JP7294021B2 - 黒鉛製支持基板の表面処理方法、炭化珪素多結晶膜の成膜方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法 - Google Patents
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表面処理対象となる黒鉛製支持基板は、化学気相蒸着によって表面に炭化珪素多結晶膜を成膜させるための黒鉛製支持基板である。本発明では、後述する表面処理方法によって、表面に脆弱層を形成した黒鉛支持基板を用いて、炭化珪素多結晶基板を製造する。支持基板として黒鉛製の基板を用いれば、800℃を超えるような温度条件で化学気相蒸着を行う熱CVD法においても、蒸着処理中において支持基板そのものに軟化や形状の変形等が発生しない。
黒鉛製支持基板は、成膜対象面に脆弱層を備えており、その平均厚みは0.1~1.0μmである。平均厚みは、例えば黒鉛製支持基板の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、任意の3点の膜厚の平均を求めることで算出できる。
〈脆弱層形成工程〉
平均厚み0.1~1.0μmの脆弱層は、ショットブラストやグリッドブラスト等のブラスト処理により、成膜対象面にダメージを与えて粗面を得ることで形成することができる。使用する研掃材の形状や素材、ブラストの処理条件は、黒鉛製支持基板の成膜対象面に脆弱層を形成できるよう、適宜調整することができる。
脆弱層が無い場合には、黒鉛製支持基板の成膜対象面に炭化珪素多結晶膜が成膜された後の冷却時に、黒鉛製支持基板の熱膨張係数と炭化珪素多結晶膜の熱膨脹係数の差による収縮量の違いにより、炭化珪素多結晶膜に内部応力が発生し、大きな反りが発生する。
本発明の黒鉛製支持基板の表面処理方法は、脆弱層形成工程とは別の工程を含むことができる。例えば、ブラスト処理により発生した黒鉛の粉や異物が脆弱層に付着している場合には、これらを除去する工程を含むことができる。
次に、本発明の炭化珪素多結晶膜の成膜方法について、その一態様を説明する。かかる炭化珪素多結晶膜の成膜方法は、上記した表面処理方法により得た黒鉛製支持基板の脆弱層の表面に、化学気相蒸着によって炭化珪素の多結晶膜を成膜する成膜工程を含む。この工程により、成膜対象となる脆弱層の表面に、炭化珪素多結晶膜(SiC多結晶膜)を成膜することができる。
SiC多結晶膜は、化学的気相成長法(CVD法)により化学蒸着させることで成膜できる。例えば、脆弱層を備える黒鉛製支持基板を成膜装置の反応炉内に固定し、減圧状態でAr等の不活性ガスを流しながら炉内を反応温度まで昇温させる。反応温度に達したら、不活性ガスの導入を止め、原料ガスおよびキャリアガスを反応炉内に流すことで、脆弱層にSiC多結晶膜を成膜することができる。
原料ガスとしては、SiC多結晶膜を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用されるSi系原料ガスやC系原料ガスを用いることができる。Si系原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)を用いることができるほか、モノクロロシラン(SiH3Cl)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)等のエッチング作用があるClを含む塩素系Si原料含有ガス(クロライド系原料)を用いることもできる。また、C系原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、アセチレン(C2H2)等の炭化水素ガスを用いることができる。また、上記のほか、トリクロロメチルシラン(CH3Cl3Si)、トリクロロフェニルシラン(C6H5Cl3Si)、ジクロロメチルシラン(CH4Cl2Si)、ジクロロジメチルシラン((CH3)2SiCl2)、クロロトリメチルシラン((CH3)3SiCl)等のSiとCとを両方含むガスも、原料ガスとして用いることができる。
キャリアガスとしては、成膜を阻害することなく、原料ガスを基板へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、熱伝導率に優れ、SiCに対してエッチング作用がある水素(H2)を用いることができる。
また、これらの原料ガスおよびキャリアガスと同時に、第3のガスとして、不純物ドーピングガスを同時に供給することもできる。例えば、導電型をn型とする場合には窒素(N2)ガス、p型とする場合にはトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いることができる。
本発明の炭化珪素多結晶膜の成膜方法は、成膜工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、成膜装置内の基板ホルダーに脆弱層を備える黒鉛製支持基板を複数枚セットする工程や、セットした基板を加熱する工程、化学蒸着前の基板に、成膜を阻害するような何らかの反応が生じないよう、基板を不活性雰囲気下とするべく、アルゴン等の不活性ガスを流通させる工程等が挙げられる。
次に、本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法について、その一態様を説明する。かかる製造方法は、以下に説明する露出工程と燃焼除去工程とを含む。この方法により、炭化珪素多結晶基板を製造することができる。
露出工程の一例としては、上記した本発明の炭化珪素多結晶膜の成膜方法により得た、表面にSiC多結晶膜が成膜した基板に対し、成膜したSiC多結晶膜の端部を除去して黒鉛製支持基板を露出させる工程が挙げられる。この工程により、黒鉛製支持基板が露出され、後述する燃焼除去工程により黒鉛製支持基板を気化させ易くなる。
燃焼除去工程の一例としては、O2雰囲気下において、圧力を1気圧、温度1000℃の条件下に、露出工程後の黒鉛製支持基板を10時間以上保持する工程が挙げられる。本工程により、黒鉛製支持基板を燃焼させて除去できるため、炭化珪素多結晶基板を得ることができる。
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、燃焼除去工程後、成膜した炭化珪素多結晶膜の表面を研磨する研磨工程を含んでもよい。炭化珪素多結晶基板は、半導体の製造に用いられる基板とするのであれば、半導体製造プロセスで使用できる面精度が必要となる。そこで、本工程により、炭化珪素基板の表面を平滑化することが好ましい。
本発明の炭化珪素基板の製造方法は、上記の工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、研磨工程による炭化珪素基板への付着物を除去するための洗浄工程等が挙げられる。
〈脆弱層の形成〉
支持基板として、直径6インチで厚みが500μmの黒鉛製基板を使用した。支持基板の成膜対象面に対し、ガラスビーズを用いたショットブラスト処理を行い、平均厚みが0.1μmの脆弱層を形成した。
上記方法にて製造した脆弱層を備える支持基板に、成膜装置を用いた化学気相蒸着によって、炭化珪素多結晶膜として厚み0.6mmのSiC多結晶膜を支持基板の両面に成膜した。成膜条件は、成膜室内の圧力を25kPa、温度を1350℃とし、SiCl4ガスとCH4ガスを各800sccm、キャリアガスとして水素ガスを5000sccm(1気圧、0℃での値に換算したガス流量)で導入し、20時間の成膜を実施してSiC多結晶膜を成膜した。
SiC多結晶膜を成膜後、端面加工装置を使用し、SiC多結晶膜が成膜した支持基板の外周部を研磨することで、支持基板の側面を露出させた。その後、O2雰囲気下で、圧力は1気圧で、温度は1000℃の条件下で、支持基板を10時間保持して、支持基板を燃焼させ、支持基板を完全に除去し、SiC多結晶基板を得た。
支持基板上に形成した脆弱層の厚みが1.0μmとなるように、ガラスビーズを用いたショットブラスト処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にし、SiC多結晶基板を得た。
ガラスビーズを用いたショットブラスト処理を行わず、支持基板上に脆弱層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にし、SiC多結晶基板を得た。
以上より、本発明によれば、炭化珪素多結晶基板の反りを抑制することができることは明らかである。
101 側面
110 脆弱層
200 炭化珪素多結晶膜
300 炭化珪素多結晶基板
Claims (3)
- 黒鉛製支持基板の成膜対象面にブラスト処理し、平均厚み0.1~1.0μmの脆弱層を形成する脆弱層形成工程を含む、黒鉛製支持基板の表面処理方法により得た前記黒鉛製支持基板の前記脆弱層の表面に、化学気相蒸着によって炭化珪素の多結晶膜を成膜する成膜工程を含む、炭化珪素多結晶膜の成膜方法。
- 請求項1に記載の成膜方法により得た、表面に炭化珪素多結晶膜が成膜した前記黒鉛製支持基板に対し、前記炭化珪素多結晶膜の少なくとも一部を除去して前記黒鉛製支持基板を露出させる露出工程と、
前記露出工程後、前記黒鉛製支持基板を燃焼させて除去する燃焼除去工程と、を含む、炭化珪素多結晶基板の製造方法。 - 前記燃焼除去工程後、前記炭化珪素多結晶膜の表面を研磨する研磨工程を含む、請求項2に記載の炭化珪素多結晶基板の製造方法。
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