JP2016195976A - 正浸透膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い機械的強度および寸法安定性を有するとともに、低濃度溶液側から高濃度溶液側への高い水透過性を有し、かつ高濃度溶液側から低濃度溶液側への溶質の拡散を抑制できる正浸透膜を提供する。【解決手段】 イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)とを有する正浸透膜であって、前記イオンバリア層(A)が、アニオン性重合体層(A1)とカチオン性重合体層(A2)が積層されたものであり、前記アニオン性重合体がアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、前記カチオン性重合体がカチオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、かつ前記多孔質支持層(B)がポリビニルアルコール繊維の集合体からなるものである正浸透膜。【選択図】なし

Description

本発明は、イオンバリア層と多孔質支持層とを有する正浸透膜およびその製造方法に関する。
半透膜などの、溶媒の透過性が高くかつ溶質の透過性が低い性質を有する膜の利用方法として、正浸透法や逆浸透法が知られている。このうち、正浸透法は、膜の両側に濃度が異なる2つの溶液を供給した場合に、低濃度溶液中の溶媒が膜を透過して高濃度溶液側へ移動することを利用して液体分離等を行う方法であり、海水から純水を得る技術や海水と淡水の浸透圧差を利用した浸透圧発電などに用いられる。正浸透法は、溶液間の濃度差によって生じる浸透圧を駆動力としているため、外部から圧力を加えて駆動させる逆浸透法と比較して、エネルギーコストを抑えられる可能性があり期待されている。正浸透法で使用される分離膜(正浸透膜)には、低濃度溶液側から高濃度溶液側への高い水透過性を有し、かつ高濃度溶液側から低濃度溶液側への溶質の拡散を抑えることにより、浸透圧差が維持されることが求められる。これにより、高い処理能力が維持される。
これまでにアニオン交換層とカチオン交換層を積層させることで得られるイオンバリア性に着目した発明が、いくつか報告がされている(たとえば、特許文献1、2)。しかしながら、特許文献1に記載されたイオンバリア膜は、マトリックスとして疎水性高分子が用いられていて、水の透過抵抗が高かったため、水透過性が低かった。また、特許文献2には、親水性高分子であるポリビニルアルコールがマトリックスとして用いられたイオンバリア膜が記載されている。しかしながら、特許文献2には、支持体としてポリビニルアルコール繊維の集合体を用いることについて何ら記載されていない。また、特許文献2に記載されたイオンバリア膜は、機械特性や寸法安定性が低かった。以上のとおり、引用文献1および2に記載されたイオンバリア膜は正浸透膜として適したものではなかった。
特開昭55−99927号公報 特開2008−188518号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高い機械的強度および寸法安定性を有するとともに、低濃度溶液側から高濃度溶液側への高い水透過性を有し、かつ高濃度溶液側から低濃度溶液側への溶質の拡散を抑制できる正浸透膜とその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)とを有する正浸透膜であって、前記イオンバリア層(A)が、アニオン性重合体層(A1)とカチオン性重合体層(A2)が積層されたものであり、前記アニオン性重合体がアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、前記カチオン性重合体がカチオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、かつ前記多孔質支持層(B)がポリビニルアルコール繊維の集合体からなるものである正浸透膜を提供することによって解決される。
このとき、前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であり、かつ前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましい。
前記イオンバリア層(A)の少なくとも一部が多孔質支持層(B)内に含有されていることも好ましい。
前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するアニオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30であり、かつ前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するカチオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30であることも好ましい。
前記イオンバリア層(A)の厚みが0.1〜100μmの範囲であることも好ましい。
上記課題は、アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工する前記正浸透膜の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工してから、前記アニオン性重合体を含有する水溶液またはカチオン性重合体を含有する水溶液を多孔質支持層(B)に含浸させることが好ましい。
処理対象の廃水と、当該廃水よりも浸透圧が高いドロー溶液とを正浸透膜の両側に供給し、浸透圧の差を利用して前記廃水中の水を前記ドロー溶液側に移動させることにより、前記廃水中の水を減容する廃水処理装置であって、正浸透膜として前記正浸透膜を有する廃水処理装置が本発明の好適な実施態様である。このとき、前記ドロー溶液の溶媒が水、または水と有機溶媒の混合物であることが好ましい。また、前記ドロー溶液が、高分子電解質を溶解させてなるものであることも好ましい。
本発明の正浸透膜は、高い機械的強度および寸法安定性を有するとともに、低濃度溶液側から高濃度溶液側への高い水透過性を有し、かつ高濃度溶液側から低濃度溶液側への溶質の拡散を抑制することができる。これにより、長期間にわたり、安定的に優れた分離性能が維持される。本発明の製造方法によれば、このような正浸透膜を安価で簡便に製造することができる。
実施例において正浸透膜の性能評価に使用した廃水処理装置の断面模式図である。
本発明の正浸透膜は、イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)とを有する正浸透膜であって、前記イオンバリア層(A)が、アニオン性重合体層(A1)とカチオン性重合体層(A2)が積層されたものであり、前記アニオン性重合体がアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、前記カチオン性重合体がカチオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、かつ前記多孔質支持層(B)がポリビニルアルコール繊維の集合体からなるものである。
(カチオン性重合体)
本発明で用いられるカチオン性重合体は、カチオン基を含有する重合体である。当該カチオン基は、前記カチオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。カチオン基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のカチオン性重合体に含まれる。この中で工業的に入手しやすい観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基、2級アンモニウム基、3級アンモニウム基、トリアルキルアンモニウム基等の4級アンモニウム基のいずれも用いることができるが、4級アンモニウム基がより好ましく、トリアルキルアンモニウム基がさらに好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン基を含有しても良いし、複数種のカチオン基を含有しても良い。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有しても良いし、複数種の対アニオンを含有しても良い。
カチオン性重合体としては、以下の一般式(1)〜(8)の構造単位を有するものが例示される。
[式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表す。R、R、Rは、相互に連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい。Zは−O−、−NH−、または−N(CH)−を表し、Yは酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含んでもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。Xはアニオンを表す。]
一般式(1)中の対アニオンXとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(1)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体しては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの3−(メタ)アクリルアミド−アルキルトリアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(2)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]
[式中、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(3)および一般式(4)で表される構造単位は、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアリルジアルキルアンモニウム塩を環化重合することにより形成される。このような構造単位を含有するカチオン性重合体としては、前記ジアリルジアルキルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、nは0または1を表す。RおよびRは一般式(1)と同義である。]
一般式(5)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミンとビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、nは0または1を表す。R、R、R、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(6)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは−CH(OH)CH−、−CHCH(OH)−、−C(CH)(OH)CH−、−CHC(CH)(OH)−、−CH(OH)CHCH−、または−CHCHCH(OH)−を表す。Eは−N(Rまたは−N(R・Xを表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。Xはアニオンを表す。]
一般式(7)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはi−プロピル基、Rは水素原子、メチル基、またはエチル基をそれぞれ表す。]
一般式(8)で表される構造単位を含有するカチオン性重合体として、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドまたはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドとビニルアルコールとの共重合体が例示される。
(アニオン性重合体)
本発明で用いられるアニオン性重合体は、アニオン基を含有する重合体である。当該アニオン基は、前記アニオン性重合体の主鎖、側鎖、末端のいずれに含有されていても構わない。アニオン基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン基を含有していてもよいし、複数種のアニオン基を含有していてもよい。また、アニオン基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオンなどが例示される。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。
アニオン性重合体としては、以下の一般式(9)および(10)の構造単位を有するものが例示される。
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Gは−SOH、−SO 、−POH、−PO 、−COHまたは−CO を表す。Mはアンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す。]
一般式(9)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Tは水素原子がメチル基で置換されていてもよいフェニレン基またはナフチレン基を表す。Gは一般式(9)と同義である。]
一般式(10)で表される構造単位を含有するアニオン性重合体としては、p−スチレンスルホン酸ナトリウムなどp−スチレンスルホン酸塩とビニルアルコールとの共重合体が例示される。
また、アニオン性重合体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸などのスルホン酸またはその塩とビニルアルコールとの共重合体、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸、その誘導体またはその塩とビニルアルコールとの共重合体も例示される。
一般式(9)または(10)において、Gは、より高い荷電密度を与えるスルホネート基、スルホン酸基、ホスホネート基、またはホスホン酸基であることが好ましい。また一般式(9)および一般式(10)中、Mで表されるアルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
本発明で用いられる、カチオン性重合体およびアニオン性重合体は、1種類のイオン性重合体からなるものであってもよいし、複数種のイオン性重合体を含むものであってもよい。カチオン性重合体は、カチオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、アニオン性重合体は、アニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体である。これらの共重合体は、上記カチオン基またはアニオン基を有する単位、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位を含む。これらの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであっても構わない。これらの共重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。
前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するアニオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30であり、かつ前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するカチオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30であることが好ましい。これらのイオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するイオン基を有する単位のモル比が2/98未満の場合には、得られるイオンバリア層が疎水的になり、水透過性が低下するおそれがある。前記モル比は、5/95以上がより好ましく、7/93以上がさらに好ましい。一方、前記モル比が70/30を超える場合には、得られるイオンバリア層が激しく膨潤して、機械的強度および寸法安定性が低下するおそれがある。イオンバリア層の機械的強度が低下した場合には、使用中にイオンバリア層が破れ、正浸透膜としての機能を失うおそれもある。前記モル比は、60/40以下がより好ましく、50/50以下がさらに好ましい。
カチオン基またはアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体のけん化度は特に限定されないが、40〜99.9モル%であることが好ましい。けん化度が40モル%未満では、結晶性が低下し、イオンバリア層(A)の耐久性が不足するおそれがある。けん化度が60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。前記ビニルアルコール系共重合体のけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。前記ビニルアルコール系共重合体が複数種の共重合体の混合物である場合も同様に測定する。
カチオン基またはアニオン基を有するビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、300以上であることが好ましい。重合度が300未満だと、実用上でイオンバリア層(A)が十分な強度を保持できないおそれがある。重合度は500以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。一方、重合度が10000を超えると印刷に用いる重合体溶液の粘度が高すぎて扱えないおそれがある。重合度が10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましい。このとき、前記ビニルアルコール系共重合体が複数種のビニルアルコール系共重合体の混合物である場合の重合度は、混合物全体としての平均の重合度をいう。なお、ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定した値である。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、カチオン基またはアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体は、カチオン基またはアニオン基を有する単位、ビニルアルコール単位、およびビニルエステル単位以外の単量体単位を含有しても構わない。その他の単量体単位の含有量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、実質的に含有されていないことがさらに好ましい。
(ビニルアルコール系ブロック共重合体およびビニルアルコール系グラフト共重合体)
本発明において、前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましい。ここで、カチオン性重合体がブロック共重合体であることがより好ましく、入手容易である点から、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、またはジアリルジアルキルアンモニウム塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。また、本発明において、前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であることも好ましい。ここで、アニオン性重合体がブロック共重合体であることがより好ましく、入手容易である点から、p−スチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体がさらに好ましい。
(ビニルアルコール系ブロック共重合体の製造)
本発明で用いられる、アニオン性単量体またはカチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体を重合させて所望のブロック共重合体を得る方法、および(2)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにカチオン基またはアニオン基を結合させる方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体または少なくとも1種類のアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中のポリビニルアルコール成分以外の重合体成分にカチオン基またはアニオン基を導入する方法が工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中の各成分の種類や量を容易に制御できることから、(1)の方法が好ましい。
これらのブロック共重合体の製造に用いられる、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールは、例えば、特開昭59−187003号などに記載されている方法により得ることができる。すなわち、チオール酸の存在下にビニルエステル、例えば酢酸ビニルをラジカル重合して得られるポリビニルエステルをけん化する方法が挙げられる。ビニルエステルは、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。この中でも酢酸ビニルが好ましい。
末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとカチオン性単量体またはアニオン性単量体とを用いてブロック共重合体を得る方法としては、例えば、特開昭59−189113号などに記載された方法が挙げられる。すなわち、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下にカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を得ることができる。このラジカル重合は公知の方法、例えば塊状重合、溶液重合、パール重合、乳化重合などによって行うことができるが、末端にメルカプト基を含有するポリビニルアルコールを溶解し得る溶剤、例えば水やジメチルスルホキシドを主体とする媒体中で行うのが好ましい。また、重合プロセスとしては、回分法、半回分法、連続法のいずれをも採用することができる。前記ブロック共重合体の製造に用いられるカチオン性単量体およびアニオン性単量体として、重合後に前記一般式(1)〜(10)で表される単位を形成するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
(ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造)
本発明で用いられるアニオン性単量体またはカチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有するグラフト共重合体は公知の方法で得られる。例えば、以下の方法が挙げられる。初めに、メルカプト基(メルカプト基は保護されていてもよい)を含有する単量体とビニルエステルを共重合して、側鎖にメルカプト基を含有するポリビニルエステルを得る。ビニルエステルは、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えば、ビニルアルコール系ブロック共重合体の製造に用いられるビニルエステルとして上述したものが使用される。中でも酢酸ビニルが好ましい。
得られたポリビニルエステルをけん化することにより、側鎖にメルカプト基を有するポリビニルアルコールを得る。けん化反応の触媒としては通常アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加しても良いし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加しても良い。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。この中でもメタノールが好ましい。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式でも実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などが挙げられる。
次いで、得られたポリビニルアルコールの存在下にカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることにより、最終的にアニオン性単量体またはカチオン性単量体を重合してなる重合体成分を側鎖に有するビニルアルコール系グラフト共重合体を得ることができる。カチオン性単量体およびアニオン性単量体をラジカル重合させる方法は、ビニルアルコール系ブロック共重合体を製造する場合と同様の方法が採用される。カチオン性単量体およびアニオン性単量体として、ビニルアルコール系ブロック共重合体の製造に用いられるものと同様のものが用いられる。
(ビニルアルコール系ランダム共重合体の製造)
本発明において、カチオン性重合体またはアニオン性重合体として用いられる、カチオン基またはアニオン基を有する単量体単位と、ビニルアルコール単位とを含むポリビニルアルコール系ランダム共重合体は、カチオン性単量体またはアニオン性単量体と、ビニルエステルを共重合し、これを常法によりけん化して得られる。ビニルエステルは、ラジカル重合可能なものであれば使用できる。例えばビニルアルコール系ブロック共重合体の製造に用いられるビニルエステルとして上述したものが使用される。中でも酢酸ビニルが好ましい。カチオン性単量体およびアニオン性単量体として、ビニルアルコール系ブロック共重合体の製造に用いられるものとして上述したものが用いられる。
カチオン性単量体またはアニオン性単量体とビニルエステルとを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。それらの方法の中でも、無溶媒で行う塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒を用いて行う溶液重合が通常採用される。溶液重合を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチル−バレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2、2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については、特に制限はないが、5〜180℃の範囲が適当である。
カチオン性単量体またはアニオン性単量体とビニルエステルとを共重合させることによって得られたビニルエステル系共重合体は、次いで、公知の方法にしたがって溶媒中でけん化することで、カチオン基またはアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体を得ることができる。けん化方法として、ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造に採用される方法として上述した方法が挙げられる。
本発明で用いられる多孔質支持層(B)は、ポリビニルアルコール繊維の集合体からなる。当該ポリビニルアルコール繊維の集合体は高強度であるうえに、イオンバリア層(A)との密着性に優れる。このような多孔質支持層(B)を用いることにより、優れた機械的強度を有する正浸透膜が得られる。多孔質支持層(B)として使用される繊維集合体として、不織布、合成紙が例示される。
本発明で用いられる多孔質支持層(B)の厚みは、特に限定されないが、5〜500μmであることが好ましい。多孔質支持層(B)の厚みが5μm未満だと、正浸透膜の機械的強度が不足するおそれがある。当該厚みは10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。多孔質支持層(B)の厚みが500μmを超えると、水透過性が低下するおそれがある。当該厚みは300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。
本発明で用いられる多孔質支持層(B)の坪量は、特に限定されず、1〜100g/mであることが好ましい。坪量が1g/m未満の場合、正浸透膜の機械的強度が低下するおそれがある。坪量は、5g/m以上であることがより好ましく、10g/m以上であることが更に好ましい。一方、坪量が100g/mを超える場合、水透過性が低下するおそれがある。坪量は、80g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることがさらに好ましい。
多孔質支持層(B)の空隙率を所望の範囲に制御する手段として公知の手段を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール繊維の交絡密度を調整することで空隙率を制御できる。
多孔質支持層(B)の空隙率は、10〜90%であることが好ましい。空隙率がこの範囲にあることで、得られる正浸透膜の機械的強度がさらに向上する。多孔質支持体(B)の空隙率が10%未満の場合、水透過性が低下するおそれがある。当該空隙率は、20%以上であることがより好ましい。一方、多孔質支持層(B)の空隙率が90%を超える場合、得られる正浸透膜の機械的強度が不十分になるおそれがある。当該空隙率が80%以下であることがより好ましい。
多孔質支持層(B)におけるポリビニルアルコール繊維の平均繊維径は0.01μm以上100μm以下であることが好ましい。これにより、正浸透膜の機械的強度がさらに向上する。当該平均繊維径は、1μm以上であることが好ましい。一方、平均繊維径が100μmを超える場合、表面平滑性が不十分になり、イオンバリア層(A)を均一に形成できない可能性がある。当該平均繊維径は50μm以下であることが好ましい。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、多孔質支持層(B)がポリビニルアルコール繊維以外の繊維を含有しても構わない。このような繊維の含有量は、ポリビニルアルコール繊維100質量部に対して、通常、100質量部以下であり、50質量部以下が好適であり、10質量部以下がより好適であり、多孔質支持層(B)に含まれる繊維が、実質的にポリビニルアルコール繊維のみであることがさらに好適である。
多孔質支持層(B)に使用されるポリビニルアルコール繊維以外の繊維として、疎水性重合体からなる繊維が挙げられる。当該繊維は、水酸基、カルボキシル基などのプロトン性官能基を実質的に有さない重合体からなるものであれば特に限定されず、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維が挙げられる。
本発明の正浸透膜は、多孔質支持層(B)、アニオン性重合体層(A1)、およびカチオン性重合体層(A2)がこの順番で配置されていてもよいし、多孔質支持層(B)、カチオン性重合体層(A2)、およびアニオン性重合体層(A1)がこの順番で配置されていてもよい。本発明において、イオンバリア層(A)の少なくとも一部が多孔質支持層(B)に含有されていることが好ましい。アニオン性重合体又はカチオン性重合体が多孔質支持層(B)の空隙に入り込むことにより、イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)の密着性がさらに向上する。
本発明の正浸透膜の製造方法は特に限定されないが、アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工する方法が好適である。このとき、2種類の水溶液を同時塗工してもよいし、一方の水溶液を塗工し、乾燥させた後、他方を塗工することにより、2つの水溶液を逐次塗工してもよい。塗工方法としては、従来公知の方法が採用され、コンマコート、ダイコート、スロット塗工、カーテンコートなどが挙げられる。アニオン性重合体またはカチオン性重合体を含む水溶液の代わりに、有機溶媒にアニオン性重合体又はカチオン性重合体が溶解した溶液を用いてもよいが、ハンドリング性や安全面を考慮して水溶液が好ましい。
アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工してから、前記アニオン性重合体を含有する水溶液またはカチオン性重合体を含有する水溶液を多孔質支持層(B)に含浸させることが好ましい。これにより、上述のとおり、多孔質支持層(B)の空隙にアニオン性重合体又はカチオン性重合体が入り込み、イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)の密着性がさらに向上する。各水溶液を多孔質支持層(B)に塗工した後、乾燥させることにより、イオンバリア層(A)が形成される。
水溶液を多孔質支持層(B)に塗工する方法として、PETシートなどの上にアニオン性重合体を含む水溶液とカチオン性重合体を含む水溶液を塗工した後、多孔質支持層(B)を塗工された水溶液に接触させる方法も採用される。多孔質支持層(B)を水溶液に接触させてから、乾燥させた後、PETシートを剥離することにより、多孔質支持層(B)上にイオンバリア層(A)を形成することができる。
また、本発明の正浸透膜の多孔質支持層(B)上にイオンバリア層(A)を形成する方法として、多孔質支持層(B)上にイオンバリア層(A)を印刷により形成する方法も挙げられる。
本発明に用いられる印刷方法としては、従来公知の印刷方法がいずれも適用できる。具体的な印刷方法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などが例示される。これらの中でも、印刷の簡易性の点から、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、ディスペンサー印刷法が特に好ましい。
本発明の正浸透膜の製造方法においては、前記多孔質支持層(B)にイオンバリア層(A)を形成した後に、熱処理を施してもよい。熱処理の温度は、特に限定されないが、250℃以下であることが好ましい。熱処理の温度が250℃を超えると、ビニルアルコール系重合体が熱分解するおそれがある。当該温度が230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。熱処理の時間は、通常、30秒〜1時間程度である。
本発明の正浸透膜の製造方法においては、前記多孔質支持層(B)にイオンバリア層(A)を形成した後に、架橋処理を施すことも好ましい。架橋処理を施すことによって、イオンバリア層(A)の機械的強度と耐久性がさらに向上する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、イオン性重合体を、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。架橋処理剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザールが例示される。該架橋処理剤を含む溶液のpHは、0.5〜5が好ましい。該架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜20体積%である。
前記製造方法においては、熱処理と架橋処理を行ってもよいし、架橋処理のみ行ってもよい。
本発明において、イオンバリア層(A)の厚みは0.1〜100μmであることが好ましい。厚みが0.1μm未満の場合、イオンバリア層(A)に欠陥(ピンホール)が発生するおそれがある。これにより、イオンバリア層(A)の機械的強度や耐久性が低下するおそれや、溶質の拡散が起こり易くなるおそれがある。イオンバリア層(A)の厚みが100μmを超える場合、水透過性が低下するおそれがある。イオンバリア層(A)の厚みが0.5〜50μmであることがより好ましい。ここで、イオンバリア層(A)の厚みとは、イオンバリア層(A)のうち、多孔質支持層(B)に含有されている部分を除いた部分の厚みとする。
本発明において、アニオン性重合体層(A1)の厚みとカチオン性重合体層(A2)の厚みの比(A1/A2)は、特に限定されないが、0.1/99.9〜99.1/0.1であることが好ましく、1/99〜99/1であることがより好ましく、10/90〜90/10であることがさらに好ましい。
本発明において、アニオン性重合体層(A1)およびカチオン性重合体層(A2)は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。アニオン性重合体層(A1)中のアニオン性重合体以外の成分の含有量は、アニオン性重合体100質量部に対して、通常、100質量部以下であり、10質量部以下が好適であり、5質量部以下がより好適であり、アニオン性重合体層(A1)が実質的にアニオン性重合体のみからなるものであることがさらに好適である。また、カチオン性重合体層(A2)中のアニオン性重合体以外の成分の含有量は、カチオン性重合体100質量部に対して、通常、100質量部以下であり、10質量部以下が好適であり、5質量部以下がより好適であり、カチオン性重合体層(A1)が実質的にカチオン性重合体のみからなるものであることがさらに好適である。
本発明の正浸透膜の厚みは特に限定されないが、10〜1000μmが好ましい。厚みが1000μmを超えた場合には、水透過性が低下するおそれがある。正浸透膜の厚みは500μm以下がより好ましい。一方、厚みが10μm未満の場合には、正浸透膜の機械的強度や耐久性が低下するおそれや、溶質の拡散が起こり易くなるおそれがある。正浸透膜の厚みは50μm以上がより好ましい。
処理対象の廃水と、当該廃水よりも浸透圧が高いドロー溶液とを前記正浸透膜の両側に供給し、浸透圧の差を利用して前記廃水中の水を前記ドロー溶液側に移動させることにより、前記廃水中の水を減容する廃水処理装置が本発明の好適な実施態様である。ここで、前記ドロー溶液が、高分子電解質を溶解させてなるものであることが好ましい。高分子電解質は、限外濾過などの方法により、ドロー溶液から容易に除去される。高分子電解質としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。ドロー溶液の浸透圧は、ドロー溶液中の高分子電解質の濃度を変えることにより調整する。前記ドロー溶液の溶媒が水、または水と有機溶媒の混合物であることが好ましい。
本発明の正浸透膜は、浄水処理、廃水処理および再利用、海水の淡水化、ならびに浸透圧差発電などに使用可能である。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例中、特に断りのない限り「%」および「部」は質量基準である。実施例および比較例における分析および評価は、下記の方法にしたがって行った。
1)イオン性重合体に含まれるイオン基を含有する単位の割合の評価
得られたイオン基を含有するビニルアルコール系共重合体を、重水素溶媒に溶解(濃度5wt%)させ、以下のとおりNMR測定した。イオン性基を有する単位のピーク強度とビニルアルコール系重合体のピーク強度から、重合して得られたビニルアルコール系共重合体中に含まれるイオン基を有する単位の割合を算出した。以下の実施例で用いたイオン基を有する単位は、ベンゼン環を有する。したがって、6.0〜8.0ppmに現れる当該ベンゼン環のピーク強度と、4.0ppm付近に現れるビニルアルコール系共重合体のメチンプロトンのピーク強度の比からイオン基を有する単位の割合を算出した。
装置名 : 日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数 : 500MHz(H)
溶媒 : 重水
ポリマー濃度 : 5wt%(H−NMR)
測定温度 : 80℃(H−NMR)
積算回数 : 256回(H−NMR)
パルス繰り返し時間 : 4秒(H−NMR)
サンプル回転速度 : 10〜12Hz
2)多孔質支持層(B)の空隙率測定
下記計算式により多孔質支持層(B)の空隙率を求めた。
空隙率(%)={1−[坪量(g/m)/厚み(μm)]/樹脂密度(g/cm)}×100
多孔質支持層(B)を形成する樹脂(ポリビニルアルコール)の密度は1.3(g/cm)として計算した。
3)正浸透膜、イオンバリア層(A)、多孔質支持層(B)の厚み測定
作製した正浸透膜をヤマト科学株式会社製熱風乾燥機「DKM400」にて温度80℃で30分乾燥し、さらにヤマト科学株式会社製真空乾燥機「DP32」にて、温度50℃、5時間真空乾燥した。次いで、正浸透膜表層のイオンバリア層(A)の厚みを、日立製作所製走査型電子顕微鏡「S−3000」で観察して求めた。その際、イオンバリア層(A)の最表面から多孔性支持層(B)の最表面(イオンバリア層(A)と対向する面)までの距離をイオンバリア層(A)の厚みとした。多孔性支持層(B)の厚みは、多孔性支持層(B)の一方の最表面から他方の最表面までの距離とした。
4)正浸透膜の破裂強度測定
作製した正浸透膜を5cm、横5cmのサイズに切断し、安田精機製作所製のミューレン低圧形破裂度試験機にセットした後、破裂強度の測定を行った。3回試験を行った平均値から、以下の基準で評価した。
A:0.1MPa以上
B:0.1MPa未満
5)水および溶質の透過流束の測定
図1に、正浸透膜の性能評価に使用した廃水処理装置1の断面模式図を示す。作製した正浸透膜4を所定のサイズに切断し、廃水処理装置1にセットした。セル2とセル3は正浸透膜4により仕切られる。セル2およびセル3における、正浸透膜4と接する断面の形状は、縦94mm、横50mmの長方形であり、装置1に正浸透膜4をセットしたときの有効膜面積は、46.1cmである。脱イオン水が2L入ったタンクとセル2を管7(脱イオン水が流れる流路部分の断面積:0.5cm)により接続し、セル2に脱イオン水を循環させた(管7における線速度:16.7cm/s)。また、10wt%のpoly(diallydimethylammoniumchloride)水溶液(以下、poly(diallydimethylammoniumchloride)をPDDAと略記することがある)が2L入ったタンクとセル3を管7により接続し、セル3にPDDA溶液を循環させた(管7における線速度:16.7cm/s)。脱イオン水が入ったタンク重量の減少量を測定して、単位時間あたりに、セル3に流入した脱イオン水の量(L/h)を求め、以下の式から水の透過流束Jwを算出した。
Jw:水流束[L/m・h]、ΔV/Δt:単位時間あたりにセル3に流入した脱イオン水の量[L/h]、S:有効膜面積[m
また、溶質の透過流束を以下のとおり求めた。セル2の溶液をサンプリングし、イオンクロマトグラフィ(DIONEX社製イオンクロマトグラフィ装置「ICS−5000」を使用)で分析して、セル2に流入した溶質の量(モル数)を算出し、透過流束Jsを以下の式から算出した。
Js:溶質の透過流束[mol/m・h]、Δn/Δt:セル2の溶液中のPDDAのモル数の時間変化[mol/h]、S:有効膜面積[m
6)水の選択透過性の算出方法
上述のJwおよびJsの値を使用し、以下の式から溶質に対する水の選択透過性を示す値αを算出した。
H2O:水のモル質量[g/mol]
(PVA−1の合成)
特開昭59−187003号公報に記載された方法(末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体およびその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。JIS K6726に準拠して測定したPVA−1の重合度は500、けん化度は88モル%であった。
(PVA−2の合成)
特開昭59−187003号公報に記載された方法(末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体およびその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−2)を合成した。JIS K6726に準拠して測定したPVA−2の重合度は1500、けん化度は99.5モル%であった。
(PVA−3の合成)
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた反応器に、酢酸ビニル1100質量部、コモノマーとして、下記式(11)で示されるチオエステル系単量体0.47質量部、及びメタノール478質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を窒素置換した。これとは別に、コモノマーの逐次添加溶液としてチオエステル系単量体のメタノール溶液(濃度5質量%)を調製し、30分間窒素をバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.28質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製した逐次添加溶液を反応器内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとチオエステル系単量体のモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、チオエステル系単量体単位が導入された変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
上記で得られた変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の変性ポリ酢酸ビニル濃度30%、変性ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.050)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約2分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で50分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、側鎖にメルカプト基を含有するポリビニルアルコール(PVA−3)を得た。H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体由来の構成単位の変性量は0.3mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.5モル%であった。
(アニオン性重合体P−1の合成)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水264g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を35.6gとパラスチレンスルホン酸ナトリウム(PStSS)を20.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解させた。窒素置換後、上記水溶液に開始剤として2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の1.0%水溶液34.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、フラスコ内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコール成分と、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが重合されてなる重合体成分からなるアニオン性ブロック共重合体P−1の溶液(15wt%)を得た。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、H−NMR測定に付した結果、共重合体中の単量体単位の合計に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量(変性量)は10.0モル%であった。
(アニオン性重合体P−2〜P−4の合成)
重合に用いたポリビニルアルコール、アニオン性単量体、水、開始剤を表1に示すとおりに変更したこと以外は、アニオン性重合体P−1と同様の方法でアニオン性ブロック共重合体P−2及び3、並びにアニオン性グラフト共重合体P−4を合成した。得られたアニオン性重合体中の単量体単位の合計に対するアニオン性基を有する単位の含有量(変性量)を表1に示す。
(アニオン性重合体P−5の合成)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル1100質量部、パラスチレンスルホン酸ナトリウム6.3質量部、及びメタノール410質量部を仕込み、アルゴンバブリングを30分間行うことにより反応器内をアルゴン置換した。これとは別に、逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてパラスチレンスルホン酸ナトリウムのメタノール溶液(濃度20質量%)を調製し、30分間アルゴンバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を反応器内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分間重合させた後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが導入された変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
上記で得られた変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の変性ポリ酢酸ビニル濃度30%、変性ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.050)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後、ゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、アニオン性ランダム共重合体P−5を得た。H−NMR測定により求めた共重合体P−5中の単量体単位の合計に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム由来の構成単位の含有量は4.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.7モル%であった。
(カチオン性重合体P−6〜P−9の合成)
重合に用いたポリビニルアルコール、イオン性単量体、水、開始剤を表2に示すとおりに変更したこと以外は、アニオン性ブロック共重合体P−1と同様の方法によって、カチオン性ブロック共重合体P−6〜8及びカチオン性グラフト共重合体P−9を合成した。得られたカチオン性重合体中の単量体単位の合計に対するカチオン性基を有する単位の含有量(変性量)を表2に示す。
(カチオン性重合体P−10の合成)
パラスチレンスルホン酸ナトリウム6.3質量部の代わりにビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド6.5質量部用いたこと及びメタノールの仕込み量を408質量部に変更したこと以外は、アニオン性ランダム共重合体P−5と同様にしてカチオン性ランダム共重合体P−10を合成した。H−NMR測定により求めた共重合体P−10中の単量体単位の合計に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド由来の構成単位の含有量(変性量)は4.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.2モル%であった。
実施例1
(正浸透膜の作製)
100mLの三角フラスコに、アニオン性ブロック共重合体P−1を30.0g加えてから脱イオン水を加え、95℃のウォーターバスの中で加熱撹拌して、重合体P−1を溶解させて、固形分濃度12%の水溶液を得た。同様の方法で、固形分濃度10%のカチオン性重合体P−6の水溶液を調整した。PETシート上に二連式アプリケーターバー(塗布幅:15cm)を用いて、アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液(濃度12wt%)とカチオン性ブロック共重合体P−6の水溶液(濃度10wt%)を同時塗工し、塗工した水溶液に多孔質支持体(B)としてポリビニルアルコールの短繊維を抄紙して得られたビニロン合成紙(繊維径:10μm、坪量:40g/m、厚さ:約55μm、空隙率:45%)を接触させて、ビニロン合成紙に水溶液を含浸させた。その後、ヤマト科学株式会社製熱風乾燥機「DKM400」にて温度80℃、30分間乾燥した後、PETシートから膜を剥がし、多孔質支持層(B)、カチオン性重合体層(A2)、アニオン性重合体層(A1)がこの順番で配置された正浸透膜を得た。得られた正浸透膜の厚みは65μm、アニオン性重合体層(A1)の厚みは5μm、カチオン性重合体層(A2)の厚みは5μm、イオンバリア層(A)の厚みは10μm、多孔質支持層(B)の厚みは55μmであった。また、正浸透膜の断面を電子顕微鏡観察した結果、多孔質支持層(B)の表面近傍の空隙内にカチオン性ブロック共重合体P−6とみられる樹脂が存在していることが確認された。
得られた正浸透膜を160℃で15分間熱処理して、ビニルアルコール系共重合体の結晶化を行った。ついで、その正浸透膜を2mol/Lの硫酸ナトリウムの水溶液に24時間浸漬させた。当該水溶液にそのpHが1.0になるように濃硫酸を加えた後、3.0体積%グルタルアルデヒド水溶液に前記正浸透膜を浸漬させ、50℃で1時間、スターラーで攪拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、前記正浸透膜を脱イオン水に浸漬して、数回脱イオン水を交換した。こうして正浸透膜−1を作製した。
(正浸透膜の評価)
このようにして作製した正浸透膜−1を所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、破裂強度、水透過性、溶質の透過性及び水の選択透過性の評価を行った。得られた結果を表3に示す。
実施例2〜6
イオン性重合体の種類を表3に示すとおりに変更したことと、架橋の際に水溶液のpHが表3に示すとおりになるよう濃硫酸を添加したこと以外は、前述の正浸透膜−1と同じ作製方法で、正浸透膜−2〜6の作製及び評価を行った。各正浸透膜の評価結果を表3に示す。
比較例1
アニオン性ブロック共重合体P−1の代わりにPVA−2を用いたこと、当該PVA−2の水溶液のみを塗工したことおよびその塗工量を層厚みが10μmになるよう調整したこと以外は、前述の正浸透膜−1と同じ作製方法で、正浸透膜−7を作製した後、評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例2
アニオン性ブロック共重合体P−1の水溶液のみを塗工したことおよびその塗工量を層厚みが10μmになるよう調整したこと以外は、前述の正浸透膜−2と同じ作製方法で、正浸透膜−8を作製した後、評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例3
カチオン性ブロック共重合体P6の水溶液のみを塗工したことおよびその塗工量を層厚みが10μmになるよう調整したこと以外は、前述の正浸透膜−2と同じ作製方法で、正浸透膜−9を作製した後、評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例4
ビニロン合成紙を積層しなかったこと以外は、前述の正浸透膜−1と同じ作製方法で、正浸透膜−9を作製した後、評価を行った。得られた結果を表3に示す。
表3に示されるとおり、多孔質支持層にアニオン性重合体層とカチオン性重合体層からなるイオンバリア層を積層させた正浸透膜(実施例1〜6)は、機械的強度が高かった。しかもこれらの正浸透膜は、水の透過流速が大きく、かつ塩の遮蔽性が高く、正浸透膜として優れた性能を発現することが分かった。一方、イオンバリア層としてイオン基を含まないビニルアルコール重合体からなる層を用いた場合には、水の透過流速が大きく低下した(比較例1)。イオンバリア層としてアニオン性重合体層のみを用いた場合(比較例2)やカチオン性重合体層のみを用いた場合には、塩の遮蔽性が低かった。また、イオンバリア層のみからなる正浸透膜は、機械的強度が低かった(比較例4)。
上記実施例で示されているとおり、本発明の正浸透膜は、高い機械的強度および寸法安定性を有するとともに、低濃度溶液側から高濃度溶液側への高い水透過性を有し、かつ高濃度溶液側から低濃度溶液側への溶質の拡散を抑制することができる。したがって、長期間にわたり、安定的に優れた分離性能が維持される。
1 装置
2、3 セル
4 正浸透膜
5 水
6 高分子電解質
7 管

Claims (10)

  1. イオンバリア層(A)と多孔質支持層(B)とを有する正浸透膜であって、
    前記イオンバリア層(A)が、アニオン性重合体層(A1)とカチオン性重合体層(A2)が積層されたものであり、前記アニオン性重合体がアニオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、前記カチオン性重合体がカチオン基を含有するビニルアルコール系共重合体であり、かつ前記多孔質支持層(B)がポリビニルアルコール繊維の集合体からなるものであることを特徴とする正浸透膜。
  2. 前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であり、かつ前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1記載の正浸透膜。
  3. 前記イオンバリア層(A)の少なくとも一部が多孔質支持層(B)内に含有されている請求項1または2記載の正浸透膜。
  4. 前記アニオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するアニオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30であり、かつ前記カチオン性重合体における、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位の合計に対するカチオン基を有する単位のモル比が2/98〜70/30である請求項1〜3のいずれか記載の正浸透膜。
  5. 前記イオンバリア層(A)の厚みが0.1〜100μmの範囲である請求項1〜4のいずれか記載の正浸透膜。
  6. アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の正浸透膜の製造方法。
  7. アニオン性重合体を含有する水溶液およびカチオン性重合体を含有する水溶液をそれぞれ多孔質支持層(B)に塗工してから、前記アニオン性重合体を含有する水溶液またはカチオン性重合体を含有する水溶液を多孔質支持層(B)に含浸させる請求項6記載の正浸透膜の製造方法。
  8. 処理対象の廃水と、当該廃水よりも浸透圧が高いドロー溶液とを正浸透膜の両側に供給し、浸透圧の差を利用して前記廃水中の水を前記ドロー溶液側に移動させることにより、前記廃水中の水を減容する廃水処理装置であって、正浸透膜として請求項1〜5のいずれか記載の正浸透膜を有することを特徴とする廃水処理装置。
  9. 前記ドロー溶液の溶媒が水、または水と有機溶媒の混合物である請求項8記載の廃水処理装置。
  10. 前記ドロー溶液が、高分子電解質を溶解させてなるものである請求項8又は9に記載の廃水処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021107492A (ja) * 2019-12-27 2021-07-29 株式会社日本触媒 正浸透膜法用ドロー溶質、ドロー溶液及び水処理装置

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