JP2024058264A - バリア紙、産業用材、包装材及び積層体 - Google Patents

バリア紙、産業用材、包装材及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できるバリア紙を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るバリア紙は、パルプを主成分とする基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層と、上記ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層とを備え、上記ガスバリア層がエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とし、上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、上記ガスバリア層が、固形分換算で上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、上記水蒸気バリア層の塗工量が2g/m2以上10g/m2以下であり、上記ガスバリア層の塗工量が5g/m2以上10g/m2以下であり、上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有である。上記ガスバリア層が上記無機化合物を非含有であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、バリア紙、産業用材、包装材及び積層体に関する。
食品、農業、その他の産業分野等の包装において、従来から内容物の品質低下を防止するために、紙を基紙とし、水蒸気バリア性及びガスバリア性を付与した包装材料が用いられている。
このような水蒸気バリア性及びガスバリア性を有する包装材料としては、基紙上に水蒸気バリア層およびガスバリア層が設けられた紙製バリア包装材料が提案されている(特許文献1参照)。上記従来の紙製バリア包装材料においては、水蒸気バリア層が平均粒子径5μm以上、アスペクト比10以上のカオリンを全顔料に対して50質量%~100質量%含有し、ガスバリア層がバインダー樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を含有している。
国際公開第2013/069788号
しかしながら、上記従来技術の紙製バリア包装材料においては、折り曲げ加工が行われた場合、折り曲げられた箇所のバリア層に圧縮強度がかかることで、バリア層が損傷しやすくバリア性が低下するおそれがある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できるバリア紙の提供を目的とする。
本発明の一態様に係るバリア紙は、パルプを主成分とする基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層と、上記ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層とを備え、上記ガスバリア層がエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とし、上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、上記ガスバリア層が、上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、上記ガスバリア層の塗工量が5g/m以上10g/m以下であり、上記水蒸気バリア層の塗工量が2g/m以上10g/m以下であり、上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有である。
本発明によれば、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できるバリア紙を提供できる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るバリア紙は、パルプを主成分とする基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層と、上記ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層とを備え、上記ガスバリア層がエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とし、上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、上記ガスバリア層が、固形分換算で上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、上記ガスバリア層の塗工量が5g/m以上10g/m以下であり、上記水蒸気バリア層の塗工量が2g/m以上10g/m以下であり、上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有である。
当該バリア紙は、エチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とするガスバリア層を備えることによって、ガスバリア性が良好である。上記ガスバリア層が、上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、塗工量が5g/m以上10g/m以下であることで、ガスバリア層の表面に水蒸気バリア層を積層する際の塗工性を良好にできるので、水蒸気バリア層の性状を向上できる。また、当該バリア紙は、折り曲げ加工がされた場合において、バリア性の低下の抑制効果が良好となる。さらに、上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、水蒸気バリア層の塗工量が2g/m以上10g/m以下であることで、水蒸気バリア性及び製袋加工性を良好にできる。また、上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有であることで、柔軟性の低下を招くことなく、折り曲げ時の水蒸気バリア層の損傷を低減できるので、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下をより抑制できる。従って、当該バリア紙は折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できる。上記「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、含有量が70質量%以上である成分をいう。
上記ガスバリア層が上記無機化合物を非含有であることが好ましい。上記ガスバリア層が上記無機化合物を非含有であることで、折り曲げ時のバリア層に損傷が発生し難くなるため、水蒸気バリア性能をより向上できる。
上記パルプのフリーネスが300ml以上400ml以下であることが好ましい。上記パルプのフリーネスが300ml以上400ml以下であることで、軽量化を可能にしつつ折り曲げ加工がされた場合における水蒸気バリア性の低下をより抑制できる。
本発明の一態様に係る産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備える。当該産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できる産業用材又は包装材を得ることができる。
当該積層体は、当該バリア紙と、上記バリア紙の片面又は両面に積層される蒸着層、ヒートシール層又はこれらの組み合わせとを備える。当該積層体は、当該バリア紙と、上記バリア紙の片面又は両面に積層される蒸着層、ヒートシール層又はこれらの組み合わせとを備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できるとともに、多機能かつ加工性が良好な積層体を得ることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
<バリア紙>
当該バリア紙は、パルプを主成分とする基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層と、上記ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層とを備える。
[基紙]
基紙は、原料パルプを含有するスラリーを抄紙して得られる。基紙は、単層又は多層のいずれであってもよい。また、基紙として、寸法安定性の観点から、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行うことで片面を艶面とした片艶紙を使用してもよく、強度及び印刷適性の観点から、化学パルプ100%からなり、非塗工紙である上質紙を使用してもよい。
(原料パルプ)
基紙は、パルプを主成分とする。基紙を構成する原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらのパルプを組み合わせたもの等を使用することができる。
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)から、化学的に又は機械的に製造されたパルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。印刷面の見栄えや食品包装用途に使用される観点から、晒クラフトパルプのみを使用することが好ましい。
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
基紙のパルプのフリーネスの下限としては、300mlが好ましく、310mlがより好ましい。基紙のパルプのフリーネスの上限としては、400mlが好ましく、390mlがより好ましい。ここで、フリーネスは、JIS-P8220-1-2012のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS-P8121-2-2012のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定される値である。フリーネスが300ml以上であることで、乾燥時の地合ムラを低減し、バリア性能にムラが発生することを抑制できる。フリーネスが400ml以下であることで、紙層の空隙が低減されて、ガスバリア層の塗工液の基紙への浸透量を抑制できる結果、ガスバリア層の表面に均一な水蒸気バリア層を形成するので、水蒸気バリア性能をより向上できる。
(その他の添加剤)
基紙には、必要によりその他の添加剤を内添することができる。添加剤としては、例えば、填料、顔料、サイズ剤、凝結剤、耐油剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
(基紙の坪量)
坪量(g/m)は、JIS-P-8124:2011「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定する。基紙の坪量の下限としては、30.0g/mが好ましく、32.0g/mがより好ましく、35.0g/mがさらに好ましい。基紙の坪量の上限としては、80.0g/mが好ましく、75.0g/mがより好ましく、70.0g/mがさらに好ましい。基紙の坪量が30.0g/m以上であることで、抄造時におけるピンホールの発生によるバリア性の低下を抑制できる。基紙の坪量が80.0g/m以下であることで、基紙が厚くなることによる折り曲げた際のバリア層への負荷を低減できる。
(基紙の平均厚さ)
基紙の平均厚さとしては、30μm以上150μm以下が好ましい。基紙の平均厚さが上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ強度を維持できる。「平均厚さ」は、JIS-P8118:2014に準拠して測定される。
(基紙の塗工面のベック平滑度)
上記基紙のガスバリア層を設ける表面のベック平滑度の下限としては、50秒であり、60秒が好ましい。一方、ベック平滑度の上限としては、1150秒であり、1100秒が好ましい。上記基紙の塗工面のベック平滑度が上記下限以上であることで、ガスバリア層の塗工液の目止め性が向上し、それによりガスバリア層の性状を良好にできる。一方、上記基紙の塗工面のベック平滑度が上記上限を超える場合、ガスバリア層にピンホールが発生し、その上部に水蒸気バリア層を形成すると、水蒸気バリア層の性状が低下するおそれがある。ベック平滑度は、JIS-P8119(1998)に記載の「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠した値である。上記ベック平滑度は、空気の流通量(エアーリーク)から平滑性を評価するものである。上記ベック平滑度は、被測定物であるシートを光学的平面仕上げのガラス製試料台とゴム製押え板間に100kPaの圧力で挟み、10mlの空気が比較的広い10cmのガラス製標準面との間を通り、水銀柱約370mmlに減圧保持された器内に流入するのに要する時間で表され、いわゆる被測定物の面における平滑性を示す。ベック平滑度は、比較的広い面におけるマクロ的な平滑性を評価する。当該バリア紙においては、ベック平滑度により上記基紙の表面のうねり性を評価できる。従って、ベック平滑度にて上記基紙の表面をより適切に評価できる。
[ガスバリア層]
当該バリア紙は、上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層を備える。すなわち、上記水蒸気バリア層は、上記ガスバリア層の表面に積層される。当該バリア紙は、ガスバリア層を備えることによって、ガスバリア性を良好にできる。上記ガスバリア層はエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とする。
(エチレン変性ポリビニルアルコール)
エチレン変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール中の主鎖にエチレン基を導入することによって変性させたポリビニルアルコールであり、ポリマー分子中に親水性と疎水性の官能基が適度に共存する。上記ガスバリア層はエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とすることで、基紙上に強固に密着した皮膜を形成すると同時に、ガスバリア性を良好にできる。
エチレン変性ポリビニルアルコールのエチレン変性度は、モノマー単位全体(エチレン単位+ビニルアルコール単位)に対するエチレン単位のモル%で表される。但し、ビニルアルコール単位には、鹸化されていない酢酸ビニル単位も含まれる。エチレン変性度は、2モル%以上12モル%以下が好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールの平均重合度としては、成膜性及び塗工性に観点から800以上1500以下が好ましい。
(無機化合物)
上記ガスバリア層は、ガスバリア層塗工液の浸透と抑制のバランスを整える観点から、無機化合物を含有してもよい。無機化合物としては、例えば微粒カオリン、1級カオリン、2級カオリン、デラミネーティッドカオリン、焼成カオリン等のカオリン、ベントナイト、マイカ、コロイダルシリカ等の層状化合物(扁平化合物)が挙げられる。これらの中でもバリア性能と塗工性との両立の観点から、カオリンが好ましい。
無機化合物のアスペクト比の下限としては、15が好ましく、18がより好ましい。無機化合物のアスペクト比が15未満であると、ガスバリア性が十分でないおそれがある。一方、上記無機化合物のアスペクト比の上限としては、120が好ましく、100がより好ましい。無機化合物のアスペクト比が120以下であることで、ガスバリア層の塗工液を均一に塗工できるとともに、基紙への浸透も抑えられることから、低塗工量で高いガスバリア性を持たせることができる。ここで、「アスペクト比」とは、無機粒子の形状で、その長径(最長径)と厚さ(最短径)との比をいう。上記アスペクト比は、例えば、レーザー回折・散乱式の粒子分布測定装置堀場製作所製、Horiba LA 950)による粒子画像解析や粉体粒子を電子顕微鏡で撮影し、ランダムに抽出した500個について、直径を厚さで割って平均値を求めることで得ることができる。
上記無機化合物の平均粒子径の下限としては、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。一方、上記無機化合物の平均粒子径の上限としては、10.0μmが好ましく、5.0μmがより好ましい。上記無機化合物の平均粒子径が上記範囲であることで、ガスバリア層の表面の凹凸が軽減されることにより、水蒸気バリア層の塗工液の塗工性が向上し、水蒸気バリア層の性状を良好にできる。上記平均粒子径は、レーザー回析散乱法により測定された粒度分布曲線の50%体積粒子径であるメジアン径(D50)である。
上記ガスバリア層は、エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有である。上記ガスバリア層の表面に水蒸気バリア層を積層する際の塗工性を良好にできるので、水蒸気バリア層の性状を向上できる。また、当該バリア紙は、折り曲げ加工がされた場合において、バリア性の低下の抑制効果が良好となる。ガスバリア層は無機化合物を非含有であることが好ましい。ガスバリア層が無機化合物を非含有であることで、折り曲げ時のバリア層の損傷が発生し難くなる。
上記ガスバリア層におけるエチレン変性ポリビニルアルコールの含有量の下限としては、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。上記エチレン変性ポリビニルアルコール含有量が上記範囲であることで、ガスバリア層のガスバリア性をより向上できる。
上記ガスバリア層は、エチレン変性ポリビニルアルコール及び無機化合物の他、例えば増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料、定着剤等の通常の添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
ガスバリア層の塗工量の下限としては、5g/mが好ましく、6g/mがより好ましい。一方、上記塗工量(固形分換算)の上限としては、10g/mが好ましく、8g/mがより好ましい。ガスバリア層の塗工量が5g/m以上であることで、基材の表面にガスバリア層を均一に被覆することができる。一方、ガスバリア層の塗工量が10g/m以下であることで、ガスバリア層の塗工液の乾燥性を良好にできる。
(ガスバリア層の表面のベック平滑度)
上記ガスバリア層の表面のベック平滑度の下限としては、50秒であり、60秒が好ましい。一方、ベック平滑度の上限としては、1150秒であり、1100秒が好ましい。上記ガスバリア層の表面のベック平滑度が上記下限以上であることで、ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層の塗工液の塗工性が向上し、水蒸気バリア層の性状を良好にできる。一方、上記ガスバリア層の表面のベック平滑度が上記上限を超える場合、ガスバリア層の表面に水蒸気バリア層を形成してもガスバリア層の高い平坦性(滑り性の向上)を示すため、製袋加工適性の低下が生じるおそれがある。
[水蒸気バリア層]
水蒸気バリア層は、上記ガスバリア層の表面に積層される。上記水蒸気バリア層は、スチレンアクリル系共重合体を主成分とする。上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を含有するので、当該バリア紙は水蒸気バリア性を良好にできる。
上記水蒸気バリア層におけるスチレンアクリル系共重合体の含有量の下限としては、固形分換算で70質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記スチレンアクリル系共重合体の含有量が上記範囲であることで、水蒸気バリア層の水蒸気バリア性をより向上できる。ここで、上記水蒸気バリア層におけるスチレンアクリル系共重合体の含有量は、100質量%としてもよい。
スチレンアクリル系共重合体としては、各種スチレンモノマーと各種(メタ)アクリルモノマーとを共重合させたものであれば特に限定されない。
上記水蒸気バリア層は無機化合物を非含有である。上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有であることで、折り曲げ時の水蒸気バリア層の損傷がなくなるため、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下をより抑制できる。上記無機化合物は、ガスバリア層において例示されたものと同様のものを意味する。
上記水蒸気バリア層には、上記スチレンアクリル系共重合体の他、例えば増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料、定着剤等の通常の添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
水蒸気バリア層の塗工量の下限としては、2.0g/mであり、3.0g/mが好ましい。一方、上記塗工量の上限としては、目止め性を向上させる観点から、10.0g/mであり、9.0g/mが好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が上記下限未満の場合、水蒸気バリア性が低下するおそれがある。一方、水蒸気バリア層の塗工量が上記上限を超える場合、製品巻き取り時にブロッキングが発生し包装材としての使用ができなくなるおそれがある
上記基紙の両面にガスバリア層及び水蒸気バリア層が積層される場合、ガスバリア層及び水蒸気バリア層の成分、塗工量等の構成を上記構成とすることができる。
上記基紙の片面にガスバリア層及び水蒸気バリア層が積層される場合、上記基紙におけるガスバリア層及び水蒸気バリア層が積層される面の反対面(裏面)において、グラビア印刷機、デジタル印刷機等への印刷適性を向上させる目的のために、顔料塗工層を設けることができる。顔料塗工層としては、印刷用塗工紙分野で従来公知のものを採用できる。
[バリア紙の物性値]
(バリア紙の坪量)
当該バリア紙の坪量としては、37.0g/m以上100.0g/m以下が好ましい。当該バリア紙の坪量が上記範囲であることで、軽量化を可能にしつつ強度を維持できる。
(バリア紙の平均厚さ)
当該バリア紙の平均厚さの下限としては、40μmが好ましく、45μmがより好ましい。上記平均厚さの上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましい。当該バリア紙の平均厚さが上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ加工適性を向上できる。
(バリア紙の平面の酸素透過度及び透湿度)
当該バリア紙の平面の酸素透過度としては、20g/m・24hr以下が好ましく、10g/m・24hr以下がより好ましい。当該バリア紙の平面の透湿度としては、50g/m・24hr以下が好ましく、20g/m・24hr以下がさらに好ましい。当該バリア紙の平面の酸素透過度及び透湿度が上記範囲であることで、当該バリア紙はバリア性が良好である。
[バリア紙の製造方法]
当該バリア紙の製造方法としては、特に限定されず、例えば原料パルプスラリーを抄紙し、プレスパート及びドライヤーパートに供して基紙を製造する工程と、アンダーコーターパートにてガスバリア層塗工液を塗工した上、乾燥処理してガスバリア層を積層する工程と、ガスバリア層の表面に水蒸気バリア層の塗工液を塗工する工程とを有する。基紙、ガスバリア層塗工後の両方、若しくは一方にカレンダーによる平滑処理を行っても良い。
ガスバリア層の塗工液又は水蒸気バリア層の塗工液を塗工する際の塗工装置としては、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ゲートロールコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等が挙げられる。
また、カレンダー処理の際のカレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等の金属又はドラムと弾性ロールとの組み合わせによる各種カレンダーがオンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用される。
<産業用材又は包装材>
当該産業用材又は当該包装材は、当該バリア紙を備える。当該産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できる産業用材又は包装材を得ることができる。
当該産業用材としては、例えば農業用シート、挿間紙、音響・衣類・建材等に使用されるシート、電気電子機器に使用されるシートに使用されるプラスチック素材に代替される用途が挙げられる。また、当該産業用材は、酸素や湿気の侵入を抑制できるので、内容物の腐敗、劣化を抑制するとともに、内容物の臭気が漏れ出るのを抑制できる。
当該包装材としては、例えば食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア性包装材料、パック、パウチ、箱、シュリンク包装、缶、ラミネート包装等のプラスチック素材に代替される用途が挙げられる。当該包装材は、内容物の酸素による酸化や湿気などによる劣化を抑制し、保存期間の延長を図ることができる。
<積層体>
当該積層体は、当該バリア紙と、上記バリア紙の片面又は両面に積層される蒸着層、ヒートシール層又はこれらの組み合わせとを備える。当該積層体は、当該バリア紙と、上記バリア紙の片面又は両面に積層される蒸着層、ヒートシール層又はこれらの組み合わせとを備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できるとともに、多機能かつ加工性が良好な積層体を得ることができる。
(蒸着層)
当該積層体は蒸着層を備えることで、バリア性をより向上できる。上記蒸着層は、上記バリア紙の片面又は両面に積層される。上記蒸着層は、金属、無機酸化物、又は無機窒化物を主成分とする。上記金属としては、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、金、白金、銀、コバルト、クロムを用いることができる。上記無機酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、マグネシウム、鉛、ホウ素、ナトリウム等の酸化物を用いることができる。上記無機窒化物としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、マグネシウム、鉛、ホウ素、ナトリウム等の窒化物を用いることができる。上記蒸着層の形成方法は、特に制限されず、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD)等の公知の方法を用いることができる。
(ヒートシール層)
当該積層体はヒートシール層を備えることで、製袋工程において加工性が向上する。ヒートシール層は上記バリア紙の片面又は両面に積層される。当該積層体が蒸着層及びヒートシール層を備える場合、上記ヒートシール層は最外層であることが好ましい。上記ヒートシール層は、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム層又は塗工層である。
(フィルム層)
フィルム層は、熱可塑性樹脂を主成分とする。フィルム層の材料となる熱可塑性樹脂としては、例えば、密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエステル樹脂(PET)、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)、エチレンメチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合樹脂(EAA)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、スチレンアクリル酸エステル共重合樹脂、ポリ乳酸樹脂が挙げられる。フィルム層の積層方法については特に限定されず、従来の溶融押し出しラミネート法やフィルムを用いたドライラミネート法、直接溶融コート法等、公知の方法を用いることができる。
(塗工層)
塗工層は熱可塑性樹脂を主成分とする。塗工層の材料となる熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、スチレン-メタクリル共重合体等のアクリル系樹脂等が挙げられる。塗工方法については特に限定されず、従来のロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等、公知の塗工装置を用いることができる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各薬剤の含有量及び塗工量については、固形分換算での数値をさす。
[実施例1~実施例4、実施例6、実施例7及び比較例1~比較例7]
始めに、表1に記載のパルプ組成のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーには、添加剤として、10kg/tの硫酸バンド、0.1kg/tの歩留剤、5kg/tのサイズ剤をそれぞれ内添した。得られたパルプスラリーは、長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキードライヤーにて乾燥させることにより、実施例1の基紙を得た。
次に、この基紙のベック平滑度が高い方の面を塗工面として、表1に記載の組成の塗工液を塗工してガスバリア層を形成した。ガスバリア層の塗工液の材料は以下の通りである。
(1)エチレン変性ポリビニルアルコール(クラレ社製「エクセバールAQ-4104」)
(2)実施例2、比較例4-5で使用したカオリン(イメリス社製、品名:バリサーフHX、アスペクト比100)
(水蒸気バリア層)
ガスバリア層の表面に、表1に記載の組成の水蒸気バリア層の塗工液を塗工して水蒸気バリア層を形成した。
水蒸気バリア層の塗工液の材料は以下の通りである。
スチレン-アクリル系共重合体(サイデン化学社製「EK61」)
上記記載の添加剤の添加量は、絶乾パルプ量に対する固形分換算した量で記載した。また、ガスバリア層及び水蒸気バリア層は基紙の片面のみに塗工し、その塗工量は、表1の通りとした。このようにして、実施例1~実施例4、実施例6、実施例7及び比較例1~比較例7のバリア紙を得た。
[実施例5]
ヤンキードライヤーを多筒式ドライヤーに変更して乾燥させた以外は実施例1と同様にして、実施例5のバリア紙を得た。
Figure 2024058264000001
[評価]
得られたバリア紙について下記の方法にて評価した。
<坪量>
基紙の坪量(g/m)は、JIS-P-8124(2011)「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定した。
<基紙のパルプのフリーネス>
基紙のパルプのフリーネスは、JIS-P8220-1:2012のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS-P8121-2:2012のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定した。
<基紙の塗工面のベック平滑度>
基紙の塗工面のベック平滑度は、JIS-P8119(1998)に記載の「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定した。
<十字折り後の酸素透過度>
下記の手順で測定した。
初めに、得られたバリア紙におけるガスバリア層及び水蒸気バリア層の積層面を内側にし、十字折りした。十字折りの方法は、上記バリア紙を重さ2kgのローラーを2往復させて、折り目の角度が180°になるように折り曲げた後に開き、折れ線と垂直になる線に沿って2kgのローラーを2往復させて、折り目の角度が180°になるように再度折り曲げた後に開いた。そして、2つの折れ線の交点が測定部の中央に来るようにして、下記に記載の通り、酸素透過度を測定した。
酸素透過度は、JIS-K-7126-1:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」に準拠して、GTRテック社の「GTR-11AET」を用いて、23℃の雰囲気下におけるバリア紙の酸素透過度を測定した。
<十字折り後の透湿度>
次に、上記十字折り後の酸素透過度と同様に、得られたバリア紙を十字折りした。そして、2つの折れ線の交点が測定部の中央に来るようにして、下記に記載の通り、透湿度を測定した。
透湿度は、JIS-Z0208[1976]防湿包装材料の透湿度試験方法[カップ法]に準拠して、条件Bに基づいて測定した。
上記測定結果及び評価結果について、表1に示す。
表1に示すように、ガスバリア層がエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とし、水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、ガスバリア層が、固形分換算で上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、ガスバリア層の塗工量が5g/m以上10g/m以下であり、水蒸気バリア層の塗工量が2g/m以上10g/m以下であり、水蒸気バリア層が無機化合物を非含有である実施例1~実施例7のバリア紙は、十字折り後のガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れていた。
また、実施例1と実施例2との比較から、ガスバリア層が上記無機化合物を非含有であることで、水蒸気バリア性能をより向上できることがわかる。さらに、実施例1と実施例4との比較から、フリーネスが400ml以下であることで、水蒸気バリア性能をより向上できることがわかる。
一方、上記要件を具備していない比較例1、比較例2及び比較例4~比較例7のバリア紙は、十字折り後のガスバリア性及び水蒸気バリア性のいずれか又は双方が劣っていた。また、比較例3は耐ブロッキング性を有していなかった。
以上の結果、当該バリア紙は折り曲げ加工がされた場合におけるバリア性の低下を抑制できることがわかる。従って、当該バリア紙は薄くて多機能な産業用材又は包装材として好適であることが示された。

Claims (5)

  1. パルプを主成分とする基紙と、
    上記基紙の片面又は両面に積層されるガスバリア層と、
    上記ガスバリア層の表面に積層される水蒸気バリア層と
    を備え、
    上記ガスバリア層がエチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とし、
    上記水蒸気バリア層がスチレンアクリル系共重合体を主成分とし、
    上記ガスバリア層が、上記エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して含有量が15質量部以下の無機化合物を含有するか、又は無機化合物を非含有であり、
    上記ガスバリア層の塗工量が5g/m以上10g/m以下であり、
    上記水蒸気バリア層の塗工量が2g/m以上10g/m以下であり、
    上記水蒸気バリア層が無機化合物を非含有であるバリア紙。
  2. 上記ガスバリア層が上記無機化合物を非含有である請求項1に記載のバリア紙。
  3. 上記パルプのフリーネスが300ml以上400ml以下である請求項1又は請求項2に記載のバリア紙。
  4. 請求項3に記載のバリア紙を備える産業用材又は包装材。
  5. 請求項3に記載のバリア紙と、
    上記バリア紙の片面又は両面に積層される蒸着層、ヒートシール層又はこれらの組み合わせと
    を備え、
    上記蒸着層が金属、無機酸化物、又は無機窒化物を主成分とし、
    上記ヒートシール層が熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム層又は塗工層である積層体。

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