JP2018003059A - 水解離用多層膜、その製造方法及びそれを用いた水の解離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アニオン交換層とカチオン交換層との接着性が良好であり、なおかつ水の解離効率が高い水解離用多層膜及びその簡便な製造方法を提供する。【解決手段】アニオン交換層とカチオン交換層が接合してなる水解離用多層膜であって、接着増強材が前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に存在しており、かつ前記多層膜の表面に露出しておらず、前記接着増強材が繊維集合体、短繊維または粒子であり、前記アニオン交換層が、カチオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるカチオン性重合体を含有し、かつ前記カチオン交換層が、アニオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるアニオン性重合体を含有することを特徴とする水解離用多層膜とする。【選択図】なし
Description
本発明は、アニオン交換層及びカチオン交換層が接合してなる水解離用多層膜、その製造方法及びそれを用いた水の解離方法に関する。
アニオン交換層とカチオン交換層とが接合してなるバイポーラ膜は水の解離などに利用されている。バイポーラ膜の両側に電解質を含む水溶液を供給し、前記バイポーラ膜の両側の水溶液中に配置された電極間に電圧を印加することによって、カチオン交換層とアニオン交換層の界面で水溶液中の水がプロトンと水酸化物イオンに解離される。こうして生成したプロトンと水酸化物イオンを用いて、中性塩から硫酸と苛性ソーダなどの酸とアルカリを製造することができる。
従来公知のバイポーラ膜を構成するアニオン交換層やカチオン交換層には、主に炭化水素系の骨格を有するポリマーがマトリックスとして用いられている。しかしながら、このようなアニオン交換層やカチオン交換層を製造する際に、高圧、高温下でポリマーに対してイオン性基を導入する処理が必要であるとともに、アニオン交換層とカチオン交換層を貼り合わせる工程も必要であり高コストであった。このようなことから、簡便かつ低コストで製造できるバイポーラ膜が求められている。また、バイポーラ膜を用いて安定に水の解離を行うためには、カチオン交換層とアニオン交換層の接着性が高くて剥離しないことが必要である。
特許文献1には、ポリビニルアルコールとポリアリルアミンの混合物からなるアニオン交換層と、ポリビニルアルコールとスルホン酸基を有するポリビニルアルコールの混合物からなるカチオン交換層とを接着剤を用いて積層させてなるイオンバリアー膜が記載されている。しかしながら、当該イオンバリアー膜中のアニオン交換層とカチオン交換層との接着性が不十分な場合があった。そのため、アニオン交換層とカチオン交換層の間に水疱欠陥(ブリスター)が生じることによって、これらの層が剥離することがあり問題であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アニオン交換層とカチオン交換層との接着性が良好であり、なおかつ水の解離効率が高い水解離用多層膜及びその簡便な製造方法を提供することを目的とする。また、当該多層膜を用いた水の解離方法を提供することを目的とする。
上記課題は、アニオン交換層とカチオン交換層が接合してなる水解離用多層膜であって、接着増強材が前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に存在しており、かつ前記多層膜の表面に露出しておらず、前記接着増強材が繊維集合体、短繊維または粒子であり、前記アニオン交換層が、カチオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるカチオン性重合体を含有し、かつ前記カチオン交換層が、アニオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるアニオン性重合体を含有することを特徴とする水解離用多層膜を提供することによって解決される。
前記接着増強材が繊維集合体であることが好ましく、ポリビニルアルコール繊維の集合体であることがより好ましい。前記繊維集合体中に前記カチオン性重合体または前記アニオン性重合体が含浸されていることも好ましい。
前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体であり、かつ前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体であることも好ましい。このとき、前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するカチオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70であり、かつ前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するアニオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70であることが好ましい。
前記水解離用多層膜の厚みが50〜300μmであることが好ましい。
上記課題は、前記カチオン性重合体及び前記アニオン性重合体の一方のイオン性重合体を含有する水溶液を剥離フィルム上に塗工して形成された膜の表面に前記接着増強材を配置してから他方のイオン性重合体を含有する水溶液を塗工した後に乾燥させる前記水解離用多層膜の製造方法を提供することによっても解決される。
前記水解離用多層膜の両側に電解質を含む水溶液を供給し、前記多層膜の両側の水溶液中に配置された電極間に電圧を印加することによって水を解離する方法が本発明の好適な実施態様である。
本発明の水解離用多層膜は、アニオン交換層とカチオン交換層との接着性が良好であり、なおかつ水の解離効率が高い。また、本発明の製造方法によれば、このような水解離用多層膜を簡便に得ることができるためコストが低減する。さらに、前記多層膜を用いることによって、水を効率良く解離することができる。
本発明の水解離用多層膜は、アニオン交換層とカチオン交換層が接合してなる水解離用多層膜であって、接着増強材が前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に存在しており、かつ前記多層膜の表面に露出しておらず、前記接着増強材が繊維集合体、短繊維または粒子であり、前記アニオン交換層が、カチオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるカチオン性重合体を含有し、かつ前記カチオン交換層が、アニオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるアニオン性重合体を含有するものである。
(カチオン性重合体)
本発明で用いられるカチオン性重合体は、カチオン性基を有する重合体である。当該カチオン性基は、前記カチオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。カチオン性基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のカチオン性重合体に含まれる。この中で工業的に入手しやすい観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基、2級アンモニウム基、3級アンモニウム基、トリアルキルアンモニウム基等の4級アンモニウム基のいずれを用いることができるが、4級アンモニウム基がより好ましく、トリアルキルアンモニウム基がさらに好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン性基を有してもよいし、複数種のカチオン性基を有してもよい。また、カチオン性基の対アニオンとしては、例えばハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有してもよいし、複数種の対アニオンを含有してもよい。
本発明で用いられるカチオン性重合体は、カチオン性基を有する重合体である。当該カチオン性基は、前記カチオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。カチオン性基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のカチオン性重合体に含まれる。この中で工業的に入手しやすい観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基、2級アンモニウム基、3級アンモニウム基、トリアルキルアンモニウム基等の4級アンモニウム基のいずれを用いることができるが、4級アンモニウム基がより好ましく、トリアルキルアンモニウム基がさらに好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン性基を有してもよいし、複数種のカチオン性基を有してもよい。また、カチオン性基の対アニオンとしては、例えばハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有してもよいし、複数種の対アニオンを含有してもよい。
カチオン性重合体としては、以下の一般式(1)〜(8)の構造単位を有するものが例示される。
一般式(1)中の対アニオンX−としては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(1)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体しては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの3−(メタ)アクリルアミド−アルキルトリアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(2)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(3)及び一般式(4)で表される構造単位は、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアリルジアルキルアンモニウム塩を環化重合することにより形成される。このような構造単位を含有するカチオン性重合体としては、前記ジアリルジアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(5)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミンとビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(6)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(7)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(8)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドまたはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドとビニルアルコールとの共重合体が例示される。
(アニオン性重合体)
本発明で用いられるアニオン性重合体は、アニオン性基を有する重合体である。当該アニオン性基は、前記アニオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。アニオン性基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン性基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン性基を有していてもよいし、複数種のアニオン性基を有していてもよい。また、アニオン性基の対カチオンとしては、例えば水素イオン、アルカリ金属イオンなどが例示される。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。
本発明で用いられるアニオン性重合体は、アニオン性基を有する重合体である。当該アニオン性基は、前記アニオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。アニオン性基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン性基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン性基を有していてもよいし、複数種のアニオン性基を有していてもよい。また、アニオン性基の対カチオンとしては、例えば水素イオン、アルカリ金属イオンなどが例示される。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。
アニオン性重合体としては、以下の一般式(9)及び(10)の構造単位を有するものが例示される。
一般式(9)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
一般式(10)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、p−スチレンスルホン酸ナトリウムなどp−スチレンスルホン酸塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
また、アニオン性重合体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸などのスルホン酸またはその塩とビニルアルコールとの共重合体、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸、その誘導体またはその塩とビニルアルコールとの共重合体も例示される。
一般式(9)または(10)において、Gは、より高い荷電密度を与えるスルホネート基、スルホン酸基、ホスホネート基、またはホスホン酸基であることが好ましい。また一般式(9)及び一般式(10)中、M+で表されるアルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
本発明で用いられる、カチオン性重合体及びアニオン性重合体は、1種類のイオン性重合体からなるものであってもよいし、複数種のイオン性重合体を含むものであってもよい。カチオン性重合体は、カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体であり、アニオン性重合体は、アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体である。これらの共重合体は、上記カチオン性基またはアニオン性基を有する単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位を含む。これらの共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体またはランダム共重合体であることが好ましく、ブロック共重合体であることがより好ましい。また、これらの共重合体が架橋性を有するものであることも好ましい。
前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するカチオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70であり、かつ前記アニオン基性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するアニオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70であることが好ましい。前記カチオン性重合体または前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するカチオン性単量体単位またはアニオン性単量体単位のモル比が2/98未満の場合には、得られる水解離用多層膜の膜抵抗が高くなり、電流効率が低下するおそれがある。前記モル比は、5/95以上がより好ましく、7/93以上がさらに好ましい。一方、前記モル比が30/70を超える場合には、得られる水解離用多層膜が激しく膨潤して、アニオン交換層とカチオン交換層が剥離するおそれがある。前記モル比は、18/82以下がより好ましく、16/84以下がさらに好ましい。
カチオン性基またはアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、300以上であることが好ましい。重合度が300未満であると、本発明の水解離用多層膜の強度が不十分になるおそれがある。重合度は500以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。一方、重合度が10000以下であることが好ましい。重合度が10000を超えると当該重合体水溶液の粘度が高くなり過ぎて、取扱い難くなるおそれがある。重合度は8000以下であることがより好ましい。このとき、前記ビニルアルコール系共重合体が複数種のビニルアルコール系共重合体の混合物である場合の重合度は、混合物全体としての平均の重合度をいう。なお、ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定した値である。
カチオン性基またはアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体のけん化度は、40モル%以上が好ましい。けん化度が40モル%未満の場合には、水溶性が低下して、水解離用多層膜を製造する際の取扱性が低下するおそれがある。けん化度は60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。本発明において、ビニルアルコール系共重合体のけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。カチオン性基またはアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体が複数種の重合体の混合物である場合も同様に測定する。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、カチオン性基またはアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体は、カチオン性基またはアニオン性基を有する単位、ビニルアルコール単位、及びビニルエステル単位以外の他の単量体単位を含有しても構わない。当該他の単量体単位の含有量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、実質的に含有されていないことがさらに好ましい。
(ビニルアルコール系ブロック共重合体)
本発明において、前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体であることが好ましい。入手容易である点から、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、またはジアリルジアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。また、本発明において、前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体であることも好ましい。入手容易である点から、p−スチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。
本発明において、前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体であることが好ましい。入手容易である点から、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、またはジアリルジアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。また、本発明において、前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体であることも好ましい。入手容易である点から、p−スチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。
(ビニルアルコール系ブロック共重合体の製造)
本発明で用いられる、アニオン性単量体またはカチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体を重合させて所望のブロック共重合体を得る方法、及び(2)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにカチオン性基またはアニオン性基を結合させる方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中のポリビニルアルコール成分以外の重合体成分にカチオン基またはアニオン基を導入する方法が工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中の各成分の種類や量を容易に制御できることから、(1)の方法が好ましい。
本発明で用いられる、アニオン性単量体またはカチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体を重合させて所望のブロック共重合体を得る方法、及び(2)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにカチオン性基またはアニオン性基を結合させる方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中のポリビニルアルコール成分以外の重合体成分にカチオン基またはアニオン基を導入する方法が工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中の各成分の種類や量を容易に制御できることから、(1)の方法が好ましい。
これらのブロック共重合体の製造に用いられる、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールは、例えば特開昭59−187003号などに記載されている方法により得ることができる。すなわち、チオール酸の存在下にビニルエステル、例えば酢酸ビニルをラジカル重合して得られるポリビニルエステルをけん化する方法が挙げられる。ビニルエステルは、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等が挙げられる。この中でも酢酸ビニルが好ましい。
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールのけん化度は、60モル%以上が好ましい。けん化度が40モル%未満では、得られるブロック共重合体の水溶性が低下して、水解離用多層膜を製造する際の取扱性が低下するおそれがある。けん化度は、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとカチオン性単量体またはアニオン性単量体とを用いてブロック共重合体を得る方法としては、例えば特開昭59−189113号などに記載された方法が挙げられる。すなわち、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下にカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を得ることができる。このラジカル重合は公知の方法、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合などによって行うことができるが、末端にメルカプト基を含有するポリビニルアルコールを溶解し得る溶剤、例えば水やジメチルスルホキシドを主体とする媒体中で行うのが好ましい。また、重合プロセスとしては、回分法、半回分法、連続法のいずれをも採用することができる。前記ブロック共重合体の製造に用いられるカチオン性単量体及びアニオン性単量体として、重合後に前記一般式(1)〜(10)で表される単位を形成するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
本発明において、接着増強材として、繊維集合体、短繊維または粒子が用いられる。
前記接着増強材として繊維集合体を用いることが好ましい。本発明の水解離用多層膜において、前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に接着増強材が存在する。接着増強材として繊維集合体を用いた場合には、当該繊維集合体によるアンカー効果によって、前記アニオン交換層と前記カチオン交換層との接着性がさらに向上する。前記接着増強材として用いられる繊維集合体としては、不織布、織布が挙げられる。中でも、不織布が好ましい。
前記不織布を構成する繊維としては、ポリビニルアルコール繊維及びセルロース系繊維等の親水性繊維やポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維等の疎水性繊維が挙げられる。前記疎水性繊維としては、水酸基、カルボキシル基などのプロトン性官能基を実質的に有さない重合体の繊維が好ましい。前記疎水性繊維としては、ポリエステル繊維が好ましい。水中における水解離用多層膜の強度が向上するとともに、吸水による膨潤や変形が抑制されて水解離用多層膜の寸法安定性が向上する観点からは、前記不織布または前記織布を構成する繊維のうち、前記疎水性繊維の割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。一方、アニオン交換層及びカチオン交換層との接着性がさらに向上する観点からは、前記不織布または前記織布を構成する繊維のうち、前記親水性繊維の割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。前記不織布の種類としては、湿式法や乾式法によって形成された不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ法によって形成された不織布等が挙げられる。前記織布の基布の組織としては、平織、綾織等が挙げられる。前記不織布を構成する繊維の平均繊維径は1〜30μmが好ましい。前記不織布として、ポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られる合成紙(ビニロン紙)が特に好ましい。織布としては、上記不織布を構成する繊維からなるもののほか、合成樹脂製のものも好適に用いることができる。合成樹脂製の織布は線形部材を10〜90度の角度にて交差して配置し交差点を溶融結合してなる合成樹脂製のメッシュであることが好ましい。前記メッシュは、例えば溶融押し出し法により、または合成樹脂製の糸で粗く織った複数枚の織布を熱プレスする方法により製造される。
前記繊維集合体の坪量は、1〜100g/m2であることが好ましい。坪量が1g/m2未満の場合、得られる水解離用多層膜の機械強度が低下し、耐久性が不足するおそれがある。5g/m2以上であることがより好ましく、10g/m2以上であることが更に好ましい。一方、坪量が100g/m2を超える場合は、得られる水解離用多層膜の膜抵抗が上昇し、水の解離を行う際の電圧が高くなるおそれがある。前記繊維集合体の坪量は80g/m2以下が好ましく、50g/m2以下であることがさらに好ましい。
前記繊維集合体の厚みは5〜200μmであることが好ましい。前記繊維集合体の厚みが5μm未満の場合には、得られる多層膜の強度が不足するおそれがある。当該厚みは10μm以上であることがより好ましい。前記繊維集合体の厚みが200μmを超える場合、膜抵抗が上昇し、水の解離を行う際の電圧が高くなるおそれがある。当該厚みは150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
前記接着増強材として用いられる短繊維を構成する材料としては、不織布を構成する繊維として上述したものが挙げられる。前記短繊維の平均繊維径は1〜30μmが好ましく、平均繊維長は1〜10mmが好ましい。
前記接着増強材として用いられる粒子としては、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂粒子、イオン交換樹脂粒子、シリカ系粒子等の無機粒子等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール粒子が好ましく、ポリビニルアルコール粒子がより好ましい。ポリビニルアルコール粒子としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体粒子が好ましい。また、前記粒子が多孔質粒子であることも好ましい。前記粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmが好ましい。
本発明において、前記カチオン性重合体及び前記アニオン性重合体の一方を含有する水溶液を基材上に塗工して形成された膜の表面に、前記接着増強材を配置してから、他方のイオン性重合体を含有する水溶液を塗工した後に、形成された積層体を乾燥させることにより本発明の水解離用多層膜を製造することが好ましい。このような方法は、簡便であり、製造コストが低減する。また、水溶液を塗工してアニオン交換層とカチオン交換層とを形成させるため、アニオン交換層とカチオン交換層との間に気泡が入りにくく、アニオン交換層とカチオン交換層との接着性がさらに向上する。
以下、本発明の水解離用多層膜の製造方法について具体的に説明する。まず、前記カチオン性重合体及び前記アニオン性重合体の一方を含有する水溶液を基材上に塗工することにより膜を形成させる。前記水溶液中の前記カチオン性重合体または前記アニオン性重合体の濃度は、0.5〜20質量%が好ましい。また、前記水溶液は水に加えて、水溶性有機溶媒を含有していても構わない。使用される基材としては、剥離フィルム、ガラス板が挙げられ、剥離フィルムが好ましい。剥離フィルムとして、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。前記水溶液の塗工方法としては、従来公知の方法が採用され、コンマコート法、ダイコート法、スロット塗工法、カーテンコート法等が挙げられる。
基材上に形成された膜の表面に前記接着増強材を配置する。このとき、前記接着増強材の一部が前記膜に埋まるように当該接着増強材を配置することが好ましい。前記接着増強材が前記繊維集合体である場合には、前記繊維集合体中にカチオン性重合体またはアニオン性重合体が含浸されるように当該接着増強材を配置することが好ましい。前記膜に対して前記接着増強材を圧着させても構わない。前記水溶液を塗工して膜を形成させた後、引き続き当該膜の表面に前記接着増強材を配置してもよいし、前記水溶液を塗工した後、予備乾燥してから、形成された膜の表面に前記接着増強材を配置しても構わない。このときの予備乾燥は熱風乾燥機、ホットプレート等を用いて行うことができ、温度は50〜150℃が好ましく、乾燥時間は0.1〜30分が好ましい。また、前記接着増強材を配置した後に、形成された積層体を乾燥させてもよい。このときの温度は50〜150℃が好ましく、乾燥時間は0.5〜60分が好ましい。
前記接着増強材を配置した後、当該接着増強材の上に他方のイオン性重合体を含有する水溶液を塗工する。このとき、当該接着増強材の表面が露出しないように前記水溶液を塗工する必要がある。塗工方法としては、上述した方法が採用される。
前記接着増強材の上に他方のイオン性重合体を含有する水溶液を塗工した後、形成された積層体を乾燥させることにより本発明の水解離用多層膜が得られる。このときの乾燥は上記と同様の装置を用いて行うことができ、温度は50〜150℃が好ましく、乾燥時間は0.5〜60分が好ましい。こうして得られた水解離用多層膜が得られる。
得られた多層膜に対して、さらに熱処理を施してもよい。熱処理の温度は50〜200℃が好ましい。熱処理の温度が50℃未満であると、機械的強度を向上させる効果が得られないおそれがある。当該温度は80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。一方、熱処理の温度が200℃を超えると、アニオン性基またはカチオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体が融解するおそれがある。当該温度は180℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。熱処理の時間は、通常、1分〜10時間である。熱処理は不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気下で行うことが望ましい。
また、多層膜を構成するカチオン性重合体及びアニオン性重合体に対して架橋処理を施すことが好ましい。このとき、一旦多層膜を乾燥させてから架橋処理を施すことが好ましい。カチオン性重合体及びアニオン性重合体を架橋させることにより、水解離用多層膜の機械的強度と耐久性がさらに向上する。
架橋処理の方法は、カチオン性重合体またはアニオン性重合体の分子鎖同士をアセタール結合によって結合できる方法が好ましい。架橋処理は、架橋処理剤を含む液に多層膜を含浸させることにより行うことができる。架橋処理剤としては、アセタール結合を形成させることができるものが好ましく、例えばグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオギザール、ベンズアルデヒド、スクシンアルデヒド、マロンジアルデヒド、アジピンアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ノナンジア−ルなどが挙げられる。中でも、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザールなどが好ましく、グルタルアルデヒド、グリオギザールがより好ましい。架橋構造の安定性からグルタルアルデヒドが特に好ましい。また、架橋効率の点からはジアルデヒドが好ましい。架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜10体積%である。本発明において、熱処理と架橋処理を行ってもよいし、架橋処理のみ行ってもよい。
前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。アニオン交換層のカチオン性重合体以外の成分の含有量は、カチオン性重合体100質量部に対して、通常、100質量部以下であり、10質量部以下が好適であり、5質量部以下がより好適であり、アニオン交換層が実質的にカチオン性重合体のみからなるものであることがさらに好適である。また、カチオン交換層中のアニオン性重合体以外の成分の含有量は、アニオン性重合体100質量部に対して、通常、100質量部以下であり、10質量部以下が好適であり、5質量部以下がより好適であり、カチオン交換層が実質的にアニオン性重合体のみからなるものであことがさらに好適である。
本発明の水解離用多層膜において、前記接着増強材が前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に存在している必要がある。前記アニオン交換層の接合面には、前記カチオン交換層と接触する部分と前記接着増強材と接触する部分とが存在し、前記カチオン交換層の接合面には、前記アニオン交換層と接触する部分と前記接着増強材と接触する部分とが存在する。このようにして、前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に前記接着増強材が存在することによって前記アニオン交換層と前記カチオン交換層との接着性が良好になる。
前記接着増強材が前記繊維集合体の場合には、当該繊維集合体中にカチオン性重合体とアニオン性重合体の少なくとも一方が含浸される。これによって、前記アニオン交換層と前記カチオン交換層とが直接接触する。水の解離を行った場合に、前記アニオン交換層と前記カチオン交換層とが直接接触した部分近傍において、水が解離されるものと考えられる。また、前記繊維集合体中にカチオン性重合体とアニオン性重合体の少なくとも一方が含浸されることによって、前記繊維集合体によるアンカー効果が生じることにより、前記アニオン交換層と前記カチオン交換層との接着性がさらに向上する。
本発明において、前記接着増強材が水解離用多層膜の表面に露出していない必要がある。前記接着増強材が水解離用多層膜の表面に露出する場合、水の解離を行う際に液漏れ等の原因になりうるため好ましくない。本発明の製造方法によれば、このような水解離用多層膜を簡便に製造できる。
本発明の水解離用多層膜の乾燥後の総厚みは50〜300μmが好ましい。当該厚みが50μm未満の場合には、多層膜の機械的強度が不十分になるおそれやイオンが多層膜を透過し易くなり、水の解離の効率が低下するおそれがある。当該厚みは80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。一方、多層膜の乾燥厚みが300μmを超える場合には、膜抵抗が高くなり過ぎるおそれがある。当該厚みは200μm以下がより好ましい。
本発明の多層膜の両側に電解質を含む水溶液を供給し、前記多層膜の両側の水溶液中に配置された電極間に電圧を印加することによって水を解離する方法が本発明の好適な実施態様である。本発明の多層膜はアニオン交換層とカチオン交換層との接着性が良好であり、なおかつ水の解離に用いた場合の効率が高い。したがって、前記方法によれば、効率良く水を解離することが可能であり、硫酸、酒石酸などの酸や苛性ソーダなどのアルカリの製造等に好適に採用される。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例中、特に断りのない限り「%」及び「部」は質量基準である。実施例及び比較例における分析及び評価は、下記の方法にしたがって行った。
(1)カチオン性基またはアニオン性基を有する単量体単位の含有量
得られたイオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体を、重水素溶媒に溶解(濃度5質量%)させ、以下のとおり1H−NMR測定した。イオン性基を有する単位のピーク強度とビニルアルコール系重合体のピーク強度から、重合して得られたビニルアルコール系共重合体中に含まれるイオン性基を有する単位の含有量(変性量、モル%)を算出した。以下の実施例で用いたイオン性基を有する単位は、ベンゼン環を有する。したがって、6.0〜8.0ppmに現れる当該ベンゼン環のピーク強度と、4.0ppm付近に現れるビニルアルコール系共重合体のメチンプロトンのピーク強度の比からイオン性基を有する単位の含有量を算出した。
装置名 : 日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数 : 500MHz
溶媒 : 重水
ポリマー濃度 : 5質量%
測定温度 : 80℃
積算回数 : 256回
パルス繰り返し時間 : 4秒
サンプル回転速度 : 10〜12Hz
得られたイオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体を、重水素溶媒に溶解(濃度5質量%)させ、以下のとおり1H−NMR測定した。イオン性基を有する単位のピーク強度とビニルアルコール系重合体のピーク強度から、重合して得られたビニルアルコール系共重合体中に含まれるイオン性基を有する単位の含有量(変性量、モル%)を算出した。以下の実施例で用いたイオン性基を有する単位は、ベンゼン環を有する。したがって、6.0〜8.0ppmに現れる当該ベンゼン環のピーク強度と、4.0ppm付近に現れるビニルアルコール系共重合体のメチンプロトンのピーク強度の比からイオン性基を有する単位の含有量を算出した。
装置名 : 日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数 : 500MHz
溶媒 : 重水
ポリマー濃度 : 5質量%
測定温度 : 80℃
積算回数 : 256回
パルス繰り返し時間 : 4秒
サンプル回転速度 : 10〜12Hz
(2)水解離用多層膜の総厚み
作製した水解離用多層膜をヤマト科学株式会社製の熱風乾燥機「DKM400」にて温度105℃で60分乾燥させた。株式会社ミツトヨ製のデジマチックマイクロメーターを使用して乾燥させた多層膜中の異なる部位10箇所の測定値の平均値を総厚みとした。
(3)接着性試験
作製した水解離用多層膜(10cm×10cm)をイオン交換水(24℃)に1週間浸漬させた後、当該水解離用多層膜の水泡欠陥(ブリスター)の発生について、下記の基準に基づき、評価した。
A:直径2mm以上の水泡欠陥が発生しなかった。
B:直径2mm以上の水泡欠陥の発生数が1〜9個であった。
C:直径2mm以上の水泡欠陥の発生数が10個以上であった。
D:水泡欠陥が多数発生した後、アニオン交換層とカチオン交換層とが剥離した。
作製した水解離用多層膜をヤマト科学株式会社製の熱風乾燥機「DKM400」にて温度105℃で60分乾燥させた。株式会社ミツトヨ製のデジマチックマイクロメーターを使用して乾燥させた多層膜中の異なる部位10箇所の測定値の平均値を総厚みとした。
(3)接着性試験
作製した水解離用多層膜(10cm×10cm)をイオン交換水(24℃)に1週間浸漬させた後、当該水解離用多層膜の水泡欠陥(ブリスター)の発生について、下記の基準に基づき、評価した。
A:直径2mm以上の水泡欠陥が発生しなかった。
B:直径2mm以上の水泡欠陥の発生数が1〜9個であった。
C:直径2mm以上の水泡欠陥の発生数が10個以上であった。
D:水泡欠陥が多数発生した後、アニオン交換層とカチオン交換層とが剥離した。
(4)水解離用多層膜の電流効率評価
水解離用多層膜の評価に使用した装置の概略図を図1に示す。当該評価装置は、2つのセルで構成され、2つのセルの間に水解離用多層膜を配置した。水解離用多層膜の有効膜面積は9.0cm2とした。電極として白金(Pt)板を用い、陽極側のセルには、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100mL添加し、陰極側のセルには、1mol/Lの塩酸水溶液を100mL添加した。そして、温度24℃、電流密度0.1A/cm2にて、3時間通電した。通電終了後、液の濃度変化をイオンクロマトグラフィーにより測定することにより、水解離用多層膜の水素イオン及び水酸イオンの電流効率(ηH、ηOH)とナトリウムイオン及び塩素イオンの電流効率(ηNa、ηCl)を求めた。
水解離用多層膜の評価に使用した装置の概略図を図1に示す。当該評価装置は、2つのセルで構成され、2つのセルの間に水解離用多層膜を配置した。水解離用多層膜の有効膜面積は9.0cm2とした。電極として白金(Pt)板を用い、陽極側のセルには、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100mL添加し、陰極側のセルには、1mol/Lの塩酸水溶液を100mL添加した。そして、温度24℃、電流密度0.1A/cm2にて、3時間通電した。通電終了後、液の濃度変化をイオンクロマトグラフィーにより測定することにより、水解離用多層膜の水素イオン及び水酸イオンの電流効率(ηH、ηOH)とナトリウムイオン及び塩素イオンの電流効率(ηNa、ηCl)を求めた。
(PVA−1の合成)
特開昭59−187003号公報に記載された方法(末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体及びその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。JIS K6726に準拠して測定したPVA−1の重合度は1500、けん化度は98.5モル%であった。
特開昭59−187003号公報に記載された方法(末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体及びその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。JIS K6726に準拠して測定したPVA−1の重合度は1500、けん化度は98.5モル%であった。
(アニオン性重合体P−1の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1000mLの四つ口セパラブルフラスコに、水610g、PVA−1を44.9gとパラスチレンスルホン酸ナトリウム(PStSS)を40.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に開始剤として2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液34.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、フラスコ内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコール成分と、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが重合されてなる重合体成分からなるアニオン性ブロック共重合体P−1の溶液(11質量%)を得た。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、1H−NMR測定に付した結果、共重合体中の単量体単位の合計に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1000mLの四つ口セパラブルフラスコに、水610g、PVA−1を44.9gとパラスチレンスルホン酸ナトリウム(PStSS)を40.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に開始剤として2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液34.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、フラスコ内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコール成分と、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが重合されてなる重合体成分からなるアニオン性ブロック共重合体P−1の溶液(11質量%)を得た。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、1H−NMR測定に付した結果、共重合体中の単量体単位の合計に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
(カチオン性重合体P−2の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1000mLの四つ口セパラブルフラスコに、水603g、PVA−1を58.9gとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VTMAC)を50.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に開始剤として2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液45.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、フラスコ内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコール成分と、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドが重合されてなる重合体成分からなるカチオン性ブロック共重合体P−2の溶液(14質量%)を得た。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、1H−NMR測定に付した結果、共重合体中の単量体単位の合計に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1000mLの四つ口セパラブルフラスコに、水603g、PVA−1を58.9gとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VTMAC)を50.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に開始剤として2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液45.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、フラスコ内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコール成分と、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドが重合されてなる重合体成分からなるカチオン性ブロック共重合体P−2の溶液(14質量%)を得た。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、1H−NMR測定に付した結果、共重合体中の単量体単位の合計に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
実施例1
(水解離用多層膜の作製)
PETシート上にアプリケーターバー(塗工幅:15cm)を用いて、アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液(濃度11質量%)を塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で3分乾燥させた。生乾きの塗工膜上に、ポリビニルアルコール繊維集合体としてポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られたビニロン不織布(繊維径:10μm、坪量:20.7g/m2、厚さ:40μm)を接触させて、ビニロン不織布の一部にアニオン性ブロック共重合体P−1(塗工膜)を含浸させた。その後、熱風乾燥機を用いて80℃で15分乾燥させた。このとき得られた中間成形物のビニロン不織布側の表面にはビニロン不織布が露出していること確認した。続いて、その中間成形物のビニロン不織布を接触させた側の上部からカチオン性ブロック共重合体P−2の水溶液(濃度14質量%)を塗工し、温度80℃、30分間乾燥後、PETフィルムを剥がした。このとき、膜の両表面には樹脂層が存在し、ビニロン不織布が露出していないことをSEM観察により確認した。350g/Lの硫酸ナトリウム水溶液1Lに対して、硫酸を添加しpH(25℃)を1.0に調整した後に、120mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加して、処理液を作製した。処理液を50℃に加温した後、得られた膜を180分間浸漬し、架橋処理を施した。イオン交換水で30分以上洗浄を行い、水解離用多層膜BPM−1を得た。
(水解離用多層膜の作製)
PETシート上にアプリケーターバー(塗工幅:15cm)を用いて、アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液(濃度11質量%)を塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で3分乾燥させた。生乾きの塗工膜上に、ポリビニルアルコール繊維集合体としてポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られたビニロン不織布(繊維径:10μm、坪量:20.7g/m2、厚さ:40μm)を接触させて、ビニロン不織布の一部にアニオン性ブロック共重合体P−1(塗工膜)を含浸させた。その後、熱風乾燥機を用いて80℃で15分乾燥させた。このとき得られた中間成形物のビニロン不織布側の表面にはビニロン不織布が露出していること確認した。続いて、その中間成形物のビニロン不織布を接触させた側の上部からカチオン性ブロック共重合体P−2の水溶液(濃度14質量%)を塗工し、温度80℃、30分間乾燥後、PETフィルムを剥がした。このとき、膜の両表面には樹脂層が存在し、ビニロン不織布が露出していないことをSEM観察により確認した。350g/Lの硫酸ナトリウム水溶液1Lに対して、硫酸を添加しpH(25℃)を1.0に調整した後に、120mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加して、処理液を作製した。処理液を50℃に加温した後、得られた膜を180分間浸漬し、架橋処理を施した。イオン交換水で30分以上洗浄を行い、水解離用多層膜BPM−1を得た。
(水解離用多層膜の評価)
BPM−1を所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、浸漬試験、水解離用多層膜の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
BPM−1を所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、浸漬試験、水解離用多層膜の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例2
アプリケーターバーでのP−1水溶液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水解離用多層膜BPM−2を得た。得られたBPM−2の各種評価の結果を表1に示す。
アプリケーターバーでのP−1水溶液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水解離用多層膜BPM−2を得た。得られたBPM−2の各種評価の結果を表1に示す。
実施例3
ビニロン不織布の代わりにポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(PET不織布)(繊維径:10μm、坪量:25.7g/m2、厚さ:40μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水解離用多層膜BPM−3を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、PET不織布が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−3の各種評価の結果を表1に示す。
ビニロン不織布の代わりにポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(PET不織布)(繊維径:10μm、坪量:25.7g/m2、厚さ:40μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水解離用多層膜BPM−3を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、PET不織布が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−3の各種評価の結果を表1に示す。
実施例4
生乾きの塗工膜上に、ビニロン不織布を接触させる代わりにポリビニルアルコールの短繊維(繊維径:14μm、カット長:3mm、吹付け量:10g/m2)を拭きつけたこと以外は実施例1と同様に、水解離用多層膜BPM−4を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、短繊維が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−4の各種評価の結果を表1に示す。
生乾きの塗工膜上に、ビニロン不織布を接触させる代わりにポリビニルアルコールの短繊維(繊維径:14μm、カット長:3mm、吹付け量:10g/m2)を拭きつけたこと以外は実施例1と同様に、水解離用多層膜BPM−4を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、短繊維が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−4の各種評価の結果を表1に示す。
実施例5
生乾きの塗工膜上に、ビニロン不織布を接触させる代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)粉末(平均粒径9.8μm、圧着量:15g/m2)を吹きつけた後、指で押し付けて圧着させたこと以外は実施例1と同様に、水解離用多層膜BPM−5を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、EVA粒子が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−5の各種評価の結果を表1に示す。
生乾きの塗工膜上に、ビニロン不織布を接触させる代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)粉末(平均粒径9.8μm、圧着量:15g/m2)を吹きつけた後、指で押し付けて圧着させたこと以外は実施例1と同様に、水解離用多層膜BPM−5を得た。膜の両表面には樹脂層が存在し、EVA粒子が露出していないことをSEM観察により確認した。得られたBPM−5の各種評価の結果を表1に示す。
実施例6
塗工厚みを変更したこと以外は実施例1同様の方法で水解離用多層膜BPM−6を得た。得られたBPM−6の各種評価の結果を表1に示す。
塗工厚みを変更したこと以外は実施例1同様の方法で水解離用多層膜BPM−6を得た。得られたBPM−6の各種評価の結果を表1に示す。
比較例1
(水解離用多層膜の作製)
PETシート上にアプリケーターバー(塗工幅:15cm)を用いて、アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液(濃度11質量%)を塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥させた。その後、カチオン性ブロック共重合体P−2の水溶液(濃度14質量%)を塗工し、塗工液にポリビニルアルコール繊維集合体としてポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られたビニロン不織布(繊維径:10μm、坪量:20.7g/m2、厚さ:40μm)を接触させて、ビニロン不織布を水溶液に含浸させた。その後、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥後、PETフィルムを剥がした。このとき得られた膜のビニロン不織布側の表面にはビニロン不織布が露出していること確認した。350g/Lの硫酸ナトリウム水溶液1Lに対して、硫酸を添加しpH(25℃)を1.0に調整した後に、120mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加して、処理液を作製した。処理液を50℃に加温した後、得られた膜を180分間浸漬し、架橋処理を施した。イオン交換水で30分以上洗浄を行い、水解離用多層膜BPM−7を得た。得られたBPM−7の各種評価の結果を表1に示す。なお、膜の片側表面にビニロン不織布が存在するため、液漏れが発生し、電流効率の評価はできなかった。
(水解離用多層膜の作製)
PETシート上にアプリケーターバー(塗工幅:15cm)を用いて、アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液(濃度11質量%)を塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥させた。その後、カチオン性ブロック共重合体P−2の水溶液(濃度14質量%)を塗工し、塗工液にポリビニルアルコール繊維集合体としてポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られたビニロン不織布(繊維径:10μm、坪量:20.7g/m2、厚さ:40μm)を接触させて、ビニロン不織布を水溶液に含浸させた。その後、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥後、PETフィルムを剥がした。このとき得られた膜のビニロン不織布側の表面にはビニロン不織布が露出していること確認した。350g/Lの硫酸ナトリウム水溶液1Lに対して、硫酸を添加しpH(25℃)を1.0に調整した後に、120mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加して、処理液を作製した。処理液を50℃に加温した後、得られた膜を180分間浸漬し、架橋処理を施した。イオン交換水で30分以上洗浄を行い、水解離用多層膜BPM−7を得た。得られたBPM−7の各種評価の結果を表1に示す。なお、膜の片側表面にビニロン不織布が存在するため、液漏れが発生し、電流効率の評価はできなかった。
比較例2
接着増強材のビニロン不織布を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしたところ、架橋処理中にアニオン交換層とカチオン交換層が剥離し、水解離用多層膜を得ることができなかった。
接着増強材のビニロン不織布を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしたところ、架橋処理中にアニオン交換層とカチオン交換層が剥離し、水解離用多層膜を得ることができなかった。
(アニオン性重合体P−3の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水218g、パラスチレンスルホン酸ナトリウム(PStSS)を30.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液25.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(poly−PStSS)を得た(10質量%)。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水218g、パラスチレンスルホン酸ナトリウム(PStSS)を30.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液25.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(poly−PStSS)を得た(10質量%)。
その後、還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、PVA117((株)クラレ製)の10質量%水溶液を94.4gとpoly−PStSSの10質量%水溶液を78.1g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して溶解し、PVA117とpoly−PStSSが溶解した水溶液(固形分濃度10質量%)を調製した。水溶液の一部を乾燥して得られたアニオン性重合体組成物P−3を得た。得られたP−3を重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、アニオン性重合体P−3中の単量体単位の合計に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウムの単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
(カチオン性重合体P−4の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水235g、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VTMAC)を30.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液27.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(poly−VTMAC)を得た(10質量%)。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水235g、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VTMAC)を30.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液27.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(poly−VTMAC)を得た(10質量%)。
その後、還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、PVA117の10質量%水溶液を94.4gとpoly−VTMACの10質量%水溶液を80.2g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して溶解し、PVA117とpoly−VTMACが溶解した水溶液(固形分濃度10質量%)を調製した。水溶液の一部を乾燥して得られたカチオン性重合体組成物P−4を得た。得られたP−4を重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、カチオン性重合体組成物P−4中の単量体単位の合計に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの単位の含有量(変性量)は15モル%であった。
比較例3
P−1の代わりにP−3を用い、P−2の代わりにP−4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、水解離用多層膜BPM−8を得た。得られたBPM−8の各種評価の結果を表1に示す。
P−1の代わりにP−3を用い、P−2の代わりにP−4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、水解離用多層膜BPM−8を得た。得られたBPM−8の各種評価の結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の水解離用多層膜はアニオン交換層とカチオン交換層との接着性が良好であり、なおかつ水の解離効率が高い。特に、総厚みが適切であるとナトリウムイオン及び塩素イオンの透過を抑制でき、水の解離を効率よく行うことができる。一方、接着増強材が前記多層膜の表面に露出しているか、または存在していない場合には、接着性に劣る結果となった。また、アニオン交換層及びカチオン交換層にポリビニルアルコールとイオン性重合体の混合物を用いた場合、共重合体を用いた場合に比べて電流効率が低くなった。これは、混合物が共重合体よりもビニルアルコール系重合体とイオン性重合体とのミクロ相分離構造の制御が困難であり、イオンチャネルとして機能するイオン性重合体の相のサイズが大きくなったことで、イオン選択性が低下したためと考えられる。
Claims (9)
- アニオン交換層とカチオン交換層が接合してなる水解離用多層膜であって、
接着増強材が前記アニオン交換層及び前記カチオン交換層との間に存在しており、かつ
前記多層膜の表面に露出しておらず、
前記接着増強材が繊維集合体、短繊維または粒子であり、
前記アニオン交換層が、カチオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるカチオン性重合体を含有し、かつ
前記カチオン交換層が、アニオン性基を含有するビニルアルコール系共重合体からなるアニオン性重合体を含有することを特徴とする水解離用多層膜。 - 前記接着増強材が繊維集合体である請求項1に記載の水解離用多層膜。
- 前記繊維集合体が、ポリビニルアルコール繊維の集合体である請求項2に記載の水解離用多層膜。
- 前記繊維集合体中に前記カチオン性重合体または前記アニオン性重合体が含浸されている請求項2または3に記載の水解離用多層膜。
- 前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体であり、かつ前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の水解離用多層膜。
- 前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するカチオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70であり、かつ前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するアニオン性単量体単位のモル比が2/98〜30/70である請求項1〜5のいずれかに記載の水解離用多層膜。
- 厚みが50〜300μmである請求項1〜6のいずれかに記載の水解離用多層膜。
- 前記カチオン性重合体及び前記アニオン性重合体の一方のイオン性重合体を含有する水溶液を剥離フィルム上に塗工して形成された膜の表面に前記接着増強材を配置してから他方のイオン性重合体を含有する水溶液を塗工した後に乾燥させる請求項1〜7のいずれかに記載の水解離用多層膜の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の水解離用多層膜の両側に電解質を含む水溶液を供給し、前記多層膜の両側の水溶液中に配置された電極間に電圧を印加することによって水を解離する方法。
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JP2016128216A JP2018003059A (ja) | 2016-06-28 | 2016-06-28 | 水解離用多層膜、その製造方法及びそれを用いた水の解離方法 |
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-
2016
- 2016-06-28 JP JP2016128216A patent/JP2018003059A/ja active Pending
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JP7262741B2 (ja) | 2018-12-17 | 2023-04-24 | 株式会社アストム | バイポーラ膜 |
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