JP2012176373A - イオン交換体 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価な不織布シートを基材シートとして有するイオン交換膜を備えていながら、強度、寸法安定性、形状安定性などの特性に優れている円筒状イオン交換体を提供する。
【解決手段】円筒状の通液性支持体1と、支持体1の外面に巻かれて固定されている筒状形状のイオン交換膜3とからなるイオン交換体10において、イオン交換膜3は、不織布シート5と、不織布シート5の一方の表面に形成されているイオン交換樹脂コーティング層7とからなっており、イオン交換樹脂コーティング層7が外面側に位置するように支持体1の外面にイオン交換膜3が固定されていると共に、不織布シート5は、繊維径が10〜50μmの長繊維層5a,5bを両面に有し且つ該長繊維層の間の中間層として繊維径が5μm以下の微細繊維層5cが繊維同士の融着により形成されている繊維層構造を有していることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、円筒形状のイオン交換体に関するものであり、より詳細には不織布シートを基材シートとして有するイオン交換膜を備えた円筒形状のイオン交換体に関する。
イオン交換膜は、製塩や食品分野における脱塩工程などで利用される電気透析用や、燃料電池の電解質膜として工業的に利用されている。このようなイオン交換膜は、補強材としての機能を有する基材シートが芯材としてイオン交換樹脂中に設けられた構造を有しており、これにより一定の膜強度が保持されている。
従来、上記の基材シートとして多孔質樹脂シートが使用されたイオン交換膜が知られている。このような形態のイオン交換膜では、基材である多孔質樹脂シート中の空隙部にイオン交換樹脂が充填されており、この結果、膜抵抗が低いという利点があるが多孔質樹脂シートが高価であるため、安価な他の材料を補強シートとして用いることが検討されている。
安価な基材シートとしては、不織布シートが代表的であり、このような不織布シートを基材シートとして用いたイオン交換膜も知られており、さらに、製造コストの低減を図るために、有機溶媒に可溶なイオン交換体またはイオン交換基導入可能な官能基を有するポリマーからなるイオン交換樹脂の有機溶媒溶液を不織布等の多孔質の基材シートにコーティングし、乾燥した後に、必要に応じてイオン交換基を導入することによりイオン交換膜を製造する方法も知られている(例えば特許文献1参照)。この方法では、イオン交換樹脂の有機溶媒溶液が不織布シート中に浸透するため、イオン交換樹脂のコーティング層は不織布中に食い込んだ状態で形成されるため、イオン交換樹脂層と不織布シートとの接合強度が高く、両者の剥がれなどを有効に防止することができる。
しかしながら、不織布シートは、安価であるという利点を有するものの、その強度が低いため、不織布シートを基材シートとして有するイオン交換膜は、低強度であり、寸法安定性や形状安定性が悪く、例えばイオン交換膜中のイオン交換樹脂の膨潤などにより形態変化を生じ易いという欠点がある。特にイオン交換膜の場合、水吸収能が高く、膜膨潤による形状変化は著しい。
例えば電着塗装などには円筒状のイオン交換体が使用され、このイオン交換体を塗装液中に浸漬した状態で、被塗装物(例えば自動車の車体)を通電下に塗装液中を通過させることにより電着塗装が行われる。このような電着塗装に使用されるイオン交換体は、円筒形状の通液性支持体にイオン交換膜が巻かれた構造を有しているが(例えば特許文献2参照)、イオン交換膜の膨潤によりしわが発生しブツと呼ばれる塗料固形物が生成する問題がある。即ち、電着塗装では、処理液中に塗料の微細な塊を含んでおり、イオン交換膜表面に付着した塗料中の微細な塊が固体間の凝集によって成長し、生成したブツがイオン交換膜表面より脱離して、被塗物に付着するといった不具合が生じてしまう。また、かかるイオン交換膜の基材シートとして不織布シートを用いたときには、上記のような不織布シートを用いたイオン交換膜の寸法安定性や強度の欠点は致命的で使用に耐えない。ブツの発生を防止する為に自己支持性を有するシームレスの円筒状隔膜が提案されているが(特許文献3参照)、膜抵抗が高いという問題点があった。
特開平2−265929号公報 特開昭64−31993号公報 特許第2557525号
従って、本発明の目的は、安価な不織布シートを基材シートとして有するイオン交換膜を備えていながら、強度、寸法安定性、形状安定性などの特性に優れている円筒状イオン交換体を提供することにある。
本発明によれば、円筒状の通液性支持体と、該支持体の外面に巻かれて固定されている筒状形状のイオン交換膜とからなるイオン交換体において、
前記イオン交換膜は、不織布シートと、該不織布シートの一方の表面に形成されているイオン交換樹脂コーティング層とからなっており、該イオン交換樹脂コーティング層が外面側に位置するように前記支持体の外面に該イオン交換膜が固定されていると共に、
前記不織布シートは、繊維径が8〜30μmの長繊維層を両面に有し且つ該長繊維層の間の中間層として繊維径が5μm以下の微細繊維層が繊維同士の融着により形成されている繊維層構造を有していることを特徴とするイオン交換体が提供される。
本発明の円筒状イオン交換体に使用されているイオン交換膜は、基材シートとして不織布を用いているが、かかる不織布が、長繊維層(繊維径が8〜30μmの長繊維からなる層)を両面に有し且つ該長繊維層の間の中間層として微細繊維層(繊維径が5μm以下の微細繊維からなる層)が繊維同士の融着により形成されている繊維層構造を有しているため、その強度や寸法安定性、形状安定性が著しく改善されている。従って、不織布を基材シートとして用いているイオン交換膜を備えた円筒状イオン交換体に特有の欠点が有効に解消されている。
即ち、通常の不織布は、繊維が織られていないため、強度が低く、従って、寸法安定性が低く、その形状も不安定となりやすいが、本発明では、微細繊維の層が繊維同士の融着によって中間層として使用されているため、このような微細繊維層が補強層として機能し、その強度、寸法安定性、形状安定性が高められている。
この結果、本発明のイオン交換体では、例えば各種の電解液や塗料液に浸漬して使用に供した場合、イオン交換樹脂の膨潤による形状変化が有効に抑制され、形状の変化に伴う凹凸の形成などが有効に回避され、例えば電着塗装に適用した場合においても、イオン交換膜表面への塗料ブツの付着などが防止され、長期間にわたって連続して電着塗装を実行することが可能となる。
また、本発明に用いる不織布においては、上記の微細繊維層の形成により、イオン交換樹脂の不織布シート内の空隙部への浸透乃至食い込みが該微細繊維層で制限されている。この結果、イオン交換樹脂コーティング層が基材シートである不織布シートにしっかりと固定されると共に、不織布シートの表面に形成されるイオン交換樹脂コーティング層の厚みを薄く且つ均一とすることができ、従って、膜特性はバラツキがなく安定化されており、また膜抵抗も低減されている。
本発明の円筒状イオン交換体の層構造を示す部分断面図。 図1の円筒状イオン交換体に使用されている通液性支持体の斜視図。 図1の円筒状イオン交換体に使用されているイオン交換膜の層構造を示す部分断面図。 図3のイオン交換膜の製造方法のプロセスの一例を示す図。 図3のイオン交換膜を用いて円筒状イオン交換体を製造するプロセスを説明するための図。 図1の円筒状イオン交換体の使用形態の一例を示す概略図。
<円筒状イオン交換体の構造>
図1を参照して、全体として10で示す本発明の円筒状イオン交換体は、図1に示されているように、円筒状の通液性支持体1と、該支持体1の外面に巻かれて固定されたイオン交換膜3とからなっている。
通液性支持体1は、円筒形状を有しており且つ壁面を通して液を透過させる開口が形成されている限り、その形態は何ら制限されないが、一般的には、図2に示されているように、その壁面に格子状に多数の開口1aが形成されている形態を有している。
このような通液性支持体1は、通常、各種電解液、酸、アルカリ等に対する耐性に優れ且つ高強度の電気絶縁性材料(例えば各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)により形成されており、その厚みも、一定の形態保持性が維持されている限り、特に制限されない。
また、上記の通液性支持体1の外面に巻かれて固定されているイオン交換膜3は、図3の断面構造に示されているように、不織布シート5を基材シートとして含み、この不織布シート5の一方の表面に、コーティング法により形成されたイオン交換樹脂コーティング層7が設けられているものであり、イオン交換樹脂コーティング層7が外面側に位置し、不織布シート5が通液性支持体1の外面に密着するように配置されている。
かかる構造のイオン交換膜3においては、不織布シート5は、その両面に長繊維層5a,5bを有しており、この長繊維層5a,5bの間の中間層として、微細繊維層5cが設けられているものであり、微細繊維層5cは、繊維同士の熱融着によって長繊維層5a,5bをしっかりと保持し且つ長繊維層5a,5bに比して緻密な層となっている。
即ち、イオン交換樹脂コーティング層7は、上記のような構造の不織布シート5の一方の長繊維層5aの上に設けられているが、後述するように、イオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を長繊維層5a上にコーティングすることにより形成されるため、この長繊維層5aの空隙部には、イオン交換樹脂が浸透しており、従って、イオン交換樹脂コーティング層7は、長繊維層5aにがっちりと固定され、しかもイオン交換樹脂の浸透は、緻密な微細繊維層5cによって遮断されるため、イオン交換樹脂は、反対側の長繊維層5bには浸透していない。
尚、図3において、長繊維層5aに浸透しているイオン交換樹脂は7aで示されている。
不織布シート5の長繊維層5a,5bは、繊維径が8〜30μm、好ましくは10〜20μmの範囲にある熱可塑性樹脂の長繊維から形成されるものであり、例えばスパンボンド法により形成される。即ち、このような繊維径の長繊維を用いて層5aを形成することにより、適度な大きさの空隙部を形成し、適度な量のイオン交換樹脂を長繊維層5aに浸透させることが可能となり、イオン交換樹脂コーティング層7をしっかりと固定することができ、さらには、イオン交換膜3の高強度化を図ることができる。例えば、繊維径が上記範囲よりも大きな長繊維を用いると、表面の平滑性が損なわれてしまい、この結果、アンカー効果が低下し、イオン交換樹脂コーティング層7をしっかりと固定することができなくなってしまう。また、繊維径が上記範囲よりも小さい場合には、微細繊維層5cを繊維同士の融着により形成することが困難となってしまうばかりか、不織布シート5の強度低下が生じ、さらには、得られるイオン交換膜3の通液性が低下してしまうこととなる。
また、長繊維層5a,5bは、3〜50g/m以上の目付け量で形成されるのがよい。即ち、目付け量が少ないと、繊維間の空隙率が大きくなってしまい、微細繊維層5cにしっかりと結合し且つ不織布シート5を高強度とすることが困難となってしまうためである。
さらに、上記のような目付け量が確保されていることを条件として、イオン交換樹脂コーティング層7が形成される側の長繊維層5aの厚みは、10〜150μm、特に20〜80μm程度の厚みとすることが好ましい。即ち、この厚みが薄すぎると、アンカー効果が低く、イオン交換樹脂コーティング層7をしっかりと固定することができなくなってしまうおそれがあるからである。また、長繊維層5aの厚みが厚すぎると、イオン交換樹脂コーティング層7を形成したとき、この層5a内に浸透するイオン交換樹脂の量が多くなってしまい、適度な厚みのイオン交換樹脂コーティング層7を形成するために、多量のイオン交換樹脂を用いることが必要となってしまうばかりか、イオン交換樹脂量が多くなるため、得られるイオン交換膜3の膜抵抗が増大してしまい、膜性能が低下してしまうおそれがある。
一方、イオン交換樹脂コーティング層7が形成されない側の長繊維層5bの厚みは、特に制限されるものではなく、例えば、長繊維層5aに比してかなり薄くすることも可能であるが、長繊維層5aと同程度の厚みとすることが好ましい。即ち、イオン交換樹脂コーティング層7を形成する側の長繊維層5aと形成される側ではない長繊維層5bの厚みを同程度とすることにより、長繊維層5a,5bの何れにもイオン交換樹脂コーティング層7を形成することが可能となり、イオン交換膜3の製造が容易となるからである。また、長繊維層5bの厚みを長繊維層5aと同程度とすることにより、イオン交換膜3の厚みを不必要に厚くすることなく、その高強度化を実現することも可能となる。
さらに、上記の長繊維層5a,5bと繊維同士の融着により接合される微細繊維層5cは、繊維径が5μm以下、好ましくは3μm以下の微細繊維から形成されるものである。即ち、このような微細な繊維を用いることにより、この微細繊維層5cが長繊維層5a,5bに比して緻密な層となり、イオン交換樹脂コーティング層7を形成したとき、この微細繊維層5cでイオン交換樹脂の浸透が遮断され、イオン交換樹脂の浸透量を制限することが可能となり、この結果、膜抵抗の増大を回避することができるばかりか、膜特性を安定化することも可能となる。さらには、上述した長繊維層5a,5bをしっかりと固定することができ、不織布シート5(イオン交換膜3)の高強度化、寸法安定性、形状安定性等を高め、しかも、イオン交換膜3が湿潤状態のときのイオン交換樹脂の膨潤による凹凸の形成(波打ち)も効果的に防止することが可能となる。例えば、繊維径が上記範囲よりも大きな繊維を用いると、この層5cが緻密なものとならないため、上記のような利点を得ることができなくなってしまう。
また、上記のような微細繊維層5cの繊維径は、0.05μm以上、特に1μm以上であることが好ましい。この繊維径が過度に微細であると、この微細繊維層5cがフィルム化し易くなってしまい、この結果、イオン交換膜3の通液性(透水性)が著しく低下してしまい、また膜抵抗も増大してしまうおそれがあるからである。
このような微細繊維層5cは、メルトブロー繊維により形成されるものであり、かかる微細繊維層5cの目付け量は1g/m以上であることが好ましい。即ち、その目付け量が少なすぎると、微細繊維層5cが疎なものとなってしまい、上述した効果を十分に発現することが困難となるおそれを生じるからである。また、この目付け量が多くなり、微細繊維層5cの厚みが必要以上に厚くなると、得られるイオン交換膜3の膜抵抗が増大し、また、その通液性が低下するなどのおそれを生じ、さらには強度低下を生じるおそれもあるため、微細繊維層5cの厚みは、0.1乃至15μm、特に0.5乃至10μm程度の範囲とすることが好適である。
上述した長繊維層a,5b及び微細繊維層5cを形成する繊維としては、熱可塑性樹脂繊維が使用され、前述した繊維径を有している限り、それ自体公知の熱可塑性樹脂繊維を使用することができる。
かかる繊維を形成する熱可塑性樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体また共重合体であるオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフロオロエチレン−ペルフロオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等を挙げることができる。
本発明においては、イオン交換膜として使用したときの膜特性(機械的強度、化学的安定性、耐薬品性)の観点から、ポリエステル系樹脂繊維、オレフィン系樹脂繊維(特に、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)が好ましく、融着性を考慮すると、ポリエチレン繊維が最も好ましい。
また、長繊維層5a,5bと微細繊維層5cとは、異なる繊維で形成されていてもよいが、両者の融着性を考慮すると、両者は、同種のポリマーからなる熱可塑性樹脂繊維で形成されていることが好ましい。
さらに、長繊維層5a,5bと微細繊維層5cとを融着せしめる際の長繊維層5a,5bのフィルム化を防止するという観点から、微細繊維層5cを形成するポリマーの融点は、長繊維層5a,5bを形成するポリマーの融点よりも低いことが好ましい。
尚、上記のような長繊維層5a,5bと微細繊維層5cとを有する不織布シート5は、通常、以下のようにして作製される。
例えば、スパンバンド法によって形成された所定の繊維径を有する長繊維からなるウエブ(長繊維層5a或いは5bに相当)上に、メルトブロー法によって所定の繊維長の短繊維を吹き付けて微細繊維層5cを形成し、次いで、上記と同様の長繊維を微細繊維層5c上に吐出して繊維層(長繊維層5b或いは5aに相当)、得られた繊維の積層シートを加熱圧着することにより、目的とする不織布シート5を得ることができる。この加熱圧着の際の加熱温度は、メルトブロー繊維のガラス転移点以上で融点未満とし、さらには、長繊維の融点よりも10℃程度低い温度とするのがよく、これにより、長繊維層5a,5b及び微細繊維層5cのフィルム化を効果的に防止することができる。
繊維径や繊維長の調整、及び目付け量等の調整は、それ自体公知の手段により行うことができる。
イオン交換樹脂コーティング層7;
本発明において、上述した不織布シート5の長繊維層5a上に形成されるイオン交換樹脂コーティング層7は、有機溶媒に溶解しての塗布により形成可能なイオン交換樹脂により形成されるものであり、例えば、ビニル系、スチレン系、アクリル系等のエチレン系不飽和二重結合を有する単量体を重合して得られるポリマーそしてその水素添加物、または、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾールなどの主鎖に芳香環を含有するポリマーなどの炭化水素系の樹脂に、イオン交換能を発現させるイオン交換基、具体的には、カチオン交換基或いはアニオン交換基が導入された構造を有するものである。
イオン交換基は、水溶液中で負又は正の電荷となり得る官能基であり、カチオン交換基の場合には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が好適である。また、アニオン交換基の場合には、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。
例えば、カチオン交換樹脂の例としては、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体、ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩類およびエステル類等を重合させることにより得られたポリマーを挙げることができる。
また、アニオン交換樹脂の例としては、ビニルベンジルトリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類及びエステル類を重合させることにより得られたポリマーを挙げることができる。
これらのイオン交換樹脂は、有機溶媒に溶解した溶液を調製することができる限りにおいて、架橋構造が導入されていてもよく、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタリン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物に代表される多官能性単量体によって架橋されていてもよい。また、他の単量体、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が共重合されている共重合体であってもよい。
上記のようなイオン交換樹脂は、そのイオン交換容量が0.5〜3.0meq/g、特に0.8〜2.0meq/gの範囲にあることが好ましい。このイオン交換容量が大きすぎると、電解液と接触したときに溶解したり、或いは膨潤の程度が大きくなりすぎて、膜剥離や形状変化が生じ易くなり、イオン交換容量が小さ過ぎると、膜抵抗が増大し、膜性能が低下するおそれがあるからである。従って、このようなイオン交換容量となるように、カチオン交換基或いはアニオン交換基が導入されていることが好ましい。
また、上述したイオン交換樹脂により形成されるイオン交換樹脂コーティング層7は、長繊維からなる表面層5a上に形成され、しかも、この層7を形成しているイオン交換樹脂は表面層5aの内部(空隙部)に食い込んでいるため、その全体厚みを厳密に規定することはできないが、表面層5aの上に存在している部分の厚みdは、得られるイオン交換膜3のイオン交換容量が0.05〜2meq/g、特に0.1〜1meq/g程度となるように、例えば1乃至50μm程度の範囲にあることが好ましい。即ち、この厚みが薄すぎると、イオン交換樹脂コーティング層7の厚みが不均一となり易く、この結果、膜特性にバラツキが生じてしまい、膜特性が不安定となるおそれがある。また、この厚みが厚すぎると、得られるイオン交換膜3の膜抵抗が増大するばかりか、イオン交換容量の増大により、膨潤等が生じ易くなり、膜の形状変化等により、膜特性が低下してしまうおそれがある。
上述した構造のイオン交換膜3は、長繊維層5a,5bの間に緻密な微細繊維層5cが中間層として有している高強度の不織布シート5の表面にイオン交換樹脂のコーティング層が形成されているため、その強度は高く、例えば、その破裂強度は0.1MPa以上であり、優れた寸法安定性及び形状安定性を有している。
さらに、イオン交換樹脂の不織布シート5内への浸透が適度に制限されているため、膜特性にバラツキがなく、安定した特性を有しているばかりか、その膜抵抗も極めて小さい。特に、以下の方法で製造されるイオン交換膜3は、イオン交換樹脂コーティング層3内への気泡の混入も効果的に抑制されているため、イオン交換膜の電気抵抗は10Ωcm以下、特に5Ωcm以下となる。
イオン交換膜3の製造;
上述した構造のイオン交換膜3は、前述した不織布シート5(長繊維層5a)の表面にコーティング法によりイオン交換樹脂層(イオン交換樹脂コーティング層3)を形成することにより製造される。
コーティング法によるイオン交換樹脂コーティング層7の形成には、前述したイオン交換樹脂の有機溶媒溶液が使用されるが、代わりに、イオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を使用することもできる。
イオン交換樹脂前駆体は、イオン交換基可能な官能基を有するポリマーであり、例えば、カチオン交換基導入用官能基を有するポリマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等の単量体を重合して得られるものを挙げることができる。また、アニオン交換基導入用官能基を有するポリマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の単量体を重合して得られるものを挙げることができる。
勿論、これらのイオン交換樹脂前駆体は、有機溶媒に溶解し得る限りにおいて、前述したジビニル化合物等の多官能性単量体を共重合させることによって架橋構造が導入されたものであってもよいし、必要により、他の単量体が共重合されていてもよい。
このようなイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を用いた場合には、最後の工程でイオン交換基を導入することが必要となる。
上記のイオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂の有機溶媒溶液の調製に用いる有機溶媒としては、上述したポリマーを溶解し得るものであれば特に制限されないが、乾燥によって容易に除去できるという観点から、エチレンクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メチルアルコールなどが1種単独で或いは2種以上を混合した混合溶媒の形で好適に使用される。
有機溶媒の使用量は、後述する手段によるコーティングに適した範囲とすべきであり、例えば、有機溶媒溶液の粘度(25℃)が0.5〜80dPa・s、特に1.0〜60dPa・sの範囲となる量で有機溶媒を使用することが好ましい。
不織布シート5上へのイオン交換樹脂コーティング層7の形成は、例えば、図4に示すように、上記のように調製されたイオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を用いて以下のようにして行われる。
先ず、剥離フィルム20を用意し、この剥離フィルム20上に、上記で調製された成膜用有機溶媒溶液を塗布し、該有機溶媒溶液の塗布層23を形成する(図4(a)参照)。
剥離フィルム20は、最終的に形成されるイオン交換樹脂コーティング層3と接着しないようなものであり、塗布層23中の有機溶媒に溶解せず、最終的に容易に剥離し得るようなものであれば、その種類や厚みを問わないが、一般的には、耐久性、機械的強度などに優れ、繰り返し使用可能であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリオレフィンフィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが好適に使用される。
有機溶媒溶液の塗布は、それ自体公知の手段で行うことができ、例えば、ドクターブレードコート、ナイフコート、ロールコート、ナイフコート、バーコートなどにより塗布することができる。塗布厚みは、乾燥厚みが、目的とするイオン交換樹脂コーティング層7の厚みdに不織布シート5の長繊維層5aの厚みを加えた程度の厚みとする。
上記のようにして有機溶媒溶液の塗布層23を形成した後、この塗布層23を乾燥する前に、不織布シート5を重ねて保持する(図4(b)参照)。この場合、不織布シート5の長繊維層5aが塗布層23に面するように、不織布シート5の重ね合わせが行われるが、長繊維層5a、5bが同じ厚みで形成されているような場合には、何れの側が塗布層23に対面するように重ね合わせてもよい。
即ち、上記の重ね合わせは、塗布層23が乾燥されていないウエットな状態にあるため、塗布層23を形成している有機溶媒溶液は、次第に不織布シート5の長繊維層5aの空隙部に浸透していくこととなるが、この浸透は、緻密な微細繊維層5cで遮断されるため、反対側の長繊維層5bの内部にまで浸透することはない。また、有機溶媒溶液が長繊維層5a中に浸透していく際に気泡が混入するが、このような気泡は、上方が繊維の層であり、開放系であるため、かかる気泡は速やかに上方から逸散することとなり、従って、最終的に形成されるイオン交換樹脂コーティング層7中への気泡の混入を有効に防止することが可能となる。
また、上記の重ね合わせは、適宜、加圧下に行い、これにより、不織布シート5の長繊維層5a内への有機溶媒溶液の浸透を促進させることもできる。このような加圧は、ローラプレス等により行うことができ、加圧圧力は、一般に、塗布層23が過度に圧縮されない程度の範囲に設定される。
本発明においては、有機溶媒溶液の粘度を前述した範囲に設定しておくことにより、この重ね合わせ工程を短時間で行うことができ、重ね合わせによる不織布シートのラミネート速度を速く設定することができ、生産性を高めることができる。
上記のようにして不織布シート5を重ね合わせて塗布層23の上部を不織布シート5の長繊維層5aに浸透させた後、該塗布層23を乾燥し、有機溶媒を除去してウエットな塗布層23を固化することにより、イオン交換樹脂コーティング層7を形成することができる。このような乾燥は、不織布シート5等が溶融してフィルム化しない程度の温度での加熱乾燥、減圧乾燥、送風乾燥などにより行うことができる。
尚、イオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を用いて塗布層23を形成した場合には、上記の乾燥によって得られる層は、イオン交換樹脂前駆体の層であるため、この乾燥後に、イオン交換基の導入処理を行うことが必要である。
イオン交換基の導入は、それ自体公知の方法で行われ、例えば、カチオン交換膜を製造する場合には、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により行われ、アニオン交換膜を製造する場合には、アミノ化、アルキル化等の処理により行われる。即ち、上記処理を行うための処理剤の溶液を、乾燥により得られたイオン交換樹脂前駆体のコーティング層と接触せしめて交換基導入反応を行い、次いで、洗浄及び乾燥を行うことにより、イオン交換樹脂コーティング層7を形成することができる。
以上のようにしてイオン交換樹脂コーティング層7を形成した後、剥離フィルム20を引き剥がし(図4(c)参照)、これにより、図3に示す構造のイオン交換膜3を得ることができる。
イオン交換体10の作製;
上記のようにして作製されたイオン交換膜3を、図2に示す形態の円筒状の通液性支持体1の外面に巻き付けて固定することにより、図1に示す構造のイオン交換体10が作製される。
イオン交換膜3の通液性支持体1の外面への固定は、この膜3がイオン交換樹脂コーティング層7と不織布5から構成された複合化膜であるという特徴を活かして、容易に行うことができる。即ち、通液性支持体1の外面に巻き付けられたイオン交換膜3の不織布シート5(長繊維層5b)同士をそのラップ部で熱融着することにより強固にイオン交換膜3同士を接着固定することができ、これにより液漏れを防止することができる。
例えば、図5に示すように、このイオン交換膜3をイオン交換樹脂コーティング層7が外面側に位置するようにして筒状とし、この筒状体の端部を内面同士(不織布シート5の長繊維層5b同士)が密着するように重ね合わせ、このラップ部xを熱プレスにより接着固定する。このようにして形成された筒状体を広げて、前述した通液性支持体1を差し込むことにより、本発明のイオン交換体10を作製することができる。この場合、必要により、熱接着されているラップ部xを折り曲げ、接着剤等によりイオン交換膜3の外表面に固定することにより、このラップ部xの接着を強固にすることもできる。
<イオン交換体10の用途>
上記のような構造を有する本発明のイオン交換体10は、イオン交換膜3として不織布シート5が基材シートとして使用されている構造のものが使用されているため、極めて安価であるばかりか、不織布シートを基材シートとして用いた場合の欠点である強度が改善され、極めて高い強度を有しており(例えば、このイオン交換膜3の破裂強度は0.1MPa以上である)、従って、寸法安定性や形状安定性も優れている。特に、イオン交換膜3の製造に際して、イオン交換樹脂の不織布シート5への浸透が効果的に制限されているため、イオン交換樹脂コーティング層7の厚みが薄く且つ均一であり、従って、膜抵抗等の膜特性にバラツキが無く、電解液と接触させたときの過度の膨潤も抑制され、膨潤による波打ちも有効に防止され、さらには、イオン交換樹脂コーティング層中への気泡の混入も有効に防止されているため、膜抵抗が低いという特性を有している。
上記の説明から理解されるように、本発明の円筒状イオン交換体10は、電解質水溶液との接触によるイオン交換樹脂の膨潤による形態変化が有効に抑制されているため、不織布5を基材シートとして有するイオン交換膜3を使用しているにもかかわらず、例えば電着塗装の用途に有効に使用することができる。
電着塗装に本発明のイオン交換体10を使用する場合には、図6に示されているように、このイオン交換体10の上部開口部及び下部開口部のそれぞれに、上部ホルダー30及び下部ホルダー31を嵌合固定する。
即ち、図6に示されているように、イオン交換体10の下部開口部は下部ホルダー31によって完全に閉じられているが、上部ホルダー31からは、極液を循環するための導入管33及び排出管35が挿入されており、さらに、電極37が挿入されている。
上記のようにして上部ホルダー30及び下部ホルダー31が嵌合固定されているイオン交換体10は、電着塗装槽中の塗装液40中に浸漬して保持され、その内部に極液(例えば塩化ナトリウム水溶液等の電解液)を循環しながら、電着塗装が行われることとなる。
例えば、塗装液40中を被塗装物品(自動車の車体等)を移動させながら、電極37と被塗装物品との間に電圧を印加して通電を行うことにより、電着塗装が行われることとなる。即ち、塗装液がアニオン型塗料の場合には、イオン交換膜7としてはカチオン交換膜が使用され、電極37を陰極、被塗装物品を陽極として通電が行われ、アニオン成分(塗料成分)が被塗装物品の表面に付着して塗装が行われ、塗装液中のイオン残渣(カチオン成分)は、円筒状イオン交換体10の内部に移動し、極液中に回収される。塗装液がカチオン型塗料の場合は、上記と全く逆であり、イオン交換膜7としてはアニオン交換膜が使用され、電極37を陽極、被塗装物品を陰極として通電が行われ、カチオン成分(塗料成分)が被塗装物品の表面に付着して塗装が行われ、塗装液中のイオン残渣(アニオン成分)は、円筒状イオン交換体10の内部に移動し、極液中に回収される。
このようにして本発明のイオン交換体10を用いて電着塗装を行った場合、その形態変化が有効に抑制されており、イオン交換樹脂の膨潤による波打ちなどが防止され、表面に凹凸の形成などを生じることが無く、従って、長期間にわたって電着塗装を継続して行った場合にも、塗料カスなどがイオン交換樹脂コーティング層7の表面に蓄積するという不都合や塗装液のリークなども防止され、この結果、頻繁にイオン交換体の交換や洗浄などの作業を行う必要が無く、電着塗装を長期間にわたって安定に実施することが可能となるのである。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例におけるイオン交換膜の特性、並びに電着塗装試験は、次のような測定により求めた。
(電気抵抗測定)
白金黒電極版を有する2室セル中に、製造例及び比較製造例で作製されたイオン交換膜を挟み、イオン交換膜の両側に0.5mol/lの塩化ナトリウム水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、このときの電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合に測定された電極間抵抗との差を膜抵抗として記録した。
尚、上記測定に使用するイオン交換膜は、あらかじめ0.5mol/lの塩化ナトリウム水溶液中で平衡にしたものを用いた。
(破裂強度測定)
Mullen式破裂強度計(東洋精機製作所製)を用いてイオン交換膜の破裂強度を測定した。
(粘度測定)
回転円筒式粘度計ビスコテスタVT−04F(リオン株式会社製)を用いて、イオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液(ポリマー溶液)の粘度を測定した。
(電着塗装試験>
実施例及び比較例1で得られたイオン交換膜を所定の大きさに裁断し、このイオン交換膜を、外径が63mm、長さが1000mmの円筒状通液支持体(開口率50%)の外面に巻き付けて固定し(ラップ部を接着剤で固定)、図1に示す円筒状イオン交換体を作製した。
上記のイオン交換体に上部ホルダー及び下部ホルダーを取り付け、下記の条件で電着塗装試験を行った。
塗料液;
イオン交換体のイオン交換樹脂がアニオン交換膜の場合、カチオン性塗料15%、酢
酸1%、多価アルコール1%を含む電解質水溶液。
イオン交換体のイオン交換樹脂がアニオン交換膜の場合、アニオン性塗料15%、酢
酸1%、多価アルコール1%を含む電解質水溶液、
極液;酢酸1%水溶液
被塗装物;金属加工品
通電電圧;200V
上記の条件で連続して通電を行って電着塗装を行い、イオン交換体表面(イオン交換樹脂コーティング樹脂層表面)への塗料ブツの付着状況を観察した。
<実施例1>
ポリマー溶液の調製;
ポリフェニレンオキシドをクロロホルムに溶解し、ポリフェニレンオキシドにクロロスルホン酸を反応させ、水酸化ナトリウムで中和し、溶媒除去することでイオン交換容量が1.6meq/gであるスルホン化ポリフェニレンオキシド(カチオン交換樹脂)を得た。
次に該スルホン化ポリフェニレンオキシドをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し粘度が11dPa・sのスルホン化ポリフェニレンオキシド溶液を調製した。
不織布シート;
基材シートとして、下記の3層構造の不織布シートを用意した。
表面及び裏面の長繊維層
繊維素材:ポリエチレン長繊維(融点260℃)
繊維径:13μm
目付け量 31g/m
中間層(微細繊維層)
繊維素材:ポリエチレン製メルトブロー繊維(融点260℃)
繊維径:1.7μm
目付け量 8g/m
イオン交換膜の製造;
上記で調製されたポリマー溶液を、バーコーターを用いてPETフィルムに100μm液厚になるように塗布して、塗布層(キャスト層)を形成した。
上記のキャスト層の上に、上記の不織布シートを重ね合わせてローラ加圧により積層した。このときのラミネート速度は10m/minとした。(不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。)
次いで、60℃でキャスト層を加熱乾燥して固化せしめ、この後に、PETフィルムを剥離することでカチオン交換膜を得た。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは18μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.5Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜をポリエチレン製開孔率50%の円筒状ネットに巻き、ラップ部は、イオン交換膜の不織布側を合わせて熱溶着して接着固定し、更に、折り曲げた後、接着剤で固定した。得られたイオン交換体を用いて、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料ブツの付着はほとんど観察されなかった。また液漏洩も観察されなかった。
<実施例2>
前記ポリマー溶液(スルホン化ポリフェニレンオキシド溶液)の粘度を50dPa・sに変更し、キャスト層厚みを50μm液厚に変更した以外は、実施例1と同様にしてカチオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は5m/minとした。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは10μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.2Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料ブツの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例3>
ポリマー溶液(スルホン化ポリフェニレンオキシド溶液)の粘度を75dPa・sに変更した以外は、実施例2と同様にしてカチオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は2.5m/minとした。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは14μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.3Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例4>
ポリマー溶液(スルホン化ポリフェニレンオキシド溶液)の粘度を32dPa・sに変更した以外は、実施例2と同様にしてカチオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は7.0m/minとした。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは11μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.2Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例5>
ポリマー溶液(スルホン化ポリフェニレンオキシド溶液)の粘度を5dPa・sに変更した以外は、実施例1と同様にしてカチオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は20.0m/minとした。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは12μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は3.1Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例6>
不織布シートとして、以下の3層構造を有するものを用意した。
表面及び裏面の長繊維層
繊維素材:ポリエチレン長繊維(融点260℃)
繊維径:12μm
目付け量 12g/m
中間層(微細繊維層)
繊維素材:ポリエチレン製メルトブロー繊維(融点260℃)
繊維径:5μm
目付け量 15g/m
上記の不織布シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は10m/minとした。
得られたカチオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは21μmであり、その膜の破裂強度は0.4MPa、電気抵抗は1.8Ωcmであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1度同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料ブツの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏れも観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例7>
ポリマー溶液の調製;
ポリスルホンをクロルメチル化し、次いでトリメチルアミンにより4級塩基化してアニオン交換樹脂であるアミノ化ポリスルホン(4級塩基のイオン交換容量1.3meq/g)を調製した。
このアミノ化ポリスルホンを、メタノール−クロロホルム(容量比1:1)の混合溶媒に溶解して粘度14dPa・sのアミノ化ポリスルホン溶液を調製した。
イオン交換膜の製造;
上記で調製されたポリマー溶液を、バーコーターを用いてPETフィルムに100μm液厚になるように塗布して、キャスト層を形成した。
上記のキャスト層の上に、実施例1で用いた不織布シートを重ね合わせて積層した。このときの不織布シートのラミネート速度は8m/minとした。
次いで、60℃でキャスト層を加熱乾燥して固化せしめ、この後に、PETフィルムを剥離することでアニオン交換膜を得た。
得られたアニオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは8μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.4Ωcmであった。
上記のアニオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例8>
ポリマー溶液の調製;
クロルメチル化ポリスチレンをトリメチルアミンにより4級塩基化してアニオン交換樹脂であるアミノ化ポリスチレン(4級塩基のイオン交換容量2.0meq/g)を調製した。
このポリマー溶液をクロロホルムに溶解して粘度1dPa・sのアミノ化ポリスチレン溶液を調製した。
イオン交換膜の製造;
上記で調製されたポリマー溶液を、バーコーターを用いてPETフィルムに100μm液厚になるように塗布して、キャスト層を形成した。
上記のキャスト層の上に、実施例1で用いた不織布シートを重ね合わせて積層した。このときの不織布シートのラミネート速度は40m/minとした。
次いで、60℃でキャスト層を加熱乾燥して固化せしめ、この後に、PETフィルムを剥離することでアニオン交換膜を得た。
得られたアニオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは7μmであり、その膜の破裂強度は0.6MPa、電気抵抗は2.1Ωcmであった。
上記のアニオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<実施例9>
不織布シートとして、以下の3層構造を有するものを用意した。
表面及び裏面の長繊維層
繊維素材:ポリエチレン長繊維(融点260℃)
繊維径:20μm
目付け量 20g/m
中間層(微細繊維層)
繊維素材:ポリエチレン製メルトブロー繊維(融点260℃)
繊維径:1.0μm
目付け量 10g/m
上記の不織布シートを用いた以外は、実施例7と同様にしてアニオン交換膜を得た。このときの不織布シートのラミネート速度は8m/minとした。
得られたアニオン交換膜の不織布シート表面のイオン交換樹脂コーティング層の厚みdは4μmであり、その膜の破裂強度は0.7MPa、電気抵抗は2.0Ωcmであった。
上記のアニオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った場合においても、塗料カスの付着はほとんど観察されなかった。また、液漏洩も観察されなかった。
尚、不織布シートのラミネート速度を、上記よりも速くしたときには、ポリマー溶液の浸透が不十分であったため、不織布シートの剥離を生じた。
<比較例1>
アニオン交換膜に株式会社アストム製のネオセプタAMXを、ポリエチレン製開孔率50%の円筒状ネットに巻き、ラップ部は、イオン交換膜同士を接着剤で固定した。得られたイオン交換体を用いて、その電着塗装試験を行ったところ、6ケ月間継続して電着塗装を行った結果、イオン交換膜の膨潤によるしわが発生し、しわの間に塗料ブツの付着が観察された。また膜の接着固定部からの顕著な液漏洩が観察された。
<比較例2>
不織布として、スパンボンド法により得られた1層のみの不織布を用意した。
繊維素材:ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)
繊維径:15μm
目付け量 50g/m
上記の不織布シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン交換膜を得た。得られたカチオン交換膜では、不織布シート中の微細繊維層がポリマー溶液の浸透を遮断する層として機能しないため、不織布シートの表面に均一な厚みのイオン交換樹脂のコーティング層が形成されず、ピンホールが観察された。また得られた膜の破裂強度は0.3MPaであった。
上記のカチオン交換膜を用いて実施例1と同様にイオン交換体を作製し、6ケ月間の電着塗装試験を行ったところ、イオン交換膜の著しい膨潤による塗料ブツの付着が観察された。また、膜の接着固定部からの液漏れが観察された。
<比較例3>
比較例2の不織布を用いた以外は、実施例7と同様にしてアニオン交換膜を得た。得られたアニオン交換膜では、不織布シート中の微細繊維層がポリマー溶液の浸透を遮断する層として機能しないため、不織布シートの表面に均一な厚みのイオン交換樹脂のコーティング層が形成されず、ピンホールが観察された。また得られた膜の破裂強度は0.5MPaであった。
上記のアニオン交換膜を用いてイオン交換体を作製し、6ケ月間の電着塗装試験を行ったところ、イオン交換膜の著しい膨潤による塗料ブツの付着が観察された。また、膜の接着固定部からの液漏れが観察された。
上記の実施例及び比較例の実験結果を、まとめて表1に示した。
Figure 2012176373
1:円筒状通液性支持体
3:イオン交換膜
5:不織布シート
5a,5b:長繊維層
5c:微細繊維層
7:イオン交換樹脂コーティング層
10:円筒状イオン交換体

Claims (2)

  1. 円筒状の通液性支持体と、該支持体の外面に巻かれて固定されている筒状形状のイオン交換膜とからなるイオン交換体において、
    前記イオン交換膜は、不織布シートと、該不織布シートの一方の表面に形成されているイオン交換樹脂コーティング層とからなっており、該イオン交換樹脂コーティング層が外面側に位置するよう前記支持体の外面に該イオン交換膜が固定されていると共に、
    前記不織布シートは、繊維径が8〜30μmの長繊維層を両面に有し且つ該長繊維層の間の中間層として繊維径が5μm以下の微細繊維層が繊維同士の融着により形成されている繊維層構造を有していることを特徴とするイオン交換体。
  2. 請求項1記載のイオン交換体よりなる電着塗装用隔膜。
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