JP2020087774A - ディスプレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、バリア層との密着性、及び耐湿熱性にも優れる有機保護層を具備するディスプレイの提供を目的とする。【解決手段】 一対の電極と該電極間に位置する有機発光層とを有する有機EL素子、前記一対の電極の少なくとも一方の面を覆う第1のバリア層、および前記第1のバリア層を覆う第1の有機保護層を具備する、ディスプレイであって、前記第1のバリア層が、無機化合物を含有し、前記第1の有機保護層が、2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する成分(A)、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート成分(B)、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化物である、 ディスプレイ。【選択図】 図1

Description

本発明は、有機EL素子を具備するディスプレイに関する。
近年、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末に代表される電子機器は、更なる薄型化が求められている。携帯端末等の電子機器は、内部にプリント配線板やディスプレイ部材を備えたタッチパネル、更にタッチパネルを構成する液晶ディスプレイ(以下、「LCD」という)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、「OLED」ともいう)等が搭載されている。当該ディスプレイ等の電子素子積層体は、様々な方法で薄型化、高密度化が進めてられている。
例えば、スマートフォンは、多機能を実現するために多くの部材(部品)が限られた空間に使用されている。部品の中でもタッチパネルは、基材上に様々な機能を有する無機層等の機能層と、前記機能層を保護する有機層が積層されている。前記有機層は機能層上に積層するため密着性等の適性が必要になる。
例えば、OLEDで使用される発光素子は、自己発光型素子であり、軽量化及び薄型化が可能であるためディスプレイに限らず照明装置等に用いられている。このOLEDは、プラスチックフィルム等の柔軟性を有する基材を使用することでフレキシブルディスプレイを製造することができる。1枚ずつ生産するガラス基材と異なり、プラスチックフィルム基材を使用すると、ロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)方式でOLEDを製造することができるためコストダウンが見込める。
OLEDの発光素子は、水蒸気で劣化し易いため、基材上に無機化合物を蒸着したバリア層(無機層)を形成して発光素子を保護している。しかし、前記バリア層は、可撓性が無く割れやすいため、バリア層を保護する有機層が必要であった(例えば特許文献1〜6)。
特許文献1には、有機層の形成に使用する、カルボキシル基またはホスホン酸基を有する、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される樹脂を含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、特定のポリチオールモノマー及び特定のポリエンモノマーを含有する重合性化合物と、光重合開始剤と、特定の単官能(メタ)アクリルモノマーを含有する表示素子用封止剤が開示されている。
特許文献3には、無機バリア層と、特定の重合性化合物を含む重合性組成物から形成された有機層とを有するバリア性積層体が開示されている。
特許文献4には、無機層上に、特定の酸性化合物、重合性化合物、及び、シランカップリング剤を含む第1の有機組成物からなる第1の有機層を形成する工程と、当該第1の有機層上に重合性化合物、及び、シランカップリング剤を含む第2の有機層を形成する、特定の製造方法が開示されている。
特許文献5には、無機層と、多官能(メタ)アクリレートと、特定の化合物を含む重合性組成物を重合させてなるポリマーを含む有機層とを有するバリア性積層体が開示されている。
また特許文献6には、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド基を有するウレタンオリゴマーを含有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が開示されている。
特開2007−30387号公報 特開2016−110788号公報 特開2014−159124号公報 特開2011−201064号公報 特開2013−043384号公報 特開2016−181370号公報
OLEDにおいて電極の面を覆うバリア層を有機層で保護する場合、従来の有機保護層は、バリア層との密着性が低かったり、耐湿熱性が低くかったりした。そのため高温高湿の環境に晒されると有機保護層に割れ(クラック)が発生し、水蒸気が透過しやすくなるという問題があった。有機保護層上に更に第2のバリア層を積層する場合、高温高湿の環境に晒されると第2のバリア層にも割れ(クラック)が発生し、水蒸気が透過しやすくなるという問題があった
本発明は、バリア層との密着性、及び耐湿熱性にも優れる有機保護層を具備するディスプレイの提供を目的とする。
本発明は、一対の電極と該電極間に位置する有機発光層とを有する有機EL素子、
前記一対の電極の少なくとも一方の面を覆う第1のバリア層、
および前記第1のバリア層を覆う第1の有機保護層を具備する、ディスプレイであって、
前記第1の有機保護層が、2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する成分(A)、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート成分(B)、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化物である、ディスプレイに関する。
特定の構造を有する成分(A)を含む光硬化性組成物を用いることによって、バリア層への密着性、及び耐湿熱性に優れる有機保護層を形成でき、水蒸気バリア性に優れるディスプレイを提供できる。
OLEDの構成の一例を示す模式的な断面図である。 OLEDの他の構成の一例を示す模式的な断面図である。 OLEDの他の構成の一例を示す模式的な断面図である。 OLEDの他の構成の一例を示す模式的な断面図である。 OLEDの他の構成の一例を示す模式的な断面図である。
本明細書での用語を説明する。本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の各々を表す。
また、本発明において光硬化性とは、電離放射線、及び、紫外線や可視光線を含む非電離放射線により硬化し得る性質をいう。
本発明のディスプレイは、無機化合物を含有する第1のバリア層を覆う第1の有機保護層が、前述の通り、特定の構造を有する成分(A)を含む光硬化性組成物の硬化物であることを特徴とする。
即ち、本発明における光硬化性組成物は、2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する成分(A)を含むことで、バリア層への密着性に優れ、耐湿熱性にも優れる有機保護層を形成できる。その結果、前記成分(A)をOLEDの第1のバリア層の保護に使用すると、高温高湿の環境に晒されても有機保護層や有機保護層上に積層された第2のバリア層に割れが生じ難く、水蒸気バリア性の低下を抑制できる。
<成分(A)>
成分(A)は、「2つのカルボニル基が−CC−で結合しているカルボニル基単位」を含有する。前記の−CC−は、2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する炭素である。前記成分(A)は、バリア層への密着性向上に寄与する。
成分(A)としては、例えば、下記一般式A1〜A11で示されるものが挙げられる。
<一般式A1>

101 :グリジシルエーテル基を1個有する化合物からグリジシルエーテル基を除いた残りの部分。
2、R3 、R4 、R5 :二塩基酸一無水物から無水物基および2つのα位の炭素を除いた残りの部分。
但し、R2、R3 、R4 、R5 は、相互に連結し環を形成していてもよい。
6 :アルキル基、アリール基、−R7-OH、−CH=CH2、−CH2CH=CH2、および下記一般式(1)〜(3)で示される群から選ばれるいずれか一種。

7 :置換基を有しないアルキレン基。
8 :直接結合、置換基を有しないアルキレン基、オキシアルキレン基。
9 :水素、またはメチル基。
101 :グリジシルエーテル基を1個有する化合物からグリジシルエーテル基を除いた残りの部分。
一般式A1で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
即ち、第一段階では二塩基酸一酸無水物と水酸基含有化合物とを付加反応させ、カルボキシル基を有する中間生成物を得、第二段階では第一段階で得られたカルボキシル基を有する中間生成物にグリシジルエーテル基を1個有する化合物を付加させる、と言う2段階反応である。二塩基酸一酸無水物の代わりに二塩基酸を利用することもできる。
あるいは、予備的段階で、一般式A1で示される成分の構造中に組み込まれることとなる水酸基含有化合物以外の他の水酸基含有化合物を二塩基酸一酸無水物と反応させ予備的中間生成物を生成しておき、第一段階で、前記予備的中間生成物に一般式A1で示される成分の構造中に組み込まれることとなる水酸基含有化合物を反応させ(エステル交換)、予備的段階で使用した他の水酸基含有化合物を留去し、次いで第二段階でグリシジルエーテル基を1個有する化合物を付加させる方法でも一般式A1の成分を得ることもできる。

[二塩基酸一無水物]
一般式A1を得る際、用いられる二塩基酸一無水物は、酸無水物基を分子内に1個含有する化合物のうち、2つカルボニル基のα位の炭素がそれぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているものである。
このような二塩基酸一無水物としては、無水コハク酸およびその誘導体、無水マレイン酸およびその誘導体、無水フタル酸およびその誘導体等が挙げられる。無水フタル酸およびその誘導体の場合、一般式A1におけるR2、R3 、R4 、R5 は、相互に連結し環を形成している。
本発明において、二塩基酸一無水物は、一種のみを単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。
無水コハク酸の誘導体としては、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物等のアルキルコハク酸無水物が挙げられる。
無水マレイン酸の誘導体としては、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物等のアルキルマレイン酸無水物が挙げられる。
無水フタル酸の誘導体としては、置換基を有する無水フタル酸や、無水フタル酸の芳香環の少なくとも一部に水素が添加されたいわゆる水添無水フタル酸や置換基を有する水添無水フタル酸等が挙げられる。
置換基を有する無水フタル酸としては、テトラブロモ無水フタル酸等が挙げられる。水添無水フタル酸や置換基を有する水添無水フタル酸としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸等が挙げられる。
[水酸基含有化合物]
一般式A1の構造中に組み込まれる単位となる水酸基含有化合物、即ちOH-R6としては、種々のモノオールや種々のジオールが挙げられる。
モノオールは、例えば、脂肪族(飽和または不飽和、直鎖または分岐)モノオール、脂環式モノオール、芳香族モノオール等が挙げられる。
飽和直鎖脂肪族モノオールは、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、モンタンアルコール等が挙げられる。
不飽和直鎖脂肪族モノオールは、例えばアリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコール、リノールアルコール、リノレンアルコール等が挙げられる。
飽和分岐脂肪族モノオールは、例えばイソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、tert-ペンチルアルコール、2-エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、トリエチルカルビノール、sec-ブチルカルビノール等が挙げられる。
不飽和分岐脂肪族モノオールは、例えばメチルビニルカルビノール、3-メチル-6-ヘキセン-2-オール、4-プロピル-8-オクタデセン-1-オール等の不飽和分岐脂肪族モノオールが挙げられる。
脂肪族置換モノオールは、例えば2-ブロモプロパノール、2-クロロエタノール等が挙げられる。
脂環式モノオールは、例えばシクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタデカノール、2-メチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
芳香族モノオールは、例えばベンジルアルコール、α-フェニルエチルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、ジフェニルカルビノール、トリフェニルカルビノール、シンナミルアルコール等が挙げられる。
芳香族置換モノオールは、例えばp-ニトロベンジルアルコール、p-メトキシ-2-フェニルエタノール、p-ブロモベンジルアルコール、3-(p-クロロフェニル)ブタノール等が挙げられる。
OH-R6としてモノオールを用いた場合、生成物である一般式A1で示される成分中のR6は、前記の各種モノオールから、OHを除いた残りの部分となる。OHを除いた残りの部分としては、アルキル基(直鎖、分岐、脂環)、アルケニル基に代表される不飽和炭化水素基、アリール基が挙げられる。アルキル基や不飽和炭化水素基やアリール基はそれぞれ置換基を有すことができる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,3,5-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、3-ブチル-3-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール等の水酸基を2個有する鎖式脂肪族炭化水素が挙げられる。
鎖式脂肪族炭化水素の他に、環式脂肪族炭化水素やアリール基を有するものも適宜使用できる。
OH-R6としてジオールを用いた場合、生成物である一般式A1で示される成分中のR6は、下記式に示すように前記の各種ジオールから、OHを1つ除いた残りの部分、即ち−R7−OHとなる。−R7−OHからOHを1つ除いた残りの部分であるR7は、前述のジオールからOHを2つ除いた残りの部分、即ち、アルキレン基である。


が一般式(1)の場合について説明する。
二塩基酸一無水物にジオールを反応させ−R7−OHとカルボキシル基とを有する中間生成物を得、前記中間生成物中のカルボキシル基に、グリシジルエーテル基を1個有する化合物を反応させた後、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を−R7−OHに反応させることによって、下記式にて示される化合物を得ることができる。
カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸等が挙げられる。

あるいは、二塩基酸一無水物にモノオールとして(メタ)アクリロイル基を有するモノオールを反応させカルボキシル基を有する中間生成物を得、前記中間生成物中のカルボキシル基に、グリシジルエーテル基を1個有する化合物を反応させて同様のものを得ることもできる。
(メタ)アクリロイル基を有するモノオールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するモノオールは、(メタ)アクリ酸とジオールとの反応によって得ることができる。
[グリシジルエーテル基を1個有する化合物]
二塩基酸一無水物と水酸基含有化合物との中間生成物に反応させるグリシジルエーテル基を1個有する化合物は、例えばアリルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリエチレングリシジルエーテル、(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテル等が挙げられる。
アルキルグリシジルエーテルとしては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、p−tertブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルとしては、グリシジル(メタ)アクリレートの他、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルのようなオキシアルキレン(メタ)アクリレートグリシジルエーテルも挙げられる。
グリシジルエーテル基を1個有する化合物として、(メタ)アクリロイル基とグリシジルエーテル基を1個有する化合物を用いれば、R101中に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
グリシジルエーテル基を1個有する化合物は2種類以上を併用することもできる。
が一般式(2)の場合について説明する。
二塩基酸一無水物との反応の際、前述のモノオールやジオールではなく水を用いることもできる。
この場合、二塩基酸一無水物と水との反応による中間生成物は下記式に示すようにジカルボン酸となる。このような反応生成物中のカルボキシル基に対し等量のグリシジルエーテル基を1個有する化合物を反応させると、二塩基酸一無水物に由来する部分の両端にグリシジルエーテル基を1個有する化合物に由来する部分を有する化合物を得ることができる。即ち、Rが一般式(2)の化合物を得ることができる。
グリシジルエーテル基を1個有する化合物としては前出のものを同様に挙げることができる。
が一般式(3)の場合について説明する。
下記式に示すように、二塩基酸一無水物と水との反応による中間生成物であるジカルボン酸に、グリシジルエーテル基を1個有する化合物として、(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルを反応させることによって、Rが一般式(3)の化合物を得ることができる。
(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルのみを反応させることもできるし、(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルと他のグリシジルエーテル基を1個有する化合物とを併用することもできる。
(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテル、他のグリシジルエーテル基を1個有する化合物としては前出のものを同様に挙げることができる。

(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルとして、グリシジル(メタ)アクリレートを用いる場合、R8 は直接結合となる。
また、(メタ)アクリロイル基を有するグリシジルエーテルとして、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルのようなオキシアルキレン(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを用いる場合、R8 は、下記式にて示すように−O−R10−となり、R10は置換基を有しないアルキレン基となる。

<一般式A2>

102 :グリジシルエーテル基を2個有する化合物から2つのグリジシルエーテル基を除いた残りの部分
2、R3 、R4 、R5 、R7は、一般式A1の場合と同様。
6’ :水素、アルキル基、アリール基、−CH=CH2、−CH2CH=CH2
および下記一般式(1)、(3)で示される群から選ばれるいずれか一種。
1、m2はそれぞれ独立に0以上の数。
但し、m1、m2がともに0の場合、R6’ は水素以外。

7、R8、R9は、一般式A1の場合と同様。
<一般式A2−1>
m=0の場合を一般式A2−1として示す。

一般式A2−1で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
即ち、一般式A1の場合と同様に、第一段階で二塩基酸一無水物と水酸基含有化合物とを付加反応させ、カルボキシル基を有する中間生成物を得る。第二段階では、グリシジルエーテル基を2個有する化合物1molに対して、第一段階で得られたカルボキシル基を有する中間生成物を2mol付加反応させて一般式A2−1で示される化合物を得ることができる。
なお、一般式A1の場合と同様に、二塩基酸一酸無水物の代わりに二塩基酸を利用したり、予備的段階を経た後エステル交換反応を利用したりすることもできる。
また、二塩基酸一酸無水物や水酸基含有化合物としては一般式A1の場合、同様のものを例示できる。

<一般式A2−2>
一般式A2で示される成分のうち、m=0、R6’が一般式(1)である成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
即ち、第一段階で二塩基酸一酸無水物に対し、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を反応させ、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する中間生成物を得る。次いで第二段階では、グリシジルエーテル基を2個有する化合物1molに対して、第一段階で得られたカルボキシル基を有する中間生成物を2mol付加反応させて一般式A2−2で示される化合物を得ることができる。
なお、一般式A1の場合と同様に、二塩基酸一酸無水物の代わりに二塩基酸を利用したり、予備的段階を経た後エステル交換反応を利用したりすることもできる。

<一般式A2−3>、<一般式A2−4>
一般式A2で示される成分のうち、m=1以上の場合について説明する。
例えば、下記のイメージ式にて示すように、第一段階として二塩基酸一酸無水物とジオールとの反応により、カルボキシル基末端のポリエステルを得る。ポリエステルの重合度は反応条件により調整することができる。
次いで、第二段階として、グリシジルエーテル基を2個有する化合物中のエポキシ基に対して、第一段階で得られたカルボキシル基末端のポリエステル中のカルボキシル基が多くなる条件にて付加反応させて、一般式A2−3で示されるカルボキシル基末端の中間生成物を得る。カルボキシル基末端の中間生成物の重合度は反応条件により適宜調節することができる。一般式A2−3で示されるカルボキシル基末端の中間生成物をそのまま成分(A)として使用することもできる。
さらに、第三段階として、一般式A2−3で示されるカルボキシル基末端の中間生成物中のカルボキシル基1molに対して、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物中の水酸基2molを反応させて、一般式A2−4で示される(メタ)アクリロイル基を有する生成物を得、該生成物を成分(A)として使用することもできる。

<一般式A2−5>
あるいは、第三段階として、一般式A2−3で示されるカルボキシル基末端の中間生成物A2−3中のカルボキシル基1molに対して、(メタ)アクリロイル基とグリシジルエーテル基とを有する化合物中のグリシジルエーテル基1molを反応させて、一般式A2−5で示される(メタ)アクリロイル基を有する生成物を得、該生成物を成分(A)として使用することもできる。
なお、一般式A1の場合と同様に、二塩基酸一酸無水物の代わりに二塩基酸を利用したり、予備的段階を経た後エステル交換反応を利用したりすることもできる。
また、二塩基酸一酸無水物、ジオール、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物、(メタ)アクリロイル基とグリシジルエーテル基とを有する化合物としては一般式A1の場合と同様のものを例示できる。

[グリシジルエーテル基を2個有する化合物]
グリシジルエーテル基を2個有する化合物は、例えば1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、ビスフェノール型ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、アミンを介して、グリシジルエーテル基を2個有する化合物二分子を結合してなる生成物(一種の二量体)もグリシジルエーテル基を2個有する化合物として使用できる。
<一般式A3、A4>


101は一般式A1の場合と同様である。R6’は一般式A2の場合と同様である。
一般式A3、A4で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
即ち、第一段階で無水トリメリット酸に水酸基含有化合物を付加反応させ、2つのカルボキシル基を有するモノエステル体(中間生成物)を生成する。得られる中間生成物は異性体を含むと考えられる。なお、下記スキームでは異性体を含む意を「+」で表した。
第二段階では、グリシジルエーテル基を1個有する化合物2molに対して、第一段階で得られた2つのカルボキシル基を有する中間生成物を1mol反応させて一般式A3、A4で示される化合物を得ることができる。
なお、一般式A1の場合と同様に、トリメリット酸無水物の代わりにトリメリット酸を利用したり、予備的段階を経た後エステル交換反応を利用したりすることもできる。
また、水酸基含有化合物としては一般式A1の場合と同様のものを例示できる。

なお、本発明では、一般式A3、A4で示される化合物の他に、三塩基酸一無水物として、水添トリメリット酸無水物や置換基を有する無水トリメリット酸を成分(A)として使用することもできる。
<一般式A5、A6>


101は一般式A1の場合と同様である。R6’は一般式A2の場合と同様である。
一般式A5、A6で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
即ち、第一段階で1当量の無水ピロメリット酸に2当量の水酸基含有化合物を付加反応させ、2つのカルボキシル基を有するジエステル体(中間生成物)を生成する。得られる中間生成物は異性体を含むと考えられる。なお、下記スキームでは異性体を含む意を「+」で表した。
第二段階では、グリシジルエーテル基を1個有する化合物2molに対して、第一段階で得られた2つのカルボキシル基を有する中間生成物を1mol反応させて一般式A5、A6で示される化合物を得ることができる。
なお、下記スキームでは、グリシジルエーテル基を1個有する化合物と中間生成物との反応について、その量比は省略した。
また、一般式A5、A6で示される成分は、無水トリメリット酸の代わりに無水ピロメリット酸を用いる以外は、一般式A3、A4で示される成分の場合と同様である。
<一般式A7、A8>


101は一般式A1の場合と同様である。R6’は一般式A2の場合と同様である。
一般式A7、A8で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
A7、A8は、無水ピロメリット酸が水添無水トリメリット酸となる以外はA5,A6の場合と同様である。
<一般式A9、A10>


101は一般式A1の場合と同様である。R6’は一般式A2の場合と同様である。
一般式A9、A10で示される成分は、例えば、以下の合成スキーム(イメージ)に示すように、2段階の反応により得ることができる。
A9、A10は、無水ピロメリット酸がブタンー1,2,3,4ーテトラカルボン酸二無水物となる以外はA5,A6の場合と同様である。

<一般式A11>

200 :四塩基酸二無水物から2つの無水物基および4つのα位の炭素を除いた残りの部分。
但し、α位の炭素同士の結合は、芳香環の一部を成すことができる。
101は一般式A1の場合と同様である。R6’は一般式A2の場合と同様。
一般式A11で示される成分について説明する。
一般式A11で示される成分は、四塩基酸二無水物として、回転可能な結合につながる2組の二塩基酸二無水物基を利用するものである。
回転可能な軸につながる2組の二塩基酸二無水物基を有するものとしては、
ビフェニルテトラカルボン酸類の二無水物、
ベンゾフェノンテトラカルボン酸類の二無水物、
ジフェニルエーテルテトラカルボン酸類の二無水物、および
エチレングリコールビストリメリット酸無水物等が挙げられる。
さらに、前記ビフェニルテトラカルボン酸類の二無水物等の芳香環に水素が付加したいわゆる水添物置換基を有する四塩基酸二無水物等の誘導体も挙げられる。
ビフェニルテトラカルボン酸類の二無水物としては、
2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸2,3:2’,3’‐二無水物(別名:1,1’−ビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸2,3:2’,3’二無水物)、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
4,4‘−ビフタル酸無水物(別名:1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸)等が挙げられる。
ベンゾフェノンテトラカルボン酸類の二無水物としては、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジフェニルエーテルテトラカルボン酸類の二無水物としては、
4,4’−オキシビスフタル酸1,2:1’,2’-二無水物(別名:3,3‘,4,4’‐ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物)、
3,4’−オキシビスフタル1,2:1’,2’-二酸無水物等が挙げられる。
これらの他、回転可能な結合につながる2組の二塩基酸酸二無水物としては、
エチレングリコールビストリメリット酸無水物、
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’ ,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
さらに、回転可能な結合につながる2組の二塩基酸二無水物基を有するものとしては、前記した種々のテトラカルボン酸二無水物等の芳香環に水素が付加したいわゆる水添物や置換基を有するものも挙げられる。
回転可能な結合につながる2組の二塩基酸二無水物基を有するものとして、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAという)を例にとって、一般式A11で示される成分の一種、一般式A11−1で示される成分を得る方法を説明する。
無水ピロメリット酸を用いる一般式A5、A6の場合と同様に、まず第一段階で、1当量のBPDAに2当量の水酸基含有化合物を付加反応させ、2つのカルボキシル基を有するジエステル体(中間生成物)を生成する。
第二段階では、グリシジルエーテル基を1個有する化合物2molに対して、第一段階で得られた2つのカルボキシル基を有する中間生成物を1mol反応させて一般式A7で示される化合物を得ることができる。
なお、下記スキームでは、グリシジルエーテル基を1個有する化合物と中間生成物との反応について、その量比は省略した。
また、一般式A7で示される成分は、無水ピロメリット酸の代わりにBPDAを用いる以外は、一般式A3、A4で示される成分の場合と同様である。


本発明において成分(A)は、光硬化性であることが好ましい。
即ち、一般式A1〜A11におけるR6やR6’が、一般式(1)または(3)で示される成分であることが好ましく、一般式(1)で示される成分であることが好ましい。

成分(A)は、後述する成分(B)100質量部に対して、1〜35質量部であることが好ましく、2〜25質量部であることがより好ましい。
<成分(B)>
成分(B)は、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する成分であり、2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を「有しない」成分である。
成分(B)としては、単官能、2官能、3官能、4個以上のものが例示でき、単独または2種類以上を適宜組み合わせて併用できる。
2種類以上を用いる場合、主として2官能のものと3官能のものとを組み合わせて用いることが好ましい。
単官能、即ち(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロオキシエチルアシッドホスフェートなどのエステル化合物、スチレン、α-メチレンなどのスチレン系化合物、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン化合物、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどの窒素含有化合物、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有化合物、ポリマーの主鎖がシリコーン成分であり片末端が(メタ)アクリレート基で修飾された重合性シリコーン化合物が挙げられる。
2官能、即ち(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、メチル2−(アリルオキシメチル)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジア(メタ)クリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能、即ち(メタ)アクリロイル基を3個有する化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
4官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、例えばジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレート化合物は1種または必要に応じて2種以上用いても良い。
なお、多官能の場合、アクリロイル基のみを有するもの、メタクリロイル基のみを有するもの、アクリロイル基とメタクリロイル基とを有すものが考えられ、いずれでもあってもよい。
<光重合開始剤>
本発明における光による硬化には光重合開始剤を使用する。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤は、分子内開裂型または水素引き抜き型が好ましい。
分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤は、放射線を照射することにより当該開始剤分子が開裂してラジカルを発生するタイプのラジカル開始剤である。分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤は、例えば、ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、アミノアセトフェノン系光開始剤、オキシムケトン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤等が好ましい。
光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用できる。
ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤は、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(ベンジルジメチルケタ−ル/2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)等が挙げられる。
α−ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤は、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−ベンゾイル−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(アクリロイルオキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、フェニル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー等が挙げられる。
ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤は、例えばベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤は、例えば2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
オキシムケトン系光ラジカル重合開始剤は、例えば1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤は、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオイサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
チタノセン系光ラジカル重合開始剤は、例えばビス(シクロペンタジエニル)−ジ−フェニル−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ジ−クロロ−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アントラキノン系光開始剤等が好ましい。
ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤は、例えばベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、3−ベンゾイルビフェニル、4−(4−メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、メチル2−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)−プロパン−1−オン等が挙げられる。
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤は、例えばチオキサントン、キサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン等のチオキサントン誘導体等が挙げられる。
アントラキノン系光開始剤は、例えばアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノアントラキノン等が挙げられる。
光重合開始剤は、これらの中でも、アシルホスフィン系化合物を用いることが好ましい。アシルホスフィン系化合物としては、例えば、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤が挙げられ、中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。アシルホスフィン系化合物は市販品を用いてもよく、例えば、ルシリンTPO(BASFジャパン社製)、IRGACURE819(BASFジャパン社製)などを好適に用いることができる。
光重合開始剤は、成分(B)100質量部に対して、1〜20質量部を含むことが好ましい。
<増感剤>
本発明における光硬化性組成物には、光重合開始剤に増感剤を併用できる。
増感剤は、アミン系増感剤、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等が挙げられる。
増感剤は、単独または2種類以上を併用できる。
アミン系増感剤は、例えばトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルベンジルアミン、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
アントラセン系増感剤は、例えば9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
チオキサントン系増感剤は、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。市販品の代表例としては、アミン系増感剤では、EPA(日本化薬社製)、アントラセン系増感剤では、DBA、DEA(川崎化成工業社製)、チオキサントン系増感剤では、DETX、ITX(Lambson社製)等が例示できる。
増感剤は、チオキサントン系増感剤等で好ましい。
増感剤は、成分(B)100質量部に対して、0.1〜5質量部を含むことが好ましい。
<樹脂>
本発明における光硬化性組成物は、樹脂を含むことができる。前記組成物に樹脂を含むことで有機保護層の硬さ、柔軟性等を適宜調整できる。
樹脂は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、(変性)スチレン無水マレイン酸共重合体、(変性)塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、(変性)塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、ケトンアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、エステル化セルロース樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。
これら樹脂は、単独または2種類以上を併用できる。
樹脂は、成分(B)100質量部に対して、1〜35質量部を含むことが好ましい。
<溶剤>
本発明における光硬化性組成物には、溶剤を配合できる。前記組成物に溶剤を配合することで、印刷(塗工)に適した粘度に調整し易い。溶剤は、使用する各成分の溶解性や印刷ないし塗工方法等に応じて、適宜選択することができる。
溶剤は、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等が挙げられる。
溶剤は、単独または2種類以上を併用できる。
溶剤は、成分(B)100質量部に対して、1〜50質量部を含むことが好ましい。
<その他添加剤>
本発明における光硬化性組成物には、必要に応じてその他添加剤を含むことができる。その他添加剤は、例えば、可塑剤、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤が挙げられる。
本発明における光硬化性組成物は、保存安定性を向上する点から、重合禁止剤を用いてもよい。
重合禁止剤は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、キノン類、ニトロソアミン類、フェノチアジン類、ピペリジン−1−オキシル類などが挙げられ、中でもピペリジピペリジン−1−オキシル類が好ましく、中でも、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルがより好ましい。4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルとして、例えば、伯東株式会社製ポリストップP7300を用いることができる。
重合禁止剤を用いる場合、その含有割合は、保存安定性と光硬化性を両立する点から、成分(B)100質量部に対して、0.001質量%以上0.2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
また、光硬化性組成物は、有機保護層形成のために使用するところ、課題を解決できる範囲内であれば、無機化合物を含むことができる。
光硬化性組成物は、成分(A)、成分(B)、および光重合開始剤を配合して攪拌機で混合することで製造できる。攪拌機は、ディスパー等の公知の撹拌装置を使用できる。
光硬化性組成物は、光により迅速に硬化し、無機化合物を含有する層への密着性に優れる有機層を形成できるので、有機EL素子を構成する電極を覆う第1のバリア層(無機化合物を含有する)を保護する第1の有機保護層の形成に好適に用いることができる。
<有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)>
図1〜図5を参照して、本発明の実施態様の1例であるOLEDについて説明する。図1〜図5は各々、OLEDの構成の一例を示す模式的な断面図である。
図1の例に示されるOLEDは、一対の電極22a及び22bと該電極間に位置する有機発光層23とを有する有機EL素子24と、前記電極22bを覆う第1のバリア層25と、当該第1のバリア層25を覆う第1の有機保護層26とを備えた構造を有するOLED20であり、図1の例では、第1のバリア層25が無機化合物を含有し、第1の有機保護層26が前記本発明に係る光硬化性組成物の硬化物である。
また、図1の例に示される第1の有機保護層26上は、図2に示されるように更に第2のバリア層25を有してもよい。図3の例に示されるように当該第2のバリア層25上に更に第2の有機保護層26を有してもよい。更に、図4の例に示されるように当該第2の有機保護層26上に第3のバリア層25を有してもよい。このように、バリア層25と有機保護層26は必要に応じて複数積層していてもよい。また、図5の例に示されるようにバリア層25は基板21及び電極22aの間に有してもよい。
バリア層25は、金属化合物からなる薄膜の層である。バリア層の形成方法として、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。特に、CVD法、スパッタリング法は、緻密でバリア性能に優れた無機バリア層を形成できる点で好ましい。
バリア層の組成は、珪素および/またはアルミニウムを含む酸化物、窒化物、炭化物、またはこれらの混合物が好ましく、珪素を含む酸化物、窒化物、炭化物、またはこれらの混合物がより好ましい。さらに他の金属酸化物、金属窒化物、または金属炭化物を併用することが可能である。バリア層は上述した材料からなる単層構造、または同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
バリア層の厚みは、特に限定されないが、1層につき15〜1200nmが好ましく、20〜1000nmがより好ましい。厚みが15〜1200nmの範囲内になると層形成でピンホールが生じ難く、クラックも生じ難い。
有機保護層26は、光硬化性組成物から形成した硬化被膜である。有機保護層の厚みは、通常1〜30μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。有機保護層の厚みが1μm以上になると、バリア層への保護機能が向上するため屈曲性が向上する。また有機保護層の厚みが30μm以下になると、生産性の向上やコストダウンの他に透明性が向上する。また前記有機層上に他の樹脂組成物から形成される第二の保護膜を備えることも好ましい。これにより屈曲性がより向上する。
バリア層上に有機保護層を形成する方法は、公知の印刷ないし塗工法を使用できる。印刷方法は、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷およびグラビアオフセット印刷等が挙げられる。また塗工方法は、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法が挙げられる。また、印刷または塗布後、乾燥・硬化工程を行なうことが好ましい。乾燥・硬化工程は、UVランプ(例えば高圧水銀ランプ)、熱風オーブン、赤外線オーブン、およびマイクロウエーブオーブン、ならびにこれらを複合した複合オーブン等公知の乾燥装置が挙げられる。熱風オーブンを使用した熱乾燥・硬化の条件は50℃〜130℃で1分程度が好ましい。光照射量は、10〜5000mJ/m2程度である。
本発明で光硬化組成物を硬化させるためには、紫外線を発生する光源を利用することが好ましい。この光源は、例えば高圧水銀灯、定圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線レーザー、LEDランプ等が挙げられる。これらの中で、有機EL層への影響が少ない中心波長が365nm以上のLEDランプが好ましく、中心波長385nm以上のLEDランプが好ましい。
有機EL素子24を構成する各要素の詳細を次に説明する。
<有機EL素子>
基板21は、有機EL素子に用いられる公知の基板が広く採用できる。基板21は、樹脂フィルムであってもよいし、ガスバリアフィルムであってもよい。特開2004−136466号公報、特開2004−148566号公報、特開2005−246716号公報、特開2005−262529号公報等に記載のガスバリアフィルムも好ましく用いることができる。
基板21は、セルロールエステルでは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等;
ポリエステルでは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等;
ポリオレフィンでは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー(COP)等;
ビニル化合物では、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等;
アクリル樹脂では、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸エステル等;
その他は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂、AS樹脂(SAN)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、エポキシ樹脂等、ガラス;が挙げられる。
これらの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)が好ましい。
基板21の厚みは、通常5μm〜700μm程度であり、10μm〜200μmが好ましく、15μm〜150μmがより好ましい。基板21は、ヘイズ3%以下が好ましく、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。また基材21は、全光線透過率70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。ヘイズおよび全光線透過率を満たすとOLEDの視認性が向上する。
有機EL素子24は、基板21と、基板上に設けられた陰極及び陽極を構成する一対の電極22a及び22bを有し、両電極間には発光層を含む有機発光層23を有する。一例として、電極22aを陽極、電極22bを陰極とすることができる。
発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は透明である。
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陽極は、通常透明陽極として設けられる。基板として耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、酸化インジウムスズ(以下、ITO)または酸化亜鉛インジウム(以下、IZO)を使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料は、例えば、金属、合金、ならびに金属酸化物、ならびに電気伝導性化合物、ならびにこれらの混合物などが挙げられる。前記材料は、例えば、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属が挙げられる。これらは、単独または2種類以上を使用できる。陰極を構成する材料として、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、2号公報に詳述されている。また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
陰極の厚みは、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
図示は省略するが、前記有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
前記蛍光発光材料は、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
前記燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子は、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられる。これらの中でもレニウム、イリジウム、および白金が好ましい。
前記ランタノイド原子は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
また、発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。表中の配合量は、質量部である。
<アクリロイル基を有しない成分(A)>
[製造例1]
攪拌羽根、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた500mlセパラブル四つ口フラスコに、無水コハク酸100g(1mol)、n-ブタノール74g(1mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1gを仕込み、窒素気流下オイルバスにて内温が100℃になるまで加熱し4時間反応させることで、コハク酸モノ−n−ブチルエステルを得る。
次いで、グリシジルフェニルエーテル150g(1mol)を添加し、窒素気流下内温を120℃に加熱して12時間保持することにより、一般式A1で示される成分であるコハク酸モノ−n−ブチルエステルのグリシジルフェニルエーテル付加物を得た。なお、R6 はn-ブタノール由来のn-ブチル基である。
[製造例2〜4、8〜17]
表1に示す原料を用い、製造例1と同様な操作を行うことにより、製造例2〜4、8〜17の各成分を得た。
[製造例5]
無水トリメリット酸1molに対し、n-ブタノール1mol、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例1と同様な操作を行うことにより、製造例5の成分を得た。
[製造例6、7]
無水ピロメリット酸1molまたはビフェニルテトラカルボン酸酸二無水物1molに対し、n-ブタノールを2mol、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例1と同様な操作を行うことにより、製造例6、7の成分を得た。
<アクリロイル基を有する成分(A)>
[製造例31]
攪拌羽根、冷却管、ガス導入管、温度計を備えた500mlセパラブル四つ口フラスコに、無水コハク酸100g(2mol)、アクリル酸ヒドロキシプロピル130g(2mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1g、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン0.12gを仕込み、空気気流下オイルバスにて内温が100℃になるまで加熱し4時間反応させることで、コハク酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルを得る。
次いで、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(以下、JER825:エポキシ当量170)170g(1mol)を添加し、空気気流下内温を100℃に加熱して12時間保持することにより、一般式A2(より具体的には一般式A2−2)で示される成分であるビスフェノールAジグリシジルエーテルへのコハク酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステル付加物を得た。R6’はアクリル酸ヒドロキシプロピル由来の一般式(1)であり、R7はプロピレン基である。
[製造例32〜34、38〜47]、
表2に示す原料を用い、製造例31と同様な操作を行うことにより、製造例32〜34、38〜47の成分を得た。
[製造例35]
無水トリメリット酸1molに対し、アクリル酸ヒドロキシプロピル1mol、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例31と同様な操作を行うことにより、製造例35の成分を得た。
[製造例36、37]
無水ピロメリット酸1molまたはビフェニルテトラカルボン酸酸二無水物1molに対し、アクリル酸ヒドロキシプロピルを2mol、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例31と同様な操作を行うことにより、製造例36、37の成分を得た。

<アクリロイル基を有しない成分(A)>
[製造例61]
攪拌羽根、冷却管、ガス導入管、温度計を備えた1000mlセパラブル四つ口フラスコに、無水コハク酸200g(4mol)、プロピレングリコール76g(2mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1gを仕込み、窒素気流下オイルバスにて内温が120℃になるまで加熱し1時間反応させジカルボン酸化合物を得た。
次いで、JER825:170g(1mol)を添加し、窒素気流下内温を120℃に加熱して4時間保持することにより、一般式A2(より具体的には一般式A2−3)で示される、両末端にカルボキシル基を有する反応生成物を得た。R6’は無水コハク酸由来の水素である。
[製造例62〜64、68〜77]
表3に示す原料を用い、製造例61と同様な操作を行うことにより、製造例62〜64、68〜77の成分を得た。
[製造例65]
無水トリメリット酸1molに対し、プロピレングリコール1mоl、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例61と同様な操作を行うことにより、製造例65の成分を得た。
[製造例66、67]
無水ピロメリット酸1molまたはビフェニルテトラカルボン酸酸二無水物1molに対し、プロピレングリコールを2mol、およびグリシジルフェニルエーテルを2mol用いた以外は、製造例61と同様な操作を行うことにより、製造例66、67の成分を得た。
<アクリロイル基を有する成分(A)>
[製造例91]
製造例61で得た一般式A2−3で示される両末端にカルボキシル基を有する反応生成物に、アクリル酸グリシジル256g(2mоl)、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン0.12gを添加して空気気流下にて100℃12時間反応させ、両末端にアクリロイル基を有する一般式A2(より具体的には一般式A2−5)で示される反応生成物を得た。R6’はアクリル酸ヒドロキシプロピル由来の一般式(1)であり、R7はプロピレン基である。
なお、アクリル酸グリシジルの前記の量は、製造例61で得た両末端にカルボキシル基を有する反応生成物中のカルボキシル基に対し、等量のグリシジル基を含むものである。
[製造例92〜94、98〜109]
表4に示す原料を用い、製造例91と同様な操作を行うことにより、製造例92〜94、98〜109の反応生成物を得た。
[製造例95]
無水トリメリット酸1molに対し、プロピレングリコール1mol、グリシジルフェニルエーテルを1mol、アクリル酸グリシジルを1mol用いた以外は、製造例65と同様な操作を行うことにより、製造例95の成分を得た。
[製造例96、97]
無水ピロメリット酸2molまたはビフェニルテトラカルボン酸酸二無水物2molに対し、プロピレングリコールを4mol、およびグリシジルフェニルエーテルを1mol、アクリル酸グリシジルを3mol用いた以外は、製造例65と同様な操作を行うことにより、製造例96、97の成分を得た。

表2〜5中の略号は以下の通り。
<グリシジルエーテルを2個有する化合物>
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル(JER825、エポキシ当量170、三菱ケミカル社製)
・レゾルシノールジグリシジルエーテル(EX−201、エポキシ当量117、ナガセケムテックス社製)
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX−830、エポキシ当量268、ナガセケムテックス社製)
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX−861、エポキシ当量551、ナガセケムテックス社製)
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル(YD8125、エポキシ当量170、新日鉄住金化学社製)
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル(YD8170、エポキシ当量160、新日鉄住金化学社製)
[比較製造例1]
攪拌羽根、冷却管、ガス導入管、温度計を備えた500mlセパラブル四つ口フラスコに、無水グルタル酸(2つのカルボニルの炭素原子の間の炭素原子が3つであり、2つのα位の炭素同士が結合していない一塩基酸ニ無水物)114g(1mol)、アクリル酸ヒドロキシプロピル130g(1mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1g、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン0.12gを仕込み、空気気流下オイルバスにて内温が100℃になるまで加熱し4時間反応させることで、グルタル酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルを得る。
次いで、JER825:85gを添加し、空気気流下内温を100℃に加熱して12時間保持することにより、ビスフェノールAジグリシジルエーテルにグルタル酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルが付加物した生成物を得た。
[比較製造例2]
攪拌羽根、冷却管、ガス導入管、温度計を備えた1000mlセパラブル四つ口フラスコに、無水グルタル酸228g(2mol)、プロピレングリコール76g(1mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1gを仕込み、窒素気流下オイルバスにて内温が120℃になるまで加熱し1時間反応させジカルボン酸化合物を得た。
次いで、JER825:480gを添加し、窒素気流下内温を120℃に加熱して4時間保持することにより、両末端にカルボキシル基を有する反応生成物を得た。
[比較製造例3]
攪拌羽根、冷却管、ガス導入管、温度計を備えた500mlセパラブル四つ口フラスコに、スベリン酸(別名:オクタン2酸)87g(0.5mol)、アクリル酸グリシジル128g(1mol)、触媒としてジメチルベンジルアミン1g、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン0.12g添加して空気気流下にて100℃12時間反応させてアクリロイル基を有する反応生成物を得た。

<実施例1>
成分(A)として、製造例1で得られたコハク酸モノ−n−ブチルエステルのグリシジルフェニルエーテル付加物:5部、成分(B)として、ジプロピレングリコールジアクリレート:60部(以下、M222、2官能モノマー)、トリメチロールプロパントリメタクリレート:40部(以下、TMPT、3官能モノマー)、ルシリンTPO(光重合開始剤、BASFジャパン社製)5部、ポリフローNo.75(表面調整剤、共栄社化学社製)4部、ポリストップ7300P(重合禁止剤、伯東社製)0.05部を混合して光硬化性組成物を得た。
<実施例2〜109>
表6〜9に示すように製造例2〜109で得られた成分(A)、及び成分(B)を実施例1と同様の割合で配合し、それぞれの材料を混合して光硬化性組成物を得た。
<実施例201>
成分(A)として、製造例31で得られたコハク酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルのビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物:1部、成分(B)として、M222:60部、TMPT:40部、ルシリンTPO:5部、ポリフローNo.75:4部、ポリストップ7300P:0.05部を混合して光硬化性組成物を得た。
<実施例202〜204>
製造例31で得られた成分(A)を表10に示す割合で配合し、成分(B)は実施例201と同様の割合でそれぞれの材料を混合して光硬化性組成物を得た。
なお、実施例31も参考のために表10に合わせて記載する。
<実施例301>
成分(A)として、製造例31で得られたコハク酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルのビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物:5部、成分(B)として、ネオペンチルグリコール(PO)nジアクリレート(NA305、2官能モノマー、三洋化成社製):60部、TMPT:40部、ルシリンTPO:5部、ポリフローNo.75:4部、ポリストップ7300P:0.05部を混合して光硬化性組成物を得た。
<実施例302〜309>
製造例31で得られた成分(A)を実施例301と同様の割合で配合し、成分(B)は表11に示す割合でそれぞれの材料を配合して光硬化性組成物を得た。
なお、実施例31も参考のために表11に合わせて記載する。
<実施例401>
成分(A)として、製造例31で得られたコハク酸モノアクリロイルオキシプロピルブチルエステルのビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物:5部、成分(B)として、M222:40部、TMPT:60部、ルシリンTPO:5部、ポリフローNo.75:4部、ポリストップ7300P:0.05部を混合して光硬化性組成物を得た。
<実施例402〜410>
製造例31で得られた成分(A)を実施例401と同様の割合で配合し、成分(B)は表12に示す割合でそれぞれの材料を混合して光硬化性組成物を得た。
なお、実施例31も参考のために表12に合わせて記載する。
<比較例1〜3>
製造例1で得られた反応生成物の代わりに、比較製造例1〜3で得られた反応生成物を用いた以外は実施例1と同様にして光硬化性組成物を得た。
<比較例4>
成分(A)を配合しない以外は実施例1と同様にして光硬化性組成物を得た。
表6〜表13中の記号は以下の通り。
成分(B)
[単官能モノマー]
・L−A:ラウリルアクリレート
・BZA:ベンジルアクリレート
・ACMO:アクリロイルモルホリン
[2官能モノマー]
・NA305:ネオペンチルグリコール(PO)nジアクリレート(三洋化成社製)
・M222:ジプロピレングリコールジアクリレート
・MPD−A:3−メチル−1,5ペンタンジオールジアクリレート
・FX−AO−MA:2−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル
[3官能モノマー]
・TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
・MT−3547:グリセリントリアクリレート
[[評価]]
各実施例、比較例で得られた光硬化性組成物について以下の方法にて評価した。
<<密着性>>
<試料の作成>
下記基材A〜Dの各無機物層上に、バーコーターNo.5で膜厚が7μmとなるように各光硬化性組成物を塗工した。塗工フィルムを酸素濃度が300ppm以下に制御された窒素フロー下のコンベアーに移して、中心波長395nmのLED光源で紫外線を積算光量500mJ/cm(UV−Aの範囲で測定)照射し、有機層を有する、密着性評価用の試料を得た。
基材A:厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルム上に厚さ200nmの窒化珪素層を形成した窒化珪素積層フィルム
基材B:厚さ75μmのPETフィルム上に厚さ200nmの酸化珪素層を形成した酸化珪素積層フィルム。
基材C:厚さ75μmのPETフィルム上に厚さ200nmの酸化アルミニウム層を形成した酸化アルミニウム積層フィルム。
基材D:厚さ7mmのガラス上に厚さ200nmの窒化珪素層を形成した窒化珪素ガラス
<評価>
密着性評価は、市販セロハンテープ(25mm幅)を試料表面に貼り付け、直後に市販セロハンテープを手で急速に剥離して、試料の状態を目視で評価した。評価は試料表面の異なる箇所に対し、3回行った。
◎:3回とも剥離なし(優れている)
〇:2回剥離なし、1回剥離(良好)
△:1回剥離なし、2回剥離(実用上問題なし)
×:3回とも全て剥離(実用不可)
<<耐湿熱性>>
<試料の作成>
基材D上に実施例、比較例で作製した光硬化性組成物を、スピンコーターを用いて膜厚が7μmとなるように塗工し、酸素濃度が300ppm以下に制御された窒素フロー下のコンベアーに移して、中心波長395nmのLED光源で紫外線を積算光量500mJ/cm(UV−Aの範囲で測定)照射し、有機層を有する、耐湿熱性評価用試料を得た。
<評価>
耐湿熱性評価は、試験条件85℃,85%R.H.240時間投入後、オプトデジタルマイクロスコープ(DSX500、OLYMPUS社製)にて塗膜の状態変化を観察した(2層)。
また基材D上に塗布した試料上に、更に厚さ200nmの窒化珪素層を積層した積層試料を作成し、耐湿熱試験条件85℃,85%R.H.240時間投入後、オプトデジタルマイクロスコープにて塗膜の状態変化を観察した(3層)。
◎:変化なし(優れている)
〇:エッジ部分が一部クラック発生(実用上問題ない)
×:全体的にクラックが発生(実用不可)







表6〜12に示すように実施例は密着性、及び耐湿熱性が優れており有機ELデバイス用バリア層として実用的である。
一方、表13に示す比較例は密着性と耐湿熱性の両立が困難であり、バリア層を保護する効果が期待できない。
20 OLED
21 基板
22a 電極
22b 電極
23 有機発光層
24 有機EL素子
25 バリア層
26 有機保護層

Claims (8)

  1. 一対の電極と該電極間に位置する有機発光層とを有する有機EL素子、
    前記一対の電極の少なくとも一方の面を覆う第1のバリア層、
    および前記第1のバリア層を覆う第1の有機保護層を具備する、ディスプレイであって、
    前記第1のバリア層が、無機化合物を含有し、
    前記第1の有機保護層が、2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する成分(A)、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート成分(B)、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化物である、
    ディスプレイ。
  2. 成分(A)が、下記一般式A1〜A11で示されるいずれかである、請求項1記載のディスプレイ。


    101 :グリジシルエーテル基を1個有する化合物からグリジシルエーテル基を除いた残りの部分。
    2、R3 、R4 、R5 :二塩基酸一無水物から無水物基および2つのα位の炭素を除いた残りの部分。
    但し、R2、R3 、R4 、R5 は、相互に連結し環を形成していてもよい。
    6 :アルキル基、アリール基、−R7-OH、−CH=CH2、−CH2CH=CH2、および下記一般式(1)〜(3)で示される群から選ばれるいずれか一種。



    7 :置換基を有しないアルキレン基。
    8 :直接結合、または−O−R10−。R10:置換基を有しないアルキレン基。
    9 :水素、またはメチル基。
    101 :グリジシルエーテル基を1個有する化合物からグリジシルエーテル基を除いた残りの部分。




    102 :グリジシルエーテル基を2個有する化合物から2つのグリジシルエーテル基を除いた残りの部分
    2、R3 、R4 、R5 、R7は、一般式A1の場合と同様。
    6’ :水素、アルキル基、アリール基、−CH=CH2、−CH2CH=CH2
    および下記一般式(1)、(3)で示される群から選ばれるいずれか一種。
    1、m2はそれぞれ独立に0以上の数。
    但し、m1、m2がともに0の場合、R6’ は水素以外。



    7、R8 、R9は、一般式A1の場合と同様。



    101は一般式A1の場合と同様。R6’は一般式A2の場合と同様。



    101は一般式A1の場合と同様。R6’は一般式A2の場合と同様。


    101は一般式A1の場合と同様。R6’は一般式A2の場合と同様。


    101は一般式A1の場合と同様。R6’は一般式A2の場合と同様。

    200 :四塩基酸二無水物から2つの無水物基および4つのα位の炭素を除いた残りの部分。
    但し、α位の炭素同士の結合は、芳香環の一部を成すことができる。
    101は一般式A1の場合と同様。R6’は一般式A2の場合と同様。
  3. 一般式A1におけるR6、一般式A2〜A11におけるR6’が、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート基を有する部位である、請求項2記載のディスプレイ。


    7 :置換基を有しないアルキレン基。
    9 :水素、またはメチル基。
  4. 一般式A1、A3〜A11中のR101におけるグリシジルエーテルを1個有する化合物が、アリルグリシジルエーテル、置換基を有し得るグリシジルフェニルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、およびポリエチレングリシジルエーテルからなる群より選ばれ、
    一般式A2中のR102におけるグリシジルエーテルを2個有する化合物が、ビスフェノール型エポキシ化合物である、
    請求項2または3記載のディスプレイ。
  5. 一般式A1、A2における二塩基酸一無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、およびシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれる二塩基酸一無水物、並びに前記二塩基酸一無水物の誘導体から選ばれ、
    一般式A11における四塩基酸二無水物が、
    ビフェニルテトラカルボン酸類の二無水物、
    ベンゾフェノンテトラカルボン酸類の二無水物、
    ジフェニルエーテルテトラカルボン酸類の二無水物、および
    エチレングリコールビストリメリット酸無水物からなる群より選ばれる四塩基酸二無水物、並びに前記四塩基酸二無水物の誘導体から選ばれる、
    請求項2〜4いずれか1項に記載のディスプレイ。
  6. 光硬化性組成物が、成分(B)100質量部に対して、成分(A)を1〜35質量部含む、請求項1〜5いずれか1項に記載のディスプレイ。
  7. 第1の有機保護層を覆う、無機化合物を含有する第2のバリア層をさらに具備する、請求項1〜6いずれか1項に記載のディスプレイ。
  8. 2つのエステル結合中の2つのカルボニル基の炭素原子が、それぞれ別のα位の炭素に結合し、α位の炭素同士が結合しているカルボニル基単位を有する成分(A)、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート成分(B)、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物。

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