JP6053514B2 - 有機物の脱塩方法 - Google Patents
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Description
本発明の別の目的は、上述の目的に加え、有機物による膜の汚染により槽電圧の上昇を防止できる有機物の脱塩方法を提供することにある。
本発明において、ミクロ相分離とは、2種類以上の鎖状高分子を含む共重合体において、同種のポリマーセグメント同士で凝集して、異種ポリマーセグメント間に斥力的な相互作用が働き、結果としてナノスケールからサブミクロンスケールの周期的な自己組織化構造を形成し、得られる周期構造を言う。また、本発明において、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、同種のポリマーセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。
また、前記ポリビニルアルコール系共重合体が、ビニルアルコール重合体ブロックとアニオン性基を有するアニオン性重合体ブロックを有するアニオン性グラフト共重合体であることが好ましい。
また、本発明では、有機物による膜の汚染により槽電圧の上昇を防止しつつ、有機物から塩類を効率よく除去することができる。
本発明で用いられる陽イオン交換膜は、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントとビニルアルコール重合体セグメントとを有するポリビニルアルコール系共重合体とから構成されている。通常、アニオン性重合体セグメントとビニルアルコール重合体セグメントとは共有結合で結合されて、ポリビニルアルコール系共重合体を構成している。本発明において、重合体セグメントとは、同一のモノマー単位が2個以上連結した同一の繰り返し単位を含む重合体鎖を意味し、ブロック共重合体における重合体ブロック、グラフト重合体における幹鎖または枝鎖に相当する重合体ブロックを包含する用語として用いられている。また、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントにおいて、アニオン性基は重合体末端に含まれていてもよいので、アニオン性基を有する単量体が繰り返した単位でなくてもよい。
本発明で用いられるアニオン性重合体セグメントを構成するアニオン性重合体は、分子鎖中にアニオン性基を含有する重合体である。当該アニオン性基は主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていても構わない。アニオン性基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン性基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン性基を含有していてもよいし、複数種のアニオン性基を含有していてもよい。また、アニオン性基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオン、などが例示される。この中で、設備の腐蝕問題が少ない点から、アルカリ金属イオンが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。
本発明において、ビニルアルコール重合体セグメントを構成するポリビニルアルコールとしては、ビニルエステル系モノマー重合して得られたビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものが用いられる。前記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
ビニルエステル系モノマーを共重合させる際には、必要に応じて共重合可能なモノマーを、発明の効果を損なわない範囲内(好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下の割合)で共重合させても良い。
このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシルアクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
本発明において、前記ポリビニルアルコール系共重合体は、アニオン性重合体セグメントとビニルアルコール重合体セグメントとがブロック共重合体またはグラフト共重合体を形成しているのが好ましい。なかでも、ブロック共重合体がより好適に用いられる。こうすることにより、陽イオン交換膜全体の強度の向上、膜の膨潤度の抑制、および形状保持についての機能を担うビニルアルコール重合体ブロックと、陽イオンを透過させる機能を担うアニオン性基単量体を重合してなるアニオン性重合体ブロックとが役割分担でき、陽イオン交換膜のイオン透過機能と寸法安定性とを両立することができる。アニオン性基単量体を重合してなる重合体ブロックの構造単位は特に限定されないが、前記一般式(1)〜(2)で表わされるものなどが例示される。この中で、入手容易である点から、アニオン性重合体を構成する単量体としては、p−スチレンスルホン酸塩または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を用いて、p−スチレンスルホン酸塩を重合してなるアニオン性重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含有するアニオン性ブロック共重合体、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を重合してなるアニオン性重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとからなるブロック共重合体が好ましく用いられる。
また、グラフト共重合体としては、アニオン性重合体セグメントを幹鎖として、ビニルアルコール重合体性セグメントを枝鎖とする場合と、ビニルアルコール重合体セグメントを幹鎖として、アニオン性重合体セグメントを枝鎖とする場合とがある。本発明においては特に限定されないが、強度的性質を得やすい点から、ビニルアルコールを幹鎖として、アニオン性重合体セグメントを枝鎖とするグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合方法としては、公知の方法が適用される。
本発明で用いられるアニオン性単量体を重合してなるアニオン性重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含有するブロック共重合体の製造方法は主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)所望のブロック共重合体を製造した後、特定のブロックにアニオン性基を結合させる方法、および(2)少なくとも1種類のアニオン性基単量体を重合させて所望のブロック共重合体を製造する方法である。このうち、(1)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、1種類または複数種の単量体をブロック共重合させ、次いでブロック共重合体中の1種類または複数種の重合体成分にイオン基を導入する方法、(2)については、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のアニオン性基単量体をラジカル重合させることによりブロック共重合体を製造する方法が挙げられるが、これらの方法は、工業的な容易さから好ましい。特に、ブロック共重合体中のビニルアルコールブロックとアニオン性基単量体を重合してなるアニオン性重合体ブロックの各ブロックにおける構成単量体の種類や量を容易に制御できることから、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下、少なくとも1種類のアニオン性基単量体をラジカル重合させてブロック共重合体を製造する方法が好ましい。こうして得られるアニオン性基単量体を重合してなる重合体ブロックとビニルアルコール重合体ブロックとを含有するブロック共重合体には、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールが未反応のまま含まれていても構わない。
ビニルアルコール重合体のけん化度は特に限定されないが、40〜99.9モル%であることが好ましい。けん化度が40モル%未満だと、結晶性が低下し、陽イオン交換膜の強度が不足するおそれがある。けん化度が60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。通常、けん化度は99.9モル%以下である。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合のけん化度は、混合物全体としての平均のけん化度をいう。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726に準じて測定した値である。
ビニルアルコール重合体セグメントを構成するポリビニルアルコールの粘度平均重合度(以下単に重合度と言うことがある)は特に限定されないが、50〜10000であることが好ましい。重合度が50未満だと、実用上で陽イオン交換膜が十分な強度を保持できないおそれがある。重合度が100以上であることがより好ましい。重合度が10000を超えると重合体水溶液の粘度が高すぎて、塗布が困難になり、得られる膜に欠陥が生じやすくなるおそれがある。重合度が8000以下であることがより好ましい。このとき、前記ポリビニルアルコールが複数種のポリビニルアルコールの混合物である場合の重合度は、混合物全体としての平均の重合度をいう。なお、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定した値である。本発明で用いられるイオン基を含有しないポリビニルアルコールの重合度も、上記範囲であることが好ましい。
陽イオン交換膜を構成するポリビニルアルコール系共重合体中のアニオン性基単量体単位の含有量は特に限定されないが、前記共重合体のアニオン性基単量体単位の含有量、すなわち、前記共重合体中の単量体単位の総数に対するアニオン性基単量体単位の数の割合が、0.1モル%以上であることが好ましい。アニオン性基単量体単位の含有量が0.1モル%未満だと、陽イオン交換膜中の有効荷電密度が低下し、電解質選択透過性が低下するおそれがある。アニオン性基単量体単位の含有量が0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることがさらに好ましい。また、アニオン性基単量体単位の含有量は50モル%以下であることが好ましい。アニオン性基単量体単位の含有量が50モル%を超えると、陽イオン交換膜の膨潤度が高くなり、陽イオン交換膜中の有効荷電密度が低下し、電解質選択透過性が低下するおそれがある。アニオン性基単量体単位の含有量が30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系共重合体が、アニオン性基を含有する重合体とアニオン性基を含有しない重合体との混合物である場合や、アニオン性基を含有する重合体の複数種の混合物である場合のアニオン性基単量体単位の含有量は、混合物中の単量体単位の総数に対するアニオン性基単量体単位の数の割合をいう。
本発明で用いられる陽イオン交換膜の製造方法の特徴は、ビニルアルコール重合体セグメントと、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントを構成成分とするポリビニルアルコール系共重合体(好ましくは、ブロック共重合体)を主成分とし、前記共重合体中の塩類を低減し、製膜することで相分離ドメインサイズを小さくしたことにある。ここで言う塩類とは、ビニルアルコール重合体セグメントを構成するポリビニルアルコール中に含まれる不純物である硫酸塩、酢酸塩や、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントを構成する、アニオン性基を有するモノマーに不純物として含まれる、臭化物塩、塩化物塩、硝酸塩、リン酸塩などの金属塩が挙げられる。これらの塩類は、ポリビニルアルコール系共重合体に不可避的に不純物として混入するものであるが、本発明者らはこの不純物の混入が、製膜時において、ポリビニルアルコール系共重合体におけるアニオン性重合体セグメントのミクロ相分離を大きくして、膜特性に悪影響を及ぼすことを見出した。本発明においては、ポリビニルアルコール系共重合体に含まれる塩類の含有量を低下させて製膜することで、膜の相分離ドメインサイズを小さくすることができる。このときのポリビニルアルコール系共重合体の重量(P)に対する塩類の重量(C)の比(重量比)(C)/(P)は、4.5/95.5以下が必要で、より相分離ドメインサイズを小さくするには、4.0/96.0以下、さらに好ましくは、3.5/96.5以下である、重量比(C)/(P)が4.5/95.5を超えると、アニオン性基重合体セグメントのミクロ相分離ドメインサイズが大きくなり、陽イオン交換膜として使用したとき、イオンパス構造に変化が生じて、耐久性にある陽イオン交換膜を得ることができない。
また、アニオン性重合体セグメントを構成するポリマー中に含まれる不純物については、該ポリマーを適当な溶媒に溶解したポリマー溶液を貧溶媒中で再沈殿精製することにより減少させて、ポリマーを精製することができる。
なお、本発明において、塩類の含有量は上記のように低減されておればよく、したがって、ポリビニルアルコールとアニオン性重合体のどちらか一方または両方を精製して上記に規定する含有量に低減させればよい。
上記により塩類含有量を調整されたポリビニルアルコール系共重合体を、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール、又はこれらの混合溶媒から構成される溶媒に溶解して、ダイから押し出して膜状に成形し、溶媒を揮発除去することにより所定厚みの膜を形成することができる。皮膜をプレート上またはローラ上で成形する際の製膜温度は、特に限定されないが、通常、室温〜100℃程度の温度範囲が適当である。溶媒除去は、適宜加熱しておこなうことができる。
本発明で用いられる陽イオン交換膜は、電気透析用電解質膜として必要な性能、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚が30〜1000μm程度であることが好ましい。膜厚が30μm未満である場合には、膜の機械的強度が不充分となる傾向がある。逆に、膜厚が1000μmを超える場合には、膜抵抗が大きくなり、充分なイオン交換性が発現しないため、電気透析効率が低くなる傾向となる。好ましくは40〜500μmであり、より好ましくは50〜300μmである。
本発明で用いられる陽イオン交換膜の製造方法においては、製膜後、架橋処理を施すことが好ましい。架橋処理を施すことによって、得られる陽イオン交換膜の機械的強度が増大する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学的に結合する方法でもよく、また、熱処理などにより物理的な結合を導入してもよく、特に限定されない。
電気透析用の陽イオン交換膜として使用するのに十分なイオン交換性を発現するためには、得られるポリビニルアルコール系共重合体のイオン交換容量は0.30meq/g以上であることが好ましく、0.50meq/g以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系共重合体のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり膨潤度の抑制が困難となるので、3.0meq/g以下であるのが好ましい。
また、電気透析用の陽イオン交換膜として使用するのに十分な電気特性を発現するためには、得られる陽イオン交換膜の荷電密度は0.6mol/dm3以上であることが好ましく、1.0mol/dm3以上であることがより好ましい。陽イオン交換膜の荷電密度としては、より高いものが好まれるが、膜抵抗との兼ね合いで、比較的低膜抵抗性を維持して、荷電密度を発現するものが好ましい。
本発明の有機物の脱塩方法は、無機塩類を含む有機物溶液を電気透析槽において脱塩し、有機物を脱塩する方法である。
図2に、本発明の一実施形態で有機物の脱塩方法を説明するための概略図を示す。電気透析装置は、電極4,7と、その間に交互に配列された陰イオン交換膜5と陽イオン交換膜6を備えている。正相運転中は、陽極4と、陰極7の間に、陰イオン交換膜5と陽イオン交換膜6を電極間に交互に配列して交互に脱塩室と濃縮室を形成している。被処理液タンク8から供給される無機塩類を含む有機物溶液は、脱塩室11,11に供給される。なお、図示していないが、濃縮室には、電解質を含む液(例えば希薄食塩水など)が供給されている。両端の電極に電圧が通じると、脱塩室11,11から陽イオンおよび陰イオンがそれぞれ陰極側および陽極側へと移動する。そして、脱塩室からは脱塩液10が、濃縮室12からは濃縮液9が排出される。
また、電気透析の際の電流密度は、例えば0.5〜5A/dm2程度であってもよく、好ましくは1〜4A/dm2程度であってもよい。
イオン交換膜の乾燥重量を予め測定しておき、その後、脱イオン水に浸漬し膨潤平衡に達したところで湿潤重量を測定した。膜含水率(H)は下式により算出した。H=<(Ww−Dw)/ 1.0> /<(Ww−Dw)/ 1.0+(Dw/1.3)>
ここで1.0と1.3はそれぞれ水とポリマーの比重を示している。
・H:膜含水率[−]
・Dw:膜の乾燥重量[g]
・Ww:膜の湿潤重量[g]
陽イオン交換膜を1mol/LのHCl水溶液に10時間以上浸漬する。その後、1mol/LのNaNO3水溶液で水素イオン型を硝酸イオン型に置換させ、遊離した水素イオンを酸-塩基滴定により定量した(Amol)。
イオン交換容量は次式により算出した。
・イオン交換容量=A×1000/W [mmol/g−乾燥膜]
ポリビニルアルコール系共重合体中の塩類の量は、ポリビニルアルコール系共重合体の架橋前の皮膜をメタノール溶液にて48時間ソックスレー抽出を行い、抽出物を乾固後、イオンクロマトグラフィ(ICS−5000,DIONEX社製)により測定を行った。
膜抵抗は、図2に示される白金黒電極板を有する2室セル中に陽イオン交換膜を挟み、膜の両側に0.5mol/L−NaCl溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数10サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗と陽イオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により求めた。上記測定に使用する膜は、あらかじめ0.5mol/L−NaCl溶液中で平衡にしたものを用いた。
蒸留水に浸漬した陽イオン交換膜を一辺1cmの正方形に切り出して測定試料を作製した。この測定試料を、酢酸鉛(II)で染色した後、TEM(透過電子顕微鏡)を用いて観察し、測定試料中の粒子群についての画像を得た。得られた画像について、三谷商事株式会社製画像処理ソフト「WINROOF」を用いて画像処理を行い、各々の粒子の最大粒子径を求めた。約400個の粒子について最大粒子径を求め、最大粒子径の累積頻度が50%である粒子径を、陽イオン交換膜のアニオン性基ポリマーセグメントのドメインサイズとした。
特開昭59−187003号公報に記載された方法によって、表1に示す分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。PVA−1の重合度およびけん化度を表1に示す。
表2に示すポリスチレンスルホン酸ナトリウムモノマー(NaSS:東ソー製)をそのまま用いた。塩類の含有量はイオンクロマトグラフィ(ICS−5000,DIONEX社製)により測定を行った。なお、表2に示す全塩量以外のモノマー中の不純物は水分とした。
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムモノマー(NaSS:東ソー製)を1000gと純水950g、水酸化ナトリウム40g、硝酸ナトリウム、1gを60℃で1時間溶解させ、20℃に冷却して再結晶を行った。その後、遠心ろ過によりポリスチレンスルホン酸モノマーの結晶を分離し、結晶を乾燥させ表2に示すNaSS−2(精製ポリスチレンスルホン酸モノマー)を得た。塩類の含有量はイオンクロマトグラフィ(ICS−5000,DIONEX社製))により測定を行った。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1L四つ口セパラブルフラスコに、水660g、末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体として表1に示すPVA−1を80gと、NaSS−146.6gを仕込み、攪拌下95℃まで加熱して該ビニルアルコール系重合体とNaSS−1を溶解した。また、水溶液中に窒素をバブリングしながら30分間系内を窒素置換した。窒素置換後、90℃まで冷却し、上記水溶液に2,2′−アゾビス[2−メチル−N(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]5.4%溶液13mlを1.5時間かけて逐次的に添加してブロック共重合を開始、進行させた後、系内温度を90℃に1時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、固形分濃度15%のPVA−(b)−p−スチレンスルホン酸ナトリウム水溶液を得た。得られた水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、400MHzでの1H−NMR測定に付した結果、パラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の変性量は10モル%であった。得られたアニオン性ブロック共重合体の特性を表3に示す。
アニオン性基含有単量体の種類および仕込み量を表3に示す内容に変更した。これ以外はP−1と同様の方法により固形分濃度15%のPVA−(b)−p−スチレンスルホン酸ナトリウム水溶液を得た。得られたアニオン性ブロック共重合体の特性を表3に示す。
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた1L四つ口セパラブルフラスコに、水676g、末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体として表1に示すPVA−1を80gと、NaSS−1を46.6gと、を仕込み、攪拌下95℃まで加熱して該ビニルアルコール系重合体とNaSS−1を溶解した後、室温まで冷却した。該水溶液に1/2規定の硫酸を添加してpHを3.0に調整した。90℃まで加温し、また、水溶液中に窒素をバブリングしながら30分間系内を窒素置換した。窒素置換後、上記水溶液に過硫酸カリウムの2.5%水溶液63mLを1.5時間かけて逐次的に添加してブロック共重合を開始、進行させた後、系内温度を90℃に1時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、固形分濃度15%のPVA−(b)−p−スチレンスルホン酸ナトリウムブロック共重合体水溶液を得た。得られた水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、400MHzでの1H−NMR測定に付した結果、p−スチレンスルホン酸ナトリウム単位の変性量は10モル%であった。得られたアニオン性ブロック共重合体の特性を表3に示す。
アニオン性基含有単量体の種類および仕込み量を表3に示す内容に変更した。これ以外はP−3と同様の方法により固形分濃度15%のPVA−(b)−p−スチレンスルホン酸ナトリウム水溶液を得た。得られたアニオン性ブロック共重合体の特性を表3に示す。
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lのセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2450g、メタノール762g、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS)27gを仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。この系に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.8g含有するメタノール20gを添加し、重合反応を開始した。重合開始時点より2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS)を25質量%含有するメタノール溶液568gを系内に添加しながら、4時間重合反応を行った後、重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における系内の固形分濃度、すなわち、重合反応スラリー全体に対する固形分の含有率は30質量%であった。ついで、系内にメタノール蒸気を導入することにより、未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル共重合体を30質量%含有するメタノール溶液を得た。
P−3の樹脂を濃度10wt%まで希釈し、樹脂溶液の1倍の体積のメタノールにより再沈して塩類を除去した樹脂を取り出した。このとき含有塩量(C)は、4.5wt%であった。次いで、必要量の蒸留水を加えて濃度15wt%の水溶液を調整した。この水溶液を縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。
このようにして作製した陽イオン交換膜を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、膜含水率、荷電密度、陽イオン交換容量、膜抵抗の測定、相分離ドメインサイズの測定を行なった。得られた結果を表5に示す。
P−3の樹脂を濃度10wt%まで希釈し、樹脂溶液の2倍の体積のメタノールにより再沈して塩類を除去した樹脂を取り出した。次いで、必要量の蒸留水を加えて濃度15wt%の水溶液を調整した。この水溶液を縦270mm×横210mmのアクリル製キャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。このとき含有塩量(C)は、4.0wt%であった。これ以外は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
P−2の水溶液を縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。このとき含有塩量(C)は、2.8wt%であった。これ以外は、CEM1と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
CEM−3において、熱処理温度を表5に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
P−3の樹脂を濃度10wt%まで希釈し、樹脂溶液の5倍の体積のメタノールにより再沈して塩類を除去した樹脂を取り出した。次いで、必要量の蒸留水を加えて濃度15wt%の水溶液を調整した。この水溶液を縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間燥させることにより、皮膜を作製した。このとき含有塩量(C)は、2.0wt%であった。これ以外は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
P−3の樹脂を濃度10wt%まで希釈し、樹脂溶液の10倍の体積のメタノールにより再沈して塩類を除去した樹脂を取り出した。次いで、必要量の蒸留水を加えて濃度15wt%の水溶液を調整した。この水溶液を縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、50℃のホットプレート上で24時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。このとき含有塩量(C)は、1.5wt%であった。これ以外は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
陽イオン交換樹脂を表5に示した内容に変更した以外は実施例1と同様にして陽イオン交換膜の膜特性を測定した。得られた測定結果を表5に示す。
陽イオン交換膜にCEM−1、陰イオン交換膜にAMX((株)アストム社製)を用いて陰極と陽極の両電極間に交互に配列して締め付けた小型電気透析装置マイクロアシライザーS3((株)アストム製)を用いて有機化合物の脱塩試験を実施した。この際、サッカロース1mol/L、食塩0.3mol/Lおよび塩化ベンザルコニウム0.1mol/Lを含む水溶液を脱塩室に供給し、25℃で電流密度1〜2A/dm2にて1パスで1時間電気透析をした。1時間後の脱塩率、サッカロースのリーク率および有機汚染度(開始時点の電圧からの1時間運転後の電圧の上昇率)を測定した結果を表6に示す。
用いる陽イオン交換膜を表6に示す内容に変更した以外は実施例1と同様にして有機物の脱塩試験を行った。得られた結果を表6に示す。
用いる陽イオン交換膜を表6に示す内容に変更した以外は実施例1と同様にして有機物の脱塩試験を行った。得られた結果を表6に示す。
陽イオン交換膜に市販品AMX(アストム(株)社製)を用いて実施例1と同じ条件で測定した。結果を表6に示す。
B 白金電極
C NaCl水溶液
D 水浴
E LCR メーター
3 電気透析槽
4 陽極
5 陰イオン交換膜
6 陽イオン交換膜
7 陰極
8 被処理液タンク
11 脱塩室
12 濃縮室
Claims (10)
- 無機塩類を含む有機物溶液を電気透析槽において脱塩し、有機物を脱塩する方法であって、前記電気透析槽は、電極間に陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを交互に配列して構成した電気透析槽であり、前記陽イオン交換膜は、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントとビニルアルコール重合体セグメントを有するポリビニルアルコール系共重合体を含有し、ドメインサイズ(X)が、0nm<X≦150nmの範囲内にあるミクロ相分離構造を有する陽イオン交換膜を用いることを特徴とする、有機物の脱塩方法。
- 前記ポリビニルアルコール系共重合体は、アニオン性基を含有しないビニルアルコール重合体を含有する請求項1に記載の有機物の脱塩方法。
- 前記ポリビニルアルコール系共重合体に架橋構造が導入されている、請求項1または2に記載の有機物の脱塩方法。
- 前記ポリビニルアルコール系共重合体が、ビニルアルコール重合体ブロックとアニオン性基を有するアニオン性重合体ブロックを有するアニオン性ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 前記ポリビニルアルコール系共重合体が、ビニルアルコール重合体ブロックとアニオン性基を有するアニオン性重合体ブロックを有するアニオン性グラフト共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 陽イオン交換膜のイオン交換容量が、0.30meq/g以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 陽イオン交換膜の膜抵抗が、10Ωcm2以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 陽イオン交換膜を製膜するために用いられるポリビニルアルコール系共重合体が塩類を含有しており、前記ポリビニルアルコール系共重合体の重量(P)に対する塩類の重量(C)の比率[(C)/(P)]が、4.5/95.5以下になるように調整したポリビニルアルコール系共重合体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 陽イオン交換膜が、塩類を含有するポリビニルアルコール系共重合体溶液から製膜して得られる皮膜を、100℃以上の温度で熱処理した後、水、アルコール又はそれらの混合溶媒中で、酸性条件下、ジアルデヒド化合物による架橋処理を行い、ついで水洗処理されることにより製造される陽イオン交換膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機物の脱塩方法。
- 無機塩類を含む有機物溶液を電気透析槽において脱塩し、脱塩された有機物を製造する方法であって、前記電気透析槽は、電極間に陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを交互に配列して構成した電気透析槽であり、前記陽イオン交換膜は、アニオン性基を有するアニオン性重合体セグメントとビニルアルコール重合体セグメントを有するポリビニルアルコール系共重合体を含有し、ドメインサイズ(X)が、0nm<X≦150nmの範囲内にあるミクロ相分離構造を有することを特徴とする、脱塩された有機物の製造方法。
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