JP2020097647A - バイポーラ膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる問題を解決するための手段として、イオン交換性を有するペースト状の接着剤を用いて、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを貼り合わせ、この後に、適宜、放射線照射等により接着剤を硬化させる等の手段が、古くは特許文献1等により提案されている。
しかしながら、このような接着剤を用いて貼り合わせたバイポーラ膜は、水中に浸漬したときに、カチオン交換膜とアニオン交換膜との間で膨潤による反りの程度が異なっているため、やはり剥離を効果的に防止することが困難である。
この方法では、接合することなく一体化されている高分子膜の一方の側にカチオン交換膜が形成され、該高分子膜の他方の側にアニオン交換膜が形成されるため、両者が剥離するという問題は確実に回避されている。
従って、特許文献2の手法により得られるバイポーラ膜は、水解電圧を低くすることができず、改善の余地がある。
また、前記かかる多孔性シートとしては、多孔質化されたポリオレフィン樹脂等の樹脂シートや織布繊維シートが使用されているが、コストダウンの観点から、不織布繊維シートを用いることが提案されている。即ち、前記特許文献3では、バイポーラ膜の補強材の例として、不織布が例示されている。
しかし、当然のことながら、不織布繊維シートは強度が低いため、実際に補強材としては使用されておらず、特許文献3の実施例でも、補強材として不織布は使用されていない。
本発明の他の目的は、補強材として不織布繊維シートが使用されているバイポーラ膜及びその製造方法を提供することにある。
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面には、水解離促進触媒が分布しており、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に跨って多孔質シートが含まれていることを特徴とするバイポーラ膜が提供される。
(1)前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面が、多孔質シートの厚みの2/10〜8/10に位置していること、
(2)前記水解離促進触媒が、錫塩化物またはルテニウム塩化物であること、
(3)前記多孔質シートの空隙率が70〜90%の範囲にあること、
(4)前記多孔質シートが、不織布繊維シートであること、
(5)前記不織布繊維シートの目付量が、3〜50g/m2の範囲にあり、繊維径が8〜30μmの範囲にあること、
が好適である。
多孔質シート、剥離フィルム、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を用意し、さらに下記の(a−1)〜(a−3)、(b)、及び(c−1)〜(c−3)の工程を含むことを特徴とするバイポーラ膜の製造方法が提供される。
(a−1)前記剥離フィルムの一方の表面に、第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(a−2)前記第1の有機溶媒溶液の塗布層に、前記多孔質シートを重ね合わせ、該多孔質シートの厚み方向途中まで、前記第1の有機溶媒溶液を含浸させる工程;
(a−3)前記多孔質シートが重ね合わされた状態で、前記第1の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥して、該重ね合わせ面から多孔質シートの厚み方向途中までの領域にイオン交換樹脂層を形成することにより、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シートが積層されたイオン交換樹脂シートを得る工程;
(b)前記イオン交換樹脂シートの多孔質シート側の表面に、前記触媒液を塗布して該多孔質シート内に侵入させ、次いで乾燥することにより、前記イオン交換樹脂層の表面に、前記触媒を分布させる工程;
(c−1)前記第2の有機溶媒溶液を、前記イオン交換樹脂シートの多孔質シートの表面に塗布して、該第2の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(c−2)前記第2の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥してカウンターイオン交換樹脂層を形成する工程;
(c−3)次いで、前記剥離フィルムを剥離することにより、バイポーラ膜を作製する工程;
(1)前記多孔質シートとして、不織布繊維シートを使用すること、
(2)前記イオン交換樹脂形成用ポリマーとして、イオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(a−3)において、前記多孔質シートが重ねあわされた状態で、前記塗布層を乾燥した後、該イオン交換樹脂前駆体にイオン交換基を導入すること、
(3)前記カウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーとして、カウンターイオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(c−2)において、カウンターイオン交換樹脂前駆体を含む塗布層を乾燥した後、カウンターイオン交換樹脂前駆体にカウンターイオン交換基を導入すること、
(4)前記第1の有機溶媒溶液として、25℃での粘度が1.0〜60dPa・sの高粘度溶液を使用し、前記第2の有機溶媒溶液として、該第1の有機溶媒溶液よりも低粘度の溶液を使用すること、
が好適である。
さらに、本発明によれば、多孔質シート内に水の解離を促進する水解離促進触媒が浸透しており、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に水解離促進触媒を分布している。これにより、本発明のバイポーラ膜は、低電圧で水の解離を促進することができる。
図1を参照して、本発明のバイポーラ膜BPは、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとが対面して設けられているが、その接合界面Sを跨ぐようにして多孔質シート1が設けられており、さらに、この接合界面S上には、水解離促進触媒が分布した触媒層3が形成されている。
尚、かかる触媒層3は、カチオン交換樹脂層C或いはアニオン交換樹脂層Aの何れか一方に保持された多孔質シート1に対して、この多孔質シート1の露出表面側から水解離促進触媒の触媒液を供給して浸透させ、カチオン交換樹脂層C或いはアニオン交換樹脂層Aの表面に該触媒液の層を形成し、次いで乾燥することにより形成することができる。即ち、この後、対イオンとなるアニオン交換樹脂層A或いはカチオン交換樹脂層Cを形成すればよいわけである。かかる方法については、後述する。
さらに、適度な強度を維持しながら通電性を確保するという点で、この多孔質シート1の空隙率は70〜90%、好ましくは75〜85%の範囲にあることが好適である。
このような不織布繊維シートは、目付量が3〜50g/m2、好ましくは5〜30g/m2の範囲にあり、繊維径が8〜30μm、好ましくは10〜20μmの範囲にあることが、このバイポーラ膜BPに適度な強度を付与する上で好ましい。
本発明において多孔質シート1として好適に使用される不織布繊維シートでは、イオン交換膜として使用したときの膜特性(機械的強度、化学的安定性、耐薬品性)の観点から、ポリエステル系樹脂繊維、オレフィン系樹脂繊維(特に、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)が好ましく、ポリエチレン繊維が最も好ましい。
さらに、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの厚みは、ほぼ同等であるが、カチオン交換樹脂層Cの厚みt1とアニオン交換樹脂層Aの厚みt2との合計厚み(t1+t2)の50〜90%程度、好ましくは60〜85%程度が、多孔質シート1の厚みTであることが、このバイポーラ膜BPに適度な強度、形状安定性を確保する上で好適である。また、バイポーラ膜の厚みとしては適当な強度と抵抗の観点から、30〜300μm、好ましくは50〜200μmの範囲が好適である。さらに取り扱い性の観点から強度としては破裂強度で50〜3000kPa、好ましくは100〜2000kPaの範囲が好適である。
このような水解離促進触媒は、一般に、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの接合界面S上に、重金属換算で、1〜5000mg/m2、好ましくは5〜2000mg/m2の量で分布しているのがよい。
また、アニオン交換樹脂の例としては、ビニルベンジルトリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類及びエステル類を重合させることにより得られたポリマーを挙げることができる。
尚、図1の例では、カチオン交換樹脂層Cの表面上に、水解離促進触媒が分布した触媒層3を介してアニオン交換樹脂層Aが形成されているが、勿論、これとは逆に、アニオン交換樹脂層Aの表面上に触媒層3を介してカチオン交換樹脂層Cを設けた構造とすることもできる。
図2を参照して、上述した本発明のバイポーラ膜BPは、多孔質シート1、剥離フィルム10、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒3が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を用い、図2に示されている(a−1)〜(a−3)、(b)、及び(c−1)〜(c−3)の工程にしたがって製造される。
勿論、これらのイオン交換樹脂前駆体は、有機溶媒に溶解し得る限りにおいて、前述したジビニル化合物等の多官能性単量体を共重合させることによって架橋構造が導入されたものであってもよいし、必要により、他の単量体が共重合されていてもよい。
このようなイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を用いる場合は、かかる溶液に、イオン交換基導入剤を含有させておき、樹脂層の形成と並行してイオン交換基の導入が実施されてもよい。イオン交換基導入剤としては、例えば、ポリアルキルベンゼンスルホン酸(例えば、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸等)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−オクタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。あるいは、イオン交換樹脂前駆体の樹脂層を作製した後、上記イオン交換基導入剤で処理してイオン交換基を導入しても良い。
一方、第2の有機溶媒溶液は、前記第1の有機溶媒溶液がその厚み方向途中まで浸透した状態の多孔質シート1の前記重ね合わせ面とは反対面上に塗布して、その残り空隙に浸透させるものである。これを高い充填性で実施するには、第2の有機溶媒溶液にはより高い浸透性が求められ、このためその粘度は前記第1の有機溶媒溶液に比して低粘性であることが好ましく、例えば粘度(25℃)が5dPa・s以下、特には0.1〜3.0dPa・sであることが好適である。
先ず、剥離フィルム10の一方の表面に、カチオン交換樹脂形成用ポリマーまたはアニオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層11を形成する。
この剥離フィルム10は、第1の有機溶媒溶液中に溶解しているイオン交換樹脂と接着しないようなものであり、塗布層11中の有機溶媒に溶解せず、最期に容易に剥離し得るようなものであれば、その種類や厚みを問わないが、一般的には、耐久性、機械的強度などに優れ、繰り返し使用可能であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが好適に使用される。
このような厚みに塗布層11を形成するため、第1の有機溶媒溶液は、垂れ等を生じないように、ある程度、高粘性であることが必要である。
上記のようにして第1の有機溶媒溶液の塗布層11を形成した後、この塗布層11に多孔質シート1を重ね合わせ、多孔質シート1の厚み方向途中まで、第1の有機溶媒溶液を含浸させる。このような含浸によって、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの界面Sの位置が決定される。
尚、多孔質シート1内に塗布層11を浸透させるために、適宜、多孔質シート1を加圧することもできる。
この工程では、触媒層3の下地となるイオン交換樹脂層(図1の例では、カチオン交換樹脂層C)を確定させる。
即ち、多孔質シート1が重ね合わされた状態で、第1の有機溶媒溶液の塗布層11を乾燥する。これにより、重ね合わせ面から多孔質シート1の厚み方向途中までの領域に、触媒層3の下地となるイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)が形成され、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シート1が積層されたイオン交換樹脂シート20が得られ、界面Sの位置が定まる。
例えば、イオン交換樹脂形成用ポリマーとしてカチオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、スルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理によりカチオン交換基が導入される。また、イオン交換樹脂形成用ポリマーとしてアニオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、アミノ化、アルキル化等の処理によってアニオン交換基が導入されることとなる。
この工程では、上記のように形成されたイオン交換樹脂層(図の例ではカチオン交換樹脂層C)の表面(多孔質シート1内に位置する表面であり、図1の界面Sに相当する面)に触媒層3を形成する。
具体的には、前述した水解離促進用触媒が分散乃至溶解した触媒液を、上記イオン交換樹脂シート20中の多孔質シート1の表面に塗布、或いは、該表面を触媒液に浸漬させ、下地となるイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)の表面にまで触媒液を浸透させ、次いで乾燥することにより、界面S上に水解促進用触媒が分布した触媒層3が形成される。
この工程では、上記の第2の有機溶媒溶液を、イオン交換樹脂シート20の多孔質シート1の表面に塗布する。これにより、第2の有機溶媒溶液が多孔質シート1内に浸透し、触媒層3を介して、先に形成されたイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)の表面にまで到達した塗布層13が形成される。
即ち、第2の有機溶媒溶液は、前記第1の有機溶媒溶液がその厚み方向途中まで浸透した状態の多孔質シート1に対して、その残り空隙に浸透させて塗布層13を形成するものであるから、前記したようにより高い浸透性が求められる。このためその粘度は前記第1の有機溶媒溶液よりも低く、このため前述した範囲に調整されるのが好ましい。
上記のようにして多孔質シート1内に浸透している第2の有機溶媒の塗布層13を形成した後は、この塗布層13を乾燥することにより、カウンターイオン交換樹脂層(例えば、図2の例ではアニオン交換樹脂層A)が形成される。即ち、上記の塗布層13の乾燥厚みは、カウンターイオン交換樹脂層の厚み(例えばアニオン交換樹脂層Aの厚みt2)に相当するものである。
この場合において、第2の有機溶媒溶液中のポリマーとして、カウンターイオン交換基が導入されていない前駆体が使用された場合には、乾燥後、カウンターイオン交換基の導入処理が行われることとなる。これは、触媒層3の下地のイオン交換樹脂層を形成する場合と同様である。
上記のようにして、カウンターイオン交換樹脂層が形成された後は、最後は、剥離フィルムを剥離することにより、目的とするバイポーラ膜BPが得られることとなる。
さらに、多孔質シート1として不織布繊維シートを用いた場合には、極めて安価であるばかりか、この不織布繊維シートがカチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの間にまたがって形成されているため、界面Sの接着性が高く、引っ張り速度100mm/分におけるT形剥離強度が0.5N/cm以上、好ましくは0.8N/cm以上となっている。また、不織布繊維シートの強度不足も有効に改善されている。
なお、実施例、比較例において、バイポーラ膜の特性、ポリマー溶液の粘度、及び触媒量について、次のような測定により求めた。
以下の構成を有する4室セルを使用した。
陽極(Pt板)(1.0mol/L−NaOH)/ネオセプタBP−1E(株式会社
アストム製)/(1.0mol/L−NaOH)/バイポーラ膜/(1.0mol
/L−HCl)/ネオセプタBP−1E(株式会社アストム製)/(1.0mol
/L−HCl)陰極(Pt板)
液温25℃、電流密度10A/dm2の条件でバイポーラ電圧の測定を行った。バイポーラ電圧はバイポーラ膜を挟んで設置した白金線電極によって測定した。
バイポーラ膜のアニオン交換樹脂面にテープ(粘着力3.2N/15mm)を貼りつけて、よく圧着し、テープを部分的に剥離してアニオン交換樹脂面がテープ側に張り付いて剥離した状態でミネベア(株)製荷重測定器LTS-500NBにて引っ張り速度100mm/分にてT形剥離強度を測定した。
イオン交換樹脂を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬した。
その後、カチオン交換膜の場合には、1mol/L−NaCl水溶液でイオン交換基の対イオンを水素イオンからナトリウムイオンに置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。一方、アニオン交換膜の場合には、1mol/L−NaNO3水溶液で対イオンを塩化物イオンから硝酸イオンに置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、その後に60℃で5時間減圧乾燥して乾燥時の重さ(Dg)を測定した。上記測定値に基づいて、イオン交換膜のイオン交換容量を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[meq/g−乾燥質量]
バイポーラ膜をイオン交換水に4時間以上浸漬し、次いで、膜を乾燥させることなく、ミューレン破裂試験機(東洋精機製)により、JIS−P8112に準拠して破裂強度を測定した。
非対称イオン交換膜をミクロトーム(ヱルマ販売(株)製ESM−150S)にて切削し、測定断面を形成させた。次いで、カラー3Dレーザー顕微鏡VK−8700(株式会社キーエンス社製)を用い、50倍の対物レンズで膜サンプル断面を観察し、観察画像からイオン交換樹脂層厚み、不織布層厚み及び第1と第2のイオン交換樹脂層の界面位置を測定した。界面位置は第1イオン交換樹脂層側の不織布表面を位置0として1/10単位で表記した。
また、バイポーラ膜の厚みを、マイクロメ−ターMED−25PJ(株式会社ミツトヨ社製)を用いて測定した。
回転円筒式粘度計ビスコテスタVT−04F(リオン株式会社製)を用いて、イオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液(ポリマー溶液)の粘度を測定した。
触媒処理を実施したカチオン交換膜を蛍光X線分析で測定し、硫黄元素と触媒元素のモル比を求め、硫黄元素をイオン交換容量との相対比から触媒量を算出した。
(1)カチオン交換ポリマー(SPPO)の溶液(C1)の調製
ポリフェニレンオキシドをクロロホルムに溶解し、この溶液にクロロスルホン酸を加えて、ポリフェニレンオキシドにクロロスルホン酸を反応させた。次いで、水酸化ナトリウムを加えて中和し、溶媒除去することでイオン交換容量が1.6meq/gであるスルホン化ポリフェニレンオキシド(カチオン交換ポリマー、SPPO)を得た。
次に、上記で得られたカチオン交換ポリマー(SPPO)を、その濃度が28質量%となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)になるように溶解し、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C1)を調製した。
このカチオン交換ポリマー溶液(C1)の粘度(25℃)は、20dPa・sであった。
カチオン交換ポリマー(SPPO)を、その濃度が15質量%となるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた以外は、上記と同様にして、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C2)を調製した。
このカチオンポリマー溶液(C2)の粘度(25℃)は、2dPa・sであった。
ポリエーテルエーテルケトンを濃硫酸に溶解させ、撹拌しながらスルホン化反応を行った。反応後にポリエーテルエーテルケトン/濃硫酸溶液を純水中にクエンチすることでスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(カチオン交換ポリマー、SPEEK)を得た。このポリマーのイオン交換容量は1.5meq/gであった。
次に、上記で得られたカチオン交換ポリマー(SPEEK)を、その濃度が25質量%となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C3)を調製した。このカチオン交換ポリマー溶液(C3)の粘度(25℃)は5dPa・sであった。
(1)アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A1)の調製
ポリスチレンのセグメント(65質量%)とポリイソプレンの水素添加されたセグメント(35質量%)から成る共重合体100gをクロロホルム1000gに溶解し、この溶液に、クロロメチルメチルエーテル100gと塩化スズ10gを加え、40℃で15時間反応させ、ポリスチレンブロックのクロロメチル化を行った。
次いで、メタノール中で沈澱、洗浄した後、乾燥させ、クロロメチル化したスチレン系ブロック共重合体を得た。
次に、上記で得られたクロロメチル化したスチレン系ブロック共重合体に、分子量5000のクロロメチル化ポリスチレンを混合し、クロロメチル化ポリスチレンの割合が40質量%になるように調整した。
このアニオン交換樹脂前駆体溶液に、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(アニオン交換基導入剤)を、その濃度が6.6質量%となるように加えて、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A1)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A1)の粘度(25℃)は5dPa・sであった。
一方、ポリマー濃度が20質量%となるように変更した以外は、上記と全く同様に、クロロメチル化重合体混合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解してアニオン交換樹脂前駆体溶液を調製した。
このアニオン交換樹脂前駆体溶液に、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(アニオン交換基導入剤)を、その濃度が5.3質量%となるように加えて、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A2)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A2)の粘度(25℃)は3dPa・sであった。
スチレンとクロロメチルスチレンのモノマーのモル比10:1をトルエン中で70℃、重合開始剤ベンゾイルパーオキシドの存在下に10時間共重合し、次いで反応液をメタノール中に注ぎ、共重合体を得た。
この共重合体のクロロメチル基をN,N,N’,N’−テトラメチルエタン−1,2−ジアミンにて4級アンモニウム塩基化し、その濃度が20質量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、4級アンモニウム塩基の交換容量が0.9meq/gの部分アミノ化ポリスチレン(QPC)からなるアニオン交換ポリマー溶液(A3)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A3)の粘度(25℃)は10dPa・sであった。
不織布シートとしては次のものを使用した。
(N1)廣瀬製紙(株)製HOP−10
目付量:10g/m2
厚み:0.05mm
空隙率:78%
繊維径:12μm
材質:ポリエチレン
(N2)廣瀬製紙(株)製HOP−15
目付量:15g/m2
厚み:0.07mm
空隙率:76%
繊維径:12μm
材質:ポリエチレン
(N3)フロイデンベルグ社製Novatexx2473
目付量:27g/m2
厚み:0.11mm
空隙率:73%
材質:ポリエチレン/ポリプロピレン
バイポーラ膜の製造;
1.第1イオン交換層の形成
上記で調製されたカチオン交換ポリマー(SPPO)の溶液(C1)を、バーコーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに100μm液厚になるように塗布して、塗布層を形成した。
上記塗布層が形成されているPETフィルムを50℃で5分間乾燥させ、次いで、この塗布層に、上記の不織布シート(N1)を重ね合わせてローラ加圧により積層することで、不織布シートの片面にカチオン交換樹脂塗布層を形成させた。
次いで、60℃で加熱乾燥して塗布層を固化せしめ、第1イオン交換層を形成した。
得られた第1イオン交換層を5.0質量%の塩化スズ水溶液に60分浸漬した。次いで第1イオン交換層を取り出し60℃で乾燥した。
次いで、上記の第1イオン交換層の不織布シート面側に、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A2)を塗布し、50℃で30分間乾燥した後、PETフィルムを剥離してバイポーラ膜を得た。
バイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1〜3に示す通りに変えた他は実施例1と同様の手順で、バイポーラ膜を作成した。バイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
実施例6で得た第1イオン交換層を塩化スズ水溶液で処理する代わりに2.0質量%塩化ルテニウム(III)水溶液で処理した以外は同じ手順にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1〜3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
第1イオン交換層にQPS溶液を用いた以外は実施例6と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。バイポーラ膜の構成は表1に特性は表2に示す通りであった。
不織布シート(N3)(Novatexx2473)を熱プレスにて厚みが0.075mmになるように処理し、空隙率62%の厚み調整不織布シート(N3’)を得た。この不織布シート(N3’)を用いた以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。
このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1〜3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、不織布シート(N3’)の空隙率が62%と低いためにバイポーラ膜の触媒界面形成面積が少なく、バイポーラ電圧が高電圧となった。
不織布シートを使用しなかった以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や触媒濃度を表1〜3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、不織布シートがないためイオン交換層の界面での接着性が低くなった。
触媒液を使用しなかった以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類を表1〜3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、触媒がないために水解離電圧が高く、バイポーラ電圧が高くなった。
第1イオン交換層のコート厚みを200μmにした以外は実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。
このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1〜3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、第1イオン交換層を厚く塗ったために不織布シートが第1イオン交換層に覆われており、不織布シートが第1イオン交換層と第2イオン交換層とに跨った構造とならず、第1イオン交換層と第2イオン交換層の接着性が低かった。
3:触媒層
C:カチオン交換樹脂層
A:アニオン交換樹脂層
BP:バイポーラ膜
Claims (11)
- カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層とが接合されてなるバイポーラ膜において、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面には、水解離促進触媒が分布しており、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に跨って多孔質シートが含まれていることを特徴とするバイポーラ膜。 - 前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面が、多孔質シートの厚みの2/10〜8/10に位置している請求項1に記載のバイポーラ膜。
- 前記水解離促進触媒が、錫塩化物またはルテニウム塩化物である請求項1に記載のバイポーラ膜。
- 前記多孔質シートの空隙率が70〜90%の範囲にある請求項1に記載のバイポーラ膜。
- 前記多孔質シートが、不織布繊維シートである請求項4に記載のバイポーラ膜。
- 前記不織布繊維シートの目付量が、3〜50g/m2の範囲にあり、繊維径が8〜30μmの範囲にある請求項5に記載のバイポーラ膜。
- イオン交換樹脂層と、該イオン交換樹脂層とは逆極性のカウンターイオン交換樹脂層とが接合され、その接合界面には水解離反応促進用の触媒が分布してなるバイポーラ膜の製造方法において、
多孔質シート、剥離フィルム、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を用意し、さらに下記の(a−1)〜(a−3)、(b)、及び(c−1)〜(c−3)の工程を含むことを特徴とするバイポーラ膜の製造方法:
(a−1)前記剥離フィルムの一方の表面に、第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(a−2)前記第1の有機溶媒溶液の塗布層に、前記多孔質シートを重ね合わせ、該多孔質シートの厚み方向途中まで、前記第1の有機溶媒溶液を含浸させる工程;
(a−3)前記多孔質シートが重ね合わされた状態で、前記第1の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥して、該重ね合わせ面から多孔質シートの厚み方向途中までの領域にイオン交換樹脂層を形成することにより、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シートが積層されたイオン交換樹脂シートを得る工程;
(b)前記イオン交換樹脂シートの多孔質シート側の表面に、前記触媒液を塗布して該多孔質シート内に侵入させ、次いで乾燥することにより、前記イオン交換樹脂層の表面に、前記触媒を分布させる工程;
(c−1)前記第2の有機溶媒溶液を、前記イオン交換樹脂シートの多孔質シートの表面に塗布して、該第2の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(c−2)前記第2の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥してカウンターイオン交換樹脂層を形成する工程;
(c−3)次いで、前記剥離フィルムを剥離することにより、バイポーラ膜を作製する工程; - 前記多孔質シートとして、不織布繊維シートを使用する請求項7に記載の製造方法。
- 前記イオン交換樹脂形成用ポリマーとして、イオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(a−3)において、前記多孔質シートが重ねあわされた状態で、前記塗布層を乾燥した後、該イオン交換樹脂前駆体にイオン交換基を導入する請求項7に記載の製造方法。
- 前記カウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーとして、カウンターイオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(c−2)において、カウンターイオン交換樹脂前駆体を含む塗布層を乾燥した後、カウンターイオン交換樹脂前駆体にカウンターイオン交換基を導入する請求項7に記載の製造方法。
- 前記第1の有機溶媒溶液として、25℃での粘度が1.0〜60dPa・sの高粘度溶液を使用し、前記第2の有機溶媒溶液として、該第1の有機溶媒溶液よりも低粘度の溶液を使用する請求項7に記載の製造方法。
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