JP2020073665A - インク、並びにインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、環境負荷が少なく、非浸透性基材に直接記録できる水性インクが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、
炭素数3〜4のジオール化合物と、を含む。
本発明のインクは、水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有し、前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、炭素数3〜4のジオール化合物と、を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のインクは、従来の水性インクでは、非浸透性基材に対する定着性、高速印刷性、吐出信頼性、耐擦過性、及び保存安定性のすべての性能を満足できるものではなかったという知見に基づくものである。
更に、前記有機溶剤が比較的高沸点であることにより、インクジェット記録装置のノズル先端近傍での目詰まりを抑制することが可能となり、高い吐出信頼性が得られることも見出した。更に、驚くべきことに前記有機溶剤を所定量添加することにより記録後に形成される塗膜の堅牢性も大きく向上することを知見した。
前記有機溶剤として、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、炭素数3〜4のジオール化合物とを含むことが必要である。
前記ハンセンの溶解パラメータ(HSP)は、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δD、極性項δP、水素結合項δHの3成分に分割し、三次元空間に表したものである。前記分散項δDは分散力による効果、前記極性項δPは双極子間力による効果、前記水素結合項δHは水素結合力による効果をそれぞれ示す。
Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters:A Users Handbook(CRCプレス、2007年)。
溶媒の溶解パラメータ(HSP)[δD、δP、δH]は、例えば、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることによって、その化学構造から簡便に推算できる。本発明においては、HSPiPバージョン3.0.38のデータベースに登録されている溶媒に関してはその値を使用し、データベースに無い溶媒に関しては、HSPiPバージョン3.0.38により推算される値を使用する。
<数式1>
Fd(%)=δD/(δD+δP+δH)×100
Fp(%)=δP/(δD+δP+δH)×100
Fh(%)=δH/(δD+δP+δH)×100
<数式2>
Fd+Fp+Fh=100%
前記有機溶剤の前記Fhは、16%以上25%以下が好ましい。前記Fhが16%以上25%以下であると、より塩化ビニルとの親和性に優れ、インクの定着速度を更に高めることができるという利点がある。
前記有機溶剤として、炭素数3〜4のジオール化合物を含有することにより、耐擦過性、定着性、及び非転写性が向上する。
前記炭素数3〜4のジオール化合物としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記炭素数3〜4のジオール化合物の含有量は、インク中の有機溶剤の総含有量に対して、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上27質量%以下がより好ましい。
前記有機溶剤は、更に、アルコキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
前記有機溶剤として、アルコキシ基を有する化合物を含有することにより、樹脂や顔料への相溶性が高いので、インク中に分散された樹脂や顔料が凝集することなく存在することができ、インクの保存安定性が向上する。
前記アルコキシ基を有する化合物としては、例えば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
前記アルコキシ基を有する化合物の含有量は、インク中の有機溶剤の総含有量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上6質量%以下がより好ましい。
前記他の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記沸点が170℃以上250℃以下であると、高い吐出信頼性が得られ、また、形成された画像の乾燥性も良好となる。
前記樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリエーテル樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、アクリル−シリコーン樹脂粒子、フッ素系樹脂等の縮合系合成樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリビニルアルコール樹脂粒子、ポリビニルエステル樹脂粒子、ポリアクリル酸樹脂粒子、不飽和カルボン酸系樹脂等の付加系合成樹脂粒子、セルロース類、ロジン類、天然ゴム等の天然ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリウレタン樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂粒子などが挙げられる。
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の少なくとも1種を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
また、前記ポリウレタン樹脂粒子の製造に使用できるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、これらの無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明のインクは、ポスターや看板などの屋外向けの用途としても用いられるため、非常に高い長期耐候性を持つ塗膜を必要としており、前記長期耐候性の点から、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートが好ましい。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートの含有量としては、イソシアネート化合物全量に対して、60質量%以上が好ましい。
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂粒子は、従来一般的に用いられている製造方法により得ることができ、例えば、次の方法などが挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させて、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
前記鎖延長剤としては、例えば、ポリアミンやその他の活性水素基含有化合物などが挙げられる。
前記塩化ビニル樹脂粒子としては、インク中に含まれる顔料や他の樹脂粒子との混和性を確保する点から、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル共重合体が好ましく、非極性基材に対する密着性に特に優れる点から、塩化ビニル−エチレン共重合体がより好ましい。
前記市販の塩化ビニル−アクリル共重合体のエマルションとしては、例えば、日信化学工業株式会社製のビニブラン(登録商標)シリーズのうち品番278(固形分濃度:43質量%、アニオン性)、700(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、711(固形分濃度:50質量%、アニオン性)、721(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、700FS(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL35(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL(固形分濃度:30質量%、アニオン性)、701RL65(固形分濃度:30質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記市販の塩化ビニル−エチレン共重合体のエマルションとしては、例えば、住化ケムテックス株式会社製のスミエリート(登録商標)シリーズのうち品番1010(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)、1210(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)、1320(固形分濃度:50±1質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
その他の市販品としては、塩化ビニル樹脂にヒドロキシル成分を導入したWacker Chemie AG社製のVINNOLシリーズのうち品番E15/48A(固形分濃度:50質量%、アニオン性)、E22/48A(固形分濃度:30質量%、アニオン性)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステル樹脂粒子としては、画像の耐水性を得るために、乳化剤やスルホン酸塩など乾燥後の被膜に残存する親水性成分を含有しないものが好ましい。
前記自己乳化型の樹脂粒子のアニオン性基の酸価としては、水分散性、耐擦性、及び耐薬品性の点から、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/mg以上50mgKOH/mg以下が好ましい。
前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリンなどの有機アミン;モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;Na、K、Li、Caなどを含む金属塩基化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記強制乳化型の樹脂粒子を用いて水分散体を製造する方法としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの界面活性剤を用いることができる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
前記体積平均粒径が10nm以上1,000nm以下の樹脂粒子を用いることで、水溶性有機溶剤と樹脂粒子表面との接触部位が増加し、樹脂粒子の造膜性が高まり、強靭な樹脂の連続被膜が形成されるため、高い画像硬度を得ることができる。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
また、樹脂の粒子径の制御によっても変化するため、これらの制御因子により樹脂の最低造膜温度を狙いの値とすることが可能である。
前記色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、顔料、染料などが挙げられる。これらの中でも、顔料が好ましい。
前記顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。
また、カラー用としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、前記顔料をマイクロカプセルに包含させ、前記顔料を水中に分散可能なもの、すなわち、顔料粒子を含有させた樹脂粒子であってもよい。
この場合、インクに含有される顔料としては、すべて樹脂粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、前記顔料がインク中に分散していてもよい。
前記数平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、ヒンダードフエノールやヒンダードフエノールアミンのようなゴム及びプラスチックス用無色老化防止剤などが挙げられる。
前記界面活性剤は、記録媒体への濡れ性を確保するために含有することができる。
また、組成によってはフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を併用又は単独使用することできる。
前記防腐防黴剤としては、例えば、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリト−ル、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば任意の物質を使用することができ、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;第4級アンモニウム水酸化物やジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン;水酸化アンモニウム;第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記インクの製造方法としては、例えば、前記水、前記有機溶剤、前記樹脂粒子、前記色材、及び必要に応じて、前記その他の成分を、撹拌混合することにより製造することができる。前記撹拌混合としては、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いることができる。
本発明で用いられるインクカートリッジは、本発明の前記インクを容器に収容してなる。
前記インクカートリッジとしては、前記インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段及び加熱手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程及び加熱工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含んでなる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。前記加熱工程は前記加熱手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
前記インク飛翔工程は、本発明の前記インクジェット用インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を形成する工程であり、インク飛翔手段により実施することができる。
前記インク飛翔手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェットヘッド、などが挙げられる。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸透性基材、非浸透性基材などが挙げられる。これらの中でも、非浸透性基材が好ましい。
前記浸透性基材としては、例えば、普通紙、合成紙、布、などが挙げられる。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性、及び吸着性の少なくともいずれかが低い表面を有する基材をいい、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材を意味する。
前記非浸透性基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、PVCフィルム、PETフィルムが好ましい。
前記非浸透性基材が樹脂被覆層を有するものが、一つのインクで各種基材への記録が対応できる点から好ましい。前記樹脂被覆層は、アクリル樹脂被覆層であることが、定着性、溶剤親和性、及び堅牢性の点からより好ましい。
前記加熱工程は、画像を記録した基材を加熱する工程であり、加熱手段により実施することができる。
前記インクジェット記録方法としては、前記基材としての非浸透性基材に高画像品質な記録ができるが、より一層高画質で耐擦性、及び密着性の高い画像の形成、並びに高速の記録条件にも対応できるようにするために、記録後に前記非浸透性基材を加熱することが好ましい。記録後に加熱工程を有すると、インク中に含有される樹脂の造膜が促進されるため、記録物の画像硬度を向上させることができる。
前記加熱温度としては、インク中に含まれる水溶性有機溶剤の種類や量、及び添加する樹脂エマルジョンの最低造膜温度に応じて変更することができ、更に印刷する基材の種類に応じても変更することができる。
前記加熱温度としては、乾燥性、及び造膜温度の点から、高いことが好ましく、40℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が特に好ましい。前記加熱温度が、40℃以上120℃以下であると、非浸透性基材の熱によるダメージを防止し、インクヘッドが温まることによる不吐出が生じることを抑制することができる。
前記その他の工程としては、例えば、刺激発生工程、制御工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、刺激発生手段、制御手段などが挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエーター、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエーター、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエーター、静電力を用いる静電アクチュエーター、などが挙げられる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
実施態様の一例として、前記ホワイトインクを記録媒体の全面に塗布する場合は、インクジェット記録方法以外の塗工方法で塗工し、ホワイト以外の色のインクで記録する場合は、インクジェット記録方法で記録する態様が可能である。
別の実施態様として、ホワイトインクを用いた記録も、ホワイト以外の色のインクを用いた記録も、インクジェット記録方法で記録する態様が可能である。
ホワイトインクの代わりにクリアインクを用いた場合も同様である。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135)を搭載している。サブタンク135には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ201から、前記インクが供給されて補充される。
前記給紙部から給紙された基材142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、基材142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる基材142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる基材142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
前記インクジェット記録装置においては、給紙部から基材142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された基材142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト151が帯電されており、基材142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。
そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している基材142にインク滴を吐出して1行分を記録し、基材142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は基材142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、基材142を、排紙トレイ103に排紙する。
なお、搬送ベルト151の基材142と反対側には、ヒーター群203が設けられており、画像形成された基材142を加熱可能である。図3中157、158は搬送手段としての搬送ローラである。
本発明の記録物は、基材上に、本発明の前記インクにより記録された画像を有する。
前記基材としては、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置と同様の基材を用いることができるが、本発明の前記インクは、非透過性基材に適用されるときにも良好な発色を備えた画像を提供することができる。
また、カラー記録の際にカラーインクより前に、ホワイトインクを塗布することによって基材が着色されたもの(着色基材)であっても基材の色を白に揃えることができ、カラーインクの発色を向上させることができる。
前記着色基材としては、例えば、着色された紙や前記フィルム、生地、衣服、セラミックなどが挙げられる。
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
攪拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物(数平均分子量(Mn):1,200)1,500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と称することもある)220g、及びN−メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することもある)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次に、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し、混合したものの中から4,340gを抜き出して、強攪拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次に、氷1,500gを投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1を得た。
得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン1について、「造膜温度試験装置」(株式会社井元製作所製)で測定したところ、最低造膜温度は55℃であった。
<ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
温度計、窒素ガス導入管、及び攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」、三菱化学株式会社製、重量平均分子量:1,000)100.2質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸15.7質量部、イソホロンジイソシアネート48.0質量部、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1質量部を、触媒としてジブチルスズジレウレート(以下、「DMTDL」と称することもある)0.06質量部を使用し、反応させた。
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7質量部を供給し、更に反応を継続した。
前記反応物の重量平均分子量が20,000以上60,000以下の範囲に達した時点で、メタノール1.4質量部を投入し、前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4質量部加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和した。次いで、水715.3質量部を加え十分に攪拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度30質量%のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン2を得た。
得られたポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン2について、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製例1と同様にして測定した最低造膜温度は43℃であった。
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
前記樹脂粒子の調製例2において、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」、三菱化学株式会社製、重量平均分子量:1,000)を、ポリエステルポリオール(「ポリライトOD−X−2251」、DIC株式会社製、重量平均分子量:2,000)に変更した以外は、前記樹脂粒子の調製例2と同様にして、固形分濃度30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン3を得た。
得られたポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン3について、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの調製例1と同様にして測定した最低造膜温度は74℃であった。
<ブラック顔料分散液の調製>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製)・・・15質量部
・アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂株式会社製)・・・2質量部
・イオン交換水・・・83質量部
<シアン顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3(商品名:LIONOL BLUE FG−7351、東洋インキ株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、シアン顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
<マゼンタ顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、マゼンタ顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
<イエロー顔料分散液の調製>
前記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業株式会社製)に変更した以外は、前記顔料分散液の調製例1と同様にして、イエロー顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)を得た。
<樹脂分散ブラック顔料分散液の調製>
−ポリマー溶液Aの調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、前記スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18.0gの混合溶液を、0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364.0gを添加し、固形分濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
前記ポリマー溶液Aを28gと、カーボンブラック(デグサ社製、FW100)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータでメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くために、得られた分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料固形分濃度15質量%、固形分濃度20質量%のブラック顔料含有ポリマー粒子分散体を得た。
<インクの調製>
前記調製例1のブラック顔料分散液(顔料固形分濃度15質量%)20質量%、前記調製例1のポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン(固形分濃度30質量%)30質量%、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM−100、出光興産株式会社製)11質量%、1,2−プロパンジオール21質量%、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール4質量%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)0.1質量%、フッ素系界面活性剤(商品名:ユニダイン DSN−403N、ダイキン工業株式会社製)0.01質量%、及び高純水を残量となるように添加(合計100質量%)し、混合攪拌して、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターにて濾過することにより、実施例1のインクを作製した。
<インクの調製>
実施例1において、表1から表3に記載の組成、及びに含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9、及び比較例1〜4のインクを作製した。
*ポリエステル樹脂エマルジョン(ペスレジンA−124GP、高松油脂株式会社製、固形分濃度30質量%)
*エチレン−塩化ビニル系共重合体エマルジョン(スミエリート1210、住化ケムテックス株式会社製、固形分濃度50質量%)
*3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM100、出光興産株式会社製、δH:4.1MPa1/2、Fh:16%、沸点:216℃)
*3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドB100、出光興産株式会社製、δH:7.0MPa1/2、Fh:17%、沸点:252℃)
*ジエチレングリコールジエチルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:9.5MPa1/2、Fh:25%、沸点:180℃)
*ジベンジルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:7.4MPa1/2、Fh:26%、沸点:298℃)
*テトラメチルウレア(東京化成工業株式会社製、δH:8.1MPa1/2、Fh:22%、沸点:177℃)
*2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製、δH:5.2MPa1/2、Fh:20%、沸点:245℃)
*1−n−オクチル−2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製、δH:8.4MPa1/2、Fh:21%、沸点:170℃)
*1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(東京化成工業株式会社製、δH:6.7MPa1/2、Fh:21%、沸点:224℃)
*ジメチルスルホキシド(東京化成工業株式会社製、δH:10.2MPa1/2、Fh:23%、沸点189℃)
*アセトン(東京化成工業株式会社製、δH:7.0MPa1/2、Fh:21%、沸点56℃)
*シクロヘキシルアミン(東京化成工業株式会社製、δH:6.6MPa1/2、Fh:24%、沸点135℃)
*1,2−プロパンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:13.8MPa1/2、Fh:35%、沸点:188℃)
*1,3−プロパンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:14.0MPa1/2、Fh:38%、沸点:211℃)
*1,2−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:19.2MPa1/2、Fh:43%、沸点:191℃)
*2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:18.3MPa1/2、Fh:43%、沸点:178℃)
*3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(東京化成工業株式会社製、δH:12.6MPa1/2、Fh:39%、沸点:174℃)
*2−メチル−2,4−ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製、δH:15.0MPa1/2、Fh:39%、沸点:197℃)
*ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製、δH:10.8MPa1/2、Fh:31%、沸点:190℃)
*防腐剤(プロキセルLV、アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)
各インクを容量が50mLのガラスバイアル瓶に40mL封入し、70℃の恒温槽にて14日間保管した後、粘度を測定し、14日間保管前後の粘度から粘度変化率(%)を算出した。得られた粘度変化率から、下記の評価基準に基づき、インクの保存安定性を評価した。なお、評価がB以上であることが実使用上望ましい。
前記粘度は、コーンプレート型粘度計DV−IP CP(英弘精機株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
[評価基準]
A:粘度変化率が5%以下
B:粘度変化率が6%以上10%以下
C:粘度変化率が11%以上20%以下
インクジェットプリンター(IPSiO GXe5500改造機、株式会社リコー製)を用いて吐出信頼性を評価した。前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m2/hrの印字速度相当の印字をA4サイズで再現できるように改造したものである。
まず、実施例1〜9、及び比較例1〜4のインクを前記インクジェットプリンターにそれぞれ充填し、「ノズル抜け」が発生していないことを確認した後に12時間インクジェットプリンターを放置した。12時間放置後、クリーニングメンテナンスを行わないでノズルチェックパターンを、基材としてアクリル樹脂被覆層を設けたポリ塩化ビニルフィルム(AVERY DENISON社製、MPI3000、以下、「PVCフィルム」と称することがある)上に印刷し、発生した「ノズル抜け」をカウントし、下記評価基準に基づき、「吐出信頼性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。なお、前記「ノズル抜け」とは、インクが吐出されず正常にインク画像が描画されないことを意味する。
[評価基準]
A:ノズル抜けが1箇所以内
B:ノズル抜けが2箇所以内
C:ノズル抜けが4箇所以内
D:ノズル抜けが5箇所以上
なお、前記IPSiO GXe5500改造機は、IPSiO GXe5500機を、150cmの印字幅で30m2/hrの印字速度相当の印字をA4サイズで再現できるように改造した。また、前記ポットプレートを設置し、記録後の加熱条件(加熱温度、加熱時間)を変えることができるように改造した。
作成した各ベタ画像について、以下のようにして、「定着性(ビーディング)」、「非転写性」、及び「耐擦過性」を評価した。結果を表5に示した。
なお、屋外用途への利用を考慮して、「定着性(ビーディング)」、「非転写性」、及び「耐擦過性」の評価は、一般の紙に記録する場合と比べてかなり厳しい評価基準を採用している。
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」に形成した各ベタ画像の印刷ムラを目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「定着性(ビーディング)」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:非常に良好(ビーディングが全くなかった)
B:良好(わずかにビーディングが観察された)
C:普通(ビーディングがあった)
D:不良(著しいビーディングがあった)
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」上に形成した各ベタ画像2枚を3cm×3cmのサイズに切り取り、2枚のベタ画像同士が接するように重ね、その上からプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけた。その後、前記2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれやすさ及び剥がした後の画像の損傷の有無を目視で観察し、下記評価基準に基づいて、「非転写性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感が無く自然に剥がれ、互いの基材への色移りも見られなかった
B:2枚のベタ画像を剥がすときに、わずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった
C:2枚のベタ画像を剥がすときに、貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた
D:2枚のベタ画像を剥がすときの貼り付き感が強く、画像の損傷が顕著であった
前記「PVCフィルム」及び前記「PETフィルム」上に形成した各ベタ画像を乾いた木綿(カナキン3号)で400gの荷重をかけて擦過し、画像の状態を目視で観察し、下記評価基準に基づき、「耐擦過性」を評価した。前記評価がB以上であることが実使用上望ましい。
[評価基準]
AA:50回以上擦っても画像が変化しなかった
A:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響しなかった
B:31回以上50回以下擦過する間に画像濃度が低下した
C:30回以下の擦過で画像濃度が低下した
実施例2は、定着性向上のために添加した有機溶剤の沸点がやや高いため、実施例1に比べて乾燥性が劣る結果となった。
実施例3は、アルコキシル基を有する化合物を含まないため、実施例1に比べ安定性が劣る結果となった。
実施例4は、定着性向上のために添加した有機溶剤のFhがやや高く、非浸透性基材への浸透性が若干悪化したため、実施例1に比べて定着性が劣る結果となった。
実施例5は、定着性向上のために添加した有機溶剤がやや多かった例であり、実施例1に比べて若干非転写性及び耐擦過性が劣る結果となった。
実施例6は、定着性向上のために添加した有機溶剤がやや少なかった例であり、実施例1に比べて若干定着性が劣る結果となった。
実施例7は、ポリエステル樹脂粒子を用いた例であり、ポリウレタン樹脂粒子を用いた実施例1に比べて若干耐擦過性及び吐出信頼性が劣る結果となった。
実施例8は、ポリ塩化ビニル樹脂粒子を用いた例であり、ポリウレタン樹脂粒子を用いた実施例1に比べて若干吐出信頼性及びインクの保存安定性が劣る結果となった。
実施例9は、定着性向上のために添加する有機溶剤を2種類併用した例であるが、実施例1に比べて遜色のない結果が得られている。
比較例4は、炭素数3〜4のジオール化合物を含有していないため、吐出信頼性及びインクの保存安定性が劣っていた。
更に、屋外用途を想定した場合、記録物の耐擦過性についても、屋内向けとは比べ物にならない強靭な耐擦過性、耐溶剤性、画像硬度などの性質が求められている。しかし、前記水性インクでは溶剤系インクに匹敵する十分な前記性質が得られていないという問題がある。
また更に、画像同士を重ね合せた際の画像の色移りや損傷を防止する非転写性についても改良が必要である。
<加熱条件の影響>
実施例1において、下記表6のNo.1〜No.8に示すように記録後の加熱条件(加熱温度、加熱時間)を変えた以外は、実施例1と同様にして、定着性、非転写性、及び耐擦過性を評価した。結果を表6に示した。基材としては、前記「PVCフィルム」を用いた。
なお、No.8は、実施例1のインクを用いて、同様にしてベタ画像の記録を行い、記録後の加熱なし、25℃で24時間放置により乾燥させた。
<1> 水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有するインクであって、
前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、
炭素数3〜4のジオール化合物と、を含むことを特徴とするインクである。
<2> 前記炭素数3〜4のジオール化合物が、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、及び2,3−ブタンジオールから選択される少なくとも1種である前記<1>に記載のインクである。
<3> 前記ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である有機溶剤における、下記数式1で表される比率Fhが、16%以上25%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクである。
<数式1>
Fh(%)=[δH/(δD+δP+δH)]×100
ただし、前記数式1中、前記δHはハンセンの溶解パラメータの水素結合項を表す。前記δDは、ハンセンの溶解パラメータの分散項を表す。前記δPは、ハンセンの溶解パラメータの極性項を表す。
<4> 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物が、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラメチルウレア、2−ピロリドン、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクである。
<5> 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物の含有量が、有機溶剤の総含有量に対して、10質量%以上50質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクである。
<6> 前記有機溶剤が、更に、アルコキシ基を有する化合物を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクである。
<7> 前記アルコキシ基を有する化合物が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールである前記<6>に記載のインクである。
<8> 前記有機溶剤の沸点が、170℃以上250℃未満である前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクである。
<9> 前記有機溶剤の総含有量が、20質量%以上70質量%以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクである。
<10> 前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、及び塩化ビニル−エチレン共重合体粒子のいずれかを含む前記<1>から<9>のいずれかに記載のインクである。
<11> 前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子である前記<1>から<10>のいずれかに記載のインクである。
<12> 前記樹脂粒子の含有量が、1質量%以上15質量%以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載のインクである。
<13> 樹脂粒子の体積平均粒径が、10nm以上1,000nmである前記<1>から<12>のいずれかに記載のインクである。
<14> 前記色材が、顔料である前記<1>から<13>のいずれかに記載のインクである。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
<16> 更に画像を記録した基材を加熱する加熱工程を含む前記<15>に記載のインクジェット記録方法である。
<17> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<15>から<16>のいずれかに記載のインクジェット記録方法である。
<18> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<15>から<17>のいずれかに記載のインクジェット記録方法である。
<19> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<20> 更に画像を記録した基材を加熱する加熱手段を有する前記<19>に記載のインクジェット記録装置である。
<21> 加熱手段による加熱が、40℃以上120℃以下である前記<20>に記載のインクジェット記録装置である。
<22> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<19>から<21>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<23> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<19>から<22>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<24> 基材上に、前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクにより記録された画像を有してなることを特徴とする記録物である。
<25> 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である前記<24>に記載の記録物である。
<26> 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである前記<24>から<25>のいずれかに記載の記録物である。
<27> 前記<1>から<14>のいずれかに記載のインクを容器に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
142 用紙
200 インク収容容器
241 インク収容部
242 インク注入口
243 インク排出口
244 ケース(外装)
Claims (18)
- 水、有機溶剤、色材、及び樹脂粒子を含有するインクであって、
前記有機溶剤が、ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物と、
1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、及び2,3−ブタンジオールから選択される少なくとも1種である炭素数3〜4のジオール化合物と、
アルコキシ基を有する化合物として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、を含むことを特徴とするインク。 - 前記ハンセンの溶解パラメータの水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物における、下記数式1で表される比率Fhが、16%以上25%以下である請求項1に記載のインク。
<数式1>
Fh(%)=[δH/(δD+δP+δH)]×100
ただし、前記数式1中、前記δHはハンセンの溶解パラメータの水素結合項を表す。前記δDは、ハンセンの溶解パラメータの分散項を表す。前記δPは、ハンセンの溶解パラメータの極性項を表す。 - 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物が、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラメチルウレア、2−ピロリドン、1−n−オクチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載のインク。
- 前記ハンセンの溶解パラメータにおける水素結合項δHが4.1MPa1/2以上9.5MPa1/2以下でありかつ沸点が170℃以上である化合物の含有量が、有機溶剤の総含有量に対して、10質量%以上50質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載のインク。
- 前記有機溶剤の沸点が、170℃以上250℃未満である請求項1から4のいずれかに記載のインク。
- 前記有機溶剤の総含有量が、20質量%以上70質量%以下である請求項1から5のいずれかに記載のインク。
- 前記樹脂粒子が、ポリウレタン樹脂粒子を含む請求項1から6のいずれかに記載のインク。
- ホワイトインクである請求項1から7のいずれかに記載のインク。
- 請求項1から8のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて
基材上に画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。 - 更に、画像を記録した基材を加熱する加熱工程を含む請求項9に記載のインクジェット記録方法。
- 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である請求項9から10のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである請求項9から11のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 基材上に記録を行った後、ホワイトインクを塗布するインクジェット記録方法において、 前記ホワイトインクとして、請求項8に記載のインクを用い、該インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて記録するインク飛翔工程を少なくとも含むインクジェット記録方法。
- 基材上にホワイトインクを塗布し、その上に記録するインクジェット記録方法において、 前記ホワイトインクとして、請求項8に記載のインクを用い、該インクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて記録するインク飛翔工程を少なくとも含むインクジェット記録方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載のインクに、刺激を印加し、前記インクを飛翔させて基材上に画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 更に、画像を記録した基材を加熱する加熱手段を有する請求項15に記載のインクジェット記録装置。
- 前記基材が、アクリル樹脂被覆層を有する非浸透性基材である請求項15から16のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記基材が、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれかである請求項15から17のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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