JP7322408B2 - 炭化珪素多結晶基板、炭化珪素多結晶膜の製造方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法 - Google Patents

炭化珪素多結晶基板、炭化珪素多結晶膜の製造方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化珪素多結晶基板、炭化珪素多結晶膜の製造方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法に関する。
炭化珪素(以下、「SiC」とする場合がある)は、ケイ素(以下、「Si」とする場合がある)と炭素で構成される化合物半導体材料である。SiCは、絶縁破壊電界強度がSiの10倍、バンドギャップがSiの3倍と優れているだけでなく、デバイスの作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であることなどから、Siの限界を超えるパワーデバイス用材料として期待されている。
しかしながら、SiC半導体は、広く普及するSi半導体と比較し、大面積のSiC単結晶基板が得られず、工程も複雑であることから、Si半導体と比較して大量生産ができず、高価であった。
SiC半導体のコストを下げるため、様々な工夫が行われてきた。例えば、特許文献1には、SiC基板の製造方法であって、少なくとも、マイクロパイプの密度が30個/cm2以下のSiC単結晶基板とSiC多結晶基板を準備し、前記SiC単結晶基板と前記SiC多結晶炭化珪素基板とを貼り合わせる工程を行い、その後、SiC単結晶基板を薄膜化する工程を行うことで、SiC多結晶基板上にSiC単結晶層を形成した基板を製造することが記載されている。
更に、特許文献1には、SiC単結晶基板とSiC多結晶基板とを貼り合わせる工程の前に、SiC単結晶基板に水素イオン注入を行って水素イオン注入層を形成する工程を行い、SiC単結晶基板とSiC多結晶基板とを貼り合わせる工程の後、SiC単結晶基板を薄膜化する工程の前に、350℃以下の温度で熱処理を行い、SiC単結晶基板を薄膜化する工程を、水素イオン注入層にて機械的に剥離する工程とするSiC基板の製造方法が記載されている。
このような方法により、1つのSiC単結晶のインゴットから、より多くのSiC基板が得られるようになった。
特開2009-117533号公報
しかしながら、前記記載の方法で製造されたSiC基板は、その大部分がSiC多結晶基板である。そのため、SiC多結晶基板とSiC単結晶基板とを貼り合わせたSiC基板の反りの大きさは、SiC多結晶基板の反りの大きさが支配的となる。そのため、カーボン支持基板より分離したSiC多結晶膜の反りが大きいと、このようなSiC多結晶膜をダイオードやトランジスタのデバイス製造工程で使用する際、反りに起因する歩留まりが悪化していた。また、SiC多結晶基板とSiC単結晶基板とを貼り合わせた後のデバイス製造工程において、SiC基板の反りが大きいと、フォトリソグラフィ工程におけるパターン形成不良や、イオン注入工程におけるイオン侵入深さが不均一となる等の問題が生じる。そのため、SiC多結晶膜の反りは小さいことが求められる。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、例えば、化学的気相成長法(以下、「CVD法」とする場合がある)によって支持基板上に窒素ドーピングガスとともにSiC多結晶膜を成膜した後、支持基板から分離することでSiC多結晶基板を製造する場合において、分離後のSiC多結晶基板内の応力不均衡に起因し、SiC多結晶基板の反りが大きくなるという課題を解決することで、多結晶基板の反りを低減した高導電率の炭化珪素多結晶基板を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、CVD法によって支持基板上に窒素ドーピングガスを同伴させてSiC多結晶膜を成膜する工程において、成膜されるSiC多結晶膜の厚み方向に、窒素含有量が互いに異なる複数の層を設けることで、多結晶膜内の応力不均衡を低減させ、高導電率を保持しながらSiC多結晶基板の反りを低減させることを見出すに至った。
上記課題を解決するために、本発明の炭化珪素多結晶基板は、厚さ方向に順に積層された第1層と第2層と第3層とを有し、前記第1層および前記第3層のいずれもが、前記第2層に対し、10~105 倍の窒素原子濃度を有し、且つ、6~35 倍の厚さを有している。
炭化珪素多結晶基板は、前記第1層および前記第3層の窒素原子濃度がいずれも1019~1020個/cm3であり、前記第2層の窒素原子濃度が1015~1018個/cm3であることが好ましい。
炭化珪素多結晶基板は、前記第1層および前記第3層の厚さがいずれも200~300 μmであり、前記第2層の厚さが8~35 μmであることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の炭化珪素多結晶膜の製造方法は、CVD法によって支持基板上に炭化珪素多結晶膜を形成する炭化珪素多結晶膜の製造方法であって、第1層を形成する第1成膜工程と、第2層を形成する第2成膜工程と、第3層を形成する第3成膜工程と、を順次実施し、前記第1成膜工程および前記第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率を、前記第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率に対して5~200 倍とし、前記第1成膜工程および前記第3成膜工程における成膜時間を、前記第2成膜工程における成膜時間の6~35 倍とする。
炭化珪素多結晶膜の製造方法では、前記第1成膜工程および前記第3成膜工程において、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:10~1:1:40となるようにガス流量比を設定し、前記第2成膜工程において、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:0.1~1:1:4となるようにガス流量比を設定することが好ましい。
炭化珪素多結晶膜の製造方法では、前記第1~第3成膜工程において、反応管内の温度が1200~1700℃であり且つ圧力が25~35kPaである条件下で成膜し、前記第1成膜工程および前記第3成膜工程において、成膜時間を8~12時間とし、前記第2成膜工程において、成膜時間を0.4~1.5時間とすることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、上記の炭化珪素多結晶膜の製造方法によって得られた炭化珪素多結晶膜において、前記支持基板を除去することで炭化珪素多結晶基板を得る除去工程を含む。
炭化珪素多結晶基板の製造方法では、前記支持基板の除去後、前記炭化珪素多結晶基板の表面を研磨する研磨工程を含むことが好ましい。
本発明の炭化珪素多結晶基板、炭化珪素多結晶膜の製造方法および炭化珪素多結晶基板の製造方法によれば、高い導電率を損なうことなく、SiC多結晶基板の反りを低減できる。そのため、横型のダイオード用SiC基板に加え縦型のダイオード用SiC基板として、デバイス製造工程に供することが可能で、炭化珪素多結晶基板の反りが小さいことでフォトリソグラフィ工程におけるパターン形成不良や、イオン注入工程におけるイオン侵入深さの不均一等を抑制することができ、歩留まりの向上が期待できる。
本発明の炭化珪素多結晶膜の一例である炭化珪素多結晶膜100の概略断面図である。 本発明の炭化珪素多結晶膜の一例である炭化珪素多結晶基板200の概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明するが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
[炭化珪素多結晶基板]
本発明の炭化珪素多結晶基板は、例えば以下に説明する支持基板上に炭化珪素多結晶膜が形成された積層体から、支持基板が除去されたものである。即ち、支持基板上に形成されたものを「炭化珪素多結晶膜」と呼び、支持基板が除去されて膜単体となったものを「炭化珪素多結晶基板」と呼ぶ。
〈支持基板〉
支持基板としては、カーボン基板が例示されるが、シリコン基板であってもよい。支持基板がカーボン製であれば、燃焼によってSiC多結晶膜を容易に分離することができ、支持基板がシリコン製であれば、酸を用いた溶解によってSiC多結晶膜を容易に分離することができる。
〈炭化珪素多結晶膜〉
炭化珪素多結晶膜は、支持基板上に成膜されるものであって、厚さ方向に順に積層された第1層と第2層と第3層とを有する。例えば、後述する炭化珪素多結晶基板の製造方法により、支持基板への化学蒸着によってSiC多結晶膜を成膜することができる。なお、炭化珪素多結晶膜の平面の大きさは、直径4インチまたは6インチのいずれでもよい。例えば、後述する炭化珪素多結晶基板の製造方法において、直径4インチまたは6インチのカーボン基板への化学蒸着によって炭化珪素多結晶基板を成膜することにより、このような炭化珪素多結晶基板を得ることができる。
<第1層>
第1層は、支持基板の上に形成された膜であって、例えば窒素原子濃度が1019~1020個/cm3であり、厚みが200~300μmのものである。第1層の窒素原子濃度が低すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがあり、第1層の窒素原子濃度が高すぎると、SiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。また、第1層の厚みが薄すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがあり、第1層の厚みが厚すぎると、SiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。
<第2層>
第2層は、第1層の上に形成された膜であって、例えば窒素原子濃度が1015~1018個/cm3であり、厚みが8~35μmのものである。第2層の窒素原子濃度が低すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがあり、第2層の窒素原子濃度が高すぎると、反りの抑制作用が低下してSiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。また、第2層の厚みが薄すぎると、反りの抑制作用が低下してSiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがあり、第2層の厚みが厚すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがある。
<第3層>
第3層は、第2層の上に形成された膜であって、例えば窒素原子濃度が1019~1020個/cm3であり、厚みが200~300μmのものである。第3層の窒素原子濃度が低すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがあり、第3層の窒素原子濃度が高すぎると、SiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。また、第3層の厚みが薄すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがあり、第3層の厚みが厚すぎると、SiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。
<第1層と第2層と第3層との関係>
第1層および第3層のいずれもが、第2層に対し、10~105倍の窒素原子濃度を有し、且つ、6~35倍の厚さを有している。尚、第1層と第2層とは、窒素原子濃度や厚さが互いに等しくてもよいし異なっていてもよく、いずれも上記の数値の範囲に含まれていればよい。第1層および第3層の窒素原子濃度が第2層の窒素原子濃度に対して低すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがある。第1層および第3層の窒素原子濃度が第2層の窒素原子濃度に対して高すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがある。第1層および第3層の厚さが第2層の厚さに対して薄すぎると、SiC多結晶膜全体の導電率が低くなってしまうおそれがある。第1層および第3層の厚さが第2層の厚さに対して厚すぎると、SiC多結晶膜全体の反りが大きくなってしまうおそれがある。
[炭化珪素多結晶膜の製造方法]
次に、上記した本発明の炭化珪素多結晶膜について、その製造方法の一態様を説明する。かかる製造方法は、以下に説明する第1成膜工程と、第2成膜工程と、第3成膜工程と、を含む。第1成膜工程、第2成膜工程および第3成膜工程は、いずれも炭化珪素多結晶膜を形成する工程であり、まず共通条件について説明し、その後、第1成膜工程、第2成膜工程および第3成膜工程の個別の条件について説明する。
(共通条件)
炭化珪素多結晶膜は、CVD法により化学蒸着させることで成膜される。例えば、支持基板を成膜装置の反応炉内に固定し、減圧状態でAr等の不活性ガスを流しながら炉内を反応温度まで昇温させる。反応温度に達したら、不活性ガスを止め、原料ガスおよびキャリアガス等を流すことで、カーボン基板に成膜されたSiC多結晶膜を得ることができる。
より具体的には、加熱した支持基板に、1200~1700℃の温度に加熱した、SiC多結晶膜の成分を含む原料ガスやキャリアガス等の混合ガスを供給し、25~35kPaの条件下において支持基板の表面や気相での化学反応を所定時間行うことにより、SiC多結晶膜を堆積する方法が挙げられる。
炭化珪素多結晶膜の導電率は、窒素原子濃度に応じて変化し、炭化珪素多結晶膜における窒素原子濃度は、原料ガス流量とドーピングガス流量との比率(ガス流量比)に応じて変化する。従って、炭化珪素多結晶膜の目標とする導電率に応じてガス流量比を設定する。炭化珪素多結晶膜の厚みは、成膜時間やガス流量等に応じて変化する。従って、炭化珪素多結晶膜の必要な厚みに応じて成膜時間やガス流量等を設定する。
〈原料ガス〉
原料ガスとしては、SiC多結晶膜を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用されるSi系原料ガスやC系原料ガスを用いることができる。Si系原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)を用いることができるほか、モノクロロシラン(SiH3Cl)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)などのエッチング作用があるClを含む、塩素系Si原料含有ガス(クロライド系原料)を用いることもできる。また、C系原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)やプロパン(C38)アセチレン(C22)等の炭化水素ガスを用いることができる。また、上記のほか、トリクロロメチルシラン(CH3Cl3Si)、トリクロロフェニルシラン(C65Cl3Si)、ジクロロメチルシラン(CH4Cl2Si)、ジクロロジメチルシラン((CH32SiCl2)、クロロトリメチルシラン((CH33SiCl)等のSiとCとを両方含むガスも、原料ガスとして用いることができる。
〈ドーピングガス〉
また、ドーピングガスとしては、SiC多結晶膜中に不純物としての窒素を導入することができるようなガスであれば特に限定されず、例えば窒素(N2)等のN系ガスを用いることができる。
〈キャリアガス〉
キャリアガスとしては、成膜を阻害することなく、原料ガスを基板へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、熱伝導率に優れ、SiCに対してエッチング作用がある水素(H2)を用いることができる。
〈その他のガス〉
また、これらの原料ガスおよびキャリアガスと同時に、第3のガスとして、例えば、エッチングガスとしてHClガスを用いることができる。SiC多結晶膜を成膜する際に、原料ガスやキャリアガスの種類と比率が適当でないと、Si粒が一部生成し、単一なSiC多結晶膜とならない場合があるため、Si粒が生成しないようエッチングガスを原料ガス、キャリアガスと同時に好適な比率で供給することができる。
(第1成膜工程)
第1成膜工程においては、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:10~1:1:40となるようにガス流量比を設定する。例えば、原料ガスとしてSiCl4ガスおよびCH4ガスを用い、ドーピングガスとしてN2ガスを用いる場合には、SiCl4ガスとCH4ガスとN2ガスとのガス流量比を1:1:5~1:1:20とすればよい。また、第1成膜工程においては、成膜時間を8~12時間とする。このような第1成膜工程によって、上記のような窒素原子濃度および厚みを有する第1層を形成することができる。
(第2成膜工程)
第2成膜工程においては、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:0.1~1:1:4となるようにガス流量比を設定する。例えば、原料ガスとしてSiCl4ガスおよびCH4ガスを用い、ドーピングガスとしてN2ガスを用いる場合には、SiCl4ガスとCH4ガスとN2ガスとのガス流量比を1:1:0.05~1:1:2とすればよい。また、第2成膜工程においては、成膜時間を0.4~1.5時間とする。尚、第1成膜工程から第2成膜工程への切り換え時には、ドーピングガスの流量のみを低下させればよい。このような第2成膜工程によって、上記のような窒素原子濃度および厚みを有する第2層を形成することができる。
(第3成膜工程)
第3成膜工程においては、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:10~1:1:40となるようにガス流量比を設定する。例えば、原料ガスとしてSiCl4ガスおよびCH4ガスを用い、ドーピングガスとしてN2ガスを用いる場合には、SiCl4ガスとCH4ガスとN2ガスとのガス流量比を1:1:5~1:1:20とすればよい。また、第3成膜工程においては、成膜時間を8~12時間とする。尚、第2成膜工程から第3成膜工程への切り換え時には、ドーピングガスの流量のみを増加させればよい。このような第3成膜工程によって、上記のような窒素原子濃度および厚みを有する第3層を形成することができる。
(第1~第3成膜工程の関係)
第1成膜工程および第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率は、第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率に対し、5~200倍とする。また、第1成膜工程および前記第3成膜工程における成膜時間は、第2成膜工程における成膜時間の6~35倍とする。尚、第1成膜工程と第3成膜工程とにおいて、原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率が互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、第1成膜工程と第3成膜工程とにおいて、成膜時間が互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。
〈その他の工程〉
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、上記した工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、成膜装置内の基板ホルダーにカーボン基板を複数枚セットする工程や、セットしたカーボン基板を加熱する工程、化学蒸着前のカーボン基板に、成膜を阻害するような何らかの反応が生じないよう、基板を不活性雰囲気下とするべく、アルゴン等の不活性ガスを流通させる工程等が挙げられる。
[炭化珪素多結晶基板の製造方法]
次に、本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法について、その一態様を説明する。かかる製造方法は、以下に説明する除去工程を含む。
〈除去工程〉
上記の炭化珪素多結晶膜の製造方法により、支持基板上に炭化珪素多結晶膜が形成され、即ち支持基板と炭化珪素多結晶膜との積層体が製造される。本工程は、この積層体における支持基板を除去する工程である。これにより、支持基板が消滅して炭化珪素多結晶膜が残り、これが炭化珪素多結晶基板となる。
支持基板としてカーボン基板を用いる場合、カーボン基板を燃焼除去するが、燃焼除去は、空気中で加熱する等の適宜な方法で行うことができる。加熱条件としては、例えば大気雰囲気下にて1000℃程度に加熱する条件が挙げられる。また、支持基板としてシリコン基板を用いる場合、酸によってシリコンを溶解することで除去することができる。例えば、フッ酸と硝酸とを体積比1:1で混合した溶液に24時間浸漬することにより、シリコン製の支持基板を溶解させて除去すればよい。
〈研磨工程〉
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、支持基板の除去後、炭化珪素多結晶基板の表面を研磨する研磨工程を含んでもよい。炭化珪素多結晶基板は、例えば半導体の製造に用いられる基板とするのであれば、半導体製造プロセスで使用できる面精度が必要となる。そこで、本工程により、炭化珪素多結晶基板の表面を平滑化することが好ましい。
例えば、炭化珪素多結晶基板をダイアモンドスラリーでラップ処理し、ダイアモンドとアルミナとの混合スラリーでハードポリッシュした後に、シリカスラリー(コロイダルシリカ、pH11)でポリッシュするという工程を経て、炭化珪素多結晶基板の表面を平滑化することができる。
(その他の工程)
本発明の炭化珪素多結晶基板の製造方法は、上記の工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、炭化珪素多結晶膜によって完全に被覆されたカーボン基板を燃焼除去させるため、除去工程の前に炭化珪素多結晶膜の一部を除去してカーボン基板を露出させる露出工程や、研磨工程後の炭化珪素多結晶基板を洗浄する洗浄工程、炭化珪素多結晶膜に残留した歪を緩和するため、露出工程の前後において、例えば不活性ガス雰囲気下で2000℃程度での焼鈍処理を行うアニール工程等が挙げられる。
露出工程としては、具体的には、ダイアモンドやC-BN(立方晶BN)砥粒を用いたシングルワイヤソーで炭化珪素多結晶膜の外周端部の一部を切断する方法や、研磨ホイールで炭化珪素多結晶膜の外周端部の一部を削り落とすことにより、カーボン基板を露出させることができる。
上記の炭化珪素多結晶膜の製造方法によって、図1に示すような積層体100が得られ、炭化珪素多結晶基板の製造方法によって、図2に示すようなSiC多結晶基板200が得られる。積層体100は、支持基板110と、SiC多結晶膜120と、を有する。SiC多結晶膜120は、第1層121と第2層122と第3層123とによって構成される。SiC多結晶基板200は、SiC多結晶膜120と同様に、第1層121と第2層122と第3層123とを有する。尚、図1には支持基板110の両面にSiC多結晶膜120が成膜された様子を示しているが、支持基板110の片面のみにSiC多結晶膜120が成膜されていてもよい。
上記のようにN系ガスをドーピングガスとして混合してSiC多結晶膜を製膜することにより、SiC結晶中のCサイトがNによって置換されることで、結晶格子が収縮して、SiC多結晶膜120内に残留応力が発生する。窒素原子の取り込み量が多いほど残留応力は大きくなる傾向があることが知られている。一方、窒素原子の取り込み量を少なくすれば残留応力を小さくして反りを抑制することができるものの、導電率が低下してしまう。即ち、単にドーパント量を調節しただけでは、反りの低減と高導電率化とを両立することはできない。
また、支持基板110として上記のようにシリコン基板やカーボン基板を用いることができるが、SiC多結晶膜の成長初期は、異素材を出発点としたSiC核形成が生じることで、多結晶粒の形状・大きさ・結晶配向が、成長後期とは大きく異なるため、SiC多結晶膜120内の残留応力が成膜の(成長の)初期と後期で不均衡を生じることにより、SiC多結晶基板の反りを発生させる一因となる。
ただし、本発明であれば、SiC多結晶膜120において、成長初期に形成される第1層121と、成長後期に形成される第3層123と、の間に、窒素濃度を低下させた成長層である第2層を、導電率を損なわない厚みだけ形成することで、前述の応力不均衡を低減させることができる。
すなわち、CVD法によって支持基板110上にSiC多結晶膜120を成膜する工程において、成長初期には第1成膜工程によって、厚さ200~300μm、窒素濃度1019~1020個/cm3の第1層121を成膜し、第1成膜工程の後に第2成膜工程によって、厚さ10~30μm、窒素濃度1015~1018個/cm3の第2層122を成膜し、第2成膜工程の後の成長後期には第3成膜工程によって、厚さ200~300μm、窒素濃度1019~1020個/cm3の第3層123を成膜することにより、デバイス製造で一般的に要求される厚み400~600μm、導電率50S/cm以上、反り50μm以下のSiC多結晶基板を製造することが可能となる。尚、反り50μm以下という基準は6インチ基板に対応したものであり、4インチ基板を用いる場合には反り40μm以下を基準とすればよい。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例および比較例によって限定されるものではない。
[比較例1-1]
熱CVD装置の反応管内に、支持基板として直径6インチ、厚み500μmのシリコン製基板(支持基板110)を1枚ずつ固定し、炉内へArガスを流入させながら排気ポンプにより炉内を減圧化した後、1350℃まで加熱し、その後、Arガスを停止させた。次いで、原料ガスとして、SiCl4、CH4、ドーピングガスとしてN2、キャリアガスとしてH2を混合した混合ガスを反応管内に流入させた。化学蒸着により、支持基板110のおもて面とうら面との両方に対して、まずSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:10:10の条件で10時間の成膜を実施した(第1成膜工程)。混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:20とした。このとき、炉内圧力を30kPaとした。
続いて、N2ガス流量のみを低減し、SiCl4:CH4:N2:H2=1:1:0.1:10の条件で3分間の成膜を実施した(第2成膜工程)。即ち、混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:0.2とした。さらに続いて、N2ガス量のみを増加させ、SiCl4:CH4:N2:H2=1:1:10:10の条件で10時間の成膜を実施した(第3成膜工程)。即ち、混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:20とした。
第1成膜工程および第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=10)は、第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=0.1)に対して100倍である。第1成膜工程および第3成膜工程における成膜時間は、第2成膜工程における成膜時間の200倍である。
得られたSiC多結晶膜120の断面について、成膜厚みを走査型電子顕微鏡、窒素原子濃度を二次イオン質量分析装置、導電率を4端子法により評価したところ、第1層121の厚みは250μm、窒素原子濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは1μm、窒素原子濃度は3×1015個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、窒素原子濃度は5×1019個/cm3であった。また、SiC多結晶膜120全体の導電率は70S/cmであった。
また、得られた積層体100に対し、端面加工装置を使用して外周部を研磨することで支持基板を露出させ(露出工程)、フッ酸と硝酸との混合溶液によって支持基板110を溶解させて除去し(除去工程)、SiC多結晶膜120の端部および両面を研削した(研磨工程)。これにより、直径6インチ、厚み350μmとしたSiC多結晶基板200を得た。このSiC多結晶基板200について、斜入射型光学測定器により反りを評価した。このとき、SiC多結晶基板の表面の中心線上を斜入射型光学測定器により測定し、得られた測定値の最大値と最小値との差を反り量とした。測定は5点とし、中心、円周端部、および中心と円周端部との間にあり、中心からの距離と円周端部からの距離が同じ地点について、測定した。SiC多結晶基板200の反り量は140μmであった。
[比較例1-2]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:0.5:10とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:1とした。また、第1成膜工程および第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=10)は、第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=0.5)に対して20倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは1μm、N濃度は5×1016個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は80S/cm、反り量は170μmであった。
[比較例1-3]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:1:10とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:2とした。また、第1成膜工程および第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=10)は、第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=1)に対して10倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは1μm、N濃度は7×1017個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は75S/cm、反り量は130μmであった。
[比較例1-4]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:5:10とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、混合ガスにおけるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率を1:1:10とした。また、第1成膜工程および第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=10)は、第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率(=5)に対して2倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは1μm、N濃度は6×1018個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は90S/cm、反り量は150μmであった。
[実施例1-1]
第2成膜工程において、成膜時間を30分間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、第1成膜工程および第3成膜工程における成膜時間は、第2成膜工程における成膜時間の20倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは10μm、N濃度は3×1015個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は65S/cm、反り量は40μmであった。
[実施例1-2]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:0.5:10とするとともに成膜時間を30分間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは10μm、N濃度は6×1016個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は70S/cm、反り量は45μmであった。
[実施例1-3]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:1:10とするとともに成膜時間を30分間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは10μm、N濃度は6×1017個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は65S/cm、反り量は40μmであった。
[比較例2]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:5:10とするとともに成膜時間を30分間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは10μm、N濃度は5×1018個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は80S/cm、反り量は60μmであった。
[実施例2-1]
第2成膜工程において、成膜時間を1.2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、第1成膜工程および第3成膜工程における成膜時間は、第2成膜工程における成膜時間の8.3倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは30μm、N濃度は4×1015個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は50S/cm、反り量は35μmであった。
[実施例2-2]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:0.5:10とするとともに成膜時間を1.2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは30μm、N濃度は5×1016個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は55S/cm、反り量は40μmであった。
[実施例2-3]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:1:10とするとともに成膜時間を1.2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは30μm、N濃度は6×1017個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は60S/cm、反り量は35μmであった。
[比較例3]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:5:10とするとともに成膜時間を1.2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは30μm、N濃度は6×1018個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は65S/cm、反り量は70μmであった。
[比較例4-1]
第2成膜工程において、成膜時間を2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。即ち、第1成膜工程および第3成膜工程における成膜時間は、第2成膜工程における成膜時間の5倍である。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは50μm、N濃度は3×1015個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は15S/cm、反り量は35μmであった。
[比較例4-2]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:0.5:10とするとともに成膜時間を2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは50μm、N濃度は4×1016個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は25S/cm、反り量は35μmであった。
[比較例4-3]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:1:10とするとともに成膜時間を2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは50μm、N濃度は7×1017個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は20S/cm、反り量は40μmであった。
[比較例4-4]
第2成膜工程において、ガス流量比をSiCl4:CH4:N2:H2=1:1:5:10とするとともに成膜時間を2時間とした以外は、比較例1-1と同様として成膜を実施した。
得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200を、比較例1-1と同様の方法で評価したところ、第1層121の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であり、第2層122の厚みは50μm、N濃度は5×1018個/cm3であり、第3層123の厚みは250μm、N濃度は5×1019個/cm3であった。また導電率は30S/cm、反り量は55μmであった。
以上のような実施例および比較例について、製造条件を表1に示し、得られたSiC多結晶膜120およびSiC多結晶基板200の特性を表2に示す。尚、表1における「N2ガス比率」とは、原料ガスであるSiCl4ガスおよびCH4ガスに対するN2ガスの流量比を示す。また、表2における「総合合否」は、導電率の基準である50S/cm以上を満足し(導電率合否が「○」)、且つ、反り量の基準である50μm以下を満足する(反り合否が「○」)ものを「○」とし、それ以外のものは「×」とした。
Figure 0007322408000001
Figure 0007322408000002
[まとめ]
CVD法によって支持基板上にSiC多結晶膜を成膜する工程において、成長初期には第1成膜工程によって、厚さ200~300μm、窒素濃度1019~1020個/cm3の第1層を成膜し、第1成膜工程の後に第2成膜工程によって、厚さ10~30μm、窒素濃度1015~1018個/cm3の第2層を成膜し、第2成膜工程の後の成長後期には第3成膜工程によって、厚さ200~300μm、窒素濃度1019~1020個/cm3の第3層を成膜することにより、デバイス製造で一般的に要求される厚み400~600μm、導電率50S/cm以上、反り50μm以下のSiC多結晶基板を製造することが可能となる。
110 支持基板
120 SiC多結晶膜
121 第1層
122 第2層
123 第3層
200 SiC多結晶基板

Claims (7)

  1. 厚さ方向に順に積層された第1層と第2層と第3層とを有し、
    前記第1層および前記第3層のいずれもが、前記第2層に対し、10倍よりも大きく、且つ10倍以下の窒素原子濃度を有し、且つ、6~35倍の厚さを有しており、
    前記第1層および前記第3層の厚さがいずれも200~300μmであり、
    前記第2層の厚さが8~35μmであることを特徴とする炭化珪素多結晶基板。
  2. 前記第1層および前記第3層の窒素原子濃度がいずれも1019~1020個/cmであり、
    前記第2層の窒素原子濃度が1015~1018個/cmであることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素多結晶基板。
  3. CVD法によって支持基板上に炭化珪素多結晶膜を形成する炭化珪素多結晶膜の製造方法であって、
    前記支持基板に第1層を形成する第1成膜工程と、前記1層に第2層を形成する第2成膜工程と、前記2層に第3層を形成する第3成膜工程と、を順次実施し、
    前記第1成膜工程および前記第3成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率を、前記第2成膜工程における原料ガス流量に対するドーピングガス流量の比率に対して5~200倍とし、
    前記第1成膜工程および前記第3成膜工程における成膜時間を、前記第2成膜工程における成膜時間の6~35倍とすることを特徴とする炭化珪素多結晶膜の製造方法。
  4. 前記第1成膜工程および前記第3成膜工程において、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:10~1:1:40となるようにガス流量比を設定し、
    前記第2成膜工程において、原料ガスおよびドーピングガスに含まれるケイ素原子と炭素原子と窒素原子との比率が1:1:0.1~1:1:4となるようにガス流量比を設定することを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素多結晶膜の製造方法。
  5. 前記第1~第3成膜工程において、反応管内の温度が1200~1700℃であり且つ圧力が25~35kPaである条件下で成膜し、
    前記第1成膜工程および前記第3成膜工程において、成膜時間を8~12時間とし、
    前記第2成膜工程において、成膜時間を0.4~1.5時間とすることを特徴とする請求項3又は4に記載の炭化珪素多結晶膜の製造方法。
  6. 請求項3~5のいずれか1項に記載された炭化珪素多結晶膜の製造方法によって得られた炭化珪素多結晶膜において、
    前記支持基板を除去することで炭化珪素多結晶基板を得る除去工程を含むことを特徴とする炭化珪素多結晶基板の製造方法。
  7. 前記支持基板の除去後、前記炭化珪素多結晶基板の表面を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素多結晶基板の製造方法。
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