JP2017164718A - イオン交換膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】一価カチオン選択性に優れる、ビニルアルコール系重合体成分とアニオン性基を有する重合体成分とを構成成分とする共重合体からなる、カチオン交換膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜。
【選択図】なし
【解決手段】アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜。
【選択図】なし
Description
本発明は、アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜に関する。
イオン交換膜は海水の濃縮、飲料水用の地下鹹水の脱塩や硝酸性窒素の除去、食品製造工程における塩分除去や医薬品の有効成分の濃縮など、現在、多種多様な用途に、イオンの分離膜として電気透析法、拡散透析法などで使用されている。これらに使用されるイオン交換膜は、主にスチレン−ジビニルベンゼン系の均質イオン交換膜であり、低膜抵抗化など種々の技術が開発され、工業上有用な分離ができるまでに至っている。
一般に、上記の食品、医薬品、農薬などの分野における有機物の合成工程では、塩類などを副生する場合が多い。かかる有機物に含まれる塩類は、電気透析によって分離されることが多い。電気透析による塩の分離は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配列し、直流電流を流すことにより、陽イオン交換膜の陰極側に陽イオンを、陰イオン交換膜の陽極側に陰イオンを排除し、従って陰極側の陽イオン交換膜と、陽極側の陰イオン交換膜で挟まれて形成される室に濃縮される電解質液から塩を取り除くことで脱塩が実現される。電気透析により処理液を脱塩する場合、被処理液中の有機汚染物質、特に荷電を有する巨大分子(以下、巨大有機イオンという)がイオン交換膜に付着して膜の性能を低下させる、いわゆる、膜の有機汚染という問題が生じる。
一方、ビニルアルコール系重合体ブロックとイオン伝導性基を有する重合体ブロックを構成成分とするブロック共重合体からなる高分子電解質膜(特許文献1)や、ビニルアルコール系重合体成分と、カチオン性基を有する重合体成分を構成成分とするブロック共重合体からなる陰イオン交換膜(特許文献2)が知られており、特に特許文献2では、上記の陰イオン交換膜が耐有機汚染性を有することが開示されている。
電気透析を上記の海水の濃縮に使用する際、各種海水成分から塩化ナトリウムを選択的に分離し、かつカルシウムやマグネシウムイオン等に由来する難溶解性の塩の発生を抑制する目的で、一価イオン選択性カチオン交換膜が提案され、実際に使用されている。しかしながら、ビニルアルコール系重合体成分とアニオン性基を有する重合体成分を構成成分とする共重合体からなるカチオン交換膜は、一価イオンの選択性に乏しいという問題がある。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、リチウムイオンやナトリウムイオンなどの一価カチオンの選択性に優れる、カチオン交換膜を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記課題は、
[1]アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜;
[2]前記ビニルアルコール系共重合体(A)と前記カチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有する、[1]に記載のカチオン交換膜;
[3]前記カチオン性基を有する重合体(B)が架橋構造を有する、[1]または[2]に記載のカチオン交換膜;
[4]前記カチオン性基を有する重合体(B)の重量平均分子量が1,000以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[5]前記カチオン性基を有する重合体(B)のカチオン性基が、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基およびピリジル基からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[6]前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなるブロック共重合体である、[1]〜[5]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[7]前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニレン系重合体成分(a−3)を含有する[1]〜[6]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[8]剥離性基材の上に、前記ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する工程;および
前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、前記カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、90℃以上の温度にて熱処理を行う工程;
を含む[1]〜[7]のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法;
[9]前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面を、前記カチオン性基を有する重合体(B)と接触させる工程を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法;
を提供することにより解決される。
[1]アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜;
[2]前記ビニルアルコール系共重合体(A)と前記カチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有する、[1]に記載のカチオン交換膜;
[3]前記カチオン性基を有する重合体(B)が架橋構造を有する、[1]または[2]に記載のカチオン交換膜;
[4]前記カチオン性基を有する重合体(B)の重量平均分子量が1,000以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[5]前記カチオン性基を有する重合体(B)のカチオン性基が、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基およびピリジル基からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[6]前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなるブロック共重合体である、[1]〜[5]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[7]前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニレン系重合体成分(a−3)を含有する[1]〜[6]のいずれかに記載のカチオン交換膜;
[8]剥離性基材の上に、前記ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する工程;および
前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、前記カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、90℃以上の温度にて熱処理を行う工程;
を含む[1]〜[7]のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法;
[9]前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面を、前記カチオン性基を有する重合体(B)と接触させる工程を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法;
を提供することにより解決される。
本発明によれば、リチウムイオンやナトリウムイオンなどの一価カチオンの選択性に優れるカチオン交換膜を提供できる。
本発明のカチオン交換膜は、アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する。
[アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)]
本発明で用いられるアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)(以下「ビニルアルコール系共重合体(A)」と略称する場合がある)は、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなる共重合体であり、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位およびアニオン性基を有する単量体単位を含む。
本発明で用いられるアニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)(以下「ビニルアルコール系共重合体(A)」と略称する場合がある)は、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなる共重合体であり、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位およびアニオン性基を有する単量体単位を含む。
ビニルアルコール系共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。導入できるアニオン性基の量の観点から、前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましい。また、製造容易性の観点から、ブロック共重合体であることがより好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)の好ましい構造としては、下記一般式(1)で表されるブロック共重合体(P)が挙げられる。
前記一般式(1)におけるo1/(n1+o1)は、前記ビニルアルコール系重合体成分(a−1)中に含まれるビニルアルコール単位の比率を示す。下限に関しては0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。一方、上限に関しては、好ましくは0.9999であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。
前記一般式(1)におけるm1/(m1+n1+o1)はビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)に含まれるアニオン性基を有する重合体成分(a−2)の比率を示す。下限に関しては0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。上限に関しては0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。前記比率が0.01未満であると、膜抵抗が増大し、消費電力が多くなるおそれがある。一方、前記比率が0.50を超えると、得られるカチオン交換膜が著しく膨潤し、機械強度および寸法安定性が低下するおそれがある。
前記アニオン性基を有する重合体成分(a−2)を構成するアニオン性基としては、例えばスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、スルホニルイミド基等が挙げられる。当該アニオン性基の対イオンとしては、例えばアルカリ金属イオン、水素イオン、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンが好ましい。
前記アニオン性基を有する重合体成分(a−2)を構成する単量体としては、前記アニオン性基と共有結合する少なくとも一つ以上のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸またはそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸またはそのエステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン等のメタクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n―プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸またはそのエステル類等が挙げられる。
前記アニオン性基を有する重合体成分(a−2)の単量体としては、下記一般式(A1)〜(A7)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アニオン性基を有する重合体成分(a−2)は、上記のアニオン性基を有する単量体単位(M)がm1回の繰返しを有する重合体から構成されている。なお、上記の単量体から重合体を形成するにあたり、上記のアニオン性基を有する単量体の単独重合体だけでなく、本発明に係るカチオン交換膜が得られる限り、他のエチレン性不飽和単量体との共重合体であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、前記のエチレン性不飽和単量体を例示することができる。
なお、前記一般式(1)において、単量体繰り返し単位n1、o1は表示されたとおりに配置されていることを意味するのではなく、単に各単位が存在することを表しており、通常は互いにランダムに配置しているが、同一単位が連続していてもよい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)は、例えば入手が容易である観点から、ポリビニルアルコール成分とパラスチレンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とを含有するブロック共重合体、またはポリビニルアルコール成分と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなる重合体成分とを含有するブロック共重合体であってもよい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位およびアニオン性基を有する単量体単位以外のその他の単量体単位を含有してもよい。その他の単量体単位の含有量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、実質的に含有されていないことがさらに好ましい。その他の単量体単位としては、例えばアリルエステル単位、メタリルエステル単位、エチレン単位、アクリレート単位、メタクリレート単位、アクリルアミド単位、メタクリルアミド単位、ビニルアミド単位、アリルアミド単位およびスチレン単位等が挙げられる。
本発明で用いられるブロック共重合体(P)は、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体と、アニオン性基を有する単量体を用いて、例えば、特許文献1や特許文献2等に記載された重合方法で製造することができる。上記の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、特公平3−57923号公報等に記載の方法で、チオ酢酸存在下で酢酸ビニル単量体をラジカル重合し、得られた重合体をアルカリで処理することにより得ることができる。
上記の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。前記ビニルアルコール単位の含有率が50モル%未満であると、結晶性が低下し、後述するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の耐久性が不足するおそれがある。一方、上限に関しては、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
上記の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、誘導される樹脂組成物の機械的強度が低下することがある。粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。
[ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層]
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の成形方法は、製膜可能である限り、例えば当該共重合体の溶媒に溶解した溶液の状態から成形する方法(例えばキャスト成形法);加熱により当該共重合体を可塑化して成形する方法(例えば押出成形法、インフレーション成形法)などのさまざまな製膜方法を利用することができる。これらの成形方法のうち、キャスト成形が好ましく用いられる。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の成形方法は、製膜可能である限り、例えば当該共重合体の溶媒に溶解した溶液の状態から成形する方法(例えばキャスト成形法);加熱により当該共重合体を可塑化して成形する方法(例えば押出成形法、インフレーション成形法)などのさまざまな製膜方法を利用することができる。これらの成形方法のうち、キャスト成形が好ましく用いられる。
キャスト成形では、当該共重合体の溶液から皮膜を形成することにより得ることができる。皮膜形成工程としては、当該共重合体を、その可溶性溶媒により溶解させた溶液を準備する準備工程と、その溶液を薄膜として流し、その薄膜を乾燥させて製膜する製膜工程とを備える。
当該共重合体の溶液に用いられる溶媒としては、通常、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
製膜工程では、通常、キャスティングにより溶液中の溶媒を揮発させることにより得ることができる。製膜工程の際の温度は0〜100℃程度の温度範囲が適当である。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の製造方法においては、前記製膜工程に加えて、熱処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの結晶化が促進し、得られる層の機械的強度および耐水性が増大する。熱処理の方法は、例えば熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は、例えば50〜250℃であることが好ましい。熱処理の温度が50℃未満であると、得られるイオン交換膜の機械的強度が不足するおそれがある。該温度は80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがより好ましい。一方、熱処理の温度が250℃を超えると、結晶性重合体が融解するおそれがある。該温度は230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
また、前記製膜工程に加えて、ビニルアルコール系共重合体(A)に架橋処理を施すことも好ましい。架橋処理を施すことによって、得られるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の耐水性が増大する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、通常、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、例えばホルムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、サクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,9−ノナンジアールおよびテレフタルアルデヒドなどの、ヒドロキシル基と反応可能な官能基を有する化合物が挙げられる。本発明においては、熱処理を行った後の上記皮膜を、酸性条件下で、水、アルコールまたはそれらの混合溶媒に前記化合物を溶解させてなる溶液に浸漬することにより、架橋処理を行うことが好ましい。架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜5体積%である。
また、前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の耐水化の方法として、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)のヒドロキシル基を脱水し、ビニレン系重合体成分(a−3)を導入する方法も好適に用いられる。ビニレン系重合体成分が導入されたビニルアルコール系共重合体(A)の構造は下記一般式(2)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
前記一般式(2)における(o2+p2)/(n2+o2+p2)は、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびビニレン系重合体成分(a−3)中に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。下限に関しては0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。一方、上限に関しては、好ましくは0.9999以下であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。
前記一般式(2)におけるp2/(n2+o2+p2)はビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびビニレン系重合体成分(a−3)中に含まれるビニレン系重合体成分(a−3)の比率を示し、これをポリエン化率とする。ポリエン化率の下限に関しては0.100以上であり、より好ましくは0.250以上であり、更に好ましくは0.500以上である。一方、上限に関しては、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.99以下、さらに好ましくは0.95以下である。
前記一般式(2)におけるm2/(m2+n2+o2+p2)はビニルアルコール系重合体成分(a−1)、アニオン性基を有する重合体成分(a−2)、およびビニレン系重合体成分(a−3)に含まれるアニオン性基を有する重合体成分(a−2)の比率を示す。下限に関しては0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。上限に関しては0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。
なお、前記一般式(2)において、単量体繰り返し単位n2、o2、p2は表示されたとおりに配置されていることを意味するのではなく、単に各単位が存在することを表しており、通常は互いにランダムに配置しているが、同一単位が連続していてもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体(A)にビニレン系重合体成分(a−3)を導入する方法としては、例えばビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液に酸を添加し、該水溶液を剥離フィルムに塗布することで得られる塗布皮膜に熱処理を施す方法が挙げられる。熱処理を施す方法としては、例えば熱風乾燥機、ホットプレス、ホットプレート、赤外線ヒーター、ローラーヒーター等を用いる方法が挙げられる。大面積の熱処理を行う場合、面状加熱手段が好ましく、ホットプレス、ホットプレート、赤外線ヒーター、ローラーヒーター等がより好ましい。熱処理の条件としては例えば、大気下、窒素などの不活性ガス雰囲気下または減圧下で、加熱処理温度として好ましくは100〜250℃、より好ましくは140〜200℃、加熱時間は好ましくは5秒〜4時間、より好ましくは1分〜2時間であり、複数回に分けて熱処理を行ってもよい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の製造方法においては、熱処理、架橋処理およびビニレン系重合体成分(a−3)の導入の全てを行ってもよいし、そのいずれか2つあるいは1つのみを行ってもよい。複数の処理を行う際は、順番に行ってもよく、同時に行ってもよい。熱処理と架橋処理とを行う場合、熱処理の後に架橋処理を行うことが、得られるイオン交換膜の機械的強度の面から好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の膜厚は、電気透析用電解質膜として必要な性能、膜強度およびハンドリング性等を確保する観点から1〜1,000μmであることが好ましい。膜厚が1μm未満である場合には、膜の機械的強度が不充分となる傾向がある。膜厚が1,000μmを超える場合には、膜抵抗が大きくなり、充分なイオン交換性が発現しにくいため、電気透析効率が低くなる傾向となる。膜厚はより好ましくは5〜500μmであり、さらに好ましくは7〜300μmである。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層は、膜としての靱性が高いため、支持体を利用しない自立膜として、単一層から形成することが可能である。単一層として用いられる場合、膜厚としては、例えば30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層は、必要に応じて補強材を有するものであってもよい。補強材を有することによって膜の強度が向上する。当該補強材としては、例えば不織布、織編物および多孔膜が好ましい。不織布としては、短繊維からなる湿式不織布や連続繊維から形成された不織布などが挙げられる。ビニルアルコール系共重合体(A)溶液の含浸のしやすさから、不織布としては短繊維からなる湿式不織布が好ましい。また、不織布を形成する繊維としては、カチオン性ビニルアルコール系重合体溶液が含浸できればよく、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維などが挙げられる。特にポリビニルアルコール繊維が好ましい。織編物としては合成樹脂製のものが好ましく、複数の線形部材を10〜90度の角度にて交差して配置し交差点を溶融結合してなる合成樹脂製のメッシュであることが好ましい。前記メッシュは、例えば、溶融押し出し法により、または合成樹脂製の糸で粗く織った複数枚の織布を熱プレスする方法により製造される。合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルテレフタレート、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
本発明で用いられる補強材の坪量は、10〜90g/m2であることが好ましい。補強材の坪量が10g/m2未満の場合には、補強効果が不十分となるおそれがあり、用途によっては強度不足となるおそれがある。一方、補強材の坪量が90g/m2を超える場合には、膜抵抗が大きくなるおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがある。より好ましくは15〜70g/m2であり、さらに好ましくは20〜50g/m2である。
本発明で用いられる補強材の空隙率は、40〜90%であることが好ましい。当該空隙率がこの範囲にあることで、得られるカチオン交換膜の機械強度が優れ、かつ耐久性にも優れる。当該空隙率が40%未満の場合、得られるカチオン交換膜の膜抵抗が上昇し、イオンの輸送が困難になるおそれがある。当該空隙率は50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。一方、当該空隙率が90%を超える場合、得られるカチオン交換膜の機械的強度が劣るおそれがあり、耐久性に問題が発生するおそれがある。当該空隙率は80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましい。
本発明のカチオン交換膜を電気透析用のイオン交換膜として使用するのに十分なイオン交換性を発現するためには、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層のイオン交換容量は0.30mmol/g以上であることが好ましく、0.50mmol/g以上であることがより好ましい。ビニルアルコール系共重合体(A)のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり膨潤度の制御が困難となるので、3.0mmol/g以下であることが好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層は、水中での膨潤度を抑制することが可能であり、例えば下記式で表される膨潤度が、1.00〜1.68であることが好ましく、1.10〜1.66であることがより好ましく、1.20〜1.63であることがさらに好ましい。
膨潤度=[W1]/[W2]
(式中、W1は、25℃でのイオン交換水中、膨潤平衡に到達した膜の質量であり、W2は、W1で測定した膜を40℃12時間で真空乾燥した後の質量を表す。)
膨潤度=[W1]/[W2]
(式中、W1は、25℃でのイオン交換水中、膨潤平衡に到達した膜の質量であり、W2は、W1で測定した膜を40℃12時間で真空乾燥した後の質量を表す。)
本発明において、前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層には、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよく、その添加する順序も任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、金属微粒子、無機微粒子、無機塩、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、導電補助剤、表面改質剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、消泡剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、1種類単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層には、さらに特定の重合体を含んでいてもよい。該重合体としては、例えばポリビニルアルコール、上記一般式(A1)〜(A7)の単独重合体、一般式(A1)〜(A7)の2つ以上の成分からなる共重合体等が挙げられる。
[カチオン性基を有する重合体(B)]
カチオン性基を有する重合体(B)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ(ジアリルアミン)、ポリ(メチルジアリルアミン)、ポリ(N−ビニルイミダゾール)、ポリ(N−カルバゾール)ポリアミジン、ヘキサメチレンジアミン−エピクロロヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、グアニジン−ホルマリン重縮合物、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(1−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−ビニルピラジン)、ポリ(4 −ブテニルピリジン)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)またはそれらの塩、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩)、ポリ(N,N,N−トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウム塩酸塩)を含有する重合体等が挙げられる。
カチオン性基を有する重合体(B)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ(ジアリルアミン)、ポリ(メチルジアリルアミン)、ポリ(N−ビニルイミダゾール)、ポリ(N−カルバゾール)ポリアミジン、ヘキサメチレンジアミン−エピクロロヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、グアニジン−ホルマリン重縮合物、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(1−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−ビニルピラジン)、ポリ(4 −ブテニルピリジン)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)またはそれらの塩、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩)、ポリ(N,N,N−トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウム塩酸塩)を含有する重合体等が挙げられる。
カチオン性基を有する重合体(B)のカチオン性基としては、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、ピリジル基、N−トリアルキルアンモニウム基、N−アルキルピリジニウム基、N−アルキルイミダゾリウム基、チオウロニウム基、イソチオウロニウム基等が挙げられる。カウンターアニオンとしては、PF6 −、SbF6 −、AsF6 −等の5B族元素のハロゲン化アニオン;BF4 −等の3B族元素のハロゲン化アニオン;I−(I3 −)、Br−、Cl−等のハロゲンアニオン;ClO4 −等のハロゲン酸アニオン;AlCl4 −、FeCl4 −、SnCl5 −等の金属ハロゲン化物アニオン;NO3 −で示される硝酸アニオン;p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CH3SO3 −、CF3SO3 −等の有機スルホン酸アニオン;CF3COO−、C6H5COO−等のカルボン酸アニオン;OH−等の一価のアニオンが好ましい。
十分な一価イオン選択性を発現するためには、カチオン性基を有する重合体(B)の重量平均分子量は100以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。
(化学結合)
本発明のカチオン交換膜はビニルアルコール系共重合体(A)とカチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有することが好ましい。
本発明のカチオン交換膜はビニルアルコール系共重合体(A)とカチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有することが好ましい。
前記化学結合としては、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合が挙げられ、化学的安定性の観点からは共有結合が好ましい。本発明においては、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在するカチオン交換膜を、酸性条件下で、水、アルコールまたはそれらの混合溶媒にグルタルアルデヒド等の多官能性アルデヒド(架橋処理剤)を溶解させてなる溶液に浸漬することにより、共有結合を形成させることが好ましい。グルタルアルデヒドの濃度は、溶液に対して0.001〜5体積%であることが好ましい。
(架橋構造)
本発明において、カチオン性基を有する重合体(B)に架橋構造を導入することが好ましい。架橋構造を導入することにより、前記カチオン性基を有する重合体(B)の溶媒への溶解性が低下し、前記カチオン性基を有する重合体(B)がビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層へ強固に固定される。本発明において用いられる架橋剤は、得られる組成物の化学的安定性の観点から、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、酸無水物基、酸ハライド基、N−クロロホルミル基、クロロホーメイト基、イミドエーテル基、アミジニル基およびアルデヒド基などの官能基を少なくとも2個含む化合物が挙げられる。前記化合物に含まれる前記官能基の種類は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基およびアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種類が用いられることが好ましい。カチオン性基を有する重合体(B)に架橋構造を導入する方法としては、例えばカチオン性基を有する重合体(B)と前記架橋剤を水、アルコールまたはそれらの混合溶媒に溶解させ、前記カチオン性基を有する重合体(B)をイオン交換膜の表面に存在せしめて加熱する方法が挙げられる。混合溶液中の前記架橋剤の濃度は、通常、カチオン性基を有する重合体(B)に対して0.1〜100重量%であることが好ましい。
本発明において、カチオン性基を有する重合体(B)に架橋構造を導入することが好ましい。架橋構造を導入することにより、前記カチオン性基を有する重合体(B)の溶媒への溶解性が低下し、前記カチオン性基を有する重合体(B)がビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層へ強固に固定される。本発明において用いられる架橋剤は、得られる組成物の化学的安定性の観点から、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、酸無水物基、酸ハライド基、N−クロロホルミル基、クロロホーメイト基、イミドエーテル基、アミジニル基およびアルデヒド基などの官能基を少なくとも2個含む化合物が挙げられる。前記化合物に含まれる前記官能基の種類は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基およびアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種類が用いられることが好ましい。カチオン性基を有する重合体(B)に架橋構造を導入する方法としては、例えばカチオン性基を有する重合体(B)と前記架橋剤を水、アルコールまたはそれらの混合溶媒に溶解させ、前記カチオン性基を有する重合体(B)をイオン交換膜の表面に存在せしめて加熱する方法が挙げられる。混合溶液中の前記架橋剤の濃度は、通常、カチオン性基を有する重合体(B)に対して0.1〜100重量%であることが好ましい。
[カチオン交換膜の製造方法]
本発明のカチオン交換膜の製造方法としては、例えば剥離性基材の上に、ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する工程、および
前記アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、90℃以上で熱処理を行う工程;
を含む方法により製造することが好ましい。
本発明のカチオン交換膜の製造方法としては、例えば剥離性基材の上に、ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する工程、および
前記アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、90℃以上で熱処理を行う工程;
を含む方法により製造することが好ましい。
剥離性基材の上に、前記ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する方法としては、例えば脱イオン水を用いて前記ビニルアルコール系共重合体(A)水溶液を調整し、アプリケータを用いて剥離性のPETフィルム上に塗布する方法が挙げられる。
ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)を存在させる方法としては、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)を接触させる方法であればよく、例えばビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層にカチオン性基を有する重合体(B)またはその溶液をスプレーコート、バーコート、ダイコート、コンマコート、スクリーン印刷法により塗布する方法、PETフィルム等に塗布し転写する方法、あるいはビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層をカチオン性基を有する重合体(B)またはその溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。
また、本発明のカチオン交換膜の他の好適な製造方法は、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面を、カチオン性基を有する重合体(B)と接触させる工程を含む方法により製造する方法である。
ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面を、カチオン性基を有する重合体(B)と接触させる方法としては、上述したビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層をカチオン性基を有する重合体(B)またはその溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。
十分な一価カチオン選択性を得る観点およびビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層への固定化の観点から、カチオン性基を有する重合体(B)はビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に表面から1nm以上浸入していることが好ましく、10nm以上浸入していることがより好ましい。
カチオン性基を有する重合体(B)の、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層への浸入深さは、例えば2次イオン質量分析法(SIMS)による元素分析を用い、試料深さ方向の物質の分布を検出することで確認することができる。
前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、前記カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、熱処理を行う温度としては、90℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。熱処理を行う時間としては、30分以上であることが好ましい。
本発明のカチオン交換膜は、リチウムイオンやナトリウムイオンなどの一価カチオンの選択性に優れるカチオン交換膜に特に好適に使用できる。
本発明のカチオン交換膜は有機物(食品、医薬原材料など)の脱塩、ホエーの脱塩、塩の濃縮、糖液の脱塩、海水やかん水の脱塩、水道水の脱塩、酸回収、リチウムイオン含有水からリチウム塩の回収などに適している。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例等で得られたカチオン交換膜の一価カチオンの選択性の評価は以下の方法で行った。
<一価カチオン選択性の評価>
イオン交換膜を縦30mm横30mmの大きさに裁断し、測定試料を作製した。図1に示される銀―塩化銀電極を有する2室セル中に得られた測定試料をはさみ、測定試料の両側の陽極室および陰極室中にそれぞれ0.167mol/L−LiCl、0.167mol/L−NaCl、0.083mol/L−MgCl2および0.083mol/L−CaCl2の混合水溶液を100mL加え、電流密度20mA/cm2で電気透析を行った。用いた2室セルにおけるイオン交換膜の有効面積は9.0cm2であった。上記測定に使用する膜は、あらかじめ前記混合水溶液中で平衡にしたものを用いた。イオンクロマトグラフィーを用いて、透析前後における、2室セル中のイオン量の変化を測定し、下式に代入することで一価イオン選択係数Tを求めた。
T=(mLi+mNa)/(mLi+mNa+mMg+mCa)
mLi:陽極室から陰極室へ移動したリチウムイオンの物質量
mNa:陽極室から陰極室へ移動したナトリウムイオンの物質量
mMg:陽極室から陰極室へ移動したマグネシウムイオンの物質量
mCa:陽極室から陰極室へ移動したカルシウムイオンの物質量
イオン交換膜を縦30mm横30mmの大きさに裁断し、測定試料を作製した。図1に示される銀―塩化銀電極を有する2室セル中に得られた測定試料をはさみ、測定試料の両側の陽極室および陰極室中にそれぞれ0.167mol/L−LiCl、0.167mol/L−NaCl、0.083mol/L−MgCl2および0.083mol/L−CaCl2の混合水溶液を100mL加え、電流密度20mA/cm2で電気透析を行った。用いた2室セルにおけるイオン交換膜の有効面積は9.0cm2であった。上記測定に使用する膜は、あらかじめ前記混合水溶液中で平衡にしたものを用いた。イオンクロマトグラフィーを用いて、透析前後における、2室セル中のイオン量の変化を測定し、下式に代入することで一価イオン選択係数Tを求めた。
T=(mLi+mNa)/(mLi+mNa+mMg+mCa)
mLi:陽極室から陰極室へ移動したリチウムイオンの物質量
mNa:陽極室から陰極室へ移動したナトリウムイオンの物質量
mMg:陽極室から陰極室へ移動したマグネシウムイオンの物質量
mCa:陽極室から陰極室へ移動したカルシウムイオンの物質量
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
<アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)>
・後述する製造例1により得られた重合体(BCP−1)
・後述する製造例1により得られた重合体(BCP−1)
<カチオン性基を有する重合体(B)>
・ポリアリルアミン:「PAA」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量8000
・ポリエチレンイミン(1):純正化学株式会社製 重量平均分子量1,200
・ポリエチレンイミン(2):純正化学株式会社製 重量平均分子量70,000
・ポリエチレンイミン塩酸塩(1):ポリエチレンイミン(1)に塩酸(和光純薬工業株式会社製)をアミノ基に対して等モル量添加して得たもの。
・ポリエチレンイミン塩酸塩(2):ポリエチレンイミン(2)に塩酸をアミノ基に対して等モル量だけ添加して得たもの。
・ポリアリルアミン塩酸塩(1):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量3,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(2):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量5,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(3):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量15,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(4):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量150,000
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド:「PAS−H」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量8,500
<その他のアニオン性基を有する重合体>
・アニオン性基を有するスチレン系重合体:「CMX」(株式会社アストム製)
・ポリアリルアミン:「PAA」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量8000
・ポリエチレンイミン(1):純正化学株式会社製 重量平均分子量1,200
・ポリエチレンイミン(2):純正化学株式会社製 重量平均分子量70,000
・ポリエチレンイミン塩酸塩(1):ポリエチレンイミン(1)に塩酸(和光純薬工業株式会社製)をアミノ基に対して等モル量添加して得たもの。
・ポリエチレンイミン塩酸塩(2):ポリエチレンイミン(2)に塩酸をアミノ基に対して等モル量だけ添加して得たもの。
・ポリアリルアミン塩酸塩(1):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量3,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(2):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量5,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(3):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量15,000
・ポリアリルアミン塩酸塩(4):「PAA−HCL」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量150,000
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド:「PAS−H」(ニットーボーメディカル株式会社製)重量平均分子量8,500
<その他のアニオン性基を有する重合体>
・アニオン性基を有するスチレン系重合体:「CMX」(株式会社アストム製)
〔製造例1〕
特公平3−57923号公報に記載された方法に基づき、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。得られたPVA−1のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1,500、けん化度は99.9モル%、メルカプト基含有量は2.4×10−5eq/gであった。
特公平3−57923号公報に記載された方法に基づき、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。得られたPVA−1のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1,500、けん化度は99.9モル%、メルカプト基含有量は2.4×10−5eq/gであった。
次に還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水160g、PVA−1を25.0gとパラスチレンスルホン酸ナトリウムを21.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、重合開始剤として2,2’-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液17.7mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間保持して重合した。その後、冷却してビニルアルコール系重合体成分とスルホン酸基をアニオン性基として有する重合体成分からなるブロック共重合体BCP−1を含む水溶液を得た。当該水溶液を80℃で18時間乾燥させることでBCP−1を得た。これを重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に供した結果、BCP−1の全構成単位に対するスルホン酸基を有する単量体単位の含有量は15モル%であった。
〔実施例1〕
脱イオン水を用いて濃度12質量%のBCP−1の水溶液を調製し、当該水溶液をアプリケータを用いて剥離性フィルム(PETフィルム)上に800μmの液厚になるように塗布して塗布層(キャスト層)を形成した。次いで、このキャスト層を形成したPETフィルムのキャスト層面に、ビニロン不織布(坪量:30g/m2、主体繊維の平均繊維系:3μm、バインダ繊維の含有量:5質量%)を重ね合わせて前記BCP−1の水溶液を含浸させることで、ビニロン不織布/BCP−1/PETフィルムからなる複合体を得た。得られた複合体を熱風乾燥機(DKM400、YAMATO製)にて80℃、40分間乾燥した後、PETフィルムを剥離してビニロン不織布/BCP−1からなる複合膜を得た。
次に前記複合膜を、22質量%の硫酸ナトリウムと3体積%のグルタルアルデヒドを含む、pH1の硫酸水溶液に、50℃で3時間浸漬させて架橋処理を行い、架橋処理後、脱イオン水を用いて洗浄し、ビニロン不織布/BCP−1からなる架橋複合膜CEM−0を得た。
次に、CEM−0をカチオン性基を有する重合体(B)であるポリアリルアミンの1質量%水溶液に1時間浸漬させた後、取り出して乾燥させた。次いで表1に示す温度にて30分熱処理を行った後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−1を得た。得られたCEM−1を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
脱イオン水を用いて濃度12質量%のBCP−1の水溶液を調製し、当該水溶液をアプリケータを用いて剥離性フィルム(PETフィルム)上に800μmの液厚になるように塗布して塗布層(キャスト層)を形成した。次いで、このキャスト層を形成したPETフィルムのキャスト層面に、ビニロン不織布(坪量:30g/m2、主体繊維の平均繊維系:3μm、バインダ繊維の含有量:5質量%)を重ね合わせて前記BCP−1の水溶液を含浸させることで、ビニロン不織布/BCP−1/PETフィルムからなる複合体を得た。得られた複合体を熱風乾燥機(DKM400、YAMATO製)にて80℃、40分間乾燥した後、PETフィルムを剥離してビニロン不織布/BCP−1からなる複合膜を得た。
次に前記複合膜を、22質量%の硫酸ナトリウムと3体積%のグルタルアルデヒドを含む、pH1の硫酸水溶液に、50℃で3時間浸漬させて架橋処理を行い、架橋処理後、脱イオン水を用いて洗浄し、ビニロン不織布/BCP−1からなる架橋複合膜CEM−0を得た。
次に、CEM−0をカチオン性基を有する重合体(B)であるポリアリルアミンの1質量%水溶液に1時間浸漬させた後、取り出して乾燥させた。次いで表1に示す温度にて30分熱処理を行った後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−1を得た。得られたCEM−1を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例2〜8〕
表1に記載されたカチオン性基を有する重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、カチオン交換膜CEM−2〜CEM−8を得た。得られたCEM−2〜CEM−8を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
表1に記載されたカチオン性基を有する重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、カチオン交換膜CEM−2〜CEM−8を得た。得られたCEM−2〜CEM−8を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
カチオン交換膜としてCEM−1の代わりにCEM−0を用いた以外は実施例1と同様にして一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
カチオン交換膜としてCEM−1の代わりにCEM−0を用いた以外は実施例1と同様にして一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
CEM−0の代わりに、アニオン性基を有するスチレン系共重合体「CMX」を用いた以外は実施例1と同様の方法でカチオン交換膜CEM−Sを得た。得られたCEM−Sを用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
CEM−0の代わりに、アニオン性基を有するスチレン系共重合体「CMX」を用いた以外は実施例1と同様の方法でカチオン交換膜CEM−Sを得た。得られたCEM−Sを用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すように、一価カチオン選択性の発現には、ビニルアルコール系共重合体(A)の表面上にカチオン性基を有する重合体(B)が存在することが有効であることが分かる(実施例1〜8及び比較例1)。また、アニオン性基を有する重合体はビニルアルコール系共重合体(A)であることが有効であることが分かる(実施例1〜8及び比較例2)。
一方、アニオン性基を有する重合体がスチレン系である場合はカチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を形成することができず、固定化されない(比較例2)。
さらに、CEM−0をカチオン性基を有する重合体(B)の水溶液に1時間浸漬させ、取り出して乾燥させた後の熱処理温度が90℃以上であると一価イオン選択係数Tが高くなることが分かる(実施例4〜7)。
一方、アニオン性基を有する重合体がスチレン系である場合はカチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を形成することができず、固定化されない(比較例2)。
さらに、CEM−0をカチオン性基を有する重合体(B)の水溶液に1時間浸漬させ、取り出して乾燥させた後の熱処理温度が90℃以上であると一価イオン選択係数Tが高くなることが分かる(実施例4〜7)。
〔実施例9〜12〕
実施例1と同様にして得られたCEM−0を表2に示すカチオン性基を有する重合体(B)の1質量%水溶液に12時間浸漬させた後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−9〜CEM−12を得た。得られたカチオン交換膜を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にして得られたCEM−0を表2に示すカチオン性基を有する重合体(B)の1質量%水溶液に12時間浸漬させた後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−9〜CEM−12を得た。得られたカチオン交換膜を用いて前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表2に示す。
表2に示すように、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在することで一価カチオン選択性が発現することが分かる。
〔実施例13〜15〕
前記CEM−0を、表3に示すカチオン性基を有する重合体(B)0.3質量%およびデナコールEX810(ナガセケムテックス株式会社製)0.7質量%を含む水溶液に12時間浸漬させた後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜(CEM−13〜CEM−15)を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表3に示す。
前記CEM−0を、表3に示すカチオン性基を有する重合体(B)0.3質量%およびデナコールEX810(ナガセケムテックス株式会社製)0.7質量%を含む水溶液に12時間浸漬させた後、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜(CEM−13〜CEM−15)を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表3に示す。
表3に示すように、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の表面上に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在することで一価カチオン選択性が発現することが分かる。また、カチオン性基を有する重合体(B)が架橋構造を含むことで、さらに一価イオン選択係数Tが高くなることが分かる。
〔実施例16〜19〕
実施例1と同様にBCP−1にビニロン不織布に含浸させた含浸塗布皮膜を作製した。得られた皮膜の表面に、バーコータを用いてカチオン性基を有する重合体(B)の30%水溶液を、水溶液の厚みが18μmとなるように塗布し、80℃で40分乾燥させた。得られた皮膜を、22質量%の硫酸ナトリウムと3体積%のグルタルアルデヒドを含む、pH1の硫酸水溶液に、50℃で3時間浸漬させ、架橋処理を行った。この膜を、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−16〜CEM−19を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表4に示す。
実施例1と同様にBCP−1にビニロン不織布に含浸させた含浸塗布皮膜を作製した。得られた皮膜の表面に、バーコータを用いてカチオン性基を有する重合体(B)の30%水溶液を、水溶液の厚みが18μmとなるように塗布し、80℃で40分乾燥させた。得られた皮膜を、22質量%の硫酸ナトリウムと3体積%のグルタルアルデヒドを含む、pH1の硫酸水溶液に、50℃で3時間浸漬させ、架橋処理を行った。この膜を、脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−16〜CEM−19を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表4に示す。
表4に示すように、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在することで一価カチオン選択性が発現することが分かる。また、ビニルアルコール系共重合体(A)とカチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有することで、一価イオン選択係数Tが高くなることが分かる。
〔実施例20〜21〕
BCP−1の水溶液に、脱イオン水と硫酸を添加し、BCP−1の濃度が12重量%、硫酸の濃度が0.44重量%となる水溶液を調製し、当該水溶液を、アプリケータを用いて剥離性フィルム(PETフィルム)上に800μmの液厚になるように塗布して塗布層(キャスト層)を形成した。次いで、このキャスト層を形成したPETフィルムのキャスト層面に、ビニロン不織布(坪量:30g/m2、主体繊維の平均繊維系:3μm、バインダ繊維の含有量:5質量%)を重ね合わせてBCP−1と硫酸の混合水溶液をビニロン不織布に含浸させることで、ビニロン不織布/BCP−1/PETフィルムからなる複合体を得た。得られた複合体を熱風乾燥機(DKM400、YAMATO製)にて温度80℃、40分間乾燥した後、PETフィルムを剥離して含浸塗布皮膜を得た。得られた含浸塗布皮膜をテフロンシートに挟み、180℃で30分加熱し、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体にビニレン系重合体成分を含有する共重合体BCP−2を得ることで、耐水化処理を施した。得られたBCP−2を脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行った後、表5に示すカチオン性基を有する重合体(B)の1質量%水溶液に12時間浸漬させ、再び脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−20〜CEM−21を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表5に示す。
BCP−1の水溶液に、脱イオン水と硫酸を添加し、BCP−1の濃度が12重量%、硫酸の濃度が0.44重量%となる水溶液を調製し、当該水溶液を、アプリケータを用いて剥離性フィルム(PETフィルム)上に800μmの液厚になるように塗布して塗布層(キャスト層)を形成した。次いで、このキャスト層を形成したPETフィルムのキャスト層面に、ビニロン不織布(坪量:30g/m2、主体繊維の平均繊維系:3μm、バインダ繊維の含有量:5質量%)を重ね合わせてBCP−1と硫酸の混合水溶液をビニロン不織布に含浸させることで、ビニロン不織布/BCP−1/PETフィルムからなる複合体を得た。得られた複合体を熱風乾燥機(DKM400、YAMATO製)にて温度80℃、40分間乾燥した後、PETフィルムを剥離して含浸塗布皮膜を得た。得られた含浸塗布皮膜をテフロンシートに挟み、180℃で30分加熱し、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体にビニレン系重合体成分を含有する共重合体BCP−2を得ることで、耐水化処理を施した。得られたBCP−2を脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行った後、表5に示すカチオン性基を有する重合体(B)の1質量%水溶液に12時間浸漬させ、再び脱イオン水に浸漬させ、途中数回脱イオン水を交換しながら洗浄を行い、カチオン交換膜CEM−20〜CEM−21を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表5に示す。
〔比較例3〕
BCP−2をカチオン性基を有する重合体(B)の水溶液に浸漬させなかった以外は、実施例20と同様にしてカチオン交換膜CEM−22を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表5に示す。
BCP−2をカチオン性基を有する重合体(B)の水溶液に浸漬させなかった以外は、実施例20と同様にしてカチオン交換膜CEM−22を得た。得られたカチオン交換膜を使用して、前述の方法で一価カチオン選択性を測定した。結果を表5に示す。
表5に示すように、一価カチオン選択性の発現には、ビニルアルコール系共重合体(A)の表面上にカチオン性基を有する重合体(B)を存在させることが有効であることが分かる。また、カチオン性基を有する重合体(B)が少なくとも一表面に存在する場合において、ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニレン系重合体成分を含有することで、一価イオン選択係数Tがさらに高くなることが分かる。
A:電源
B:アンペアメーター
C:クーロンメーター
D:ボルトメーター
E:モーター
F:スターラー
G:カソード電極
H:アノード電極
I:2室セル
J:イオン交換膜
B:アンペアメーター
C:クーロンメーター
D:ボルトメーター
E:モーター
F:スターラー
G:カソード電極
H:アノード電極
I:2室セル
J:イオン交換膜
Claims (9)
- アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、カチオン性基を有する重合体(B)が存在する、カチオン交換膜。
- 前記ビニルアルコール系共重合体(A)と前記カチオン性基を有する重合体(B)との間に化学結合を有する、請求項1に記載のカチオン交換膜。
- 前記カチオン性基を有する重合体(B)が架橋構造を有する、請求項1または2に記載のカチオン交換膜。
- 前記カチオン性基を有する重合体(B)の重量平均分子量が1,000以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のカチオン交換膜。
- 前記カチオン性基を有する重合体(B)のカチオン性基が、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基およびピリジル基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン交換膜。
- 前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール系重合体成分(a−1)およびアニオン性基を有する重合体成分(a−2)からなるブロック共重合体である、請求項1〜5のいずれかに記載のカチオン交換膜。
- 前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニレン系重合体成分(a−3)を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のカチオン交換膜。
- 剥離性基材の上に、前記ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶液を塗布して塗布層を形成する工程;および
前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面に、前記カチオン性基を有する重合体(B)を存在させ、90℃以上で熱処理を行う工程;
を含む請求項1〜7のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法。 - 前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一表面を、前記カチオン性基を有する重合体(B)と接触させる工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のカチオン交換膜の製造方法。
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WO2019187580A1 (ja) * | 2018-03-30 | 2019-10-03 | 栗田工業株式会社 | 微粒子除去膜、微粒子除去装置及び微粒子除去方法 |
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JP2022502524A (ja) * | 2018-09-25 | 2022-01-11 | エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシーEvoqua Water Technologies LLC | 一価選択性カチオン交換膜 |
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- 2016-03-18 JP JP2016054579A patent/JP2017164718A/ja active Pending
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JP2019177329A (ja) * | 2018-03-30 | 2019-10-17 | 栗田工業株式会社 | 微粒子除去膜、微粒子除去装置及び微粒子除去方法 |
JP7106937B2 (ja) | 2018-03-30 | 2022-07-27 | 栗田工業株式会社 | 微粒子除去膜、微粒子除去装置及び微粒子除去方法 |
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