JP2018070796A - アニオン交換膜、その製造方法及びその用途 - Google Patents

アニオン交換膜、その製造方法及びその用途 Download PDF

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正博 馬場
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Abstract

【課題】耐有機汚染性に優れるうえに、長期間使用してもその性能が維持されるアニオン交換膜を提供する。【解決手段】カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有し、カチオン性重合体層の厚みが20〜1000μmであり、アニオン性重合体層の厚みが0.01〜5μmであり、かつビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されている、アニオン交換膜。【選択図】なし

Description

本発明は、ビニルアルコール系共重合体を含むアニオン交換膜、その製造方法およびその用途に関する。
現在、イオン交換膜は海水の濃縮、飲料水用の地下かん水の脱塩や硝酸性窒素の除去、食品製造工程における塩分除去、医薬品の有効成分の濃縮など、多様な用途に用いられている。これらの用途においてイオンを分離する手法としては、電気透析法や拡散透析法が採用されている。そして、このような方法において、主にスチレン−ジビニルベンゼン系共重合体からなる均質イオン交換膜で用いられている。また、一価と二価のイオン選択性の向上、特定イオンの選択性の向上および膜抵抗の低減などを目指した種々の技術開発が進められている。
ところで、食品、医薬品、農薬等を製造する過程で副生された塩を電気透析によって分離する場合がある。このような塩の分離には、陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とが交互に配列された電気透析装置が用いられる。当該装置に直流電流を流すと、カチオンはカチオン交換膜を透過して陰極側に移動し、アニオンはアニオン交換膜を透過して陽極側に移動する。したがって、陰極側のカチオン交換膜と陽極側のアニオン交換膜とに挟まれた室(脱塩室)に供給された電解質液は脱塩され、陰極側のアニオン交換膜と陽極側のカチオン交換膜とに挟まれた室(濃縮室)に供給された電解質液又は水には塩が濃縮される。このとき、被処理液中に荷電を有する巨大分子(以下、巨大有機イオンという)等の有機汚染物質が含まれていると有機汚染物質がイオン交換膜に付着して膜の性能が低下するため問題となる。このような、いわゆる「膜の有機汚染」の原因となる物質は負電荷を帯びていることが多いため、特にアニオン交換膜が汚染されやすい。イオン交換膜が著しく汚染された場合には、比較的短期間でイオン交換膜の洗浄や交換が必要となるうえに、二価のイオンが濃縮されるため、無機スケールが発生して連続運転が困難となる。
このような膜の有機汚染を抑制する方法がいくつか報告されている。例えば特許文献1には、イオン交換基の導入に適した官能基を有する高分子膜をスルホン化して、当該官能基の一部に対してスルホン酸基を導入し、ついで残余の官能基にアニオン交換基を導入したアニオン交換膜が記載されている。特許文献1には、アニオン交換基を有する膜の表層部に反対荷電のスルホン酸基を導入することによって巨大有機イオンや二価のアニオンの膜内への浸入が抑制されると記載されている。しかしながら、当該アニオン交換膜は運転時間の経過とともに膜抵抗が著しく増大するという欠点を有していたうえに、イオン交換性能も満足できるものではなかった。
特許文献2には、アニオン交換基を含有する重合体からなり、当該アニオン交換基の対アニオンの一部が、炭素数3以上の炭化水素基を有するスルホン酸であるアニオン交換膜が記載されている。特許文献2には、アニオン交換基の対アニオンとして炭素数が大きい有機アニオンを用いることによって、耐有機汚染性が改善されたアニオン交換膜が得られると記載されている。しかしながら、当該アニオン交換膜の耐有機汚染性は満足できるものではなかった。
特許文献3には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとエタノールを含む水溶液にアニオン交換膜を60℃で浸漬させることによって得られた複合アニオン交換膜が記載されている。しかし、該アニオン交換膜の耐有機汚染性は満足できるものではないうえに、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムが脱離し易いため、運転時間の経過とともに耐有機汚染性が悪化するという問題があった。
特開昭48−57893号公報 特開平3−146525号公報 特開2008−295330号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐有機汚染性に優れるうえに、長期間使用してもその性能が維持されるアニオン交換膜を提供することを目的とする。また、上記アニオン交換膜の好適な製造方法およびその用途を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記課題は、
[1]カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有し、カチオン性重合体層の厚みが20〜1000μmであり、アニオン性重合体層の厚みが0.01〜5μmであり、かつビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されているアニオン交換膜;
[2]重合体(B)がヒドロキシ基を有する、[1]に記載のアニオン交換膜;
[3]重合体(B)がビニルアルコール単量体単位を含む、[2]に記載のアニオン交換膜;
[4]重合体(B)に含有されるアニオン性基とヒドロキシ基のモル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が10/90〜99.9/0.1である、[2]または[3]に記載のアニオン交換膜;
[5]ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)がアルデヒド(C)で架橋されている、[1]〜[4]のいずれかに記載のアニオン交換膜;
[6]アルデヒド(C)が2以上のアルデヒド基を有する、[5]に記載のアニオン交換膜;
[7]アルデヒド(C)が下記一般式(1)で示される化合物である、[6]に記載のアニオン交換膜;
(式中、nは0〜20の整数を表す。)
[8]重合体(B)に含有されるアニオン性基が、スルホン酸基、カルボキシ基およびこれらの塩から選択される少なくとも1種である、[1]〜[7]のいずれかに記載のアニオン交換膜;
[9]ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させた後、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とを架橋させる工程を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載のアニオン交換膜の製造方法;
[10]陽極と陰極の間にアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に配置されてなる電気透析装置であって、前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜の間に脱塩室と濃縮室とが交互に配置され、前記アニオン性重合体層と前記脱塩室とが対向し、かつ前記アニオン交換膜として[1]〜[8]のいずれかに記載のアニオン交換膜を用いる電気透析装置;
[11]前記脱塩室にアニオンとカチオンを含有する水溶液を供給し、前記濃縮室に水又は水溶液を供給し、前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加する、[10]に記載の装置を用いた電気透析方法;
を提供することによって解決される。
本発明のアニオン交換膜は、耐有機汚染性に優れるうえに、長期間使用した場合でもその性能が維持される。このようなアニオン交換膜を用いた本発明の電気透析装置は、優れた電気透析性能を長期間にわたり維持できる。また、本発明のアニオン交換膜の製造方法によれば、前記アニオン交換膜を安価かつ容易に製造できる。
実施例において、アニオン交換膜の耐有機汚染性の測定に用いた電気透析装置の模式図である。
本発明のアニオン交換膜は、カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有し、カチオン性重合体層の厚みが20〜1000μmであり、アニオン性重合体層の厚みが0.01〜5μmであり、かつビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されているものである。
[カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)]
本発明で用いられるカチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)はビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびカチオン性基を有する単量体単位を含む共重合体である。
ビニルアルコール系共重合体(A)に含有されるビニルエステル単量体単位は特に制限されないが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、ピバル酸ビニル等が挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルアルコール系共重合体(A)に含有されるカチオン性基は特に制限されず、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部がアンモニウム基やイミニウム基等のカチオン性基に変換し得る官能基であってもよい。この中でも工業的な入手容易性の観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基;2級アンモニウム基;3級アンモニウム基;トリアルキルアンモニウム基、トリアリールアンモニウム基等の4級アンモニウム基;のいずれも用いることができるが、4級アンモニウム基が好ましく、トリアルキルアンモニウム基がより好ましい。ビニルアルコール系共重合体(A)は、1種類のカチオン基を含有してもよいし、複数種のカチオン基を含有してもよい。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手容易性の観点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。ビニルアルコール系共重合体(A)は、1種類の対アニオンを含有してもよいし、複数種の対アニオンを含有してもよい。
ビニルアルコール系共重合体(A)に含有されるカチオン性基を有する単量体単位としては、上述したカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する単位が挙げられ、当該エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸またはそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸またはそのエステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン等のメタクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n―プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸またはそのエステル類;等が挙げられる。
前記カチオン性基を有する単量体単位の例としては、下記一般式(2)〜(9)で示されるものが挙げられる。
[式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表す。R、R、Rは、相互に連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい。Zは−O−、−NH−、または−N(CH)−を表し、Yは酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含んでもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。Xはアニオンを表す。]
一般式(2)中の対アニオンXとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(2)で表わされる単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)としては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの3−(メタ)アクリルアミド−アルキルトリアルキルアンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
[式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。R、R、R、およびXは上記一般式(2)と同義である。]
一般式(3)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
[式中、R、R、およびXは上記一般式(2)と同義である。]
[式中、R、R、およびXは上記一般式(2)と同義である。]
一般式(4)および一般式(5)で表される単量体単位は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどのジアリルジアルキルアンモニウム塩を環化重合することにより形成される。このような単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)としては、前記ジアリルジアルキルアンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
[式中、nは0または1を表す。R、R、およびXは上記一般式(2)と同義である。]
一般式(6)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)としては、アリルアミンと、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
[式中、nは0または1を表す。R、R、R、およびXは上記一般式(2)と同義である。]
一般式(7)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
[式中、Rは上記一般式(3)と同義であり、Aは−CH(OH)CH−、−CHCH(OH)−、−C(CH)(OH)CH−、−CHC(CH)(OH)−、−CH(OH)CHCH−、または−CHCHCH(OH)−を表す。Eは−N(Rまたは−N(R・Xを表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。Xは上記一般式(2)と同義である。]
一般式(8)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)として、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩と、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
[式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはi−プロピル基を表し、Rは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す。Rは上記一般式(3)と同義である。]
一般式(9)で表される単量体単位を含有するビニルアルコール系共重合体(A)として、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドまたはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドと、ビニルアルコールおよびビニルエステルとの共重合体が例示される。
ビニルアルコール系共重合体(A)は、カチオン性基を有する単量体単位を1種類含むものであってもよいし、カチオン性基を有する単量体単位を複数種含むものであってもよい。
ビニルアルコール系共重合体(A)が下記一般式(10)で示される共重合体であることが好ましい。
[式中、Rは、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、0.5≦o/(n+o)≦0.9999であり、0.01≦m/(m+n+o)≦0.5であり、Mはカチオン性基を有する単量体単位である。]
前記一般式(10)において、Rを含む単量体単位はビニルエステル単量体単位である。当該単量体単位として、上述したビニルエステル単量体単位が好ましい。Rは、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rがメチル基であることが好ましい。
前記一般式(10)において、Mはカチオン性基を有する単量体単位である。Mとして、上述したカチオン性基を有する単量体単位が好ましい。
前記一般式(10)において、o/(n+o)は、ビニルアルコール系共重合体(A)におけるビニルアルコール単量体単位とビニルエステル単量体単位の合計に対するビニルアルコール単量体単位のモル比を示す。o/(n+o)は0.5以上である。o/(n+o)が0.5未満の場合には、ビニルアルコール系共重合体(A)の水溶性が低下するため、アニオン交換膜を製造する際に、水溶液として使用することが困難となる場合がある。o/(n+o)は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上である。一方、o/(n+o)は0.9999以下である。o/(n+o)が0.9999を超える場合、ビニルアルコール系共重合体(A)を製造する際に、原料のビニルエステル系重合体のけん化に時間がかかるため製造コストが高くなるおそれがある。o/(n+o)は、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.995以下である。
前記一般式(10)において、m/(m+n+o)は、ビニルアルコール系共重合体(A)におけるビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびカチオン性基を有する単量体単位の合計に対するカチオン性基を有する単量体単位のモル比を示す。m/(m+n+o)は0.01以上である。m/(m+n+o)が0.01未満である場合、膜抵抗が上昇し、消費電力が増大するおそれがある。m/(m+n+o)は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上である。一方、m/(m+n+o)は0.50以下である。m/(m+n+o)が0.50を超えると、得られるアニオン交換膜が著しく膨潤し、機械強度および寸法安定性が低下するおそれがある。m/(m+n+o)は、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.25以下である。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびカチオン性基を有する単量体単位以外のその他の単量体単位を含有していても構わない。その他の単量体単位としては、上記のカチオン性基を有する単量体単位の説明において例示されたエチレン性不飽和単量体に由来する単位が挙げられる。その他の単量体単位の含有量は、ビニルアルコール系共重合体(A)を構成する全単量体単位に対して10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましく、実質的に含有されていないことが特に好ましい。
ビニルアルコール系共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。導入可能なカチオン性基の量の観点から、前記ビニルアルコール系共重合体(A)が、ビニルアルコール単量体単位とビニルエステル単量体単位とを含むビニルアルコール系重合体ブロック(a−1)およびカチオン性基を有する単量体単位を含む重合体ブロック(a−2)からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましく、製造が容易である観点から、前者がより好ましい。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ビニルアルコール系重合体ブロック(a−1)がビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびカチオン性基を有する単量体単位以外のその他の単量体単位を含有してもよいが、ビニルアルコール系重合体ブロック(a−1)がビニルアルコール単量体単位及びビニルエステル単量体単位のみから構成されていることが好ましい。また、ビニルアルコール系重合体ブロック(a−1)がカチオン性基を有する単量体単位を含有しないことが好ましい。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、重合体ブロック(a−2)がビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびカチオン性基を有する単量体単位以外のその他の単量体単位を含有してもよいが、重合体ブロック(a−2)が上記のカチオン性基を有する単量体のみからなる単独重合体であることが好ましい。
原料の入手が容易である観点から、重合体ブロック(a−2)がビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドに由来する単量体単位を含む重合体ブロック、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドに由来する単量体単位を含む重合体ブロック又は3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドに由来する単量体単位を含む重合体ブロックであることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系共重合体(A)の製造方法に特に制限はないが、例えば溶液重合法により製造できる。例えば、ビニルアルコール系重合体ブロック(a−1)およびカチオン性基を有する単量体単位を含む重合体ブロック(a−2)からなるブロック共重合体は、末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体とカチオン性基を有する単量体を用いて、特許文献1や特許文献2等に記載された重合方法により製造できる。ここで、末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体は、特開昭59−187003号公報等に記載された、チオ酢酸存在下で酢酸ビニル単量体をラジカル重合し、得られた重合体をアルカリで処理する方法により製造できる。
上記の末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単量体単位の含有率(すなわち、当該ビニルアルコール系重合体のけん化度)は、重合体中の全単量体単位を100モル%とした時に、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ビニルアルコール単量体単位の含有率が50モル%未満であると、結晶性が低下し、カチオン性重合体層の耐久性が不足するおそれがある。一方、ビニルアルコール単量体単位の含有率は、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
上記の末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は、好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上である。また上記粘度平均重合度は、好ましくは5,000以下であり、より好ましくは4,000以下である。粘度平均重合度が100未満である場合、得られるアニオン交換膜の機械的強度が低下することおそれがある。一方、粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。
[アニオン性基を有する重合体(B)]
本発明で用いられるアニオン性基を有する重合体(B)は、アニオン性基を有する単量体単位を含む重合体である。重合体(B)に含有されるアニオン性基は特に制限されないが、スルホン酸基、カルボキシ基、スルホンイミド基、ホスホン酸基およびこれらの塩等が挙げられる。中でもスルホン酸基、カルボキシ基およびこれらの塩が好ましく、スルホン酸基およびその塩がより好ましい。また、アニオン基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオンなどが例示される。重合体(B)は、1種類のアニオン基を含有しても良いし、複数種のアニオン基を含有しても良い。
上述したアニオン性基を有する単量体単位としては、前記アニオン性基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する単位が挙げられ、当該エチレン性不飽和単量体としては、上記のカチオン性基を有する単量体単位の説明において例示されたエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
前記アニオン性基を有する単量体単位としては、下記一般式(11)〜(17)で示されるエチレン性不飽和単量体に由来する単位が挙げられる。
[式中、Wは水素原子またはアルカリ金属原子である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義であり、Rは水素原子またはメチル基である。]
[式中、Wは前記一般式(11)と同義であり、Rは前記一般式(16)と同義である。]
重合体(B)は、アニオン性基を1種類含んでいてもよいし、複数種含んでいてもよい。
上記アニオン性基を有する単量体単位を含有する重合体(B)としては、パラスチレンスルホン酸、α−ハロゲン化スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエンンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸およびそれらの塩類と、ビニルアルコール及びビニルエステルとの共重合体が挙げられる。
重合体(B)中のアニオン性基を有する単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、10〜99.9モル%が好ましい。当該含有量が10モル%未満の場合、膜抵抗が上昇し、消費電力が増大するおそれや耐有機汚染性が低下するおそれがある。一方、前記含有量が99.9モル%を超えた場合、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)の架橋が不十分になり、アニオン交換膜を長期間使用した場合に耐有機汚染性が低下するおそれがある。
長期間使用しても耐有機汚染性が維持される観点、後述するアルデヒド(C)と反応してアセタール結合を形成することができる観点から、重合体(B)がヒドロキシ基を有することが好ましい。そして、重合体(B)に含有されるアニオン性基とヒドロキシ基のモル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が10/90〜99.9/0.1であることが好ましい。モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が10/90未満の場合や99.9/0.1を超える場合には、耐有機汚染性が低下するおそれやアニオン交換膜を長期間使用した場合に耐有機汚染性が低下するおそれがある。モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が20/80以上であることがより好ましく、40/60以上であることがさらに好ましく、60/40以上であることが特に好ましく、80/20以上であることが最も好ましい。一方、モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が99.5/0.5以下であることがより好ましく、99/1以下であることがさらに好ましい。モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)は、H−NMRにより測定することができる。
アニオン性基とヒドロキシ基を有する重合体(B)としては、アニオン性基を有するビニルアルコール系共重合体、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩、リグニンスルホン酸ナトリウム等のリグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
重合体(B)がアニオン性基を有する単量体単位とビニルアルコール単量体単位とを含む重合体であることがより好ましく、このような重合体としては、下記一般式(18)で示されるビニルアルコール系共重合体が挙げられる。
[式中、Rは、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、0.5≦o’/(n’+o’)≦0.9999であり、0.1≦m’/(m’+n’+o’)≦0.999であり、Nはアニオン性基を有する単量体単位である。]
前記一般式(18)において、Rを含む単量体単位はビニルエステル単量体単位であり、当該単量体単位として、ビニルアルコール系共重合体(A)に含有されるものとして上述したビニルエステル単量体単位が好ましい。Rは、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rがメチル基であることが好ましい。
前記一般式(18)において、Nはアニオン性基を有する単量体単位であり、Nとしては上述したアニオン性基を有する単量体単位が好ましい。
前記一般式(18)におけるo’/(n’+o’)は、重合体(B)におけるビニルアルコール単量体単位とビニルエステル単量体単位の合計に対するビニルアルコール単量体単位のモル比を示す。o’/(n’+o’)は0.5以上である。o’/(n’+o’)が0.5未満の場合には水溶性が低下するため、アニオン交換膜を製造する際に、水溶液として使用することが困難となる場合がある。o’/(n’+o’)は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上である。一方、o’/(n’+o’)は0.9999以下である。o’/(n’+o’)が0.9999を超える場合、ビニルアルコール系共重合体(A)を製造する際に、原料のビニルエステル系重合体のけん化に時間がかかるため製造コストが高くなるおそれがある。o’/(n’+o’)は、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.995以下である。
前記一般式(18)においてm’/(m’+n’+o’)は、重合体(B)におけるビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびアニオン性基を有する単量体単位の合計に対するアニオン性基を有する単量体単位のモル比を示す。m’/(m’+n’+o’)は0.1以上である。m’/(m’+n’+o’)が0.1未満である場合、膜抵抗が上昇して消費電力が増大するおそれや耐有機汚染性が低下するおそれがある。m’/(m’+n’+o’)は0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましく、0.8以上が特に好ましい。一方、m’/(m’+n’+o’)は0.999以下である。m’/(m’+n’+o’)が0.999を超えた場合、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)の架橋が不十分になり、アニオン交換膜を長期間使用した場合に耐有機汚染性が低下するおそれがある。m’/(m’+n’+o’)は、好ましくは0.99以下である。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、重合体(B)が、ビニルアルコール単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびアニオン性基を有する単量体単位以外のその他の単量体単位を含有していても構わない。その他の単量体単位としては、上記のカチオン性基を有する単量体単位の説明において例示されたエチレン性不飽和単量体に由来する単位が挙げられる。その他の単量体単位の含有量は、重合体(B)を構成する全単量体単位に対して10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましく、実質的に含有されていないことが特に好ましい。
重合体(B)の重量平均分子量は、好ましくは100以上であり、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは1,000以上であり、特に好ましくは3,000以上であり、最も好ましくは10,000以上である。重量平均分子量が100以上であることによって、耐有機汚染性がさらに向上して、有機物の付着による電圧上昇がさらに抑制される。前記重量平均分子量の上限は特に制限されないが、前記重量平均分子量が10,000,000以下であることが好ましく、5,000,000以下であるでことがより好ましく、1,000,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が10,000,000以下である場合、重合体(B)を容易に製造できるため好ましい。
アニオン性基とヒドロキシ基を有する重合体(B)を製造する方法は特に限定されないが、(1)アニオン性基を有する単量体単位と酢酸ビニル等のビニルエステルを共重合させた後にけん化する方法、(2)末端にメルカプト基やアゾ基、ペルオキシ基等の反応性基を有し、かつヒドロキシ基を有する重合体に対してアニオン性基を有する単量体を重合させる方法、(3)アニオン性基とヒドロキシ基の両方を有する単量体を重合させる方法、(4)アニオン性基を有する単量体とヒドロキシ基を有する単量体を共重合させる方法等が挙げられる。中でも製造が容易である観点から、(2)の方法が好ましい。
上記一般式(18)で示されるビニルアルコール系共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。導入可能なアニオン性基の量の観点から、上記一般式(18)で示されるビニルアルコール系共重合体がビニルアルコール単量体単位とビニルエステル単量体単位とを含むビニルアルコール系重合体ブロック(b−1)およびアニオン性基を有する単量体単位を含む重合体ブロック(b−2)からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが好ましく、製造が容易である観点から、前者がより好ましい。
アニオン性基を有する単量体単位を含む重合体ブロック(b−2)としては、ポリパラスチレンスルホン酸、ポリα−ハロゲン化スチレンスルホン酸、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリ3−スルホプロピルアクリレート、ポリα−ハロゲン化ビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ無水マレイン酸およびそれらの塩類を含有する重合体等が挙げられる。
ビニルアルコール系重合体ブロック(b−1)と重合体ブロック(b−2)からなるブロック共重合体は、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体とアニオン性基を有する単量体を用いて製造することができる。重合方法として、上述したビニルアルコール系共重合体(A)として用いられるブロック共重合体の製造に用いられる方法が採用される。
上記の末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単量体単位の含有率(すなわち、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は、重合体中の全単量体単位を100モル%とした時に、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。前記ビニルアルコール単量体単位の含有率が50モル%未満であると、水溶性が低下するため、アニオン交換膜を製造する際に、水溶液として使用することが困難となる場合がある。一方、上限に関しては、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。前記ビニルアルコール単量体単位の含有率が99.99モル%を超える場合、けん化時間が長くなり製造コストが高くなるおそれがある。
上記の末端にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上である。また上記粘度平均重合度は、好ましくは5,000以下であり、より好ましくは4,000以下である。粘度平均重合度が100未満である場合、得られるアニオン交換膜の機械的強度が低下することおそれがある。一方、粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。
[アニオン交換膜の製造方法]
本発明のアニオン交換膜の製造方法は特に限定されないが、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させた後、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とを架橋させる工程を含む方法が好ましい。
本発明で用いるビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の成形方法は特に限定されないが、ビニルアルコール系共重合体(A)が溶解した溶液を用いて成形する方法(例えばキャスト成形法);ビニルアルコール系共重合体(A)を加熱して可塑化させて成形する方法(例えば押出成形法、インフレーション成形法);などが挙げられる。これらの成形方法のうち、キャスト成形方法が好ましい。
キャスト成形方法は、ビニルアルコール系共重合体(A)の溶液を調製する工程と、得られた溶液を流延した後に乾燥させて膜を得る製膜工程とを備える。ビニルアルコール系共重合体(A)の溶液を流延する方法としては、PETフィルム等の剥離性基材の上にビニルアルコール系共重合体(A)の溶液をアプリケータを用いて塗布する方法が挙げられる。流延したビニルアルコール系共重合体(A)の溶液を乾燥させる際の温度は通常60〜100℃である。
ビニルアルコール系共重合体(A)を溶解させる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール;これらの混合溶媒等が挙げられる。
前記キャスト成形方法において、製膜工程で得られた膜に熱処理を施してもよい。熱処理を施すことによって、ビニルアルコール系共重合体(A)の結晶化が促進し、得られる層の機械的強度および耐水性が向上する。熱処理の方法は、例えば熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は、例えば50〜250℃であることが好ましい。熱処理の温度が50℃未満であると、得られるイオン交換膜の機械的強度が不足するおそれがある。該温度は80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがより好ましい。一方、熱処理の温度が250℃を超えると、結晶性重合体が融解するおそれがある。該温度は230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
本発明において、前記ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層には、必要に応じて任意の添加剤を添加してもよく、その添加する順序も任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、金属微粒子、無機微粒子、無機塩、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、導電補助剤、表面改質剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、消泡剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、1種類単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層は、ビニルアルコール系共重合体(A)以外の他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、イオン性基を含まないポリビニルアルコール、上記一般式(2)〜(9)で示されるカチオン基を有する単量体単位からなる重合体が挙げられる。当該カチオン基を有する単量体単位からなる重合体は単独重合体であってもよいし、2種類以上のカチオン基を有する単量体単位からなる共重合体であってもよい。
本発明において、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層中のビニルアルコール系共重合体(A)の含有量は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。ここで、後述する補強材の質量は考慮しないものとする。
こうして得られたビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させることにより、アニオン性基を有する重合体(B)を含有する層を形成させる。具体的な方法としては、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に重合体(B)またはその溶液をスプレーコート、バーコート、ダイコート、コンマコート、スクリーン印刷法により塗布する方法、PETフィルム等に重合体(B)またはその溶液を塗布した後にビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に転写する方法、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層を重合体(B)またはその溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。中でも、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に重合体(B)の溶液を塗布する方法が好ましい。重合体(B)としてビニルアルコール系共重合体を用いる場合、上述したビニルアルコール系共重合体(A)の溶液に用いられる溶媒を用いて重合体(B)の溶液を調製することができる。ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に重合体(B)の溶液を塗布した後に乾燥させることが好ましい。このときの乾燥温度は通常60〜100℃である。
得られるアニオン交換膜に十分な一価カチオン選択性が付与される観点およびビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に対する接着性の観点から、アニオン性基を有する重合体(B)はカチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に浸入していることが好ましい。後述するビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)の架橋を行う前に、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の表面に重合体(B)を接触させることにより、重合体(B)の一部がビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に浸入すると考えられる。
ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させた後、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とを架橋させる。本発明のアニオン交換膜は、カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有する。そして、カチオン性重合体層とアニオン性重合体層との界面付近において、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されている必要がある。これによって、アニオン性重合体層の剥離が抑制されて、長期間使用した後でも優れた耐有機汚染性が維持される。また、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させた後、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)、ビニルアルコール系共重合体(A)同士、重合体(B)同士を同時に架橋させることによって、製造コストが削減される。
架橋方法は特に限定されないが、反応性の観点から、ビニルアルコール系共重合体(A)や重合体(B)と共有結合を形成することが可能な架橋剤を用いてこれらを架橋させる方法が好ましい。このときの結合形態に特に制限はないが、ビニルアルコール系共重合体(A)の有するヒドロキシ基や重合体(B)の有するヒドロキシ基と架橋剤との間に共有結合が形成されていることが好ましい。
前記架橋剤は特に制限されないが、アルデヒド(C);アジピン酸等のカルボキシ基を有する化合物;アジピン酸ジクロリド等のカルボン酸ハロゲン化物;等が挙げられる。中でも、ヒドロキシ基と反応してアセタール結合やヘミアセタール結合を形成したり、アミノ基と反応してイミン結合を形成したりすることが可能なアルデヒド(C)が好ましい。
架橋点を導入し易い観点から、アルデヒド(C)が1分子あたり2つ以上のアルデヒド基を有することが好ましく、1分子あたり2つのアルデヒド基を有することがより好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
(式中、nは0〜20の整数を表す。)
上記一般式(1)において、nは0〜20であり、1〜10が好ましく、3〜9がより好ましい。
アルデヒド(C)としては、グルタルアルデヒド、グリオキサール、ノナンジアール等、が挙げられる。中でも、入手可能性の観点から、グルタルアルデヒド、グリオキサールが好ましく、グルタルアルデヒドがより好ましい。
アルデヒド(C)を用いてビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とを架橋させる方法は特に限定されないが、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有する層とを有する積層体を、酸性条件下、アルデヒド(C)水溶液に浸漬させる方法が好ましい。このとき、溶液中のアルデヒド(C)の濃度は0.001〜10体積%であることが好ましい。
[アニオン交換膜]
こうして、カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有する本発明のアニオン交換膜が得られる。
強度がさらに向上する観点から、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層が補強材を含むことが好ましい。当該補強材としては、不織布、織編物および多孔膜が好ましい。不織布としては、短繊維からなる湿式不織布や連続繊維から形成された不織布などが挙げられる。ビニルアルコール系共重合体(A)溶液が浸透し易い観点から、不織布としては短繊維からなる湿式不織布が好ましい。また、同様の観点から、不織布を形成する繊維としては、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維などが好ましく、ポリビニルアルコール繊維が特に好ましい。織編物としては合成樹脂製のものが好ましく、複数の線形部材を10〜90度の角度にて交差して配置し交差点を溶融結合してなる合成樹脂製のメッシュが好ましい。前記メッシュは、溶融押出法や合成樹脂製の糸で粗く織った複数枚の織布を熱プレスする方法により製造される。合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルテレフタレート、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
前記補強材の坪量は、10〜90g/mであることが好ましい。補強材の坪量が10g/m未満の場合には、補強効果が不十分となるおそれがあり、用途によっては強度不足となるおそれがある。一方、補強材の坪量が90g/mを超える場合には、膜抵抗が大きくなるおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがある。より好ましくは15〜70g/mであり、さらに好ましくは20〜50g/mである。
補強材を含むカチオン性重合体層の形成方法としては、上述したキャスト成形方法によってビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層を形成する際に、流延されたビニルアルコール系共重合体(A)の溶液に補強材を含浸させる方法などが挙げられる。
電気透析用電解質膜として必要な性能、膜強度およびハンドリング性等を確保する観点から、前記カチオン性重合体層の厚み(乾燥厚み)が20〜1000μmである必要がある。当該厚みが20μm未満である場合には、膜の機械的強度が不十分となる傾向がある。膜厚が1,000μmを超える場合には、膜抵抗が大きくなり、十分なイオン交換性が発現しにくいため、電気透析効率が低くなる傾向となる。カチオン性重合体層の厚みはより好ましくは50〜500μmであり、さらに好ましくは70〜300μmである。補強材を含むカチオン性重合体層において、補強材の空隙にビニルアルコール系共重合体(A)が充填されていない部分がある場合は、当該部分を除いた部分の厚みをカチオン性重合体層の厚みとする。
本発明のカチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層は、靱性が高いため、補強材を使用せずに自立膜として用いることが可能である。この場合、カチオン性重合体層の厚みは30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
本発明において、アニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層の厚み(乾燥厚み)が0.01〜5μmである必要がある。当該厚みが0.01μm未満の場合、耐有機汚染性が不十分になる。一方、前記厚みが5μmを超える場合、イオン交換容量が不十分になる。上述のように、重合体(B)がカチオン性重合体層に浸入することにより、カチオン性重合体層とアニオン性重合体層との界面が明確ではない場合がある。この場合、イオン交換膜を製造する際の重合体(B)の使用量から厚みに換算することができる。例えば、ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層に重合体(B)の溶液を塗布してアニオン性重合体層を形成させる場合、重合体(B)の濃度と塗布した溶液の厚みからアニオン性重合体層の厚み(乾燥厚み)を計算することができる。
本発明のアニオン交換膜の用途は特に制限はないが、例えば電気透析装置、拡散透析装置、ドナン透析装置等に用いることができる。より具体的には、有機物(食品、医薬原材料など)の脱塩、ホエーの脱塩、塩の濃縮、糖液の脱塩、海水やかん水の脱塩、水道水の脱塩、酸回収、排水処理などに適している。
中でも、陽極と陰極の間にアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に配置されてなる電気透析装置であって、前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜の間に脱塩室と濃縮室とが交互に配置され、前記アニオン性重合体層と前記脱塩室とが対向し、かつ前記アニオン交換膜として本発明のアニオン交換膜を用いる電気透析装置が本発明の好適な実施態様である。前記電気透析装置の脱塩室にアニオンとカチオンを含有する水溶液を供給し、前記濃縮室に水又は水溶液を供給し、前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加する電気透析方法もまた、本発明の好適な実施態様である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例等で得られたアニオン交換膜の耐有機汚染性の評価は以下の方法で行った。
<初期の耐有機汚染性の評価>
アニオン交換膜を縦35mm横35mmの大きさに裁断し、測定試料(乾燥厚み:160μm)を作製した。図1に示される銀―塩化銀電極(カソード電極G、アノード電極H)を有する4室セル中に得られた測定試料をはさみ、陰極室、濃縮室、陽極室には1.0mol/L−NaCl水溶液、脱塩室にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.1質量%含む0.5質量%−NaCl水溶液をそれぞれ100mL加えた。測定試料(アニオン交換膜J)のアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層側を脱塩室に向け、電流密度10mA/cmで電気透析を行った。前記測定試料(アニオン交換膜J)の有効面積は9.0cmであった。透析開始から濃縮室と脱塩室の間の白金線の電圧変化を測定し、開始時の電圧との差が2Vに到達した時間をT1とした。アニオン交換膜Jがドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで汚染されると電圧が上昇することから、T1が長いほど、耐有機汚染性に優れているといえる。
<劣化試験後の耐有機汚染性の評価>
イオン交換膜を縦35mm横35mmの大きさに裁断し、測定試料(乾燥厚み:160μm)を作製した。図1に示される銀―塩化銀電極(カソード電極G、アノード電極H)を有する4室セル中に得られた測定試料(アニオン交換膜J)をはさみ、陰極室、濃縮室、脱塩室、陽極室には1.0mol/L−NaCl水溶液をそれぞれ100mL加えた。測定試料(アニオン交換膜J)のアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層側を濃縮室に向け、電流密度20mA/cmで2時間電気透析を行った。前記測定試料(アニオン交換膜J)の有効面積は9.0cmであった。次にセル中の溶液を排出させた後、陰極室、濃縮室、陽極室には1.0mol/L−NaCl水溶液、脱塩室にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.1質量%含む0.5質量%−NaCl水溶液をそれぞれ100mL加えた。測定試料(アニオン交換膜J)のアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層側を脱塩室に向け、電流密度10mA/cmで電気透析を行った。透析開始から、濃縮室と脱塩室の間の白金線の電圧変化を測定し、開始時の電圧との差が2Vに到達した時間をT2とし、劣化試験後のイオン交換膜の耐有機汚染性を評価した。また、T2/T1をアニオン交換膜の劣化の指標とした。
<カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)>
・末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1):株式会社クラレ製「20−98M」、粘度平均重合度1,500、けん化度98モル%
・ブロック共重合体A−1:後述する製造例1により得た
<アニオン性基を有する重合体(B)>
・末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−2):株式会社クラレ製「5−88M」、粘度平均重合度500、けん化度88モル%
・ブロック共重合体B−1:後述する製造例2により得た
・ブロック共重合体B−2:後述する製造例3により得た
・ブロック共重合体B−3:後述する製造例4により得た
・アルギン酸ナトリウム(1):和光純薬工業製 80〜120mPa・s(1w/v%)
・アルギン酸ナトリウム(2):和光純薬工業製 300〜400mPa・s(1w/v%)
・アルギン酸ナトリウム(3):和光純薬工業製 500〜600mPa・s(1w/v%)
・ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(1):東ソー有機化学製 重量平均分子量20,000
・ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(2):東ソー有機化学製 重量平均分子量90,000
・ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(3):東ソー有機化学製 重量平均分子量350,000
・ポリパラスチレンスルホン酸ナトリウム(4):東ソー有機化学製 重量平均分子量600,000
[製造例1]
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水187g、PVA−1を12.14gとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを10.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、重合開始剤として2,2’-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0質量%水溶液9.4mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間保持して重合させた後、80℃で18時間乾燥させることでポリビニルアルコール成分と、カチオン性基(アンモニウム基)を有する重合体成分からなるブロック共重合体A−1を得た。これを重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に供した結果、ブロック共重合体A−1の全構成単位に対するカチオン基を有する単量体単位の含有量は15モル%であった。
[製造例2]
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水180g、PVA−2を4.0gとパラスチレンスルホン酸ナトリウムを20.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、重合開始剤として2,2’-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0質量%水溶液16.9mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間保持して重合した。その後、冷却してから80℃で18時間乾燥させることによりポリビニルアルコール成分と、アニオン性基(スルホン酸基)を有する重合体成分からなるブロック共重合体B−1を得た。これを重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に供した結果、アニオン性基とヒドロキシ基のモル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)は50/50であった。
[製造例3〜4]
原料の使用量や重合条件を変えてパラスチレンスルホン酸ナトリウムの共重合量を調整したこと以外は、製造例2と同様の方法により、ブロック共重合体B−2[モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)=70/30]およびブロック共重合体B−3[モル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)=90/10]を得た。
[実施例1]
脱イオン水を用いて濃度12質量%のブロック共重合体A−1の水溶液を調製し、当該水溶液をアプリケータを用いて剥離性フィルム(PETフィルム)上に800μmの液厚になるように流延した。次いで、流延させた水溶液に、ビニロン不織布(坪量:30g/m、主体繊維の平均繊維系:3μm、バインダ繊維の含有量:5質量%)を重ね合わせて前記水溶液を含浸させてから、熱風乾燥機(DKM400、YAMATO製)にて80℃、40分間乾燥させた。PETフィルムを剥離してビニロン不織布とブロック共重合体A−1からなる複合膜を得た。
バーコータを用いて得られた複合膜の一方の表面にブロック共重合体B−1の30質量%水溶液を流延後(水溶液の厚み:18μm)、80℃で40分乾燥させた。別途、硫酸ナトリウム(22質量%)とグルタルアルデヒド(3体積%)を含むpH1の硫酸水溶液を調製した。得られた多層膜をこの水溶液に50℃にて3時間浸漬させることにより架橋処理を行った後、脱イオン水で洗浄することによりアニオン交換膜(乾燥厚み160μm)を得た。得られたアニオン交換膜の評価を上記評価方法により行った。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
重合体(B)として、表1に示すものを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン交換膜の作製および評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例4〜6]
重合体(B)の水溶液として、表1に記載された重合体(B)の5質量%水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアニオン交換膜の作製および評価を行った。その結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
ブロック共重合体B−1の水溶液の代わりに表1に記載されたアニオン性基を有する重合体の20質量%水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアニオン交換膜の作製および評価を行った。その結果を表1に示す。
[比較例5]
アニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にしてアニオン交換膜の作製および評価を行った。その結果を表1に示す。
[比較例6]
カチオン性基を有し、ビニルアルコール単量体単位を含まないスチレン系重合体からなり、アニオン性重合体が存在しないアニオン交換膜である株式会社アストム製アニオン交換膜「AMX」の評価を上記評価方法により行った。結果を表1に示す。
[比較例7]
カチオン性基を有し、ビニルアルコール単量体単位を含まないスチレン系重合体からなる膜の表面にアニオン性重合体が存在してなるアニオン交換膜である株式会社アストム製アニオン交換膜「ASM−F」の評価を上記評価方法により行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有し、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されてなる本発明のアニオン交換膜は耐有機汚染性に優れ、かつ劣化試験後も当該性能が維持されていた。一方、アニオン性重合体層中のアニオン性基を有する重合体が水酸基を含まず、ビニルアルコール系共重合体(A)と架橋されていない比較例1〜4のアニオン交換膜は、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)が架橋していないため、劣化試験後に性能が大きく低下した。また、アニオン性重合体層を有さない比較例5、6のアニオン交換膜は、初期の耐有機汚染性が著しく低かった。さらに、カチオン性基を有し、ビニルアルコール単量体単位を含まないスチレン系重合体からなる膜の表面にアニオン性重合体が存在してなる比較例7のアニオン交換膜は、スチレン系重合体と表面のアニオン性重合体とが架橋していないため、劣化試験後に性能が大きく低下した。
A:電源
B:アンペアメーター
C:クーロンメーター
D:ボルトメーター
E:モーター
F:スターラー
G:カソード電極
H:アノード電極
I:カチオン交換膜
J:アニオン交換膜
K:4室セル

Claims (11)

  1. カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体(A)を含有するカチオン性重合体層とアニオン性基を有する重合体(B)を含有するアニオン性重合体層とを有し、
    カチオン性重合体層の厚みが20〜1000μmであり、
    アニオン性重合体層の厚みが0.01〜5μmであり、かつ
    ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とが架橋されているアニオン交換膜。
  2. 重合体(B)がヒドロキシ基を有する、請求項1に記載のアニオン交換膜。
  3. 重合体(B)がビニルアルコール単量体単位を含む、請求項2に記載のアニオン交換膜。
  4. 重合体(B)に含有されるアニオン性基とヒドロキシ基のモル比(アニオン性基/ヒドロキシ基)が10/90〜99.9/0.1である、請求項2又は3に記載のアニオン交換膜。
  5. ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)がアルデヒド(C)で架橋されている、請求項1〜4のいずれかに記載のアニオン交換膜。
  6. アルデヒド(C)が2以上のアルデヒド基を有する、請求項5に記載のアニオン交換膜。
  7. アルデヒド(C)が下記一般式(1)で示される化合物である、請求項6に記載のアニオン交換膜。
    (式中、nは0〜20の整数を表す。)
  8. 重合体(B)に含有されるアニオン性基が、スルホン酸基、カルボキシ基およびこれらの塩から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載のアニオン交換膜。
  9. ビニルアルコール系共重合体(A)を含有する層の少なくとも一方の表面に重合体(B)を接触させた後、ビニルアルコール系共重合体(A)と重合体(B)とを架橋させる工程を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のアニオン交換膜の製造方法。
  10. 陽極と陰極の間にアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に配置されてなる電気透析装置であって、
    前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜の間に脱塩室と濃縮室とが交互に配置され、
    前記アニオン性重合体層と前記脱塩室とが対向し、かつ
    前記アニオン交換膜として請求項1〜8のいずれかに記載のアニオン交換膜を用いる電気透析装置。
  11. 前記脱塩室にアニオンとカチオンを含有する水溶液を供給し、前記濃縮室に水又は水溶液を供給し、前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加する、請求項10に記載の装置を用いた電気透析方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113597439A (zh) * 2019-03-20 2021-11-02 东曹精细化工株式会社 具有最高临界共溶温度的新型聚苯乙烯基底的两性聚电解质及其用途

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