JP2020066216A - ガスバリア性積層体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はこのような知見を踏まえて完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
以下、本実施形態のガスバリア性積層体を構成する各層について説明する。
本実施形態に用いられる紙支持体は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等を挙げることができる。機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
水蒸気バリア層は、水蒸気の透過を阻止する機能を有する層であり、層状無機化合物、カチオン性樹脂およびアニオン性バインダーを含有している。
層状無機化合物の形態は、平板状である。層状無機化合物とバインダーとの混合溶液を作成し、紙支持体上に塗工すると、水蒸気バリア層が形成される。水蒸気バリア層内においては、平板状の層状無機化合物が紙支持体の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列する。そうすると、平面方向では層状無機化合物が存在していない面積が小さくなることから、水蒸気の透過が抑制される。また、厚さ方向では平板状の層状無機化合物が紙支持体平面に対して平行に配列して存在するため、層中の水蒸気は層状無機化合物を迂回しながら透過することとなり、水蒸気の透過が抑制される。その結果、水蒸気バリア層は優れた水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明者らは、層状無機化合物を含有する水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上することを見出した。
本発明者らは、さらに、バインダーがアニオン性を示す方が、水蒸気バリア性がより向上することも見出した。前記したように、層状無機化合物の平面部分はアニオン性であるが、カチオン性樹脂が吸着すると表面がカチオン性になる。そのため、アニオン性であるバインダーとの親和性が高まることとなる。
ガスバリア層は、主として酸素ガスの透過を阻止する機能を有する層であり、水溶性高分子を含有している。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
シーラント層は、加熱や超音波で溶融し接着することにより、ガスバリア性積層体同士を相互に結合させることができる層である。
(製造方法)
ガスバリア性積層体は、紙支持体の少なくとも一方の面上に、塗工法により水蒸気バリア層を形成し、次いで、当該水蒸気バリア層上に、塗工法によりガスバリア層を形成し、次いで、少なくとも一方の最外層に、塗工法によりシーラント層を形成することにより、製造することができる。各層は、塗工液を逐次塗工および乾燥させて形成してもよく、同時多層塗工した後に乾燥させて形成してもよい。このように、本実施形態のガスバリア性積層体の製造方法は、水蒸気バリア層、ガスバリア層およびシーラント層をいずれも塗工法で形成しており、簡便に製造することができる。
(1)紙支持体
晒クラフト紙:坪量70g/m2、厚さ100μm
(2)層状無機化合物
マイカ:膨潤性マイカ、粒子径6.3μm、アスペクト比約1000、厚さ約5nm、固形分6%、製品名:NTO−05、トピー工業社製
ベントナイト:膨潤性ベントナイト、粒子径300nm、アスペクト比300、厚さ約1nm、固形分100%、製品名:クニピアF、クニミネ工業社製
カオリン:エンジニアードカオリン、粒子径9.0μm、アスペクト比80〜100、厚さ約0.1μm、固形分100%、製品名:バリサーフHX、イメリスミネラルズ社製
(3)カチオン性樹脂
変性ポリアミド系樹脂:固形分53%、製品名:SPI203(50)、田岡化学工業社製、表面電荷0.4meq/g
(4)アニオン性バインダー
スチレンアクリル系樹脂エマルジョン:固形分53.8%、製品名:ハービルC−3、第一塗料製造所製
酸変性SBRラテックス:固形分47.3%、製品名:LX407S12、日本ゼオン社製
酸変性SBRラテックス:固形分50.5%、製品名:LX407BP−6、日本ゼオン社製
(5)水溶性高分子
ポリビニルアルコール:完全ケン化型ポリビニルアルコール、製品名:ポバールPVA117、クラレ社製
(6)水分散性樹脂
カルボキシ変性ポリオレフィン(PO)系ポリマーエマルジョン:対イオン:アンモニウムイオン、固形分28.5%、製品名:ザイクセンAC、住友精化社製
カルボキシ変性ポリオレフィン系ポリマーエマルジョン:対イオン:アルキルアンモニウムイオン、固形分23.0%、製品名:ザイクセンL、住友精化社製
カルボキシ変性ポリオレフィン系ポリマーエマルジョン:対イオン:ナトリウムイオン、固形分23.0%、製品名:ザイクセンN、住友精化社製
ポリオレフィン(PE)系エラストマーエマルジョン:固形分40.0%、製品名:ケミパールA400、三井化学社製
ポリオレフィン(PE)系エラストマーエマルジョン:固形分40.0%、製品名:ケミパールA100、三井化学社製
ポリオレフィン(LDPE)系エラストマーエマルジョン:固形分40.0%、製品名:ケミパールM200、三井化学社製
エチレン・酢酸ビニル(EVA)系エマルジョン:固形分40.0%、製品名:ケミパールV200、三井化学社製
アイオノマー(IO)系エマルジョン:固形分27.0%、製品名:ケミパールS200、三井化学社製
低分子量ポリオレフィン(PE)ワックス系エマルジョン:固形分40.0%、製品名:ケミパールW400、三井化学社製
ポリ乳酸樹脂(PLA)エマルジョン:固形分40.0%、製品名:LANDY PL−3000、ミヨシ油脂社製
(7)シーラントフィルム
LLDPEフィルム:T.U.X FCS、30μm厚、三井化学東セロ社製
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO−05)128.6部に、攪拌しながらアニオン性バインダーとしてスチレンアクリル(SA)系樹脂エマルジョン(ハービルC−3)278.8部を加え、攪拌した。これに、カチオン性樹脂として変性ポリアミド(PA)系樹脂(SPI203(50))を12.7部加え、攪拌した。さらに、25%アンモニア水溶液を1.8部加え攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度28%とし、水蒸気バリア層の塗工液を得た。
水分散性樹脂としてカルボキシ変性ポリオレフィン(PO)系ポリマーエマルジョン(ザイクセンAC)を固形分濃度20%に希釈し、シーラント層の塗工液を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をカルボキシ変性ポリオレフィン系ポリマーエマルジョン(ザイクセンL)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をカルボキシ変性ポリオレフィン系ポリマーエマルジョン(ザイクセンN)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をポリオレフィン(PE)系エラストマーエマルジョン(ケミパールA400)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をポリオレフィン(PE)系エラストマーエマルジョン(ケミパールA100)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をポリオレフィン(LDPE)系エラストマーエマルジョン(ケミパールM200)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をエチレン・酢酸ビニル(EVA)系エマルジョン(ケミパールV200)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をアイオノマー(IO)系エマルジョン(ケミパールS200)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂を低分子量ポリオレフィン(PE)ワックス系エマルジョン(ケミパールW400)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層の塗工液の水分散性樹脂をポリ乳酸樹脂(PLA)エマルジョン(LANDY PL−3000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層の塗工液のアニオン性バインダーとしてスチレンアクリル樹脂エマルジョン278.8部を、酸変性SBRラテックス(LX407S12)285.4部及び酸変性SBRラテックス(LX407BP−6)29.7部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。ガスバリア性積層体の断面を顕微鏡拡大写真(電子顕微鏡写真)により目視にて観察したところ、水蒸気バリア層は、空隙のない稠密な膜を形成していた。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO−05)128.6部をベントナイト(膨潤性ベントナイト、クニピアF)9.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。ガスバリア性積層体の断面を顕微鏡拡大写真(電子顕微鏡写真)により目視にて観察したところ、水蒸気バリア層は、空隙のない稠密な膜を形成していた。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO−05)128.6部をカオリン(バリサーフHX)600部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。ガスバリア性積層体の断面を顕微鏡拡大写真(電子顕微鏡写真)により目視にて観察したところ、水蒸気バリア層は、空隙の多い膜を形成していた。
水蒸気バリア層の塗工液のカチオン性樹脂として変性ポリアミド(PA)系樹脂を用いなかったことと、シーラント層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
シーラント層をドライラミネート樹脂層に変更した以外は、実施例1と同様にして、バリア包装材料を得た。ドライラミネート樹脂層は、ドライラミネートによりLLDPEフィルムを積層して形成した。
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃±0.5℃,90%±2%RH)で水蒸気バリア層を内側にして測定した。なお、水蒸気透過度の基準としては、50g/m2・24h以下であれば、水蒸気バリア層として実用性がある。
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN2/20)を使用し、23℃,50%RH条件にて測定した。なお、酸素透過度の基準として、10cc/m2・24h以下であれば、ガスバリア層として実用性がある。
ガスバリア性積層体から供試紙を1cm×1cmの寸法に切断し、その8gを家庭用ミキサー中において500mlの水に混合(濃度1.6%)し、2分間攪拌し、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーから、実験室用手抄きマシンにより紙シートを作製した。得られたシートを乾燥し、乾燥シート中の未離解物(フィルム片、繊維塊、未離解片など)の有無を目視にて観察し、下記の基準で評価した。性能の評価において、〇のときを合格と判定した。
○:未離解物が含まれず、均一なシートが形成される。
×:未離解物が含まれ、均一なシートが形成されない。
1組のガスバリア性積層体を、シーラント層が向き合うように重ね、ヒートシールテスタTP−701−B、テスター産業製)を用いて130℃、0.5MPa、30秒の条件でヒートシールし、下記の基準で評価した。性能の評価において、◎または〇のときを合格と判定した。
◎:1組のバリア包装材料がヒートシールされ、強く融着する。
○:1組のバリア包装材料がヒートシールされ、融着する。
×:1組のバリア包装材料がヒートシールされず、融着しない。
比較例1のガスバリア性積層体は、ヒートシール層を有していないため、ヒートシール性に劣るものであった。比較例2のガスバリア性積層体は、シーラント層がドライラミネート樹脂層からなるものであり、離解性に劣るものであった。
Claims (8)
- 紙支持体の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層およびガスバリア層をこの順に有するガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア性積層体の少なくとも一方の最外層にシーラント層を有し、
前記水蒸気バリア層が層状無機化合物、カチオン性樹脂およびアニオン性バインダーを含有し、
前記層状無機化合物のアスペクト比が50以上であり、
前記層状無機化合物の含有量が前記アニオン性バインダー100質量部に対して0.1〜400質量部であり、
前記ガスバリア層が水溶性高分子を含有し、
前記シーラント層が水分散性樹脂を含有することを特徴とするガスバリア性積層体。 - 前記水分散性樹脂が、カルボキシ基を有するポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、低分子量ポリオレフィンワックスおよび生分解性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記アニオン性バインダーがスチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体およびオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または請求項2に記載のガスバリア性積層体。
- 前記カチオン性樹脂は表面電荷が0.1〜10meq/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記水溶性高分子がポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記層状無機化合物がマイカ、ベントナイトおよびカオリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 包装用材料である請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体の製造方法であって、
紙支持体の少なくとも一方の面上に、塗工法により水蒸気バリア層を形成し、
次いで、当該水蒸気バリア層上に、塗工法によりガスバリア層を形成し、
次いで、少なくとも一方の最外層に、塗工法によりシーラント層を形成することを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法。
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