- 厚みが300μm〜10mmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン基板と、
前記カーボン基板に成膜する、厚みが300μm〜700μmの炭化珪素多結晶膜と、
前記炭化珪素多結晶膜に成膜する、厚みが50μm〜200μmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン膜と、
を備える積層体。 - 厚みが300μm〜10mmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン基板に、化学蒸着によって厚みが300μm〜700μmの炭化珪素多結晶膜を成膜する第1成膜工程と、
前記炭化珪素多結晶膜に、化学蒸着によって、厚みが50μm〜200μmであり、熱膨張係数が4.0×10-6(/K)〜5.0×10-6(/K)のカーボン膜を成膜する第2成膜工程と、
を含む、積層体の製造方法。 - 請求項2に記載の製造方法により製造した前記積層体の、前記カーボン基板および前記カーボン膜を燃焼させて除去する燃焼除去工程を含む、炭化珪素多結晶基板の製造方法。
- 前記燃焼除去工程後、前記炭化珪素多結晶基板の表面を研磨する研磨工程を含む、請求項3に記載の炭化珪素多結晶基板の製造方法。
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